(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸性リン酸エステル(E)は、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、及びイソトリデシルアシッドホスフェートから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のソルダペースト。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のソルダペースト及びはんだ接合部の一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0028】
(1)ソルダペースト
本実施形態のソルダペーストは、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末と、フラックス組成物とを含むことが好ましい。
【0029】
<鉛フリーはんだ合金>
本実施形態に係る鉛フリーはんだ合金は、Sn及びSbを含みSbの含有量が1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また当該鉛フリーはんだ合金は、更にAg0.1質量%以上5質量%以下、Cu0.5質量%以上1質量%以下、Bi0.5質量%以上5質量%以下及びIn0.1質量%以上6質量%以下から選ばれる少なくとも2種の合金元素を含むことがより好ましい。
【0030】
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、鉛フリーはんだ合金の靭性及びこれを用いて形成するはんだ接合部の耐亀裂性を向上させるため、1質量%以上10質量%以下のSbを含有させることが好ましい。
【0031】
上述の通り、一般的にSbには微量ではあるもののSが残存している。そのため、Sbを1質量%以上含有する本実施形態に係る鉛フリーはんだ合金においては、はんだ接合時に活性剤と金属硫化物とが反応し易く、この反応により遊離したS、または当該反応により生成された硫化物により、はんだ接合部とフラックス残さの界面に硫化物相が形成され易い。
しかし本実施形態に係るソルダペーストは、以下詳述するように酸性リン酸エステルを含むフラックス組成物を用いることにより、はんだ接合時に発生したSや硫化物を酸性リン酸エステルが捕捉するため、はんだ接合部とフラックス残さとの界面における硫化物相の発生を抑制することができる。
なお、Sbの精製にあたって、Sを完全に除去する方法も存在するが、非常に手間がかかるためコストも高い状態にある。
【0032】
Sbは鉛フリーはんだ合金の溶融温度(固相線温度・液相線温度)を上昇させるため、多量にこれを含有させると高温下でSbが再固溶しなくなる虞がある。そのため、Sbの含有量は1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この範囲でSbを添加することで、はんだ合金の延伸性を阻害することなくはんだ接合部の亀裂進展抑制効果を向上させることができ、また外部応力に対する十分な靱性を確保できることから残留応力も緩和することができる。なお当該亀裂進展抑制効果をより向上させるために、Sbの含有量を3質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
【0033】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.1質量%以上5質量%以下のAgを含有させることができる。Agを添加することにより、Sn粒界中にAg
3Sn化合物を析出させて鉛フリーはんだ合金の機械的強度を向上させることができる。
【0034】
なお、鉛フリーはんだ合金の機械的強度とコストのバランス、並びに形成されたはんだ接合部による電子部品の電極剥離現象の抑制を考慮すると、Agの含有量は1質量%以上3.1質量%以下であることが好ましい。
特にAgの含有量を2質量%以上3.1質量%以下とすると、鉛フリーはんだ合金の強度と延伸性のバランスをより良好にできる。更に好ましいAgの含有量は2.5質量%以上3.1質量%以下である。
【0035】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.5質量%以上1質量%以下のCuを含有させることができる。この範囲でCuを添加することで、電子回路のCuランドに対するCu食われ防止効果を発揮すると共に、Sn粒界中にCu
6Sn
5化合物を析出させることにより鉛フリーはんだ合金の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0036】
特にCuの含有量が0.7質量%以下の場合、Cuランドに対するCu食われ防止効果を発揮することができると共に、溶融時の鉛フリーはんだ合金の粘度を良好な状態に保つことができ、はんだ接合時におけるボイドの発生をより抑制し、形成するはんだ接合部の耐熱衝撃性を向上することができる。更には、溶融した鉛フリーはんだ合金のSn結晶粒界に微細なCu
6Sn
5が分散することで、Snの結晶方位の変化を抑制し、はんだ接合形状(フィレット形状)の変形を抑制することができる。
なおCuの含有量が1質量%を超えると、はんだ接合部の電子部品及び電子回路基板との界面近傍にCu
6Sn
5化合物が析出し易くなり、接合信頼性やはんだ接合部の延伸性を阻害する虞があるため好ましくない。
【0037】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.5質量%以上5質量%以下のBiを含有させることができる。Biを含有させることにより、Sbの添加により上昇した溶融温度を低下させると共に、その強度を向上させることができる。即ち、BiもSbと同様にSnマトリックス中へ固溶するため、鉛フリーはんだ合金を更に強化することができる。
【0038】
なお、鉛フリーはんだ合金の延伸性及び形成されたはんだ接合部の亀裂進展抑制効果の向上を考慮すると、Biの含有量は0.5質量%以上4.5質量%以下とすることが好ましい。
