(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
大電力を出力する高周波電源は、複数の電力増幅器の出力を合成することによって所望の電力を出力する。電力を合成するのに必要なユニットが合成器である。
図4に、2つの同じ大きさの電力を合成するための合成器の等価回路を示す。
図4は、背景技術における合成器の等価回路図である。
【0003】
図4の等価回路において、合成器の入力端子131aから入力された高周波電力は、インピーダンス変換器140aを通り、合成点132に到達する。もう一つの入力端子131bから入力された高周波電力は、インピーダンス変換器140bを通り、合成点132に到達する。こうして、入力端子131a,131bから入力された高周波電力は、合成点132で合成され、出力端子133に出力される。
【0004】
入力端子131aと入力端子131bの間に接続された抵抗器150は、入力端子131aと入力端子131bの間のアイソレーションを確保するために接続されるもので、アイソレーション抵抗と呼ばれる。入力端子131a,131bと出力端子133に接続されるインピーダンスが50Ωである場合、抵抗器150は100Ωの抵抗で、インピーダンス変換器140a,140bは、70.7Ωの特性インピーダンスを持つλ/4伝送線路である。
【0005】
インピーダンス変換器140a,140bを集中定数回路で実現する場合の回路は、コンデンサとインダクタで実現できる。コンデンサ144aとコンデンサ145aは、2個のコンデンサで構成しているが、コンデンサ容量の合計が同じであれば3個以上のコンデンサに分けてもよく、1個のコンデンサとしてもよい。ただし、高出力の電力合成器では、コンデンサの損失による発熱の熱源を分散するため、複数のコンデンサに分けたほうが熱設計としては有利になる。これは、コンデンサ141aとコンデンサ142a、コンデンサ144bとコンデンサ145b、コンデンサ141bとコンデンサ142bについても同様のことが言える。
【0006】
入力端子131aと入力端子131bに入力される2つの高周波電圧の位相と振幅に差が無く、合成器を構成するインピーダンス変換器140a,140bに特性差が無い場合は、抵抗器150の両端にかかる電圧は同じであるため、抵抗器150に流れる電流は0(ゼロ)であり、電力を消費しない。この状態が理想的であるが、実際に電力合成器を製作すると、部品や製造による特性ばらつきによって、2つの入力端子に入力される高周波電圧の位相と振幅には差が生じ、2つのインピーダンス変換器にも特性差が発生する。これらの差によって、抵抗器150の両端には電位差が生じ、電力が消費される。
【0007】
高周波電源では、この特性差が僅かであっても、出力電力が大きいため、抵抗器150で電力が消費され発熱する。そのため冷却が必要となるが、抵抗器150にはヒートシンクに熱を逃がす為のフランジを有するものを使うのが一般的である。
【0008】
図5に、背景技術におけるフランジつき抵抗器の外観と等価回路を示す。
図5(a)はフランジつき抵抗器の外観であり、
図5(b)はフランジつき抵抗器の等価回路である。
図5(a)に示すように、冷却するためのフランジ113の上に抵抗体111が置かれ、抵抗体111の両側から抵抗体端子112a,112bが接続される構造となっている。フランジ113には、ヒートシンク(不図示)にねじ止めで固定するための固定穴118があけられている。
図5(b)に示すように、このフランジ113は、電気的には抵抗体端子112a,112bや抵抗体111とは繋がっておらず、浮いている状態である。
【0009】
図5の抵抗体111を冷却するためにヒートシンクに取り付けた場合の構成を
図6に示す。
図6は、背景技術における電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造の一例である。
図6(a)は電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造上面図であり、
