特許第6275473号(P6275473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275473
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/42 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A61F13/42 F
   A61F13/42 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-264439(P2013-264439)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-119784(P2015-119784A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年9月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一男
(72)【発明者】
【氏名】御所脇 秀子
(72)【発明者】
【氏名】金田 高之
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039158(JP,A)
【文献】 特開平10−295726(JP,A)
【文献】 特開2003−111797(JP,A)
【文献】 特開平10−66682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極群間のインピーダンス変化に基づいて体液の広がりを検知する着用物品であって、
前記電極群は、前記着用物品を構成する複数のシートの内の1枚のシート表面に形成され、体液が広がったときに相互に絶縁された状態を維持するとともに相互に導線を介して接続された少なくとも2つの電極からなり、
前記電極は、前記1枚のシートに、導電材料を塗布して形成されており、
前記電極群は、前記1枚のシートの腹側領域において加速度センサーを備えた電子機器であるデータ収集手段を固定して接続するための端子にそれぞれ接続されており、該端子は、金属製のスナップである着用物品。
【請求項2】
前記導線は、前記1枚のシートに、導電材料を塗布して形成されており、該導線に前記金属製のスナップが取り付けられている請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前記電極の導電材料と前記導線の導電材料とが同一である請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記導電材料は、カーボン粉末を主成分とする請求項1〜3の何れか1項に記載の着用物品。
【請求項5】
前記着用物品は、液透過性の表面シート、液難透過性の裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を有する吸収性本体を備え、
前記1枚のシートは、前記裏面シートであり、
前記電極は、前記裏面シートの非肌対向面に形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の着用物品。
【請求項6】
前記着用物品は、液透過性の表面シート、液難透過性の裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を含む吸収性本体を有する吸収性物品を備え、
前記1枚のシートは、前記裏面シートよりも非肌対向面側に配される別シートであり、
前記電極は、該別シートの一面に形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の着用物品。
【請求項7】
前記着用物品は、前記吸収性本体を有する吸収性物品を備え、
前記別シートは、前記吸収性物品の前記裏面シートよりも非肌対向面側に配される該吸収性物品とは別体のシートである請求項6に記載の着用物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、尿とりパッドであり、
前記別シートは、前記尿とりパッドの非肌対向面側に配される使い捨ておむつの構成シート、或いは該使い捨ておむつと前記尿とりパッドとの間に配される別個独立したシートである請求項6又は7に記載の着用物品。
【請求項9】
前記導線は、シート表面に形成された下部絶縁層の範囲内に塗布された前記導電材料からなり、該導線を覆うように上部絶縁層が形成されている請求項1〜8の何れか1項に記載の着用物品。
【請求項10】
前記電極は、シートの表面に形成された下部絶縁層の範囲内に塗布された前記導電材料からなり、該導電材料を覆うように上部絶縁層が形成されている請求項1〜9の何れか1項に記載の着用物品。
【請求項11】
