(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6275231
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】天然コルクフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 7/00 20060101AFI20180129BHJP
B32B 21/10 20060101ALI20180129BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20180129BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20180129BHJP
B27J 5/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
B27K7/00
B32B21/10
B32B27/12
B27M3/00 N
B27J5/00
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-226934(P2016-226934)
(22)【出願日】2016年11月22日
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0133801
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516351957
【氏名又は名称】ソヨン イー−ファ カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOYON E−HWA CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソ ワン
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−224338(JP,A)
【文献】
特開2000−326312(JP,A)
【文献】
特開2002−021305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 7/00
B27J 5/00
B27M 3/00
B32B 21/10
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用意された天然コルク材料をスライシングして薄膜のコルク層を形成するコルク層形成ステップと、
前記コルク層形成ステップで形成されたコルク層の一面に繊維シートを付着させて繊維層を形成する繊維層形成ステップと、
前記コルク層の変色防止のために、前記繊維層形成ステップで形成された前記コルク層と前記繊維層との積層体を前処理する前処理ステップと、
前記前処理ステップを経た前記繊維層に樹脂シートを付着させて樹脂層を形成する樹脂層形成ステップとを含み、
前記前処理ステップは、
脱色剤を用いて前記積層体の前記コルク層を脱色する脱色ステップを含むことを特徴とする天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記コルク層形成ステップにおいて、
前記コルク層の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項3】
コルク層形成ステップは、
天然コルクの木から採取されたコルクを縦方向または横方向に剥離して前記天然コルク材料を用意することを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項4】
コルク層形成ステップは、
天然コルクの木から採取されたコルクを粉砕してコルクチップを形成した後、前記コルクチップとバインダーとを混合圧着して前記天然コルク材料を用意することを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項5】
繊維層形成ステップにおいて、
前記繊維層は、前記繊維シートを接着剤で付着させるか、熱圧着方式で付着させて形成されることを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記脱色剤は、
過酸化水素希釈液、またはアンモニアが添加された過酸化水素希釈液であることを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記前処理ステップは、
前記脱色ステップで脱色した前記積層体を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄ステップで洗浄された前記積層体を乾燥する乾燥ステップとをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項8】
樹脂層形成ステップにおいて、
前記樹脂層は、前記樹脂シートを接着剤で付着させて形成されることを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項9】
樹脂層形成ステップにおいて、
前記樹脂層は、前記樹脂シートを熱圧着方式で付着させて形成されることを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記熱圧着方式は、
