特許第6275249号(P6275249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275249
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】真空可変コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/14 20060101AFI20180129BHJP
   H01G 5/01 20060101ALI20180129BHJP
   H01G 5/013 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01G5/14
   H01G5/01 B
   H01G5/013 100
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-516165(P2016-516165)
(86)(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公表番号】特表2016-522995(P2016-522995A)
(43)【公表日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2014061160
(87)【国際公開番号】WO2014191510
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/061174
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504133822
【氏名又は名称】コメット アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルドナー、マルク ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】ビエリ、ロラント
(72)【発明者】
【氏名】アブレヒト、マイク
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー、ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ボイアーマン、ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア、ジャック
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−040969(JP,B1)
【文献】 特開2011−228420(JP,A)
【文献】 実開平04−023808(JP,U)
【文献】 国際公開第2007/069686(WO,A1)
【文献】 実開昭62−172407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/14
H01G 5/01
H01G 5/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小静電容量値と最大静電容量値の間で調整可能な真空可変コンデンサ(1)であって、
真空誘電体(12)によって分離されたコンデンサ電極(6、7)を含む第1の真空エンクロージャ(2)であり、当該第1の真空エンクロージャ(2)の壁が、駆動手段(34;40)と当該第1の真空エンクロージャ(2)の内側の前記コンデンサ電極(6、7)のうちの移動電極(7)との間で機械的運動を伝達する、以後、第1のベローズと呼ぶ第1の変形可能領域(11)を含む第1の真空エンクロージャ(2)と、
大気圧よりも低い所定の圧力の気体(20)を含む、以後、前真空エンクロージャと呼ぶ第2のエンクロージャ(21)であり、前記第1のベローズ(11)が、当該前真空エンクロージャ(21)内の前記気体(20)を前記第1の真空エンクロージャ(2)内の前記真空誘電体(12)から分離する第2のエンクロージャ(21)と
を備え、
前記駆動手段(34;40)が、当該真空可変コンデンサ(1)の前記第1及び第2のエンクロージャ(2;21)の外側に配置され、当該真空可変コンデンサ(1)のエンクロージャ(2;21)の内側の被駆動手段(9;29)への運動の無接触伝達を含む、
真空可変コンデンサ(1)。
【請求項2】
前記駆動手段(34;40)が、磁気継手によって被駆動手段(28;42、9)に結合された、請求項1に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項3】
前記磁気継手が、電磁場から遮蔽される遮蔽体を備える、請求項2に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項4】
前記駆動手段(40)がステッパ・モータ(15’)を備える、請求項1から請求項3までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項5】
前記駆動手段(34;40)及び/又は前記モータ(15’)を前記第1の真空エンクロージャ(2)の可変取付け板(4)から電気的に絶縁する絶縁要素(8)を備える、請求項1から請求項4までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項6】
当該真空可変コンデンサ(1)の電極(7、6;24、25)のところに存在する高電圧から前記駆動手段(34;40)が絶縁されるような態様で、前記第1の真空エンクロージャ(2)と前記第2の真空エンクロージャ(21)とが分離されて配置された、請求項1から請求項4までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項7】