前記上部絶縁層および下部絶縁層は、絶縁性インクからなる請求項9又は10に記載の着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成人用又は乳幼児用の着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排尿等を検知するセンサーを備え、例えば介護者が被介護者の排尿の有無を検知可能な成人用の使い捨ておむつが知られている(特許文献1,2)。特許文献1に記載の使い捨ておむつは、一対の電極が、導電性を有する糊をインクとしてグラビア印刷により形成された水分センサーを備えている。また、特許文献2に記載の使い捨ておむつは、複数の電極を列置した電極列を複数列備え、複数の電極間のインピーダンス変化に基づいて排尿を検知する検知装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-223386号公報
【特許文献2】特開2013-39158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の使い捨ておむつは、一対の電極が導電性を有する糊をインクとして、シートに印刷を施すことにより形成されているので、柔らかく、また、耐腐食性に優れ、電極表面に防錆処理が不要なため、導電性が妨げられ難く、確実な排尿検出が期待できる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の使い捨ておむつの備える水分センサーは、排尿の有無だけを検知するセンサーであり、排尿量等を高精度に測定するセンサーではなかった。
【0006】
それに対し、特許文献2に記載の使い捨ておむつの備える検知装置は、排尿量等を高精度に測定することができ、尿の広がりも検知できる。しかし、特許文献2には、検知装置の備える複数の電極として絶縁体であるフィルム表面に電極を配置したものの記載はあるが、電極についてはどのような材料で、どのようにして形成されているかについて具体的に記載されていない。
【0007】
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の電極群間のインピーダンス変化に基づいて尿等の体液の広がりを検知する着用物品であって、前記電極群は、前記着用物品を構成する複数のシートの内の1枚のシート表面に形成され、体液が広がったときに相互に絶縁された状態を維持するとともに相互に導線を介して接続された少なくとも2つの電極からなり、前記電極は、前記1枚のシートに、導電材料を塗布して形成されている着用物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通気性が妨げられず、柔らかく、体液の広がりを高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である着用物品の斜視図である。
図2図2は、図1に示す着用物品を伸長させ尿とりパッドを除いて別シートを露わにした状態を肌対向面側から見た一部破断平面図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、図3に示す別シートの拡大断面図である。
図5図5は、データ収集手段の詳細な構成例を示すブロック図である。
図6図6は、情報処理手段の詳細な構成例を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態である着用物品の斜視図である。
図8図8は、図7に示す着用物品を伸長させた状態を非肌対向面側から見た一部破断平面図である。
図9図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の着用物品を、その好ましい第1実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の着用物品は、電極間のインピーダンス変化に基づいて体液の広がりを検知するものである。本発明の好ましい第1実施形態の着用物品100A(以下、「着用物品100A」ともいう。)は、図1に示すように、縦長の吸収体4を有する吸収性本体5を備えた尿とりパッド10(吸収性物品)と、尿とりパッド10の非肌対向面側に配される使い捨ておむつ30と、使い捨ておむつ30と尿とりパッド10との間に配される別個独立した別シート20とを備えている。
【0012】
図1に示すように、着用物品100Aは、腹側領域A、背側領域B及び股下領域Cに区分できる。ここで、腹側領域Aは装着時に装着者の腹側に位置する部位であり、背側領域Bは装着時に装着者の背側に位置する部位であり、股下領域Cは腹側領域Aと背側領域Bとの間に配される部位である。
図に示す「Y方向」は、腹側領域Aから背側領域Bへ、或いは背側領域Bから腹側領域Aへ延びる方向であり、尿とりパッド10、別シート20又は使い捨ておむつ30の長手方向と同じ方向でもある。また図に示す「X方向」は、Y方向に直交する方向であり、尿とりパッド10、別シート20又は使い捨ておむつ30の幅方向と同じ方向でもある。また図に示す「Z方向」は、尿とりパッド10、別シート20又は使い捨ておむつ30の厚みと同じ方向でもある。
