(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、ロッカー又は金庫等の収納装置や、その他自動販売機や配電盤等の開閉扉を有するものには、防犯のため施解錠装置が取り付けられるのが一般的である。
この施解錠装置は、例えば、複雑な形状の鍵でなければ解錠できないような特別の錠前を用いたり、パスワードや生体情報を入力しなければ解錠できないようにしたりすることによって、その防犯性を高めている。
【0003】
しかしながら、上記のように錠前に工夫を凝らしたとしても、鍵穴やパスワードの入力装置が露出しているため、悪意のある者によってピッキングされたり、錠前自体が破壊されたりして強制的に解錠される場合があった。
【0004】
上記のような問題を解決するものの1つとして、特許文献1に開示される開閉扉の施解錠装置が提案されている。
この施解錠装置には、鍵部材の柄部が挿入可能な迷路状の溝部が設けられており、鍵部材の柄部がその溝部を移動して、かつ、鍵部がその溝部の経路上の所定の位置を通過しなければ、鍵穴に相当する施解錠部材に到達することができないように構成されている。
このように、特許文献1が開示するところの施解錠装置は、鍵部が施解錠部材へ到達するために、一定の径路を通過しなければならない構成を採用したことによって、ピッキング等の悪意のある手段で施解錠されることを困難にすることを可能にしている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<構成>
図1は、本発明の実施の形態におけるロッカー装置1を示す斜視図である。
このロッカー装置1は、例えば、マンションや駅等の公共施設、コンビニエンスストア、その他商業施設等に設置され、配送業者により配送された配送物を一時預かる宅配ロッカー装置、又は郵便物や配送物が投函されるメールボックス装置であってもよい。
また、ロッカー装置1は、上記宅配ロッカー装置に、上記メールボックス装置の機能を加えたメールボックス一体型の宅配ロッカー装置であってもよい。
【0021】
図に示すように、ロッカー装置1は、複数の収納ボックス2を有して構成されている。
そして、各収納ボックス2は、開口面を有して箱状に形成されその内部に物品が収納される収納室3と、その収納室2とヒンジ等で結合されその収納室2の開口面を閉止可能に構成される扉4と、その扉4の背面側に設けられている施錠用のフック5と、施錠時にはそのフック5と係合して収納ボックス2の施錠を行う施解錠装置10とを有して構成される。
【0022】
図に示すように、施解錠装置10は収納室3の内部に設置されており、扉4の閉扉時には隠蔽されて外部からは確認することができないよう構成されている。
また、この施解錠装置10の鍵穴に相当する部分は、扉4の閉扉時において複数の扉4間の間隙と重なる位置に設けられる。
解錠するときには、上記施解錠装置10の鍵穴に相当する部分及びこれに重なる位置の扉4間の間隙に、後述する鍵部材を挿入する。
【0023】
図2は、その施解錠装置10を解錠する鍵部材20の外観を示す斜視図である。
図に示すように、鍵部材20は、指で掴んで持つための把持部21と、棒状に形成されその一端が把持部21と接合される柄部22と、その棒状の柄部22の他端が接合される先端部23とを有して構成される。
また、図に示すように、先端部23は、柄部22に対して所定の角度(例えば略直角)で接合される。
【0024】
この鍵部材20を後述するように、施解錠装置10の鍵穴に相当する箇所(後述の挿入間隙部11)に挿入し、その鍵穴内において所定方向に移動させると、収納ボックス2を解錠し、扉4を開扉させることができる。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態における施解錠装置10の正面図である。また、
図4は、その施解錠装置10の向かって右側面から見た側面図である。
図に示すように、施解錠装置10は、鍵部材20を挿入する鍵穴を構成する鍵穴部11と、鍵穴部11に挿入された鍵部材20を所定の方向へ誘導するための鍵誘導部12と、