以後、第2のベローズと呼ぶ第2の変形可能壁領域(27)を含む第3のエンクロージャ(22)を備え、前記第2のベローズ(27)が、第3のエンクロージャ(22)を前記前真空エンクロージャ(21)から分離し、前記第1のベローズ(11)が前記第2のベローズ(27)に機械的に連結された、請求項1から請求項6までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項8】
前記第2のベローズ(27)が前記第1のベローズ(11)と実質的に全く同じである、請求項7に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項9】
前記駆動手段(34)が、ボイス・コイル又は他のリニア駆動機構を備える、請求項1から請求項8までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項10】
モータ(34)によって供給され移動電極(7)へ伝達されるモータ力がねじ接続によっては伝達されないような態様で、前記駆動手段(34;40)が構成された、請求項1から請求項9までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項11】
前記被駆動手段が送りねじ(9)及びナット(14)を備え、前記ねじ(9)及び/又は前記ナット(14)がセラミック材料を含む、請求項1から請求項9までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項12】
前記最小静電容量値と前記最大静電容量値の間の最短調整時間が0.1秒未満となるように、前記電極(6、7)、前記駆動手段(34;40)及び前記前真空エンクロージャ(21)内の前記所定の圧力が構成された、請求項1から請求項11までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【請求項13】
前記最大静電容量値が、前記最小静電容量値の少なくとも10倍である、請求項1から請求項12までのいずれか一の請求項に記載の真空可変コンデンサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空可変コンデンサ(vacuum variable capacitor)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
真空可変コンデンサは例えば、1つ又は複数の真空可変コンデンサを調整することによって時間依存高周波負荷(time−dependent high−frequency load)のインピーダンスを発電機のインピーダンスと整合させることができるインピーダンス整合ネットワークにおいて有用である。このようなコンデンサの静電容量は、一方の電極又は電極セットをもう一方の電極又は電極セットに対して移動させることによって制御可能に調整することができ、誘電媒質として真空を使用することによって、例えばkV範囲の電圧又は数十kVの電圧で動作して、最大数百アンペアの電流を、200kHzという低い周波数又は200MHzという高い周波数で運ぶ大電力用途で、このようなコンデンサを使用することができる。このようなコンデンサは、大電力インピーダンス整合ネットワーク内の同調要素として使用することができ、このようなコンデンサはしばしば、高い分解能(通常はその範囲内の10000を超える設定点)及び長年数の動作寿命を有する広範囲(通常は1:50以上)にわたる迅速で、制御可能で信頼性の高い静電容量調整を必要とする、大電力無線周波(RF)用途に対して使用される。
【0003】
真空コンデンサは通常、ポンプ排気され密封されたエンクロージャ(enclosure)を備え、前記エンクロージャは通常、円筒形(管状)のセラミック(又は他の電気絶縁)片によって互いに電気的に絶縁された2つの金属カラー(collar)を備え、この円筒形(管状)のセラミック(又は他の電気絶縁)片は前述のカラーに、真空密(vacuum tight)状態を生み出すように接合されている。エンクロージャの内側には複数の電極があり、それらの電極は、それぞれの金属カラーに電気伝導可能に取り付けられている。これらの電極の機能は、(真空誘電体とともに)電気静電容量を生み出すことである。円筒形のセラミックも全静電容量に寄与するが、特に大きな寄与になることは稀である。一方の電極は通常、一方のカラーに機械的に固定されており、もう一方の電極は、やはり静止電極とすることができ、又は駆動システムによって真空エンクロージャの外側から移動させることもできる。したがって、可動電極はカラーに固く取り付けられてはおらず、(金属ベローズなどの)伸縮可能継手の一端に取り付けられている。伸縮可能継手の他端はカラーに取り付けられている。
【0004】
ほとんどの場合、この伸縮可能継手は、(真空の)エンクロージャの内側の空間を(大気圧の)非真空側から分離する気密シールでもある。駆動システム通常、案内管に沿ってシャフトを移動させるねじ及びナット・システムを備え、前記移動するシャフトは、伸縮可能継手を圧縮し又は伸張させることを可能にする。したがって、真空の外側のねじ/ナット案内システムの軸方向の運動が、真空の内側の可動電極の軸方向の運動に変えられる。これは通常、以後一般にベローズ(bellows)と呼ぶ伸縮可能継手によって実行されるが、他の伸縮可能継手を使用してもよい。この真空誘電媒質が、このようなコンデンサの名称のもとになっている。この真空圧力は通常10−4ミリバールよりも良い(低い)。コンデンサ誘電体として真空を使用することには、(具体的には温度にも又は周波数にも依存しない)安定した誘電体値を与えるという利点があり、コンデンサ誘電体として真空を使用すると、高電圧及び大電流でのコンデンサの安定した動作が可能となり、誘電損が非常に小さくなる。例えば、米国特許出願公開第2010202094(A1)号は真空可変コンデンサを記載している。真空コンデンサの具体的ないくつかの用途は、放送(例えば大出力送信機の発振回路)、又は半導体、ソーラ・パネル及びフラット・パネル製造における、例えば工業的なプラズマ増強化学蒸着(PECVD)プロセス中のプラズマ制御プロセスを含む。このような用途では、真空可変コンデンサの静電容量を調整することによって、(PECVDプロセスによって生成された負荷などの)RF負荷間のインピーダンス、及び工業規格によって固定された大電力RF発電機の固定されたインピーダンスを、
