(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁性の表面に設けられた第1の電極と、該第1の電極と対向する第2の電極との間に有機エレクトロルミネセンス層が設けられた発光素子を有する複数の画素が離間して配置され、前記第1の電極の外周端部を覆うように隔壁層が設けられた画素領域を有する素子基板と、
前記素子基板と間隙をもって、前記発光素子を挟んで対向配置された対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間隙部に設けられた充填材と、
前記素子基板と前記対向基板との間にあって、前記充填材の中に立設するように設けられた突起部と、
を有し、
前記突起部は、前記画素の外周部に沿うように設けられると共に、前記充填材の流動を阻害しないように開放端を有し、前記開放端を形成する端部において錐形状又は流線型状の形状を有することを特徴とするエレクトロルミネセンス装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機EL層を用いた発光素子で画素を構成し、この画素をマトリクス状に配列させることで画像表示を行うエレクトロルミネセンス装置では、カラー表示を行うためにカラーフィルタを用いる場合がある。トップエミッション型のエレクトロルミネセンス装置では、光の出射側である封止基板にカラーフィルタを設けることで、カラー画像の表示を行うようにしている。このとき、発光素子が形成された素子基板とカラーフィルタが形成された封止基板の間隔が広いと、発光素子から放射される光が自画素のみならず、隣接する画素のカラーフィルタ層を通って出射されるので、混色の問題が発生してしまう。
【0008】
混色の発生を防ぐには、素子基板とカラーフィルタ基板との間隔をなるべく狭くすることが有効である。素子基板とカラーフィルタ基板との間隔を狭くする場合、その間隔が基板の面内で不均一であると、モアレ縞などが視認されるようになり、外観不良が生じてしまう。このため、例えば、特許文献2で開示されているように、素子基板とカラーフィルタ基板との間にスペーサを設けることで、両基板の間隔を狭めつつ、その間隔を一定に保つことが可能となる。
【0009】
しかしながら、素子基板とカラーフィルタ基板との間隔を狭くすると、充填材の量も自ずと減少することになるが、充填材は流動性が低いため封止領域内に気泡が残留し、あるいは充填材が十分に広がらずに空洞が発生してしまうといった、新たな問題が生じることが確認されている。この問題は、充填材の流動性が低いことに加え、スペーサを設けたことでさらに充填材の流動を阻害していることが原因であると考えられる。
【0010】
また、スペーサは、素子基板とカラーフィルタ基板の間隔を一定に保つ作用はあるものの、特許文献2で開示されるように、単に隔壁層と重なる位置にスペーサを設けただけでは、隣接若しくは近接する画素間で発生する混色の問題を解決することはできない。すなわち、従来のスペーサは、素子基板とカラーフィルタ基板との間隔を制御するには有効であるが、画素間の混色防止には直接的に寄与せず、かえって充填材の拡散を阻害するなど新たな問題発生要因となっている。
【0011】
そこで本発明の一実施形態は、エレクトロルミネセンス装置において混色の問題を解決することを目的とし、かかる場合において、充填材に起因する不良が発生しないようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態は、画素に発光素子が設けられる素子基板と、各画素に対応してカラーフィルタ層が設けられるカラーフィルタ基板とを対向配置させた間隙部に充填材を設けるとともに、該間隙部に突起部を設けることを要旨とする。
【0013】
本発明の一実施形態によるエレクトロルミネセンス装置は、絶縁性の表面に設けられた第1の電極と、該第1の電極と対向する第2の電極との間に有機エレクトロルミネセンス層が設けられた発光素子を有する複数の画素が離間して配置され、第1の電極の外周端部を覆うように隔壁層が設けられた画素領域を有する素子基板と、素子基板と間隙をもって対向配置され、複数の画素のそれぞれに対応して設けられたカラーフィルタ層と、複数の画素が離間する領域に対応して設けられた遮光層とを有するカラーフィルタ基板と、素子基板とカラーフィルタ基板との間隙部に設けられた充填材と、素子基板とカラーフィルタ基板との間にあって、充填材の中に立設するように設けられた突起部とを有し、突起部は、遮光層と重なる位置に、画素の少なくとも一辺と沿うように分割して設けられている。
【0014】
