(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとの間に設けられ、前記先端側のリンクハブを前記基端側のリンクハブに対して姿勢を変更可能に連結する3組以上のリンク機構と、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に設けられ、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータとを備えるリンク作動装置の操作装置であって、
前記リンク機構は、それぞれが前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記操作装置は、
前記先端姿勢を、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度である折れ角と、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度である旋回角とによって規定し、
前記基端側のリンクハブの中心軸の延長軸と、前記中心軸の延長軸と直交する2次元の直交座標系との交点を原点とし、前記2次元の直交座標系上に前記先端側のリンクハブの球面リンク中心を投影した座標位置から、前記折れ角および旋回角で表される先端姿勢を取得する姿勢取得手段を備え、
前記折れ角および前記旋回角が変化しても、基端側と先端側の各球面リンク中心間距離が一定であるリンク作動装置の操作装置。
請求項1に記載のリンク作動装置の操作装置であって、前記姿勢取得手段は、前記2次元の直交座標系上に前記先端側のリンクハブの球面リンク中心を投影した座標位置を人為操作で指定する姿勢取得部と、この姿勢取得部で指定された座標位置から折れ角および旋回角で表される先端姿勢を取得する計算部とを有するリンク作動装置の操作装置。
請求項1または請求項2に記載のリンク作動装置の操作装置において、先端姿勢を変更するときに通過する中継点を定める中継点設定手段を有し、この中継点設定手段は、前記先端側の球面リンク中心を前記2次元の直交座標系上に投影した点の座標を用いて、定められた規則に従い前記中継点を計算して設定するリンク作動装置の操作装置。
請求項3に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記中継点設定手段は、先端姿勢変更前の先端側球面リンク中心と、基端側球面リンク中心と、先端姿勢変更後の先端側球面リンク中心とでなす角を分割して前記中継点を計算して設定するリンク作動装置の操作装置。
請求項3または請求項4に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記中継点設定手段は、前記中継点を、先端姿勢が所定の移動量以上動作する場合に、前記移動量を前記所定量以下にするために分割して設定するリンク作動装置の操作装置。
請求項3または請求項4に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記中継点設定手段は、前記中継点を、先端姿勢の途中経路を所定数で分割して設定するリンク作動装置の操作装置。
請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記中継点設定手段は、前記先端側球面リンク中心の通過する途中経路を等分するリンク作動装置の操作装置。
請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記先端側球面リンク中心の通過する途中経路を直線補間する補間手段を有するリンク作動装置の操作装置。
請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のリンク作動装置の操作装置において、前記先端側球面リンク中心の通過する途中経路を円弧補間する補間手段を有するリンク作動装置の操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示の操作装置は、直感的に操作できる点では優れている。しかし、直交座標(X,Y,Z)から、制御装置での制御に必要となるリンクハブの姿勢(θ, φ)への変換において、収束演算を用いている。そのため、計算に時間がかかってしまう。
【0008】
この発明の目的は、先端姿勢を変更するアクチュエータの制御が角度座標系で扱われるリンク作動装置において、目標とする先端姿勢のティーチングが行い易く、かつ角度座標系への入力変換が、収束演算を行うことなく簡易にかつ迅速に行えるリンク作動装置の操作装置およびリンク作動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のリンク作動装置の操作装置は、
基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとの間に設けられ、前記先端側のリンクハブを前記基端側のリンクハブに対して姿勢を変更可能に連結する3組以上のリンク機構と、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に設けられ、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータとを備えるリンク作動装置の操作装置であって、