【数1】

に変化(及び整合)させることができる。インピーダンスの整合に失敗すると、その結果として、プロセスに電力が送達されず、その代わりに発電機内へ反射され、これが発電機の破壊につながり得る。
【0005】
したがって、真空コンデンサは、変化する負荷へRF電力を伝達するための鍵となる同調可能要素である。比較的にかさが大きいにもかかわらず、誘導同調又は他の形態の容量性同調(非機械式技術又は非真空技術)などの他の同調機構と比べると、真空可変コンデンサはいくつかの利点を提供する。実際に、真空可変コンデンサは、ほぼ連続的な同調を可能にし、非常に広い静電容量範囲にわたって優れた分解能を有し(典型的なステッパ・モータの微小ステップ特徴が使用されるときには、静電容量範囲を、10000を超える設定点に容易に分割することができる)、真空誘電体のおかげで非常に高い電圧能力を有する。さらに、極めて小さい誘電損のため、真空コンデンサは、多くの熱を生み出すことなく大電流を流すことを可能にし、その結果、最も要求の厳しい電力用途に関して実質上、競合するものがない。静電容量値の調整は、一方の電極をもう一方の電極に対して機械的に移動させ、それによって2つの電極表面間の距離又は電極表面の重なりを変更する(後者が最も一般的である)ことによって達成される。電極表面間の距離の変更及び電極表面の重なりの変更はともに静電容量値の変化に帰着する。
【0006】
MHz用途向けの典型的な真空可変コンデンサは、pF範囲(時に低nF範囲まで拡張される)の静電容量値を提供するよう設計され、単一のユニットは、約1:50又はそれ以上の静電容量範囲をカバーする。すなわち、最小設定Cminが例えば10pFである場合、同じユニットを使用して通常は最大設定Cmax=500pFを設定することができる。先行技術のコンデンサでは、CminとCmaxの間で可動電極を移動させるのに通常は1秒以上かかる。より小さな調整は、それにおおよそ比例してより短い時間を必要とする。最近、チップ製造プロセス又は他の半導体製造プロセスで使用されるプラズマ・プロセス中及び連続したプラズマ・プロセス間の調整時間がかなり短縮され、その結果、インピーダンス整合において、及び無線周波電力を使用するプロセス全体において、真空可変コンデンサが時にボトルネック要素となっている。制御ソフトウエアの高速化については進歩が見られるが、所与のモータを使用して機械部品(移動電極)を移動させることができる速度には物理的な限界がある。速度を制限する1つの因子は、真空密エンクロージャの内側と外側の圧力差(1バール)に起因するかなり大きな力に逆らうのに必要なモータ出力である。
【0007】
このように、現状技術の真空可変コンデンサは、主にモータの出力、並びにコンデンサの可動電極を移動させるのに使用する駆動システムのねじ及びナットの圧力−速度限界(いわゆるPV値)によって、速度が制限されている。この用途での高いPV値は、駆動システムのナットとねじ山との間の高い接触圧力につながり、このことは、前記ねじ/ナット・システムの摩耗に負の影響を及ぼし、より早期の故障に帰着する(又は、その代わりにねじ/ナット・システムの定期的な交換が必要となる)。
【0008】
先行技術のコンデンサにはさらに、ベローズの膜応力及び曲げ応力がかなり大きいという欠点がある。これらの応力が大きいほど、故障するまでにベローズが耐え得る圧縮/伸張サイクル数(ライフサイクル)は低下する。
【0009】
駆動システムに対して使用されているモータのタイプにかかわりなく、先行技術の真空可変コンデンサの圧力差に抗して機能するためには、以下に説明するように、必然的に大きなトルクが必要となる。
【0010】
真空可変コンデンサを駆動する目的には通常、ステッパ・モータが使用される。これは、ステッパ・モータの位置決め精度(分解能)及びその高い剛性(stiffness)(ステッパ・モータは、その最大保持トルクを静止状態(standstill)で発生させ、通常はブレーキを必要としない)のためであり、また、ステッパ・モータが、大部分の用途に対して満足のいく速度を有するためである。ステッパ・モータは通常、600RPM又は1200RPMで動作して、最も一般的な真空可変コンデンサを駆動することができ、それでも、真空力(vacuum force)に逆らって機能するのに十分なトルクを提供することができる。しかしながら、残念なことに、ステッパ・モータの1つの特性は、速度を速めると使用可能なトルクが小さくなることである。その結果、非常に速い速度ではステップ損が生じ、精度が低下する。(サーボ・モータ、リニア・モータなどの)その他モータでも高速ではトルクが低下する。より高いトルクとより速い速度の組合せを得ることを可能にする唯一の方策は、モータのサイズ及びコストを思い切って増大させることである。これは、OEM(original equipment manufacturer:相手先商標製造会社)インピーダンス整合ネットワークに組み込む構成要素に対して受け入れられる選択肢ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010202094(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術の真空可変コンデンサの上記の欠点及びその他の欠点を解決することにある。具体的には、本発明の目的は、調整速度が増した改良された真空可変コンデンサを、好ましくはモータのサイズを増大させずに、且つ/又は装置のサイズを増大させずに、且つ/又は装置の調整分解能を低下させずに提供することにある。
