特許第6275246号(P6275246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275246誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275246
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20180129BHJP
   H05B 6/14 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G01K7/00 381L
   H05B6/14
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-512306(P2016-512306)
(86)(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公表番号】特表2016-524698(P2016-524698A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014059010
(87)【国際公開番号】WO2014180750
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】102013008068.1
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ツェンツェン
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−097162(JP,A)
【文献】 特表平5−500433(JP,A)
【文献】 特開昭57−195056(JP,A)
【文献】 特開2002−189380(JP,A)
【文献】 特開平9−258586(JP,A)
【文献】 米国特許第3686460(US,A)
【文献】 特表2008−517164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法であって、
少なくとも1つの誘導コイルにより前記ローラ外套部に電流を誘導し、
前記誘導コイルの電流回路の少なくとも1つのパラメータを測定し、
前記電流回路の測定されたパラメータと記憶されているデータとから、前記表面温度の実際値を求める、方法において、
前記電流回路の前記誘導コイルをコンデンサに接続して振動回路を形成し、
前記振動回路を3000Hzから30000Hzまでの範囲の交流電圧周波数で駆動する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記パラメータとして、前記誘導コイルのインダクタンスを、前記振動回路の動作フェーズ又は前記振動回路の静止フェーズにおいて測定する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータとして、前記振動回路の電流及び電圧を、前記振動回路の動作フェーズにおいて測定する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記振動回路の前記電流及び前記電圧を、前記振動回路の立ち上がり時間の経過後に測定し、
前記電流の実効値及び前記電圧の実効値を測定フェーズ中に求める、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記誘導コイルを、前記ローラ外套部を加熱するヒータコイルとして用いる、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記表面温度の実際値を、前記ヒータコイルを制御するために用いる、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
誘導加熱されるローラ外套部(6)の表面温度を求める装置であって、
電圧源(4)とともに電流回路(2)を形成し、前記ローラ外套部(6)に電流を誘導する少なくとも1つの誘導コイル(1)と、
前記電流回路(2)のパラメータを検出する測定装置(9)と、
前記電流回路(2)の測定されたパラメータと記憶されたデータとから、前記表面温度の実際値を求める評価装置(10)と
を備えた、装置において、
前記電流回路(2)の前記誘導コイル(1)がコンデンサ(3)に接続されて振動回路(5)を形成しており、
前記電圧源(4)が、前記電流回路への給電のために、3000Hzから30000Hzまでの範囲の周波数を有する交流電圧を形成する電圧モジュール(4.1)を含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記測定装置(9)は、前記誘導コイルのインダクタンスを測定する測定手段(9.1)を含む、
請求項7記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定装置(9)は、前記振動回路(5)に配属された、電流を測定する電流測定回路(12)と、電圧を測定する電圧測定回路(13)とを含む、
