(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸に取り付けるための取り付け面を有する回転部材と、回転部材に設けられ、周方向に複数の磁極を配置してなる磁気エンコーダトラックとを備え、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対面領域で移動させて、回転する回転軸の角度を検出する磁気エンコーダ装置において、
回転部材の前記取り付け面を含む領域を焼結金属で形成し、かつ少なくとも前記取り付け面にサイジングを施し、
回転部材のうち、磁気エンコーダトラックに着磁する際に位置決めされる被位置決め面を含む領域を焼結金属で形成し、かつ前記被位置決め面にサイジングを施したことを特徴とする磁気エンコーダ装置。
回転軸に取り付けるための取り付け面を有する回転部材と、回転部材に設けられ、周方向に複数の磁極を配置してなる磁気エンコーダトラックとを備え、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対面領域で移動させて、回転する回転軸の角度を検出する磁気エンコーダ装置において、
回転部材の前記取り付け面を含む領域を焼結金属で形成し、かつ少なくとも前記取り付け面にサイジングを施し、
回転部材を、焼結金属からなり、回転軸に取り付けるための取り付け面を有する第一部材と、第一部材に嵌合固定され、表面に磁気エンコーダトラックが形成された第二部材とで構成し、磁気エンコーダトラックの着磁を、第一部材に第二部材を固定した状態で行ったことを特徴とする磁気エンコーダ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるような回転数を検出するための回転検出装置であれば、それほど高い分解能が要求されないので、検出精度に関する限り既存の製品精度でも実用上の不都合はない。これに対し、特許文献2に記載される回転軸の絶対角度を検出する回転検出装置では、単に回転数を検出するにすぎない場合と比べて格段に高い分解能と精度が必要とされるため、磁気エンコーダトラックには高精度が要求される。特に本発明者らの検証により、磁気エンコーダ装置の僅かな振れ回りが、絶対角度の検出精度を大きく左右することが明らかとなった。磁気エンコーダトラックはリング状の部材に形成されるのが一般的であるが、そのような部材を切削等の機械加工で形成する場合、振れ回りの防止に足る要求精度を満たそうとすれば、加工コストが著しく高騰する点が問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、磁気エンコーダトラックの振れ回りを低コストに抑制できる磁気エンコーダ装置、およびこれを有する回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、回転軸に取り付けるための取り付け面を有する回転部材と、回転部材に設けられ、周方向に複数の磁極を配置してなる磁気エンコーダトラックとを備え、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対面領域で移動させて、回転する回転軸の角度を検出する磁気エンコーダ装置において、回転部材の前記取り付け面を含む領域を焼結金属で形成し、かつ少なくとも前記取り付け面にサイジングを施したことを特徴とするものである。この場合、磁気エンコーダトラックには、それぞれに磁極を有する第一トラックおよび第二トラックを設けるのが好ましい。
【0008】
回転部材の取り付け面を含む領域を焼結金属で形成し、取り付け面にサイジングを施すことで、取り付け面の平面度、円筒度等の表面精度を低コストに向上させることができる。そのため、取り付け面に回転軸を取り付けた場合でも、回転軸の回転中心に対して回転部材を高精度の同軸度をもって回転させることができる。そのため、回転部材に設けた磁気エンコーダトラックの振れ回りを防止することができる。
【0009】
この場合、回転部材のうち、磁気エンコーダトラックに着磁する際に位置決めされる被位置決め面を含む領域を焼結金属で形成し、かつ前記被位置決め面にサイジングを施すのが好ましい。これにより、精度良く着磁することが可能となる。