また、本明細書において、「肌対向面」とは、例えば尿とりパッド10を構成する後述する表面シート2などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、「非肌対向面」とは、例えば尿とりパッド10を構成する後述する表面シート2などの各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
さらにまた、図に示す線CLは、尿とりパッド10、別シート20又は使い捨ておむつ30の長手方向(Y方向)に延びる中心線である。
【0013】
第1実施形態の着用物品100Aの尿とりパッド10は、肌対向面側に配された液透過性の表面シート2と、非肌対向面側に配された液難透過性の裏面シート3と、これら両シート2,3間に配された吸収体4とを有する縦長の吸収性本体5を備えている。尿とりパッド10について詳述すると、表面シート2、裏面シート3及び吸収体4は、図1図3に示すように、吸収性本体5の長手方向(Y方向)に長い長方形状を有している。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4の長手方向(Y方向)に沿う左右両側縁及び長手方向(Y方向)の前後両端縁から外方に延出している。表面シート2は、図1に示すように、その長手方向(Y方向)の寸法が、裏面シート3の長手方向(Y方向)の寸法と同じであるが、図3に示すように、その幅方向(X方向)の寸法が、裏面シート3の幅方向(X方向)の寸法より小さくなっている。表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4の周縁から外方に延出した延出部において直接的に又は他の部材(尿とりパッド10においては後述する立体ギャザー6を形成するサイドシート61)を介在させ、接着剤又は熱融着等によって互いに接合されており、吸収体4を挟持・固定している。尚、吸収体4は、図3に示すように、パルプ繊維等の繊維の集合体に吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コア41を、1枚のコアラップシート42で被覆して形成されている。
【0014】
また、第1実施形態の着用物品100Aの尿とりパッド10では、図1図3に示すように、吸収性本体5の肌対向面5u側において、吸収性本体5の長手方向(Y方向)に沿う両側部5s,5sそれぞれに配設固定された撥水性のサイドシート61を備え、サイドシート61の自由端部61fには、吸収性本体5の長手方向(Y方向)に伸長状態の立体ギャザー形成用の弾性部材62が配設固定されており、着用時には、立体ギャザー形成用の弾性部材62の収縮力によって、サイドシート61の自由端部61fが起立して立体ギャザー6を形成する。言い換えれば、吸収性本体5の長手方向(Y方向)に沿う両側部5s,5sそれぞれには、吸収性本体5の肌対向面5u側、即ち、表面シート2の肌対向面2uにおいて、Y方向に伸長状態で固定された弾性部材62を有するサイドシート61が、表面シート2の両側部それぞれに、吸収性本体5の長手方向(Y方向)の全長に亘って配され固定されており、これによって一対の立体ギャザー6,6が形成される。尚、尿とりパッド10の吸収性本体5の長手方向(Y方向)に沿う両側部5s,5sそれぞれに、レッグギャザー形成用のレッグ弾性部材(不図示)を長手方向(Y方向)に伸長状態に配し、該レッグ弾性部材(不図示)の収縮によりレッグギャザーが形成されるようにしてもよい。
【0015】
第1実施形態の着用物品100Aの別シート20は、図1図3に示すように、尿とりパッド10の裏面シート3よりも非肌対向面側に配され、尿とりパッド10及び使い捨ておむつ30とは別体の独立したシートである。別シート20は、第1実施形態においては、長手方向(Y方向)に長い矩形状に形成されている。別シート20は、体液の広がりを検知する際には、少なくとも股下領域Cに亘って配されていることが好ましく、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、その外周縁が、尿とりパッド10の外周縁よりも狭く、かつ、尿とりパッド10の吸収体4の外周縁よりも狭く形成されている。詳述すると、別シート20は、長手方向(Y方向)においては、尿とりパッド10の吸収体4の長手方向(Y方向)の長さと略一致しており、幅方向(X方向)においては、尿とりパッド10の吸収体4の幅方向(X方向)の長さよりも短く形成されている。
【0016】
本発明の着用物品は、電極が、該着用物品を構成する複数のシートの内の1枚のシート表面に、体液が広がったときに相互に絶縁された状態を維持する少なくとも2つの区画において導電材料が塗布されることで形成され、結果として少なくとも2つの電極を形成している。各電極は、該1枚のシートに、導電材料を塗布して形成されており、相互にシート表面に配された導線(導電体)を介して接続された電極群を構成している。
