【文献】
Carmen Zoldesi,Progress on EUV pellicle development,PROCEEDINGS OF SPIE,2014年 4月17日,Vol. 9048,90481N-1〜9048N-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の枠体と係合する前記第2の枠体の前記第2の面が、前記ペリクル膜が配置された前記第1の枠体の面に対して直角となることを特徴とする請求項1に記載のペリクル。
前記第1の枠体と係合する前記第2の枠体の前記第2の面が、前記ペリクル膜が配置された前記第1の枠体の面に対して内側に傾斜することを特徴とする請求項1に記載のペリクル。
前記第1の枠体と係合する前記第2の枠体の前記第3の面が、前記ペリクル膜が配置された前記第1の枠体の面に対して直角となることを特徴とする請求項4に記載のペリクル。
前記第1の枠体と係合する前記第2の枠体の前記第3の面は、前記第1の面から前記ペリクル膜が配置された前記第1の枠体の面に向かって、前記第2の面との距離が大きくなるように傾斜することを特徴とする請求項4に記載のペリクル。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書において、EUV光とは、波長5nm以上30nm以下の光を指す。EUV光の波長は、5nm〜13.5nm程度が好ましく、13.5±0.3nmがより好ましい。EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすいため、本発明において、ペリクル膜は、ナノメートルオーダーの膜である必要がある。本発明に係るペリクル膜は5nm以上30nm以下の波長の光に90.0%以上の透過率を有する。本発明に係るペリクル膜は、好ましくは、5nm〜13.5nm程度の波長の光に対して、より好ましくは13.5±0.3nmの波長の光に対して、90.0%以上の透過率を有する。このような透過率を得るため、本発明に係るペリクル膜
は10nm以上100nm以下の膜厚であり、より好ましくは10nm以上50nm以下である。
【0039】
ペリクル膜のEUV透過率Tは以下の式(1)で定義される。
【数1】
式(1)中、Iは透過光強度、I
0は入射光強度を示す。透過光強度I及び入射光強度I
0、ペリクル膜の厚みd、密度ρ、及びペリクル膜の質量吸収係数μには、以下の式(2)で表される関係が成り立つ。
【数2】
【0040】
式(2)における密度ρはペリクル膜を構成する物質固有の密度である。また、上記式(2)における質量吸収係数μは、以下のように求められる。光子のエネルギーがおよそ30eVより大きく、なおかつ光子のエネルギーが原子の吸収端から十分に離れている場合、質量吸収係数μは原子同士の結合状態等に依存しない。波長13.5nmの光子エネルギーは、92.5eV付近であり、原子の吸収端からも十分に離れている。よって、上記質量吸収係数μは、ペリクル膜を構成する化合物の原子同士の結合状態に依存しない。そのため、ペリクル膜の質量吸収係数μは、ペリクル膜を構成する各元素(1,2,・・・,i)の質量吸収係数μ
1と、各元素の質量分率W
iとから、以下の式(3)で求められる。
【数3】
上記W
iは
、W
i=n
iA
i/Σn
iA
iで求められる値である。A
iは各元素iの原子量、n
iは各元素iの数である。
【0041】
上記式(3)における各元素の質量吸収係数μ
iは、Henkeらによってまとめられている以下の参考文献の値を適用できる。(B. L. Henke, E. M. Gullikson, and J. C. Davis, "X-Ray Interactions:Photoabsorption, Scattering, Transmission, and Reflection at E = 50-30,000 eV, Z = 1-92," At. Data Nucl. Data Tables 54, 181 (1993) これらの数値の最新版はhttp://
www.cxro.lbl.gov/optical_constants/に掲載されている。)
【0042】
ペリクル膜の質量吸収係数μ、ペリクル膜の密度ρ、及びペリクル膜の厚みdが特定できれば、式(1)及び式(2)に基づき、ペリクル膜の波長13.5nmの光の透過率を算出できる。なお、上記透過率は、ローレンスバークレー国立研究所のX線光学センターの光学定数ウェブサイトでも計算できる。
【0043】
膜厚を厚くし、かつ透過率を高めるためには、上記ペリクル膜の材質として吸収係数の低い材質を用いることが望ましい。具体的には水素の質量吸収係数μ
iを1として相対的に表すとき、100以下の元素からなる材質を用いることが望ましい。特に、H,Be,B,C,N,O,Si,P,S,Cl,K、Ca,Sc,Br,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,など
の元素
を用いることが望ましい。
【0044】
ペリクル膜を構成する具体的な化合物としてはフッ素系ポリマー、ポリオレフィン、ポリイミドなどの高分子化合物や、ルテニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、モリブデン、ニオブ、などの金属、結晶シリコン(例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、等)、アモルファスシリコン、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等が挙げられる。
【0045】
また、ペリクル膜は、酸化防止膜や放熱膜を含んでいてもよい。酸化防止膜は、SiOx(x≦2)、SixNy(x/yは0.7〜1.5)、SiON、SiC、Y
2O
3、YN、Mo、RuまたはRhからなる膜等でありうる。
【0046】
放熱膜は、熱輻射率が高い材料や熱伝導性が高い材料からなる膜であることが好ましい。具体的には、酸化防止膜と同様の材料からなる膜や、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、グラファイト、グラフェンからなる膜等であり得る。酸化防止膜及び放熱膜は、ペリクル膜の一方の面に形成してもよく、両面に形成してもよい。ペリクル膜は、上記元素および化合物を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0047】
従来のArFリソグラフィ用のペリクルでは、アルミニウムやセラミクス等で構成された枠体を用い、接着層を介してペリクル膜を枠体に接着していた。しかし、EUVリソグラフィ用の本発明に係るペリクル膜は、20nm以上50nm以下の非常に薄い膜厚であるため、接着による枠体への固定は困難である。したがって、半導体製造プロセスを用いて、例えば、蒸着により基板にペリクル膜を形成し、基板を枠形状にバックエッチングすることにより、ペリクル膜を露出させ、ペリクル膜を配置した枠体を得ることができる。本発明に係る基板としては、例えば、シリコン基板、サファイア基板、炭化ケイ素基板等を用いることができる。これらに限定されるものではないが、基板としては、シリコン基板、サファイア基板、炭化ケイ素基板が好ましく、シリコン基板がより好ましい。
【0048】
上述したように、フォトマスクにペリクルを装着するための空間が2.5mmの高さしか存在していないため、ペリクル膜の破損を防ぐために、ペリクルの高さは2mm以下であることが好ましい。上述したような方法で非常に薄いペリクル膜を形成した場合、枠体の側面に通気口として貫通孔を形成するのは困難である。このため、ペリクル膜を配置した第1の枠体と、側面に貫通孔を形成した第2の枠体を別に形成し、接着層を介して接着する方法が考えられる。第1の枠体はペリクル膜の形成及びハンドリングの観点から、厚さを1mm以下とすることが好ましいが、100μm以下にするのは困難である。また、第1の枠体と第2の枠体との接着層、および、ペリクルとマスクとの接着層を備えているため、貫通孔を配置する第2の枠体に許容される高さは、1〜1.5mmとなる。しかし、防塵のため貫通孔をフィルタで覆う場合、1.5mm以下のフィルタを第2の枠体の側面に配置するのは接着性やハンドリングの観点から困難である。
【0049】
このため、接着層を介して接着した第1の枠体及び第2の枠体の側面に2mm程度のフィルタを配置することが考えられる。しかし、この場合、
図17に示すような問題が生じる。
図17は、接着層を介して接着した第1の枠体及び第2の枠体の側面に2mm程度のフィルタを配置したペリクルの模式図であり、
図17(a)はドライエッチングにより第1の枠体を形成したペリクル800の模式図であり、
図17(b)はウエットエッチングにより第1の枠体を形成したペリクル900の模式図である。
【0050】
ペリクル800は、ペリクル膜801を配置した第1の枠体811と、第1の枠体811と接着層841を介して固定した第2の枠体813を備える。第2の枠体813には外側の側面と内側の側面とを貫通した貫通孔821が形成される。接着層841を介して接着した第1の枠体811及び第2の枠体813の側面には、貫通孔821を覆うフィルタ831が接着層(図示せず)を介して接着される。また、第2の枠体813の底面にはフォトマスクにペリクル800を固定するための接着層843が形成され、フォトマスクに固定するまでは、ライナー851により接着層843が保護される。このとき、第1の枠体811と第2の枠体813を接着する接着層841に隙間890が生じる。
【0051】
また、このようなフィルタの背面(接着面)に生じる隙間は、ウエットエッチングにより第1の枠体を形成した場合に顕著になる。ペリクル900は、ペリクル膜901を配置した第1の枠体911と、第1の枠体911と接着層941を介して固定した第2の枠体913を備える。第2の枠体913には外側の側面と内側の側面とを貫通した貫通孔921が形成される。接着層941を介して接着した第1の枠体911及び第2の枠体913の側面には、貫通孔921を覆うフィルタ931が接着層(図示せず)を介して接着される。また、第2の枠体913の底面にはフォトマスクにペリクル900を固定するための接着層943が形成され、フォトマスクに固定するまでは、ライナー951により接着層943が保護される。ここで、ペリクル900においては、第1の枠体911がウエットエッチングにより形成されるため、
図17(b)に示すように、第1の枠体911の側面に傾斜が生じ、断面が台形状になる。このとき、第1の枠体911と接着層941に隙間990が生じ、フィルタ931の十分な密着性を得ることができない。
【0052】
そこで、本発明者らは、フィルタの背面に隙間を生じずに、十分な密着性を得るペリクルの構成を検討した。以下、図面を参照して本発明に係るペリクル、その製造方法及び露光方法について説明する。但し、本発明のペリクル、その製造方法及び露光方法は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0053】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係るペリクル100の模式図(斜視図)