【0010】
回転部材は、焼結金属からなり、回転軸に取り付けるための取り付け面を有する第一部材と、第一部材に嵌合固定され、表面に磁気エンコーダトラックが形成された第二部材とで構成することができる。この際、第一部材に第二部材を固定した状態で磁気エンコーダトラックを着磁するのが好ましい。第二部材の第一部材への組み付けに際しては、第二部材の微小変形が不可避となるが、第二部材の組み付け後に着磁すれば、微小変形後の第二部材を基準として着磁が行われるため、第二部材の微小変形に伴う磁気エンコーダトラックの精度低下を回避することが可能となる。
【0011】
また、回転部材は、焼結金属からなり、回転軸に取り付けるための取り付け面を有し、表面に磁気エンコーダトラックが形成されたベース部材で構成することができる。これにより部品点数の削減による低コスト化および着磁精度の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁気エンコーダトラックの振れ回りを防止することができるので、回転軸の絶対角度を高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この実施形態の回転検出装置1の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、この回転検出装置1は、回転軸2と、回転軸2に取り付けられる磁気エンコーダ装置3と、ハウジング等の静止部材に取り付けられる磁気センサ4とで構成される。回転軸2は、図示しないモータ(例えばサーボモータ)等の回転駆動源により、最大で12000rpm程度の回転速度で回転駆動される。
【0016】
磁気エンコーダ装置3は、異なる磁極(N極およびS極)を周方向交互に配置した磁気エンコーダトラック30を有する。磁気エンコーダトラック30は、例えば磁性粉を含むゴム、プラスチック、あるいは焼結体等で形成され、これらは着磁によってそれぞれゴム磁石、プラスチック磁石、あるいは焼結磁石を構成する。本実施形態における磁気エンコーダトラック30は、バーニャ原理により絶対角度を検出可能としたのもので、
図2に示すように、第一トラック31と第二トラック32とを同心で環状に複列配置した形態をなしている。
【0017】
第一トラック31および第二トラック32のそれぞれに、N極およびS極からなる磁極対31a,32aが異なる磁極を周方向交互に配置して着磁されている。本実施形態では、第一トラック31の磁極を等ピッチλ1とし、第二トラック32の磁極も等ピッチλ2としている。第一トラック31おける磁極対31aの数(例えば32個)は、第二トラック32における磁極対32aの数(例えば31個)と異なる。例えば第一トラック31における磁極対31aを任意の数nとした場合、第二トラック32には、n±1で表される数の磁極対32aを設けることができる。これにより回転軸2の1回転を0°〜360°の範囲の絶対角度で検出することができる。検出可能な絶対角度の範囲を360°ではなく180°とする場合には、第二トラック32にn±2で表される数の磁極対32aを設ければよい。この場合、回転軸2の1回転に対して0°〜180°の範囲の検出を2回繰り返すことになる(いわゆる2xモード)。同様にn±3とした場合には絶対角度検出範囲は120°となり、回転軸2の1回転に対して3回繰り返して検出することになる(いわゆる3xモード)。
【0018】
磁気センサ4は、第一トラック31および第二トラック32のそれぞれと対面する検出素子4aを有する。各検出素子4aは、トラックピッチの方向に所定距離だけ離隔させた二つの磁気検出素子等からなり、軸方向に0.3mm〜4mm程度のアキシャルギャップを介して第一トラック31および第二トラック32のそれぞれと対向している。磁気エンコーダトラック30を回転させることで、各トラック32の磁極が検出素子4aの対面領域を移動するので、二つの検出素子4aの出力波形を比較してその位相差を求めることにより、磁気エンコーダトラック30の絶対角度を検出することが可能となる。
