【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、この問題を請求項1に記載の方法を用いて解決した。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項において明記され、以下で、本発明の背景にある一般的概念とともに個々に説明される。
【0015】
従って、本発明は鋳造部品を鋳造するための、生成される鋳造部品を
形成するための空洞を囲む鋳造鋳型内に溶融金属が鋳込まれる、方法を提供する。鋳造鋳型は、1つ又はそれ以上の鋳造鋳型部品又はコアから成るロストモールドとして設計される。これらの鋳造鋳型部品は、その都度、中子砂、結合剤、及びオプションとして鋳型材料の特定の性質を調節するための1つ又はそれ以上の添加剤、で構成される鋳型材料から形成される。
【0016】
それに関して、本発明による方法は、以下の作業ステップ、即ち、
− 鋳造鋳型を準備するステップと、
−
エンクロージャ(囲い込み)内
に鋳造鋳型
を収容し、
エンクロージャの少なくとも1つの内側表面区域と鋳造鋳型の関連する外側表面区域との間に充填スペースを形成するステップと、
− 充填スペースを自由流動充填材料で充填するステップと、
− 溶融金属を鋳造鋳型内に鋳込むステップと、
を含み、
− ここで、溶融金属の鋳込みの結果として、鋳造鋳型が、高温溶融金属に起因する熱の流入の結果である
プロセス熱を放射し始め、及び、
− ここで、溶融金属に起因する熱の流入の結果として、鋳型材料の結合剤が気化及び燃焼し始めるので、結合剤がその効果を失い、鋳造鋳型が崩壊して破片になる。
【0017】
本発明により、充填スペース内に流し込まれる充填材料は、充填スペースの充填後、充填材料によって形成される充填材料充填物にガス流が浸透することができるような、低い嵩密度を有する。
【0018】
さらに、本発明による方法において、充填スペース
の充填時、充填材料
は所定の最低温度
であり、それから出発して、充填材料
は、その温度が、鋳造鋳型から放射される熱及び結合剤の燃焼の間に放出される熱によって生成されるプロセス熱の結果として、700℃の境界温度
より高い温度に加熱される。
【0019】
このように、本発明による方法は、充填材料を蓄熱材という認識で使用するという着想に基づくもので、この蓄熱材の温度を、鋳造鋳型の鋳造鋳型部品及びコアがそれから作製される鋳型材料の結合剤がエンクロージャ内で過ごす時間の間に、既に温度の効果によって殆ど大部分が分解するように、設計及び制御するものである。
【0020】
このようにして、鋳型材料から成る鋳造鋳型の部品及びコアが崩壊して破片になり、これらの破片がエンクロージャの取外し後に鋳造部品から剥離し、鋳造部品には少なくともその外側表面の領域において、付着した鋳型部品及びコアが殆ど全くない、状態に達する。
【0021】
同時に、鋳造部品の内部のチャネル又は空洞を形成するコアもまた剥離し、その結果、これらのコアの中子砂及び鋳型材料破片は、エンクロージャ内で自発的に鋳造部品から既に流出するか、又は、基本的に既知の方法、例えば、撹拌などの機械的方法により、若しくは適切な流体によるフラッシングにより鋳造部品から取り除くことができる。
【0022】
本発明による、鋳造部品とエンクロージャの間に形成される充填スペースの中に充填される充填材料は、自由流動性であるので、鋳造鋳型の外側表面の領域内に逃げ溝、空洞などが存在するときにも充填スペースを完全に充填する。
【0023】
それに関して、本発明により、充填材料が、充填スペースの充填及び充填スペース内に充填された充填材料の何らかの可能な圧縮の後にもまた、ガス流が貫流できるほどに低い嵩密度を有するということが決定的に重要である。従って、本発明により、前述の従来技術とは対照的に、鋳造鋳型の最適支持が確実にされる一方で、ガスに対して殆ど不浸透性の非常に強く圧縮された充填物が充填スペース内に特に作製されることがない。むしろ、本発明により使用される充填材料は、例えば、熱対流の結果として起るガス流に対して浸透性であるように選択される。これは、鋳造鋳型が、それに鋳込まれる溶融金属によって加熱され、及び、鋳造鋳型部品及びコアの鋳型材料の気化性結合剤成分が気化し燃焼し始めて熱を放出するときに起る。
【0024】
本明細書において、気化性及び燃焼性結合剤について言及するときは、常に、加熱によって気化し燃焼することができるそれらの結合剤成分を意味する。これは、例えば、亀裂生成物として鋳造鋳型内に残留し、そこで熱の影響によって好ましく崩壊する、固体又は他の形態の他の結合剤成分の可能性を除外するものではない。
【0025】