第1実施形態の着用物品100Aにおいては、別シート20が、着用物品を構成する複数のシートの内の「1枚のシート」に該当する。詳述すると、電極群ETの各々は、体液の広がりを検知する際には、少なくとも股下領域Cに亘っており、X方向に広く2個〜32個形成されていることが好ましく、更に好ましくは2個〜8個形成されていることが好ましい。第1実施形態の着用物品100Aにおいては、別シート20の肌対向面20uに、図2に示すように、股下領域Cの全域から腹側領域A及び背側領域Bの一部に至るまで、4個の電極群ET1〜ET4が形成されている。電極群ET1〜ET4それぞれには、複数の電極21が配され、複数の電極21相互を接続する導電体である導線22が配されている。このように各電極群は、複数の電極21による列が形成されており、該電極の列が複数列(第1実施形態においては、4個の電極群ET1〜ET4に対応して4列)形成されることで、相互に絶縁された対となる電極とその間隙とで構成されるセンサー素子が別シート20の肌対向面20uの広い範囲で複数構成されている。尚、各センサー素子により、対となる電極間のインピーダンスの変化が検知される。センサー素子には、交流あるいは正か負一方の半波、矩形波、三角波等が印加されるので正確ではないが、以下では、便宜上、対となる電極の一方を正電極、他方を負電極と呼ぶ。
【0017】
電極21は、図2に示すように、別シート20の長手方向(Y方向)に2個〜50個配されていることが好ましく、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、8個配されている。Y方向に隣り合う電極21は、正電極、負電極、正電極・・・の順、或いは負電極、正電極、負電極・・・の順に配置されていて、7つのセンサー素子を構成している。また、電極21は、別シート20の幅方向(X方向)に1個〜16個配されていることが好ましく、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、2個配されている。このように配置されていることにより第1実施形態では、都合、14のセンサー素子が構成されていることになる。X方向に隣り合う電極21は、正電極に対して負電極、負電極に対して正電極の関係で配置されていてもよいが、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、正電極に対して正電極、負電極に対して負電極の関係で配置されている。そして、正か負一方の半波、矩形波、三角波等が印加される場合には、一方の電極が接地されていてもよい。
【0018】
詳述すると、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、4個の電極群ET1〜ET4それぞれに、4個の電極21が配されている。4個の電極群ET1〜ET4それぞれの複数の電極21は、同形の矩形状に形成されており、同じ大きさに形成されている。電極群ET1〜ET4は、別シート20の幅方向(X方向)に配されている。電極群ET1の4個の電極21aは、正電極であり、股下領域Cの全域から腹側領域A及び背側領域Bの一部に至るまで、別シート20の長手方向(Y方向)に、等間隔を開けて配置されている。そして、電極群ET1の4個の電極21aは、各電極21aよりも幅方向(X方向)外側に配された直線状の導線22aを介して接続されている。また、電極群ET2の4個の電極21bは、負電極であり、股下領域Cの全域から腹側領域A及び背側領域Bの一部に至るまで、別シート20の幅方向(X方向)においては、電極群ET1と同じ位置にて、長手方向(Y方向)においては、隣り合う電極群ET1の電極21a,21aどうしの間に配置されている。そして、電極群ET2の4個の電極21bは、各電極21bよりも幅方向(X方向)内側(中心線CL寄り)に配された直線状の導線22bを介して接続されている。
【0019】
電極群ET3の4個の電極21cは、正電極であり、股下領域Cの全域から腹側領域A及び背側領域Bの一部に至るまで、別シート20の幅方向(X方向)においては、電極群ET1から間隔を空けて、長手方向(Y方向)に、等間隔を開けて配置されている。そして、電極群ET3の4個の電極21cは、各電極21cよりも幅方向(X方向)外側に配された直線状の導線22cを介して接続されている。また、電極群ET4の4個の電極21dは、負電極であり、股下領域Cの全域から腹側領域A及び背側領域Bの一部に至るまで、別シート20の幅方向(X方向)においては、電極群ET3と同じ位置にて、長手方向(Y方向)においては、隣り合う電極群ET3の電極21c,21cどうしの間に配置されている。そして、電極群ET4の4個の電極21dは、各電極21dよりも幅方向(X方向)内側(中心線CL寄り)に配された直線状の導線22dを介して接続されている。
【0020】
電極群ET1の矩形状の電極21aは、Y方向の長さが1mm〜100mm程度であり、X方向の長さが3mm〜150mm程度である。他の電極群ET2〜4の電極21b〜21dについても同じである。