図6(b)は電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造側面図である。
抵抗体端子112aは、入力端子配線114aを介して合成器の入力端子131aと接続されている。抵抗体端子112bは、入力端子配線114bを介して合成器の入力端子131bと接続されている。フランジ113は、冷却するためヒートシンク117に接続される。ヒートシンク117は、筐体(不図示)と接続されており、電気的には接地されている。入力端子配線114a,114bは銅板などで構成される。
【0010】
ここで問題となるのは、抵抗体端子112a,112bとフランジ113間の耐圧である。フランジ113は、ヒートシンク117を通して筐体と接続されることによって、電気的には接地となるが、抵抗体端子112a,112bには、入力端子131a,131bに入力される高周波電圧とほぼ同じ電圧がかかる。つまり、抵抗体端子112a,112bとフランジ113との電位差は、入力端子131a,131bに入力される高周波電圧となる。この抵抗体端子112a,112bとフランジ113間の距離は数mmと短いため、ここに高電圧がかかると絶縁破壊を起こし放電してしまう。よって、高周波電源のように高出力の電源装置にこのようなアイソレーション抵抗の冷却構造をした合成器を使うと、抵抗体111の端子112a,112bとフランジ113間に放電がおき、電源装置が破損する可能性がある。
【0011】
この問題を解決するために、フランジ113とヒートシンク117の間に、窒化アルミニウムのような熱抵抗が小さく電気的に絶縁する絶縁部材116を挟むということも考えられ、この場合の構成を
図7に示す。
図7は、背景技術における電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造の他の例である。
図7(a)は電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造上面図であり、
図7(b)は電力合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造側面図である。
図7に示すように、絶縁部材116によって、ヒートシンク117とフランジ113間は絶縁されるが、フランジ113は電気的に浮いている状態となる。このため、電気的に浮いているフランジ113は、帯電することによって高電圧となり、抵抗体端子112a,112bなどに放電する危険性がある。結局、
図7の構成によっても耐圧の問題は解決されていない。
【0012】
下記の特許文献1には、電力損失を低減し電力合成を高効率に行う電力合成器が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る合成器のアイソレーション抵抗冷却部構造図である。
図1に示すように、本実施形態では、アイソレーション抵抗として、互いに直列接続された2つの終端器11a,11bを用いる。そして、一方の終端器11aの外殻(導体)を、フランジ13aを介して、合成器の入力端子31aに繋がる入力端子配線14aに連結する。また、他方の終端器11bの外殻(導体)を、フランジ13bを介して、合成器の入力端子31bに繋がる入力端子配線14bに連結する。そして、フランジ13aとヒートシンク17の間、フランジ13bとヒートシンク17の間を、熱抵抗の小さい絶縁部材16で絶縁する。
【0019】
フランジ13a,13bは、それぞれ、終端器11a,11bとブロック19a,19bが取り付けられ、互いに分離して設けられている。フランジ13a,13bとブロック19a,19bとヒートシンク17は、例えば銅等の電気伝導率が高く(つまり導体)、かつ熱伝導率の高い材料で構成され、絶縁部材16は、例えば窒化アルミニウムのような熱伝導率が高く(つまり熱抵抗が小さく)、電気的に絶縁体である絶縁材料で構成される。
また、絶縁部材16は、例えば窒化アルミニウムのような熱伝導率が高く硬い絶縁材料と、例えば薄いシリコーンゴムのような耐熱性と電気絶縁性と熱伝導性とを兼ね備えた薄く柔軟な絶縁材料との積層構造でも良い。絶縁部材16を熱伝導率が高く硬い絶縁材料と薄く柔軟な絶縁材料との積層構造にすれば、熱伝導率が高く硬い絶縁材料の脆性を補うことができる。さらに、絶縁部材16の難燃性が維持できるように、薄く柔軟な絶縁材料は、難燃性の特性も兼ね備えることが好ましい。
