特許第6275248号(P6275248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275248被覆された平坦な製品の摩耗特性を判定する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275248
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】被覆された平坦な製品の摩耗特性を判定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20180129BHJP
   G01N 3/56 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G01N19/04 Z
   G01N3/56 M
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-515527(P2016-515527)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-532076(P2016-532076A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2013069407
(87)【国際公開番号】WO2015039685
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ=ギュンター シュヴァンケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フーパー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ウラン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ヤニク
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2007−0003366(KR,A)
【文献】 実開昭62−034350(JP,U)
【文献】 特開昭62−100646(JP,A)
【文献】 特開2011−127216(JP,A)
【文献】 特開2007−225518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/04
G01N 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された平坦な製品(2)の摩耗特性を判定する方法であって、前記平坦な製品(2)の前記被覆に粘着ストリップ(7)が貼り付けられ、前記平坦な製品(2)は、前記粘着ストリップ(7)を備えるかまたは前記粘着ストリップ(7)を備える予定の領域で曲げられ、前記粘着ストリップ(7)は、前記曲げの後に、前記粘着ストリップ(7)に付着する前記被覆の摩耗材料と一緒に取り外され、前記粘着ストリップのグレートーンが、前記粘着ストリップ(7)を前記粘着ストリップ(7)の長手方向(L)に対して平行に分割した各分割領域である縞ごとに判定され、前記縞ごとに判定された前記グレートーンから生成されたグレートーンパターン(10)に基づいて、グレー幅(B)が摩耗痕を横切る方向(Q)における前記摩耗痕の幅として判定され、かつ/または前記被覆の前記摩耗特性の指標である代表的グレートーン(RG)が前記摩耗痕の前記代表的グレートーンとして判定される、方法。
【請求項2】
前記縞の前記判定されたグレートーンから、前記グレートーンパターン(10)が前記摩耗痕の前記幅の方向に生成され、前記グレートーンパターン(10)に基づいて、前記グレー幅(B)は前記グレートーンパターンの前記幅として判定され、かつ/または前記代表的グレートーン(RG)は前記グレートーンパターンの前記代表的グレートーンとして判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グレートーンパターン(10)に基づいて、前記グレー幅(B)は、グレートーン限界値(G)を超える前記グレートーンパターン(10)の幅として判定され、かつ/または前記代表的グレートーン(RG)は、前記グレートーン限界値(G)を超える全グレートーンの前記代表的グレートーンとして判定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グレートーン限界値(G)は、前記グレートーンパターン(10)に基づいて固定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