また、長手方向(Y方向)に隣り合う電極群ET1の電極21aと電極群ET2の電極21bとの間隔は1mm〜50mm程度である。
尚、各電極21の形状(デザイン)、大きさ、配置間隔は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0021】
電極群の各電極は、従来より着用物品に用いられている材質のシートに導電材料を塗布して形成されている。即ち、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、4個の電極群ET1〜ET4それぞれの電極が、別シート20の肌対向面20uに導電材料を塗布して形成されている。詳述すると、先ず、図2図4に示すように、Y方向に延びる矩形状の別シート20の肌対向面20uにおける、全電極を形成する予定領域よりも広い領域に、絶縁性インクを印刷により塗布して、Y方向に長い矩形状の下部絶縁層25を形成する。絶縁性インクとしては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0022】
次に、下部絶縁層25の肌対向面に、導電材料からなるインクを印刷により塗布して、電極21及び導線22を形成する。即ち、電極群ET1の4個の電極21a、電極群ET2の4個の電極21b、電極群ET3の4個の電極21c、及び電極群ET4の4個の電極21d、並びに電極群ET1の導線22a、電極群ET2の導線22b、電極群ET3の導線22c、及び電極群ET4の導線22dを下部絶縁層25の外周縁の範囲内に印刷する。インクの導電材料としては、カーボン粉末を主成分とするもの、或いは銀や銅等の金属の粉末を配合したものが挙げられ、価格(安価であること)や金属ではないが故の金属探知機や防犯ゲート等の誤作動防止の観点からカーボン粉末を主成分とするものが好ましく用いられる。導電材料からなるインクとしては、カーボンナノチューブ、分散剤、バインダ、樹脂、硬化剤等を混ぜた混合物が挙げられる。尚、電極21の導電材料と導線22の導電材料とは同一であるのが好ましいが、異なっていてもよい。異なる場合は、導電材料からなるインクを印刷により塗布して電極21を形成した後、異なる導電材料からなるインクを印刷により塗布して導線22を形成したり、導電材料からなるインクを印刷により塗布して導線22を形成した後、異なる導電材料からなるインクを印刷により塗布して電極21を形成したりすることで形成できる。導電材料が同一の場合でも同様に形成することができる。
【0023】
導電材料からなるインクを印刷により塗布して電極21を形成する際には、1回だけの印刷でもよいが、体液排出検出感度の観点から、複数回重ねて印刷してもよい。重ねて印刷する回数としては、1回〜10回が好ましい。
【0024】
次いで、各導線22を覆うように、各導線22の肌対向面に、絶縁性インクを印刷により塗布して、上部絶縁層26を形成する。上部絶縁層26の絶縁性インクとしては、下部絶縁層25の絶縁性インクと同じインクを用いることができる。第1実施形態の着用物品100Aにおいては、全電極21及び全導線22の非肌対向面に下部絶縁層25と、全導線22の肌対向面に上部絶縁層26とを配置している。
【0025】
また、各電極群は、電子機器に接続するための端子にそれぞれ接続されている。具体的には、電極群を有する別シート20の腹側領域Aにおいて、電極群ET1の電極21a、21a・・・を接続する導線22aと電極群ET3の電極21c、21c・・・を接続する導線22cとが端子23を介して連続している。すなわち、電極群ET1及び電極群ET3が端子23に接続されている。また、電極群を有する別シート20の腹側領域Aにおいて、電極群ET2の電極21b、21b・・・を接続する導線22b、22b・・・と電極群ET4の電極21d、21d・・・を接続する導線22dとは端子24を介して連続している。すなわち、電極群ET2及び電極群ET4が端子24に接続されている。端子23,24としては、金属製のコネクター又は導電性を有するスナップ、ファスナー、面ファスナー(マジックテープ(登録商標)等)、ねじ、フック、噛み込み式の留め具等の任意の協働する雌雄部材が挙げられ、第1実施形態の着用物品100Aにおいては、金属製のスナップが用いられている。この金属製のスナップを介して、電極群を有する別シート20の腹側領域Aには、電子機器であるデータ収集手段27が固定されるようになる。端子23又は24が雌雄部材でない場合には導電性を有する端子をクリップ、ステープラ、ひも、カニカン、ヒキワ等の留め金、導電性接着剤、導電性両面着テープ、熱、導電性繊維・糸等を用いて結ぶ、引っ掛ける、縫い付ける等の方法により接続することもできる。端子の位置は腹側に限定されるものではなく、別シート20上になくてもよい。
【0026】
インクを塗布する別シート20には、従来より着用物品に用いられている材質のものを用い、具体的には、スパンボンド,スパンレース,エアースルー等の不織布、織物,編み物等の布、プラスチック製のフィルム等が挙げられる。尚、別シート20として、スパンボンド不織布を用いる際には、その坪量が、好ましくは5g/m以上100g/m以下、更に好ましくは10g/m以上80g/m以下である。