前記リンク機構は、それぞれが前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記操作装置は、
前記先端姿勢を、前記基端側のリンクハブの中心軸QAに対して前記先端側のリンクハブの中心軸QBが傾斜した垂直角度である折れ角θと、前記基端側のリンクハブの中心軸QAに対して前記先端側のリンクハブの中心軸QBが傾斜した水平角度である旋回角φとによって規定し、
前記基端側のリンクハブの中心軸QAの延長軸と、前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系との交点O′を原点とし、前記2次元の直交座標系(例えば作業平面W)上に前記先端側のリンクハブの球面リンク中心PBを投影した座標位置(X′,Y′)から、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)を取得する姿勢取得手段64を備える。
【0010】
なお、前記「球面リンク中心PB」は、前記リンクハブと前記アームの各回転対偶、および前記各アームと前記中央リンク部材の各回転対偶の中心軸がそれぞれ交差する点を言う。前記各リンク機構は、例えば、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状とされる。また、前記先端側のリンクハブには、エンドエフェクタが設置される。
【0011】
上記構成のリンク作動装置は、基端側リンクハブと先端側リンクハブの各球面リンク中心PA,PB間の距離(D)は常に一定であるため、先端側の球面リンク中心PBを平面に投影した座標(X′, Y′)を用いれば先端側のリンクハブの、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢を収束演算なしに簡単に求めることができる。そのため、このリンク作動装置の操作装置によると、目標とする先端姿勢のティーチングが行い易く、かつ角度座標系への入力変換を行うにつき、収束演算が不要で簡易にかつ迅速に行うことができる。
【0012】
この発明において、前記姿勢取得手段64は、前記2次元の直交座標系上に前記先端側のリンクハブの球面リンク中心PBを投影した点の座標(X′, Y′)を人為操作で指定する姿勢取得部64aと、この姿勢取得部64aで指定された座標(X′, Y′)から折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)を取得する計算部64bとを有するようにしても良い。
【0013】
前記姿勢取得部64aは、各種の指定方法が採用できる。例えば、前記先端側のリンクハブの球面リンク中心PBを投影した点の座標(X′, Y′)を入力装置68によって数値の入力により行う方法とされる。この他に、リンク作動装置を手動で目標位置に移動させ、このときのリンク作動装置のアクチュエータに備えられた角度検出手段が検出した回転角から計算し、指定するようにしても良い。また、3次元の直交座標系の座標値を数値入力し、前記先投影した点の座標(X′, Y′)に姿勢取得部64aで換算するようにしても良い。
制御装置61は、前記折れ角θと旋回角φが与えられると、次の関係から各アームの回転角に変換して各アクチュエータを制御することができる。すなわち、前記リンク作動装置において、リンクハブのある姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と他の姿勢B(θb 、φb )について、姿勢A、Bに対応するアーム回転角は、リンクハブとアーム回転角との関係式より、それぞれ回転角A(β1a、β2a、β3a)、回転角B(β1b、β2b、β3b)として関係が成り立つ。そのため、折れ角θと旋回角φの指定によって各アクチュエータを制御することができる。
【0014】
この発明において、先端姿勢を変更するときに通過する中継点Mを定める中継点設定手段66を有し、この中継点設定手段66は、前記先端側の球面リンク中心を前記2次元の直交座標系上に投影した点の座標(X′, Y′)を用いて、定められた規則に従い前記中継点Mを計算して設定するようにしても良い。前記定められた規則は、例えば後述の角度を等分すると言う規則や、所定の移動量動作する場合にのみ分割すると言う規則等である。
中継点Mを定めることで、先端側リンクハブに取付けられるエンドエフェクタによる希望の作業が精度良く行え、またリンク作動装置が姿勢変更動作中に周囲の器物等と干渉することを回避することができる。さらに先端姿勢を広角に姿勢変更させる場合、中継点を設定することで途中経路Lの各アーム回転角の相対位置が関係式を満たす位置から大きく外れることなく位置決め制御させることで、パラレルリンク機構1に過大荷重をかけず、かつ高速移動が可能となる。
ある姿勢Aから他の姿勢Bに移動する際の途中経路上の中継点Mを設定する場合、リンク作動装置の姿勢延長上の範囲にある任意の直交座標(X,Y,Z)ではなく、先端側球面リンク中心を任意の平面に投射した座標(X′,Y′)を用いることで、前記中継点Mを、収束演算なしに簡単に求めることができる。