【0019】
磁気エンコーダトラック30は、第一部材としてのベース部材33および第二部材としての芯金34からなる回転部材35に取り付けられる。
図1および
図2に示す実施形態では、磁気エンコーダトラック30が第二部材としての芯金34の表面に形成されている。
【0020】
芯金34は、円筒部34aと、円筒部34aの軸方向一端から半径方向に延びるフランジ部34bとを有する断面L字型をなし、磁性体(特に強磁性体)の金属板、例えばフェライト系ステンレス鋼等の鋼板で一体に形成されている。磁石の動作条件が多少厳しくなるが、芯金34を非磁性の金属板で構成することもできる。この実施形態では、芯金34のうち、磁気センサ4とアキシャルギャップを介して対向するフランジ部34bの端面に磁気エンコーダトラック30が形成されている。芯金34の円筒部34bは、以下に説明する円筒状のベース部材33の外周面に接着、圧入、あるいは圧入接着等の手段で固定される。
【0021】
第一部材としてのベース部材33は、多数の微細空孔を有する焼結金属で形成される。このベース部材33は、焼結金属の製造手法として常用される、金属粉末の圧縮成形→焼結→サイジングの各工程を経て製作される。焼結体に対する潤滑油の含浸は行われない。焼結金属としては、銅系、銅鉄系、鉄系の何れも使用できるが、サイジング時の成形性とコストを両立するため、銅粉および鉄粉を主成分とする銅鉄系を使用するのが好ましい。
【0022】
サイジングは、
図3に示すように、焼結された焼結素材33’を、その軸方向両端面33c’,33d’をパンチ13,14で拘束しつつダイ11に圧入し、あるいはダイ11に焼結素材33’を収容してから、焼結素材33’の軸方向両端面33c’、33d’をパンチ13,14で加圧することで、焼結金属素材33’を圧迫する工程である。サイジング中は焼結金属素材33’の内周にはコアロッド12が挿入される。
【0023】
このサイジングにより、焼結素材33’の外周面33a’、内周面33b’、および両端面33c’,33d’がそれぞれダイ11の内周面、コアロッド12の外周面、および両パンチ13,14の端面に押し付けられて塑性変形により矯正され、各面が精度良く仕上げられる。その後、焼結金属素材33’をダイ11内から取り出すことで、ベース部材33が完成する。ベース部材の33の外周面33a、内周面33b、および端面33c、33dは何れもサイジングされた面となるが、サイジングに伴って表面空孔が潰れるため、サイジング後の各面33a〜33dの表面空孔率は、内部の空孔率よりも小さくなる。ベース部材33の軸方向両端の内径角部および外径角部には、それぞれ面取り33eが設けられているが、これら面取り33eはサイジングされないため、上記各面33a〜33dの表面空孔率は、面取り33eの表面空孔率よりも小さくなる。
【0024】
芯金34はプレス加工等で製作される。芯金34の製作後、フランジ部34bの端面に磁気エンコーダトラック30(未着磁)が射出成形等で形成され、さらにこの芯金34の円筒部34aをベース部材33の外周面に圧入等の手段で固定することで、ベース部材33および芯金34のアセンブリである回転部材35が製作される。この時、芯金34の円筒部34aの自由端は、ベース部材33のうち、反磁気センサ4側(磁気センサ4から離反する方向)の端面33cと同一平面上に配置するのが好ましい。
【0025】
その後、磁気エンコーダトラック30の着磁が行われる。着磁中は、
図4に示すように、ベース部材33の内周面33bがスピンドル16に嵌合されると共に、図示しないチャック機構でベース部材33が軸方向一方(磁気センサ4から離反する方向)に押し付けられる。これにより、ベース部材33の反磁気センサ4側の端面33c、さらには芯金34の円筒部34aの自由端が着磁装置に設けられた位置決め面17と当接し、回転部材35が着磁装置に対して軸方向で位置決めされる。
【0026】
この状態で磁気エンコーダトラック30の軸方向両側に着磁ヘッド18を配置し、ベース部材33および芯金34をインデックス回転させながら、着磁ヘッド18間に磁束を通すことにより、磁気エンコーダトラック30の第一トラック31と第二トラック32のうち、どちらか一方のトラックの着磁が行われる。その後、着磁ヘッド18を半径方向にスライドさせ、同様の操作を繰り返して他方のトラックの着磁を行うことで、