である。
図2は、ペリクル100の
図1の線分AA'における断面図である。ペリクル100は、ペリクル膜101を配置した第1の枠体111と、第1の枠体111を固定した第2の枠体113を備える。第2の枠体113は、第1の枠体111のペリクル膜101が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面113Aを含む厚手部115と、第1の面113Aに接続し、第1の枠体111の側面を受ける第2の面113Bと、を有し、ペリクル膜101と第1の枠体111とを外囲する。第2の枠体113は、ペリクル膜101と直交する断面がL字形状を有する。また、ペリクル100は、第2の枠体113に配置された貫通孔121と、貫通孔121を覆うフィルタ131を備える。貫通孔121は、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体113の厚手部115に配置される。フィルタ131は、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する第2の枠体113の外側の側面に接着層(図示せず)を介して配置される。
【0054】
ペリクル膜101及び第1の枠体111としては、上述したペリクル膜及び基板を用いることができるため、詳細な説明は省略する。第1の枠体111を構成する材質にはシリコン、サファイア、炭化ケイ素が好ましく、シリコンがより好ましい。第2の枠体113としては、EUV光に対する耐性を有し、平坦性が高く、低イオン溶出性の材料が好ましい。また、炭素由来の汚れを除去するために、水素ガスを露光装置内に流すため、水素ラジカルに対する耐性を有する材料で構成されることが好ましい。
【0055】
第2の枠体113(ペリクル枠)の材質には特に制限はなく、ペリクル枠に用いられる通常の材質とすることができる。第2の枠体113の材質として、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、ステンレス、シリコン、シリコン合金、鉄、鉄系合金、炭素鋼、工具鋼、セラミックス、金属−セラミックス複合材料、樹脂等が挙げられる。中でも、アルミニウム、アルミニウム合金が、軽量かつ剛性の面からより好ましい。また、第2の枠体113は、その表面に保護膜を有していてもよい。
【0056】
保護膜としては、露光雰囲気中に存在する水素ラジカルおよびEUV光に対して耐性を有する保護膜が好ましい。保護膜としては、例えば、酸化被膜が挙げられる。酸化被膜は、陽極酸化等の公知の方法によって形成することができる。
【0057】
第1の枠体111と第2の枠体113とは、接着層141を介して固定される。
図2において、接着層141は、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体113の厚手部115の第1の面113A上に配置される。接着層141を補強するため、例えば、第1の枠体111の側面と、第1の枠体111の側面と接する第2の枠体113の薄手部117の第2の面113Bとの間に接着層をさらに配置してもよい。
【0058】
接着層141の厚みは、第1の枠体111と第2の枠体113との十分な接着が確保できる範囲で可能な限り薄いことが好ましく、例えば、10μm以上300μm以下である。また、接着層141に用いる接着剤としては、EUV光に対する耐性を有し、ガスの発生量が少ない材料が好ましい。また、炭素由来の汚れを除去するために、水素ガスを露光装置内に流すため、水素ラジカルに対する耐性を有する材料で構成されることが好ましい。
【0059】
本実施形態において、「接着剤」は広義の接着剤を指し、「接着剤」の概念には、粘着剤も含まれるものとする。接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、等が挙げられる。
【0060】
第1の枠体111と第2の枠体113との接着に用いられる接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、が好ましい。フォトマスクとの接着に用いられる接着剤としては、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤が好ましい。
【0061】
貫通孔121は、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体113の厚手部115に配置される。露光装置の制約上ペリクル100の高さは2.5mmが上限であり、異物の結像防止からペリクル100の高さは高いほど良い。しかし、公知情報によると、ペリクルの高さは、2mmは必要と言われている(例えば、非特許文献1)。以上を鑑みれば、常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時に、貫通孔121は、ペリクル100内外の差圧によるペリクル膜101の膨張が0.5mm未満となる径とする。本実施形態において、貫通孔121の径は、減圧したときに貫通孔121に発生する圧力損失の上限値を考慮して設定される。
【0062】
減圧した時に貫通孔121で発生する圧力損失は1Pa以下となることが望ましく、より望ましくは0.5Pa以下である。ここで、フィルタ131は貫通孔121を覆うように設置され、減圧したときの圧力損失の大部分はフィルタ131部分で発生し、貫通孔121では圧力損失はほとんど生じないようにすることが好ましい。例えば、貫通孔121での圧力損失が1Pa以下となるように、より好ましくは0.1Pa程度となるように、貫通孔121のサイズおよび貫通孔121の数を調整する。
【0063】
例えば、350Pa/secの速度で減圧されるとき、貫通孔121で発生するペリクル100内外の圧力損失が1Paとなるときの貫通孔121の直径は480μmおよび数は4個、あるいは直径は300μm及び数は40個である。貫通孔121の形状は特に問わず、円形、楕円形、長方形、多角形、台形などの形状であってよい。貫通孔121の径は特に制限されないが、枠の強度が低下しない範囲で、10〜500μm程度となることが望ましい。貫通孔121の数も特に制限されず、フィルタ131の長さや、フィルタ131の幅に応じて選択できる。貫通孔121を複数個設ける場合には貫通孔121の位置や間隔は特に問わないが、フィルタ131内で等間隔に配置することが好ましい。
【0064】
フィルタ131は、フォトマスクヘ固定したペリクル100内への塵埃等の流入を防止可能な材料で形成され、初期圧力損失が100Pa以上550Pa以下、粒径が0.15μm以上0.3μm以下の粒子に対して粒子捕集率が99.7%以上100%以下のフィルタを用いることが望ましい。フィルタの種類として、例えば、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)を用いることができる。ULPAフィルタは、定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、且つ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。また、フィルタ131としてHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いてもよい。HEPAフィルタは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、且つ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。フィルタ131は、第2の枠体113への接着性を確保する観点から、幅(高さ)が第2の枠体113の高さと概略等しいことが好ましい。
【0065】
フィルタ131は、通気部135と糊代部137から構成される(
図3)。糊代部137は通気部135を覆うように、フィルタ131の周辺を囲んでいる。糊代部137は、第2の枠体113と通気部135を隙間なく接着する役割を果たす。糊代部137では気体は通過しない。糊代部137の幅は0.2mm以上1.0mm以下である。通気部135の面積を広くするために、糊代部137の幅はできる限り細い方が望ましい。
【0066】
通気部135とは、フィルタ131の糊代部137で覆われていない部分を指す。通気部135を気体が通過し、気体に含まれる粒子を捕捉する。通気部135では圧力損失が発生するため、フィルタの換気性能は、通気部135の換気性能によって決まる。
【0067】
フィルタ131の通気部135の総面積は減圧したときにフィルタに発生する圧力損失の上限値を考慮して設定される。減圧したときにフィルタ131の通気部135に発生する圧力損失は2Pa以下となることが望ましい。フィルタ131の通気部135の長さはフィルタ131の通気部135の面積をフィルタ131の通気部135の幅で割ることで算出できる。フィルタ1枚当たりの通気部135の長さの範囲は特に制限はないが、1cm以上15cm以下の範囲が望ましく、より望ましくは2cm以上10cm以下である。
【0068】
現在、EUV露光用のペリクルとしては、長辺152mm以下、短辺120mm以下、高さ2mm以下の大きさが想定され、350 Pa/secでの減圧及び加圧が想定される。常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時、また、真空状態から常圧に戻す際に加圧した時の、ペリクル100内外の差圧によるペリクル膜101の膨張が0.5mm未満とするために、ペリクル100の内部の体積に対するフィルタ131の通気部135の合計面積の比率(フィルタの通気部面積/ペリクル内部体積)が0.007mm
−1以上0.026mm
−1以下であることが好ましい。この比率が0.007mm
−1以上であると、減圧および加圧する時にフィルタ通気部を通過する気体の流速が早くなりすぎないためにペリクル100内外の差圧の上昇が抑制され、ペリクル膜101の膨張が0.5mm未満に抑制できる。また、形成可能な通気部135の大きさによる制約から、この比率が0.026mm
−1以下であると、フィルタ131の通気部135および糊代部137を十分に設けることができる。
【0069】
本実施形態において、第1の枠体111と係合し、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する第2の枠体113の内側の第2の面113Bが、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面に対して直角となる。ペリクル膜101が配置された面に対して第1の枠体111の側面が直角であり、第1の枠体111と係合する第2の枠体113の薄手部117の内側の第2の面113Bが第2の枠体113の第1の面113Aに対して直角であることから、第1の枠体111と第2の枠体113との高い密着性を得ることができる。このとき、ペリクル膜101の上面と、第2の枠体113の上面とが同一面上となるように配置されることが好ましい。