このエレクトロルミネセンス装置によれば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に設けられる突起部を、各画素に対応して分割して設けることで、スペーサとして機能するばかりでなく、自画素から隣接画素へ漏れ出る斜め出射光を遮断する機能を有するものとすることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によるエレクトロルミネセンス装置は、絶縁性の表面に設けられた第1の電極と、該第1の電極と対向する第2の電極との間に有機エレクトロルミネセンス層が設けられた発光素子を有する複数の画素が離間して配置され、第1の電極の外周端部を覆うように隔壁層が設けられた画素領域を有する素子基板と、素子基板と間隙をもって対向配置され、複数の画素のそれぞれに対応して設けられたカラーフィルタ層と、複数の画素が離間する領域に対応して設けられた遮光層とを有するカラーフィルタ基板と、素子基板とカラーフィルタ基板との間隙部に設けられた充填材と、素子基板と前記カラーフィルタ基板との間にあって、充填材の中に立設するように設けられた突起部とを有し、突起部は、画素の外周部に沿うように設けられると共に、充填材の流動を阻害しないように開放端を有する。
【0016】
このエレクトロルミネセンス装置によれば、突起部を画素の外周部に沿うように設けられると共に、充填材の流動を阻害しないように開放端を有するようにすることで、自画素から隣接画素へ漏れ出る斜め出射光を遮断する機能をより高めることができる。
【0017】
このエレクトロルミネセンス装置の別の好ましい態様として、突起部の長手方向の端部は錐形状、または流線型とすることができる。突起部をこのような形態とすることで、素子基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせたときに、それらの間に設けられる充填材の流動を阻害しないようにすることができる。
【0018】
このエレクトロルミネセンス装置の別の好ましい態様として、突起部に遮光性を持たせることが好ましい。例えば、突起部に光吸収性を持たせるようにすることが好ましい。また別の形態として、突起部の屈折率を充填材の屈折率よりも小さい材料で形成することが好ましい。このような突起部を設けることで、自画素から隣接画素へ漏れ出る斜め出射光を遮断する機能をより高めることができる。
【0019】
本発明の一実施形態によるエレクトロルミネセンス装置の作製方法は、絶縁性の表面に第1の電極と、該第1の電極との間に有機エレクトロルミネセンス層が設けられた発光素子を有する画素を複数個離間して配置すると共に、第1の電極の外周端部を覆うように画素が離間する領域隔壁層が設けられた素子基板を形成し、複数の画素のそれぞれに対応して設けられたカラーフィルタ層と、該複数の画素が離間する領域に対応して設けられた遮光層とを有するカラーフィルタ基板を形成し、素子基板における画素領域の外周部にシールパターンを形成し、カラーフィルタ基板における遮光層と重なる位置に、画素の少なくとも一辺に沿うように突起部を複数に分割して形成し、素子基板のシールパターンの内側領域に充填材を分散させ、素子基板とカラーフィルタ基板とを、突起部が内設されるように対向させ、減圧下で貼り合わせる工程を含んでいる。
【0020】
このエレクトロルミネセンス装置の製造方法によれば、各画素に対応して突起部を設けることで、素子基板とカラーフィルタ基板の間隔を一定に保って貼り合わせることができる。また、突起部を複数に分割して形成することで、素子基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせるときに、充填材の流動を阻害しないようにすることができる。
【0021】
本発明の一実施形態によるエレクトロルミネセンス装置の作製方法は、絶縁性の表面に第1の電極と、該第1の電極との間に有機エレクトロルミネセンス層が設けられた発光素子を有する画素を複数個離間して配置すると共に、第1の電極の外周端部を覆うように画素が離間する領域隔壁層が設けられた素子基板を形成し、複数の画素のそれぞれに対応して設けられたカラーフィルタ層と、該複数の画素が離間する領域に対応して設けられた遮光層とを有するカラーフィルタ基板を形成し、素子基板における画素領域の外周部にシールパターンを形成し、カラーフィルタ基板における遮光層と重なる位置に突起部を形成し、素子基板の前記シールパターンの内側領域に充填材を分散させ、素子基板とカラーフィルタ基板とを、突起部が内設されるように対向させ、減圧下で貼り合わせる工程を有し、突起部は、前記画素の外周部に沿って配設すると共に、充填材の流動性を阻害しないように開放端を有するように形成する工程を有する工程を含んでいる。
【0022】
このエレクトロルミネセンス装置の製造方法によれば、画素に対応して突起部を設けることで、素子基板とカラーフィルタ基板の間隔を一定に保って貼り合わせることができる。また、突起部を画素の外周部に沿うように設けるときに、充填材の流動を阻害しないように開放端を有するようにすることで、充填材が広がらない空洞部分ができないようにすることができる。