平均のまたは積分した縞グレートーンが各縞について判定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
縞ごとの前記グレートーンの前記判定が、光度測定によって行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
記粘着ストリップ(7)の少なくとも1つの記録が生成され、前記グレートーンは前記少なくとも1つの記録に基づいて判定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
いくつかの記録が、前記粘着ストリップから生成され、鮮鋭度の深度を改善するために、前記いくつかの記録が、重ねられて新たな表示(9)を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粘着ストリップ(7)は、前記摩耗痕の前記幅を横切る方向に縞ごとにグレートーンを判定するために、スキャナによって走査される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも20の縞の前記グレートーンが、前記摩耗痕の前記幅を横切る方向において判定される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記グレートーン限界値(G)は、最小グレートーンから最大グレートーンの値の範囲の10%〜40%にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆された平坦な製品(2)に関して、前記グレー幅(B)および/または前記代表的グレートーン(RG)が前記被覆の鉄含有量とともに記録される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
鉄含有量が、前記鉄含有量に対する前記グレー幅(B)および/または代表的グレートーン(RG)の予め判定された依存度に基づいて、ならびに前記判定されたグレー幅(B)および/または前記代表的グレートーン(RG)に基づいて判定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
異なるグレートーン限界値(G)に関する、前記鉄含有量に対する前記グレー幅(B)および/または代表的グレートーン(RG)の予め判定された依存度に基づいて、グレートーン限界値(G)が、前記グレー幅(B)および/または前記代表的グレートーン(RG)の判定のために指定される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記グレー幅(B)および/または前記代表的グレートーン(RG)が判定された特定の被覆された平坦な製品(2)に関して、さらに前記被覆の前記鉄含有量が判定され、前記鉄含有量に対する前記グレー幅(B)および/または代表的グレートーン(RG)の予め判定された依存度に基づいて、特性値が、前記鉄含有量に対する前記グレー幅(B)および/または代表的グレートーン(RG)の判定された依存度によって、鉄含有量と、グレー幅(B)および/または代表的グレートーン(RG)とのさらに判定された値の組み合わせの相関性に関して判定される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記相関性に関する前記特性値は、被覆された平坦な製品(2)の摩耗特性の判定に関して品質保証のために用いられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
覆された平坦な製品(2)の摩耗特性を判定する装置(26)であって、粘着ストリップ(7)および/または粘着ストリップ(7)の表示(9)のグレートーンを、摩耗痕が付着している前記粘着ストリップ(7)を前記粘着ストリップ(7)の長手方向(L)に対して平行に分割した各分割領域である縞ごとに判定する、検出ユニット(26)、具体的には画像処理装置が設けられ、前記縞ごとに判定された前記グレートーンから生成されたグレートーンパターン(10)に基づいて、グレー幅(B)を摩耗痕を横切る方向(Q)における前記摩耗痕の幅および/または前記被覆の前記摩耗特性の指標である前記摩耗痕の代表的グレートーン(RG)として判定する判定手段(30)が設けられることを特徴とする、装置(26)。
【請求項18】
縞ごとに判定された前記グレートーンに基づいてグレートーンパターン(10)を生成する、生成する手段(28)が設けられ、前記グレートーンパターン(10)に基づいて前記グレー幅(B)および/または前記代表的グレートーン(RG)を判定する判定手段(30)が設けられることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記グレートーンパターン(10)に基づいてグレートーン限界値(G)を判定する、限界値を判定する手段(29)が設けられることを特徴とする、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