以上のように構成することにより、終端器11aの端子12aとフランジ13aとの間で放電することを防止し、また、終端器11bの端子12bとフランジ13bとの間で放電することを防止する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る終端器の外観図と等価回路図である。
図2(a)は、終端器の外観図であり、
図2(b)は、終端器の等価回路図である。
図2では、
図1の終端器11aを示す。終端器11bは、終端器11aと同様の構造であるので説明を省略する。
終端器とは、抵抗器を導体(例えばステンレス等の金属)のコネクタ内に組み込んだものであり、抵抗器の一方の端子を当該終端器の一方の端子とし、抵抗器の他方の端子を当該終端器の他方の端子であるコネクタ外殻と電気的に接続したものである。一般的に、終端器を使う場合は、その外殻を電気的に接地し、入力端子に高周波を入力する。
図2の例では、終端器11aの一方の端子が、終端器11aを構成する抵抗体51aの端子12aであり、終端器11aの他方の端子が、終端器11aのコネクタ外殻である。
図2(b)に示すように、終端器11aのコネクタ外殻は、導体であるフランジ13aと電気的に接続される。18は、フランジ13を、ヒートシンク(不図示)にねじ止めで固定するための固定穴である。
【0021】
このように、本実施形態では、終端器11a(11b)を構成する抵抗体51a(51b)の一方の端子が終端器端子12a(12b)に繋がり、抵抗体51a(51b)の他方の端子が終端器11a(11b)の外殻に繋がり、終端器11a(11b)の外殻が、フランジ13a(13b)の上に接触するように載置されている。そして、フランジ13a(13b)は、合成器の入力端子31a(31b)に繋がる入力端子配線14a(14b)に、電気的に接続されている。また、フランジ13a(13b)は、電気的に接地してあるヒートシンク17とは、絶縁部材16により絶縁されている。
【0022】
本実施形態の構成を、
図1を用いて詳しく説明する。
図1の構成では、アイソレーション抵抗として、50Ωの終端器11a,11bを2個用い、終端器11aの終端器端子12aと終端器11bの終端器端子12bとを、終端器間配線15で電気的に接続する。終端器間配線15は、終端器11aの抵抗体51aと終端器11bの抵抗体51bとを電気的に接続する抵抗間配線であり、例えば銅等の導体で構成される。アイソレーション抵抗は、2個の50Ω抵抗器を直列に接続するので、合わせて100Ωの抵抗器となる。
【0023】
終端器11aが取り付けられるフランジ13aは、ブロック19aを介して、合成器の入力端子31aに繋がる入力端子配線14aに電気的に接続される。終端器11bが取り付けられるフランジ13bは、ブロック19bを介して、合成器の入力端子31bに繋がる入力端子配線14bに電気的に接続される。
こうして、入力端子31aと終端器11aの抵抗体51aとが電気的に接続され、入力端子31bと終端器11bの抵抗体51bとが電気的に接続される。つまり、フランジ13aと、ブロック19aと、入力端子配線14aとは、終端器11aの抵抗体51aの一方の端子と入力端子31aとを電気的に接続する第1の接続部材を構成し、フランジ13bと、ブロック19bと、入力端子配線14bとは、終端器11bの抵抗体51bの一方の端子と入力端子31bとを電気的に接続する第2の接続部材を構成する。
換言すると、第1の接続部材は、終端器11aを構成する抵抗体51aの一方の端子と合成器の入力端子31aとの間に設けられ、終端器11aの抵抗体51aの一方の端子と入力端子31aとを電気的に接続する。第2の接続部材は、終端器11bを構成する抵抗体51bの一方の端子と合成器の入力端子31bとの間に、第1の接続部材と分離されて設けられ、終端器11bの抵抗体51bの一方の端子と入力端子31bとを電気的に接続する。