【0023】
このエレクトロルミネセンス装置の製造方法における別の好ましい態様として、突起部の長手方向の端部が錐形状、または流線型に形成することが望ましい。突起部をこのような形状に形成することで、素子基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせたときに、それらの間に設けられる充填材の流動を阻害しないようにして、充填材が充満しない空洞部分が生成されないよういにすることができる。
【0024】
このエレクトロルミネセンス装置の製造方法における別の好ましい態様として、突起部に遮光性を持たせることが好ましい。例えば、突起部に光吸収性を持たせるように形成することが好ましい。また別の形態として、突起部の屈折率を充填材の屈折率よりも小さい材料で形成することが好ましい。このような突起部を設けることで、自画素から隣接画素へ漏れ出る斜め出射光を遮断する機能をより高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態のエレクトロルミネセンス装置によれば、遮光層と重なるように設けられた突起部を、素子基板とカラーフィルタ基板との間隔を一定に保つスペーサとしての機能させることができ、それに加え突起部に遮光層としての機能を付加することで、自画素から隣接画素へ出射される斜め出射光を遮断することができる。すなわち、画素に隣接するように、充填材の中に立設される突起部を設けることで、隣接あるいは近接する画素間で生じ得る色混合を無くし、画質を向上させることができる。
【0026】
本発明の一実施形態のエレクトロルミネセンス装置の製造方法によれば、遮光層と重なるように設けられた突起部を、充填材の中に立設するように設ける場合であっても、突起部が充填材の流動を阻害しないため、素子基板とカラーフィルタ基板の間隙部に空洞を生じさせずに製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
なお、以下に説明する発明の内容について、同一部分または同様な機能を有する部分については同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その場合において特段の事情が無い限り繰り返しの説明は省略する。
【0030】
<エレクトロルミネセンス装置の概要>
図1は、本実施の形態に係るエレクトロルミネセンス装置の概略図を示し、同図中に一点鎖線で示すA−B線に対応する断面構造を
図2で示す。本実施の形態のエレクトロルミネセンス装置の概要に係る以下の説明では、
図1と
図2を参照する。
【0031】
エレクトロルミネセンス装置100は素子基板102とカラーフィルタ基板104とを有し、この両基板が間隙をもって対向配置されている。素子基板102とカラーフィルタ基板104はシール材112によって固着され、間隙部には充填材114が設けられている。
【0032】
エレクトロルミネセンス装置100は、複数の画素108が配列した画素領域106を有している。シール材112は画素領域106を囲むように設けられており、閉ループを形成するように一つの閉じたパターンを有している。画素108は、素子基板102に設けられる発光素子126と、該発光素子126に対応してカラーフィルタ基板104側に設けられるカラーフィルタ層132を含んで構成されている。
【0033】
発光素子126は、絶縁性の表面(
図2においては、絶縁層116の上面)に設けられた第1の電極118と、この第1の電極118上の有機EL層122および第2の電極を含んで構成されている。有機EL層122は、一層または複数の層を積層して形成されるが、少なくとも発光性の材料を含む発光層とみなせる層を有している。本実施の形態における発光素子126は、第1の電極118を反射電極とし、第2の電極124を透光性の電極で構成されるものであり、有機EL層122で発光した光はカラーフィルタ基板104側から出射される、所謂トップエミッション型の構成を有している。
【0034】
複数の画素108は離間して配置されており、画素間には隔壁層120が設けられている。隔壁層120は、第1の電極118の周縁部を覆うように設けられている。そして、素子基板102においては、第2の電極128上にパッシベーション層128が設けられている。
【0035】
カラーフィルタ基板104は、カラーフィルタ層132を有している。カラーフィルタ層132は、各画素において、赤色カラーフィルタ、緑色カラーフィルタ、青色カラーフィルタのように、透過光帯域の異なるものが配置されている。
【0036】