【0070】
また、第2の枠体113の厚手部115の底面には接着層143が配置される。接着層143は、ペリクル100をフォトマスクに固定するための手段である。接着層143の厚みは、フォトマスクと第2の枠体113との十分な接着が確保できる範囲で可能な限り薄いことが好ましく、例えば、10μm以上300μm以下である。また、接着層143に用いる接着剤としては、EUV光に対する耐性を有し、ガスの発生量が少ない材料が好ましい。また、炭素由来の汚れを除去するために、水素ガスを露光装置内に流すため、水素ラジカルに対する耐性を有する材料で構成されることが好ましい。
【0071】
接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、等が挙げられる。接着層143の材料は、接着層141と同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
ペリクル100において、第2の枠体113の高さと、第2の枠体113の下面に配置された接着層143の高さとの合計が、2mm以下であることが好ましい。上述したように、フォトマスクにペリクルを装着するための空間が2.5mmの高さしか存在していないため、ペリクル膜101の破損を防ぐために、ペリクル100の高さは2mm以下であることが好ましい。
【0073】
使用前のペリクル100の接着層143に塵埃等が付着するのを防止するため、剥離可能なライナー151により接着層143が保護される。
【0074】
本発明においては、第2の枠体113として、断面がL字形状を有する部材を用い、フィルタ131の高さを第2の枠体113の高さと概略等しくすることにより、フィルタ131の背面に貫通孔121以外の空隙を生じることなく、十分な密着性を持ってフィルタ131を配置することができる。
【0075】
(ペリクル100の製造方法)
本実施形態に係るペリクル100は、例えば、
図4及び
図5を参照し、以下のように製造することができる。なお、以下の製造工程は一例であって、必要に応じて製造工程の順序を変更することもできる。
図4及び
図5は、ペリクル100の製造工程を示す図である。基板105を準備し、基板105上にペリクル膜101を形成する(
図4(a))。基板105には、上述したように、例えば、シリコン基板、サファイア基板、炭化ケイ素基板等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
ペリクル膜101は、蒸着により膜厚が20nm以上50nm以下となるように、基板105上に形成する。EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすいため、ペリクル膜101は5nm以上30nm以下の波長の光に90.0%以上の透過率を有するように、薄く形成することが好ましい。本発明に係るペリクル膜101は、好ましくは、5nm〜13.5nm程度の波長の光に対して、より好ましくは13.5±0.3nmの波長の光に対して、90.0%以上の透過率を有する。
【0077】
ペリクル膜101が形成された基板105をドライエッチングし、基板105が枠形状となるように、ペリクル膜101を露出させて、第1の枠体111を形成する(
図4(b))。ドライエッチングにより形成された第1の枠体111の側面は、ペリクル膜101が形成された面に対して概略直角となる。
【0078】
別途、枠の高さ方向の断面がL字形状を有する第2の枠体113を準備する(
図4(c))。本実施形態において、第2の枠体113は、薄手部117の内側の側面である第2の面113Bが第1の面113Aに対して概略直角である。すなわち、ペリクル膜101が配置された第1の枠体111の面と交差する第2の枠体113の内側の第2の面113Bが、ペリクル膜101が形成された第1の枠体111の面に対して直角となる。
【0079】
第2の枠体113の高さ方向と交差する方向に厚みを有する厚手部115に貫通孔121を形成する(
図4(d))。露光装置の制約上ペリクル100の高さは2.5mmが上限であり、異物の結像防止からペリクル高さは高いほど良い。しかし、公知情報によると、ペリクル100の高さは、2mmは必要と言われている(例えば、非特許文献1)。以上を鑑みれば、常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時に、貫通孔121は、ペリクル100内外の差圧によるペリクル膜101の膨張が0.5mm未満となる径とする。本実施形態において、貫通孔121はフィルタ131により覆われるため、貫通孔121の径は、フィルタ131による抵抗を考慮して設定される。
【0080】
第2の枠体113の高さ方向と平行な第2の枠体113の外側の面に貫通孔121を覆うフィルタ131を接着する(
図5(a))。フィルタ131は、上述した特性を有するフィルタが好ましく、第2の枠体113への接着性を確保する観点から、幅(高さ)が第2の枠体113の高さと概略等しいことが好ましい。
【0081】
上述したように、フィルタ131の密着性確保とフィルタ面積増加の観点から、フィルタ131の幅は第2の枠体113の幅(高さ)と同じ幅を上限とする。しかし、フィルタ131の幅(高さ)が第2の枠体113の高さを超えると、糊代部137が第2の枠体113からはみ出すため密着力が低下し好ましくない。
【0082】
第2の枠体113の厚手部115の底面に接着層143を形成する。また、接着層143を保護するライナー151を配置する(
図5(b))。ここで、接着層143を形成したライナー151を準備して、接着層143を介して、ライナー151を第2の枠体113の厚手部115の底面に貼り付けてもよい。
【0083】
第2の枠体113の厚手部115の第1の面113Aに、接着層141を形成する(
図5(c))。第1の枠体111を外囲するように、形成した接着層141を介して、第1の枠体111を第2の枠体113に固定する(
図5(d))。このとき、接着層141を補強するため、例えば、第1の枠体111の側面と、第1の枠体111の側面と接する第2の枠体113の薄手部117の第2の面113Bとの間に接着層をさらに配置してもよい。フォトマスクにペリクルを装着するための空間が2.5mmの高さしか存在していないため、本実施形態において、第2の枠体113の高さと、第2の枠体113の下面に配置した接着層143の高さとの合計を2mm以下とすることが好ましい。
【0084】
本発明においては、第2の枠体113として、断面がL字形状を有する部材を用い、フィルタ131の高さを第2の枠体113の高さと概略等しくすることにより、フィルタ131の背面に貫通孔121以外の空隙を生じることなく、十分な密着性を持ってフィルタ131を配置することができる。また、ペリクル膜101が配置された面に対して第1の枠体111の側面が直角であり、第1の枠体111と係合する第2の枠体113の薄手部117の内側の第2の面113Bが第2の枠体113の第1の面113Aに対して直角であることから、第1の枠体111と第2の枠体113との高い密着性を得ることができる。
【0085】
なお、本実施形態のペリクル100は、ペリクル膜101が配置された面に対して第1の枠体111の側面が直角であり、第2の枠体113は、第1の枠体111のペリクル膜101が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面113Aを含む厚手部115と、第1の面113Aに接続し、第1の枠体111の側面を受ける第2の面113Bと、を有し、ペリクル膜101と第1の枠体111とを外囲し、第1の枠体111と係合する第2の枠体113の第2の面113Bが、ペリクル膜101が配置された第1の面113Aに対して直角であればよい。したがって、本実施形態は、例えば、
図6に示すペリクル200のような変形例も包含する。
【0086】
ペリクル200においては、第2の枠体213の形状が第2の枠体113とは異なる。第2の枠体213は、第1の枠体211のペリクル膜201が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面213Aを含む厚手部215と、第1の面213Aに接続し、第1の枠体211の側面を受ける第2の面213Bと、を有し、ペリクル膜201と第1の枠体211とを外囲する。また、第2の枠体213は、第1の枠体211の側面と接する第2の枠体213の第1の薄手部217Aと、厚手部215の下面に接続し、第2の枠体213の底面を含む第2の薄手部217Bとを有する。したがって、第2の枠体213は、T字を横にしたような形状を有する。その他の構成はペリクル100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
(実施形態2)
図17(b)のペリクル900に示したように、第1の枠体111をウエットエッチングにより形成した場合、第1の枠体911の側面に傾斜が生じ、断面が台形状になる。この場合、実施形態1に示した第2の枠体113を用いると、第1の枠体側面と第2の枠体の内側の側面との間に隙間が生じてしまう。本実施形態においては、ウエットエッチングにより形成した第1の枠体に適合した第2の枠体を用いる例について説明する。
【0088】
図7は、本発明の一実施形態に係るペリクル300の
図1の線分AA’における断面図である。ペリクル300は、ペリクル膜301を配置した第1の枠体311と、第1の枠体311を固定した第2の枠体313を備える。第2の枠体313は、第1の枠体311のペリクル膜301が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面313Aを含む厚手部315と、第1の面313Aに接続し、第1の枠体311の側面を受ける第2の面313Bと、を有し、ペリクル膜301と第1の枠体311とを外囲する。第2の枠体313は、ペリクル膜301と直交する断面が略L字形状を有する。また、ペリクル300は、第2の枠体313に配置された貫通孔321と、貫通孔321を覆うフィルタ331を備える。貫通孔321は、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体313の厚手部315に配置される。フィルタ331は、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の外側の側面に接着層(図示せず)を介して配置される。
【0089】
本実施形態において、第1の枠体311は、ウエットエッチングにより形成されるため、第1の枠体311の側面に傾斜が生じ、断面が台形状になる。このため、第1の枠体311と係合する第2の枠体313は、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の内側の面が、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜する構造を有する。すなわち、第2の枠体313の薄手部317は、上面側の幅が小さく、厚手部315側の幅が大きくなるような傾斜を有する略L字形状の断面となる。