【0027】
インクを塗布する印刷としては、インクジェットプリント、ロータリープリント、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
【0028】
以上のように、複数の電極群ET1〜ET4を有する別シート20は、インクを塗布して形成されているので、柔らかく形成されており、該シートのMD方向の曲げ剛性値が、好ましくは10g以上80g以下、更に好ましくは15g以上60g以下であり、該シートのCD方向の曲げ剛性値が、好ましくは5g以上60g以下、更に好ましくは10g以上40g以下である。曲げ剛性値は、ハンドロメーター、テーバーテスター、或いはKES曲げ試験機等によっても測定することができる。尚、MD方向とは、不織布等製造時の機械方向(流れ方向)、CD方向とは、不織布等製造時の機械方向に直交する方向を意味する。測定試料は、MD方向長さ17cm、CD方向8cmから9cmで測定した。
【0029】
また、複数の電極群ET1〜ET4を有する別シート20は、原料の別シート20が通気性を有している場合には、その通気度が、好ましくは10μm/Pa・s以上1500m/kPa・s以下であり、更に好ましくは20μm/Pa・s以上800m/kPa・s以下である。
通気度は、カトーテック製AUTOMATIC AIR−PERMEABILITY TESTER KES−F8−AP1(通気性試験機)により通気抵抗を測定し、その逆数として求められる。通気性の小さいものは、ガレーデンソーメーターの測定値より求めても良い。
【0030】
以上のようにインクを塗布して各々4個の電極21を有する4個の電極群ET1〜ET4が別シート20の肌対向面20uに形成されているので、複数のセンサー素子が別シート20の肌対向面20uに構成されるようになる。そして、各センサー素子により、電極群ET1の電極21a(正電極)と電極群ET2の電極21b(負電極)との間のインピーダンスの変化、電極群ET3の電極21c(正電極)と電極群ET4の電極21d(負電極)との間のインピーダンスの変化、電極群ET1の電極21a(正電極)と電極群ET4の電極21d(負電極)との間のインピーダンスの変化、及び電極群ET3の電極21c(正電極)と電極群ET2の電極21b(負電極)との間のインピーダンスの変化を測定し、該インピーダンスの変化に基づいて例えば尿等の体液の広がりを検知する。例えば尿等の体液の広がりは、別シート20に固定されたデータ収集手段27で収集されたデータを用いて情報処理手段28により算出される。以下、データ収集手段27及び情報処理手段28について詳述する。
【0031】
データ収集手段27は、図5に示すように、電圧制御手段271、加速度センサー272及びデータロガー273を備えている。
電圧制御手段271は、別シート20に形成された電極の回路全体に、例えば400kHz〜700kHzの矩形波の電圧を印加し、センサー素子を構成する電極21間のインピーダンス変化を検知する。そして、電圧制御手段271は、単位時間ごとの電極間のインピーダンス変化を電圧値の出力に変換し、データロガー273に単位時間毎に出力して保存する。単位時間は、0.1〜60秒が好ましく、0.2〜20秒がさらに好ましい。
【0032】
加速度センサー272は、使用者の変位によるX方向、Y方向、Z方向の加速度をそれぞれ検出(収集)し、検出結果をデータロガー273に出力して保存する。
【0033】
データロガー273は、電圧制御手段271及び加速度センサー272から取得したデータを保存する電子計測器である。データロガー273は、情報処理手段28からの要求に応じて、または、情報処理手段28に接続されたことを検知すると、保存しているデータを情報処理手段28に転送する。
【0034】
情報処理手段28は、例えば、コンピューターであって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を有しており、図6に示すように、データ取得手段281、体液排出量演算手段282、体液排出時刻演算手段283、及び体液排出速度演算手段284で構成されている。
【0035】
データ取得手段281は、データ収集手段27とケーブルを介して接続されると、データ収集手段27のデータロガー273に保存されているデータを取得し、体液排出量演算手段282、及び体液排出時刻演算手段283に供給し、それらの演算結果を体液排出速度演算手段284に供給する。
【0036】
体液排出量演算手段282は、データ取得手段281から取得したデータに基づいて、体液排出量を計算する。体液排出時刻演算手段283は、データ取得手段281から取得したデータに基づいて、体液排出時刻を計算する。体液排出速度演算手段284は体液排出量演算手段282から取得したデータと体液排出時刻演算手段283から取得したデータに基づいて、体液排出速度を計算する。
