【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】
表1は、本発明の実施例1〜6の処方を示している。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1〜6は、害虫駆除薬剤(ピレトリン)の量、その他成分として害虫忌避剤(ファルネシルアセトン)の量及び共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量は同じにし、溶剤(イソパラフィン)の添加量を変化させて原液の量を変えている。実施例1〜6は、原液と噴射剤(LPG)とを合わせた量が300mlとなるように噴射剤の量が設定されている。実施例1の液ガス比は10/290であり、実施例2の液ガス比は15/285であり、実施例3の液ガス比は20/280であり、実施例4の液ガス比は30/270であり、実施例5の液ガス比は45/255であり、実施例6の液ガス比は50/250である。試験方法は次のとおりである。
【0034】
実施例1〜6の効力試験の結果を
図2に示す。
図2は液ガス比と効力との関係を示している。
【0035】
まず、試験用エアゾール缶1に、表1に記載の処方の原液を入れ、バルブ(ステム孔径φ0.4mm−アンダータップ径0.8mm−ベーパータップ径0.35mm)をこのエアゾール缶1に取り付けた。
【0036】
次いで、このエアゾール缶1にバルブを通してLPGを充填し、全量を300mLとした。さらに、ノズル径0.9mmのキャップをこの容器に取り付け、表1に示す6種類の処方の害虫防除用エアゾール組成物を収容した害虫駆除用エアゾールを得た。
【0037】
それぞれのエアゾール組成物におけるエアゾール容器内の圧力を25℃にて測定したところ、いずれもほぼ0.32MPaであった。
【0038】
試験方法としては、
図1に示すような装置を用い、直接噴霧法により評価した。試験装置は、ガラスシャーレ10(直径9.5cm、高さ2cm)にろ紙11(直径9cm)を3枚入れ、ろ紙11の中央部に上方が開放するようにガラスリング12(直径6cm、高さ6cm)を置いた。
【0039】
ガラスシャーレ10及びガラスリング12は、ガラスシリンダー15(直径20cm、高さ20cm)の内部に入れ、このガラスシリンダー15の下端開口を覆うように配置される金網16上に載置した。ガラスシリンダー15の下方には、支持台17を配置している。支持台17の側方には排出孔17aが設けられており、金網16を上から下に通過したエアゾール組成物が排気孔17aから排出されるようになっている。
【0040】
ガラスリング12の内部に供試虫としてアミメアリ5匹を入れた。エアゾールを噴射する直前にガラスリング12をシャーレ10から取り出した。エアゾール缶1は、ろ紙11とノズル2先端との距離Hが30cmとなるようにろ紙11の直上方に配置した。そして、エアゾール組成物を1秒間噴射した。その後、経時的にノックダウン虫数をカウントし、BlissのProbit法により、KT50(秒)を求めた。KT50の値が小さいほど、エアゾール組成物による害虫駆除力(効力)が優れていることを示す。試験結果は各実施例で3回繰り返して得た結果の平均値である。
【0041】
KT50値とは、噴射後の時間経過に伴うアリのノックダウン数に基づく値であり、半数のアリがノックダウンするまでの時間(秒)とした。アリのノックダウン状態とは、基本的にアリがひっくり返った状態又は痙攣静止となった状態とした。
【0042】
表1に示すように、実施例1〜6の広い範囲の液ガス比でKT50が74秒以下という高い効力が得られることが分かる。
【0043】
次に、
図3に示すグラフを参照しながら、エアゾール組成物中の共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量と効力との関係について説明する。表2は、上記実施例3と、実施例7、8、参考例1〜3及び比較例の処方を示している。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例は共力剤を添加しないものである。実施例8、7の順に共力剤の添加量を増やしている。実施例3と、実施例7、8及び比較例1では、共力剤とその他成分(ファルネシルアセトン及びイソパラフィン)との合計量は20mlとなるようにしている。
【0046】
次に、