【0024】
ブロック19a,19bは、それぞれ、フランジ13a,13bと入力端子配線14a,14bとが取り付けられ、フランジ13a,13bと入力端子配線14a,14bとを電気的に接続するための接続部材である。入力端子配線14a,14bは、例えば銅等の導体で構成される。また、
図1では図示を割愛しているが、例えばねじ止めにより、フランジ13a(13b)と入力端子配線14a(14b)が、それぞれブロック19a(19b)に固定され、ブロック19a(19b)が、絶縁部材16を介して、ヒートシンク17に固定される。ヒートシンク17は、終端器11a,11bから発生する熱を放熱する放熱部材である。
ヒートシンク17は、本実施形態では、合成器の含まれる高周波電源装置の筺体(導体、例えばアルミニウム等の金属製)と別に、筺体に密着するように設けられるが、筺体と別に設けず、筺体をヒートシンク17として構成してもよい。
【0025】
絶縁部材16は、直接的には、ブロック19aとヒートシンク17との間、及びブロック19bとヒートシンク17との間に設けられる。つまり、絶縁部材16は、第1の接続部材とヒートシンク17との間、第2の接続部材とヒートシンク17との間に設けられ、第1の接続部材とヒートシンク17との間、及び第2の接続部材とヒートシンク17との間を電気的に絶縁するとともに、抵抗体51a,51bから発生する熱をヒートシンク17へ伝える。
なお、絶縁部材16は、ブロック19aとヒートシンク17との間用の絶縁部材と、ブロック19bとヒートシンク17との間用の絶縁部材とに、分離して設けてもよい。同様に、ヒートシンク17も、ブロック19aに対応するヒートシンクとブロック19bに対応するヒートシンクとに、分離して設けてもよい。
【0026】
放電防止作用について説明する。
入力端子配線14a,14bは、それぞれ、合成器の入力端子31a,31bに繋がるため、入力される高周波電圧がかかり高電圧となる。フランジ13a,13bは、それぞれ、ブロック19a,19bを介して入力端子配線14a,14bと繋がるため、高周波電圧がかかり高電圧となる。終端器端子12a,12bと終端器間配線15は、終端器11aの抵抗体51aを介しフランジ13aと繋がり、終端器11bの抵抗体51bを介しフランジ13bと繋がっている。
【0027】
フランジ13aとフランジ13bとが同じ電圧である場合は、終端器11a,11bに電流が流れないため、終端器11a,11bによる電圧降下は発生しない。よって、終端器端子12a,12bと終端器間配線15は、高周波電圧がかかり高電圧となる。
フランジ13aとフランジ13bとが同じ電圧でない場合は、終端器11a,11bに電流が流れるので、フランジ13aとフランジ13bにかかる電圧よりは低い電圧となるが、やはり、終端器端子12a,12bと終端器間配線15は、高周波電圧がかかり高電圧となる。
つまり、絶縁部材16の上に実装されているものは全て、合成器に入力される高周波電圧の影響を受けた高電圧となる(厳密には配線による抵抗や寄生容量により若干の電圧降下がある)。
【0028】
詳しくは、入力端子31a,31bが互いに同電位である場合は、入力端子配線14a,14bとブロック19a,19bとフランジ13a,13bと終端器11a,11bの外殻と終端器端子12a,12bと終端器間配線15は、すべて互いに同電位となる。
【0029】
また、入力端子31a,31bが互いに同電位でない場合は、入力端子配線14aとブロック19aとフランジ13aと終端器11aの外殻は互いに同電位となり、入力端子配線14bとブロック19bとフランジ13bと終端器11bの外殻は互いに同電位となる。そして、フランジ13a(終端器11aの外殻)と終端器端子12aとの間の電位差は、終端器11aの抵抗体51aの電圧降下分となり、フランジ13b(終端器11bの外殻)と終端器端子12bとの間の電位差は、終端器11bの抵抗体51bの電圧降下分となる。
【0030】