施錠時には上記フック5と係合し、解錠時にはフック5を解放して収納ボックス2の施解錠を行う施解錠部13と、鍵誘導部12により誘導された鍵部材20により押圧されることで施解錠部13に係合されているフック5を解放させて解錠を行う解錠レバー14とを有して構成される。
【0026】
図に示すように、鍵穴部11は、箱状又は筒状であり、少なくとも正面側が開口しており、鍵穴状の間隙31が形成されている。
この鍵穴状の間隙31は閉扉時の扉4間の間隙の一部と重なる位置に設けられている。
その扉4間の間隙の幅は非常に小さく構成されることから(例えば1〜3mm程度)、閉扉時には扉4の外側からは単なる扉4間のわずかな間隙としか認識できず、鍵穴状の間隙31を確認することは困難である。
【0027】
扉4の閉扉時にその扉4間の間隙の一部に鍵部材20を挿入すると、その扉4間の間隙を介して上記鍵穴状の間隙31にも挿入され、さらに、鍵部材20を所定方向に回転及び移動させることにより施解錠装置10を解錠させることができる。
このように、鍵穴状の間隙31はロッカー装置1の扉4間の間隙の一部からのみ挿入可能であり、なおかつ閉扉時にはその位置が扉4の外側から確認することが困難であるので、その鍵穴状の間隙31の存在及び位置を知っている者のみ解錠することができることから、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0028】
また、図に示すように、鍵穴部11には、上記鍵穴状の間隙31の他に、側面等の一部(例えば側面の奥側(背面側))に鍵回転用の間隙32が形成されている。
施解錠装置10の解錠を行うときには、鍵部材20を鍵穴状の間隙31に挿入した後に、先端部23が鍵回転用の間隙32に挿入されるように、鍵部材20を柄部22を軸にして所定方向に回転させる。
このように、鍵穴部11の側面等の一部にのみ先端部23が通過可能な鍵回転用の間隙32を設けているので、その鍵回転用の間隙32の存在及び位置を知っている者のみ解錠することができることから、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0029】
鍵誘導部12は、図に示すように、鍵穴部11と解錠レバー14の間、鍵穴部11の側面側に設けられており、鍵部材20が解錠レバー14に当接する位置まで誘導する。
【0030】
この鍵誘導部12には、鍵穴部11と同様に、鍵部材20の先端部23が通過する間隙33が設けられている。
上記の通り、鍵部材20を鍵穴状の間隙31に挿入して柄部22を軸にして所定方向に回転させると、先端部23が上記鍵回転用の間隙32を通過し、さらに回転させると、先端部23が間隙33を通過する。
このように、鍵部材20の先端部23を、鍵回転用の間隙32及び間隙33の双方に通過させることにより、解錠レバー14に対する先端部23の位置が決まり、先端部23を解錠レバー14に容易に当接させることが可能となる。
【0031】
また、図に示すように、鍵穴部11及び鍵誘導部12には、側面側から見て重なる位置に、切欠き36,37がそれぞれ設けられている。
これら切欠き36,37は、それぞれ間隙32,33と連続して、解錠レバー14に接近する方向に向かって設けられている。
例えば、図の例では、解錠レバー14は、間隙32,33よりも手前、正面側に設けられているので、切欠き36,37は、正面側方向が奥側となるよう設けられている。
また、これら切欠き36,37の幅(径)は、先端部23の幅(径)と等しいか、又はわずかに大きく形成されており、この切欠き36,37の幅よりも大きな幅の物は、切欠き36,37の奥まで挿嵌できないよう構成されている。
【0032】
上述したように、鍵部材20を鍵穴部11において回転させることにより、先端部23を間隙32,33を通過させた後、先端部23を切欠き36,37に挿嵌させ、手前側(正面側)に移動させると、先端部23が解錠レバー14に当接する。
そのまま、さらに鍵部材20を手前側に引くと、先端部23が解錠レバー14を押圧し、解錠レバー14が作動し、施解錠部13は、これまで係合していたフック5を解放する。
このように、切欠き36,37は、鍵穴部11に挿入された鍵部材20の先端部23を解錠レバー14に当接しやすい位置まで的確に誘導するので、収納ボックス2を容易に解錠することが可能となる。