カラーフィルタ層132は、各色に対応して、特定の波長帯域の光を透過する特性を有する着色層を有する。発光素子126から出射される光が白色光である場合には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素に対応して透過特性の異なるカラーフィルタ層を通過させることでカラー表示を行うことができる。また、画素108が、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応して発光する発光素子を配列させたものである場合には、その発光色の波長帯域に対応したカラーフィルタ層を組み合わせることで、出射光の色純度を高めることができる。
【0037】
カラーフィルタ層132において、透過光帯域が異なるカラーフィルタ層が隣接する境界領域には、遮光層130が設けられている。換言すれば、遮光層130は、画素領域106において、画素間の間隙部、すなわち隔壁層120と重なるように設けられている。
図2において、遮光層130はカラーフィルタ基板104の支持基板側に接して設けられる態様を示しているが、このような態様に変えて遮光層130をカラーフィルタ層132の上層側に設けてもよい。
【0038】
また、透過光帯域の異なるカラーフィルタ層を複数層重ねることで、この重畳領域は、透過光の波長帯域が狭くなり、着色層によって透過光強度は減衰するので、実質的に遮光層と同じ作用を奏するものとなる。したがって、遮光層130に代えて、透過光帯域が異なる複数のカラーフィルタ層を重ねた構成を適用して、これを遮光層とみなすこともできる。
【0039】
カラーフィルタ基板104には、少なくともカラーフィルタ層132が設けられるが、カラーフィルタ層132を覆うように、さらにオーバーコート層134を設けてもよい。オーバーコート層134はカラーフィルタ層132を保護し、表面を平坦化する機能を有している。
【0040】
素子基板102とカラーフィルタ基板104との間には突起部110が設けられている。突起部110は充填材114の中に立設するように設けられている。突起部110は、画素と画素の間、すなわち、遮光層130と重なる領域に設けられている。突起部110は、画素108の少なくとも一辺に沿うように設けられているが、画素単位で短く分割されている。
図1では、突起部110が画素108の長手方向の一辺に沿って設けられている態様を示している。そして突起部110の長手方向の端部は、先端部に行くに従って先細るような、錐形状の形態を有している。
【0041】
突起部110は、素子基板102とカラーフィルタ基板104の間に設けられることで、この両基板の間隔を一定に保つスペーサとしての機能を有している。突起部110を画素間であって、遮光層130と重なる領域に設けることで、画素108若しくは画素領域106の開口率を低下させることなく、スペーサとして有効利用することができる。
【0042】
絶縁層116は、第1の電極118と接する面において、絶縁性の表面を有している。絶縁層116は単層または複数の絶縁層116が積層された構成を有している。絶縁層116が複数の層で構成される場合、薄膜トランジスタがその中に埋設されていてもよい。そして、素子基板102の端部に信号を入力する端子部140を設け、薄膜トランジスタによって画素108における発光素子126の発光を制御する回路を備えるようにしてもよい。
【0043】
図1では、画素領域106に薄膜トランジスタによって画素回路が形成される場合において、走査線駆動回路136、データ線駆動回路138が画素領域106に隣接して設けられる態様を示している。走査線駆動回路136およびデータ線駆動回路138を構成する薄膜トランジスタは、画素108に設けられる薄膜トランジスタと同様に、絶縁層116の中に埋設されるように設けることができる。もっとも本実施の形態において、走査線駆動回路136、データ線駆動回路138などは付随する構成要素であり、必須のものとする必要はない。
【0044】
<エレクトロルミネセンス装置の製造方法について>
エレクトロルミネセンス装置100の製造工程のうち、素子基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせる工程について
図3および
図5を参照して説明する。
【0045】
図3を参照して、素子基板102の製造工程の概略を説明する。
図3において、(A)は素子基板の平面図であり、(B)は平面図において一点鎖線で示すA−B線に対応する断面構造を示す。
【0046】
素子基板102における工程の一つとして、絶縁層116上に複数の第1の電極118を形成する。第1の電極118は所定の間隔をもって配置されるように形成する。そして、第1の電極118の周縁部を覆うように隔壁層120を形成する。隔壁層120は絶縁性の材料によって形成し、第1の電極118と接する下端部から上端角部にかけてはなだらかな曲面形状を有するように形成することが好ましい。
【0047】