【0015】
この発明において、前記中継点設定手段66は、先端姿勢変更前の先端側球面リンク中心PBaと、基端側球面リンク中心PAa(=PAb)と、先端姿勢変更後の先端側球面リンク中心PBbとでなす角γを分割して前記中継点Mを計算して設定するようにしても良い。
ある姿勢Aから他の姿勢Bへ姿勢を変更させる際に、途中経路Lを分割して連続的に通過させる場合、姿勢Aにおける先端側球面リンク中心PBaと基端側球面リンク中心PAa(PAb)と姿勢Bにおける先端側球面リンク中心PBbとでなす角γを等分するように途中経路Lを分割すれば、姿勢変更前後の先端の直交座標を使用した分割に必要な収束演算が不要となる。
【0016】
この発明において、前記中継点設定手段66は、前記中継点を、先端姿勢が所定の移動量以上動作する場合に、前記移動量を前記所定の移動量以下にするために分割して設定するようにしても良い。
ある姿勢Aから他の姿勢Bへ広角に姿勢変更させる場合、駆動途中の各アーム回転角の相対位置が関係式を満たす位置から大きく外れるとリンクに過大荷重がかかってしまう。そのために駆動途中に関係式を満たす中継点を設け、その中継点から大きく外れることなく位置決め制御させることで、リンクに過大荷重をかけず、かつ高速移動が可能となる。その際の中継点の姿勢を求める際に、先端側球面リンク中心PBの投影座標(X′,Y′)を用いることで簡単に求めることができる。
【0017】
この発明において、前記中継点設定手段66は、前記中継点Mを、先端姿勢の途中経路Lを所定数で分割して設定するようにしてもよい。前記「所定数」は、任意に設定すれば良い。
途中経路Lを所定数で分割する場合、中継点Mの設定が容易に行える。
【0018】
この発明において、前記中継点設定手段66を設ける場合、前記中継点設定手段66は、前記先端側球面リンク中心PBの通過する途中経路Lを等分するようにしても良い。
距離を等分して中継点Mを設定しても、中継点Mの設定が容易に行え、かつその中継点Mを通るようにリンク作動装置が動作することで、円滑な動作が得られる。
【0019】
この発明において、前記中継点設定手段66は、前記先端側球面リンク中心の通過する途中経路Lを直線補間する補間手段69を有するようにしても良い。
直線補間によると、簡単な補間処理により、希望の経路に近いようにリンク作動装置を動作させることができる。
【0020】
この発明において、前記中継点設定手段66は、前記先端側球面リンク中心の通過する途中経路Lを円弧補間する補間手段69を有するようにしても良い。
円弧補間によると、前記先端側球面リンク中心の通過する経路が曲線である場合に、簡単な補間処理により、希望の経路により近いようにリンク作動装置を動作させることができる。
【0021】
この発明のリンク作動システムは、この発明の上記いずれかの構成のリンク作動装置の操作装置と、前記リンク作動装置とを備える。
このため、先端姿勢を変更するアクチュエータの制御が角度座標系で扱われるリンク作動装置において、目標とする先端姿勢のティーチングが行い易く、かつ角度座標系への入力変換が、収束演算を行うことなく簡易にかつ迅速に行える。
【発明の効果】
【0022】
この発明のリンク作動装置の操作装置は、
基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとの間に設けられ、前記先端側のリンクハブを前記基端側のリンクハブに対して姿勢を変更可能に連結する3組以上のリンク機構と、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に設けられ、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータとを備えるリンク作動装置の操作装置であって、
前記リンク機構は、それぞれが前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とを備え、
前記操作装置は、
前記先端姿勢を、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度である折れ角と、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度である旋回角とによって規定し、
前記基端側のリンクハブの中心軸の延長軸と、前記中心軸の延長軸と直交する2次元の直交座標系との交点を原点とし、前記2次元の直交座標系上に前記先端側のリンクハブの球面リンク中心を投影した座標位置から、前記折れ角および旋回角で表される先端姿勢を取得する姿勢取得手段を備えるため、
目標とする先端姿勢のティーチングが行い易く、かつ角度座標系への入力変換を行うにつき収束演算が不要で容易で迅速に行えるという効果が得られる。
【0023】
この発明のリンク作動システムは、この発明の上記いずれかの構成のリンク作動装置の操作装置と、前記リンク作動装置とを備えるため、先端姿勢を変更するアクチュエータの制御が角度座標系で扱われるリンク作動装置において、目標とする先端姿勢のティーチングが行い易く、かつ角度座標系への入力変換が、収束演算を行うことなく簡易にかつ迅速に行える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態に係る操作装置およびその操作対象となるリンク作動装置を