また、これら切欠き36,37は、閉扉時には扉4の外側からは認識することができないので、それら切欠き36,37の存在及び位置を知っている者のみ解錠することができることから、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
さらに、これら切欠き36,37の幅(径)は、先端部23の幅(径)と等しいか、又はわずかに大きく形成されていることから、鍵部材20ではない、この切欠き36,37の幅よりも大きな幅の物は、切欠き36,37の奥まで挿嵌できず、解錠することができないので、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0033】
また、施解錠部13及び解錠レバー14は、既知の錠装置と同様であるので、その詳細な構成及び作用は省略する。
【0034】
<動作>
図5は、鍵部材20を収納ボックス2の扉4間の間隙6に挿入した状態を示す図である。
また、
図6は、その扉4間の間隙6に挿入した鍵部材20をさらに回転させた状態を示す図である。
以下、
図5,6を用いて、鍵部材20を用いて、施錠及び閉扉された収納ボックス2を解錠及び開扉させるときの動作について説明する。
【0035】
上述したように、施解錠装置10の鍵穴状の間隙31は、扉4間の間隙6の一部とその位置が重なっている。閉扉時には、その鍵穴状の間隙31の位置を扉4外部から確認することは困難である。
予め鍵穴状の間隙31の存在及びその位置を確認済みのユーザは、
図5に示すように、扉4間の間隙6のうち鍵穴状の間隙31と重なっている箇所に、その間隙6の向きに合わせて鍵部材20を挿入する。
【0036】
上述のように、ユーザは、鍵部材20を間隙6及び鍵穴状の間隙31に挿入した後、
図6に示すように、その鍵部材20を所定方向に所定角度捻って回転させ、そのまま所定方向に移動させることで、施解錠装置10が解錠する。
図6に示す例では、ユーザは、鍵部材20を柄部22を軸にして90°向かって時計回りに捻って回転させ、そのまま鍵部材20を手前側に引くことで施解錠装置10が解錠される。
【0037】
図7は、鍵部材20を収納ボックス2の扉4間の間隙6に挿入した状態を示す透過図である。また、
図8は、その間隙6に挿入した鍵部材20を所定方向に回転させる途中の状態を示す透過図である。また、
図9は、その間隙6に挿入した鍵部材20を所定方向に回転させ所定方向に移動させた状態を示す透過図である。
これら
図7〜9は、施解錠装置10の解錠動作を説明するため扉4を省いた透過図である。
以下、これら
図7〜9を用いて、施解錠装置10による解錠動作についてさらに詳細に説明する。
【0038】
図7に示すように、まず、ユーザは、鍵穴状の間隙31の長手方向に先端部23の延伸方向を合わせて、鍵部材20の柄部22及び先端部23を鍵穴状の間隙31に挿入する。
【0039】
次に、ユーザは、
図8に示すように、鍵部材20を捻って回転させる。このとき、先端部23は、間隙32,33を通過する。
【0040】
そして、ユーザは、
図9に示すように、先端部23が間隙32,33を通過した状態のまま鍵部材20を下方(底面側)に移動させ、さらに鍵部材20を手前に引いて移動させる。このとき、先端部23は切欠き36,37の奥まで挿嵌される。すると、先端部23が解錠レバー14に当接し、さらに押圧する。すると、解錠レバー14が作動し、施解錠部13は、扉4の背面に設けられているフック5を解放し、その結果、収納ボックス2の解錠及び開扉が行われる。
【0041】
<実施の形態のまとめ>
以上説明したように、本実施の形態における施解錠装置10によれば、閉扉時には外部から隠蔽され、鍵穴状の間隙31が単なる扉4間の間隙にしか見えないので、その鍵穴状の間隙31について予め知っている者以外は、そのロッカー装置1に鍵穴がどこにあるのか、あるいはそもそも存在するのかさえも認識することができず、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0042】
また、本実施の形態における施解錠装置10によれば、鍵穴状の間隙31に挿入された鍵部材20を所定方向に捻って回転させたときに、その先端部23が通過可能な間隙32,33が所定の位置に外部から隠蔽されて設けられている。