ロールプレス方式で行われるが、
摂氏150度以上250度以下の温度条件、0.1MPa以上5MPa以下の圧力条件、および0.5m/min以上2m/min以下の移動速度の条件下で行われることを特徴とする請求項9に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記繊維層形成ステップを行った後、前記前処理ステップを行う前に、前記繊維層形成ステップを経た前記コルク層の他面をサンディング処理する第1サンディングステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記前処理ステップを行った後、前記コルク層の他面をサンディング処理する第2サンディングステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項13】
第2サンディングステップは、
前記コルク層の厚さが0.05mm以上0.5mm以下の範囲となるように行われることを特徴とする請求項12に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記前処理ステップを行った後、カラー樹脂または透明樹脂を接着剤や熱圧着で付着させるか、カラー塗料または透明塗料を塗装してコーティング層を形成するコーティング層形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の天然コルクフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然コルクフィルムの製造方法に関し、より詳細には、製造されたコルクフィルムが光によって自然変色することを防止させる天然コルクフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、ドアトリム(door trim)、インストルメントパネル(instrument panel)のガーニッシュ(garnish)、スイッチカバー(switch cover)などの自動車内装材の表面処理方法として、ペイント塗装、金属めっき、水圧転写などが存在していた。
【0003】
しかし、このような表面処理方法のうち、ペイント塗装、金属めっき、および水圧転写などは、製作工程で環境汚染を発生させ、製品完成後にも有機化合物が持続的に発生することにより、車両室内VOC(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)の規制によってその立場が狭くなっている傾向である。
【0004】
したがって、最近、環境保護と連携して環境に優しい素材またはその加工法への関心が高まっており、天然素材フィルムインサート成形、天然素材直接成形などの方法が研究されている。
【0005】
この場合、天然素材直接成形は、工程が複雑で、価格が高価格であって、極めて一部の高級車両にのみ適用されているのが現状である。
【0006】
したがって、環境に優しく、かつ審美感および高級感を付与できる表面処理方法として、フィルムインサート成形工法に関する研究が活発に進められた。
【0007】
しかし、フィルムインサート成形工法に利用可能な天然素材固有の特性である低い引張強度と屈曲強度などによって壊れや割れなどの現象が持続的に発生し、その適用に限界があった。
【0008】
このような問題点を改善すべく、大韓民国登録特許公報KR10−1274750B1(特許文献1)、大韓民国登録特許公報KR10−1274752B1(特許文献2)および大韓民国公開特許公報KR10−2015−0072553A(特許文献3)に開示されたように、弾性と柔軟性に優れた天然コルクをフィルム化して使用しようとする研究が持続的に進められてきた。
【0009】
しかし、特許文献1〜特許文献3を含む従来の天然コルクフィルムの製造方法は、製造されたコルクフィルムが、コルクに含有されている木材固有の変色誘発成分であるリグニン(lignin)のため、一定時間経過後に光によって自然変色する問題点があった。
【0010】
また、従来の天然コルクフィルムの製造方法は、変色防止のためにコルク層の脱色過程を経る場合、コルク層を単独で脱色したため、脱色剤の含浸および撹拌作業によってコルク層が壊れたりシワが形成される問題点があった。
【0011】
同時に、従来の天然コルクフィルムの製造方法は、熱圧着方式で樹脂層を積層形成する時、適正な熱伝達超過時にコルク層の表面が炭化したり、適正な熱伝達が不十分な時に樹脂層が剥離される問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報KR10−1274750B1
【特許文献2】大韓民国登録特許公報KR10−1274752B1
【特許文献3】大韓民国公開特許公報KR10−2015−0072553A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した問題点を解消するにあたり、本発明の目的は、前処理ステップによりコルクに含有されている木材固有の変色誘発成分であるリグニン(lignin)を除去することにより、製造されたコルクフィルムが光によって自然変色することを防止させる天然コルクフィルムの製造方法を提供することである。
【0014】
