(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275258
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】自動車の旋回扉を制動する制動装置
(51)【国際特許分類】
F16F 7/04 20060101AFI20180129BHJP
E05F 3/16 20060101ALI20180129BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20180129BHJP
E05F 15/603 20150101ALI20180129BHJP
【FI】
F16F7/04
E05F3/16
B60J5/10 K
E05F15/603
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-537247(P2016-537247)
(86)(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公表番号】特表2016-536538(P2016-536538A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2014067959
(87)【国際公開番号】WO2015028410
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】102013109314.0
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】Brose Fahrzeugteile GmbH & Co. KG, Bamberg
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】ニコ エアテル
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ライヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニールス グラーゲ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ヘーフナー
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0249343(US,A1)
【文献】
特開2004−044368(JP,A)
【文献】
特開平04−337134(JP,A)
【文献】
特開平08−277871(JP,A)
【文献】
実開昭51−076269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J5/00−5/14
E05F1/00−17/00
F16B21/00−43/02
F16C11/00−11/12
F16D49/00−71/04
F16F7/00−7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動軸線(3)周りに制動された状態で回転可能な、制動力を出力する接続要素(4)を備える、自動車の旋回扉(2)を制動する制動装置において、
前記接続要素(4)を収容するハウジング(7)を備え、前記ハウジング(7)は、第1のハウジング部分(8)と第2のハウジング部分(9)とを有し、制動力は、両前記ハウジング部分(8,9)相互の調整動作により調整可能であり、
前記ハウジング(7)に、両前記ハウジング部分(8,9)を相互に調整自在に動きを制限する調整機構(15)が対応して配置されており、
前記調整機構(15)は、ねじ機構を有し、前記ねじ機構は、少なくとも1つのねじ山部分(16)を有し、前記少なくとも1つのねじ山部分(16)は、少なくとも1つの対応ねじ山部分(17)にねじ係合する又はねじ係合可能であり、
前記ねじ山部分(16)と前記対応ねじ山部分(17)との間の前記係合は、螺合させる動きを阻止する係止を介した係合である、ことを特徴とする、自動車の旋回扉を制動する制動装置。
【請求項2】
前記制動力の発生は、少なくとも2つの制動要素(11,12,13)間の摩擦力結合に起因する、請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記制動要素(11,12,13)の少なくとも1つは、前記制動軸線(3)に関して前記ハウジング(7)に対して相対回動不能に配置されており、かつ前記制動要素(11,12,13)の少なくとも1つは、前記接続要素(4)に連結されている、請求項2に記載の制動装置。
【請求項4】
前記制動要素(11,12,13)には、相互に予圧が加えられており、かつ前記予圧は、両前記ハウジング部分(8,9)相互の調整動作により調整可能である、請求項2又は3に記載の制動装置。
【請求項5】
前記制動要素(11,12,13)の前記予圧は、前記ハウジング部分(8,9)相互の予圧を伴う、請求項4に記載の制動装置。
