特許第6275303号(P6275303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6275303
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】羽根付き注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A61M5/32 510V
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-55711(P2017-55711)
(22)【出願日】2017年3月22日
【審査請求日】2017年5月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597175938
【氏名又は名称】フォースエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 孝典
(72)【発明者】
【氏名】廣田 淳
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 匡信
(72)【発明者】
【氏名】小野 晋一
(72)【発明者】
【氏名】澤畑 智之
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5601741(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0059936(US,A1)
【文献】 特開2003−310756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射針本体と、
前記注射針本体の基端部を支持するハブと、
前記ハブから左右両側方に突出して持ち手として機能する羽根部と、を備える羽根付き注射針であって、
使用後の前記注射針本体を前記羽根部に対して後退させる注射針後退手段を備え、
前記羽根部は、
前記ハブに外嵌する筒部と、
前記筒部の前端部に第1ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第1板部と、
前記第1板部の先端部に第2ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第2板部と、
左右一対の前記第2板部の先端部に第3ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結され、左右一対の第2板部の連結部同士を連結する先端板部と、を備え、前記第1ヒンジ部を谷折り、前記第2ヒンジ部を山折り、第3ヒンジ部を谷折りとすることにより、前記第1板部及び前記第2板部が前後に重なり合った折り畳み状態で前記筒部から左右両側方に突出して持ち手として機能する一方、前記第1ヒンジ部前記第2ヒンジ部および前記第3ヒンジ部を直線的に展開させた展開状態では、前記第1板部及び前記第2板部が前記筒部から前記注射針本体に沿って注射針先端側に延出して使用後の前記注射針本体を覆う安全カバーとして機能し、
前記注射針後退手段は、
前記ハブを前記羽根部に対して後退方向にスライド可能に支持するスライド支持部と、
前記ハブを後退方向に付勢するバネと、
前記ハブを非後退位置に係合保持する係合部と、を備え、
前記係合部は、前記羽根部の展開に応じて自動的に係合解除されることにより、前記ハブ及び前記注射針本体を前記羽根部に対して後退させ、
さらに、前記羽根部には、該羽根部を折り畳み状態に係合保持することで前記羽根部の展開及び該展開に伴う前記ハブ及び前記注射針本体の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて前記羽根部の展開及び該展開に伴う前記ハブ及び前記注射針本体の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段が設けられると共に、
前記展開・後退規制手段は、前記筒部の前端部にヒンジ部を介して回動可能に連結され、左右の前記第2板部に係合することで前記羽根部を折り畳み状態に係合保持する第1姿勢と、左右の前記第2板部との係合を解除することで前記羽根部4の展開を許容する第2姿勢と、に回動操作可能な係合爪部を備え、
前記第1板部は、前記係合爪部との干渉を回避するための切欠き部を備えることを特徴とする羽根付き注射針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬膜外麻酔などに用いられる羽根付き注射針の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬膜外麻酔などに用いられる羽根付き注射針が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の羽根付き注射針は、注射針本体と、該注射針本体の基端部を支持するハブと、該ハブから左右両側方に突出する羽根部とを備えて構成されており、使用時に左右の羽根部を持ち手とすることで、安定した穿刺操作が可能になる。