図1および
図2に示す磁気エンコーダ装置3が完成する。なお、インデックス回転させながら複数のトラックを同時に着磁するようにしてもよく、その他、全ての磁極を同時に着磁させる方法を採用することもできる。
【0027】
このようにして製作した磁気エンコーダ装置3のベース部材33に回転軸2を固定し、ハウジングの所定位置に磁気センサ4を配置することで、
図1および
図2に示す回転検出装置1が完成する。ベース部材33と回転軸2の固定は、両者間での芯ずれ防止のために圧入で行うのが好ましいが、芯ずれを回避できる対策を講じれば、接着等の他の固定手段で固定することもできる。
【0028】
本発明の磁気エンコーダ装置3においては、ベース部材33が焼結金属で形成され、かつベース部材33の回転軸2に対する取り付け面(内周面)33bがサイジングにより矯正されている。そのため、取り付け面33bは高い平面度および円筒度を有し、かつ両端面33c、33dに対する直角度や回転軸心に対する同軸度も良好なものとなる。このように取り付け面33bが高い表面精度を有するため、ベース部材33の取り付け面33bに回転軸2を嵌合固定して回転軸2を回転させた場合でも、磁気エンコーダトラック30の振れ回りを小さくすることができる。そのため、回転中の磁気エンコーダトラック30の幾何学的な誤差、さらには磁気センサ4との間のギャップ変動に基づく誤差を小さくすることができ、回転軸2の絶対角度の検出精度を高めることができる。
【0029】
以下、この作用効果を
図5に示すモデルを用いて説明する。同図において、磁気エンコーダトラック30の半径Rに対して、磁気エンコーダトラック30の中心が回転軸心OからΔRだけ偏心した位置に固定されている場合を想定すると、磁気エンコーダトラック30に回転角θに依存したΔRの振れ回りが発生する。これにより、tanΔθ〜ΔR/Rの大きさで変動する角度誤差(幾何学的な誤差)が観測されることになる。
【0030】
例えば、複列の磁気エンコーダトラック30を用いて1回転を12ビット(4096分割)以上の分解能で測定する場合、磁気エンコーダトラック30の各トラック31,32のピッチ誤差を±0.5%以下に抑えることが望まれる。R=25mmの位置に32極対の磁気エンコーダトラック30を形成する場合を考えると、1磁極対に相当する回転角度は360°/32=11.25°なので、ピッチ誤差0.5%は、11.25°×0.5%=0.05625°となり、その場合、許容される偏心量はΔR<Rtan(0.05625°)=24.5μmとなる。従って、ピッチ誤差を0.5%以下にするためには、ベース部材33の取り付け面33bにおける公差を±20μm以下に設定することが望まれる。少なくともベース部材33の取り付け面33bを焼結金属で形成し、これにサイジングを施せば、取り付け面33bをそのような公差範囲に収めることは容易であるので、ピッチ誤差を0.5%以下に抑えた磁気エンコーダトラック30を低コストに提供することが可能となる。
【0031】
また、振れ回り量が小さくなることで、磁気センサ4と各磁極との間のギャップ変動を抑えることができる。既存の磁気エンコーダ装置では、磁気センサ4と各磁極との間のギャップは、機械部品の加工精度や組み付け精度によって制限され、その変動幅が大きいためにギャップを小さくするには限度がある。これに対し、本発明では、磁気エンコーダトラック30の振れ回り量が小さいため、ギャップの変動範囲を±0.1mm以下に抑えることができる。そのため、磁気センサ4と各磁極との間のギャップを詰めることができ、磁気強度の増大を通じてノイズの少ない高品質の信号を出力することが可能となる。この点からも、回転軸2の絶対角度の検出精度を高めることができる。
【0032】
また、