請求項7記載の測定装置。
【請求項10】
前記電圧モジュール(4.1)は、前記振動回路(5)を活性化及び不活性化するために、制御回路(21)に接続されている、
請求項7から9までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項11】
前記誘導コイル(1)は、ゴデット(23)の前記ローラ外套部(6)に対して小さな間隔を置いてコイルホルダ(15)に支承されるヒータコイル(18)として構成されている、
請求項7から10までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項12】
制御装置(21)が前記評価装置(10)に接続されており、
前記ローラ外套部(6)の表面温度の実際値と目標値との比較を行う比較器が設けられている、
請求項11記載の測定装置。
【請求項13】
前記誘導コイル(1)は、10個から50個までの範囲の複数の巻線(7)を含む、
請求項7から12までのいずれか1項記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念記載の誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法、及び、請求項7の上位概念記載の誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める測定装置に関する。
【0002】
上記方法及び装置は、欧州特許出願公開第0892585号明細書から公知である。
【0003】
繊維乃至糸を製造する場合、糸ガイド、及び、特に糸の熱処理のために、加熱されるローラ外套部を有するローラ又はゴデットを使用し、ローラ外套部の表面で繊維乃至糸をガイドすることが広く知られている。こうした製造プロセスでは、繊維乃至糸において所望の物理特性を達成するために、ローラ外套部で予め定められた表面温度を遵守することが特に重要である。また、この点に関して、ローラ外套部の表面温度を監視することも公知である。この場合の監視は、好ましくは温度センサによって行われる。表面温度を求めるためのこうした方法及び装置は、基本的に、回転するローラ外套部と定置の装置との間で信号伝送を行わなければならないという欠点を有している。したがって、こうした方法及び装置は本発明の対象とはならない。
【0004】
欧州特許出願公開第0892585号明細書からは、誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法及び装置であって、センサを用いずに表面温度を求めるものが公知である。このために、ローラ外套部に短絡電流を誘導する誘導コイルが用いられる。金属材料から形成されているローラ外套部は温度依存性の導電率を有するので、コイルの電流及び電圧の測定値からローラ外套部の対応する温度を求めることができる。
【0005】
ただし、公知の方法及び装置では、誘導コイルが電源電圧によって駆動される。この場合、誘導コイルは全ての方向に伝搬する磁界を形成する。この点に関して、ローラ外套部の周辺領域、特にローラ支持体、端面壁もしくは駆動軸などの部材においても同様に、周辺に誘導される電流から加熱が生じる。また、隣接する装置の温度もコイル巻線内の電流及び電圧に影響する。こうした副次効果のために、ローラ外套部の表面温度は低い精度でしか求められない。
【0006】
本発明の課題は、冒頭に言及した形式の誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法及び測定装置を提供して、ローラ外套部の表面温度を無接触でできる限り高精度に求められるようにすることである。
【0007】
上記課題は、本発明の方法にしたがって、電流回路の誘導コイルをコンデンサに接続して振動回路を形成し、この振動回路を3000Hzから30000Hzまでの範囲の交流電圧周波数で駆動することにより、解決される。
【0008】
また、上記課題は、本発明の測定装置によって、電流回路の誘導コイルがコンデンサに接続されて振動回路を形成しており、電圧源が、電流回路への給電のために、3000Hzから30000Hzまでの範囲の周波数を有する交流電圧を形成する電圧モジュールを含むことにより、解決される。
【0009】
本発明の有利な実施形態は、各従属請求項の特徴乃至その組み合わせによって得られる。
【0010】
本発明は、振動回路に接続された誘導コイルによってローラ外套部に集中する磁界を形成することを特徴とする。振動回路の3000Hzから30000Hzまでの範囲の交流電圧周波数により、磁界の磁束が、直接に、誘導コイルを包囲するローラ外套部の外套領域に集中する。よって、周囲領域の加熱が回避される。この点において、誘導コイルで測定可能なパラメータは、ローラ外套部の外套領域の温度の影響のみを受ける。このため、ローラ外套部の表面温度を、高い精度で、振動回路の温度依存性のパラメータの特徴的な測定値から求める手段が得られる。