【請求項6】
前記調整動作は、前記制動軸線(3)に沿った長手方向の動き又は前記制動軸線(3)周りの螺合させる動きである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項7】
前記調整機構(15)は、伝動装置のように働き、前記ハウジング部分(8,9)の一方に作用する操作する動作を調整動作に変換する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項8】
回転運動又は旋回運動である前記操作する動作は、前記調整機構(15)を介して、前記制動軸線(3)に沿った直線運動成分を有する調整動作に変換される、請求項7に記載の制動装置。
【請求項9】
前記調整機構(15)は、両前記ハウジング部分(8,9)間のバヨネット継手状のカップリングを提供し、その結果、両前記ハウジング部分(8,9)相互の動きの制限は、それぞれ前記制動軸線(3)に関して、軸方向運動と、続いての旋回運動とを必要とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項10】
前記ねじ山部分(16)と前記対応ねじ山部分(17)との間の前記係合は、両前記ハウジング部分(8,9)間のバヨネット継手状のカップリングを提供する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項11】
前記調整機構(15)は、両前記ハウジング部分(8,9)を係止により相互に調整自在に動きを制限する係止装置(20)を提供し、両前記ハウジング部分(8,9)間の前記係止は、前記制動軸線(3)に沿った両前記ハウジング部分(8,9)の直線調整動作により形成可能である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項12】
少なくとも一方のハウジング部分(8)は略ポット状に構成され、向きは前記制動軸線(3)に合わされており、かつ/又は少なくとも一方のハウジング部分(9)は略ふた状に構成され、向きは前記制動軸線(3)に合わされている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項13】
自動車の旋回扉(2)の位置をモータ駆動式に調節する旋回扉駆動装置であって、前記旋回扉駆動装置(25)のパワートレーン内に、又はパワートレーンに沿って、請求項1から12までのいずれか1項に記載の制動装置(1)が配置されていることを特徴とする、自動車の旋回扉の位置をモータ駆動式に調節する旋回扉駆動装置。
【請求項14】
請求項13に記載の旋回扉駆動装置を製造する方法であって、前記制動装置(1)を前記旋回扉駆動装置(25)内に組み付ける前にかつ/又は前記旋回扉駆動装置(25)を自動車内に組み付ける前に、前記制動装置(1)を所定の制動力に調整することを特徴とする、旋回扉駆動装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、自動車の旋回扉を制動する制動装置、請求項14に記載の、このような制動装置を備える旋回扉駆動装置、及び請求項15に記載の、旋回扉駆動装置を製造する方法に関する。
【0002】
自動車の旋回扉の位置を快適に、とりわけ確実に調節することには、特に旋回扉重量が高いことを背景として、特別な意義がある。「旋回扉(Klappe)」なる概念は、本明細書において広範に解されるべきである。旋回扉には、自動車のリアゲート、リアリッド、エンジンフード、ドア、特にサイドドア、トランクフロア等が含まれる。本明細書では、自動車のリアゲートの位置調節が中心となる。
【0003】
自動車のリアゲートの制動は、とりわけ、重力に起因して起こり得る閉鎖運動に関して重要である。このことは、手動式に位置調節可能なリアゲートのみならず、特にモータ駆動式に位置調節可能なリアゲートにも当てはまる。後者の場合、旋回扉駆動装置の機能不全は、旋回扉の不意の閉鎖につながりかねない。このことは、既に言及した高いリアゲート重量に鑑み、重大な事故のリスクをはらんでいる。同様のことは、リアゲートに対して、強力なばね装置、例えばガス圧ばねにより、開放方向に予圧(プリロード)が加えられている場合にもいえる。
【0004】
本発明が出発点とする公知の制動装置(独国実用新案第202008016929号明細書)は、旋回扉駆動装置に対応して配置されている。制動装置自体は、摩擦係合に起因する制動力を出力する摩擦ブレーキとして構成されている。明りょうな説明の意味で、「制動力」なる概念は、本明細書では狭義の制動力と制動トルクとを含んでいる。
【0005】
公知の駆動装置における欠点は、制動装置から出力される制動力が製造公差に左右されており、その結果、狭い制動力公差を厳守するには、高い製造コストを要するという事実にある。
【0006】
本発明の根底にある課題は、狭い制動力公差を低い製造コストで実現することができるように、公知の制動装置を構成し、改良することである。