また、前処理ステップにおいて、コルク層に繊維層を付着させた後、その積層体を脱色することにより、コルク層単独で脱色する場合に発生する壊れ現象またはシワ形成現象を著しく低減させる天然コルクフィルムの製造方法を提供することである。
【0015】
同時に、適正な条件下の熱圧着方式により樹脂層を効果的に積層形成可能にする天然コルクフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、用意された天然コルク材料をスライシングして薄膜のコルク層を形成するコルク層形成ステップと、コルク層形成ステップで形成されたコルク層の一面に繊維シートを付着させて繊維層を形成する繊維層形成ステップと、コルク層の変色防止のために、繊維層形成ステップで形成されたコルク層と繊維層との積層体を前処理する前処理ステップと、前処理ステップを経た繊維層に樹脂シートを付着させて樹脂層を形成する樹脂層形成ステップとを含んで構成される。
【0017】
この場合、コルク層形成ステップにおいて、コルク層の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0018】
一方、コルク層形成ステップは、天然コルクの木から採取されたコルクを縦方向または横方向に剥離して天然コルク材料を用意するように構成される。
【0019】
同時に、コルク層形成ステップは、天然コルクの木から採取されたコルクを粉砕してコルクチップを形成した後、コルクチップとバインダーとを混合圧着して天然コルク材料を用意するように構成される。
【0020】
一方、繊維層形成ステップにおいて、繊維層は、繊維シートを接着剤で付着させるか、熱圧着方式で付着させて形成されることが好ましい。
【0021】
一方、前処理ステップは、脱色剤を用いて積層体のコルク層を脱色する脱色ステップを含んで構成される。
【0022】
この場合、脱色剤は、過酸化水素希釈液、またはアンモニアが添加された過酸化水素希釈液であることが好ましい。
【0023】
一方、前処理ステップは、脱色ステップで脱色した積層体を洗浄する洗浄ステップと、洗浄ステップで洗浄された積層体を乾燥する乾燥ステップとをさらに含んで構成される。
【0024】
一方、樹脂層形成ステップにおいて、樹脂層は、樹脂シートを接着剤で付着させて形成されることが好ましい。
【0025】
また、樹脂層形成ステップにおいて、樹脂層は、樹脂シートを熱圧着方式で付着させるように構成される。
【0026】
この時、熱圧着方式は、ロールプレス方式で行われるが、摂氏150度以上250度以下の温度条件、0.1MPa以上5MPa以下の圧力条件、および0.5m/min以上2m/min以下の移動速度の条件下で行われることが好ましい。
【0027】
一方、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、繊維層形成ステップを行った後、前処理ステップを行う前に、繊維層形成ステップを経たコルク層の他面をサンディング処理する第1サンディングステップをさらに含んで構成される。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、前処理ステップを行った後、コルク層の他面をサンディング処理する第2サンディングステップをさらに含んで構成される。
【0029】
この時、第2サンディングステップは、コルク層の厚さが0.05mm以上0.5mm以下の範囲となるように行われることが好ましい。
【0030】
一方、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、前処理ステップを行った後、カラー樹脂または透明樹脂を接着剤や熱圧着で付着させるか、カラー塗料または透明塗料を塗装してコーティング層を形成するコーティング層形成ステップをさらに含んで構成される。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、本発明に係る天然コルクフィルムの製造方法は、前処理ステップによりコルクに含有されている木材固有の変色誘発成分であるリグニン(lignin)を除去することにより、製造されたコルクフィルムが光によって自然変色することを防止させる。
【0032】
また、本発明に係る天然コルクフィルムの製造方法は、前処理ステップにおいて、コルク層に繊維層を付着させた後、その積層体を脱色することにより、コルク層単独で脱色する場合に発生する壊れ現象またはシワ形成現象を著しく低減させる。
【0033】
同時に、本発明に係る天然コルクフィルムの製造方法は、適正な条件下の熱圧着方式により樹脂層を効果的に積層形成可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】