またBiの含有量を2質量%以上4.5質量%以下とすると、はんだ接合部の強度をより向上させることができる。なお、前記鉛フリーはんだ合金に後述するNi及び/またはCoを添加する場合、Biの好ましい含有量は3.1質量%以上4.5質量%以下である。
【0039】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.1質量%以上6質量%以下のInを含有させることができる。この範囲内でInを添加することにより、Sbの添加により上昇した鉛フリーはんだ合金の溶融温度を低下させると共に亀裂進展抑制効果を向上させることができる。即ち、InもSbと同様にSnマトリックス中へ固溶するため、鉛フリーはんだ合金を更に強化することができるだけでなく、Agを添加した場合はAgSnIn、及びInSb化合物を形成しこれをSn粒界に析出させることでSn粒界のすべり変形を抑制する効果を奏する。
【0040】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.01質量%以上0.1質量%以下のNiを含有させることができる。特に鉛フリーはんだ合金にCuを添加した場合においてNiを添加することにより、溶融した鉛フリーはんだ合金中に微細な(Cu,Ni)
6Sn
5が形成されて母材中に分散するため、はんだ接合部における亀裂の進展を抑制し、更にその耐熱疲労特性を向上させることができる。
また、このような鉛フリーはんだ合金は、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品をはんだ接合する場合であっても、はんだ接合時にNiがはんだ接合部と電子部品のリード部分やその下面電極との界面付近の領域(以下、「界面付近」という。)に移動して微細な(Cu,Ni)
6Sn
5を形成するため、界面付近におけるCu
3Sn層の成長を抑制することができ、界面付近の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。
【0041】
但し、Niの含有量が0.01質量%未満であると、前記金属間化合物の改質効果が不十分となるため、界面付近の亀裂抑制効果は十分には得られ難い。なお、Niの含有量が多い鉛フリーはんだ合金は、Sn−3Ag−0.5Cu合金に比べて過冷却が発生し難くなり、はんだ合金が凝固するタイミングが早くなり易い。そのため、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部のフィレットでは、はんだ合金の溶融中に外に抜け出ようとしたガスがその中に残ったまま凝固してしまい、フィレット中にガスによる穴(ボイド)が発生してしまうケースが確認される。このフィレット中のボイドは、特に−40℃から140℃、−40℃から150℃といった寒暖差の激しい環境下においてはんだ接合部の耐熱疲労特性を低下させてしまう。
そのため、本実施形態においてはNiの含有量は0.01質量%以上0.1質量%以下であることが好ましい。またNiの含有量を0.01質量%以上0.05質量%以下とすると良好な界面付近の亀裂進展抑制効果及び耐熱疲労特性を向上しつつ、ボイド発生の抑制効果を向上させることができる。
【0042】
前記鉛フリーはんだ合金には、Niに加え0.001質量%以上0.015質量%以下のCoを含有させることができる。特に鉛フリーはんだ合金にCuを添加した場合においてCoを添加することにより、溶融した鉛フリーはんだ合金中に微細な(Cu,Co)
6Sn
5が形成されて母材中に分散するため、はんだ接合部のクリープ変形の抑制及び亀裂の進展を抑制しつつ、特に寒暖差の激しい環境下においてもはんだ接合部の耐熱疲労特性を向上させることができる。
なおNiと共にCoを添加する場合、Ni添加による上記効果を高めることができると共に、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品をはんだ接合する場合であっても、Ni添加による上記効果を高めると共に、Coがはんだ接合時に界面付近に移動して微細な(Cu,Co)
6Sn
5を形成するため、界面付近におけるCu
3Sn層の成長を抑制することができ、界面付近の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。
【0043】
但し、Coの含有量が0.001質量%未満であると、前記金属間化合物の改質効果が不十分となるため、Coの添加による界面付近の亀裂抑制効果は十分には得られ難い。
またCoの含有量が多い鉛フリーはんだ合金は、Sn−3Ag−0.5Cu合金に比べて過冷却が発生し難くなり、はんだ合金が凝固するタイミングが早くなり易い。そしてこのような鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部のフィレットでは、はんだ合金の溶融中に外に抜け出ようとしたガスがその中に残ったまま凝固してしまい、フィレット中にガスによるボイドが発生してしまうケースが確認される。このフィレット中のボイドは、特に寒暖差の激しい環境下においてはんだ接合部の耐熱疲労特性を低下させてしまう。
そのため、本実施形態においてはCoの含有量は0.001質量%以上0.015質量%以下であることが好ましい。またCoの含有量を0.001質量%以上0.01質量%以下とすると良好な亀裂進展抑制効果及び耐熱疲労特性を向上しつつ、ボイド発生の抑制を向上させることができる。
【0044】
ここで前記鉛フリーはんだ合金にAg、Cu、Sb、Bi、Ni及びCoを添加する場合、それぞれの合金元素の含有量(質量%)は下記式AからDの全てを満たすことが好ましい。各合金元素の含有量をこの範囲とすることで、はんだ接合部の延伸性阻害及び脆性増大の抑制、はんだ接合部の強度及び熱疲労特性の向上、フィレット中に発生するボイドの抑制、寒暖の差が激しい過酷な環境下におけるはんだ接合部の亀裂進展抑制、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品のはんだ接合時における界面付近の亀裂進展抑制効果のいずれもをバランスよく発揮させることができ、はんだ接合部の信頼性を一層向上させることができる。