本発明による、充填スペース内に充填される充填材料の与えられたガス流に対する浸透性は、それにより鋳造鋳型から気化した結合剤が充填材料自体の領域内で燃焼し、結果として充填材料をさらに加熱することを可能にするばかりでなく、さらに、結合剤の燃焼を支援する酸素の供給を可能にする。このように、溶融金属を通して導入され及び結合剤の燃焼を通して放出されるプロセス熱の結果として、充填材料が高温に加熱されるので、鋳型部品及びコアの結合剤成分が鋳造鋳型から抜け出て充填材料と接触して燃焼するか又は少なくとも熱分解して環境に有害な影響をもはや有しなくなり、又は、エンクロージャから排ガスとして排出することができ、排ガス純化プロセスに送り込むことができる。
【0026】
本発明により、温度損失を最少にするために、予め温度が調節された充填材料が溶融金属の鋳込みの直前に充填スペース内に導入されることが好ましい。
【0027】
ひとたび、鋳型材料からの十分な濃度の可燃ガス放出が充填スペース内で達成されると、加熱された充填材料との接触によって燃焼が開始する。鋳造鋳型から出た結合剤の燃焼は充填材料が加熱され続ける限り長く続く。このプロセスは、エンクロージャ内で、もはや可燃雰囲気が形成されなくなるほどに少量の結合剤だけが鋳造鋳型から抜け出るまで続く。しかし、蓄熱器のように、今度は高温充填材料が、結合剤の燃焼が起る境界温度より高い温度を維持する。従って、鋳造鋳型もまた少なくともこの温度に留まるので、鋳造鋳型内に残る結合剤残留物が熱的に分解される。
【0028】
本発明による方法に対して特に適するのは、その鋳型部品及びコアが有機結合剤によって結合された鋳型材料から成る、鋳造鋳型である。この目的のために、例えば、市販の溶媒含有結合剤を使用することができ、又はその効果が化学反応によって引き起される結合剤を使用することができる。対応する結合剤システムは、現在、いわゆる「コールドボックス法」において使用される。
【0029】
実際に、700℃の温度は、鋳鉄溶融物の処理における境界温度として特に適する。700℃を越えると、特に有機結合剤が確実に燃焼する。同時に、これらの温度において鋳造鋳型から放出される他の有毒物質が酸化されるか又はそうでなければ無害にされる。同じことが、結合剤の温度に関連する崩壊の結果として鋳造鋳型内に生じる亀裂生成物に当てはまり、これらもまたそのような高温において確実に分解する。
【0030】
本発明により、充填材料が、充填スペースに充填される際に特定の温度に予熱されるので、流入するプロセス熱の結果として充填材料が境界温度より高い温度に加熱される。ここで実際的試験は、500℃の温度が、充填スペース内に充填される際の充填材料の最低温度として十分であることを示した。
【0031】
結合剤が漏出し、燃焼及び分解すると、鋳型材料で形成された鋳造鋳型の部品及びコアが崩壊してほぐれた破片になり、これらはエンクロージャの取外し後に破棄し処理することができ、又は、有利に、溶融金属の鋳込みとエンクロージャの取外しとの間の時間中に既にエンクロージャから取り出すことができる。このために、鋳造鋳型は篩基盤の上に置くことができ、篩基盤を通して少しずつ流出する鋳造鋳型の破片を集めることができる。実用のためには、篩基盤の開口は、それにより、鋳造鋳型の破片及び充填材料が一緒に篩基盤を通して少しずつ流出し、一緒に収集され及び処理され、並びに次の処理のために互いに分離されるように、設計される。これは、エンクロージャを取り外すときにエンクロージャ内に、ほぐれた充填材料がすでに何も存在しないという利点を有する。
【0032】
鋳造鋳型のエンクロージャは、従って、充填スペースの形成に十分な間隔で鋳造鋳型を囲む、断熱性の十分に堅い材料から構成されるジャケットと、鋳造鋳型がその上に置かれる篩板として機能する穴の開いた支持板と、鋳造鋳型の充填後に所定位置に取付けられるやはり断熱性のカバーとによって形成することができる。充填スペース内に生じる排ガスの制御された排出を可能にするために、さらに排ガス用開口を設けることができる。
【0033】
本発明による方法においてさらに、鋳造鋳型とエンクロージャの間のプレテンションを生成して鋳造鋳型のより確実で正確な位置決めされた結合が保証されるように、また鋳造鋳型が複数の鋳型部品及びコアから成るコアパッケージから形成される場合に、充填スペース内に充填される充填材料を圧縮することができる。しかし、前述のように、低い嵩密度のために、ガス流に対する浸透性がそのような圧縮充填によっても確保される。
【0034】
