特許第6275385号(P6275385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275385
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】害虫駆除用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20180129BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20180129BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20180129BHJP
   A01N 43/30 20060101ALI20180129BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20180129BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180129BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A01N25/06
   A01M7/00 S
   A01N35/02
   A01N43/30
   A01N53/10 210
   A01P7/04
   A01P17/00
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-4837(P2013-4837)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-136682(P2014-136682A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年10月20日
【審判番号】不服2016-17455(P2016-17455/J1)
【審判請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 奈未
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163399(JP,A)
【文献】 特開平8−225417(JP,A)
【文献】 特開平8−208413(JP,A)
【文献】 特開2008−110958(JP,A)
【文献】 特開2010−158801(JP,A)
【文献】 特開2012−219329(JP,A)
【文献】 特開2012−136461(JP,A)
【文献】 特開平4−185766(JP,A)
【文献】 特開平4−185767(JP,A)
【文献】 特開平7−118112(JP,A)
【文献】 特開平7−112902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N1/00-65/48
A01P1/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ピレトリンを含む原液と、
上記原液を噴射させる噴射剤とを有し、エアゾール容器に収容される害虫駆除用エアゾール組成物において、
上記原液は、上記天然ピレトリンによる駆除効果を高めるピペロニルブトキサイドと、ファルネシルアセトンとを含み、
上記ピペロニルブトキサイドの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.3g以上0.9g以下とされ、
上記天然ピレトリンの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.003g以上30.0g以下とされ、
上記ファルネシルアセトンの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.1g以上2.0g以下とされていることを特徴とする害虫駆除用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫駆除薬剤とその共力剤とを含む害虫駆除用エアゾール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、アリ等の害虫を駆除する場合にエアゾールが用いられることがある。エアゾール容器に収容されているエアゾール組成物としては、例えば、特許文献1に開示されているように、害虫駆除薬剤と液化石油ガスとを含むものが知られている。特許文献1のエアゾール組成物には、更にピペロニルブトキサイドやシダーウッドオイル等が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエアゾール組成物中、ピペロニルブトキサイドは害虫駆除薬剤の共力剤であり、また、シダーウッドオイルは害虫の忌避効果を高める忌避剤である。共力剤は、害虫駆除薬剤の効力をより一層高めるための薬剤である。
【0005】
ところで、害虫駆除用エアゾールの使用者は、害虫への噴射直後における害虫の殺虫効果を期待するのはもちろんであるが、使用後、長期間に亘って害虫を寄せ付けない効果、いわゆる忌避効果についても期待する。
【0006】
特許文献1では、忌避剤としてシダーウッドを用いているが、より一層高い忌避効果を長期間に亘って得たいという要求があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一般の忌避剤を用いた場合よりも高い忌避効果を長期間に亘って得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、害虫駆除薬剤の効力を高めるための共力剤を所定添加量添加するようにした。
【0009】
第1の発明は、天然ピレトリンを含む原液と、
上記原液を噴射させる噴射剤とを有し、エアゾール容器に収容される害虫駆除用エアゾール組成物において、