図1〜
図16と共に説明する。
図1はパラレルリンク機構1を示し、このパラレルリンク機構1と、
図16に示すアクチュエータ51およびエンドエフェクタ61とでリンク作動装置50が構成される。このリンク作動装置50は、
図2に示す制御装置61と、この制御装置61に操作指令を入力する操作装置62とを有するコントローラ60により制御される。
【0026】
図1、
図12〜
図15と共に、パラレルリンク機構1につき説明する。このパラレルリンク機構1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。
図14では、1組のリンク機構4のみが示されている。リンク機構4の数は、4組以上であっても良い。
【0027】
図12において、各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、一端がそれぞれ基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
パラレルリンク機構1は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造であって、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶、および端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶の中心軸が、基端側と先端側においてそれぞれの球面リンク中心PA,PB(
図14)で交差している。また、基端側と先端側において、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じであり、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7の各回転対偶とそれぞれの球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角δを持っていてもよいし、平行であってもよい。
【0029】
図13は基端側のリンクハブ2、基端側の端部リンク部材等の断面図であって、同図に、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の各回転対偶の中心軸O1と、球面リンク中心PAとの関係が示されている。先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6の形状ならびに位置関係も
図13と同様である(図示せず)。図の例では、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6との各回転対偶の中心軸O1と、端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸O2とが成す角度αが90°とされているが、前記角度αは90°以外であっても良い。
【0030】
3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、
図15にように、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図15は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。この例のパラレルリンク機構1は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
【0031】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。
【0032】
例えば、球面リンク中心PA,PBを通り、リンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の各回転対偶の中心軸O1(
図4)と直角に交わる直線をリンクハブ2,3の中心軸(以下、「リンクハブ中心軸」とする)QA,QBとした場合、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBの折れ角θ(
図15)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(
図15)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0033】
基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢変更は、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBの交点Oを回転中心として行われる。
図12は、基端側のリンクハブ中心軸QAと先端側のリンクハブ中心軸QBが同一線上にある状態を示し、
図1は、基端側のリンクハブ中心軸QAに対して先端側のリンクハブ中心軸QBが或る作動角をとった状態を示す。姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離D(
図2,