本発明によって実現される鋳造鋳型の鋳型部品及びコアの破壊の効率は、充填材料だけでなく鋳造鋳型自体がガス浸透性となるように設計することでさらに増すことができる。このために、鋳造鋳型中にチャネルを計画的に導入し、それを通して、充填スペース内に生成する高温排ガス、又は適切に予熱された酸素含有ガスが流れるようにすることができる。このようにして、鋳型材料結合剤の迅速な気化、燃焼及び他の形の熱分解がまた、鋳造鋳型内で始まる。これは、鋳造鋳型の崩壊をさらに加速する。
【0035】
鋳造鋳型中に計画的に導入されたチャネルはまた、鋳造部品の上若しくはその中の特定の区域の冷却を加速するため、又は、そのような加速冷却を防いで問題の区域内に鋳造部品の特定の性質を実現するために用いることができる。
【0036】
本発明による充填材料内で、圧縮後に、互いに接触する充填材料の粒子を通してプレテンションが伝えられる。それにより、充填材料の粒子が制御不能な方法で移動するのを防ぐために、本発明による必要な充填材料のガス浸透性にかかわらず、鋳造鋳型と向き合うエンクロージャの内側表面に構造化表面を備え、その上で、この表面に衝突する粒子が、少なくとも所定の位置に形状固定様式で支持されるようにすることができる。
【0037】
同時に、充填材料は、充填材料が迅速に熱くなり、可能な限り長く境界温度を超える温度に保持され得るように、蓄熱に対する低い適合性を有することが必要である。
【0038】
従って、本発明の目的に最適な充填材料は、充填材料を形成する個々の粒子で作製される材料の低い嵩密度と低い比熱容量とを組合せたものである。ここで実際的実験は、充填材料が作製される材料の嵩密度Sdと比熱容量cpの積Pが最大で1kJ/dm
3Kとなり(P=Sd×cp≦1kJ/dm
3K)、ここで、積P=Sd×cpが最大で0.5kJ/dm
3Kとなる充填材料が特に適していることを示した。
【0039】
圧縮するかどうかにかかわらず、粒状物又は他の粒状バルク材料が充填材料として有効であることが分かった。最大で4kg/dm
3、具体的には1kg/dm
3未満又はさらに0.5kg/dm
3未満の嵩密度の上記バルク材料が、本発明の目的には特に適していることが分かった。
【0040】
粒状で流し込み可能且つ自由流動性の充填材料を使用する場合、実際的試験において、粒子の平均直径が1.5〜100mmである場合が有利であることが分かり、その中で1.5〜40mmの範囲の粒径を有する最適の充填材料が用いられる。
【0041】
最大で1kJ/kgK、理想的には0.5kJ/kgK未満の比熱容量を有する材料から成る充填材料が、本発明のための最適な加熱及び蓄熱挙動を示す。
【0042】
基本的に、熱負荷に耐えることができ、前述の条件を満たし、十分に耐熱性である全てのバルク材料が充填材料として適する。この目的に特に適するのは、セラミック材料製の粒状物などの非金属バルク材料である。これらは、不規則形状、球形、又は充填スペース内に充填された充填材料を通る良好なガス流を達成すると同時に低保温性を達成するための空洞を含むように形成することができる。充填材料はまた、特定の点においてのみ互いに接触し、その結果それらの間に良好な貫通流を保証する十分なスペースが残る、環状又は多角形要素で構成することができる。
【0043】
エンクロージャ内に、ガス注入口を経由してオプションとして導入される酸素含有ガス流が充填材料を冷却するのを防ぐために、充填スペースに入る前にガス流を、室温を超える温度に加熱することができる。ガス流の温度は、従って、少なくとも充填材料の最低温度のレベルであることが好ましい。例えば、エンクロージャから放出される高温排ガスを用いてガス流を加熱することができる。この目的のために、基本的に既知の熱交換器を使用することができる。鋳造鋳型の破片が、場合により充填材料と共に、エンクロージャからそれを経由して脱出することができる篩基盤が備えられている限り、酸素含有ガス流もまたこの篩基盤を通して送り込むことができる。これは、前記ガス流を広範囲にわたって導入することの利点を有するばかりでなく、エンクロージャから流出した高温鋳型材料破片及び同じく高温の充填材料との接触により送り込まれたガス流が加熱されるという効果を有する。
【0044】
代替的に又は付加的に、排ガス流の部分流を酸素含有ガス流と混合し、このようにして得られた高温ガス混合物を充填スペース内に送り戻すことも考えられる。このために、充填スペース内に送り込まれる酸素含有ガス流が10〜90体積%の排ガスから成ることが実際的であり得る。
【0045】
充填スペース内に送り込まれる酸素含有ガス流は、例えば、周囲空気で構成することができる。
【0046】