このように、本実施形態では、アイソレーション抵抗が2つに分割されているので、フランジ13a(13b)と抵抗体端子12a(12b)との間の電位差は、背景技術におけるフランジと抵抗体端子との間の電位差よりも、小さくなる。したがって、フランジと抵抗体端子との間の放電を、背景技術よりも防止できる。なお、2つに分割されたアイソレーション抵抗の値が同じでなくても、この効果を得ることができる。
【0031】
また、絶縁部材16の下のヒートシンク17は、電気的に接地されているので電圧は零である。つまり、絶縁部材16の上には高周波電圧がかかる部品があり、絶縁部材16の下は電圧が零のヒートシンク17があるが、その間に絶縁部材16があるため放電することはない。
【0032】
次に、冷却作用について説明する。
合成器の2つの入力端子31a,31bに入力される高周波電圧の位相や振幅に差がある場合は、アイソレーション抵抗の両端に電位差が発生し、電流が流れ、電力を消費する。この消費電力により熱が発生するが、終端器11a,11bの抵抗体51a,51bが発熱すると、フランジ13a,13b、ブロック19a,19b、絶縁部材16を介してヒートシンク17で放熱する。
このように、絶縁部材16は、第1の接続部材とヒートシンク17との間、及び第2の接続部材とヒートシンク17との間に設けられ、抵抗体51a,51bから発生する熱をヒートシンク17へ伝える。
【0033】
本例では、絶縁部材16として、電気的に絶縁され、熱抵抗の低い材料として窒化アルミニウムを用いているが、必ずしも窒化アルミニウムである必要はなく、同等の特性であれば別の材料でもよい。使用する状況によっては、窒化アルミニウム(熱伝導率=150W/m・K)よりも熱伝導率の低い絶縁材料で間に合う場合もある。要するに、絶縁部材16は、終端器11a,11bの温度を所定値以下に抑えることのできる熱伝導性を有するものであればよい。
【0034】
図1で示した構成のアイソレーション抵抗を、
図4に示す合成器の等価回路に組み込んだときの等価回路を
図3に示す。つまり、
図3は、本発明の実施形態に係る合成器の等価回路図である。
図3において、合成器は、入力端子31a(第1の入力端子)と、その入力が入力端子31aと電気的に接続されるインピーダンス変換器40a(第1のインピーダンス変換器)と、入力端子31b(第2の入力端子)と、その入力が入力端子31bと電気的に接続されるインピーダンス変換器40b(第2のインピーダンス変換器)と、一方の端子が入力端子31aに電気的に接続される抵抗体51a(第1の抵抗体)と、一方の端子が入力端子31bに電気的に接続され、他方の端子が抵抗体51aの他方の端子に電気的に接続される抵抗体51b(第2の抵抗体)と、を備えている。
【0035】
合成器の入力端子31aから入力された高周波電力は、インピーダンス変換器40aを通り、合成点32に到達する。合成器の他の入力端子31bから入力された高周波電力は、インピーダンス変換器40bを通り、合成点32に到達する。インピーダンス変換器40a,40bは、それぞれ、入力端子31a,31bから出力端子33を見た場合の入力インピーダンスの値を、変換するものである。こうして、入力端子31a,31bから入力された高周波電力は、合成点32で合成され、出力端子33に出力される。
【0036】
図3において、50が
図1のアイソレーション抵抗の等価回路である。アイソレーション抵抗50は、入力端子31aと入力端子31bの間に接続され、2つの抵抗体、つまり抵抗体51aと抵抗体51bで構成される。抵抗体51aと抵抗体51bは、それぞれ、
図1に示す2つの終端器11a,11bの抵抗体である。抵抗体51aの一方の端子は、入力端子31aに電気的に接続され、抵抗体51bの一方の端子は、入力端子31bに電気的に接続され、抵抗体51aの他方の端子は、抵抗体51bの他方の端子に電気的に接続されている。
【0037】
コンデンサ52aとコンデンサ52bは、ブロック19a,19bとヒートシンク17間に絶縁部材16を挟むことで増える寄生容量である。ブロック19a,19bとフランジ13a,13bの間は、電気的に繋がっており、これらの間の抵抗値は極めて小さいため、
図3に示すように、直列接続された抵抗体51a,51bの入力端子31a,31b側に、コンデンサ52a,52bの一端が繋がり、コンデンサ52a,52bの他端が接地される回路となる。なお、