【0090】
ペリクル300は、第1の枠体311と係合し、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の内側の面が、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜することにより、第2の枠体313が、ウエットエッチングにより形成された第1の枠体311との高い密着性を得ることができる。
【0091】
ペリクル膜301、第1の枠体311及び第2の枠体313としては、上述したペリクル膜、基板及び第2の枠体113と同様の材料を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0092】
第1の枠体311と第2の枠体313とは、接着層341を介して固定される。
図7において、接着層341は、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体313の厚手部315の第1の面313A上に配置される。接着層341を補強するため、例えば、第1の枠体311の側面(傾斜面)と、第1の枠体311の側面(傾斜面)と接する第2の枠体313の薄手部317の側面(傾斜面)である第2の面313Bとの間に接着層をさらに配置してもよい。
【0093】
接着層341の厚みは、第1の枠体311と第2の枠体313との十分な接着が確保できる範囲で可能な限り薄いことが好ましく、例えば、10μm以上300μm以下である。また、接着層341に用いる接着剤は、接着層141と同様の接着剤を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0094】
貫通孔321は、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体313の厚手部315に配置される。露光装置の制約上ペリクル300の高さは2.5mmが上限であり、異物の結像防止からペリクル300の高さは高いほど良い。しかし、公知情報によると、ペリクルの高さは、2mmは必要と言われている(例えば、非特許文献1)。以上を鑑みれば、常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時に、貫通孔321は、ペリクル300内外の差圧によるペリクル膜301の膨張が0.5mm未満となる径とする。本実施形態において、貫通孔321はフィルタ331により覆われるため、貫通孔321の径は、減圧したときに貫通孔321に発生する圧力損失の上限値を考慮して設定される。
【0095】
減圧した時に貫通孔321で発生する圧力損失は1Pa以下となることが望ましく、より望ましくは0.5Pa以下である。例えば、350Pa/secの速度で減圧されるとき、貫通孔321で発生するペリクル300内外の圧力損失が1Paとなるときの貫通孔321の直径は480μmであり、数は4個である。
【0096】
貫通孔321の形状は特に問わず、円形、楕円形、長方形、多角形、台形などの形状であってよい。貫通孔321の径は特に制限されないが、枠の強度が低下しない範囲で、10〜500μm程度となることが望ましい。貫通孔321の数も特に制限されず、フィルタ331の長さや、フィルタ331の幅に応じて選択できる。
【0097】
フィルタ331は、フィルタ131と同様のフィルタを用いることができるため、詳細な説明は省略する。また、フィルタ331は、第2の枠体313への接着性を確保する観点から、幅(高さ)が第2の枠体313の高さと概略等しいことが好ましい。
【0098】
ここで、フィルタ331は、フィルタ131と同様に、通気部と糊代部から構成される(図示せず)。糊代部は通気部を覆うように、フィルタの周辺を囲んでいる。糊代部は、第2の枠体と通気部を隙間なく接着する役割を果たす。糊代部では気体は通過しない。糊代部の幅は0.2mm以上1.0mm以下である。通気部の面積を広くするために、糊代部の幅はできる限り細い方が望ましい。
【0099】
通気部とは、フィルタの糊代部で覆われていない部分を指す。通気部を気体が通過し、気体に含まれる粒子を捕捉する。通気部では圧力損失が発生するため、フィルタの換気性能は、通気部の換気性能によって決まる。
【0100】
フィルタ331の通気部の総面積は減圧したときにフィルタ331の通気部に発生する圧力損失の上限値を考慮して設定される。減圧したときにフィルタ331の通気部に発生する圧力損失は2Pa以下となることが望ましい。フィルタ331の通気部の長さはフィルタ331の通気部の面積をフィルタ331の通気部の幅で割ることで算出できる。フィルタ1枚当たりの長さの範囲は特に制限はないが、1cm〜15cmの範囲が望ましく、より望ましくは2cm〜10cmである。
【0101】
本実施形態において、第1の枠体311と係合し、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の内側の第2の面313Bが、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜する。第1の枠体311は、ペリクル膜301が配置された面に対して、底面側の幅が細くなる傾斜を有するため、第1の枠体311と係合する第2の枠体313の薄手部317の内側の第2の面313Bが第2の枠体313の第1の面313Aに対して厚手部315側が幅広くなるように傾斜し、第1の枠体311と第2の枠体313との高い密着性を得ることができる。このとき、ペリクル膜301の上面と、第2の枠体313の上面とが同一面上となるように配置されることが好ましい。
【0102】
また、第2の枠体313の厚手部315の底面には接着層343が配置される。接着層343は、ペリクル300をフォトマスクに固定するための手段である。接着層343の厚みは、フォトマスクと第2の枠体313との十分な接着が確保できる範囲で可能な限り薄いことが好ましく、例えば、10μm以上300μm以下である。接着層343に用いる接着剤は、接着層143と同様の接着剤を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0103】
ペリクル300において、第2の枠体313の高さと、第2の枠体313の下面に配置された接着層343の高さとの合計が、2mm以下であることが好ましい。上述したように、フォトマスクにペリクルを装着するための空間が2.5mmの高さしか存在していないため、ペリクル膜301の破損を防ぐために、ペリクル300の高さは2mm以下であることが好ましい。
【0104】
使用前のペリクル300の接着層343に塵埃等が付着するのを防止するため、剥離可能なライナー351により接着層343が保護される。
【0105】
本発明においては、第2の枠体313として、断面が略L字形状を有する部材を用い、フィルタ331の高さを第2の枠体313の高さと概略等しくすることにより、フィルタ331の背面に貫通孔321以外の空隙を生じることなく、十分な密着性を持ってフィルタ331を配置することができる。
【0106】
(ペリクル300の製造方法)
本実施形態に係るペリクル300は、例えば、
図8及び
図9を参照し、以下のように製造することができる。なお、以下の製造工程は一例であって、必要に応じて製造工程の順序を変更することもできる。
図8及び
図9は、ペリクル300の製造工程を示す図である。基板305を準備し、基板305上にペリクル膜301を形成する(
図8(a))。基板305には、上述したように、例えば、シリコン基板、サファイア基板、炭化ケイ素基板等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
ペリクル膜301は、蒸着により膜厚が20nm以上50nm以下となるように、基板305上に形成する。EUV光は、あらゆる物質に対して吸収されやすいため、ペリクル膜301は5nm以上30nm以下の波長の光に90.0%以上の透過率を有するように、薄く形成することが好ましい。本発明に係るペリクル膜301は、好ましくは、5nm〜13.5nm程度の波長の光に対して、より好ましくは13.5±0.3nmの波長の光に対して、90.0%以上の透過率を有する。
【0108】
ペリクル膜301が形成された基板305をウエットエッチングし、基板305が枠形状となるように、ペリクル膜301を露出させて、第1の枠体311を形成する(
図8(b))。ウエットエッチングにより形成された第1の枠体311の側面は、ペリクル膜301が形成された面側が幅広くなるように、第1の枠体311の側面に傾斜が生じ、断面が台形状になる。
【0109】
別途、枠の高さ方向の断面が略L字形状を有する第2の枠体313を準備する(
図8(c))。本実施形態において、第2の枠体313は、上面に対して厚手部315側の第1の面313Aの幅が大きくなるように、薄手部317の内側の側面である第2の面313Bが傾斜する。すなわち、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の内側の第2の面313Bが、ペリクル膜301が形成された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜する。
【0110】
第2の枠体313の高さ方向と交差する方向に厚みを有する厚手部315に貫通孔321を形成する(
図8(d))。露光装置の制約上ペリクル300の高さは2.5mmが上限であり、異物の結像防止からペリクル高さは高いほど良い。しかし、公知情報によると、ペリクルの高さは、2mmは必要と言われている(例えば、非特許文献1)。以上を鑑みれば、常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時に、貫通孔321は、ペリクル300内外の差圧によるペリクル膜301の膨張が0.5mm未満となる径とする。本実施形態において、貫通孔321はフィルタ331により覆われるため、貫通孔321の径は、フィルタ331による抵抗を考慮して設定される。
【0111】
第2の枠体313の高さ方向と平行な第2の枠体313の外側の面に貫通孔321を覆うフィルタ331を接着する(
図9(a))。フィルタ331は、上述した特性を有するフィルタが好ましく、第2の枠体313への接着性を確保する観点から、幅(高さ)が第2の枠体313の高さと概略等しいことが好ましい。
【0112】
上述したように、フィルタ331の密着性確保とフィルタ面積増加の観点から、フィルタ331の幅は第2の枠体313の幅(高さ)と同じ幅を上限とする。しかし、フィルタ331の幅(高さ)が第2の枠体313の高さを超えると、糊代部が第2の枠体313からはみ出すため密着力が低下し好ましくない。
【0113】
第2の枠体313の厚手部315の底面に接着層343を形成する。また、接着層343を保護するライナー351を配置する(
図9(b))。ここで、接着層343を形成したライナー351を準備して、接着層343を介して、ライナー351を第2の枠体313の厚手部315の底面に貼り付けてもよい。
【0114】