記粘着ストリップ(7)の少なくとも1つの記録のために少なくとも1つのデジタルカメラ(23)が設けられることを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された平坦な製品、好ましくは、金属製の平坦な製品、具体的には、亜鉛めっき鋼の平坦な製品の摩耗特性を判定する方法に関する。本発明はさらに、このような被覆された平坦な製品の摩耗特性を判定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆された平坦な製品の不可欠な特性は多くの用途において被覆の摩耗抵抗性である。したがって、対応する平坦な製品の製造では被覆の摩耗の傾向に厳しい要件が課せられる。被覆された平坦な製品は、具体的には、金属、鋼、軽金属または平坦な複合製品を含むと理解されており、これらは例えば、ストリップ、シートメタル、ブランクまたはプレートバー材料として存在することができる。さらに、こうした製品は好ましくは熱間圧延または冷間圧延の製品でよい。被覆に関しては、例えば亜鉛被覆が適しており、亜鉛被覆は、例えば鋼の平坦な製品の溶融亜鉛めっきまたは電気亜鉛めっきによって生み出すことができる。
【0003】
対応する平坦な製品の被覆に課せられる厳しい要件によって、品質保証のために、再現可能かつ定量化可能な方式で摩耗特性を判定できることが非常に重要である。亜鉛めっきも焼なましも施されるガルバニール処理により被覆された鋼ストリップが、例えば、ボディパネル部品、補強または内部部品として自動車産業で用いられており、したがって、高度の表面の要件を満たさなければならない。ここで、いわゆるパウダリングが問題になることがある。パウダリングとは、被覆の粒子が剥落する、成形中に起こる亜鉛被覆のあるタイプの摩耗を示す。これは、通常、面積タイプの被覆の層間剥離であるフレーキングとは区別される。
【0004】
被覆された平坦な製品がパウダリングを呈す傾向は、いわゆる粘着ストリップ曲げ試験によって評価することができる。この試験では、加工物の試料片に粘着ストリップが貼り付けられ、その試験片は粘着ストリップの領域で強く曲げられ、その結果、通常はパウダリングが起こる。剥離した被覆粒子が粘着ストリップ上に残り、その粘着ストリップは、曲げの後に、通常は加工物が元の状態に曲げ戻された(平坦化された)後でのみ引き離される。次いで、粘着ストリップは、被覆粒子が灰色のカバーとして現れるように白色の背景下地に貼り付けられる。曲げが曲げ線に沿って起こった場合は、剥離した粒子も線の形態で存在する。パウダリングの程度は、被覆の粒子によって線が黒くなった部分に基づいて、または被覆の粒子の線の幅に基づいて判定される。黒くなった部分は曲げ線を横切る方向では変化し、縁部の方向ではゆっくりと先細りするので、黒くなった部分または線の幅の判定は極めて主観的である。
【0005】
さらに、ダブルオルゼンテスト、カップテスト、ハットプロフィルテストまたはストリップ引張試験などの方法が知られている。しかし、こうした方法も概してあまり再現可能ではないので満足な結果をもたらさない。さらに、試験可能な平坦な製品はその厚さおよび強度に関して限定されることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、より客観的であり有意義かつ再現可能な方式で、被覆された平坦な製品の摩耗特性の特徴を描写できるように、冒頭で言及し本明細書でこれより前により詳細に説明したタイプの方法および装置を改善および発展させることである。
【0007】
この目的は、平坦な製品の被覆に粘着ストリップが貼り付けられ、平坦な製品は、粘着ストリップを備えるかまたは粘着ストリップを備える予定の領域で曲げられ、粘着ストリップは曲げの後に、粘着ストリップに付着する被覆の摩耗した材料と一緒に引き離され、粘着ストリップのグレートーンは、摩耗痕を形成する摩耗の幅を横切る方向に縞ごとに判定され、縞ごとに判定されたグレートーンに基づいて、グレー幅は摩耗痕の幅および/または摩耗痕の代表的グレートーンとして判定される、請求項1による方法によって達成される。
【0008】
さらに、その目的は、粘着ストリップに付着する摩耗痕を形成する摩耗の幅を横切る方向に、粘着ストリップおよび/または粘着ストリップの表示のグレートーンを縞ごとに判定する検出ユニット、具体的には、画像処理装置が設けられ、縞ごとに判定されたグレートーンに基づいて、グレー幅を摩耗痕および/または摩耗痕の代表的グレートーンの幅として判定する判定手段が設けられる、請求項17のプリアンブルによる装置によって達成される。
