(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275304
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】脆性材料基板の搬送ヘッド
(51)【国際特許分類】
B65G 49/07 20060101AFI20180129BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
B65G49/07 G
H01L21/78 P
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-64813(P2017-64813)
(22)【出願日】2017年3月29日
(62)【分割の表示】特願2013-114483(P2013-114483)の分割
【原出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2017-141115(P2017-141115A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 欣也
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−525137(JP,A)
【文献】
特開2011−181936(JP,A)
【文献】
特開2010−103286(JP,A)
【文献】
特開2012−076425(JP,A)
【文献】
特開2008−147591(JP,A)
【文献】
特開2010−056341(JP,A)
【文献】
特開2002−313883(JP,A)
【文献】
特開平07−032885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 49/07
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に縦方向及び横方向に所定のピッチで形成された機能領域を有し、機能領域が中心に位置するように格子状に形成されたスクライブラインに沿ってブレイクされ格子状の機能領域とその外側に端材となる領域を有する脆性材料基板の端材領域を搬送する搬送ヘッドであって、
リッドプレートと、
前記リッドプレートとの間に気密の空隙を形成し、前記リッドプレートとは接しない表面外周に、前記空隙に連通する開口を有するベースプレートと、
前記リッドプレートとベースプレートによって形成される空隙内に連結し、前記開口より空気を噴出させたり又は吸引することができる真空吸着装置と、を具備し、
前記ベースプレートの開口は前記脆性材料基板の機能領域のピッチに相当するピッチで環状に配列されたものである搬送ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハ等の脆性材料基板であって、縦方向及び横方向に整列して形成されている多数の機能領域(デバイス領域ともいう)を有し、機能領域毎にブレイクされた基板を吸着して搬送する際に用いられる搬送ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクライブラインが形成された基板を、スクライブラインが形成された面の裏面から、スクライブラインに沿って面に垂直に押圧することによりブレイクする基板ブレイク装置が提案されている。以下、このようなブレイク装置によるブレイクの概要を示す。ブレイクの対象となる半導体ウエハには、整列して多数の機能領域が形成されているものとする。分断する場合には、まず基板に機能領域の間に等しい間隔を隔てて縦方向及び横方向にスクライブラインを形成する。そしてこのスクライブラインに沿ってブレイク装置で分断する。
図1(a)は分断する前のブレイク装置に載置された基板の断面図を示している。本図に示すように、基板101に機能領域101a,101bとその間にスクライブラインS1,S2,S3・・・が形成されている。分断する場合には基板101の裏面に粘着テープ102を貼り付け、その表面に保護フィルム103を貼り付ける。そしてブレイク時には
図1(b)に示すように受け刃105,106のちょうど中間にブレイクすべきスクライブライン、この場合にはスクライブラインS2を配置し、その上部よりブレード104をスクライブラインに合わせて降下させ、基板101を押圧する。このようにして一対の受け刃105,106とブレード104との三点曲げによるブレイクが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−39931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成を有するブレイク装置を用いて、格子状にスクライブが形成された基板をブレイクしたときに、機能領域毎に分離されたチップの周囲に端材が残ることとなる。分断した機能チップをまとめて搬送する前、又は搬送した後に、周囲の端材を分離して搬送する必要があった。そこで搬送ヘッドにより端材のみを吸引して搬送することが考えられるが、基板の機能領域の表面にシリコン材を注入しているため、端材を吸引して所定の場所に搬送しても端材のみを廃棄する場合に搬送ヘッドから端材を取り外すことが難しくなるという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであって、端材を搬送した後、ヘッドから端材を容易に離脱させる搬送ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の搬送ヘッドは、一方の面に縦方向及び横方向に所定のピッチで形成された機能領域を有し、機能領域が中心に位置するように格子状に形成されたスクライブラインに沿ってブレイクされ格子状の機能領域とその外側に端材となる領域を有する脆性材料基板の端材領域を搬送する搬送ヘッドであって、リッドプレートと、前記リッドプレートとの間に気密の空