図4に示すように、磁気エンコーダトラック30に着磁する際には、ベース部材33の取り付け面33bが着磁装置のスピンドル16に嵌合すると共に、ベース部材33の反磁気センサ4側の端面33cが被位置決め面となって着磁装置の位置決め面17と軸方向で当接する。磁気エンコーダトラック30を精度良く着磁するためには、着磁装置のスピンドル16に対するベース部材33の取り付け姿勢が安定し、スピンドル16の回転中心に対してベース部材33が高い同軸度を有することが必要となるが、ベース部材33の取り付け面33bおよび被位置決め面33cがサイジングにより高精度に成形されているので、着磁中の磁気エンコーダトラック30の振れ回りをさらに小さくし、ギャップ変動を抑制することができる。従って、正確な角度ピッチで着磁することができ、回転軸2の絶対角度をさらに精度良く検出することが可能となる。
【0033】
特に本実施形態では、芯金34をベース部材33の外周面に固定してから、芯金の磁気エンコーダトラック30の着磁を行っているため、圧入に伴う芯金34の変形の影響をキャンセルして磁気エンコーダトラック30を着磁することができる。そのため、高精度の磁極パターンを形成することができる。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態を
図6〜
図14に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明において、
図1および
図2に示す実施形態と共通する構成および部材には共通の参照符号を付して重複説明を省略する。また、
図6〜
図14に示す実施形態の構成が奏する、
図1および
図2に示す実施形態と共通する作用効果についても、その説明は基本的に省略する。
【0035】
図6および
図7は、ラジアルギャップタイプの回転検出装置1の断面図(
図6)および平面図(
図7)を示す。この実施形態においても、
図7に示すように、磁気エンコーダトラック30は複列配置され、ベース部材33が焼結金属で形成されると共に、その少なくとも取り付け面33b、好ましくは取り付け面33bと被位置決め面33c、さらに好ましくはベース部材33の全面33a〜33dがサイジングで仕上げられている。磁気エンコーダトラック30は、軸方向に離隔した第一トラック31と第二トラック32からなり、何れのトラック31,32も芯金34の円筒部34aの外周面に形成されている。
【0036】
この実施形態では、芯金34のフランジ部34bは内径方向に延びてベース部材33の端面3dと軸方向で係合している。この場合、芯金34の円筒部34aとフランジ部34b間の境界角部での内側アールと干渉しないように、ベース部材33のうち、芯金34の磁気センサ側の端面33dの外径面取り33eの寸法を大きくするのが好ましい。
【0037】
図8は、ラジアルギャップタイプの回転検出装置1の他の実施形態を示す断面図である。この実施形態でも、磁気エンコーダトラック30は複列配置され、ベース部材33が焼結金属で形成されると共に、ベース部材の少なくとも取り付け面33b(好ましくは取り付け面33bと被位置決め面33c、より好ましくは全面)がサイジングで仕上げられている。
【0038】
図8に示す実施形態では、ベース部材33の外周面および芯金34のそれぞれが、大径部と小径部からなる段付き円筒面状に形成され、芯金34の大径部の外周面に磁気エンコーダトラック30が形成されている。また、芯金34の小径部がベース部材33の小径外周面に圧入等で固定され、芯金34の大径部の内周面とベース部材33の大径外周面との間には隙間Sがある。芯金34の大径部および小径部の双方をベース部材34の外周面に圧入すれば、ベース部材33の大径外周面と小径外周面の精度差から芯金34が過剰に変形し、磁極パターンの精度に影響するおそれがあるが、かかる構成であればそのような不具合を防止することができる。
【0039】
図9は、アキシャルギャップタイプの回転検出装置1の他の実施形態を示す断面図である。
図9に示す実施形態では、芯金34の円筒部34aの軸方向長さを