【0003】
ところで、使用済みの注射針は、そのまま破棄すると、廃棄物を処理する際に針先が人体に刺さり、感染等の問題を引き起す虞があるため、使用後は、鞘状の安全カバー(キャップ)で注射針を被覆してから破棄することが奨励されているが、硬膜外麻酔などに用いられる注射針は、注射針本体の長さが通常の注射針に比べて長いことから、医療関係者(医者、看護士など)が鞘状の安全カバーを注射針の先端に被せる際、誤って指に注射針を刺す虞がある。
【0004】
そこで、注射針の長さ方向に伸縮自在な管状体(入れ子式、又は蛇腹式)で構成され、その一端には蓋部が形成され、他端は注射針のハブに取付けられた安全カバーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような安全カバーによれば、注射針のハブ側からの伸長操作によって注射針を被覆することができるので、注射針を被覆する際に誤って指に注射針を刺してしまうような問題を解消することができる。
【0005】
しかしながら、羽根付き注射針において、特許文献2のような安全カバーを設けた場合、構造が複雑になるだけでなく、羽根部を持ち手とする際に安全カバーが邪魔になったり、逆に、安全カバーを伸長操作する際に羽根部が邪魔になる等の問題があった。
【0006】
そこで、本願出願人は、展開操作に応じて安全カバーとして機能する羽根部と、羽根部の展開に応じてハブ及び注射針本体を羽根部に対して後退させる注射針後退手段と、を備える羽根付き注射針を提案した(特許文献3参照)。
【0007】
このような羽根付き注射針によれば、本来、持ち手として機能する羽根部を安全カバーとしても機能させるので、別途安全カバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化や部品点数の削減が図れるだけでなく、羽根部と安全カバーが互いの操作を邪魔するような不都合も解消することができる。また、羽根部の展開に応じて注射針本体を羽根部に対して後退させる注射針後退手段を備えるので、羽根部で覆うべき注射針本体の実質的な長さを短くすることができ、その結果、羽根部を安全カバーに兼用するにあたり、羽根部の大型化を回避できる。また、係合部の係合解除に応じてハブ及び注射針本体をバネの付勢力で後退させるので、ハブ及び注射針本体の後退操作が不要になり、羽根部を安全カバーとして使用する際の操作が簡略になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−305101号公報
【特許文献2】特開2003−164525号公報
【特許文献3】特許第5601741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の羽根付き注射針では、注射針穿刺作業者の意に反して使用前に羽根部が展開すると、該展開に伴ってハブ及び注射針本体が後退してしまい、使用不能状態に陥る虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、注射針本体と、前記注射針本体の基端部を支持するハブと、前記ハブから左右両側方に突出して持ち手として機能する羽根部と、を備える羽根付き注射針であって、使用後の前記注射針本体を前記羽根部に対して後退させる注射針後退手段を備え、前記羽根部は、前記ハブに外嵌する筒部と、前記筒部の前端部に第1ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第1板部と、前記第1板部の先端部に第2ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第2板部と、左右一対の前記第2板部の先端部に第3ヒンジ部を介して折り曲げ自在に連結され、左右一対の第2板部の連結部同士を連結する先端板部と、を備え、前記第1ヒンジ部を谷折り、前記第2ヒンジ部を山折り、第3ヒンジ部を谷折りとすることにより、前記第1板部及び前記第2板部が前後に重なり合った折り畳み状態で前記筒部から左右両側方に突出して持ち手として機能する一方、前記第1ヒンジ部前記第2ヒンジ部および前記第3ヒンジ部を直線的に展開させた展開状態では、前記第1板部及び前記第2板部が前記筒部から前記注射針本体に沿って注射針先端側に延出して使用後の前記注射針本体を覆う安全カバーとして機能し、前記注射針後退手段は、前記ハブを前記羽根部に対して後退方向にスライド可能に支持するスライド支持部と、前記ハブを後退方向に付勢するバネと、前記ハブを非後退位置に係合保持する係合部と、を備え、前記係合部は、前記羽根部の展開に応じて自動的に係合解除されることにより、前記ハブ及び前記注射針本体を前記羽根部に対して後退させ、さらに、前記羽根部には、該羽根部を折り畳み状態に係合保持することで前記羽根部の展開及び該展開に伴う前記ハブ及び前記注射針本体の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて前記羽根部の展開及び該展開に伴う前記ハブ及び前記注射針本体の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段が設けられると共に、前記展開・後退規制手段は、前記筒部の前端部にヒンジ部を介して回動可能に連結され、左右の前記第2板部に係合することで前記羽根部を折り畳み状態に係合保持する第1姿勢と、左右の前記第2板部との係合を解除することで前記羽根部4の展開を許容する第2姿勢と、に回動操作可能な係合爪部を備え、前記第1板部は、前記係合爪部との干渉を回避するための切欠き部を備えることを特徴とする羽根付き注射針である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、羽根部には、該羽根部を折り畳み状態に係合保持することで羽根部の展開及び該展開に伴うハブ及び注射針本体の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部の展開及び該展開に伴うハブ及び注射針本体の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段が設けられるので、注射針穿刺作業者の意に反して使用前に羽根部が展開したり、該展開に伴ってハブ及び注射針本体が後退し、使用不能状態に陥ることを防止できる。しかも展開・後退規制手段は、筒部の前端部にヒンジ部を介して回動可能に連結され、左右の第2板部に係合することで羽根部を折り畳み状態に係合保持する第1姿勢と、左右の第2板部との係合を解除することで羽根部の展開を許容する第2姿勢と、に回動操作可能な係合爪部を備えるので、簡略な構成でありながら羽根部を確実に折り畳み状態に係合保持できる。
しかも第1板部は、係合爪部との干渉を回避するための切欠き部を備えるので、第1板部と係合爪部との干渉によって羽根部の展開動作が阻害されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は羽根部を折り畳んだ状態の羽根付き注射針を示す正面図、(B)は(A)のX−X断面図である。
図2】羽根部を展開させた状態の羽根付き注射針を示す断面図である。
図3】(A)は折り畳んだ状態の羽根部を示す背面図、(B)は折り畳んだ状態の羽根部を示す下面図である。
図4】展開させた状態の羽根部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は硬膜外麻酔などに用いられる羽根付き注射針であって、該羽根付き注射針1は、注射針本体2と、該注射針本体2の基端部を支持するハブ3と、該ハブ3から左右両側方に突出して持ち手として機能する羽根部4とを備える。ハブ3の後端部には、ルアーテーパー状のシリンジ接続口3aが形成されており、ここに図示しないシリンジを接続すれば、注射針本体2を介してシリンジ内の薬剤を人体に注入することが可能になる。
【0014】
左右の羽根部4は、それぞれ、ヒンジ部4a、4b、4cを介して折り畳み自在な板状部材を用いて構成されている。例えば、本実施形態の羽根部4は、ハブ3に外嵌する筒部4dと、筒部4dの前端部に第1ヒンジ部4aを介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第1板部4eと、該第1板部4eの先端部に第2ヒンジ部4bを介して折り曲げ自在に連結される左右一対の第2板部4fと、該第2板部4fの先端部に第3ヒンジ部4cを介して折り曲げ自在に連結され、左右一対の第2板部4fの先端部同士を連結する先端板部4gとを備える。
【0015】
このように構成された羽根部4によれば、図1に示す折り畳み状態では、ハブ3から左右両側方に突出して持ち手として機能する一方、図2に示す展開状態では、ハブ3から注射針本体2に沿って注射針先端側に延出して注射針本体2を覆う安全カバーとして機能することが可能である。例えば、本実施形態の羽根部4は、第1ヒンジ部4aを谷折り、第2ヒンジ部4bを山折り、第3ヒンジ部4cを谷折りとすることにより、第1板部4e及び第2板部4fが前後に重なり合った折り畳み状態でハブ3から左右両側方に突出して持ち手として機能する一方、すべてのヒンジ部4a、4b、4cを直線的に展開させた展開状態では、第1板部4e及び第2板部4fがハブ3から注射針本体2に沿って注射針先端側に延出して注射針本体2を覆う安全カバーとして機能するようになっている。なお、図1では、羽根部4の構造を理解しやすくするために、第1板部4eと第2板部4fとの間に隙間を設けているが、折り畳み状態における実際の羽根部4では、図3に示すように、第1板部4eと第2板部4fとの間の隙間は僅かである。
【0016】