従って、悪意のある第三者等は、仮に鍵穴状の間隙31に鍵部材20又はこれに代わる物等を挿入できた場合であっても、その間隙32,33の存在及び位置を知らなければ、鍵部材20をどれくらい奥まで挿入して、どの方向に回転させればよいかがわからず、施解錠装置10を解錠することができない。
このように構成されていることから、本実施の形態における施解錠装置10は、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0043】
また、本実施の形態における施解錠装置10によれば、所定幅(径)の切欠き36,37が施解錠部13を解錠する解除レバー14に接近する方向に向かって間隙32,33と連続して設けられているので、それら切欠き間隙36,37の存在及び位置を知らなければ、鍵部材20をどの位置で移動させて解錠レバー14を押圧すればよいかがわからず、施解錠装置10を解錠することができない。
このように構成されていることから、本実施の形態における施解錠装置10は、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
また、鍵部材20以外のこれら切欠き36,37の幅(径)より大きな幅(径)の部材だと、これら切欠き36,37の奥まで挿嵌できず、解除レバー14を解錠に十分な程度押圧することができない。
従って、悪意のある第三者が、たとえ鍵部材20以外の他の部材で施解錠装置10を解錠しようとしたとしても、施解錠装置10を解錠させることはできず、極めて高い防犯性を実現することが可能となっている。
【0044】
なお、上記の実施の形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明の実施の形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能となる。
例えば、本実施の形態では、鍵部材20の先端部23が通過可能な間隙32は鍵穴状の間隙31の奥(背面方向)の側面側に配置され、間隙33は鍵誘導部12において側面視、間隙32と重なる位置に配置されているが、これに限定されない。
鍵部材20の方向を変えたとき、鍵部材20の先端部23が通過可能な間隙であれば、その配置位置を本実施の形態において例示した位置以外の他の位置とすることも可能である。
つまり、間隙32,33及び切欠き36,37は、鍵穴状の間隙31の側面方向以外の、例えば、上面方向又は底面方向に設けられてもよい。また、これに応じて、解錠レバー14及び施解錠部13の配置も適宜変更されてもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、鍵穴状の間隙31は、正面側から見て、閉扉時の複数の扉4の間の間隙6と重なる位置に配置されているが、ロッカー装置1におけるその他の間隙と重なる位置に配置されるように構成されるようにしてもよい。
例えば、鍵穴状の間隙31は、閉扉時において、扉4と収納室2を構成する枠体との間の間隙とその位置が重なるように構成してもよい。
【0046】
また、本実施の形態によれば、上記間隙32,33及びこれらとそれぞれ連続して設けられる切欠き36,37は、解錠レバー14の背面側に配置されていたが、切欠き36,37が解錠レバー14の作動方向へ向かって設けられていれば、それら相対的位置はこれに限定されない。
【0047】
また、本実施の形態によれば、施解錠部13は、施錠時には扉4背面に設けられたフック5を係合し、解錠時にはそのフック5を解放するよう構成されているが、解錠レバー14等の物理的な位置変位に基づいて解錠する構成であれば、これに限定されない。
【0048】
また、本実施の形態によれば、施解錠装置10を収納装置、いわゆるロッカー装置1に設置した例について説明したが、開閉可能・施解錠可能な扉を備えた構造物(扉付き構造物)であれば、その他の物に設置することも可能である。
例えば、配電盤、金庫、遊技機、自動販売機又はレンタル用物品の収納貸出装置等、通常時には扉で封止することが必要なものにも施解錠装置10を設置することができる。
また、例えば、電動車両(EV車等)の充電装置の充電口の蓋等の蓋で封止することが必要なものにも施解錠装置10を設置することができる。