1.6≦Ag含有量+(Cu含有量/0.5)≦5.9 … A
0.85≦(Ag含有量/3)+(Bi含有量/4.5)≦ 2.10 … B
3.6 ≦ Ag含有量+Sb含有量≦ 8.9 … C
0<(Ni含有量/0.1)+(Co含有量/0.015)≦1.19 …D
【0045】
また前記鉛フリーはんだ合金には、P、Ga及びGeの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。この範囲内でこれらを添加することにより、鉛フリーはんだ合金の酸化を防止することができる。但し、これらの含有量が0.05質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0046】
更に前記鉛フリーはんだ合金には、Fe、Mn、Cr及びMoの少なくとも1種を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。この範囲内でこれらを添加することにより、鉛フリーはんだ合金の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。但し、これらの含有量が0.05質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0047】
なお、前記鉛フリーはんだ合金には、その効果を阻害しない範囲において、他の成分(元素)、例えばCd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al、Mg及びZn等を含有させることができる。また前記鉛フリーはんだ合金には、当然ながら不可避不純物も含まれるものである。
【0048】
また前記鉛フリーはんだ合金の主たる成分はSnであることが好ましい。
【0049】
<フラックス組成物>
本実施形態のソルダペーストに用いるフラックス組成物は、ベース樹脂(A)と、活性剤(B)と、チキソ剤(C)と、溶剤(D)と、酸性リン酸エステル(E)を含むことが好ましい。
【0050】
ベース樹脂(A)
前記ベース樹脂(A)としては、例えばロジン系樹脂(A−1)、ロジン誘導体化合物(A−2)及び合成樹脂(A−3)の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0051】
前記ロジン系樹脂(A−1)としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;ロジンを重合化、水添化、不均一化、アクリル化、マレイン化、エステル化若しくはフェノール付加反応等を行ったロジン誘導体;これらロジンまたはロジン誘導体と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等)とをディールス・アルダー反応させて得られる変性ロジン樹脂等(但し、以下のロジン誘導体化合物(A−2)は除く。)が挙げられる。これらの中でも特に変性ロジン樹脂が好ましく用いられ、アクリル酸を反応させて水素添加した水添アクリル酸変性ロジン樹脂が特に好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0052】
なお前記ロジン系樹脂(A−1)の酸価は140mgKOH/gから350mgKOH/gであることが好ましく、その質量平均分子量は200Mwから1,000Mwであることが好ましい。
【0053】
前記ロジン誘導体化合物(A−2)としては、例えばカルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物が好適に用いられる。
前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン; 水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体等が挙げられ、これら以外にもカルボキシル基を有するロジンであれば使用することができる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0054】
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
【0055】
前記ロジン誘導体化合物(A−2)は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られることが好ましい。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい質量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
【0056】
なお前記ロジン誘導体化合物(A−2)の酸価は0mgKOH/gから150mgKOH/gであることが好ましく、その質量平均分子量は1,000Mwから30,000Mwであることが好ましい。
【0057】
前記合成樹脂(A−3)としては、例えばアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂及びポリアルキレンカーボネートなおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。これらの中でも特にアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0058】
前記アクリル樹脂は、例えば炭素数1から20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを単重合、または当該アクリレートを主成分とするモノマーを共重合することにより得られる。このようなアクリル樹脂の中でも、特にメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2から20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂が好ましく用いられる。なお当該アクリル樹脂は、1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0059】