【0007】
上記課題は、請求項1の上位概念部に記載の制動装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0008】
重要であるのは、制動力が調整可能であるように制動装置を設計するという基本思想である。これにより、既に制動装置の組立て時に、制動プロセスに関与する構成要素の製造公差が補償される。
【0009】
制動装置の、頑強であると同時に低コストの構造という意味で、さらに、制動力を出力するのに用いられる接続要素が、ハウジングにより収容されており、ハウジングが、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを有しており、制動力が、両ハウジング部分相互の調整動作により調整可能であることを提案する。この場合、重要であるのは、制動装置の位置調節可能なハウジングを制動力の調整に利用するという思想である。さらに、ハウジングの、結果として生じる重複利用、すなわち、一方では、制動プロセスに関与する構成要素を収容するのに利用し、他方では、制動力を調整するのに利用するという重複利用は、特にコンパクトな装置につながる。
【0010】
接続要素は、いわば、制動すべき要素に対するインターフェースである。相応に接続要素は、制動軸線周りに制動された状態で回転可能である。接続要素は、原則、制動すべき要素と一体に構成されていてもよいし、かつ/又は制動すべき要素の構成部分であってもよい。
【0011】
請求項2に記載の特に好ましい態様において、制動装置は、摩擦力結合(reibschluessig:摩擦力による束縛)を利用した制動装置であり、これにより、調整可能性は、特に簡単に構成されている。詳細には、請求項3に提案するように、少なくとも2つの制動要素が相互に調整自在に予め付勢されており、これにより、結果として生じる制動力の調整可能性が得られる。
【0012】
請求項5乃至12に記載のさらに好ましい態様は、ハウジングに対応して配置されていて、第1に両ハウジング部分を相互に調整自在に動きを制限するのに用いられる調整機構の好ましい態様に関する。つまり、調整機構は、両ハウジング部分が、そのときそのときで調整された制動力を保って互いに動きが制限されているようにする。
【0013】
請求項8に記載の特に好ましい態様において、調整機構は、最も広義の意味で、両ハウジング部分相互の旋回位置に応じて相応の制動力を生じるねじ機構を有しておいる。
【0014】
両ハウジング部分の特に簡単な組立て可能性の意味で、請求項10に提案するように、調整機構は、両ハウジング部分間のバヨネット継手状のカップリングを提供し、その結果、両ハウジング部分同士の組立ては、特に簡単に構成される。
【0015】
独立した意義を有する請求項14に記載の別の思想に則して、自動車の旋回扉の位置をモータ駆動式に調節する旋回扉駆動装置について特許を請求する。この旋回扉駆動装置では、旋回扉駆動装置のパワートレーン内に、又はパワートレーンに沿って、本提案に基づく制動装置が配置されている。
【0016】
本提案に基づく旋回扉駆動装置において同様に有利であるのは、製造コストを過度に高めることなく、特に狭い制動力公差を厳守することができることである。さらに有利であるのは、このような旋回扉駆動装置には、長期にわたる使用時、制動装置から出力される制動力の後調整が必要となる場合がある老化現象が付きものであり、本提案に基づく制動装置を用いれば、原則、旋回扉駆動装置が組み付けられているときでも制動力の調整を行うことが可能であることである。
【0017】
その他の点については、この別の思想の説明のために、本提案に基づく制動装置についてのすべての説明を参照されたい。
【0018】
やはり独立した意義を有する請求項15に記載のさらに別の思想に則して、上述の旋回扉駆動装置を製造する方法について特許を請求する。
【0019】
このさらに別の思想において重要であるのは、制動装置が特に所定の制動力に調整されることである。特に好ましい態様において、制動力の調整は、制動装置を駆動装置内に組み付ける前に、さらに好ましくは、駆動装置を自動車内に組み付ける前に行われる。この場合、同様に有利であるのは、制動プロセスに関与する構成要素における製造技術的な公差に対して、本提案に基づく制動装置の調整可能性により対応することが可能であるという事実である。本提案に基づく制動装置及び本提案に基づく旋回扉駆動装置についてのすべての説明を参照されたい。
【0020】
以下に、本発明について、実施の形態を示したにすぎない図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本提案に基づく旋回扉駆動装置及び本提案に基づく制動装置を有する自動車のリア領域を示す図である。
【
図2】
図1に示した制動装置を組み立てられた状態で示す斜視図及び原理図である。
【
図4】
図2に示した制動装置のポット状のハウジング部分の斜視図である。
【
図5】
図1に示した制動装置の第2の実施の形態の斜視図及び原理図である。