【0013】
追加の利点は、最大動作電圧/電力、装置のコンパクト性又は装置の調整分解能に関する妥協なしに装置の寿命を延ばす(具体的には静電容量調整サイクル数を増加させる)ことを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、最小静電容量値と最大静電容量値の間で調整可能な真空可変コンデンサであって、
真空誘電体によって分離されたコンデンサ電極を含む第1の真空エンクロージャ(1次真空エンクロージャとも呼ぶ)であり、第1の真空エンクロージャの壁が、駆動手段と第1の真空エンクロージャの内側のコンデンサ電極のうちの移動電極との間で機械的運動を伝達する第1の変形可能領域(ベローズとも呼ぶ)を含む第1の真空エンクロージャと、大気圧よりも低い所定の圧力の気体を含む前真空エンクロージャ(pre−vacuum enclosure)と呼ぶ第2のエンクロージャであり、第1の変形可能領域が前真空エンクロージャを第1の真空エンクロージャから分離するような態様で配置された第2のエンクロージャと
を備える真空可変コンデンサによって達成される。
【0015】
第2のエンクロージャ(前真空エンクロージャ又は2次エンクロージャとも呼ぶ)は、気体、好ましくは大気圧よりも低圧の気体を含み、それによって、ベローズの両側の圧力差を低減させる役目を果たす。圧力差のこの低減は、ひいてはベローズを移動させるのに必要なモータ・トルクの量が低減し、且つ/又は所与のモータを使用して達成することができる調整速度が増大する。
【0016】
駆動手段は、真空可変コンデンサのこれらのエンクロージャの外側に配置される。したがって、駆動手段を冷却するため、特に駆動手段を動かすモータを冷却するための最適な対流が提供される。駆動手段は、その運動を、真空可変コンデンサの内側、特に第2のエンクロージャの内側の被駆動手段(driven means)に伝達する。選択された駆動システムに応じて、駆動手段と被駆動手段とを異なる実施例とすることができる。
【0017】
一実施例では、駆動手段が、その運動を、真空可変コンデンサのエンクロージャの内側の被駆動手段へ伝達する無接触伝達(contact free transfer)を含む。駆動手段は、磁気結合(magnetic coupling)によって被駆動手段に結合されていることが好ましい。例えば、駆動手段は、回転する第1の磁気板(magnetic plate)を備えることができ、被駆動手段は、第1の磁気板の磁気力によって回転する第2の磁気板を備えることができる。第1の磁気板は例えばモータによって回転させることができる。第2の磁気板をねじ/ナット・システムに接続することができる。さらに、駆動手段を誘導モータとすることができ、被駆動手段をボイス・コイルなどにすることができる。有利には、この磁気継手が、真空コンデンサの動作中、如何なる電磁場からも遮蔽される遮蔽体(shielding)を備える。
【0018】
他の実施例では、駆動手段を、ねじ/ナット・システムとして実現することができ、駆動手段は、ねじ部分を有するシャフトを備えるモータによって実現され、シャフトは、それらのエンクロージャの外側から、真空可変コンデンサのエンクロージャ内へ延びる。被駆動手段は、少なくともこのエンクロージャの内側のナットによって実現される。
【0019】
前真空エンクロージャの存在は、ナットを駆動し、ベローズを圧縮し又は伸張させ、第1の真空エンクロージャの内側の可動電極を移動させるのにモータがより小さなトルクを必要とすることを意味する。このことは、同じサイズ及び出力のモータを使用したより速い速度を可能にする。この必要なトルクの低減は、ベローズに対する真空力の低減だけによるものではないことに留意されたい。この真空力は、ナットとねじとの間にかなり大きな接触力(摩擦)を生じさせる。圧力差の低減、したがって真空力の低減の結果、ナットとねじ山との間の回転摩擦の量がかなり低下する。この低減した回転摩擦の結果、シャフトを駆動するためにモータが必要とするトルクの量もかなり低下する。
【0020】
この前真空エンクロージャは、1次真空と同じ程度に減圧されている必要はない。実際に、1次真空圧力は、誘電体として十分に性能を発揮するために大気圧よりも何桁も低くなければならないが、前真空エンクロージャ内の圧力は、大気圧よりも1桁低いだけでよく、この大気圧よりも1桁低い圧力は、例えば駆動システム(ねじ/ナットなど)に作用する軸方向力を約1/10にするのに既に十分である。駆動システムに作用する力が低減すると、モータの必要トルクがかなり小さくなり、これにより速度を速くすることができる。
【0021】
さらに、この構成は、ベローズの寿命を延ばすことができる。ベローズは、低減された圧力差の下で2つの容積を分離し、したがって圧縮/伸張時により小さな膜応力及び曲げ応力を受ける。この低減された真空力はさらに、ねじ及びナット駆動システムの摩耗を低減させ、したがってそれらの構成要素の寿命を延ばす。
【0022】
一実施例では、駆動手段を動かすモータ、例えばステッパ・モータを、これらの2つのうちのいずれか一方の真空エンクロージャの外側に置くことによって(すなわちモータは大気圧下にある)、改良された可変真空コンデンサが達成される。これは、前記モータの最適な対流冷却を可能にする。
【0023】
さらに、大気圧側の駆動システムの部品と前真空エンクロージャ内の駆動システムの部品との間に磁気継手を使用することによって、モータと前真空エンクロージャ内の駆動システム部品との間の運動の無接触伝達が達成される。駆動手段から被駆動手段への回転運動の伝達は純粋に磁気継手によって実行される。この配置を使用するときには、たとえ前真空エンクロージャとモータ・エリアの間にほぼ1気圧の圧力差があっても、可動部品はどれも、この圧力差に起因する力を受けない。
【0024】