前記合成樹脂(A−3)の酸価は0mgKOH/gから150mgKOH/gであることが好ましく、その質量平均分子量は1,000Mwから30,000Mwであることが好ましい。
【0060】
また前記ベース樹脂(A)の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
前記ロジン系樹脂(A−1)を単独で用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。前記ロジン系樹脂(A−1)の配合量をこの範囲とすることで、良好なはんだ付性とすることができる。
【0062】
前記ロジン誘導体化合物(A−2)を単独で用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。前記ロジン誘導体化合物(A−2)の配合量をこの範囲とすることで、良好なはんだ付性とすることができる。
【0063】
また前記合成樹脂(A−3)を単独で用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
前記ベース樹脂(A)は、例えば前記ロジン系樹脂(A−1)、前記ロジン誘導体化合物(A−2)及び前記合成樹脂(A−3)をそれぞれ単独で使用することもでき、またそれぞれを併用することもできる。
【0065】
例えば前記ロジン系樹脂(A−1)と前記ロジン誘導体化合物(A−2)とを併用する場合、その配合比率は20:80から50:50であることが好ましく、35:65から45:55であることがより好ましい。
次に例えば前記ロジン誘導体化合物(A−2)と前記合成樹脂(A−3)とを併用する場合、その配合比率は20:80から50:50であることが好ましく、35:65から45:55であることがより好ましい。
また例えば前記ロジン系樹脂(A−1)と前記合成樹脂(A−3)とを併用する場合、その配合比率は20:80から50:50であることが好ましく、35:65から45:55であることがより好ましい。
そして前記ロジン系樹脂(A−1)と前記ロジン誘導体化合物(A−2)と前記合成樹脂(A−3)とを併用する場合、その配合比率は1:1:1から1:1:8であることが好ましく、1:1:2から1:1:4であることがより好ましい。
【0066】
なお前記ベース樹脂(A)としては、特に前記ロジン誘導体化合物(A−2)と前記合成樹脂(A−3)としてアクリル樹脂を併用することが好ましい。
前記ロジン誘導体化合物(A−2)とアクリル樹脂とを併用した前記ベース樹脂(A)を含むフラックス組成物は、当該フラックス組成物を用いて形成されたフラックス残さを有する基板を例えば車載用機器のような寒暖の差の激しい環境下におかれる機器に使用した場合であっても、寒暖差により生じる線膨張係数の差を起因とした応力によるフラックス残さへの亀裂及びその進展を抑制することができ、信頼性の高い基板を提供することができる。
【0067】
活性剤(B)
前記活性剤(B)としては、例えばカルボン酸類、ハロゲンを含む化合物等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0068】
前記カルボン酸類としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸等並びにその他の有機酸が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、ドデカン二酸、酒石酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
また前記その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、2−ヨード安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、アントラニル酸等が挙げられる。
なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0069】
前記ハロゲンを含む化合物としては、例えば非解離性のハロゲン化合物(非解離型活性剤)、解離性のハロゲン化合物(解離型活性剤)が挙げられる。
前記非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられ、例えば塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物、フッ化物のように塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよく、またこの2以上の異なるハロゲン原子を共有結合で結合する化合物でもよい。当該化合物は水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。当該ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコール等の臭素化アルコール;2−ブロモヘキサン酸等の臭化有機酸;1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノール等の塩素化アルコール;3−フルオロカテコール等のフッ素化アルコール;その他のこれらに類する化合物が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0070】
前記活性剤(B)の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
上述したSb由来の金属硫化物は前記活性剤(B)と反応し易い。そして特に前記活性剤(B)由来の酸価がフラックス組成物全量換算で80mgKOH/g以上となる場合、Sb由来の金属硫化物と当該活性剤(B)とが更に反応し易くなるため、Sの遊離や硫化物の生成が更に生じ易くなる。
しかし例えば酸価の低い活性剤を使用したり、活性剤の配合量を抑えると鉛フリーはんだ合金粉末の表面の活性化が不十分となり、ぬれ性が低下してしまう。