図1に示された前処理ステップが具体化された一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図2に示された天然コルクフィルムの製造方法がより具体化された一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法により製造されたコルクフィルムの一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明において、添付した図面は、従来技術との差別性および明瞭性、そして技術把握の便宜のために誇張された表現で示されていることがある。また、後述する用語は本発明における機能を考慮して定義された用語であって、使用者、運用者の意図または慣例によって異なり得るので、これらの用語に対する定義は、本明細書全般にわたる技術的内容に基づいて行われなければならない。一方、実施形態は、本発明の請求の範囲に提示された構成要素の例示的事項に過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではなく、権利範囲は本発明の明細書全般にわたる技術的思想に基づいて解釈されなければならない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法を説明するためのフローチャートであり、
図2は、
図1に示された前処理ステップが具体化された一例を説明するためのフローチャートであり、
図3は、
図2に示された天然コルクフィルムの製造方法がより具体化された一例を説明するためのフローチャートであり、
図4は、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法により製造されたコルクフィルムの一例を説明するための断面図である。
【0037】
図1〜
図4を参照すれば、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、コルク層形成ステップS10と、繊維層形成ステップS20と、前処理ステップS30と、樹脂層形成ステップS40とを含んで構成される。
【0038】
この場合、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法は、コーティング層形成ステップS50、第1サンディングステップS60、および第2サンディングステップS70の少なくともいずれか1つ以上のステップをさらに含んで構成される。
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法を、
図4に示された本発明の実施形態に係る天然コルクフィルムの製造方法により製造されたコルクフィルム10の一例に基づいて説明する。
【0040】
コルク層形成ステップS10は、用意された天然コルク材料をスライシングして薄膜のコルク層11を形成するステップである。
【0041】
この場合、コルク層形成ステップで形成された板状の薄膜コルク層11の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。これは、コルク層11の厚さが0.1mm未満の場合には、物性が大きく低下して後のステップを経るための耐磨耗性が現れず、1.0mm超過の場合には、後述する前処理ステップS30で脱色剤の含浸が難しくなって脱色効果が低下するからである。
【0042】
一方、天然コルク材料は、天然素材で肥大生長をする植物の茎や根の周辺部に作られる保護組織であって、コルク形成層の分裂によって生じるため、規則的な細胞配列を示し、断熱、防音、電気的絶縁、弾力性などに優れた性質を持っている。コルク形成層を含む植物の総体をコルクの木と定義する。
【0043】
コルク層形成ステップS10は、このような天然コルクの木から採取されたコルクを縦方向または横方向に剥離して天然コルク材料を用意した後、スライシングして行われる。
【0044】
代案的に、コルク層形成ステップS10は、天然コルクの木から採取されたコルクを粉砕してコルクチップを形成した後、コルクチップとバインダーとを混合圧着して天然コルク材料を用意するように構成される。以後、コルク層形成ステップS10は、当該天然コルク材料をスライシングして行われる。
【0045】
繊維層形成ステップS20は、コルク層形成ステップS10で形成されたコルク層11の一面に繊維シートを付着させて繊維層13を形成するステップである。
【0046】
この場合、繊維層形成ステップS20において、繊維層13は、繊維シートを接着剤で付着させるか、熱圧着方式で付着させることが好ましい。すなわち、繊維層13は、第1接着層12を介してコルク層11に付着する。
【0047】
以下、繊維層13、第1接着層12、およびコルク層11から形成された層状構造体は、積層体と定義して記述する。
【0048】
一方、繊維層形成ステップS20は、熱圧着方式の一つとして、既に公知の複数のロールプレス装備を用いてロールプレス方式で行われる。
【0049】
繊維層13は、コルク層11に一定強度を付与するための手段であって、その材質と形状は制限がないが、好ましくは、ナイロン、アクリル、綿、ポリウレタンなどの繊維または不織布で構成することができる。
【0050】
繊維層13の厚さは、後のコルクフィルム10の成形性を考慮して、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0051】
一方、接着層12は、価格対比効率性の面で、TPU(Thermoplastic Poly Urethane)フィルムを用いるが、特に限定しない。すなわち、ホットメルトフィルムと呼ばれるPE、PP、TPU、EVA、PES、PAなどの汎用樹脂フィルムを使用することができ、常温でも接着力を示す一般の接着フィルムを使用してもよい。同時に、強力な熱安定性と付着性が必要な場合には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂も使用できることはもちろんである。