図5)は変化しない。
【0034】
このパラレルリンク機構1において、各リンク機構4におけるリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶の中心軸O1の角度および球面リンク中心PA,PBからの長さが互いに等しく、かつ各リンク機構4のリンクハブ2,3と端部リンク部材5,6の回転対偶の中心軸O1、および、端部リンク部材5,6と中央リンク7の回転対偶の中心軸O2が、基端側および先端側において球面リンク中心PA,PBと交差し、かつ基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側の先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材7の対称面に対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。
【0035】
図1,
図13に示すように、基端側のリンクハブ2は、中央部に円形の貫通孔10aを有する平板状の土台10と、この土台10の貫通孔10aの周囲に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材11とで構成される。貫通孔10aの中心は、基端側のリンクハブ中心軸QA上に位置する。各回転軸連結部材11には、軸心がリンクハブ中心軸QAと交差する回転軸12が回転自在に連結されている。この回転軸12に、基端側の端部リンク部材5の一端が連結される。なお、端部リンク部材5,6は、いずれも棒状の部材30と板状の部材31とで構成されている。
【0036】
前記回転軸12は、外径端に他の部分よりも径が大きい頭部を有し、内径端に雄ねじ部12bを有する。図の例では、2個の軸受13を介して回転軸12が回転軸連結部材11に連結されているが、回転軸12を回転軸連結部材11に回転自在に接触させて連結しても良い。
【0037】
基端側の端部リンク部材5の他端には、中央リンク部材7の一端に回転自在に連結された回転軸15が連結される。この中央リンク部材7の回転軸15も、リンクハブ2の回転軸12と同様に、外径端に他の部分よりも径が大きい頭部を有し、内径端に雄ねじ部を有する。また、図の例では、2個の軸受を介して中央リンク部材7に連結されているが、回転軸15を中央リンク部材15に回転自在に接触させて連結しても良い。
【0038】
図1に示すように、先端側のリンクハブ3は、中央部に円形の貫通孔20aを有する平板状の先端部材20と、この先端部材20の貫通孔20aの周囲に円周方向等配で設けられた3個の回転軸連結部材21(
図12)とで構成される。貫通孔20aの中心は、先端側のリンクハブ中心軸QB上に位置する。各回転軸連結部材21は、軸心がリンクハブ中心軸QBと交差する回転軸22が回転自在に連結されている。このリンクハブ3の回転軸22に、先端側の端部リンク部材6の一端が連結される。先端側の端部リンク部材6の他端には、中央リンク部材7の他端に回転自在に連結された回転軸25が連結される。リンクハブ3の回転軸22および中央リンク部材7の回転軸25も、前記回転軸12,15と同じ形状であり、かつ2個の軸受(図示せず)を介して回転軸連結部材21および中央リンク部材7の他端にそれぞれ回転自在に連結されている
【0039】
このリンク作動装置50は、例えば
図16に示すように、先端側のリンクハブ3にエンドエフェクタ61を設置して使用される。姿勢変更用アクチュエータ51により基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の姿勢を変更することで、エンドエフェクタ61の2自由度の角度を制御することができる。姿勢変更用アクチュエータ51として、減速機構52を備えたロータリアクチュエータを用いたため許容負荷を向上できる。また、慣性モーメント比を低減できるため、高速動作を実現できる。
【0040】
この構成のリンク作動装置50は、姿勢変更用のアクチュエータ51をロータリアクチュエータとし、このアクチュエータ51の減速機構52の出力軸52aをフランジ出力タイプとしたことにより、パラレルリンク機構1に直接、姿勢変更用アクチュエータ51を設置することができる。そのため、駆動機構部が簡素な構造となり、安価なリンク作動装置50を実現できる。なお、減速機構を設けずに、アクチュエータ51の出力軸51aをフランジ出力タイプとしても良い。
【0041】
次に、
図2と共に制御および操作系の説明をする。各アクチュエータ51の動作は、操作装置62の操作指令に基づき、制御装置61により制御される。
制御装置61は、コンピュータによる数値制御式のものである。制御装置61は、操作装置62の姿勢情報付与手段67から与えられる先端姿勢の角度情報(θ,φ)に応じて、各基端側の端部リンク部材5の目標とする回転角βn(β1a,β2a,β3a)(
図1)を求め、姿勢検出手段68(
図1)によって検出される実際の回転角βnが目標とする回転角βnとなるように、各アクチュエータ51をフィードバック制御する。