第1の電極118の上層には有機EL層122を形成する。有機EL層122上に第2の電極124を形成する。第1の電極118、有機EL層122および第2の電極124が重畳する領域が発光素子126となる。有機EL層122は100nm乃至300nm程度の厚さで形成される。有機EL層122をこのような厚さで形成しても、隔壁層120を上記のようになだらなか曲面形状を有するように形成しておくことで、有機EL層122を第1の電極118から隔壁層120の表面において連続的に、均一に形成することができる。
【0048】
複数個に分離して形成される第1の電極118に対して、有機EL層122、第2の電極124を略全面に形成することにより、各画素における発光素子126は同時に形成される。発光素子126における第2の電極124は、画素108のそれぞれにおいて共通の電位が与えられるので、複数の画素に渡って連続的に形成される。
【0049】
有機EL層122は水分によって劣化が進むとされるため、第2の電極124上にはパッシベーション層128を形成することが好ましい。パッシベーション層128は、窒化ケイ素膜や酸化ケイ素膜などの透光性絶縁膜で形成することが好ましい。
【0050】
次に、
図4を参照して、カラーフィルタ基板104の製造工程の概略を説明する。
図4において、(A)はカラーフィルタ基板の平面図であり、(B)は平面図において一点鎖線で示すA−B線に対応する断面構造を示す。
【0051】
カラーフィルタ基板104には、遮光層130を形成する。遮光層130は、クロム(Cr)やチタン(Ti)、タンタル(Ta)などの比較的反射率の低い金属膜で形成する。または、カーボンブラックなどの黒色の顔料などを含む樹脂材料で形成してもよい。カラーフィルタ層132は、赤(R)、緑(G)、青(B)などに対応した着色層を、素子基板102に配列される各画素に対応するように形成する。
【0052】
遮光層130は、カラーフィルタ層132において、異なる色の着色層の境界領域と重なるように設けられている。すなわち、遮光層130を、各画素を区画するように設けることで、発光素子から出射される光の横方向への拡散がある程度制限されるので、画素間の混色防止に対して一定の機能を発現する。
【0053】
カラーフィルタ層132上にはオーバーコート層134を設ける。オーバーコート層134は、アクリルなどによる、透光性の有機樹脂組成物を用いて形成する。オーバーコート層134は、カラーフィルタ層132を保護すると共に、カラーフィルタ基板104の表面を平滑化する機能も有している。
【0054】
オーバーコート層134上に突起部110を形成する。突起部110は遮光層130と重なる位置に形成する。突起部110は、光硬化性の有機樹脂組成物をオーバーコート層134上に塗布した後、フォトマスクを使って露光し、
図4(A)で示すように遮光層130と重なる位置に、所定の形態をもって形成する。
【0055】
突起部110の形態は、画素領域において、一本の線状に形成するのではなく、画素の配列に対応して複数に分割し、例えば各画素に隣接するように破線状に形成することが好ましい。すなわち画素単位で短く形成し、画素が配列する間隔に対応して、突起部110も同等の間隔をもって配置させることが好ましい。そして、突起部110の長手方向の端部は、先端に行くに従って先細るように、錐形状若しくは流線型状となるように形成する。このような形態で突起部110を形成することで、充填材を塗布したときに、充填材の流動を阻害しないようにすることができる。
【0056】
また突起部110は、素子基板102とカラーフィルタ基板104とを貼り合わせたときに、この両基板の間隔を一定に保つスペーサとしての機能も有している。このため、突起部110の高さは、素子基板102とカラーフィルタ基板104の間隔と同等となるようにすることが好ましい。
【0057】
オーバーコート層134の上にシール材112を形成する。シール材112は、カラーフィルタ基板104と素子基板102と貼り合わせるとき、素子基板102に形成された画素領域106を囲むように閉ループのパターンで形成する。シール剤112は、光硬化性であり接着性のある有機樹脂組成物を用いること好ましいが、これに代えて熱硬化性の有機樹脂組成物を用いてもよい。いずれにしても、シール材112は、描画した段階では完全に硬化せず、未硬化の状態で維持される。
【0058】
シール材112はディスペンサによって、開口部を持たないループ形状を有するように塗布する。例えば、シール材112は紫外線硬化樹脂材料で形成し、ディスペンサで塗布するときは窒素雰囲気中で行うことが好ましい。充填材114はループ状に形成されたシール材112の内側領域に滴下若しくは塗布する。充填材114は、素子基板102とカラーフィルタ基板104とを、間隙をもって貼り合わせたとき、当該間隙部に空洞がなく充満するように必要量滴下する。