第2の枠体313の厚手部315の第1の面313Aに、接着層341を形成する(
図9(c))。第1の枠体311を外囲するように、形成した接着層341を介して、第1の枠体311を第2の枠体313に固定する(
図9(d))。このとき、接着層341を補強するため、例えば、第1の枠体311の側面(傾斜面)と、第1の枠体311の側面(傾斜面)と接する第2の枠体313の薄手部317の側面(傾斜面)の第2の面313Bとの間に接着層をさらに配置してもよい。
【0115】
本発明においては、第2の枠体313として、断面が略L字形状を有する部材を用い、フィルタ331の高さを第2の枠体313の高さと概略等しくすることにより、フィルタ331の背面に貫通孔321以外の空隙を生じることなく、十分な密着性を持ってフィルタ331を配置することができる。また、第1の枠体311と係合し、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面と交差する第2の枠体313の内側の第2の面313Bが、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜することにより、第2の枠体313が、ウエットエッチングにより形成された第1の枠体311との高い密着性を得ることができる。
【0116】
なお、本実施形態のペリクル300は、第1の枠体311の側面が底面に対して内側に傾斜し、第2の枠体313は、第1の枠体311のペリクル膜301が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面313Aを含む厚手部315と、第1の面313Aに接続し、第1の枠体311の側面を受ける第2の面313Bと、を有し、ペリクル膜301と第1の枠体311とを外囲し、第1の枠体311と係合する第2の枠体313の第2の面313Bが、ペリクル膜301が配置された第1の枠体311の面に対して内側に傾斜していればよい。したがって、本実施形態は、例えば、
図10に示すペリクル400のような変形例も包含する。
【0117】
ペリクル400においては、第2の枠体413の形状が第2の枠体313とは異なる。第2の枠体413は、第1の枠体411のペリクル膜401が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面413Aを含む厚手部415と、第1の面413Aに接続し、第1の枠体411の側面を受ける第2の面413Bと、を有し、ペリクル膜401と第1の枠体411とを外囲する。また、第2の枠体413は、第1の枠体411の側面と接する第2の枠体413の第1の薄手部417Aと、厚手部415の下面に接続し、第2の枠体413の底面を含む第2の薄手部417Bとを有する。
【0118】
図10において、第2の枠体413の第2の薄手部417Bは、底面に向かって第2の枠体413の外側の側面方向に傾斜した構造を有する。なお、別の
変形例として、上述したペリクル200の第2の枠体213のように、第2の薄手部417Bの内側の側面が、第2の枠体413の外側の側面と平行となるようにしてもよい。
【0119】
また、上述した実施形態1の変形例であるペリクル200の第2の枠体213を、第2の枠体413の第2の薄手部417Bのように、底面に向かって第2の枠体413の外側の側面方向に傾斜した構造とすることも可能である。
【0120】
(実施形態3)
上述した実施形態では第2の枠体は、第1の面と第2の面で、ペリクル膜と第1の枠体を外囲し、接着層を介して第1の枠体を固定する。一方、本発明に係るペリクルは、ペリクル膜を透過し
た極端紫外光が第2の枠体が配置され
たフォトマスクに入射し、その入射した極端紫外光がフォトマスクのパターンに応じた極端紫外光、及び高次反射もしくは拡散反射による迷光としての極端紫外光を出射する。フォトマスクに入射及び/又は出射する極端紫外光が接着層に当たると、接着層が劣化する。
【0121】
本実施形態においては、第1の面に接続し、第2の面と向かい合う第3の面を有する第2の枠体を用いることにより接着層の劣化を抑制するペリクルについて説明する。
図11は、本発明の一実施形態に係るペリクル500の
図1の線分AA’における断面図である。
【0122】
ペリクル500は、ペリクル膜501を配置した第1の枠体511と、第1の枠体511を固定した第2の枠体513を備える。第2の枠体513は、第1の枠体511のペリクル膜501が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面513Aを含む厚手部515と、第1の面513Aに接続し、第1の枠体511の側面を受ける第2の面513Bとを有する。本実施形態においては、第2の枠体513は、第1の面513Aに接続し、第2の面513Bと向かい合う第3の面513Cをさらに有し、第2の枠体513の第3の面513Cは、第1の枠体511の内側の側面と対向して配置される。
【0123】
ペリクル500は、第2の枠体513に配置された貫通孔521と、貫通孔521を覆うフィルタ531を備える。貫通孔521は、ペリクル膜501が配置された第1の枠体511の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体513の厚手部515に配置される。フィルタ531は、ペリクル膜501が配置された第1の枠体511の面と交差する第2の枠体513の外側の側面に接着層(図示せず)を介して配置される。
【0124】
ペリクル膜501、第1の枠体511及び第2の枠体513としては、上述したペリクル膜、基板及び第2の枠体113と同様の材料を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0125】
第1の枠体511と第2の枠体513とは、接着層541を介して固定される。接着層541は、ペリクル膜501が配置された第1の枠体511の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体513の厚手部515の第1の面513A上に配置される。接着層541を補強するため、例えば、第1の枠体511の側面と、第1の枠体511の側面と接する第2の枠体513の薄手部517の第2の面513B及び第3の面513Cとの間に接着層をさらに配置してもよい。
【0126】
本実施形態においては、第2の枠体513は、第1の面513Aに接続し、第2の面513Bと向かい合う第3の面513Cを有する突出部を備える。第3の面513Cを有する突出部は、フォトマスクに入射及び/又は出射する極端紫外光を遮り、接着層541に当たるのを防ぐことができる。このため、極端紫外光による接着層541の劣化を抑制することができる。
【0127】
接着層541、貫通孔521及びフィルタ531の構成は上述したため、詳細な説明は省略する。
【0128】
ペリクル500の製造方法は、第2の枠体513の製造工程のみがペリクル100とは異なる。すなわち、第2の面513Bと、第1の面513Aに接続し、第2の面513Bと向かい合う第3の面513Cとが、ペリクル膜が形成された第1の枠体511の面に対して直角となる第2の枠体513を準備し、接着層541を介して第1の枠体511を第2の枠体513に固定する。その他の製造工程はペリクル100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0129】
また、第2の枠体の第3の面を有する突出部を備える構成は、実施形態2で説明したウエットエッチングによりペリクル膜を露出させた第1の枠体と組合せることもできる。
図12は、一実施形態に係るペリクル600の模式図であり、
図12(a)は
図1の線分AA’における断面図であり、
図12(b)〜(d)は第2の枠体613の変形例である。
【0130】
ペリクル600は、ペリクル膜601を配置した第1の枠体611と、第1の枠体611を固定した第2の枠体613を備える。第2の枠体613は、第1の枠体611のペリクル膜601が配置された面とは反対側の面を受ける第1の面613Aを含む厚手部615と、第1の面613Aに接続し、第1の枠体611の側面を受ける第2の面613Bと、を有する。本実施形態においては、第2の枠体613は、第1の面613Aに接続し、第2の面613Bと向かい合う第3の面613Cをさらに有し、第2の枠体613の第3の面613Cは、第1の枠体611の内側の側面と対向して配置される。
【0131】
第2の枠体613は、ペリクル膜601と直交する断面が略L字形状を有する。また、ペリクル600は、第2の枠体613に配置された貫通孔621と、貫通孔621を覆うフィルタ631を備える。貫通孔621は、ペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体613の厚手部615に配置される。フィルタ631は、ペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面と交差する第2の枠体613の外側の側面に接着層(図示せず)を介して配置される。
【0132】
本実施形態において、第1の枠体611は、ウエットエッチングにより形成されるため、第1の枠体611の側面に傾斜が生じ、断面が台形状になる。このため、第1の枠体611と係合する第2の枠体613は、ペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面と交差する第2の枠体613の内側の面が、ペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面に対して内側に傾斜するとともに、第1の枠体611と係合する第2の枠体613の第3の面613Cは、第1の面613Aからペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面に向かって、第2の面613Bとの距離が大きくなるように傾斜する構造を有する。
【0133】
ペリクル600は、第1の面613Aに接続し、ペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面にむかって、互いに距離が大きくなるように傾斜する第2の面613Bと第3の面613Cとを有することにより、第2の枠体613が、ウエットエッチングにより形成された第1の枠体611との高い密着性を得ることができる。
【0134】
また、本実施形態においては、第2の枠体613は、前記第1の面から前記ペリクル膜が配置された前記第1の枠体の面に向かって、前記第2の面との距離が大きくなるように傾斜した第3の面613Cを有する突出部を備える。第3の面613Cを有する突出部は、フォトマスクに入射及び/又は出射する極端紫外光を遮り、接着層641に当たるのを防ぐことができる。このため、極端紫外光による接着層641の劣化を抑制することができる。
【0135】
なお、第2の枠体613の第3の面613Cを有する突出部は、
図12(b)〜(d)に示したような先端形状の変形例を包含する。したがって、本実施形態に係るペリクル600においては、第2の枠体613の第3の面613Cを有する突出部の先端の断面形状は、