【0037】
以上のように構成された電極を有する別シート20、データ収集手段27及び情報処理手段28によれば、データ収集手段27で収集されたデータを取得し、情報処理手段28により体液の広がりの要素である体液排出量、体液排出時刻、及び体液排出速度を算出できる。
【0038】
次に、尿とりパッド10の非肌対向面側に重ねて配される使い捨ておむつ30について詳述する。
使い捨ておむつ30は、図1に示すように、尿とりパッド10が取り付けられるおむつの表面シート32と、最も非肌対向面側に配されたおむつの裏面シート33と、これら両シート32,33間に配されたおむつの吸収体34とを有している。また、使い捨ておむつ30は、おむつの吸収体34の幅方向(X方向)外方に、レッグギャザー形成用のおむつレッグ弾性部材(不図示)を長手方向(Y方向)に伸長状態に配し、該おむつレッグ弾性部材(不図示)の収縮によりおむつのレッグギャザー35が形成されている。
【0039】
おむつの吸収体34は、図1に示すように、例えば、使い捨ておむつ30の肌対向面(内側)に重ねて使用される尿とりパッド10よりも広く、腹側領域Aの左右両側縁及び背側領域Bの左右両側縁それぞれが股下領域Cの左右両側縁よりも幅方向(X方向)外方に延出している。そして、股下領域Cの左右両側縁が幅方向(X方向)内方に向かって円弧状に湾曲しており、全体として長手方向(Y方向)中央部が内方に括れた形状を有している。尚、おむつの吸収体34は、尿とりパッド10の吸収体4と同様に、パルプ繊維等の繊維の集合体に吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コアを、1枚のコアラップシートで被覆して形成されている。
【0040】
おむつの表面シート32及びおむつの裏面シート33は、それぞれ、おむつの吸収体34の長手方向(Y方向)に沿う左右両側縁及び長手方向(Y方向)の前後両端縁から外方に延出しており、おむつの吸収体34の周縁から外方に延出した延出部において直接的に接着剤又は熱融着等によって互いに接合されており、おむつの吸収体34を挟持・固定している。
【0041】
以上のように形成された使い捨ておむつ30は、図1に示すように、全体として長手方向(Y方向)中央部が内方に括れた形状を有している。使い捨ておむつ30は、いわゆる展開型のおむつであり、背側領域Bの左右両側縁部に二対のファスニングテープ36,36が設けられ、腹側領域Aの外表面(非肌対向面)に、該ファスニングテープ36,36を止着させるランディングテープ(不図示)が設けられている。
【0042】
第1実施形態の着用物品100Aの備える尿とりパッド10及び使い捨ておむつ30の形成材料について説明する。
尿とりパッド10の表面シート2及び使い捨ておむつ30のおむつの表面シート32、並びに尿とりパッド10の吸収体4及び使い捨ておむつ30のおむつの吸収体34としては、それぞれ、従来、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるもの等を、特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2及びおむつの表面シート32としては、親水性且つ液透過性の不織布や立体開孔フィルム等を用いることができる。また、吸収体4を構成する吸収性コア41及びおむつの吸収体34を構成する吸収性コアとしては、パルプ繊維等の繊維の集合体に吸収ポリマーの粒子を保持させたもの等を用いることができ、吸収体4を構成するコアラップシート42及びおむつの吸収体34を構成するコアラップシートとしては、親水性シート、例えば、透水性の薄紙(ティッシュペーパー)や透水性の不織布からなるコアラップシート等を用いることができる。尚、立体ギャザー6を構成する撥水性のサイドシート61としては、不織布、織物又は不織布とフィルムの積層シート等を用いることができる。
【0043】
また、尿とりパッド10の裏面シート3及び使い捨ておむつ30のおむつの裏面シート33としては、液難透過性(撥水性を含む)の樹脂フィルム、或いは該樹脂フィルムに、各種製法による不織布(例えば、エアースルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等)を積層したシート等を用いることができる。ここで、液難透過性とは、液不透過性を含む。液難透過性の裏面シートが吸収体4と電極との間にあるので、体液が広がったときも電極は相互に絶縁された状態を維持する。従来の直接体液と接することにより体液排出を検知する電極を有する電極群は、その性質上、尿とりパッドの裏面シートよりも肌対向面側の例えば吸収体内に配置せざるを得ず、該パッドごとに使い捨てる必要があったが、着用物品100Aの備える電極を有する別シート20は、電極が直接尿に接しなくても、電極からの電気力線は電極の面から吸収体の中を経由して他の電極に戻り、結果として体液による吸収体のインピーダンス変化を捉えることができるので、排尿を検知することができる。そのため電極を有する別シート20は、尿とりパッドの裏面シートよりも非肌対向面側に配することができ、体液で濡らし難く、衛生的に繰り返し使用が可能となる。