真空コンデンサは通常、強い電磁場の中又は強い電磁場の近くで動作するため、適正に動作させるためには、磁気継手の磁石を、このような場から遮蔽する必要がある。
【0025】
前真空エンクロージャと1次真空エンクロージャの間の圧力差はあまり大きくないため(例えば約0.1気圧程度になるように圧力差を選択することができる)、これらの2つの真空エンクロージャを分離するベローズに対する応力は、真空コンデンサ内の現在のベローズに対するものに比べてはるかに小さい。したがって、ベローズの機械的特性に対する厳格さは、(現在の真空コンデンサに前真空エンクロージャが存在しないために)ベローズの両側に1気圧の圧力差が常に存在する現在の真空コンデンサで使用されているベローズに比べて緩くなる。したがって、本発明は、既存のベローズを使用したときにベローズ寿命をより長くすることを可能にし、又は、その代わりに、ベローズに対する材料の選択肢をより多くすることを可能にする。従来のベローズの代わりに他の形状の伸縮可能継手を使用することもさらに可能である。
【0026】
圧力差が低減し、その結果として力が低減するという同じ理由から、前真空エンクロージャ内の駆動システムのねじ/ナット対又は磁気板対の必要な「圧力×速度(PV)」値はより小さくなる(Pが低くなる)。これによって、ねじ/ナット・システムのより速い速度及び/又はより長い寿命が可能になる。
【0027】
最も重要なのは、真空力が本質的には排除されるため、運動を達成するために必要なモータ、特にステッパ・モータのトルクが低減されることである。必要なトルクが低減されるおかげで、モータ、具体的にはステッパ・モータは、ステップ損を生じることなく、より速い速度で動作することができ、したがって、真空可変コンデンサの移動電極の位置及び関連静電容量値を、現在の現状技術の真空可変コンデンサよりもはるかに速い速度まで制御する際の完璧な精度が維持される。
【0028】
本発明に基づく真空可変コンデンサの一実施例では、電極、駆動手段及び前真空エンクロージャ内の所定の圧力が、最小静電容量値と最大静電容量値の間の最短調整時間が0.1秒未満になるように構成される。最大静電容量値は、最小静電容量値の少なくとも10倍とすることができる。
【0029】
本発明に基づく真空可変コンデンサの一実施例では、ベローズが、1,000万サイクルに耐えるように構成されており、1サイクルは、第1の静電容量値から、第1の静電容量値の10倍である第2の静電容量値への第1の静電容量調整と、第2の静電容量値から第1の静電容量値への第2の静電容量調整とを含む。電極及び駆動手段のモータは、前記サイクルのうちの1サイクルに対する最短調整時間が0.05秒未満となるように構成される。
【0030】
本発明に基づく真空可変コンデンサの一実施例では、モータ(15)及び駆動手段を制御する制御手段がそれぞれ提供され、これらの制御手段、モータ及び駆動手段が、最大静電容量値と最小静電容量値の差の1/5000よりも小さな増分で静電容量が調整可能であるような態様で構成される。
【0031】
本明細書に記載された高速真空可変コンデンサは例えば、前真空エンクロージャの外側にモータが配置され、前真空エンクロージャ内の気体が例えば約0.1バールの圧力を有するように構成される。0.1バールの圧力は、ベローズに対する真空力を約90%減らすが、それでも、モータが過熱しないような対流冷却を可能にするのに十分な分子を提供する。より良い真空(より低い圧力)は、外部環境に向かって熱を十分に排出することを許さない可能性があり、それによってモータの過熱及びシステムの故障につながる可能性がある。一般に、0.05バールから0.5バールの間の圧力は、追加の冷却手段を必要とせずに、真空力の有用な低減を提供することが分かっている。しかしながら、大気圧までの任意の圧力を使用することができ、大気圧までの圧力は依然として改良を提供する。
【0032】
原理上は、前真空チャンバを完全に排気することによって真空力をゼロまで低減させることができる。これによって、ねじ/ナット又は磁気継手を駆動するのに必要なモータ・トルクは非常に小さな値にまで低減するであろう。しかしながら、真空力は、ねじ−ナット駆動機構に対して有用な軸方向バイアス力を提供する。この軸方向バイアス力は、ねじ/ナット駆動機構の遊びの量をかなり低減させ、それによってコンデンサ調整の精度(分解能)に寄与する。ベローズは、ばねのような固有の力を有することがあり、この力も、ねじ−ナット機械界面をバイアスする効果を有する。しかしながら、ベローズは、その伸長範囲の1点では圧縮されており、その伸長範囲の別の部分では引っ張られていることがあり、そのため、ベローズは、その伸長範囲のどこにベローズがあるのかに応じて、正のバイアス力及び負のバイアス力を駆動ねじ/ナットに対して発揮する。したがって、真空力とは反対の方向に作用するベローズの最大ばね力よりも真空力の方が大きくなるような態様で、ベローズの両側の圧力差を構成した方が有利である。言い換えると、ベローズがその中立位置を(圧縮から伸長へ)通過するときであっても、合力「真空力+ベローズばね力」が向きを変えるべきではない。実際には、それだけを見れば、ベローズ力は、それが圧縮モードで動作しているのか又は伸長モードで動作しているのかに応じて向きを変えているであろうが、(減らされた)真空力の追加が、これらの力の和が向きを変えないことを依然として保証する。これは、2次真空圧力を、コンデンサのベローズばね力の最大振幅を少なくとも等しくするのに十分な大きさとすることによって保証することができる。この合力の配向が変化すると、ねじ−ナット・システム又は磁気継手のバックラッシ(backlash)が可能になると考えられ、それによってコンデンサ(並びに関連する静電容量値及びインピーダンス値)の劣等な位置制御に帰着すると考えられる。言い換えると、減らされた真空力は、その真空力がそれでも、反対方向のベローズ力(この力は、使用するベローズの機械的な特性に依存する)をちょうど補償するのに十分な大きさであるように決定されるべきである。