隙を形成し、前記リッドプレートとは接しない表面外周に、前記空
隙に連通する開口を有するベースプレートと、前記リッドプレートとベースプレートによって形成される空
隙内
に連結する真空吸着装置と、を具備し、前記ベースプレートの開口は前記脆性材料基板の機能領域のピッチに相当するピッチで環状に配列されたものである。
【0007】
前記真空吸着装置は、前記開口より空気を噴出させたり又は吸引することができる。
【0008】
ここで前記搬送ヘッドは、前記ベースプレートの前記リッドプレートと接しない表面に貼り付けられ、前記ベースプレートの開口に対向する位置に配列された開口を有する弾性シートを具備するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明によれば、スクライブラインに沿ってブレイクされた基板に当接することで、搬送ヘッドで端材のみを吸着することができる。そして吸着した端材を必要な位置に搬送した後、ベースプレート
の開口から
空気を
噴出させることによって吸着した端材を脱落させている。このため搬送ヘッドから確実に端材を取り外して廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は従来の基板のブレイク時の状態を示す断面図である。
【
図2】
図2は格子状にスクライブされ、ブレイクされた基板の一例を示す正面図及び部分断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態による搬送ヘッドを示す斜視図である。
【
図4】
図4は本実施の形態による搬送ヘッドの正面図及び底面図である。
【
図5】
図5は本実施の形態による搬送ヘッドのA−A線断面図及びB−B線断面図である。
【
図6】
図6は本実施の形態によるプッシャープレートを示す正面図及び側面図である。
【
図7】
図7は本実施の形態による搬送ヘッドのプッシャープレートが引き上げられた状態及び引き下げられた状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態においてブレイクの対象となる基板10は
図2に正面図及びその部分断面図を示すように、製造工程でx軸とy軸に沿って一定ピッチで多数の機能領域11が形成された基板とする。この機能領域11は例えば、LEDとしての機能を有する領域とし、各機能領域にはLEDのための円形のレンズが夫々の表面に形成されている。そして各機能領域毎に分断してLEDチップとするために、スクライブ装置により各機能領域が中心に位置するように縦方向のスクライブラインS
y1〜S
ynと、横方向のスクライブラインS
x1〜S
xmとが互いに直交するように形成されている。これらのスクライブラインS
x1〜S
xm,スクライブラインS
y1〜S
ynのピッチは機能領域のx軸とy軸方向のピッチと同一となる。そしてこの基板10のスクライブラインS
x1,S
xm,S
y1,S
ynの内側には、基板を搬送する際にシリコン樹脂が充填されるが、このシリコン樹脂をLEDが形成された機能領域の範囲に留めるために、機能領域の外側の周囲に基板10の表面よりわずかに高い線状の突起12が形成されている。
【0012】
このようにスクライブされた基板10に対して図示しないブレイク装置のブレードをスクライブラインの真上から押下してブレイクする。そしてスクライブラインS
x1〜S
xmに沿ってブレイクを繰り返すことによって細長い分断片とすることができ、更にスクライブラインS
y1〜S
ynに沿ってブレイクを繰り返すことによって個別のLEDチップを生成することができる。ブレイクされた直後の基板10はスクライブラインに沿って分断されてはいるが、分離されていない。即ち分断した基板10は外周の端材となっている不要部分と、外周を除く格子状の多数のLEDチップの部分とから成り立っている。
【0013】
次にこの発明の実施の形態による周囲の端材のみを吸引するための搬送ヘッドについて説明する。
図3は搬送ヘッドを示す斜視図、
図4(a)はその正面図、
図4(b)は底面図である。
図5(a)は
図4(a)のA−A線断面図、
図5(b)はB−B線断面図であり、
図6はプッシャープレートを示す正面図及び側面図である。これらの図に示すように、この搬送ヘッド20は長方形状のベースプレート21と、これにほぼ同一形状のリッドプレート22を有している。ベースプレート21とリッドプレート22とは相対向する面の中央部分に窪みが形成され、夫々の間は気密に保つため環状のラバーシート23を介して接着されている。そして夫々の窪みとラバーシート23によって気密の空隙24を形成している。ベースプレート21には