【0009】
好ましくは、粘着ストリップは曲げ動作の前に平坦な製品に貼り付けられるが、貼り付けは後から行われることも可能である。しかし、その場合、粘着ストリップによって摩耗材料が完全には取り上げられないので、全ての摩耗材料が分析を受けるとは限らないという危険が大きくなる。好ましくは、平坦な製品は、曲げた後に平坦化し、その後曲げ戻し、続いて初期の状態に復元することができる。したがって、摩耗はより起こりやすくなる。しかし、粘着ストリップは平坦化する前に既に貼付されているべきである。
【0010】
したがって、本発明によれば、粘着ストリップまたは粘着ストリップに付着する摩耗材料の長手方向の軌跡もしくは痕跡は、全体ではなく縞ごとに検査される。さらに、縞ごとの検査は摩耗痕の幅を横切る方向に行われる。したがって、グレートーンに関する多くの個別の値が摩耗痕を横切る方向に測定され、基本的により正確に評価を実行できると、より多くの縞が摩耗痕を横切る方向に検査される。
【0011】
ここで、個別の縞に関して判定されたグレートーンに基づいて、例えば、摩耗痕に関する代表的グレートーンを判定することができる。この代表的グレートーンは被覆の摩耗特性の指標である。代表的グレートーンが高いほど、被覆がパウダリングを受ける傾向が高くなる。したがって、個別の縞が特に暗く見えるかまたは極端に明るく見えるので、多くの個別の縞を評価することによって、主観的な誤った評価の可能性が低くなる。その代わりに、または代表的グレートーンに加えて、グレー幅、すなわち、被覆の粒子によって生じる摩耗痕の幅は、個別の縞のグレートーンから純粋に客観的に判定することもできる。このように、個別の縞のグレートーンに基づいて、例えば、摩耗痕を横切る方向において摩耗痕が始まる位置および終わる位置、ならびに摩耗痕の正確な幅がより明らかになる。言い換えると、摩耗痕は、被覆された平坦な製品の曲げとは関係なく被覆された平坦な製品に付着する汚れ粒子から、より簡単に識別することができる。
【0012】
実際に必ずしも一様ではないグレートーンが摩耗痕を横切る方向にいくつかの点で単に判定されるものではない場合は、再現性のさらなる改善が実現される。したがって、個別の縞に沿ったグレートーンのばらつきを考慮に入れる代表的グレートーンの判定が実行される。これは、好ましくは、個別の縞に沿ってグレートーンを判定することによって行われる。したがって、1本の縞またはいくつかの縞に沿った個別の非常に暗い部分または非常に明るい部分が摩耗特性の判定を著しく偽造することはない。しかし、縞に沿ってグレートーンを統合すること、またはグレートーンを合計する別の手法を用いることも可能である。
【0013】
さらに、粘着ストリップ上の摩耗痕の個別の縞に沿ったグレートーンが人の眼によって主観的に判定されず、この目的に適した検出ユニットによって判定される場合は、摩耗特性の判定の改善が実現される。このようにして、摩耗痕の評価の客観化が最終的に実現される。例えば、感光性センサがその目的に適している。しかし、評価は画像処理装置を用いて実行することもできる。画像処理装置は、摩耗痕を直接的に評価することもでき、摩耗痕または粘着ストリップの表示を評価することもできる。摩耗痕の直接的な評価の場合は、スキャナによって摩耗痕を走査することができる。その代わりに、摩耗痕の表示を走査することもできるが、これは基本的により複雑でありエラーを受けやすい。例えば、好ましくは既知の画像フォーマットの、摩耗痕または粘着ストリップのデジタル化された記録が、摩耗痕または粘着ストリップの表示として適している。記録は、カメラ、好ましくはデジタルカメラによって生み出すことができる。グレー幅および/または代表的グレートーンを判定する判定手段は、具体的には、グレートーンの評価はソフトウェアを用いて実行するコンピュータ化された判定手段とすることができる。
【0014】
本文脈では、具体的には、縞ごとに測定される摩耗痕のグレートーンの再現可能な比較および/またはグレートーンの再現可能な評価が望ましいことが理解される。したがって、本発明によれば、代表的グレートーンを判定するために、縞ごとに摩耗痕のグレートーンを検出する際にならびに縞ごとに判定されるグレートーンから摩耗痕の全体の代表的グレートーンを判定する際に平均グレートーンを得ることが好ましい。基本的に、縞に沿ったおよび/または摩耗痕を横切る方向に代表的グレートーンを統合するかまたは別の手法で判定することもできる。
【0015】