なお、前記リンク作動装置50において、先端側リンクハブ3のある姿勢(折れ角、旋回角)A(θa 、φa )と他の姿勢B(θb 、φb )について、姿勢A、Bに対応するアーム回転角は、リンクハブとアーム回転角との関係式(1) より、それぞれ回転角A(β1a、β2a、β3a)、回転角B(β1b、β2b、β3b)として関係が成り立つ。
【0042】
操作装置62は、姿勢指定手段64、中継点設定手段66、および姿勢情報付与手段67を有し、この他に入力装置68を有している。
姿勢指定手段64は、前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点O′が位置し、前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系上(作業平面W上)に前記先端側のリンクハブ3の球面リンク中心PBを投影した点の座標(X′,Y′)から、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)を取得する手段であり、姿勢取得部64aおよび計算部64bからなる。
姿勢取得部64aは、目標とする先端姿勢を人為操作で指定する手段であり、前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点O′が位置して前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系上(作業平面W上)に先端側のリンクハブ3の球面リンク中心PBを投影した点の座標(X′,Y′)が指定されるようにする。
【0043】
前記姿勢取得部64aは、各種の指定方法が採用できる。例えば、後述のように前記座標(X′,Y′)を数値で入力する指定方法とされる。
【0044】
前記計算部64aは、前記姿勢取得部64aにより指定された前記2次元の直交座標系上に投影した点の座標(X′,Y′)から、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)を取得する手段である。
前記2次元の直交座標系上に投影した点の座標(X′,Y′)を用いれば、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)への変換は、収束演算を行うことなく容易に行える。その理由および計算式については後に説明する。
【0045】
中継点設定手段66は、先端姿勢を変更するときに通過する中継点M(
図8,
図11)を定める手段である。この中継点設定手段66は、先端側の球面リンク中心PBを前記2次元の直交座標系上(作業平面W上)に投影した点の座標を用いて、定められた規則に従い前記中継点Mを計算して設定する。
中継点Mを定めることで、先端側リンクハブに取付けられるエンドエフェクタ61による希望の作業が精度良く行え、またリンク作動装置50が姿勢変更する動作中に周囲の器物等と干渉することを回避することができる。
ある姿勢Aから他の姿勢Bに移動する際の途中経路L上の中継点Mを設定する場合、リンク作動装置50の姿勢延長上の範囲にある任意の直交座標(X,Y,Z)ではなく、先端側球面リンク中心PBを任意の平面に投射した座標(X′,Y′)を用いることで、前記中継点Mを、収束演算なしに簡単に求めることができる。
【0046】
図2において、姿勢情報付与手段61は、姿勢取得手段64により取得された先端姿勢の情報、すなわち折れ角θおよび旋回角φを制御装置61に与える。
【0047】
前記入力装置68は、前記姿勢取得手段64に対して先端姿勢を数値で指定する入力を行う手段である。この入力装置68は、例えば、前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点O′が位置し、前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系上(例えば前記作業平面W上)の座標位置で、目標とする先端姿勢(X′,Y′)を人為操作で指定する手段である。
【0048】
図17は、入力装置88の操作部68aとなる画像表示装置の画面の一例を示す。この操作部68aは、座標位置を数値入力により指定する方式であり、前記作業平面W、すなわち前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点O′が位置し、前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系上(作業平面W上)に前記先端側のリンクハブ3の球面リンク中心PBを投影した座標位置(X′,Y′)につき、現在の座標位置のX′座標値およびY′座標値をそれぞれ表示する現在値表示部101,102と、目標のX′座標値およびY′座標値をそれぞれ表示する目標値表示部103,104と、目標値表示部103,104に目標のX′座標値およびY′座標値を入力する10キー等からなる数値入力ボタン105と、動作実行ボタン106とを備える。なお、各座標値を表示する表示部の側には、「′」を省略して「X座標」,「Y座標」の表示が付されている。
数値入力ボタン105を用いて目標のX′座標値およびY′座標値を入力すると、その値が目標値表示部103,104を表示される。
【0049】