図4に基づいてエアゾール組成物中の共力剤(ピペロニルブトキサイド)の量と忌避効果との関係について説明する。表3は、上記実施例3と、上記実施例7、8、参考例2、3及び上記比較例1の処方を示している。上記実施例3と、上記実施例7、8、参考例2、3及び上記比較例1のエアゾール組成物中の共力剤の量はそれぞれ表3に記載の通りである。
【0047】
【表3】
【0048】
忌避効果の試験は
図5に示すような装置を用いた。符号21は、直径11cmの円形ろ紙に20cm上方からエアゾール組成物を3秒間噴射して3時間乾燥した後に半分に切断した処理済みろ紙である。一方、符号22は、何も処理していない直径11cmの円形ろ紙を半分に切断した無処理ろ紙である。処理済みろ紙21と無処理ろ紙22とが円になるように両ろ紙21,22を合わせ、その上にガラスリング23(直径9cm、高さ6cm)を上方が開放するように載置した。供試虫としてアミメアリ1匹をガラスリング23内に入れ、30分、40分、50分、60分後に無処理ろ紙22上にいる供試虫の数を確認し、下記式を用いて忌避率を求めた
忌避率={(無処理ろ紙22上にいた累計供試虫数)−(累計供試虫/2)}/(累計 供試虫数/2)
忌避試験は15回繰り返した。
図4における横軸の「1週間」、「2週間」、「3週間」とは、処理済みろ紙を作製してから、それぞれ1週間、2週間、3週間経過したときの忌避率である。
【0049】
図4に示すように、共力剤を含有していない比較例1では、時間の経過に従って忌避率が大きく低下していき、2週間後には25%にまで低下している。つまり、一般的な害虫忌避剤(ファルネシルアセトン)では、高い忌避効果を長期間に亘って得ることは困難であることが分かる。
【0050】
一方、共力剤を含有している実施例3、7、8は長期間に亘って高い忌避率を維持している。これは、共力剤が害虫忌避剤と共に忌避効果を高い発揮していることによる。特に、共力剤の含有量が0.3g以上では3週間経過しても、35%の高い忌避率を維持している。また、実施例3と参考例2では、共力剤の量が大きく異なっているが、忌避率の差は極めて小さな値となっている。従って、忌避効果を考慮した場合には、共力剤は0.9gを上限とするのが好ましいことが分かる。
【0051】
図6は、害虫忌避剤をシダーウッドオイルにした場合の忌避率を示している。比較例2は、比較例1の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例4は、参考例2の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例5は、実施例3の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例6は、実施例7の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例7は、実施例8の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものであり、参考例8は、参考例3の害虫忌避剤をシダーウッドオイルにしたものである。
【0052】
以上説明したように、この実施形態に係るエアゾール組成物によれば、害虫駆除薬剤の共力剤の添加量をエアゾール組成物総重量に対して0.19重量部以上としたので、害虫忌避剤単独による忌避効果よりも高い忌避効果を長期間に亘って得ることができる。
【0053】
また、共力剤の添加量をエアゾール組成物総重量に対して0.58重量部以下としたので、害虫駆除薬剤による害虫駆除効果を低下させることなく、高い忌避効果を得ることができる。
【0054】
また、共力剤の添加量を害虫忌避剤の添加量以上にしたので、共力剤による高い忌避効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態に係るエアゾール組成物が駆除対象とする害虫としては、アリに限定されるものではないが、ムカデ、カメムシ等の不快害虫も含まれる。また、アリの種類としては特に限定されないが、例えばアミメアリ、クロアリ、アルゼンチンアリが挙げられる。
【0056】
また、本実施形態に係るエアゾール組成物の噴射の際の吐出形態として、霧状、泡状、液滴状等であってもよく、特に限定されないが、これらのなかでも、駆除対象の害虫への付着量の観点から、霧状又は液滴状が好ましい。
【0057】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。