【0011】
ローラ外套部を加熱すると、ローラ外套部の導電率が変化する。温度が上昇すると、ローラ外套部の導電率は低下する。このため、ローラ外套部の実効抵抗が高まる。このため、基本的には、ローラ外套部の導電率と実効抵抗の影響を受ける誘導コイルの磁気パラメータ及び電気パラメータを使用できる。したがって、本発明の有利な実施形態によれば、パラメータとして、振動回路の動作フェーズ又は振動回路の静止フェーズにおける誘導コイルのインダクタンスが測定される。実効抵抗及び導電率に依存する浸入深度は、磁気回路のインダクタンスに決定的な影響を与えるので、インダクタンスの測定値から直接にそれぞれの表面温度の推定値を導出することができる。インダクタンスの測定は、振動回路の動作フェーズ又は静止フェーズ中に行うことができる。振動回路の動作フェーズは電圧源が活性化(作動)されている状態である。これに対して、振動回路の静止フェーズでは、電圧源が不活性化(遮断)されている。これらの状態に応じて、誘導コイルのインダクタンスを測定する相応の測定手段を選択可能である。
【0012】
基本的には、電流回路のパラメータ及び記憶されているデータの測定から表面温度の実際値を求めるために、一連の物理的パラメータが好適である。つまり、パラメータとして、振動回路における電流と電圧との間の位相角度を測定可能である。同様に、励磁電圧の振幅とコンデンサ電圧の振幅との比、及び、励磁電圧の振幅とコイル電圧の振幅との比も温度に影響するので、これらの振幅比からも表面温度を推定できる。さらに、励磁電圧に対する空隙の磁界強度を求め、これに基づいて温度を計算することもできる。
【0013】
本発明の実施形態の特に有利なバリエーションでは、パラメータとして、振動回路の電流及び電圧が振動回路の動作フェーズにおいて測定される。
【0014】
このために、本発明の測定装置は、振動回路に配属された、電流を測定する電流測定回路と、電圧を測定する電圧測定回路とを含む。ここから、振動回路の電圧と電流との間の比によって示される相対的な強さの温度依存性が得られる。
【0015】
振動回路の動作フェーズにおいて、一義的に表面温度に帰せられる測定結果を得るために、本発明の方法の有利なバリエーションによれば、振動回路の電流及び電圧が振動回路の立ち上がり時間の経過後に測定され、電流の実効値及び電圧の実効値が測定フェーズ中に求められる。測定フェーズは、通常、設定された電圧のゼロ点通過にともなって測定フェーズの開始点及び終了点が生じるように定められる。
【0016】
振動回路の動作フェーズ及び静止フェーズを調整するために、本発明の測定装置の一実施形態によれば、振動回路を活性化及び不活性化する電圧モジュールが制御回路に接続される。これにより、動作フェーズ及び測定フェーズを連続して調整できる。
【0017】
温度検出のために設けられている誘導コイルが特には同時にローラ外套部の当該領域を加熱すると、特に有利であると判明している。この点に関して、本発明の方法の変形形態によれば、誘導コイルはローラ外套部を加熱するためのヒータコイルとして用いられる。
【0018】
このために、本発明の装置は、ヒータコイルとして構成された誘導コイルを含む。この誘導コイルは、ローラ外套部に対して小さな間隔を置いて、コイルホルダに支承されている。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ヒータコイルの制御は、好ましくは、表面温度の実際値の検出に関連して行われる。
【0020】
本発明の装置の有利な実施形態によれば、制御装置が評価装置に接続され、当該制御装置もしくは評価装置が、ローラ外套部の表面温度の補償を行う比較器を含む。これにより、表面温度の実際値と目標値との間の補償がつねに可能となり、許容できない差が生じた場合に、電圧モジュールの活性化もしくは不活性化を行うことができる。
【0021】
振動回路において3000Hzから30000Hzまでの範囲の所望の周波数を実現するために、誘導コイルは、好ましくは、10個から50個までの範囲の巻数を有する。これにより、磁束密度をさらに改善できる。
【0022】
本発明の誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める方法及び測定装置をさらに説明するために、添付図に即して、本発明の測定装置の幾つかの実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める本発明の測定装置の第1の実施形態を示す概略図である。
図2】誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める本発明の測定装置の第2の実施形態を示す概略図である。
図3図1又は図2の実施形態の電圧モジュールの電圧特性を示す概略図である。
図4】誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める本発明の測定装置がゴデットに組み込まれている様子を示す概略図である。
【0024】