羽根部4は、展開状態において注射針本体2の先端部に係合して折り畳み状態への戻りを防止する戻り防止手段を備えることが好ましい。例えば、本実施形態では、羽根部4の先端板部4gに、折畳み状態において注射針本体2が貫通する貫通孔4hを形成するとともに、該貫通孔4hに戻り防止手段として機能するキャップ5を設けている。このキャップ5は、弾性薄板状の部材に貫通孔4hの中心を通る複数の切込み5aを放射状に有しており、羽根部4の折り畳み状態では、図1に示すように、注射針本体2の貫通を弾性変形によって許容する一方、羽根部4の展開状態では、一旦、注射針本体2の先端前方に離間した後、図2に示すように、注射針本体2の先端に係合することで、羽根部4の折り畳み状態への戻りを規制するようになっている。
【0017】
また、本発明の羽根付き注射針1は、羽根部4の展開操作時に、注射針本体2を羽根部4に対して相対的に後退させる注射針後退手段を備える。その理由は、安全カバー(羽根部4)で覆うべき注射針本体2の実質的な長さを短くし、羽根部4の大型化を回避できるからである。例えば、本実施形態の注射針後退手段は、羽根部4に対してハブ3を後退方向にスライド自在に支持するスライド支持部6と、ハブ3を後退方向に付勢するバネ7と、ハブ3を非後退位置に係合保持する係合部8とを備え、該係合部8の係合解除に応じてハブ3及び注射針本体2を後退させるように構成されている。
【0018】
スライド支持部6は、ハブ3の前半部を羽根部4の筒部4dで前後スライド自在に支持することにより構成されている。バネ7は、ハブ3のバネ収容溝3bに圧縮状態で収容され、羽根部4の筒部4dを前方に向けて付勢しており、言い換えれば、ハブ3を羽根部4に対して後退させる方向に付勢している。
【0019】
係合部8は、ハブ3の前端に形成される係合爪3cと、羽根部4の筒部4d前端に形成される係合爪4iとで構成され、係合爪3c、4i同士の係合により、羽根部4に対するハブ3の後退動作が規制される。このように構成された係合部8は、羽根部4側の係合爪4iが弾性変形で外方に開くことにより係合解除されるが、図1に示すように、羽根部4が折畳み状態のときは、係合爪4iの外方に折り畳まれた第1板部4eが存在するので、係合部8の係合解除が規制されている。
【0020】
一方、図2に示すように、羽根部4が展開操作されると、係合爪4iの外方が開放されるので、係合爪4iが弾性変形により外方に開いて係合部8の係合が自動的に解除される。これにより、羽根部4が展開操作時には、ハブ3及び注射針本体2を羽根部4に対して自動的に後退させることが可能になる。なお、ハブ3及び注射針本体2の後退動作は、ハブ3の係合爪3cが筒部4dの後端凸部4jに係合した時点で制限されるので、ハブ3及び注射針本体2が羽根部4から抜け落ちることはない。
【0021】
さらに、羽根部4には、該羽根部4を折り畳み状態に係合保持することで羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体2の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体2の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段が設けられている。
【0022】
図3及び図4に示すように、本実施形態の展開・後退規制手段は、筒部4dの前端下部にヒンジ部4jを介して上下回動可能に連結され、左右の第2板部4fに係合することで羽根部4を折り畳み状態に係合保持する第1姿勢と、左右の第2板部4fとの係合を解除することで羽根部4の展開を許容する第2姿勢と、に回動操作可能な係合爪部4kを備える。
【0023】
このような係合爪部4kを羽根部4に設けるにあたり、第1板部4eには、係合爪部4kとの干渉を回避するための切欠き部4mが形成されている。この切欠き部4mは、羽根部4が折り畳み状態のとき、図3の(A)に示す背面視において、係合爪部4kよりも左右幅及び上下幅が広く、また、羽根部4が展開状態のとき、図4に示す側面視において、係合爪部4kよりも前後幅が広くなるように形成される。これにより、第1板部4eと係合爪部4kとの干渉によって羽根部4の展開動作が阻害されることを防止することが可能になる。
【0024】
つぎに、本発明の実施形態に係る羽根付き注射針1の使用方法について、図1図4を参照して説明する。
【0025】
羽根付き注射針1を人体に穿刺する際は、図1に示すように、ハブ3から左右外側方に突出する折畳み状態の羽根部4を持ち手として羽根付き注射針1を持ち、注射針本体2の先端側を人体に穿刺する。そして、人体に穿刺した後は、ハブ3のシリンジ接続口3aに接続したシリンジの操作により、シリンジ内の薬剤を注射針本体2を介して人体に注入することができる。このような使用状態においては、羽根部4が展開・後退規制手段(係合爪部4k)によって折り畳み状態に係合保持されているので、意に反して羽根部4が展開したり、該展開に応じてハブ3及び注射針本体2が後退し、使用不能状態に陥ることが防止される。
【0026】