【
図6】
図1に示した制動装置の第3の実施の形態の斜視図及び原理図である。
【
図7】
図1に示した制動装置の第4の実施の形態の斜視図及び原理図である。
【0022】
図示の制動装置1は、自動車の旋回扉2の制動に供される。「旋回扉」なる概念の広義の意味での解釈については、明細書の導入部を参照されたい。
【0023】
本提案に基づく制動装置1に係るすべての図示の実施の形態は、制動プロセスの実現に関する限りでいえば、同一原理の構造を有している。その限りでは、機能同一の構成要素に対して、同一の符号を用いる。
【0024】
本提案に基づく制動装置1は、制動力を出力するための、制動軸線3周りに制動された状態で回転可能な接続要素4を有している。接続要素4の構造は、
図3に最良に看取可能である。本実施の形態では、かつ好ましくは、接続要素4は、制動軸線3に沿って延びる通孔5を有している。通孔5は、
図3で見て下側の領域に、場合によっては設けられるクラッチ装置用の収容室6を有している。これについてはさらに下で詳述する。
【0025】
図2に示すように、接続要素4を収容するハウジング7が設けられており、本実施の形態では、出力すべき制動力、より正確には、出力すべき制動トルクは、ハウジング7と接続要素4との間で作用する。
【0026】
ハウジング7は、第1のハウジング部分8と第2のハウジング部分9とを有している。第1のハウジング部分8は、ポット状に構成されており、
図4に示してある。第2のハウジング部分9は、ふた状に構成されており、同様に後述するように、第1のハウジング部分8に動きを制限されている。「ポット状」及び「ふた状」なる概念は、本明細書では広義に解されるべきであり、個々のハウジング構成部分、例えばポット底又はふた面が一部でしか実現されていないような構成も包含する。
【0027】
接続要素4を介して出力される制動力は、本提案に基づき、両ハウジング部分8,9相互の調整動作10により調整される。このことは、図示の実施の形態では、構造的に特に簡単に解決されている。
【0028】
すべての図示の実施の形態において、本提案に基づく制動装置は、好ましくは3つの制動要素11,12,13を有している。制動力の発生は、接続要素側の制動要素11と、ハウジング7に対して相対回動不能な両制動要素12,13との間の摩擦力結合に起因する。
【0029】
制動要素11は、両側に環状の制動面11a,11bを有している。制動面11a,11bは、接続要素4に配置されている。本実施の形態では、かつ好ましくは、制動要素11は、接続要素4の構成部分である。
【0030】
図3に示すように、制動要素12は、制動面12aを有する環として構成されている。制動面12aは、制動要素11の制動面11aと協働する。環状の制動要素12は、ハウジング部分8に設けられた凹欠部8aを介して、制動軸線3に関して、軸方向には摺動可能に、しかし相対回動不能に支持されている。
【0031】
別の制動要素13は、ハウジング部分8の構成部分であり、これにより同様にハウジング7に対して相対回動不能に構成されている。この別の制動要素13の制動面13aは、制動要素11の制動面11bと協働する。これにより制動要素11は、両側で両制動要素12,13に挟まれている。
【0032】
制動要素11,12,13には、本実施の形態では、図面には概略的にのみ示したばね装置14、好ましくは圧縮コイルばねにより、相互に予圧(プリロード)が加えられている。詳細には、ばね装置14は、一方ではハウジング部分9に作用し、他方では制動要素12及び制動要素11を介して制動要素13、ひいてはハウジング部分8に作用する。
【0033】
図3から看取可能であるように、制動要素11,12,13間の予圧は、両ハウジング部分8,9相互の調整動作により調整可能である。その際の予圧は、本実施の形態では、制動軸線3に沿って方向付けられている。
【0034】
両ハウジング部分8,9の調整状態及び結果として生じる調整された制動力を固定すべく、ハウジング7には、好ましくは、両ハウジング部分8,9を相互に調整自在に動きを制限する調整機構15が対応して配置されている。本明細書に示す実施の形態では、そのときそのときの調整状態においてばね装置14による予圧に適当な反力を働かせることが第1に重要である。
【0035】
このことから、制動要素11,12,13の予圧が、ハウジング部分8,9相互の相応の予圧を伴うことが判る。本実施の形態では、かつ好ましくは、制動要素11,12,13の予圧は、ハウジング部分8,9の予圧と同じである。
【0036】
図示の実施の形態は、主として、それぞれの調整機構15を実現する形態の点で相違する。この違いは、
図6及び7に示した実施の形態の調整動作が制動軸線3に沿った長手方向の動きである一方、
図2乃至
図5に示した実施の形態の調整動作は制動軸線3周りの螺合させる動きである点に看取される。
【0037】
原則、調整機構15は、伝動装置のように働き、両ハウジング部分の一方9に作用する操作する動作を調整動作に変換することができる。