図3の等価回路において、その他の配線による抵抗や寄生容量は小さいため記載していない。
【0038】
この寄生容量52a,52bは、
図4のコンデンサ145a,145bの代わりになり、削除することが可能なので、コスト低減を図ることができる。これは、寄生容量である52a,52bの容量がコンデンサ145a,145bと同じであることを前提にしているが、容量が異なったとしてもインダクタンス43a,43bやその他のコンデンサの定数を調整することで、コンデンサの個数を減らし、コスト低減を図ることができる。
【0039】
本実施形態によれば、少なくとも次の効果を奏する。
(a)合成器のアイソレーション抵抗を2つの抵抗で構成し、該2つの抵抗の第1の端子間を接続するとともに、該2つの抵抗の第2の端子を、それぞれ合成器の2つの入力端子に接続するように構成したので、合成器において耐圧強化と冷却とを両立することが可能となり、高出力の高周波電源の合成器を実現することができる。
(b)2つの抵抗を、それぞれ、第1及び第2の接続部材(フランジ)に取り付け、2つの抵抗の第2の端子を、それぞれ、第1及び第2の接続部材(フランジ)を介して、合成器の2つの入力端子に接続するように構成したので、2つの抵抗の第2の端子をそれぞれ合成器の2つの入力端子に接続することが容易になるとともに、2つの抵抗の第2の端子と接続部材(フランジ)との間で放電することを防止することができる。
(c)合成器のアイソレーション抵抗を2つの終端器で構成したので、2つの抵抗の第2の端子を、それぞれ、第1及び第2の接続部材(フランジ)に取り付けることが容易になる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、アイソレーション抵抗を2つの終端器で構成したが、アイソレーション抵抗を終端器以外の抵抗器で構成することも可能である。また、上記実施形態では、2つのアイソレーション抵抗の抵抗値を同じ値にしたが、必ずしも同じ値でなくてもよい。
【0041】
また、アイソレーション抵抗を構成する2つの抵抗器の少なくとも一方を、並列接続した複数の抵抗器で構成することも可能である。例えば、
図3において、抵抗体51a,51bの少なくとも一方を、並列接続した複数の抵抗器で構成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、ブロック19a,19bをフランジ13a,13bと別体で構成したが、ブロック19a,19bをフランジ13a,13bと別体で構成するのではなく、ブロック19a,19bをフランジ13a,13bと一体で構成する、つまり、ブロック19a,19bを設けず、ブロック19a,19bを含む形状にフランジ13a,13bを構成するようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、フランジ13a,13bを入力端子配線14a,14bと別体で構成したが、フランジ13a,13bを入力端子配線14a,14bと別体で構成するのではなく、フランジ13a,13bを入力端子配線14a,14bと一体で構成する、つまり、フランジ13a,13bを設けず、フランジ13a,13bを含む形状に入力端子配線14a,14bを構成するようにしてもよい。換言すれば、入力端子配線14a,14bをそれぞれフランジ13a,13bとして構成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、入力端子が2つの合成器の構成を示したが、3つ、あるいはそれ以上の入力を合成する合成器でもよい。
また、上記実施形態では、合成器に入力する電力が等しい場合の例を示したが、異なる電力を合成する合成器でもよい。
【0044】
本明細書には、本発明に関する少なくとも次の構成が含まれる。
第1の構成は、
第1の入力端子と、
入力が前記第1の入力端子と電気的に接続される第1のインピーダンス変換器と、
第2の入力端子と、
入力が前記第2の入力端子と電気的に接続される第2のインピーダンス変換器と、