【0059】
充填材114としては、エポキシ系材料、アクリル系材料などの樹脂材料を用いることができる。例えば、充填材114として、例えばゲル状乾燥剤を付加した樹脂材料を用いることもできる。このような有機樹脂組成物が適用される充填材114は比較的粘度が高いので、カラーフィルタ基板104の複数箇所に滴下することが好ましい。充填材114をカラーフィルタ基板104に滴下若しくは塗布するときは、素子基板102とカラーフィルタ基板104の封止後において、湿気をもった空気が残存しないように窒素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0060】
充填材114を塗布したカラーフィルタ基板104は窒素雰囲気中に保持されているが、次に、この雰囲気を減圧して充填材114に含まれる気泡などを除去する。このとき、充填材114が減圧下に置かれることによって、充填材114に含まれる溶媒も除去される。
【0061】
図5は、このように製造された素子基板102とカラーフィルタ基板104を貼り合わせる工程を示す。素子基板102とカラーフィルタ基板104の貼り合わせは減圧下で行われる。この場合において、充填材114は粘度が高く流動性が低いため、素子基板102とカラーフィルタ基板104の間隙部を充満しない空洞部が残存する場合がある。
【0062】
しかし、素子基板102とカラーフィルタ基板104を貼り合わせた状態で、減圧下から大気圧に戻すと、素子基板102とカラーフィルタ基板104は大気圧によって押される。それによって、
図2で示したように内部の空洞部が消失し、素子基板102とカラーフィルタ基板104の間に充填材114を充満させることができる。そして、この状態でシール材112を硬化して、素子基板102とカラーフィルタ基板104とを固着させる。
【0063】
この場合において、素子基板102とカラーフィルタ基板104が大気圧によって押されたとしても、突起部110がスペーサとして機能するので、画素領域106において両基板の間隔を一定に保つことができる。すなわち、画素領域106の周縁部と中央部において一定の間隔を保持することができ、所謂ギャップむらを生じないようにすることができる。
【0064】
さらに、突起部110を、充填材114の流動を阻害しない形態とすることで、素子基板102とカラーフィルタ基板104とを貼り合わせた場合にも、両基板の間隙部に気泡若しくは空洞部が残存しないようにすることができる。
【0065】
<画素領域の構成について>
図6は、カラーフィルタ基板104側からみた画素領域106の態様を示す。
図6(A)は、赤(R)、緑(G)、青(B)などの各色の画素108(R画素108r、G画素108g、B画素108b)がダイアゴナルに配列した画素領域106の一例を示す。
【0066】
各画素は近接して配置されるが、例えば、画素108gと画素108rとは互いに離間するように間隔を持って配置されている。そして、離間して配置される画素の間を覆うように遮光層130が設けられている。遮光層130が設けられる領域には、突起部110が画素108の一辺に沿うように設けられている。
【0067】
突起部110の形状は、長手方向の端部が先端に行くに従って先細るような錐形とされている。これは、充填材の中に立設するように設ける際に、充填材の流動性を阻害しないためである。そのため突起部110の形態は流体抵抗が小さくなるように、先端部が流線型としてもよい。
【0068】
このような突起部110の形状に加え、突起部110の配列は、
図6(A)で示すように、画素108に対応して複数に分割され、その長手方向がそれぞれの画素間で一方向に配列するように整列配置することが好ましい。このように一方向に整列させることで、充填材を滴下若しくは塗布し、素子基板とカラーフィルタ基板を貼り合わせるときに、充填材の流動を阻害しないようにすることができる。
【0069】
遮光層130は隣接する画素間で色混合が起こらないように、ある画素から出射される光が、隣接する画素へ漏れ出ないように遮光する機能を有している。この場合、遮光層130と重ねて設けられる突起部110も遮光性を有するような材質または構造を適用することで、遮光の効果をより高めることができる。
【0070】
突起部110を、遮光性を有するものとする場合、単なる柱状ではなく、画素の少なくとも一辺に沿って壁面を形成するように設けることで、例えば画素108gと、それに隣接する画素108r、および画素108bとの間における混色を防ぐことができる。
【0071】
なお、
図6(A)では、突起部110が画素108の一辺に沿うように設けられた態様を示すが、充填材114の流動性を阻害しない態様であれば、同図に示すものと異なる配置を有していてもよい。例えば、