被覆された平坦な製品は、具体的には、金属、鋼、軽金属および/または平坦な複合製品であり、これらは、例えば、ストリップ、シート材料、ブランクまたはプレートバー材料として存在することができる。平坦な製品は熱間圧延または冷間圧延することができる。さらに、溶融亜鉛めっき鋼の平坦な製品が好ましい。具体的には、ガルバニール処理された鋼シートが好ましい。したがって、摩耗は、好ましくは、亜鉛めっき層の摩耗、具体的には、いわゆるパウダリングである。亜鉛めっき層はさらに、具体的には亜鉛‐鉄層である。
【0016】
被覆された平坦な製品の曲げは、好ましくは、長手方向の曲げ線に沿って平坦な製品をV字形に曲げることによって実行される。このために、平坦な製品は、好ましくは、必要な場合はいくつかの部分に分断された長手方向の曲げ縁部を有する曲げウェッジを用いて曲げられる。次いで、平坦な製品は再度平坦に曲げることができる。
【0017】
粘着ストリップに関しては、摩耗が粘着ストリップにコントラストを形成し、したがって粘着ストリップから十分に明確に区別される場合が好ましい。これに関連して粘着ストリップが実質的に透明である場合が特に好ましい。コントラストを良好にするためには、平坦な製品の初期試料の表面をエタノールによってまたは別の洗浄剤を用いて洗浄することもできる。
【0018】
方法および装置の好ましい実現形態を、明示的に方法と装置とを区別することなく共に本明細書で以下に記述する。しかし、好ましい方法および装置の特徴は当業者には文脈から明らかになるであろう。
【0019】
本発明の第1の好ましい実現形態では、摩耗または摩耗痕の幅方向におけるグレートーンパターンが、測定される縞のグレートーンから作製することが想定される。そのために、装置はグレートーンパターンを作る手段を備える。グレートーンパターンの作製は適切なソフトウェアを用いることで実行することができる。次いで、対応するグレートーンパターンの助けにより、適切に再現可能な方式で、グレー幅は、グレートーンパターン、したがって摩耗痕の幅として判定することができ、かつ/または代表的グレートーンは、グレートーンパターン、したがって、摩耗痕の代表的グレートーンとして判定することができる。
【0020】
さらに、摩耗特性の特徴を描写するための、判定される特性値の再現性および妥当性に関して、グレートーンパターンに基づいて、グレー幅は、グレートーン限界値を超えるグレートーンパターンの幅として判定され、かつ/または代表的グレートーンは、グレートーン限界値を超える全てのグレートーンの代表的グレートーンとして判定される場合が好都合である。このようにして、摩耗のせいではなく、例えば、平坦な製品の検査される試料の汚染によるグレートーンが評価に影響することを概して防止することができる。
【0021】
グレートーン限界値は、これに関連して、手動で、またより具体的には例えば、経験的な特性値の助けによって、予め定めることができる。しかし、好ましくは、グレートーン限界値は、例えば、グレートーン限界値を判定する手段によって評価されるそれぞれのグレートーンパターンに基づいて指定される。これに関連して、グレートーン限界値はグレートーンパターンの勾配の助けによって判定することができる。例えば、グレートーン限界値は、グレートーンパターンに急上昇が見られる値に固定することができる。しかし、基本的に、グレートーン限界値が、評価されるそれぞれのグレートーンパターンに基づいて自動的に、より具体的には、例えば、対応する予め設定された値によるソフトウェアに基づいて判定される場合が好ましい。
【0022】
被覆の摩耗特性の複雑でない特徴描写のために、各縞について代表的な、具体的には平均のまたは統合した縞のグレートーンを判定することが適切である。その代わりに、またはそれに加えて、同じ手順を用いて、例えば個別の縞のグレートーンに基づいて摩耗の縞に関する代表的グレートーンを判定することができる。
【0023】
単純かつ正確であり、かつ好ましくは自動化された、個別の縞のグレートーンの判定は、光度測定によって、より具体的には、好ましくは、直接的に、または画像処理装置によって粘着ストリップのデジタル化された記録の助けによって実行することができる。画像処理装置、および必要な場合は、対応する画像処理のための適切なソフトウェアソリューションが、基本的に従来技術により既に知られており、この点でさらに説明する必要はない。
【0024】
粘着ストリップを評価するために、好ましくはデジタル化された、少なくとも1つの記録を粘着ストリップから生成することができる。そのときに、グレートーンは、その少なくとも1つの記録に基づいて、より具体的には特に本明細書で先に言及したような画像処理装置によって縞ごとに判定することができる。この場合、記録は、好ましくは、透過光または入射光で照明される粘着ストリップから行うことができる。透過光とは、粘着ストリップのうちカメラの反対側を向いた方から粘着ストリップが照明されることを意味する。一方、入射光とは、カメラが粘着ストリップから記録を行うのと同じ側から粘着ストリップの照明が行われることを意味する。