図12(b)のような鋭角であってもよく、
図12(c)のような台形でもよく、
図12(d)のようなR形状を有してもよく、これらに限定されるものではない。
【0136】
ペリクル600の製造方法は、第2の枠体613の製造工程のみがペリクル300とは異なる。すなわち、ペリクル膜601が形成された第1の枠体611の面に対して内側に傾斜する第2の面613Bと、第1の面613Aからペリクル膜601が配置された第1の枠体611の面に向かって、第2の面613Bとの距離が大きくなるように傾斜する第3の面613Cを有する第2の枠体613を準備し、接着層641を介して第1の枠体611を第2の枠体613に固定する。その他の製造工程はペリクル300と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0137】
なお、ペリクル500及びペリクル600において、第2の枠体は、上述した第2の枠体413の第2の薄手部417Bのように、底面に向かって第2の枠体の外側の側面方向に傾斜した構造を有してもよい。また、別の
変形例として、上述したペリクル200の第2の枠体213のように、第2の薄手部の内側の側面が、第2の枠体の外側の側面と平行となるようにしてもよい。
【0138】
(実施形態4)
上述した実施形態において、本発明に係るペリクルのペリクル膜は膜厚が20nm以上50nm以下の従来にない薄い膜であるため、従来のペリクルのように手でフォトマスクに固定することは困難である。したがって、専用の貼付け装置を用いて、非接触でのフォトマスクへの貼付けが必要となる。本実施形態においては、非接触でのフォトマスクへの貼付け手段を第2の枠体に設ける例について説明する。
【0139】
図13は、本発明の一実施形態に係るペリクル700に用いる第2の枠体713の模式図であり、上側の図は第2の枠体713の上面側の斜視図であり、下側の図は第2の枠体713の底面側の斜視図である。
図14に示すように、ペリクル700は、ペリクル膜701を配置した第1の枠体711と、第1の枠体711を固定した第2の枠体713を備える。第2の枠体713は、ペリクル膜701と第1の枠体711とを外囲し、ペリクル膜701と直交する断面がL字形状を有する。また、ペリクル700は、第2の枠体713に配置された貫通孔721と、貫通孔721を覆うフィルタ731を備える。貫通孔721は、ペリクル膜701が配置された第1の枠体711の面と交差する方向に厚みを有する第2の枠体713の厚手部715に配置される。フィルタ731は、ペリクル膜701が配置された第1の枠体711の面と交差する第2の枠体713の外側の面に接着層(図示せず)を介して配置される。
【0140】
第2の枠体713は、厚手部715の上面には、溝714が設けられている。本実施形態において、第2の枠体713の上面(厚さ方向)から見た溝714の形状は、第2の枠体713の形状に沿って一周する無端形状となっている。
【0141】
第2の枠体713は、貫通孔714A及び貫通孔714Bを有している。貫通孔714A及び貫通孔714Bは、それぞれ、溝714の底面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通している。
【0142】
ここで、貫通孔714A及び714Bは、それぞれ、溝714の側面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通していてもよい。また、貫通孔714A及び714Bのいずれか一方は、省略されていてもよい。即ち、第2の枠体713では、1つの溝(溝714)に対して2つの貫通孔(貫通孔714A及び714B)が接続しているが、本実施形態はこの態様には限定されない。本実施形態では、1つの溝(溝714、溝716)に対し、少なくとも1つの貫通孔が接続されていればよい。
【0143】
また、
図13及び
図14に示すように、第2の枠体713の厚手部715の上面とは反対側の底面には、溝716が設けられている。本実施形態において、溝716の形状も、溝714の形状と同様に、厚さ方向から見たときに、第2の枠体713の形状に沿って一周する無端形状となっている。
【0144】
第2の枠体713は、貫通孔716A及び貫通孔716Bを有している。貫通孔716A及び貫通孔716Bは、それぞれ、溝716の底面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通している。貫通孔716A及び716Bのバリエーションについては、貫通孔714A及び714Bのバリエーションと同様である。
【0145】
第2の枠体713は、ペリクル膜701と第1の枠体711とを固定(支持)してペリクル700を作製する用途に好適である。第2の枠体713には、第1の枠体711との対向面となる厚手部715の上面に溝714が設けられ、かつ、この溝714に接続する貫通孔714A及び714Bが設けられている。このため、第2の枠体713の厚手部715に第1の枠体711を固定する際に、貫通孔714A及び714Bを通じて溝714の内部を(例えば真空ポンプ等の排気手段によって)減圧することにより、第2の枠体713と第1の枠体711との間の圧力を減圧することができる。この減圧により、第2の枠体713と第1の枠体711との間に押し付け合う力を働かせることができるので、第2の枠体713及び第1の枠体711の前面及び背面(即ち、第2の枠体713の厚手部715の上面及び底面、並びに、第1の枠体711のペリクル膜701が配置された面及び第1の枠体711の底面)に接触することなく、両者を固定することができる。
【0146】
第2の枠体713と第1の枠体711との固定は、接着層741を介して行われる。減圧することで、第2の枠体713とペリクル膜とを接着層741を介して押し付けることができるため、第2の枠体713と第1の枠体711とをしっかりと固定することができる。
【0147】
なお、その他の構成については、実施形態1及び2で説明した構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、
図13及び
図14においては、実施形態1に示した第1の枠体111と同様に、第1の枠体711の側面と底面とが略直交する形状である場合について説明したが、本実施形態は、実施形態2に示したような側面に傾斜を有する第1の枠体と係合する第2の枠体にも適用することができる。
【0148】
(ペリクル700の製造方法)
本実施形態のペリクル700の製造方法の基本的な工程は、実施形態1及び2と同様である。実施形態1又は2と同様に、第1の枠体711を形成する。
【0149】
別途、枠の高さ方向の断面がL字形状を有する第2の枠体713を準備する。本実施形態において、第2の枠体713は、薄手部717の内側の側面が上面に対して概略直角である。すなわち、ペリクル膜701が配置された第1の枠体711の面と交差する第2の枠体713の内側の面が、ペリクル膜701が形成された第1の枠体711の面に対して直角となる。
【0150】
第2の枠体713の高さ方向と交差する方向に厚みを有する厚手部715に貫通孔721を形成する。露光装置の制約上ペリクル700の高さは2.5mmが上限であり、異物の結像防止からペリクル700の高さは高いほど良い。しかし、公知情報によると、ペリクル700の高さは、2mmは必要と言われている(例えば、非特許文献1)。以上を鑑みれば、常圧(0.1MPa)から露光時の真空状態(10
−4〜10
−6Pa)迄減圧した時に、貫通孔721は、ペリクル700内外の差圧によるペリクル膜701の膨張が0.5mm未満となる径とする。本実施形態において、貫通孔721はフィルタ731により覆われるため、貫通孔721の径は、フィルタ731による抵抗を考慮して設定される。
【0151】
また、第2の枠体713の厚手部715の上面に溝714
を形成するとともに、溝714の側面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通する貫通孔714A及び714Bを形成する。同様に、第2の枠体713の厚手部715の底面に溝716
を形成するとともに、溝716の側面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通する貫通孔716A及び716Bを形成する。
【0152】
第2の枠体713の高さ方向と平行な第2の枠体713の外側の面に貫通孔721を覆うフィルタ731を接着する。フィルタ731は、上述した特性を有するフィルタが好ましく、第2の枠体713への接着性を確保する観点から、幅(高さ)が第2の枠体713の高さと概略等しいことが好ましい。
【0153】
ここで、フィルタ731は、フィルタ131と同様に、通気部と糊代部から構成される(図示せず)。糊代部は通気部を覆うように、フィルタの周辺を囲んでいる。糊代部は、第2の枠体と通気部を隙間なく接着する役割を果たす。糊代部では気体は通過しない。糊代部の幅は0.2mm以上1.0mm以下である。通気部の面積を広くするために、糊代部の幅はできる限り細い方が望ましい。
【0154】
通気部とは、フィルタの糊代部で覆われていない部分を指す。通気部を気体が通過し、気体に含まれる粒子を捕捉する。通気部では圧力損失が発生するため、フィルタの換気性能は、通気部の換気性能によって決まる。
【0155】
第2の枠体713の厚手部715の底面に接着層743を形成する。このとき、第2の枠体713の厚手部715の底面に設けられた溝716が、接着層743で覆われないように、接着層743を形成する。また、接着層743を保護するライナー751を配置する。ここで、接着層743を形成したライナー751を準備して、接着層743を介して、ライナー751を第2の枠体713の厚手部715の底面に貼り付けてもよい。
【0156】
第2の枠体713の厚手部715の上面に、接着層741を形成する。このとき、第2の枠体713の厚手部715の上面に設けられた溝714が、接着層741で覆われないように、接着層741を形成する。第1の枠体711を外囲するように、形成した接着層741を介して、第1の枠体711を第2の枠体713に固定する。このとき、接着層741を補強するため、例えば、第1の枠体711の側面と、第1の枠体711の側面と接する第2の枠体713の薄手部717との間に接着層をさらに配置してもよい。フォトマスクにペリクルを装着するための空間が2.5mmの高さしか存在していないため、本実施形態において、第2の枠体713の高さと、第2の枠体713の下面に配置した接着層743の高さとの合計を2mm以下とすることが好ましい。
【0157】
第1の枠体711を第2の枠体713に固定する工程は、例えば、
図14に示したペリクル製造装置1000を用いて行う。ペリクル製造装置1000は、真空チャンバー1100と、真空チャンバー1100内に配置された載置台1200と、真空チャンバー1100に気体を供給するための供給管1110と、真空チャンバー1100内の気体を真空チャンバー1100外に排出するための排出管1120A及び1120Bと、を備えている。排出管1120A及び1120Bの真空チャンバー1100外の端部(図示せず)は、真空ポンプ等の排気手段(図示せず)に接続されている。