【0033】
同様の理由で、低減されてはいるが完全には補償されていない真空力の他の利点は、低減された真空力が依然として、ベローズの軸が水平でないときに可動電極に加わる重力をも少なくとも補償する場合に、コンデンサを、任意の向きに位置決めし、インピーダンス整合ネットワークに組み込むことができる点である。ベローズ及び電極質量の典型的な選択では、0.1バールの圧力が適当であることが分かった。しかしながら、他の状況では、これよりも高い圧力又は低い圧力の方が有効なこともある。
【0034】
次に、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】先行技術の真空可変コンデンサの略断面図である。
図2】真空可変コンデンサのエンクロージャの外側に駆動手段を備える、本発明の第1の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
図3】本発明の第2の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
図4】本発明の第3の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す略断面図である。
図5】本発明の第4の実施例に基づく真空可変コンデンサの他の実例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
これらの図は、例示だけを目的に提供するものであり、これらの図を、請求する特許保護の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0037】
異なる図面で同じ参照符号が使用されている場合、それらの符号は、同種の特徴又は対応する特徴を指すことが意図されている。しかしながら、異なる参照符号の使用が、それらの符号が指す特徴間に違いがあることを示しているとは限らない。
【0038】
図1は、先行技術の真空可変コンデンサの実例の高度に簡略化された略断面図を示す。この真空可変コンデンサは、ポンプ排気され密封された真空エンクロージャ(2)を備え、真空エンクロージャ(2)は、円筒形のセラミック片(5)によって互いに電気的に絶縁された2つの金属カラー(3、4)によって形成されており、円筒形のセラミック片(5)はカラー(3、4)に、真空密状態を生み出すように接合されている。エンクロージャ(2)の内側には静止電極(6)及び可動電極(7)があり、それらの電極は、それぞれの金属カラー(3、4)に電気伝導可能に取り付けられている。これらの電極の機能は、真空誘電体(12)とともに、電気静電容量を生み出すことである。静止電極(6)は一方のカラー(3)に機械的に固定されており、可動電極(7)は、送りねじ(lead screw)(9)及びナット(14)を備える駆動システムによって移動させることができる。伸縮継手又はベローズ(11)が、真空エンクロージャ(2)の外側の大気圧から真空誘電体(12)を分離している。圧力差(ΔP≒1バール)のため、ベローズ(11)に対して、及びナット(14)と送りねじ(9)の間の接触表面に対して力が作用することに留意されたい。真空可変コンデンサの静電容量値を変化させるため、ねじ(9)を適当な回数だけ又は適当な数分の1回転だけ回転させることによって、電極(6)と電極(7)の重なりを調整することができる。この回転は通常、モータ(15)を使用することによって実行される。300N以上にもなることがある真空力がベローズ(11)に作用して、ベローズ及びナットを真空の方へ(すなわち図1では下向きに)引っ張る。この真空力の大きさは、真空(12)と周囲の大気との間の界面を形成するベローズ(11)の幾何形状に依存する。上で論じたとおり、この真空力が、モータ(15)に対する大トルク要件につながり、この要件がモータ(15)の速度を制限する。
【0039】
図2は、本発明の第1の実施例に基づく真空可変コンデンサ(1)の実例を、同様に簡略化された形で示す。この真空可変コンデンサは、第1の真空密エンクロージャ(2)、電極(6、7)、モータ(15’)、送りねじ(9)、ナット(14)及びベローズ(11)を備える。モータ(15’)は例えばステッパ・モータである。加えて、部分真空エンクロージャ、前真空エンクロージャ又は第2のエンクロージャとも呼ぶ低圧エンクロージャ(21)が、第1の真空エンクロージャ(2)に対して密封されている。前真空エンクロージャ(21)は、大気圧よりも低い例えば0.1バールの圧力を有する気体(20)を含むことができる。
【0040】
図1のように大気から真空誘電体(12)を分離する代わりに、ここでは図2のベローズ(11)は、密封された前真空エンクロージャ(21)内に含まれる低圧気体(20)から真空誘電体(12)を分離する。
【0041】
前真空エンクロージャ内の圧力が0.1バールである場合、ベローズ(11)及びナット(14)に作用する真空力は、図1に示した真空可変コンデンサ内の対応する真空力の約1/10になる。
【0042】
真空力が低減されるため、モータ(15)が必要とするトルクも、図1の真空可変コンデンサで必要となるトルクよりも小さくなる。
【0043】