【0052】
接着層12の厚さは、後のコルクフィルム10の成形性を考慮して、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0053】
第1サンディングステップS60は、繊維層形成ステップS20を行った後、前処理ステップS30を行う前に、繊維層形成ステップS20を経たコルク層11の他面をサンディング処理するステップである。
【0054】
この場合、コルク層11の他面を研磨するサンディング処理を行う理由は、コルク層11の他面の表面均一度を向上させることにより、後述する前処理ステップS30における脱色ステップS31での脱色剤の含浸が効果的に行われるようにし、洗浄ステップS32および乾燥ステップS33の効率的な完成を図るようにするためである。
【0055】
前処理ステップS30は、コルク層11の変色防止のために、繊維層形成ステップS20で形成されたコルク層11と繊維層13との積層体を前処理するステップである。
【0056】
詳述すれば、前処理ステップS30は、繊維層13、第1接着層12、およびコルク層11から形成された積層体を脱色するステップで、第1サンディングステップS60がさらに行われた場合には、コルク層11の他面がサンディング処理された積層体を脱色する。
【0057】
この場合、前処理ステップS30は、脱色剤を用いて積層体11、12、13のコルク層11を脱色する脱色ステップS31を含んで構成される。この時、脱色ステップS31は、製作された積層体11、12、13を一定容積の容器に入れて脱色剤を仕込んだ後、撹拌させて行われる。
【0058】
脱色剤は、コルクフィルム10を意図する色に脱色できるものであれば、本発明に制限なく適用可能であるが、コルクフィルム10の生産性および製造原価を考慮して、過酸化水素希釈液、またはアンモニアが添加された過酸化水素希釈液であることが好ましい。
【0059】
脱色剤として、純水と過酸化水素とを混合した過酸化水素希釈液を使用する場合、過酸化水素は、希釈液の総重量に対して20重量%以上50重量%以下で含まれることが好ましい。これは、過酸化水素の重量%が20重量%未満の場合には、意図する脱色効果を達成できないからであり、50重量%超過の場合には、過度な脱色およびコルク層11の損傷がもたらされるからである。
【0060】
一方、脱色剤として、純水と過酸化水素との混合液にアンモニアを添加した過酸化水素希釈液を使用する場合、アンモニアと過酸化水素との重量比が1:20〜1:5であることが好ましい。これは、アンモニアが過酸化水素の脱色反応速度を効果的に速くするための最小必要量と、アンモニア自体の毒性によるコルク層11の損傷がコルクフィルム10の製品性に影響を及ぼす限界必要量を考慮したものである。
【0061】
したがって、脱色ステップS31は、コルク層11を脱色剤を用いて人為的に脱色する過程を行うことにより、コルクフィルム10が事後的に光により自然変色することを防止させる。
【0062】
同時に、脱色ステップS31は、既存の方式とは異なり、積層体11、12、13を脱色することにより、コルク層11単独で脱色する場合に発生する壊れまたはシワ発生を著しく低減させる。
【0063】
一方、前処理ステップS30は、脱色ステップS31で脱色した積層体11、12、13を洗浄する洗浄ステップS32と、洗浄ステップS32で洗浄された積層体11、12、13を乾燥する乾燥ステップS33とをさらに含んで構成される。
【0064】
洗浄ステップS32は、特に、コルク層11に含浸された脱色剤を除去するための過程であり、一定容器に入った純水に、脱色剤により脱色した積層体11、12、13を特定時間浸漬して撹拌する過程を1回〜5回程度行ってなる。
【0065】
この時、追加的に脱色剤を中和させるために、洗浄ステップS32の間、または洗浄ステップS32の進行前に、脱色剤を中和させられる一定の中和剤がコルク層11に適用されてもよい。
【0066】
乾燥ステップS33は、洗浄された積層体11、12、13に対して、後のステップを進行できるように、特にコルク層11に含まれた水分を除去するステップである。
【0067】
この時、乾燥ステップS33は、コルク層11の破壊を防止し、製造時間節減のために、乾燥温度は、特定の温度範囲、好ましくは、摂氏10度以上50度以下に制限され、乾燥時間は、特定の時間範囲、好ましくは、1時間以上100時間以下に制限される。乾燥温度の範囲を摂氏10度以上50度以下に限定する理由は、乾燥温度が摂氏10度未満であれば、乾燥時間が長くなって効率性が低下し、乾燥温度が摂氏50度超過で上昇すれば、コルク層11の急激な乾燥によって表面にシワが生じるなど表面品質が低下するからである。
【0068】
一方、図示しないものの、脱色したコルク層11を天然コルクの色または意図した色に染料を用いて着色する過程が追加的に行われてもよい。
【0069】
第2サンディングステップS70は、前処理ステップS30を行った後、コルク層11の他面をサンディング処理するステップである。
【0070】
この場合、コルク層11の他面を研磨するサンディング処理を行う理由は、前処理ステップS30で脱色剤の脱色作用によって不規則になったコルク層11の他面の表面均一度を向上させることにより、コルクフィルム10の製品完全性を図るようになり、後述するコーティング層形成ステップS50でコーティング層17の形成が効果的に行われるようにするためである。