図1には、誘導加熱されるローラ外套部の表面温度を求める本発明の装置の第1の実施形態が示されている。ローラ外套部6は、一体形の部材として示されており、小さな間隔を置いて同心に配置され自身に対応する誘導コイル1を包囲している。誘導コイル1は、この実施形態では、コイル支持体8と多数の巻線7とによって概略的に示されている。
【0025】
誘導コイル1は、電流回路2において、コンデンサ3と振動回路5に対する電圧源4とに接続されている。電圧源4は制御装置11に接続されており、制御装置11によって電圧源4の電圧モジュール4.1が活性化もしくは不活性化される。
【0026】
振動回路5には、測定手段9.1を含む測定装置9が配属されている。振動回路5ではそのパラメータが測定手段9.1によって検出され、測定手段9.1に接続された評価装置10に供給される。この実施形態では、測定手段9.1は、誘導コイル1のインダクタンスを測定するように構成されている。
【0027】
制御装置11によって電圧モジュール4.1に設定可能な動作フェーズでは、電圧モジュール4.1を介して、3000Hzから30000Hzまでの範囲の電圧周波数を有する交流電圧が形成される。よって、振動回路5では、恒常的に反復して、コンデンサ3の充放電が行われる。これにより、誘導コイル1によるローラ外套部6の磁化が反復され、電流が誘導される。
【0028】
動作フェーズでは、誘導コイル1のインダクタンスが測定手段9.1によって測定され、評価装置10に供給される。測定信号は、評価装置10内で設定されたアルゴリズムにしたがって評価され、ローラ外套部6の表面温度の実際値を取得するために、記憶されているデータと結合される。このために、評価装置10は、好ましくは、可視化装置又は出力ユニットを有する。測定が行われた後、評価装置10及び制御装置11により、電圧源4の電圧モジュール4.1が不活性化され、振動回路5が静止フェーズへ移行される。
【0029】
これに代えて、測定装置9の選択に応じて、誘導コイル1のインダクタンスを振動回路5の静止フェーズ中に測定する手段を構成してもよい。この場合、相応の温度依存性のインダクタンス測定値を取得するには、測定電流が用いられる。
【0030】
基本的には、ローラ外套部内の温度を求めるために、振動回路の別のパラメータを検出してもよい。この場合に重要なのは、ローラ外套部と振動回路に接続されている誘導コイルとの結合度である。特にローラ外套部の温度依存性の導電率又はローラ外套部の温度依存性の透磁率の影響を受けるパラメータは、ローラ外套部のそのつどの温度を求めるのに好適である。インダクタンスのほか、パラメータとして、振動回路内の電流と電圧との間の位相角、又は、励磁電圧とコンデンサ電圧との間の振幅比、励磁電圧とコイル電圧との間の振幅比、又は、励磁電圧に対する空隙内の磁界強度なども適する。
【0031】
どのパラメータが温度を求めるための測定値として選択されるかにかかわらず、振動回路に対しては、3000Hzから30000Hzまでの範囲の電圧周波数での給電が必要である。電圧周波数の大きさは、この場合、ローラ外套部における磁界強度の磁束密度に直接に作用する。このことに関して、特徴的な電流路延長効果を得るには、高い電圧周波数が特に適しているが、これにより、磁束がローラ外套部の外套領域に直接に集中する。したがって、磁界の散乱と振動回路への外部影響とが有利に回避される。
【0032】
できるかぎり簡単なアルゴリズムでローラ外套部の表面温度の実際値を取得するために、図2には、本発明の装置の別の実施形態が概略的に示されている。図2の実施形態は、図1の実施形態とほぼ同様であるが、測定装置9が電流測定回路12と電圧測定回路13とを含む点で異なっている。電流測定回路12及び電圧測定回路13は振動回路5に配属されており、これにより、電流回路2における電流の実効値と電圧の実効値とが得られる。電流測定回路12及び電圧測定回路13は評価装置10に接続されている。評価装置10内では、実効電圧と実効電流との商が形成される。格納されているゲージ曲線を用いて、商の値から直接に、対応するローラ外套部の表面温度の実際値が求められる。こうしたゲージ曲線は通常は予め定められており、評価装置10に格納されている。振動回路5における電流及び電圧の測定は、振動回路5の動作フェーズにおいて行われる。当該フェーズでは、電圧モジュール4は制御装置11を介して活性化される。
【0033】
図3には、電圧モジュール4によって形成される電圧特性が概略的に示されている。この場合、横軸に、測定を実行すべき2つの動作フェーズが並んで示されている。動作フェーズは記号Bで、動作フェーズ間の静止フェーズは記号Rで示されている。振動回路5において測定を行うために、まず、動作フェーズの開始時の立ち上がりフェーズの経過が待機される。なお、測定フェーズの期間は動作フェーズの期間と同一ではない。図3では、立ち上がりフェーズは記号Eで、測定フェーズは記号Mで示されている。ここで重要なのは、測定フェーズの開始と終了とがそれぞれ電圧のゼロ通過にともなって発生するということであり、このことは特に実効値の検出にとって有利である。