使用済みの羽根付き注射針1は、注射針本体2を被覆した状態で破棄される。本発明の実施形態に係る羽根付き注射針1では、注射針本体2を被覆するにあたり、まず、係合爪部4kを下方に回動操作し、係合爪部4kと第2板部4fとの係合を解除する。つぎに、一方の手で羽根部4の筒部4dを持ちながら、他方の手で羽根部4の板部4e、4fを前方に押し出す。前方に押された板部4e、4fは、展開しながら注射針本体2に沿って注射針先端側に延出し、注射針本体2を覆う。また、羽根部4を展開操作すると、係合部8の係合が自動的に解除され、ハブ3及び注射針本体2がバネ7の付勢力で後退する。これにより、注射針本体2の針先が羽根部4の先端部に設けられるキャップ5から抜けて羽根部4内に収容されるとともに、キャップ5が注射針本体2の針先に係合して羽根部4の折り畳み状態への戻りを規制する。以上により、羽根部4が安全カバーとしても確実に機能し、使用済みの羽根付き注射針1を安全に破棄することが可能になる。
【0027】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、注射針本体2と、該注射針本体2の基端部を支持するハブ3と、該ハブ3から左右両側方に突出して持ち手として機能する羽根部4とを備える羽根付き注射針1であって、羽根部4は、ヒンジ部4a、4b、4cを介して折り畳み自在な板状部材を用いて構成され、折り畳み状態では、ハブ3から左右両側方に突出して持ち手として機能する一方、展開状態では、ハブ3から注射針本体2に沿って注射針先端側に延出して注射針本体2を覆う安全カバーとして機能するので、別途安全カバーを設ける場合に比べ、構造の簡略化や部品点数の削減が図れるだけでなく、羽根部4と安全カバーが互いの操作を邪魔するような不都合も解消することができる。
【0028】
また、羽根部4は、展開状態において注射針本体2の先端部に係合して折り畳み状態への戻りを防止する戻り防止手段(キャップ5)を備えるので、確実に安全カバーとして機能することができる。
【0029】
また、羽根部4の展開操作時に、注射針本体2を羽根部に対して相対的に後退させる注射針後退手段を備えるので、安全カバー(羽根部4)で覆うべき注射針本体2の実質的な長さを短くすることができ、その結果、羽根部4を安全カバーに兼用するにあたり、羽根部4の大型化を回避できる。
【0030】
また、注射針後退手段は、羽根部4に対してハブ3を後退方向にスライド自在に支持するスライド支持部6と、ハブ3を後退方向に付勢するバネ7と、ハブ3を非後退位置に係合保持する係合部8とを備え、該係合部8の係合解除に応じてハブ3及び注射針本体2を後退させるので、ハブ3及び注射針本体2の後退操作が不要になり、羽根部4を安全カバーとして使用する際の操作が簡略になる。
【0031】
また、係合部8は、羽根部4の展開操作に応じて自動的に係合解除されるので、係合部8の係合解除操作が不要になり、羽根部4を安全カバーとして使用する際の操作が簡略になる。
【0032】
また、羽根部4には、該羽根部4を折り畳み状態に係合保持することで羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体2の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体4の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段が設けられるので、注射針穿刺作業者の意に反して使用前に羽根部4が展開したり、該展開に伴ってハブ3及び注射針本体2が後退し、使用不能状態に陥ることを防止できる。
【0033】
また、展開・後退規制手段は、筒部4dの前端部にヒンジ部4jを介して回動可能に連結され、左右の第2板部4fに係合することで羽根部4を折り畳み状態に係合保持する第1姿勢と、左右の第2板部4fとの係合を解除することで羽根部4の展開を許容する第2姿勢と、に回動操作可能な係合爪部4kを備えるので、簡略な構成でありながら羽根部4を確実に折り畳み状態に係合保持できる。
【0034】
しかも、第1板部4eは、係合爪部4kとの干渉を回避するための切欠き部4mを備えるので、第1板部4eと係合爪部4kとの干渉によって羽根部4の展開動作が阻害されることを防止できる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1 羽根付き注射針
2 注射針本体
3 ハブ
4 羽根部
4a、4b、4c、4j ヒンジ部
4d 筒部
4e 第1板部
4f 第2板部
4g 先端板部
4k 係合爪部
4m 切欠き部
7 バネ
8 係合部
【要約】
【課題】羽根付き注射針において、注射針穿刺作業者の意に反して使用前に羽根部が展開したり、該展開に伴ってハブ及び注射針本体が後退し、使用不能状態に陥ることを防止する。
【解決手段】羽根付き注射針1の羽根部4には、該羽根部4を折り畳み状態に係合保持することで羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体2の後退を規制する状態と、所定の係合解除操作に応じて羽根部4の展開及び該展開に伴うハブ3及び注射針本体4の後退を許容する状態とに切り換えられる展開・後退規制手段(係合爪部4k)が設けられる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4