【0025】
評価の質は、基本的に、粘着ストリップからいくつかの記録が取られ、新たな表示のためにコントラストおよび鮮鋭度の深度を改善するようにこれらの記録が重ねられる場合に向上させることができる。これに関連して、記録は異なる照明時間で行うことができ、個別の記録は露出過度および/または露出不足になることがある。その代わりに、またはそれに加えて、一部の記録が透過光の照明によって一部は入射光の照明によって生み出されることから、記録を区別することもできる。
【0026】
その代わりに、またはそれに加えて、粘着ストリップのより正確な評価のために、粘着ストリップは、摩耗の、具体的には摩耗痕の幅を横切る方向にグレートーンを判定するために縞ごとに走査することができる。したがって、この場合、検出されるのは縞全体ではないが、グレートーンの判定が縞に沿って少しずつ行われる。縞ごとの走査は、この場合、必要な場合は市販のスキャナによって実行することができる。市販のスキャナは、粘着ストリップまたは粘着ストリップの表示を縞ごとにまたはスキャナによっては線ごとに走査し、代表的グレートーンを各線に割り当てる。
【0027】
評価の再現性および妥当性を改善するために、グレートーンは、摩耗、具体的には、摩耗痕の幅を横切る方向に少なくとも20の縞、好ましくは少なくとも50の縞、特に少なくとも100の縞から判定することができる。
【0028】
良好な評価結果は、グレートーン限界値が最小グレートーンから最大グレートーンの値の範囲の10%〜40%、好ましくは15%〜35%、特に20%〜30%にある場合に得ることができることも分かっている。例えば、グレートーン判定は、黒の場合の0から純白の場合の255まで延びる目盛りに基づくことができる。この場合、グレートーン限界値が160(37%)と24(6%)との間、好ましくは、170(33%)と220(14%)との間、特に約180(29%)から選択される場合が好ましい。
【0029】
ガルバニール処理された鋼の平坦な製品の場合は、亜鉛めっき被覆の鉄含有量と被覆のパウダリングの傾向との間に関連があり、そのため、パウダリングの傾向が亜鉛めっき被覆の鉄含有量と共に上昇する。これに関連して、基本的に亜鉛めっき被覆がより高い鉄含有量を有するほど、平坦な製品はより強く長く焼なましされる。したがって、被覆された平坦な製品を検査するためにこの関連を用いることが適切なことがあり、グレー幅および/または代表的グレートーンが被覆の鉄含有量に応じて判定される。これは、具体的には、一様のグレートーン限界値に対して、または異なるグレートーン限界値には互いに独立に、行うことができる。したがって、例えば、グレートーン限界値の少なくとも1つの判定された相関性に基づいて、グレートーン限界値が正しそうな結果を導くかどうかを確かめるかまたはチェックすることができる。理想的には、少なくとも1つのグレートーン限界値または特定のグレートーン限界値に関して判定される鉄含有量に対するグレー幅および/または代表的グレートーンおよび/または代表的グレートーンの値の対が、良好な相関性および正しそうな曲線形状を生み出すはずである。
【0030】
好ましくは、平坦な製品の試料の鉄含有量は、被覆された平坦な製品に関して一旦判定された、グレートーン幅および/または代表的グレートーンの鉄含有量に対する依存度に基づいて判定することができ、好ましくは、一様のグレートーン限界値に関してまたは異なるグレートーン限界値については別々に判定されていた。そのときに、それに加えて、グレー幅および/または代表的グレートーンを判定することが単に必要である。したがって、この評価から鉄含有量について結論を出すことも可能になる。そのときにグレー幅および/もしくは平均グレートーンは、またはしかし鉄含有量は直接的に、摩耗特性を判定する量として指定することができる。
【0031】
グレートーン幅および/または代表的グレートーンの鉄含有量に対する依存度および相関性は、異なるグレートーン限界値に関して判定され、このことから、対応する平坦な製品のグレートーン幅および/または代表的グレートーンを判定するために、好ましいグレートーン限界値を得ることができる。この場合、好ましくは、一方のグレー幅および/または代表的グレートーンと他方の鉄含有量との値の対が、できるだけ正しそうでありできるだけこのパターンに良好に相関するパターンを有する、グレートーン限界値が選択される。相関性が不良の場合は、補正曲線によって非常に不正確にしか近似することができない測定値の群が得られる。相関性が良好な場合は、どの測定値も補正曲線、特に補正直線の非常に近くにあり、したがってその補正曲線は測定値の非常に近くに近似する。