本発明に基づくこの実施例では、モータ(15’)が、送りねじ(9)を駆動するために使用される駆動手段(40)に接続されていることに気づくことができる。したがって、この実施例では、送りねじ(9)が、電極(6)と電極(7)の重なりを調整する被駆動手段の役目を果たす。この実例では、駆動手段(40)が、ステッパ・モータの回転軸(axle)を含む。モータ(15’)及び駆動手段(40)は、前真空エンクロージャ(21)の外側に位置する。駆動手段(40)及び被駆動手段は磁気継手に接続されている。モータ(15’)の回転軸は第1の磁気板(41)に固定されており、第1の磁気板(41)は、第2のエンクロージャ(21)の壁に沿って第2のエンクロージャ(21)の外側に運動可能に配置されている。第1の磁気板は、モータ(15’)の回転軸に強固に固定されているため、第1の磁気板を駆動手段の部分とみなすことができる。第1の磁気板(41)は、第2のエンクロージャ(21)内に配置された送りねじ(9)の反対側に位置する。送りねじ(9)は第2の磁気板(42)に固定されており、第2の磁気板(42)は、第2のエンクロージャ(21)の壁に沿って第2のエンクロージャ(21)の内側に運動可能に配置されている。第2の磁気板(42)は送りねじ(9)に強固に固定されており、被駆動手段の部分である。駆動手段(40)の運動は、磁気板(41)と磁気板(42)の間の磁気力によって被駆動手段に伝達される。この構成は、モータ(15’)と可動電極(7)の間での運動の無接触伝達を可能にし、さらに、第2のエンクロージャ(21)の内側の気体圧力を賢明に下げることによって、ベローズ(11)及びねじ(9)とナット(14)のねじ山の接触表面に作用する前に定義した「真空力」を低減させ又は完全に排除することさえできるという追加の利点を提供する。
【0044】
図2は、前真空エンクロージャ(21)の容器と第1の真空エンクロージャ(2)の金属カラー4との間に絶縁体(8)を示しているが、それでもなおモータがコンデンサの高電圧から電気的に絶縁される場合には、この構成において絶縁体(8)は必要ないと考えられる。この構成では、この無接触設計によって生じる空隙が十分な絶縁を提供する可能性があり、又は追加の部品によってモータ(15’)を意図的に絶縁することもできる。この追加の部品は、モータ(15’)と駆動手段(40)の回転軸との間に直接に位置決めされることが好ましいであろう。この絶縁については後にこの説明の中で言及される。
【0045】
真空可変コンデンサ(1)の可変側のカラー(4)はしばしば「可変取付け板(variable mounting plate)」と呼ばれる。カラー(4)は、インピーダンス整合ネットワーク又は他のシステム内に真空可変コンデンサを取り付けるために使用される。第1の真空密エンクロージャ(2)の内側の異なる電極配置は、駆動システムの取付けを単純にすることを可能にする。これについては本発明の第2の実施例に関して説明する。
【0046】
この実施例(図2)に戻る。真空可変コンデンサの寿命の延長についての以下の議論のため、前真空エンクロージャ(21)内の圧力が0.1バールであると仮定する。
【0047】
第1に、ベローズ(11)の両側の圧力差(ΔP)が90%低減し、この低減によって、伸長又は圧縮の際のベローズ(11)の膜応力及び曲げ応力がより小さくなり、したがって寿命が延長されるため、ベローズ(11)の寿命が向上する。第2に、より低い圧力値のおかげでPV値が低減するため、ねじ(9)及びナット(14)の寿命も改善される。PVは、圧力(pressure)と速度(velocity)の積であり、ここでの圧力及び速度は、ねじ(9)とナット(14)の対合するねじ山の接触表面における圧力及び速度である。PV値は、例えばねじ及びナットの摺動表面などの接触した2つの摺動表面の機械的摩耗及び故障寿命(time to failure)を予測する目的に使用されることがある一般的な工学値である。ベローズ(11)の両側の圧力差が低減される結果、ねじ(9)とナット(14)の対合するねじ山の表面間の接触圧力が小さくなる。図2に示した真空可変コンデンサ(1)を使用すると、ねじ(9)とナット(14)の間の接触圧力が低減することによって、以下の有益な特性のうちの1つ又は複数の特性が生じる。
所与のねじ/ナット対について、摩耗が減り、寿命が長くなる。
所与のねじ/ナット・システム及び同じ寿命要件について、寿命を縮めることなく、ねじ/ナット駆動システムがより速い速度で動作することができる。
ねじ/ナット材料のより安価な組合せを選択しても、同じ速度で同じ寿命に到達する。
寿命を縮めることなくより小さなねじ及びナットを選択することができる(したがって真空コンデンサの小型化に寄与する)。
【0048】
前述のとおり、モータ(15’)は例えばステッパ・モータとすることができる。或いは、他のタイプのDCモータ又はACサーボ・モータを使用することもできる。
【0049】
図3は、本発明の第2の実施例に基づく真空可変コンデンサの実例を示す。この実例では、第1の真空エンクロージャ(2)の内側の連動化された(ganged)2組の電極(24、25)の配置、及び真空エンクロージャ(2)の部分としての第2のセラミック絶縁体(32)の使用が、前真空エンクロージャ(21)の外側に位置するモータ(15’)を接続することを可能にする。任意選択で、真空可変コンデンサ(1)の動作中に印加される高電圧からモータを電気的に絶縁するための絶縁片を前真空エンクロージャが提供してもよい。この場合も、図2に示した第2の実施例に関して既に説明したのと同様に、モータ(15’)はその駆動手段(40)とともに前真空エンクロージャ(21)の外側に配置され、第1及び第2の磁気板(41)及び(42)を備える磁気継手によって被駆動手段に結合される。
【0050】
図2及び3で理解できるように、モータ(15’)及び駆動手段(40)は前真空エンクロージャ(21)の外側に位置し、送りねじ(9)の形態の被駆動手段は前真空エンクロージャ(21)の内側に位置する。前真空エンクロージャ(21)は、ベローズ(11)の両側の圧力差を低減させる圧力容器の役目を果たす。このような前真空エンクロージャの設計はかなり大きな柔軟性を提供する。例えば、弁及びポンピング・システム(図3には示されていない)を使用することにより、前真空エンクロージャの内側の圧力を動的に調整することによって、真空力を静的に打ち消すだけでなく、圧縮された又は伸長したベローズのばねのような変化する力を動的に打ち消すこともできると考えられる。
【0051】