図4(b)の搬送ヘッドの底面図に示すように対角線上の角の位置に案内用の開口21a,21bが設けられている。この開口21a,21bは基板の外側の上に突出するピンを挿入することにより、この搬送ヘッド20を基板に対して正確に位置決めできるようにするものである。
【0014】
ベースプレート21の下面には各辺の近傍に環状に多数の開口25が設けられる。この全ての開口25は連通してベースプレート21とリッドプレート22の間の窪みで形成される空隙24と連結されている。リッドプレート22の上面には管継手26が設けられ、空隙24に通じている。この管継手26は図示しないチューブを介して真空吸着装置が連結され、真空吸着装置を駆動することによって開口25より外部からのエアを噴出させたり又は吸引することができる。開口25のピッチは、基板10のスクライブラインS
x1〜S
xm,S
y1〜S
ynのピッチと同一とする。
【0015】
さてこの空隙24の内部には、上下動自在のプッシャープレート31が設けられる。プッシャープレート31は基板10とほぼ同一の形状であり、
図6に正面図及び側面図を示すように、長方形状の平板に肉抜き加工が施されており、その縁の近傍には一定間隔で多数のプッシャーピン32がプッシャープレート31の面に対して垂直に設けられている。プッシャーピン32の長さは図示のように全て同一とする。又プッシャーピン32のピッチは、基板10のスクライブラインS
x1〜S
xm,S
y1〜S
ynのピッチと同一とする。
【0016】
更にプッシャープレート31の中央部分にはプランジャ33が接続され、更にコネクションプレート34a,34bを介して垂直方向にプランジャ35が接続されている。プッシャープレート31はプランジャ35を駆動することによって、ベースプレート21とリッドプレート22の間の空隙24内で上下動するものである。
【0017】
さてリッドプレート22の上面には
図3に斜視図を示すように、4つのアーム41a〜41dが周囲に設けられ、その間には平板状のブラケット42がベースプレート21の背面に垂直に設けられる。そしてこのブラケット42にはエアシリンダ43が取付けられている。更にこのエアシリンダ43にはプッシャープレート31に連結されたプランジャ35の上下動を検知するための位置センサ44a,44bが設けられている。
【0018】
さて
図4(b)の搬送ヘッドの底面図に示すように、ベースプレート21の下面の周囲には環状のラバーから成る弾性シート51が張り付けられており、更にその内部には周囲に前述したプッシャープレート31のピン32に対応する位置に環状に多数の開口52が設けられている。そしてプランジャ35が引き下げられたときにプッシャーピン32の先端は開口25を介してラバーシート51の開口52から突出する状態となり、プランジャ35が引き上げられるとプッシャーピン32は開口52からが突出せず内部に収納されている状態となるように構成される。
【0019】
さてこの搬送ヘッド20を用いて既にブレイクされた基板を搬送する場合には、まずプランジャ35を吸引してプッシャープレート31を引き上げる。位置センサ44aはプッシャープレートの上方向への移動を検知する。このとき
図7(a)に示すようにプッシャーピン32をラバーシート51の開口52から突出させない状態となる。そして各開口52から空気を吸引して搬送ヘッド20をブレイクされた基板に合わせて固定する。そしてヘッドをそのまま引き上げることによってブレイクされた基板の周囲の端材のみを引き上げることができる。
【0020】
そして搬送ヘッド20を図示しないシュータに移動させた後、真空吸着装置によって開口52より空気を噴出させる。これによって少なくとも1つの端材は取り外され
る。そこで
図7(b)に示すようにプッシャープレート31を押し下げる。このとき位置センサ44bはプッシャープレートの下方向への移動を検知する。こうすれば開口52よりピン32を突出させることができ、これによって周囲に付着している端材を全て取り外すことができる。
【0021】
この後基板の残った機能領域を搬送するようにすれば、
図2に示す線状の突起の影響を受けることなく中央の格子状の基板領域を搬送することができる。
【0022】
尚中央の基板領域のみを特に搬送し、その後本実施の形態の搬送ヘッドによって周囲の端材領域のみを搬送するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は脆性材料基板をブレイクした後に形成される周囲の端材を吸着し、吸着した後ヘッドから取り外す際にプッシャーピンを開口部から突出させることによって端材を取り外している。このため機能領域の周囲の端材を搬送する装置に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 基板
11 機能領域
12 線状突起
20 搬送ヘッド
21 ベースプレート
22 リッドプレート
23 ラバーシート
24 空隙
25 管継手
31 プッシャープレート
32 プッシャーピン
33,35 プランジャ
34a,34b コネクションプレート
41a〜41d アーム
42 ブラケット
43 エアシリンダ
44a,44b 光学センサ
51 弾性シート
52 開口