【0034】
図1図2に示されている実施形態では、振動回路5における誘導コイル1が専らローラ外套部6の表面温度を求めるために用いられる。誘導コイル1はこのために少なくとも10個から最大50個までの巻線7を有する。これにより、誘導コイル1の有利な磁束密度が達成される。
【0035】
ただし、基本的には、誘導コイル1を直接にヒータコイルとして形成し、並行してローラ外套部6の加熱を実行する手段も存在する。図4には、回転するローラ外套部6を含むゴデットの例が示されている。本発明の装置はゴデット23に統合されている。これについては、図4に、ゴデット23の横断面図が示されている。
【0036】
ゴデット23は、カラー状のコイルホルダ15を備えた軸受支持体14を有する。軸受支持体14及びコイルホルダ15は、中空円筒状に構成されている。軸受支持体14及びコイルホルダ15の内部では、駆動軸17が複数の軸受22によって回転可能に支承されている。駆動軸17は、軸受支持体14とコイルホルダ15とを貫通しており、その駆動端部でモータ19に接続されている。反対側の端部では、駆動軸17がポット状のローラ外套部6に結合されている。
【0037】
カラー状のコイルホルダ15の周にはヒータコイル18が保持されている。ヒータコイル18はローラ外套部6に対して同心に配置されており、ローラ外套部6はヒータコイル18に対して小さな間隔を置いてガイドされている。ヒータコイル18は、コイル支持体8と複数の巻線7とから形成されている。ヒータコイル18の巻線7はゴデット23の加熱制御ユニット20に結合されている。加熱制御ユニット20は、振動回路5に対するヒータコイル18に接続されたコンデンサ3と、電圧モジュール4.1とを有する。ヒータコイル18及びコンデンサ3は、直列振動回路5に接続されている。電流回路2には、評価装置10に接続された電流測定回路12が統合されている。同様に、直列振動回路5には、評価装置10に接続された電圧測定回路13が配属されている。評価装置10は制御装置21に接続されており、この制御装置21は電圧源4の電圧モジュール4.1に接続されている。
【0038】
図4に示されている実施形態では、制御装置21を介して電圧モジュール4.1が活性化されるので、直列振動回路5とヒータコイル18とを介して回転するローラ外套部6に電流が誘導される。ローラ外套部6の誘導電流は、ローラ外套部6の加熱を生じさせる。
【0039】
並行して、電流測定回路12と電圧測定回路13とにより、直列振動回路5の電流及び電圧が連続的に測定され、評価装置10へ供給される。評価装置10内では、電圧の実効値と電流の実効値との商が形成され、この商がゴデット外套部の温度実際値へ変換される。このために、通常、1つもしくは複数のゲージ曲線が格納されている。続いて、ローラ外套部6で求められた表面温度の実際値が表面温度の目標値と比較される。このために、評価装置10又は制御装置21に統合可能な、図示されていない比較器が設けられる。
【0040】
ローラ外套部6の表面温度の実際値が表面温度の目標値を下回る場合、制御装置21の評価装置10を介して相応の信号が出力され、これにより制御装置21が電圧モジュール4.1を活性化状態に保持する。比較器が制御装置21の内部に統合されている場合、制御信号は直接に制御装置21内で形成される。
【0041】
ローラ外套部6の表面温度の実際値が表面温度の目標値に達するか又はこれを上回ると直ちに、制御装置21を介して電圧モジュール4.1が不活性化される。この場合、ヒータコイル18によるローラ外套部6の能動的加熱は行われない。
【0042】
ローラ外套部の連続的な温度監視を行うために、格納されている制御プログラムによって、予め定められた時間の後、短い測定フェーズが形成される。このために、制御装置21が電圧モジュール4.1を介して活性化され、振動回路5の電流及び電圧が検出可能となる。ローラ外套部6の表面温度が許容不能な値まで冷えてしまう場合には、ヒータコイル18の加熱フェーズが導入される。
【0043】
図4に示されているゴデット23では、ローラ外套部6に唯一のヒータコイル18が配属されている。基本的には、長いカラー状のローラ外套部6を並んで配置された複数のヒータコイルによって加熱できる手段が構成される。この場合、本発明によれば、各ヒータコイルを温度の計算に用いることができる。これに代えて、ヒータコイルを用いて測定及び評価のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 誘導コイル、 2 電流回路、 3 コンデンサ、 4 電圧源、 4.1 電圧モジュール、 5 振動回路、 6 ローラ外套部、 7 巻線、 8 コイル支持体、 9 測定装置、 9.1 測定手段、 10 評価装置、 11 制御装置、 12 電流測定回路、 13 電圧測定回路、 14 軸受支持体、 15 コイルホルダ、 17 駆動軸、 18 ヒータコイル、 19 モータ、 20 加熱制御ユニット、 21 制御装置、 22 軸受、 23 ゴデット
図1
図2
図3
図4