上記原液は、上記天然ピレトリンによる駆除効果を高めるピペロニルブトキサイドと、ファルネシルアセトンとを含み、
上記ピペロニルブトキサイドの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.3g以上0.9g以下とされ、
上記天然ピレトリンの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.003g以上30.0g以下とされ、
上記ファルネシルアセトンの添加量は、上記エアゾール組成物300ml中に0.1g以上2.0g以下とされていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、原液にピペロニルブトキサイドを添加することで天然ピレトリンによる害虫駆除効果が十分に高まる。また、ピペロニルブトキサイドの添加量をエアゾール組成物300ml中に0.3g以上0.9g以下としたことで、害虫の忌避効果が高くなるとともに、その忌避効果が長期間に亘って持続する
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、ピペロニルブトキサイドの添加量をエアゾール組成物300ml中に0.3g以上0.9g以下としたので、ファルネシルアセトン単独による忌避効果よりも高い忌避効果を長期間に亘って得ることができる。
【0012】
また、天然ピレトリンによる害虫駆除効果を低下させることなく、高い忌避効果を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】害虫駆除用エアゾール組成物の効力試験の方法を説明する概略図である。
図2】液ガス比を変更した場合の効力の変化を示すグラフである。
図3】共力剤の含有量を変更した場合の効力の変化を示すグラフである。
図4】共力剤の含有量を変更した場合の忌避率の変化を示すグラフである。
図5】忌避効果の試験に用いる装置の斜視図である。
図6】忌避剤がシダーウッドオイルである場合の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
本発明の実施形態に係るエアゾール組成物は、エアゾール缶(エアゾール容器)1(図1に示す)に収容されて使用される。エアゾール缶1は、従来周知の金属製の缶を用いることができ、上部にはエアゾール組成物を霧状に噴射するためのノズル2が設けられている。また、使用者が操作する押しボタン3も設けられており、押しボタン3を押している間、エアゾール組成物が噴射口2から噴射される。本エアゾール組成物の対象害虫は、例えばアリ等である。
【0016】
エアゾール組成物は、害虫駆除薬剤を含む原液と、原液を噴射させる噴射剤とを有している。噴射剤は、例えば液化石油ガス(LPG)を用いることができる。その他、噴射剤としては、ジメチルエーテル等を用いることもできる。
【0017】
害虫駆除薬剤の体積と噴射剤の体積との比(害虫駆除薬剤の体積/噴射剤の体積)は、50/250〜10/290の範囲が好ましく、より好ましくは45/255〜15/285である。本明細書において、害虫駆除薬剤の体積と噴射剤の体積との比を液ガス比というものとする。
【0018】
本実施形態においては、LPGを噴射剤として作用するだけではない。LPGの比率を高めること(例えば、害虫駆除薬剤等の量を変更せずに固定し、溶剤の量を低減し、LPGの量を増加させること)により、噴射後のエアゾール組成物が害虫に付着した際に、その気化熱により付着面を瞬時に冷却(−30〜−20℃程度)する冷却剤としても作用する。これにより、害虫の行動を停止させることが可能になる。つまり、使用状況や対象害虫によっては、害虫を凍結させて駆除する効果(凍殺効果)及び害虫駆除薬剤により害虫を駆除する効果(薬剤による駆除効果)の両者を効果的に両立させることができる。
【0019】
また、LPGの量を増加させて溶剤の量を低減することで、噴射後の溶剤による床面、壁面等の汚れの発生も軽減でき、クリーン性の高いエアゾール組成物とすることができる。
【0020】
原液中の害虫駆除薬剤は、例えば、ジョチュウギクの抽出成分である天然ピレトリンが好ましい。天然ピレトリンは各種のアリに対する駆除効果及び忌避効果を有すると共に、人畜に対する安全性が高く、しかもマイルドな芳香を示すため、好ましい。さらにはネオピナミン、ピナミンフォルテ等のピレスロイド系の薬剤、プロポクサー、カルバリル等のカーバメイト系の薬剤、及びフェニトロチン、DDVP等の有機リン系の薬剤等も本発明における害虫駆除薬剤に包含される。これらの成分を単独で又は2種以上を混合して害虫駆除薬剤として用いることができる。
【0021】
害虫駆除用エアゾール組成物における害虫駆除薬剤の含有量としては、エアゾール組成物300mL中0.003〜30.0gが好ましく、0.03〜3.0gがより好ましく、0.3gがさらに好ましい。
【0022】
害虫駆除薬剤をより均一に噴射する観点から、原液に溶剤を含有させてもよい。溶剤としては、例えばイソパラフィン等が挙げられるが、これ以外にも、例えば、ノルマルパラフィン等を用いることもできる。
【0023】
原液には、害虫を寄せ付けない効果を発揮する害虫忌避剤が含まれている。害虫忌避剤は、例えば、ファルネシルアセトンが好ましいが、これ以外にも、例えば、シダーウッドオイル、パッチュリオイル、タイムホワイトオイル、タイムレッドオイル、シトロネラオイル、レモングラスオイル、クローブオイル、ピメンタオイル、ベイオイル、カシアオイル、シナモンリーフオイル、シナモンオイル、ヒノキオイル、ヒバオイル、ペルーバルサムオイル、オレンジフラワーオイル、オークモス、バイオレットオイル、バーチオイル等の精油を用いることもできる。
【0024】