図4は、本発明の第3の実施例に基づく真空可変コンデンサ(1)の実例を示し、この真空可変コンデンサは、第1及び第2の実施例と同様に、第1の真空エンクロージャ(2)を備え、第1の真空エンクロージャ(2)は、第1及び第2の実施例に関して説明したものと同様に、真空(12)中の電極(6、7)と、低圧の気体(20)を含む前真空エンクロージャ(21)から真空(12)を分離するベローズ(11)とを含む。
【0052】
図4の真空可変コンデンサはさらに、第3の真空エンクロージャ(22)及び第2の変形可能壁領域又はベローズ(27)と、前真空エンクロージャ(21)とを備え、これらは、第3の真空(13)と前真空気体(20)の間の圧力差に起因する第2のベローズ(27)の正味の真空力及び第2のベローズ(27)のベローズばね力が、第1のベローズ(11)に対する、対応する正味の真空力及びベローズばね力と実質的に同じとなり、しかしこれらとは反対の方向に作用するように構築されている。
【0053】
図4に示されているとおり、第1のベローズと第2のベローズは、機械式連結手段(このケースでは共通のシャフト28)によって接続されており、このことは、ベローズ(11)及び連結手段(28)に作用する真空力及びばねのような力が、ベローズ(27)及び連結手段(28)に作用する真空力及びばねのような力によって正確に補償されることを保証する。その結果、連結手段(28)はゼロ合力を受ける。したがって、例えばリニア誘導モータ若しくはボイス・コール(34、29)又は他の適当な装置の駆動力などのかなり弱い駆動力によって、連結手段、具体的には共通のシャフトを制御可能且つ迅速に移動させることができる。このことは、可変真空コンデンサの可動電極(7)を容易且つ素早く移動させることを可能にし、したがって、先行技術の可変真空コンデンサに比べて改良された静電容量調整を可能にする。
【0054】
2つのベローズ(11及び27)を連結する可能なさまざまな機械式連結機構を思い浮かべることができるが、それぞれの端が、第1のベローズ(11)及び第2のベローズ(27)の対応するそれぞれの端部に固定されたまっすぐな貫通シャフト(28)は、ねじ継手又は他の可動部品を必要としないという利点を有する。
【0055】
図4は、第1の真空エンクロージャ(2)と第2の真空エンクロージャ(22)が共通の前真空エンクロージャ(21)を共用して、対応するそれぞれのベローズ(11、27)の両側の圧力差を低減させる配置を示している。しかしながら、2つの別個の前真空エンクロージャを使用して同じ結果を達成することも可能であると考えられる。
【0056】
したがって、この配置を使用するときには、リニア駆動機構又はねじ及びナットを含まない他の移動手段を使用すると特に有利である。さらに、この実施例を使用するときには、真空可変コンデンサを調整するのに必要な力が、上で論じた実施例よりもいっそう低減し、よりいっそう速い速度を達成することができる。図4の真空可変コンデンサを調整する目的には例えば、リニア誘導モータ、ボイス・コイル型モータなどの、リニア・モータ(34)を、これらのエンクロージャの外側の駆動手段として使用し、ボイス・コイル(29)を、前真空エンクロージャ(21)の内側の被駆動手段として使用することができる。さらに、ベローズに対する正味の真空力及びばね力が事実上ゼロまで低減するため、静電容量調整速度が、前真空エンクロージャ(21)内の圧力に依存しない。したがって、前真空エンクロージャ(21)内の圧力は、大気圧又は大気圧よりも高い圧力を含む任意の値とすることができる。実際、この第3の実施例の真空可変コンデンサは、前真空エンクロージャ(21)が全くなくとも機能することができる。第2の真空エンクロージャ(21)内の圧力は、第1の真空エンクロージャ(2)及び/又は第3の真空エンクロージャ(22)内と同じとすることができる。それでも、ベローズ(11、27)によって機械式連結機構(28)に伝達される真空力/ばね力は相殺されると考えられる。
【0057】
図5は、本発明の第4の実施例に基づく真空可変コンデンサのさらなる実例を示す。このコンデンサの電極(6)及び(7)、ベローズ(11)、送りねじ(9)並びにナット(14)の全体的な構成は、図2に示されているとおりに実現される。図5では、駆動手段(40)がエンクロージャ(43)内に収容されており、軸受(44)によって支持されている。磁気板(41)及び(42)はそれぞれ、エンクロージャ(43)及び(21)内の磁気ブロックとして実現されている。これらの磁石は、これらのブロック及びこれらのブロックが取り付けられた対応するそれぞれのエンクロージャ(43)及び(21)内の対応するそれぞれの部品の配向がそろった完璧な結合(perfect orientational coupling)を保証する十分に強いものが選択される。回転するように結合されたこれらの2つのシステムの運動中、より重要には加減速中の「滑り(slipping)」は回避されなければならない。
【0058】
真空可変コンデンサの真空エンクロージャの外側にモータ(15’)を配置すると、いくつかの真空エンクロージャを有するコンデンサの単純な設計が可能になり、コンデンサの保守が容易になる。しかしながら、いくつかのモータは大気圏外で機能することが知られており、したがって真空に適合しているが、電極を含む1次真空エンクロージャ(2)内に電気モータを直接に組み込むことは実行可能ではない。その理由は、このようなモータでさえも気体を放出し、誘電目的に必要な真空を劣化させるためである。10−3ミリバールよりも良い(低い)、好ましくは約10−4よりも良い(低い)真空圧力を維持する必要があるが、そのような真空圧力は、モータ部品の長期気体放出速度と両立しないことが分かった。1次エンクロージャ(2)内の真空の質が、(よく知られている「パッシェンの法則(Paaschen law)」によって与えられる)しきい値を超えて悪化すると(すなわち例えばモータ部品の気体放出現象により圧力が増大すると)、電圧破壊によって真空コンデンサは故障することになる。
図1
図2
図3
図4
図5