図18は、入力装置68の操作部68aの異なる例を示す。この操作部68aは、座標位置を操作量で指定する方式であり、現在の座標位置のX′座標値およびY′座標値をそれぞれ表示する現在値表示部101,102と、先端姿勢を変更操作する押し操作ボタン107〜110とを有する。押し操作ボタン107を押すとX′座標値が大きくなる側へ姿勢変更し、押し操作ボタン108を押すとX′座標値が小さくなる側へ姿勢変更し、押し操作ボタン109を押すとY′座標値が大きくなる側へ姿勢変更し、押し操作ボタン110を押すとY′座標値が小さくなる側へ姿勢変更する。
【0050】
姿勢変更の程度は、押し操作ボタン107〜110を押している時間または押した回数に応じて変わる。また、この例では、各押し操作ボタン107〜110は、姿勢変更が低速で行われる低速ボタン107a,108a,109a,110aと、姿勢変更が高速で行われる高速ボタン107b,108b,109b,110bとからなり、姿勢変更を低速および高速の2段階で行えるようになっている。
【0051】
上記構成の原理、詳細、および動作について説明する。
図2において、前記「球面リンク中心PA,PB」は、前記リンクハブ2,3と前記アーム(端部リンク部材5,6)の各回転対偶、および前記各アームと前記中央リンク部材7の各回転対偶の中心軸がそれぞれ交差する点を言う。
前記姿勢取得手段64は、前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点O′が位置し、前記中心軸QAの延長軸と直交する2次元の直交座標系(作業平面W)の上に前記先端側のリンクハブ3の球面リンク中心PBを投影した座標位置(X′,Y′)から、前記折れ角θおよび旋回角φで表される先端姿勢(θ,φ)を取得する。
前記2次元の直交座標系となる平面は、前記基端側のリンクハブ2の中心軸QAの延長軸上に原点が位置しておれば良く、基端側のリンクハブ2からの距離は問わない。前記平面は、一般的に、先端側のリンクハブに取付けられエンドエフェクタ61によるの作業平面とされるため、ここでは作業平面Wと称して説明する。
【0052】
図3において、リンク作動装置1のある姿勢Aにけおける先端側リンクハブ3の作業平面W上の交点(Xa,Ya)から、折れ角θaおよび旋回角φaで表される先端姿勢を求めるには収束演算が必要となる。
しかし、姿勢Aにおける先端側球面リンク中心を作業平面Wに投影した点(Xa′,Ya′)から折れ角θaおよび旋回角φaで表される先端姿勢を求めるには、次式の関係から、収束演算無しに簡単に求めることができる。この式は、基端側と先端側の各球面リンク中心間の距離(
図5のD)は常に一定であるため成り立つ。
【0054】
次に、
図4に示す先端側リンクハブ3のある姿勢A(以下、「先端姿勢A」と称する)から他の姿勢B(以下、「先端姿勢B」と称する)に変更する場合につき説明する。
先端姿勢A(θa,φa)を取得する処理の流れを
図6と共に説明する。まず、先端姿勢A決定する(ステップS1)。先端姿勢Aの決定については、例えば、作業者により入力装置68(
図2参照)に数値入力が行われ、かつその入力を確定させる操作が行われると、姿勢取得部64aがその入力された座標によって決定する。リンク作動装置50を手動操作で先端姿勢Aに移動させることにより行っても良い。
姿勢取得部64aは、この決定した3次元座標(X,Y,Z)等による先端姿勢Aの情報から、前記作業平面Wへ先端側球面リンク中心PBを投影した点の座標(Xa′,Ya′)を換算して取得する(ステップS2)。
この取得した作業平面W上の点の座標(Xa′,Ya′)から、折れ角θaおよび旋回角φaで表される先端姿勢(θa,φa)を、計算部64bが計算して求める(ステップ3)。
この先端姿勢A(θa,φa)の取得と同様にして、先端姿勢B(θb,φb)の取得が行われる。
【0055】
このように取得された先端姿勢A(θa,φa),先端姿勢B(θb,φb)の情報が姿勢情報付与手段67によって制御装置61に与えられ、制御装置61は、リンク作動装置50の各アクチュエータ51を制御する。
【0056】
図9は、旋回角φ=15°固定で、折れ角θを−60°から60°まで移動したときの各アーム角度位置を示す。
曲線(1)(図では丸囲み数字で示す)は先端位置Aから先端位置Bへの姿勢変更において、位置Aから位置Bまで線形的にPoint-to-Pointでアームを駆動させた場合の各アームの回転角位置の軌跡を示す。
曲線(2)は、先端位置Aから先端位置Bへの姿勢変更において、折れ角θを連続的に変化させたときの各アームの回転角位置の軌跡を示す。
先端位置Aから先端位置Bまで広角に移動する際、中継点を設けない場合には各アーム回転角位置は曲線(1)に示す軌跡を描き、各折れ角と旋回角において各アーム回転角の相対位置が関係式(1)を満たす位置(曲線(2))から大きく外れてしまい、パラレルリンク機構1に過大荷重がかかってしまうことになる。
【0057】
図7は、先端姿勢Aから先端姿勢Bへの姿勢変更途中に、
図8または
図11に示すように途中経路L上に中継点Mを設定する場合の処理の流れを示す。以下に示す中継点の設定は、中継点設定手段66(
図2参照)によって行う。
前述した
図6に示す手順と同様に、先端姿勢Aの決定(ステップS1)、作業平面W上の先端側球面リンク中心位置(Xa′,Ya′)の取得(ステップS2)、折れ角θaおよび旋回角φaで表される先端姿勢A(θa,φa)の計算を行う(ステップS3)。