害虫忌避剤の添加量の下限は、エアゾール組成物300ml(総重量155g)としたときに、0.1g以上が好ましく、より好ましくは0.3g以上である。害虫忌避剤の添加量の上限は、エアゾール組成物300ml(総重量155g)としたときに、上限は、エアゾール組成物300mlとしたときに、2.0g以下が好ましく、より好ましくは、0.5g以下である。
【0025】
また、原液には、虫駆除薬剤による駆除効果を高める共力剤が含まれている。よって、原液は、害虫駆除剤、共力剤、害虫忌避剤からなり、総重量が15.45gとなっている。共力剤は、例えは、3,4−メチレンジオキシ−6−プロピルベンジルブチルジエチレングリコールエーテル(ピペロニルブトキサイド:PBO)が好ましい。
【0026】
共力剤の添加量の下限は、エアゾール組成物300ml(総重量155g)としたときに、0.3g(エアゾール組成物総重量155gに対して0.19重量部に相当)以上が好ましく、より好ましくは、0.45g(エアゾール組成物総重量155gに対して0.29重量部に相当)以上が好ましい。また、共力剤の添加量の上限は、エアゾール組成物300ml(総重量155g)としたときに、0.9g(エアゾール組成物総重量155gに対して0.58重量部に相当)以下が好ましく、より好ましく、0.7g(エアゾール組成物総重量155gに対して0.45重量部に相当)が好ましい。共力剤の添加量は、害虫忌避剤の添加量以上が好ましい。
【0027】
本実施形態では、害虫忌避剤による害虫忌避効果の他に、共力剤による害虫忌避効果が得られる。共力剤の添加量を0.3g以上に設定したことで、0.3g未満の場合に比べて、害虫の忌避効果が高くなるとともに、その忌避効果が長期間に亘って持続する。共力剤の添加量を0.9g以下に設定したことで、共力剤を多く添加することによる弊害(例えば殺虫効力の低下)を問題とならないレベルとすることができる。
【0028】
エアゾール組成物は、例えば次のような方法で製造することができる。すなわち、害虫駆除薬剤、共力剤及び害虫忌避剤を溶剤で溶解させて原液を調製し、その原液をエアゾール缶1内に充填する。次いでLPGを充填することによって、本発明のエアゾール組成物を収容した害虫駆除用エアゾールが製造される。
【0029】
エアゾール組成物を使用した害虫駆除方法としては、害虫駆除用エアゾール組成物を噴射して対象害虫に付着させる方法である。噴射時間としては特に限定されないが、例えば0.1〜5.0秒間が好ましい。害虫とエアゾール缶1の噴射ノズル2との間隔としては特に限定されないが、例えば1〜80cmが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】
表1は、本発明の実施例1〜6の処方を示している。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1〜6は、害虫駆除薬剤(ピレトリン)の量、その他成分として害虫忌避剤(ファルネシルアセトン)の量及び共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量は同じにし、溶剤(イソパラフィン)の添加量を変化させて原液の量を変えている。実施例1〜6は、原液と噴射剤(LPG)とを合わせた量が300mlとなるように噴射剤の量が設定されている。実施例1の液ガス比は10/290であり、実施例2の液ガス比は15/285であり、実施例3の液ガス比は20/280であり、実施例4の液ガス比は30/270であり、実施例5の液ガス比は45/255であり、実施例6の液ガス比は50/250である。試験方法は次のとおりである。
【0034】
実施例1〜6の効力試験の結果を図2に示す。図2は液ガス比と効力との関係を示している。
【0035】
まず、試験用エアゾール缶1に、表1に記載の処方の原液を入れ、バルブ(ステム孔径φ0.4mm−アンダータップ径0.8mm−ベーパータップ径0.35mm)をこのエアゾール缶1に取り付けた。
【0036】
次いで、このエアゾール缶1にバルブを通してLPGを充填し、全量を300mLとした。さらに、ノズル径0.9mmのキャップをこの容器に取り付け、表1に示す6種類の処方の害虫防除用エアゾール組成物を収容した害虫駆除用エアゾールを得た。
【0037】
それぞれのエアゾール組成物におけるエアゾール容器内の圧力を25℃にて測定したところ、いずれもほぼ0.32MPaであった。
【0038】
試験方法としては、図1に示すような装置を用い、直接噴霧法により評価した。試験装置は、ガラスシャーレ10(直径9.5cm、高さ2cm)にろ紙11(直径9cm)を3枚入れ、ろ紙11の中央部に上方が開放するようにガラスリング12(直径6cm、高さ6cm)を置いた。
【0039】
ガラスシャーレ10及びガラスリング12は、ガラスシリンダー15(直径20cm、高さ20cm)の内部に入れ、このガラスシリンダー15の下端開口を覆うように配置される金網16上に載置した。ガラスシリンダー15の下方には、支持台17を配置している。支持台17の側方には排出孔17aが設けられており、金網16を上から下に通過したエアゾール組成物が排気孔17aから排出されるようになっている。
【0040】
ガラスリング12の内部に供試虫としてアミメアリ5匹を入れた。エアゾールを噴射する直前にガラスリング12をシャーレ10から取り出した。エアゾール缶1は、ろ紙11とノズル2先端との距離Hが30cmとなるようにろ紙11の直上方に配置した。そして、エアゾール組成物を1秒間噴射した。その後、経時的にノックダウン虫数をカウントし、BlissのProbit法により、KT50(秒)を求めた。KT50の値が小さいほど、エアゾール組成物による害虫駆除力(効力)が優れていることを示す。試験結果は各実施例で3回繰り返して得た結果の平均値である。
【0041】
KT50値とは、噴射後の時間経過に伴うアリのノックダウン数に基づく値であり、半数のアリがノックダウンするまでの時間(秒)とした。アリのノックダウン状態とは、基本的にアリがひっくり返った状態又は痙攣静止となった状態とした。
【0042】