図2乃至
図5に示した実施の形態では、例えば、制動軸線3周りの純然たる回転運動又は旋回運動である操作する動作が、調整機構15を介して、後述するように、直線運動成分を有する調整動作に変換されるようになっている。詳細には、このようにして形成される調整動作は、制動軸線3に沿った直線運動成分を有する螺合させる動きである。
【0038】
好ましくは、調整機構15のセルフロックは、両ハウジング部分8,9がセルフロックを介して調整自在に動きを制限されているように設定されている。このことは特に、調整機構15が、上で提案したように、操作する動作を調整動作に変換する伝動装置機能を提供する場合に、好適である。
【0039】
図2乃至
図5に示した実施の形態において、調整機構15は、係合部分16であって、本実施の形態では、かつ好ましくは、その向きが制動軸線3に合わされた複数の係合部分16を有するねじ機構を有している。このような係合部分16は、
図2乃至
図4に示した実施の形態において実現されている。係合部分16は、両ハウジング部分8,9の一方、本実施の形態ではハウジング部分8に配置されている。本実施の形態では、係合部分16は、螺旋状の軌道に沿って延びるねじ山部分である。
【0040】
さらに、
図2乃至
図4に示した実施の形態では、組み立てられた状態でそれぞれ1つの係合部分16とねじ係合(螺合)する複数の対応部分17が設けられている。対応部分18は、本実施の形態では、ハウジング部分9に配置されている。
【0041】
この関連において附言すると、ねじ山部分16及び/又は対応ねじ山部分17の構成は、理想的なねじ山幾何学形状の構成にそれぞれ近似しているだけでよい。本実施の形態にとって重要であるのは、結果的に相応のねじ係合が成立することである。
【0042】
図5に示した実施の形態でも、同様に係合部分16と対応係合部分17とが設けられている。本実施の形態において、係合部分16は、ハウジング部分8の周囲を取り巻くように延びるねじ山として構成されている。ねじ山は、上述の凹欠部8aによってのみ中断されている。対応係合部分17は、ハウジング部分9に設けられた相応の対応ねじ山である。
【0043】
図2乃至
図4に示した、その限りにおいて好ましい実施の形態において有利であるのは、ねじ山部分16と相応の対応ねじ山部分17との間の係合が、螺合させる動きを阻害する、形状結合(formschlussig:形状による束縛)、本実施の形態では係止を介した係合であることである。このために、ねじ山部分16も、対応ねじ山部分17も、互いに係合する係止成形部18,19を有している。こうして、調整機構15の上述のセルフロックは、相応の係止係合により実現される。係止は、本実施の形態では、加える操作力を高めることで克服される。
【0044】
図5に示した実施の形態では、ハウジング部分9を組立てのためにハウジング部分8に螺着しなければならないのに対して、
図2乃至
図4に示した実施の形態では、遙かに簡単な組立てが可能である。本実施の形態では、ねじ山部分16と対応ねじ山部分17とが相応に中断されていることで、調整機構5が両ハウジング部分8,9間にバヨネット継手状のカップリングを提供するようになっている。これにより、両ハウジング部分8,9を相互に動きを制限するのに、いずれにしても制動軸線3に関して、軸方向運動と、続いての短い旋回運動しか必要としないことが、達成される。その点において、時間を要する螺着動作は省略可能である。
【0045】
両ハウジング部分8,9間のバヨネット継手状のカップリングは、本実施の形態では、かつ好ましくは、ねじ山部分16と対応ねじ山部分17との間の係合により実現される。しかし、両ハウジング部分8,9の一方に配置されるスライドガイドを実現することも可能であり、スライドガイド内を、その都度他方のハウジング部分8,9に配置されるスライドガイドフォロアが走行する。
【0046】
図6に示した別の好ましい実施の形態では、調整機構15が、両ハウジング部分8,9を係止により調整自在に相互に動きを制限する係止装置20を提供するようになっている。係止装置20は、係止要素21を有しており、係止要素21は、本実施の形態では、かつ好ましくは、係止腕として構成されている。係止要素21には、制動軸線3に関して軸方向で延びる係止ストリップ22が対応するように配置されており、係止ストリップ22は、様々な軸方向の係止位置で係止要素21を係止することができる。このために係止ストリップ22は、軸方向で分配された複数の係止段部22aを有している。係止段部22a内に係止要素21が係止可能である。つまり、ハウジング部分8へのハウジング部分9の取付けは、ハウジング部分8にハウジング部分9を嵌め込むだけで済み、この嵌め込みに伴い、制動力の調整と同時に、係止ストリップ22内での係止要素21の係止とが実施される。概ね、両ハウジング部分8,9間の係止係合は、つまり、制動軸線3に沿った両ハウジング部分8,9の直線調整動作により形成可能である。
【0047】