【0032】
その代わりに、またはそれに加えて、特定の被覆された平坦な製品に関して、グレー幅および/または代表的グレートーンだけでなく、鉄含有量も、例えば分析的に判定することができる。そのときに、好ましくは、一様のグレートーン限界値のためにまたは異なるグレートーン限界値のために別々に判定され、被覆された平坦な製品のために一旦判定された、鉄含有量に対するグレー幅および/または代表的グレートーンの依存度に基づいて、対応する測定値が、対応する依存度に適合する程度をチェックすることができる。これは、以前に判定された数学的な依存度へのこの値の組み合わせの相関性に関する特性値によって表現することができる。特性値が示す、以前に判定された依存度からの偏差が大き過ぎる場合は、必要な場合は調整を行わなければならないかまたは新たな較正を実行しなければならない。さらに、好ましくは、特性値は測定ごとに見られないが、その代わりに、過剰な妥当性を個別の線外値に与えないように一定の数の連続する測定が実行される。
【0033】
相関性に関する特性値は、被覆された平坦な製品の摩耗特性の判定に関して、例えば品質保証のために用いることができる。したがって、必要な場合は、十分な正確性および再現性を有して摩耗特性の判定が実行されることを示す証拠を提示することができる。例えば、そのために、特性値は所定の特性値限界と比較することができる。偏差が所定の値より大きい場合は、そのことを提示および/または表示することができる。これは、対応する調整または新たな較正を実行するために機能することができる。その代わりに、またはそれに加えて、判定されたグレー幅および/または代表的グレートーンは、対応する値の大きさが縮小されることを示す追加の情報と組み合わせることもできる。
【0034】
例示的な一実施形態を単に例示する図面の助けにより、図面を参照しながら、本明細書で以下に本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】被覆された平坦な製品の摩耗特性を判定する本発明による装置の詳細である。
図2】摩耗特性を判定する本発明による方法を実行するための粘着ストリップを有する、被覆された平坦な製品の平面図である。
図3図2による摩耗痕を有する粘着ストリップを示す。
図4図3による粘着ストリップの摩耗痕を横切る方向における個別の縞のグレートーンのパターンのヒストグラムである。
図5】被覆された平坦な製品の摩耗特性を判定する装置の概略図である。
図6】被覆された平坦な製品のグレートーン幅と鉄含有量との間の機能的関連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は被覆された平坦な製品2を曲げるための装置1の詳細を示す。装置1はいわゆるロール成形ダイ3を備え、そのロール成形ダイ3は、隙間を介して互いに離間した2つの曲げローラ4と、横断面がV字形であり長手方向の縁部6を有する曲げウェッジ5とを有する。粘着ストリップ7が上面に貼付された、被覆された平坦な製品2が曲げローラ4上に位置決めされる。ここで、曲げウェッジ5を曲げローラ4間の隙間に下げることができる。ここで、曲げウェッジ5は、その縁部6を用いて長手方向に平坦な製品2に貼り付けられた粘着ストリップ7を押圧し、そうすることで、平坦な製品2は、曲げウェッジ5の縁部6によって画定された曲げ線に沿ってV字の形態で下向きに曲げられる。図1には、平坦な製品2は、点線で元の位置が示され、実線で曲げられた位置が示されている。曲げウェッジ5は、被覆された平坦な製品2が曲げられた後に持ち上げられ、平坦な製品2は図示しない平坦化装置によって曲げ戻され平坦化される。
【0037】
平坦な製品2は、曲げ戻され平坦化された状態で図2に上から見た平面図に示されている。曲げている間に起こるパウダリングの結果、平坦な製品2の曲げ線に沿って剥離した被覆の粒子が、概略的に示され、摩耗痕8として特定される。粘着ストリップ7は被覆された平坦な製品2を評価するために剥がされ、剥離した被覆の粒子は摩耗として粘着ストリップ7上に残る。そのときに、デジタルカメラによって粘着ストリップ7の記録が取られる。そのために、粘着ストリップ7は、画像が撮られるのと同じ側(入射光)からならびに反対側(透過光)から照明される。2つの照明状況それぞれの間に、異なるように照明される記録が生成され、この記録は、場合によっては露出過度になり、場合によっては露出不足になる。次いで、コントラストまたは鮮鋭度の深度が大きい表示が、粘着ストリップ7からソフトウェアによって、生成された全画像を重ねることにより生成される。
【0038】