【0158】
真空チャンバー1100内の載置台1200上には、第2の枠体713が載置される。詳しくは、第2の枠体713のライナー751と載置台1200とが接するように載置される。そして第2の枠体713の接着層741上に、ペリクル膜701と第1の枠体711との複合部材が配置される。
【0159】
一例として、複合部材として、シリコンウェハ(例えば8インチシリコンウェハ)である第1の枠体711と、多結晶シリコン膜(p−Si膜)であるペリクル膜701との複合部材が用いられている。複合部材の所定の位置には、第1の枠体711の所定のサイズにカットするための切れ込みが設けられている。第1の枠体711は、好ましくは第2の枠体713との貼り合わせ前に、所定のサイズにカットされる(以下、この操作を「トリミング」ともいう)。
【0160】
また、排出管1120A及び1120Bは、それぞれ、真空チャンバー1100内に端部を有している。これらの端部は、それぞれ、第2の枠体713の溝714の内部を減圧するための2つの貫通孔714A及び714Bに接続できるようになっている。
【0161】
以下、上述したペリクル製造装置1000を用いたペリクルの製造方法の例を説明する。まず、真空チャンバー1100内の載置台1200上に、第2の枠体713を載置し、第2の枠体713の上方に第1の枠体711を配置する。この段階では、接着層741と第1の枠体711とが接触しないように配置する。
【0162】
次に、公知の手段によって、第2の枠体713と第1の枠体711との位置決めを行う。位置決めにより、第2の枠体713によって囲まれた開口部により、第1の枠体711が嵌るように配置する。次に、排出管1120A及び1120Bのそれぞれの端部を、第2の枠体713(枠本体)の溝714の内部を減圧するための2つの貫通孔714A及び714Bにそれぞれ接続する。
【0163】
次に、供給管1110から真空チャンバー1100内に気体を供給することで、真空チャンバー1100内を加圧する。同時に、排出管1120A及び1120Bの真空チャンバー1100外の端部に接続された真空ポンプ(図示せず)を作動させることにより、排出管1120A及び1120B、及び、第2の枠体713の2つの貫通孔714A及び714Bを通じて、第2の枠体713の厚手部715の上面に設けられた溝714の内部を減圧する。加圧及び減圧の程度は、真空チャンバー1100内の全体の圧力と、溝714の内部の圧力との差(差圧)によって生じる第1の枠体711と第2の枠体713との間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)が例えば2N程度となるように調整する。上記差圧により、第1の枠体711と第2の枠体713との間に押し付け合う力が生じ、第2の枠体713の接着層741と第1の枠体711とが接着される。
【0164】
以上のようにして、第1の枠体711と第2の枠体713の前面及び背面に接触することなく、両者を接着することができる。なお、上記各操作の順は、適宜入れ替えることも可能である。
【0165】
(フォトマスクへのペリクルの配置方法)
本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法は、一例として、本実施形態のペリクル700であって第2の枠体713の少なくともペリクル膜701を配置した第1の枠体711を支持する面とは反対側の面に溝716が設けられているペリクルと、フォトマスクと、を第2の枠体713の溝716が設けられている面とフォトマスクとが対向するように配置する配置工程と、貫通孔716A及び716Bを通じて溝716の内部を減圧することにより、ペリクル700とフォトマスクとを固定する固定工程と、を有する。
【0166】
本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法によれば、溝716の内部の減圧により、ペリクル700とフォトマスクとの間に押し付け合う力を働かせることができるので、ペリクル700及びフォトマスクの前面及び背面に接触することなく、両者を固定できる。
【0167】
本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法において、固定工程における減圧は、ペリクル700及びフォトマスクが加圧雰囲気下に配置された状態で行うことが好ましい。この態様によれば、ペリクル700及びフォトマスクが配置される全体の雰囲気の圧力と、溝716の内部の圧力との差(差圧)をより大きくすることができるので、ペリクル700及びフォトマスクとの間の押し付け合う力をより大きくすることができる。このため、両者をより容易に固定することができる。
【0168】
ペリクル700とフォトマスクとの間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)は、1N以上が好ましく、2N以上がより好ましい。ペリクル700とフォトマスクとの間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)は、10N以上が更に好ましく、20N以上が特に好ましい。ペリクル700とフォトマスクとの間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)の上限には特に制限はないが、生産性などの点からは、例えば500N、好ましくは400Nである。
【0169】
次に、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法の一例を、
図15を参照しながら説明する。但し、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法はこの一例によって限定されることはない。
図15は、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法に好適なフォトマスク製造装置2000の一例を概念的に示す断面図である。
【0170】
図15に示すフォトマスク製造装置2000は、真空チャンバー2100と、真空チャンバー2100に気体を供給するための供給管2110と、真空チャンバー2100内の気体を真空チャンバー2100外に排出するための排出管2120A及び2120Bと、を備えている。排出管2120A及び2120Bの真空チャンバー2100外の端部(図示せず)は、真空ポンプ等の排気手段(図示せず)に接続されている。
【0171】
真空チャンバー2100内には、フォトマスク2500が配置される。フォトマスク2500としては、支持基板と、この支持基板上に積層された反射層と、反射層上に形成された吸収体層と、を含むフォトマスクを用いる。フォトマスク2500は、真空チャンバー2100内に、前面(光照射面;即ち、反射層及び吸収体層が設けられている側の面)が上となり、背面(光照射面の反対側の面;即ち、支持基板側の面)が下となるように配置される。
【0172】
そしてフォトマスク2500の反射層及び吸収層の上方に、ライナー751を除去したペリクル700が配置される。詳細には、ペリクル700の接着層743側が、フォトマスク2500の前面(光照射面)に対向する向きに配置される。
【0173】
また、排出管2120A及び2120Bは、それぞれ、真空チャンバー2100内に端部を有している。これらの端部は、それぞれ、第2の枠体713の底面に設けられた溝716の内部を減圧するための2つの貫通孔に接続できるようになっている。
【0174】
以下、フォトマスク製造装置2000を用いたフォトマスクへのペリクルの配置方法の例を説明する。まず、ライナー751を除去して得られたペリクル700を準備する。次に、真空チャンバー2100内に、フォトマスク2500を、前面(光照射面)が上となる向きに配置する。このとき、フォトマスク2500の前面及び背面に異物が付着しないようにするために、例えば、フォトマスク2500の側面のみを支持する等して、フォトマスク2500の前面及び背面に、機械、治具、手などが接触しないように配置する。
【0175】
次に、ペリクル700を、フォトマスク2500の上方に配置する。このとき、ペリクル700の膜面に、異物が付着しないようにするために、例えば、第2の枠体713の側面(外周面)のみを支持する等して、ペリクル700の膜面に、機械、治具、手などが接触しないように配置する。また、この段階では、接着層743とフォトマスク2500とが接触しないように配置する。次に、公知の手段によって、ペリクル700とフォトマスク2500との位置決めを行う。
【0176】
次に、排出管2120A及び2120Bのそれぞれの端部を、第2の枠体713の底側の溝716の内部を減圧するための2つの貫通孔にそれぞれ接続する。次に、供給管2110から真空チャンバー2100内に気体を供給することで、真空チャンバー内を加圧する。同時に、排出管2120A及び2120Bの真空チャンバー2100外の端部に接続された真空ポンプ(図示せず)を作動させることにより、排出管2120A及び2120B、及び、第2の枠体713の2つの貫通孔716A及び716Bを通じて、第2の枠体713の底面に設けられた溝716の内部を減圧する。加圧及び減圧の程度は、真空チャンバー2100内の全体の圧力と、溝716の内部の圧力との差(差圧)によって生じるペリクル700とフォトマスク2500との間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)が例えば2N程度となるように調整する。上記差圧により、ペリクル700とフォトマスク2500との間に押し付け合う力が生じ、ペリクル700の接着層743と、フォトマスク2500とが接着される。
【0177】
以上のようにして、ペリクル700及びフォトマスク2500の前面及び背面に接触することなく、両者を接着することができる。これにより、ペリクル700及びフォトマスク2500への異物の付着を抑制しながら、両者を接着することができる。なお、上記各操作の順は、適宜入れ替えることも可能である。
【0178】
(フォトマスクへのペリクルの配置方法の変形例)
上述したフォトマスクへのペリクルの配置方法では、第1の枠体711と第2の枠体713を接着してペリクル700を形成した後に、フォトマスク2500に配置した。しかし、本発明に係るフォトマスクへのペリクルの配置方法は、これに限定されるものではなく、順序を入れ替えることも可能である。一例として、第2の枠体をフォトマスクに配置した後に、第2の枠体に第1の枠体を接着してペリクルを完成させる例について説明する。
【0179】
本実施形態においては、ペリクル膜701を配置した第1の枠体711を支持する面とは反対側の面に溝716が設けられている第2の枠体713と、フォトマスクと、を第2の枠体713の溝716が設けられている面とフォトマスクとが対向するように配置する配置工程と、貫通孔716A及び716Bを通じて溝716の内部を減圧することにより、ペリクル700とフォトマスクとを固定する固定工程と、ペリクル膜701を配置した第1の枠体711を第2の枠体713に固定する工程を有する。