図6(B)で示すように、画素108の周囲を囲むように突起部110を設けてもよい。この場合、突起部110が画素108の全周を囲んでしまうのではなく、充填材の流動を阻害しないように、少なくとも一部に開放端を有するようにすることが好ましい。
【0072】
図6(B)において、突起部110を遮光性の部材で形成すると、画素108を囲む面積が増えるので、画素間における色混合の発生をより低減することができる。
【0073】
図7は、各色の画素108(R画素108r、G画素108g、B画素108b)のカラーフィルタ層がストライプ状に設けられるときの画素領域106の態様を示す。この場合、同じ列方向には同じ色のカラーフィルタ層が設けられるので、突起部110は、それぞれの色の画素に沿って設けることで、画素間における色混合の問題を解消することができる。
【0074】
図6(A)、(B)および
図7において、画素領域106の中には白色の画素108wが含まれていてもよい。白色の画素108wが含まれている場合であっても、画素間の混色の問題は生じ得るので、突起部110を設けることで混色の影響を低減しつつ、コントラストをより高めることができる。
【0075】
なお、図示はしていないが、突起部110は、デルタ配列やペンタイル配列する画素においても同様に適用することができる。本実施の形態に係るエレクトロルミネセンス装置は、画素間に突起部が設けられる態様は、画素の配列に関わらず適用可能であるため、以下の説明する画素の詳細については、上記した配列を有する画素領域を含め、それ以外の配列を有するものについても適用でき得るものとして説明する。
【0076】
図8は、
図6において一点鎖線で示すA−B線に対応する断面構造を示す。画素領域106は、発光素子126が形成された素子基板102と、カラーフィルタ層132が設けられたカラーフィルタ基板104とが間隙をもって対向するように設けられている。素子基板102とカラーフィルタ基板104との間隙部には充填材114が設けられている。充填材114は、素子基板102とカラーフィルタ基板104とを固着すると共に、発光素子126を封止するために設けられている。
【0077】
発光素子126は、第1の電極118、有機EL層122および第2の電極124が重なる領域に形成される。発光素子126は、第1の電極118と第2の電極124の一方が陽極(正孔を注入する側の電極)となり、他方が陰極(電子を注入する側の電極)としての機能を有する。陽極と陰極は各種導電性材料で形成されるが、通常は陰極に対して陽極の方が仕事関数の高い材料で形成される。
【0078】
本実施の形態で示すエレクトロルミネセンス装置は、カラーフィルタ基板104側から光が出射されるトップエミッション型であるため、第1の電極118は反射電極となる。第1の電極118を陽極とするには、例えばチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、タングステン(W)などの金属材料を適用することが好ましい。これらの金属は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)と比較して反射率が低いため、反射電極としてより反射率を高める構成として、有機EL層122と接する側に仕事関数の高いインジウム・スズ酸化物(ITO)の層を設け、その下層側に光反射面となるアルミニウム(Al)や銀(Ag)の層を設けた多層構造を適用すると好ましい。
【0079】
第2の電極124は透光性を有し、これを陰極とするには、例えばアルミニウム(Al)に、カルシウム(Ca)またはマグネシウム(Mg)を、あるいはリチウム(Li)等のアルカリ金属を含有する材料を用い、透光性を有するように薄く形成する。さらにその上にインジウム・スズ酸化物(ITO)や、インジウム。ズス・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電膜を積層させても良い。
【0080】
一方、第1の電極118を陰極とするには、上記の如くアルミニウム系または銀(Ag)系の金属材料を用いればよい。また、第2の電極124を陽極とするには、インジウム・スズ酸化物(ITO)や、インジウム・スズ・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電膜を用いればよい。
【0081】
有機EL層122は、低分子系または高分子系のいずれの有機材料で形成されていてもよい。例えば低分子系の有機材料を用いる場合には、発光性の有機材料を含む発光層に加え、該発光層を挟むように正孔輸送層や電子輸送層等を含んで構成される。発光素子120において白色光を出射するには、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する発光層または発光素子を積層した構造とするか、青(B)色と黄色(Y)を発光する発光層または発光素子を積層した構造とすればよい。