先端姿勢Aの場合と同様に、先端姿勢Bの決定(ステップS4)、作業平面W上の先端側球面リンク中心位置(Xb′,Yb′)の取得(ステップS5)、折れ角θaおよび旋回角φaで表される先端姿勢B(θa,φa)の計算を行う(ステップS6)。
【0058】
この後、前記作業平面W上における先端姿勢Aと先端姿勢B間の角度γを計算する(ステップS7)。この角度γを分割し、各中継点Mの姿勢(θm,φm)を計算する(ステップS10)。
このように設定された中継点M(θm,φm)の情報は、前記先端姿勢A(θa,φa)および先端姿勢B(θa,φa)の情報と共に、姿勢情報付与手段67によって制御装置61に与えられる。制御装置61は、リンク作動装置50の先端側球面リンク中心が先端姿勢Aが各中継点M(θm,φm)を通り、先端姿勢B(θa,φa)に移動させる(ステップS11)。
【0059】
このように、先端姿勢Aから先端姿勢Bへ移動する際の途中経路に中継点Mを設定する場合、リンク作動装置50の姿勢延長上の範囲にある任意の直交座標(X,Y,Z)ではなく、先端側球面リンク中心を任意の平面である作業平面Wに投射した座標(X′,Y′,Z′)を用いることで収束演算なしに簡単に求めることができる。
また、先端姿勢Aから先端姿勢Bへ姿勢を変更させる際に、途中経路Lを分割して連続的に通過させる場合、上記のように、先端姿勢Aにおける先端側球面リンク中心PBaと基端側球面リンク中心PAa(=PAb)と先端姿勢Bにおける先端側球面リンク中心PBbとでなす角γを等分するように経路を分割することが好ましく、これにより、姿勢変更前後の先端の直交座標を使用した分割に必要な収束演算が不要となる。
【0060】
図10は、先端姿勢Aから先端姿勢Bへの移動量が所定量を超える場合のみ中継点Mを設定する場合の処理を示す。同図において、
図7と同じ処理を行うステップは、
図7と同じステップ番号を付してある。
図7の例と同様に、先端姿勢Aと先端姿勢B間の角度γの計算(ステップS7)を行った後、移動量が所定量以下であるか否かを判定する(ステップS8)。前記移動量は、例えば、角度γで定めてもよい。また、前記移動量は、先端姿勢Aおよび先端姿勢Bにおいて、それぞれの先端側球面リンク中心を、任意の平面である作業平面Wに投射した座標(X′,Y′,Z′)を用いて定めてもよい。移動量が所定量以下である場合は、中継点Mを設定せず、中継点Mを経由せずに先端姿勢Aと先端姿勢Bへ移動させる(ステップS9)。
【0061】
ステップS8の判定において、移動量が所定量を超える場合は、前記と同様に、角度γを分割し、各中継点Mの姿勢(θm,φm)を計算する(ステップS10)。この後、前記と同様に先端姿勢Aから各中継点M(θm,φm)を通り、先端姿勢Bへ移動させる(ステップS11)。
【0062】
前記関係式(1) は、次に示す式である。
cos (θ/2)sin βn−sin (θ/2)sin (φ+δn)cos βn+sin (ε/2)=0
;(n=1,2,3)
ここで、εは、基端側の端部リンク部材5に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸と、先端側の端部リンク部材6に回転自在に連結された中央リンク部材7の連結端軸とが成す角度である。δnは、基準となる基端側の端部リンク部材5に対する各基端側の端部リンク部材5の円周方向の離間角である。
【0063】
なお、前記各実施形態では、中継点設定手段66は角度で分割するようにしたが、前記中継点設定手段66は、例えば
図11に示すように、前記先端側球面リンク中心PBの通過する途中経路Lを距離で等分する構成であっても良い。
【0064】
先端姿勢Aから先端姿勢Bへ広角に姿勢変更させる場合、途中経路Lの各アーム回転角の相対位置が関係式を満たす位置から大きく外れるとパラレルリンク機構1に過大荷重がかかってしまう。そのために途中経路に関係式を満たす中継点Mを設け、その中継点Mから大きく外れることなく位置決め制御させることで、パラレルリンク機構1に過大荷重をかけず、かつ高速移動が可能となる。その際の中継点Mの姿勢を求める際に、先端側球面リンク中心の前記投影座標を用いることで簡単に求めることができる。
【0065】
上記のように先端姿勢Aから先端姿勢Bへ姿勢変更する場合に、姿勢が指定される各点(先端姿勢A、先端姿勢B、中継点M)の間の移動経路は、補間手段69(
図2参照)によって補間を行うようにすることが好ましい。この補間は、例えば直線補間、または円弧補間とする。補間手段69は、例えば、
図2における制御装置61に設けられてリンク作動装置50を先端姿勢A、先端姿勢B、中継点Mの情報に従って動作させる時に補間の処理を行うようにされ、その場合、請求項で言う「操作装置」は、補間手段69を含む構成を意味する。この他に、補間手段69は、操作装置62に設けられて補間する途中経路L上の各位置の座標(θ,φ)を求め、その求められた座標(θ,φ)を姿勢情報付与手段67から制御装置61に与えるようにしても良い。
【0066】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。