【0180】
なお、実施形態4で説明したように、第2の枠体713は、ペリクル膜701と第1の枠体711とを外囲し、ペリクル膜701と直交する断面がL字形状を有し、第2の枠体713に配置された貫通孔721と、貫通孔721を覆うフィルタ731を備える。また、第2の枠体713には、厚手部715の上面に設けられた溝714と、溝714の底面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通する貫通孔714A及び貫通孔714Bと、厚手部715の上面とは反対側の底面に設けられた溝716と、溝716の底面と第2の枠体713の外側の面との間を貫通する貫通孔716A及び貫通孔716Bとを備える。
【0181】
本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法によれば、溝716の内部の減圧により、第2の枠体713とフォトマスクとの間に押し付け合う力を働かせることができるので、第2の枠体713及びフォトマスクの前面及び背面に接触することなく、接着層743を介して、両者を固定できる。
【0182】
本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法において、第2の枠体713の固定工程における減圧は、第2の枠体713及びフォトマスクが加圧雰囲気下に配置された状態で行うことが好ましい。この態様によれば、第2の枠体713及びフォトマスクが配置される全体の雰囲気の圧力と、溝716の内部の圧力との差(差圧)をより大きくすることができるので、第2の枠体713及びフォトマスクとの間の押し付け合う力をより大きくすることができる。このため、両者をより容易に固定することができる。
【0183】
第2の枠体713とフォトマスクとの間の押し付け合う力は、1N以上が好ましく、2N以上がより好ましい。第2の枠体713とフォトマスクとの間の押し付け合う力は、10N以上が更に好ましく、20N以上が特に好ましい。第2の枠体713とフォトマスクとの間の押し付け合う力の上限には特に制限はないが、生産性などの点からは、例えば500N、好ましくは400Nである。
【0184】
また、貫通孔714A及び714Bを通じて溝714の内部を(例えば真空ポンプ等の排気手段によって)減圧することにより、第2の枠体713と第1の枠体711との間の圧力を減圧することができる。この減圧により、第2の枠体713と第1の枠体711との間に押し付け合う力を働かせることができるので、第2の枠体713及び第1の枠体711の前面及び背面(即ち、第2の枠体713の厚手部715の上面及び底面、並びに、第1の枠体711のペリクル膜701が配置された面及び第1の枠体711の底面)に接触することなく、両者を固定することができる。
【0185】
第2の枠体713と第1の枠体711との固定は、接着層741を介して行われる。減圧することで、第2の枠体713とペリクル膜とを接着層741を介して押し付けることができるため、第2の枠体713と第1の枠体711とをしっかりと固定することができる。
【0186】
次に、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法の変形例を、
図16を参照しながら説明する。但し、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法はこの一例によって限定されることはない。
図16は、本実施形態のフォトマスクへのペリクルの配置方法に好適なフォトマスク製造装置3000の一例を概念的に示す断面図である。
【0187】
図16に示すフォトマスク製造装置3000は、真空チャンバー3100と、真空チャンバー3100に気体を供給するための供給管3110と、真空チャンバー3100内の気体を真空チャンバー3100外に排出するための排出管3120A及び3120Bと、を備えている。排出管3120A及び3120Bの真空チャンバー3100外の端部(図示せず)は、真空ポンプ等の排気手段(図示せず)に接続されている。
【0188】
真空チャンバー3100内には、フォトマスク3500が配置される。フォトマスク3500としては、支持基板と、この支持基板上に積層された反射層と、反射層上に形成された吸収体層と、を含むフォトマスクを用いる。フォトマスク3500は、真空チャンバー3100内に、前面(光照射面;即ち、反射層及び吸収体層が設けられている側の面)が上となり、背面(光照射面の反対側の面;即ち、支持基板側の面)が下となるように配置される。
【0189】
そしてフォトマスク3500の反射層及び吸収層の上方に、ライナー751を除去した第2の枠体713が配置される。詳細には、第2の枠体713の接着層743側が、フォトマスク3500の前面(光照射面)に対向する向きに配置される。
【0190】
また、排出管3120A及び3120Bは、それぞれ、真空チャンバー3100内に端部を有している。これらの端部は、それぞれ、第2の枠体713の底面に設けられた溝716の内部を減圧するための2つの貫通孔に接続できるようになっている。
【0191】
以下、フォトマスク製造装置3000を用いたフォトマスクへのペリクルの配置方法の例を説明する。まず、ライナー751を除去して得られた第2の枠体713を準備する。次に、真空チャンバー3100内に、フォトマスク3500を、前面(光照射面)が上となる向きに配置する。このとき、フォトマスク3500の前面及び背面に異物が付着しないようにするために、例えば、フォトマスク3500の側面のみを支持する等して、フォトマスク3500の前面及び背面に、機械、治具、手などが接触しないように配置する。
【0192】
次に、第2の枠体713を、フォトマスク3500の上方に配置する。この段階では、接着層743とフォトマスク3500とが接触しないように配置する。次に、公知の手段によって、第2の枠体713とフォトマスク3500との位置決めを行う。
【0193】
次に、排出管3120A及び3120Bのそれぞれの端部を、第2の枠体713の底側の溝716の内部を減圧するための2つの貫通孔にそれぞれ接続する。次に、供給管3110から真空チャンバー3100内に気体を供給することで、真空チャンバー3100内を加圧する。同時に、排出管3120A及び3120Bの真空チャンバー3100外の端部に接続された真空ポンプ(図示せず)を作動させることにより、排出管3120A及び3120B、及び、第2の枠体713の2つの貫通孔716A及び716Bを通じて、第2の枠体713の底面に設けられた溝716の内部を減圧する。加圧及び減圧の程度は、真空チャンバー3100内の全体の圧力と、溝716の内部の圧力との差(差圧)によって生じる第2の枠体713とフォトマスク3500との間の押し付け合う力が例えば2N程度となるように調整する。上記差圧により、第2の枠体713とフォトマスク3500との間に押し付け合う力が生じ、ペリクル700の接着層743と、フォトマスク3500とが接着される。
【0194】
次に、第2の枠体713の上方に第1の枠体711を配置する。この段階では、接着層741と第1の枠体711とが接触しないように配置する。さらに、公知の手段によって、第2の枠体713と第1の枠体711との位置決めを行う。位置決めにより、第2の枠体713によって囲まれた開口部により、第1の枠体711が嵌るように配置する。次に、排出管3220A及び3220Bのそれぞれの端部を、第2の枠体713(枠本体)の溝714の内部を減圧するための2つの貫通孔714A及び714Bにそれぞれ接続する。
【0195】
次に、供給管3110から真空チャンバー3100内に気体を供給することで、真空チャンバー3100内を加圧する。同時に、排出管3220A及び3220Bの真空チャンバー3100外の端部に接続された真空ポンプ(図示せず)を作動させることにより、排出管3220A及び3220B、及び、第2の枠体713の2つの貫通孔714A及び714Bを通じて、第2の枠体713の厚手部715の上面に設けられた溝714の内部を減圧する。加圧及び減圧の程度は、真空チャンバー3100内の全体の圧力と、溝714の内部の圧力との差(差圧)によって生じる第1の枠体711と第2の枠体713との間の押し付け合う力(第2の枠体713全体に加わる力)が例えば2N程度となるように調整する。上記差圧により、第1の枠体711と第2の枠体713との間に押し付け合う力が生じ、第2の枠体713の接着層741と第1の枠体711とが接着される。
【0196】
以上のようにして、ペリクル700及びフォトマスク3500の前面及び背面に接触することなく、両者を接着することができる。これにより、ペリクル700及びフォトマスク3500への異物の付着を抑制しながら、両者を接着することができる。なお、上記各操作の順は、適宜入れ替えることも可能である。
【0197】
(露光方法)
上述した実施形態に係るペリクルを用いて、極端紫外光リソグラフィによる微細加工を実現することができる。本発明に係るペリクルをフォトマスクのレチクル面に配置し、フォトマスクを露光装置の所定の位置に配置して、レチクル面から3mm以下の距離を有する空隙にペリクルを収容し、真空下で、ペリクルを配置したフォトマスクに5nm以上30nm以下の光を照射し、ペリクルを配置したフォトマスクのレチクル面から出射した光をレジスト層が形成された基材に照射することにより、
レジスト層にパターンを露光することができる。
【0198】
本発明に係るペリクルのペリクル膜は膜厚が20nm以上50nm以下の従来にない薄い膜であるため、従来のペリクルのように手でフォトマスクに固定することは困難である。したがって、専用の貼付け装置を用いて、非接触での貼付けが必要となる。
【0199】
本発明に係るペリクルを貼付けたフォトマスクを露光装置の所定の位置に配置するが、レチクル面から3mm以下、特に2.5mmの距離を有する空隙にペリクルが収容される。
【0200】
露光装置内にレジスト層が形成された基材を導入し、露光装置内を10
−4〜10
−6Pa程度の真空状態にする。このとき、フォトマスクに貼付けた本発明に係るペリクル内から空気が流出する。上述したように、本発明に係るペリクルは、第2の枠体として、断面がL字形状を有する部材を用い、フィルタの高さを第2の枠体の高さと概略等しくすることにより、フィルタの背面に貫通孔以外の空隙を生じることなく、十分な密着性を持ってフィルタが配置されているため、ペリクル膜が損傷することなく、ペリクル内を真空状態にすることができる。
【0201】
その後、ペリクルを配置したフォトマスクに5nm以上30nm以下のEUV光を照射する。フォトマスクはレチクル面より下層に多層反射膜が形成されているため、レチクル面に入射したEUV光が多層反射膜により反射して、レチクル面の吸収体で形成されたパターンを反映したEUV光がレチクル面からペリクルを透過して出射する。
【0202】
フォトマスクのレチクル面から出射した光をレジスト層が形成された基材に照射することにより、
レジスト層にパターンを露光することができる。これにより、従来にない微細加工が実現される。