【0082】
カラーフィルタ基板104のカラーフィルタ層132は、画素の各色に対応して透過光波長帯域が異なる複数の層が含まれている(例えば、
図8で示すように、赤(R)カラーフィルタ層126r、緑(G)カラーフィルタ層126g、青(B)カラーフィルタ層126b)。カラーフィルタ層132は顔料または染料を含む有機樹脂材料で3μm程度の厚さで形成される。遮光層130は、異なる色のカラーフィルタ層が隣接する部分において、その境界領域と重なるように設けられている。遮光層130はクロム(Cr)やチタン(Ti)、タンタル(Ta)などの金属で光が透過しない程度の厚さ形成される。
【0083】
カラーフィルタ層132上にはアクリルなどの光透過性の有機樹脂材料でオーバーコート層134が設けられている。発光素子126の有機EL層122で発生した光は、立体角で表すと4πの全ての方向へ放射される。この放射される光の成分のうち、カラーフィルタ基板104へ向かって略垂直方向へそのまま放射される光と、第1の電極118で反射されてカラーフィルタ基板104方向へ出射される光は、その画素の出射光として利用される(図中で示す経路aの光成分)。
【0084】
一方、有機EL層122から斜め方向へ出射される光のうち、垂直方向を基準として角度の浅い斜め出射光(
図8においてθ1で示す出射光成分)は、遮光層130で遮断される(図中で示す経路bの光成分)。また、斜め方向へ放射される光のうち、垂直方向に対して角度の大きい斜め出射光(
図8においてθ1で示す出射光成分)は、遮光層130で遮断されず、隣接画素へ漏れ出る光となる(図中で示す経路cの光成分)。
【0085】
しかしながら、本実施の形態で示す画素の構成は、遮光層130と重なる領域に、突起部110が設けられているため、隣接画素108へ漏れ出る光を遮断することができる。例えば、突起部110を、カーボンブラックのような顔料を含んだ光吸収性の材料で形成すると、この斜め方向へ放射される光を突起部110で吸収することができる。突起部110に光吸収性の特性を持たせる場合、この特性を入射光の減衰率で表すと、光学濃度(OD値)として1以上、好ましくは2以上の値を有するようにするとよい。突起部110がこのような特性を有することで、斜め方向へ出射される光を、隣接画素の放射光と色混合が起きない程度にまで減衰させることができる。また、突起部110の表面に反射率の低い、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)などの薄膜を形成して遮光性を有するようにしてもよい。
【0086】
別の好ましい形態として、
図9に示すように、有機EL層122から斜め方向へ出射される光を突起部110で反射するようにしてもよい。例えば、充填材114の屈折率に対して、突起部110の屈折率を小さくすることによって、斜め方向から入射される放射光のうち、全反射角で入射する光を突起部110で反射させることができる。あるいは、突起部110の表面にアルミニウム(Al)、銀(Ag)などの反射率の高い金属の被膜を形成して、斜め方向に放射される光を反射するようにしてもよい。若しくは、金属被膜の表面を梨地状にして、光を散乱させるようにしてもよい。このように突起部110を光反射性とすることによっても、隣接画素へ漏れ出る光を防ぎ、色混合による画質の低下を抑制することができる。
【0087】
以上のように、本実施形態で示すエレクトロルミネセンス装置によれば、遮光層と重なるように設けられた突起部は、素子基板とカラーフィルタ基板との間隔を一定に保つスペーサとしての機能を有すると共に、自画素から隣接画素へ出射される斜め出射光を遮断することができる。すなわち、画素に隣接するように、充填材の中に立設される突起部を設けることで、隣接あるいは近接する画素間で生じ得る色混合による画質の低下を抑制することができる。
【0088】
<変形例>
図10で示すように、突起部110はカラーフィルタ基板104と素子基板102に形成される構造物(例えば、オーバーコート層134、パッシベーション層128)の両方に接している必要はなく、どちらか一方に接するように設けてもよい。
【0089】
図10では、突起部110がカラーフィルタ基板104のオーバーコート層134に接して設けられ、素子基板102とは直接接していない構成を示す。このような構成にすることによっても、上述したように画素間で生じる色混合を防止することができる。また、突起部110が障害物となるため、突起部110の高さ以上にギャップ間隔が縮まることを防ぐことができる。
【0090】
また、素子基板102およびカラーフィルタ基板104の基板部分を可撓性のある素材で形成し、湾曲させることが可能なエレクトロルミネセンス装置とする場にも、突起部110の一端が自由端となることで、その柔軟性を確保することができる。