前記第1及び第2のインピーダンス変換器の合成出力を出力する出力端子と、
一方の端子が前記第1の入力端子に電気的に接続される第1の抵抗体と、
一方の端子が前記第2の入力端子に電気的に接続され、他方の端子が前記第1の抵抗体の他方の端子に電気的に接続される第2の抵抗体と、
前記第1の抵抗体の前記一方の端子と前記第1の入力端子との間に設けられ、前記第1の抵抗体の前記一方の端子と前記第1の入力端子とを電気的に接続する第1の接続部材と、
前記第2の抵抗体の前記一方の端子と前記第2の入力端子との間に、前記第1の接続部材と分離されて設けられ、前記第2の抵抗体の前記一方の端子と前記第2の入力端子とを電気的に接続する第2の接続部材と、
熱を放熱する放熱部材と、
前記第1の接続部材と前記放熱部材との間、及び前記第2の接続部材と前記放熱部材との間に設けられ、前記第1及び第2の抵抗体から発生する熱を前記放熱部材へ伝える絶縁部材と、
を備えることを特徴とする合成器。
なお、第1の構成において、第1の抵抗体と第2の抵抗体の少なくとも一方を、並列接続した複数の抵抗器で構成することが可能である。
【0045】
第2の構成は、第1の構成の合成器であって、
前記第1及び第2の抵抗体は、それぞれ、導体の外殻を有する第1及び第2の終端器であり、前記第1及び第2の抵抗体の前記一方の端子は、それぞれ、前記第1及び第2の抵抗体の前記外殻であることを特徴とする合成器。
【0046】
第3の構成は、第1の構成又は第2の構成の合成器であって、
前記第1の接続部材と前記絶縁部材との間、及び前記第2の接続部材と前記絶縁部材との間に空間が設けられていることを特徴とする合成器。
【0047】
第4の構成は、第1の構成ないし第3の構成の合成器であって、
前記第1の抵抗体の前記一方の端子と前記第1の接続部材とが同電位であり、前記第2の抵抗体の前記一方の端子と前記第2の接続部材とが同電位であることを特徴とする合成器。
【0048】
第5の構成は、第1の構成ないし第4の構成の合成器であって、
前記絶縁部材は、前記第1及び第2の抵抗体の温度が所定値以下になるように、前記第1及び第2の抵抗体から発生する熱を前記放熱部材へ伝えることを特徴とする合成器。
【0049】
第6の構成は、第1の構成ないし第5の構成の合成器であって、
前記絶縁部材は、窒化アルミニウムを含むように構成されることを特徴とする合成器。
【0050】
第7の構成は、第1の構成ないし第6の構成の合成器であって、
前記第1の接続部材は、前記第1の入力端子に取り付けられる第1の入力端子配線と、前記第1の抵抗体に取り付けられる第1のフランジを含み、前記第2の接続部材は、前記第2の入力端子に取り付けられる第2の入力端子配線と、前記第2の抵抗体に取り付けられる第2のフランジを含むことを特徴とする合成器。
【0051】
第8の構成は、
第1の入力端子と、
入力が前記第1の入力端子と電気的に接続される第1のインピーダンス変換器と、
第2の入力端子と、
入力が前記第2の入力端子と電気的に接続される第2のインピーダンス変換器と、
前記第1及び第2のインピーダンス変換器の合成出力を出力する出力端子と、
一方の端子が前記第1の入力端子に電気的に接続される第1の抵抗体と、
一方の端子が前記第2の入力端子に電気的に接続され、他方の端子が前記第1の抵抗体の他方の端子に接続される第2の抵抗体と、
を備えることを特徴とする合成器。
【0052】
第9の構成は、第8の構成の合成器であって、さらに、
前記第1の抵抗体の前記一方の端子と前記第1の入力端子との間に設けられ、前記第1の抵抗体の前記一方の端子と前記第1の入力端子とを電気的に接続する第1の接続部材と、
前記第2の抵抗体の前記一方の端子と前記第2の入力端子との間に、前記第1の接続部材と分離されて設けられ、前記第2の抵抗体の前記一方の端子と前記第2の入力端子とを電気的に接続する第2の接続部材と、
熱を放熱する放熱部材と、
前記第1の接続部材と前記放熱部材との間、及び前記第2の接続部材と前記放熱部材との間に設けられ、前記第1及び第2の抵抗体から発生する熱を前記放熱部材へ伝える絶縁部材と、
を備えることを特徴とする合成器。