表1に示すように、実施例1〜6の広い範囲の液ガス比でKT50が74秒以下という高い効力が得られることが分かる。
【0043】
次に、図3に示すグラフを参照しながら、エアゾール組成物中の共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量と効力との関係について説明する。表2は、上記実施例3と、実施例7、8、参考例1〜3及び比較例の処方を示している。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例は共力剤を添加しないものである。実施例8、7の順に共力剤の添加量を増やしている。実施例3と、実施例7、8及び比較例1では、共力剤とその他成分(ファルネシルアセトン及びイソパラフィン)との合計量は20mlとなるようにしている。
【0046】
次に、図4に基づいてエアゾール組成物中の共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量と忌避効果との関係について説明する。表3は、上記実施例3と、上記実施例7、8、参考例2、3及び上記比較例1の処方を示している。上記実施例3と、上記実施例7、8、参考例2、3及び上記比較例1のエアゾール組成物中の共力剤の量はそれぞれ表3に記載の通りである。
【0047】
【表3】
【0048】
忌避効果の試験は図5に示すような装置を用いた。符号21は、直径11cmの円形ろ紙に20cm上方からエアゾール組成物を3秒間噴射して3時間乾燥した後に半分に切断した処理済みろ紙である。一方、符号22は、何も処理していない直径11cmの円形ろ紙を半分に切断した無処理ろ紙である。処理済みろ紙21と無処理ろ紙22とが円になるように両ろ紙21,22を合わせ、その上にガラスリング23(直径9cm、高さ6cm)を上方が開放するように載置した。供試虫としてアミメアリ1匹をガラスリング23内に入れ、30分、40分、50分、60分後に無処理ろ紙22上にいる供試虫の数を確認し、下記式を用いて忌避率を求めた
忌避率={(無処理ろ紙22上にいた累計供試虫数)−(累計供試虫/2)}/(累計 供試虫数/2)
忌避試験は15回繰り返した。図4における横軸の「1週間」、「2週間」、「3週間」とは、処理済みろ紙を作製してから、それぞれ1週間、2週間、3週間経過したときの忌避率である。
【0049】
図4に示すように、共力剤を含有していない比較例1では、時間の経過に従って忌避率が大きく低下していき、2週間後には25%にまで低下している。つまり、一般的な害虫忌避剤(ファルネシルアセトン)では、高い忌避効果を長期間に亘って得ることは困難であることが分かる。
【0050】
一方、共力剤を含有している実施例3、7、8は長期間に亘って高い忌避率を維持している。これは、共力剤が害虫忌避剤と共に忌避効果を高い発揮していることによる。特に、共力剤の含有量が0.3g以上では3週間経過しても、35%の高い忌避率を維持している。また、実施例3と参考例2では、共力剤の量が大きく異なっているが、忌避率の差は極めて小さな値となっている。従って、忌避効果を考慮した場合には、共力剤は0.9gを上限とするのが好ましいことが分かる。
【0051】
図6は、害虫忌避剤をシダーウッドオイルにした場合の忌避率を示している。比較例2は、比較例1の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例4は、参考例2の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例5は、実施例3の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例6は、実施例7の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例7は、実施例8の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例8は、参考例3の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものである。
【0052】
以上説明したように、この実施形態に係るエアゾール組成物によれば、害虫駆除薬剤の共力剤の添加量をエアゾール組成物総重量に対して0.19重量部以上としたので、害虫忌避剤単独による忌避効果よりも高い忌避効果を長期間に亘って得ることができる。
【0053】
また、共力剤の添加量をエアゾール組成物総重量に対して0.58重量部以下としたので、害虫駆除薬剤による害虫駆除効果を低下させることなく、高い忌避効果を得ることができる。
【0054】
また、共力剤の添加量を害虫忌避剤の添加量以上にしたので、共力剤による高い忌避効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態に係るエアゾール組成物が駆除対象とする害虫としては、アリに限定されるものではないが、ムカデ、カメムシ等の不快害虫も含まれる。また、アリの種類としては特に限定されないが、例えばアミメアリ、クロアリ、アルゼンチンアリが挙げられる。
【0056】
また、本実施形態に係るエアゾール組成物の噴射の際の吐出形態として、霧状、泡状、液滴状等であってもよく、特に限定されないが、これらのなかでも、駆除対象の害虫への付着量の観点から、霧状又は液滴状が好ましい。
【0057】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係るエアゾール組成物は、例えば、アリ等の害虫を駆除するのに使用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 エアゾール缶(エアゾール容器)
2 ノズル
3 押しボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6