次いで、図3に再現された粘着ストリップ7の表示9は画像処理装置で分析される。そのために、粘着ストリップ7の表示9は、具体的にはいずれの場合にも両方向矢印Lに平行な、粘着ストリップ7の表示9および摩耗痕8に沿った方向に縞ごとに走査される。このようにして、摩耗痕8のグレートーンが縞ごとに判定される。各縞のグレートーンは同時にその長さにわたって平均され、そうすることで、各縞について平均されたグレートーンの形態でグレートーンが得られる。次いで、個別の縞の平均されたグレートーンに基づいて、グレートーンパターン10が、ヒストグラムの形式で摩耗痕を横切る方向に生成される。摩耗痕を横切る方向は両方向矢印Qで表される。
【0039】
ヒストグラムの形態のグレートーンパターン10は図4に示され、図では各縞がヒストグラムの棒で表される。走査された縞は棒のように一様の幅を有する。棒が長いほど、対応する縞に対する代表的グレートーンがより暗くなる。このことはX軸上に示されており、X軸上にグレートーンがプロットされる。粘着ストリップ7の中央の縞が粘着ストリップ7の縁部の縞より暗いことをはっきりと見ることができる。粘着ストリップ7の縁部はグレートーンパターン10の上部および下部に示される。したがって、グレートーンパターン10では、グレートーンは縁部から見ると徐々に大きくなる。しかし、特定のグレートーンから開始して、前の上昇と比べて急激な上昇がある。このグレートーンをグレートーン限界値Gと定義する。グレートーンパターン10の平均グレートーンのうちグレートーン限界値Gより大きいものだけを考慮に入れる。ここで、グレートーン限界値より大きいグレートーンに関してグレートーンパターン10の幅が判定される。この幅が粘着ストリップ7上の摩耗痕8のグレー幅Bである。さらに、グレートーン限界値Gより大きい全ての平均グレートーンの値が平均される。その結果生じる平均グレートーンが摩耗痕8の代表的グレートーンRGである。代表的グレートーンRGおよびグレー幅Bは、いずれの場合にも、検査対象の被覆された平坦な製品2の摩耗特性に関して、個別でも合同でも再現可能な特性値を表す。
【0040】
被覆された平坦な製品2の摩耗特性を判定するための上記で説明した方法を実行する機構20が図5に概略的に示されている。機構20は、粘着ストリップ7に付着したままの摩耗を再現可能な方式で生み出すために、被覆された平坦な製品2を曲げ、続けて平坦化する、図1による曲げ装置21を備える。機構20はさらに、粘着ストリップ7の表示9を生成する装置22を備え、その装置22は、デジタルカメラ23と、デジタルカメラ23が粘着ストリップ7から記録を生成する間に粘着ストリップ7を照明する照明ユニット24とを備える。さらに、コントラストの非常に高い粘着ストリップ7の表示9を生み出すように記録を重ねる、重ね合わせユニット25が設けられる。この表示9は、被覆された平坦な製品2の摩耗特性を判定する装置26のための基準として働く。この装置26は画像処理装置の形態の検出ユニット27を備える。これは、粘着ストリップ7の表示9を縞ごとに走査し、各縞について代表的グレートーンを判定する。生成手段28が、縞の代表的グレートーンから、粘着ストリップ7の摩耗痕8を横切る方向にグレートーンパターン10を生成する。さらに、グレートーンパターン10に基づいてグレートーン限界値Gを判定する限界値を判定する手段が設けられる。これとは別に、グレートーンパターン10に基づいてグレー幅および/または代表的グレートーンを判定する判定手段30も存在し、さらにグレー幅および代表的グレートーンに関して判定された値を出力および格納する出力格納手段31も存在する。
【0041】
図示されるこの点で好ましい方法および対応する装置では、代表的なグレー幅はmmで明示され、グレートーンは完全に暗い0と完全に白い255との間の値として与えられる。しかし他の寸法単位が可能である。
【0042】
図6は、X軸に被覆の鉄含有量がプロットされY軸にグレー幅がプロットされた図を示す。特定のグレートーン限界値(180、200および220)に関して鉄含有量に応じて判定されたグレー幅が図にプロットされる。グレートーン限界値ごとに測定値を近似する直線が描かれており、ここで、いずれの場合にも、測定値と最も良く合う直線の相関性(R)の質が与えられる。相関性はグレートーン限界値が180の場合に最も高い(R=0.7677)ことを理解できる。したがって、グレートーン限界値180は、できるだけ再現可能な結果を得るように、同じタイプの平坦な製品を後から評価するために使用することができる。摩耗は鉄含有量と相関するので、この相関性を特に良好に再現するグレートーン限界値は、特に有意な再現可能な結果をもたらす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6