図7に示した実施の形態は、特に低コストに製造可能な変化形態である。本実施の形態では、ハウジング部分9が個々の取付け要素を介してハウジング部分8に取り付けられている。
図7に示した、その限りにおいて好ましい実施の形態において、取付け要素23は、取付けピンであり、熱かしめ、型打ち等により、本実施の形態ではプレート状のハウジング部分9に結合される。結合状態は、
図7の原理図に破線にて示してある。熱かしめ又は型打ちは、まさに、ハウジング部分8,9の所望の調整状態、ひいては所望の制動力が調整されているときに実施される。択一的には、取付け要素23が、ボルト又はねじであってもよく、その結果、制動力の調整は、ボルト23に螺合されたナット又は相応に本実施の形態ではハウジング部分8に螺入されたねじを相応に調整することにより行われる。
【0048】
ハウジング部分8,9の幾何学形状に関して、多数の好ましい変化形態が可能である。本実施の形態では、かつ好ましくは、両ハウジング部分8,9の少なくとも一方が、上述したように、略ポット状に構成されている。その結果、収容すべき構成要素は保護されている。この場合、それぞれのポット状のハウジング部分8,9の向きは、好ましくは制動軸線3に合わされている。これに対して択一的には、同様に上述したように、少なくとも一方のハウジング部分8,9が略ふた状に構成され、やはり、その向きが制動軸線3に合わされているようにしてもよい。
【0049】
本実施の形態では、かつ好ましくは、ハウジング部分8が、略ポット状に構成されており、制動プロセスに関与する構成要素を収容するのに用いられる。他方のハウジング部分9は、本実施の形態では、略ふた状に構成されており、このことは、制動装置1の本提案に基づく調整可能性を少量の材料使用量で実現する。原則、ハウジング7に関する多数の好ましい幾何学形状が可能である。特にハウジング7は、3つ以上のハウジング部分8,9を有していてもよい。
【0050】
図2乃至
図4に示した、その限りにおいて好ましい実施の形態において、ふた状のハウジング部分9は、外部に向かって歯列24、本実施の形態では、内歯列24を有している。歯列24は、相応の対応歯列を有する調整工具が係合するようになっている。
【0051】
同様に独立した意義のある別の思想に則して、自動車の旋回扉2の位置をモータ駆動式に調節する旋回扉駆動装置25について特許を請求する。旋回扉駆動装置25のパワートレーン内に、又はパワートレーンに沿って、本提案に基づく制動装置1が配置されている。「パワートレーン内に」なる表現は、制動装置1、本実施の形態では、接続要素4が、パワートレーン25の駆動構成要素に連結されていることを意味している。「パワートレーンに沿って」なる表現は、例えば、制動装置1が、パワートレーンに対応して配置されたプラネタリギヤであって、クラッチとして働くプラネタリギヤのリングギヤ等に作用することで、制動装置1、本実施の形態では、接続要素4が、間接的にパワートレーンに連結されていることを意味している。
【0052】
その他、ハウジング7、特にハウジング部分8は、本実施の形態では、制動軸線3に関して相対回動不能に旋回扉駆動装置に配置されている。このためにハウジング部分8は、相応の取付け要素8bを有している。
【0053】
接続要素4は、原則、パワートレーンの駆動構成要素に直接的に連結されていてもよい。しかし、これに対して択一的には、所定の操作状態においてフリーホイール状態を提供するクラッチ装置が介在し、その結果、制動装置1がこれらの操作状態では制動作用をパワートレーンに提供しないようになっていてもよい。このような操作状態は、例えば、旋回扉2の位置が、モータ駆動式に旋回扉駆動装置25によって調節されるのではなく、使用者が力を加えることで手動式に調節されるときに生じる。
【0054】
クラッチ装置は、上述したように、接続要素4内の収容室6に格納されていてもよい。この関連において、通孔5を備えた接続要素4の構成は、特に有利である。例えば、少なくとも1つの駆動構成要素が通孔5を通してクラッチ装置に導かれていることが有利な場合もある。特に好ましい態様において、クラッチ入力軸とクラッチ出力軸とは、同軸に通孔5を通され、軸の一方は、相応に中空軸として構成されている。
【0055】
この別の思想の詳細についての補足は、本提案に基づく制動装置についての説明を参照されたい。
【0056】
同様に独立した意義のあるさらに別の思想に則して、本提案に基づく旋回扉駆動装置を製造する方法について特許を請求する。本思想において重要であることは、制動装置1が特に所定の制動力に調整され、その結果、制動プロセスに関与する構成要素の製造公差が補償され得ることである。制動力の調整は、上で提案したように、両ハウジング部分相互の調整動作により実施される。特に好ましい態様において、制動力の調整は、制動装置1を旋回扉駆動装置25内に組み付ける前、特に旋回扉駆動装置を自動車内に組み付ける前に実施される。この関連においても、本提案に基づく制動装置1及び本提案に基づく旋回扉装置についての説明を参照されたい。