そのため、基板の信頼性を確保するためには、前記活性剤(B)由来の酸価(活性力)は一定以上あることが望ましく、例えばフラックス組成物における前記活性剤(B)由来の酸価は好ましくは80mgKOH/g、より好ましくは100mgKOH/g以上であることが望ましい。
【0072】
このような状況において、本実施形態に係るソルダペーストは、一定量のSbを含有する鉛フリーはんだ合金粉末を使用した場合であっても、以下詳述するように酸性リン酸エステル(E)を含むフラックス組成物を用いることにより、はんだ接合時に発生したSや硫化物を酸性リン酸エステル(E)が捕捉するため、はんだ接合部とフラックス残さとの界面における硫化物相の発生を抑制することができる。そのため、フラックス組成物における前記活性剤(B)由来の酸価が80mgKOH/g以上とすることができ、鉛フリーはんだ合金の良好なぬれ性を確保することができる。
【0073】
チキソ剤(C)
前記チキソ剤(C)としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸、ジベンジリデンソルビトール類が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記チキソ剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0074】
溶剤(D)
前記溶剤(D)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記溶剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
酸性リン酸エステル(E)
前記酸性リン酸エステル(E)としては、例えば下記一般式(1)で表されるものが好ましく用いられる。
【0076】
【化2】
(式中、Rは炭素数8から24の直鎖状または分鎖状のアルキル基を示す。nは1または2であり、nが2の場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。)
【0077】
このような酸性リン酸エステル(E)としては、例えば2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート及びイソトリデシルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
また前記酸性リン酸エステル(E)の配合量は、前記フラックス組成物全量に対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましいその配合量は2質量%以上8質量%以下であり、更に好ましいその配合量は3質量%以上7質量%以下である。
この範囲で前記酸性リン酸エステル(E)を配合することにより、一定量のSbを含有する鉛フリーはんだ合金粉末を使用した場合であっても、はんだ接合時に発生したSや硫化物を酸性リン酸エステル(E)が捕捉するため、はんだ接合部とフラックス残さとの界面における硫化物相の発生を抑制することができる。
【0078】
前記フラックス組成物には、前記鉛フリーはんだの合金粉末の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。この酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダードフェノール系酸化剤が好ましく用いられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
【0079】
前記フラックス組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、例えば消泡剤、界面活性剤、つや消し剤及び無機フィラー等 挙げられる。これらは単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
本実施形態のソルダペーストは、例えば前記合金粉末と前記フラックス組成物を混合することにより得られる。
前記合金粉末とフラックス組成物との配合比率は、合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましいその配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
【0081】
なお前記合金粉末の粒子径は1μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0082】
(3)はんだ接合部
本実施形態のはんだ接合部は、前記ソルダペーストを基板上の所定位置に印刷し、これを例えば230℃から260℃の温度でリフローを行うことにより形成される。なお、このリフローにより基板上にははんだ接合部とフラックス組成物を由来としたフラックス残さが形成される。
【0083】
またこのようなはんだ接合部を有する電子回路基板は、例えば基板上の所定の位置に電極及びソルダレジスト膜を形成し、所定のパターンを有するマスクを用いて本実施形態のソルダペーストを印刷し、当該パターンに適合する電子部品を所定の位置に搭載し、これをリフローすることにより作製される。
このようにして作製された電子回路基板は、前記電極上にはんだ接合部が形成され、当該はんだ接合部は当該電極と電子部品とを電気的に接合する。そして前記基板上には、少なくともはんだ接合部に接着するようにフラックス残さが付着している。
【0084】
本実施形態のはんだ接合部及びこれを有する電子回路基板は前記ソルダペーストを用いてそのはんだ接合部及びフラックス残さが形成されているため、一定量のSbを含有する鉛フリーはんだ合金粉末を使用した場合であっても、はんだ接合部とフラックス残さとの界面における硫化物相が発生し難く、よって外観検査における異常を抑制し、歩留まりの悪化を防止することができる。
そしてこのようなはんだ接合部を有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。
【0085】