図1に示す実施形態よりも縮小させ、フランジ部34bに形成した磁気エンコーダトラック30の表面を、ベース部材33の磁気センサ4側の端面33dよりも、磁気センサ4から離反する方向に後退させている。かかる構成であれば、磁気センサ4をベース部材33の外径側領域に配置することが可能となり、回転検出装置1の省スペース化(特に軸方向寸法の省スペース化)を図ることができる。また、磁気エンコーダ装置3の輸送時等において、磁気エンコーダ装置3を軸方向に段積しても、磁気エンコーダトラック30が他の磁気エンコーダ装置3の芯金34等に接触することがなく、磁気エンコーダトラック30の変形や損傷を防止することができる。
【0040】
この実施形態においては、
図9に示すように、ベース部材33のうち、磁気センサ4側の端面33dの外径面取り33eの外径端を、フランジ部34bの磁気センサ側の端面よりも磁気センサ4からの離反方向に後退させた位置に到達させるのが好ましい。このように外径面取り33eの面取り寸法を大きくすることで、フランジ部34bよりも磁気センサ4側の領域でスペースに余裕が生じるので、磁気エンコーダトラック30の形成およびその着磁をスムーズに行うことが可能となる。
【0041】
以上の実施形態では、磁気エンコーダトラック30を設ける回転部材35として、ベース部材33と芯金24の二部品からなるアセンブリ品を例示したが、回転部材35は、一部品で構成することもできる。以下、このように回転部材35を一部品とした場合の複数の実施形態を
図10〜
図13に基づいて説明する。
【0042】
図10〜
図14に示す実施形態では、回転軸2に、回転部材35としての焼結金属製ベース部材33が圧入等の手段で固定されている。複列の磁気エンコーダトラック30は、芯金34を用いることなく、ベース部材33の表面に直接形成されている。
図10は、ベース部材33の磁気センサ4側の端面33dに直接磁気エンコーダトラック30を形成したアキシャルギャップタイプの回転検出装置1を示し、
図11は、ベース部材33の外周面33aに磁気エンコーダトラック30を直接形成したラジアルギャップタイプの回転検出装置1を示している。
【0043】
図10および
図11に示す何れの実施形態でも、焼結金属製ベース部材33の少なくとも取り付け面33b(好ましくは取り付け面33bと被位置決め面33c、さらに好ましくは全面)をサイジングすることで、
図1および
図2に示す実施形態と同様に、磁気エンコーダトラック30の振れ回りを小さくすることができ、回転軸2の絶対位置の検出精度を向上させることが可能となる。
【0044】
図12および
図13の実施形態は、
図11に示すラジアルギャップタイプの実施形態において、ベース部材33の外周面33a、および両端面33c、33dの外径側領域を磁気エンコーダトラック30で被覆したものである。このようにベース部材33の外周面33aのみならず、両端面33c,33dも磁気エンコーダトラック30で被覆することにより、磁気エンコーダトラック30がベース部材33から剥離・脱落し難くなる。
図12に示す実施形態では、ベース部材33の外周面33aを段付きの円筒面状としているが、
図13に示す実施形態では、ベース部材33の外周面33aを同一の径寸法としている。
【0045】
以上の説明では、回転部材35に形成する複列の磁気エンコーダトラック30として、第一トラック31と第二トラック32の磁極対の数を異ならせると共に、第一トラック31の磁極を等ピッチλ1とし、第二トラック32の磁極を等ピッチλ2としたものを説明したが、磁気エンコーダトラック30の磁極パターンはこれに限定されず、回転軸2の絶対角度を検出可能なあらゆる磁極パターンを採用することができる。例えば
図14(a)に示すように、第一トラック31と第二トラック32で磁極対の数を同じにすると共に、第一トラック31および第二トラック32のそれぞれで磁極ピッチを不等ピッチにすることもできる。この他、
図14(b)に示すように、第一トラック31を、異なる磁極を交互に等ピッチで形成した回転検出用トラックとすると共に、第二トラック32を、回転基準位置検出用の磁極を周方向の一カ所もしくは複数個所に形成した、インデックス信号(Z相)生成用トラックとしてもよい。
【0046】
以上に述べた回転検出装置1は、回転軸2の絶対角度の検出が求められる用途に適用することができ、ロボットの関節部分、精密位置決め装置をはじめ、各種産業機器に広く用いることが可能である。