【0071】
第2サンディングステップS70は、後述する樹脂層形成ステップS40の後には、熱圧着工程などによりコルク層11の厚さが著しく減少してその厚さの測定が難しいだけでなく、サンディング処理工程も難しくなるので、前処理ステップS30を行った後、樹脂層形成ステップS40の前に行われることが好ましい。
【0072】
この時、第2サンディングステップS70は、コルク層11の厚さが0.05mm以上0.5mm以下の範囲となるように行われることが好ましい。これは、コルク層11の厚さが0.05mm未満の場合には、物性が大きく低下してコルクフィルム10のクッション感またはコルク層11自体の耐摩耗性が導出されず、0.5mm超過の場合には、コルクフィルム10の成形性が低下し、コーティング層17の形成時、接着工程などの効率性が低減されるからである。
【0073】
樹脂層形成ステップS40は、前処理ステップS30を経た繊維層13に樹脂シートを付着させて樹脂層15を形成するステップである。
【0074】
詳述すれば、樹脂層形成ステップS40は、樹脂層15を第2接着層14を介して繊維層13に付着形成するステップで、第2サンディングステップS70がさらに行われた場合には、コルク層11の他面がサンディング処理された状態で行われる。
【0075】
樹脂シートは、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂で構成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂などで構成される。また、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂で構成されてもよい。
【0076】
この時、樹脂シートの厚さは、0.1mm以上1mm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。これは、樹脂シートの厚さが0.1mm未満の場合、屈曲強度と硬度が非常に弱くて製品の形状を取るのに困難があり、1mm以上の場合、コルクフィルム10の成形性が低下するからである。
【0077】
一方、接着層14は、価格対比効率性の面で、TPU(Thermoplastic Poly Urethane)フィルムを用いるが、特に限定しない。すなわち、ホットメルトフィルムと呼ばれるPE、PP、TPU、EVA、PES、PAなどの汎用樹脂フィルムを使用することができ、常温でも接着力を示す一般の接着フィルムを使用してもよい。同時に、強力な熱安定性と付着性が必要な場合には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂も使用できることはもちろんである。
【0078】
接着層14の厚さは、後のコルクフィルム10の成形性を考慮して、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0079】
一方、樹脂層形成ステップS40において、樹脂層15は、樹脂シートを接着剤で付着させて形成されることが好ましい。
【0080】
また、樹脂層形成ステップS40において、樹脂層15は、樹脂シートを熱圧着方式で付着させて形成されることが好ましい。
【0081】
この場合、樹脂層形成ステップS40は、熱圧着方式の一つとして、既に公知の複数のロールプレス装備を用いてロールプレス方式で行われる。
【0082】
この時、熱圧着方式は、ロールプレス方式で行われるが、好ましくは、摂氏150度以上250度以下の温度条件、0.1MPa以上5MPa以下の圧力条件、および0.5m/min以上2m/min以下の移動速度の条件下で行われることが好ましい。
【0083】
この条件は、コルク層11の炭化防止、第2接着層14の接着力増大、繊維層13および樹脂層15の損傷防止を考慮して実験的に導出したロールプレスの実行条件であって、コルクフィルム10の完全性および製品性を向上させる条件であることを実験的に確認することができた。
【0084】
詳述すれば、温度条件を150度以上250度以下の範囲に限定する理由は、作業温度が150度未満の場合、接着層14として主に使用する素材であるTPUフィルムの溶融温度を考慮する時、意図する繊維層13と樹脂層15との間の接着力が形成されず、作業温度が250度超過の場合、コルク層11の表面が黒く炭化して商品性が低下する問題が発生するからである。
【0085】
また、圧力条件を0.1MPa以上5MPa以下の範囲に限定する理由は、作業圧力が0.1MPa未満の場合、作業時に高温で溶融された接着層14が繊維層13と樹脂層15との界面の間を十分に浸透せず意図する接着力が形成されず、作業圧力が5MPa超過の場合、過度な圧力でコルク層11の表面損傷がもたらされる問題が発生するからである。
【0086】
さらに、ロールプルレスによる移動速度の条件を0.5m/min以上2m/min以下の範囲に限定する理由は、移動速度が0.5m/min未満の場合、高温の作業温度の環境下で滞留時間が長くなってコルク層11の表面が黒く炭化し、2m/min超過の場合、接着層14として使用するTPUフィルムへの熱伝達が難しくなって、意図する接着力が形成されない問題が発生するからである。