充填スペース内に送り込まれる酸素含有ガス流は、適切に設計された注入口を経由して、熱対流により充填スペース内に誘起される流れの結果として、充填スペース内に引き込まれることが可能である。代替的に、勿論同様に、送風機などにより特定の圧力で充填スペース内にガス流を導入することも考えられる。
【0047】
充填スペース内に広がる雰囲気内での過圧力の生成を防ぐために、エンクロージャから流出する排ガスの体積流に応じて、充填スペース内に導入するガス流の随意的調節を行うことができる。このために、問題のガス注入口に、流速に応じて空気取入れ量を制御する機構を取付けることができる。この目的に適するのは、例えば、基本的に既知の振り子フラップであり、これは、通過するガス流の流れ圧力が、釣り合い重りに応じて自動的に燃焼用空気の流速、ひいては供給を調整するように、吊り下げられて取付けられるものである。
【0048】
鋳造鋳型から充填スペース内に放出される可能性のある結合剤及び他のガスの完全な燃焼を保証するために、排ガス排出口において排ガス計測を行い、この計測の結果に応じて酸素含有ガス流を調節することも考えられる。
【0049】
有毒物質の放出の最小化もまた、本発明による方法により、エンクロージャに、結合剤の燃焼生成物中に含まれる有毒物質の分解のための触媒コンバータを取付けることによって、達成することができる。
【0050】
本発明による、離型後に露出される鋳造部品は、鋳造鋳型の崩壊後に鋳造部品の特定の状態を達成するために、基本的に既知の制御された方法で特定の冷却曲線に従って冷却される熱処理を施される。
【0051】
勿論、本発明による工程において、幾つかの鋳造鋳型を1つのエンクロージャ内に収容することができ、これらの鋳造鋳型を、並列に又は密な間隔で連続的に、溶融金属で充填することができる。
【0052】
基本的に、本発明による方法は、その加工処理中に十分に高いプロセス熱が生成される、任意の種類の金属鋳造材料に適する。本発明による方法は、特に鋳鉄製の鋳造部品の製造に適するが、その理由は、溶融鋳鉄の高温のために、本発明による結合剤の燃焼に必要な温度が特に確実に達成されるからである。特に、GJL、GJS及びGJV鋳鉄材料並びに鋳鉄鋼を、本発明によって加工することができる。
【0053】
ここで、本発明によって使用される、鋳型材料から形成される鋳型部品又はコアから構成される鋳造鋳型について言及するとき、これは勿論、そのような鋳造鋳型内で、他の材料のチル、支持具及び類似物などの個々の部品を製造することの可能性を含む。唯一の決定的な要件は、鋳造鋳型が、問題の溶融金属を鋳込む工程の間に、結合剤が気化して充填スペース内で燃焼し、鋳型材料の結合剤の実質的に完全な分解を保証するのに十分に長い間、境界温度を超える温度を維持する程度まで充填材料を加熱するための一定量の鋳型材料を含むことである。
【0054】
本発明により準備されたエンクロージャから流出する排ガス流の浄化は、排ガス内に依然として存在する可燃物質を続いて排空気燃焼プロセスにおいて燃焼させることで達成することができる。その際に放出される熱は、次に、エンクロージャに送り込まれる酸素含有ガス流を予熱するために使用することができる。
【0055】
本発明による説明された方法で、並列に配置された本発明による幾つかの鋳造鋳型を用いて鋳造部品が作製される場合、鋳造鋳型が付随するエンクロージャとともにトンネルなどの中に一緒に配置され、形成される排ガスが共通の排ガス管内に排出されることが実際的であり得る。
【0056】
本発明による方法は、内燃エンジン用のエンジンブロック及びシリンダヘッドの鋳造による製造に特に適する。特に、問題の構成要素が商用車のものである場合、それら、及びそれらの製造のために必要な鋳造鋳型は、比較的大きい体積を有し、その場合に、本発明による工程の利点が特に明白になる。
【0057】
一般に、エンクロージャから出るとき、本発明により得られる中子砂破片は、依然として非常に高温であるので、それらは、追加熱の供給なしに従来の粉砕ミル内で粉砕することができる。中子砂破片が充填材料との混合物の形で存在する場合、それらは粉砕後に分離される。これは、粉砕後に得られる中子砂の粒径が充填材料の粒径より遥かに小さいために、非常に簡単である。従って、粉砕ミルは、中子砂の機械的前処理をもたらすように設計することができる。そのような前処理は、例えば、中子砂と充填材料粒状物との接触により砂粒の表面粗度が増し、それゆえに、鋳型部品又はコアを形成するための次の加工の間、結合剤の中子砂への粘着が改善されることに存在し得る。
【0058】
処理後に得られる再生砂は、基本的に既知の方法で新しい砂と混合することができる。
【0059】
本発明は、以下で、例示的な実施形態を図式的に表す図面を参照しながらより詳しく説明される。