またこのような電子回路基板を組み込むことにより、信頼性の高い電子制御装置が作製される。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
<アクリル樹脂の合成>
メタクリル酸10質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51質量%、ラウリルアクリレート39質量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、還流管及び窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。次いで前記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2質量%から5質量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を前記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を110℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、合成樹脂を得た。なお、合成樹脂の質量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
【0088】
<ロジン誘導体化合物の合成>
撹拌翼、ディーン・スターク装置及び窒素導入管を備えた500mlの4つ口フラスコに水添酸変性ロジン樹脂(ロジンにアクリル酸を反応させて水素添加した水添アクリル酸変性ロジン樹脂)138.6g(COOH基:0.6mol)、ダイマージオール85.5g(OH基:0.3mol)を仕込み、これらを窒素雰囲気下150℃で1時間撹拌し、水添酸変性ロジン樹脂を溶解させた。
次いで、これにp−トルエンスルホン酸−水和物5.7g(0.03mol) を加え、これを180℃まで昇温させて脱水反応を行った。脱水が止まるまでこれを3時間反応させた後に室温まで放冷して、更に酢酸エチル200gを加えて均一の溶液とした。
そして当該溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和させて分液後に濃縮することで、ロジン誘導体化合物190.5g(酸価:77mgKOH/g、質量平均分子量:2,400Mw)を得た。
【0089】
表1に記載の各成分を混練し、実施例1から10及び比較例1から5に係る各フラックス組成物を得た。なお、特に記載のない限り、表1に記載の配合量の単位は質量%である。
【0090】
【表1】
※1 荒川化学工業(株)製 水添酸変性ロジン
※2 日本化成(株)製 エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド
※3 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0091】
<活性剤(B)由来の酸価>
各実施例及び各比較例について、フラックス組成物の酸価のうち、活性剤(B)由来の酸価を算出した。その結果を表2に表す。
【0092】
ソルダペーストの作製
前記各フラックス組成物を11質量%と以下のはんだ合金の粉末89質量%とをそれぞれ混練し、実施例1から10及び比較例1から5に係る各ソルダペーストを作製した。
・実施例1から9及び比較例1、3及び4
Sn−3Ag−0.5Cu−0.5Bi−3Sb−0.03Niはんだ合金
・実施例10及び比較例5
Sn−3Ag−0.5Cu−0.5Bi−5Sb−0.03Niはんだ合金
・比較例2
Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金
※上記はんだ合金の粉末の粒径はいずれも19μmから41μmである。
【0093】
(1)硫化物相発生試験
50mm×50mm×0.3mmのリン酸脱酸銅板に、直径6.5mmのパターンを持つ厚さ0.2mmのメタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷した。次いで印刷後の各リン酸脱酸銅板をリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて
図1に示す温度プロファイル条件にてリフローし、各試験板を作製した。なお、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
各試験板上に形成されたはんだ部(はんだ合金が溶融し凝集したもの)の表面に生じた硫化物相の面積を測定し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。なお、硫化物相は黒色を呈していることから、黒色化した部分を硫化物相としてその面積を測定している。
○:硫化物相の面積が0%
△:硫化物相の面積が10%以下
×:硫化物相の面積が10%超20%以上
【0094】
(2)ボイド試験
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(厚さ1.6mm)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、前記チップ部品を20個ずつ搭載した。そして当該各ガラスエポキシ基板をリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて
図1に示す温度プロファイル条件にてリフローし、前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を有する各試験基板を作製した。なお、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
作製した各試験基板について、その表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板のランドにおいて、チップ部品の電極下の領域(
図2の破線で囲った領域(a))に占めるボイドの面積とフィレットが形成されている領域(