【0087】
一方、このようなロールプレス方式の実行条件以外にも、熱圧着作業後、加熱されていた中間積層構造物11、12、13、14、15を冷却させる区間がある特殊ロールプレス(ダブルベルトロールプレス)を用いることで、コルク層11の表面品質にさらに完全を期することもできる。
【0088】
コーティング層形成ステップS50は、前処理ステップS30を行った後、カラー樹脂または透明樹脂を接着剤や熱圧着で付着させるか、カラー塗料または透明塗料を塗装してコーティング層17を形成するステップである。
【0089】
詳述すれば、コーティング層形成ステップS50は、コーティング層17を第3接着層16を介してコルク層11の他面に付着形成するステップで、第2サンディングステップS70によりその他面がサンディング処理され、高温高圧下の樹脂層形成ステップS40がさらに行われた後に行われることが、コーティング層17の完全性に有利である。
【0090】
コーティング層17は、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂などのような熱可塑性および熱硬化性樹脂で構成される。特に、コーティング層17は、このような材質で薄膜のカラー樹脂または透明樹脂を形成して接着剤や熱圧着方式で付着させることにより、コルク層11、接着層16と共に層状構造に形成される。さらに、コーティング層17は、同一の材質を有する液状の樹脂をコルク層11の表面に塗布および硬化させて形成される。
【0091】
一方、接着層16は、価格対比効率性の面で、TPU(Thermoplastic Poly Urethane)フィルムを用いるが、特に限定しない。すなわち、ホットメルトフィルムと呼ばれるPE、PP、TPU、EVA、PES、PAなどの汎用樹脂フィルムを使用することができ、常温でも接着力を示す一般の接着フィルムを使用してもよい。同時に、強力な熱安定性と付着性が必要な場合には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂も使用できることはもちろんである。
【0092】
接着層16の厚さは、後のコルクフィルム10の成形性を考慮して、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0093】
一方、コーティング層形成ステップS50は、樹脂層形成ステップS40まで完了した半製品状態の積層構造物11、12、13、14、15をインサート成形により自動車内蔵部品化した後、塗料塗布、乾燥など一定のコーティング工程で行われてもよいことはもちろんである。
【0094】
また、コーティング層形成ステップS50は、コルク層11の他面に所望の色を着せるためのカラー層を塗布した後、乾燥し、再びカラー層に表面物性補強のための透明クリア層を塗布した後、乾燥するなどの過程で行われてもよいことはもちろんである。
【0095】
以上、本発明に係る天然コルクフィルムの製造方法は、前処理ステップによりリグニンを除去して、コルクフィルムの光による自然変色を防止させ、特に、コルク層に繊維層を付着させた後、その積層体を脱色して、コルク層単独で脱色する場合に発生する壊れ現象またはシワ形成現象を著しく低減させる。
【0096】
上述のように、本発明は、図面に示された実施形態を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術の属する分野における通常の知識に基づいて多様な変形および均等な他の実施形態が可能であることを理解しなければならない。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は以下に記述する特許請求の範囲により、上述した発明の具体的な内容に基づいて定められなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、天然コルクフィルムの製造方法に関し、自動車内蔵部品の表面処理に関連する産業分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
S10:コルク層形成ステップ
S20:繊維層形成ステップ
S30:前処理ステップ
S31:脱色ステップ
S32:洗浄ステップ
S33:乾燥ステップ
S40:樹脂層形成ステップ
S50:コーティング層形成ステップ
S60:第1サンディングステップ
S70:第2サンディングステップ
10:天然コルクフィルム
11:コルク層
12:第1接着層
13:繊維層
14:第2接着層
15:樹脂層
16:第3接着層
17:コーティング層
【要約】
【課題】 本発明は、天然コルクフィルムの製造方法に関する。
【解決手段】 用意された天然コルク材料をスライシングして薄膜のコルク層を形成するコルク層形成ステップと、コルク層形成ステップで形成されたコルク層の一面に繊維シートを付着させて繊維層を形成する繊維層形成ステップと、コルク層の変色防止のために、繊維層形成ステップで形成されたコルク層と繊維層との積層体を前処理する前処理ステップと、前処理ステップを経た繊維層に樹脂シートを付着させて樹脂層を形成する樹脂層形成ステップとを含んで構成され、製造されたコルクフィルムが光によって自然変色することを防止させ、コルク層を単独で脱色する場合に発生する壊れ現象またはシワ形成現象を著しく低減させる。
【選択図】
図1