図2の破線で囲った領域(b))に占めるボイドの面積とを測定した。そして測定結果に基づき、ボイド面積率(総ボイド面積/総ランド面積×100)を算出し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。
○:ボイド面積率が10%以下
△:ボイド面積率が10%超15%以下
×:ボイド面積率が15%超
【0095】
(3)耐連結亀裂性試験
16mm×22mm×1.4mmサイズの0.65mmピッチQFP(Quad Flat Package)部品と、当該QFP部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記QFP部品を接続する電極(メーカー推奨設計に準拠)とを備えたガラスエポキシ基板(厚さ1.6mm)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれの基板に前記QFP部品を搭載した。
次いで印刷後の各基板をリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて
図3に示す温度プロファイル条件にてリフローを行い、前記ガラスエポキシ基板と前記QFP部品とを電気的に接合するはんだ接合部を有する各試験基板を作製した。なお、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、各試験基板に冷熱衝撃サイクルを3,000サイクル繰り返し与えるよう設定した。そして与えられた冷熱衝撃サイクルが1,000サイクル毎に各試験基板を冷熱衝撃試験装置から取り出し、フラックス残さの連結亀裂の発生を目視で確認し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。なお、本明細書において連結亀裂とは、複数のはんだ接合部にまたがるように発生したフラックス残さの亀裂を指す。
◎:3,000サイクルまで連結亀裂発生無し
○:2,000サイクル超3,000サイクル以下で連結亀裂発生
△:1,000サイクル超2,000サイクル以下で連結亀裂発生
×:1,000サイクル以下で連結亀裂発生
【0096】
(4)はんだ亀裂性試験
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記チップ部品を接続する電極とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを1,000、1,500、2,000、2,500、3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)、製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は10個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,501から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:2,001から2,500サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:2,000サイクル以下ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
【0097】
【表2】
【0098】
以上に示す通り、実施例に係るソルダペーストは、フラックス組成物に酸性リン酸エステル(E)を配合したことにより、活性剤(B)由来の酸価が80mgKOH/g以上であり且つSbを一定以上含む鉛フリーはんだ合金粉末を使用した場合であっても硫化物相の発生を一定以上抑制でき、またボイド抑制及びフラックス残さの亀裂抑制を両立できることが分かる。更にこれらのソルダペーストは、使用する鉛フリーはんだ合金粉末がSbを含むことから寒暖差の激しい環境下においてもはんだ接合部の耐亀裂性も良好であることが分かる。
即ち、実施例に係るソルダペーストは、硫化物相発生試験、ボイド試験及び耐連結亀裂性試験共にSbを含有しない鉛フリーはんだ合金粉末を使用した比較例2のソルダペーストと同等以上の効果を発揮でき、且つSbを一定以上含む鉛フリーはんだ合金粉末を使用することから、はんだ接合部の耐亀裂性を向上することができる。
【0099】
一方、比較例1及び5のようにフラックス組成物における活性剤(B)由来の酸価が80mgKOH/g以上であり、且つSbを一定以上含む鉛フリーはんだ合金粉末を使用した場合においてフラックス組成物に酸性リン酸エステル(E)を配合しないと、はんだ接合部の表面に硫化物相が発生してしまうことが分かる。
なお比較例3は中性リン酸エステルを配合しているが、中性リン酸エステルでは硫化物相の発生を抑制できないことが分かる。
また比較例4のように、フラックス組成物におけるベース樹脂(A)由来の酸価も活性剤(B)由来の酸価も低い場合、鉛フリーはんだ合金の表面の活性化が不十分となるためにそのぬれ性が悪化し、はんだ接合部内にボイドが発生し易くなってしまうことが分かる。
【0100】
以上、本発明のソルダペーストは、製造工程における歩留まりの悪化を抑制できるために経済的であり、またボイド抑制効果、フラックス残さの亀裂進展抑制効果も発揮でき、更にSbを含有する鉛フリーはんだ合金粉末を使用することからはんだ接合部の耐亀裂性も向上できるため、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。更にこのような電子回路基板は、より一層高い信頼性が要求される電子制御装置に好適に使用することができる。
【課題】一定量のSbを含有するSn−Sb系はんだ合金粉末を用いたソルダペーストを使ってはんだ接合を行った場合であっても、はんだ接合部とフラックス残さの界面における硫化物相の形成を抑制し、これを起因とする製造工程での歩留まりの悪化を防止することができるソルダペーストの提供。
【解決手段】 Sn及びSbを含みSbの含有量が1質量%以上10質量%以下である鉛フリーはんだ合金からなる粉末と、ベース樹脂(A)と、活性剤(B)と、チキソ剤(C)と、溶剤(D)と、酸性リン酸エステル(E)を含むフラックス組成物とを含むことを特徴とするソルダペースト。