【0044】
また、尿とりパッド10及び使い捨ておむつ30を構成する部材同士は、接着剤或いは熱融着等を利用して固定することができる。接着剤としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、ホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等のブロックコポリマー系のホットメルト接着剤が挙げられる。熱融着としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、高周波シール、超音波シールを用いることができる。
【0045】
尿とりパッド10の立体ギャザー形成用の弾性部材62及び使い捨ておむつ30のレッグギャザー35形成用のおむつレッグ弾性部材(不図示)としては、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる糸状の伸縮性材料を用いることができる。
【0046】
上述した本発明の第1実施形態の着用物品100Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態の着用物品100Aは、図1に示すように、尿とりパッド10と使い捨ておむつ30との間に、電極群ET1〜ET4を有する別シート20を、電極群ET1〜ET4側が尿とりパッド10に接するように配置して使用される。このように配置されて使用されることにより、使い捨ておむつ30が電極群ET1〜ET4を有する別シート20及び尿取りパット10を押圧し、尿取りパット10が装着者に接触して、電極群ET1〜ET4を有する別シート20が、使い捨ておむつ30及び尿取りパット10の間で固定されるようになる。そして、着用物品100A内に、例えば排尿があって尿とりパッド10に体液が吸収されると、体液排出があった部位に対応する電極群ET1〜ET4を有する別シート20のセンサー素子のインピーダンスが大幅に変化する。即ち、体液排出が多量で広い範囲に広がると、電極群ET1〜ET4におけるかなりの数のセンサー素子のインピーダンスが大幅に変化する。そして、データ収集手段27の電圧制御手段271が、複数のセンサー素子のインピーダンスの変化の総量の電圧信号を出力し、情報処理手段28により体液の広がりの要素である体液排出量、体液排出時刻、及び体液排出速度を精度良く検知できる。
【0047】
また、第1実施形態の着用物品100Aは、複数の電極群ET1〜ET4を有する別シート20がインクを塗布して形成されているので、柔らかく形成されている。その為、尿とりパッド10と使い捨ておむつ30との間に、電極群ET1〜ET4を有する別シート20を配置して使用しても、違和感が少なく、使用感が向上する。
【0048】
また、第1実施形態の着用物品100Aは、複数の電極群ET1〜ET4を有する別シート20がインクを塗布して形成されているので、通気性が保持されている。その為、尿とりパッド10と使い捨ておむつ30との間に、電極群ET1〜ET4を有する別シート20を配置して使用しても、通気性が妨げられ難く、使用感が向上する。
【0049】
また、第1実施形態の着用物品100Aは、電極21及び導線22が別シート20に印刷によりインクを塗布して形成されているので、電極21及び導線22の形状、デザイン、色等を、自由に設計変更することができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態の着用物品100Bについて説明する。第2実施形態の着用物品100Bは、図7に示すように、尿とりパッド10及び別個独立した別シート20を有さず、使い捨ておむつ30のみで形成されている。第2実施形態の着用物品100Bについては、第1実施形態の着用物品100Aと異なる点について主として説明し、同様の点については同一の符号を付して説明を省略する。特に言及しない点については、第1実施形態の着用物品100Aに関する説明が適宜適用される。また、第2実施形態の着用物品100Bの効果については、第1実施形態の着用物品100Aの効果と異なる点について説明し、特に説明しない点は、着用物品100Aの効果と同様であり、着用物品100Aの効果の説明が適宜適用される。
【0051】
第2実施形態の着用物品100Bは、上述したように、図7に示すように、使い捨ておむつ30のみで形成されている。電極群が、着用物品100Bを構成する複数のシートの内の1枚のシート表面に導電材料を塗布して形成された複数の電極からなる。第2実施形態の着用物品100Bにおいては、図8に示すように、おむつの裏面シート33が、着用物品を構成する複数のシートの内の「1枚のシート」に該当する。詳述すると、第2実施形態の着用物品100Bにおいては、おむつの裏面シート33は、樹脂フィルム331に不織布332を積層したシートであり、4個の電極群ET1〜ET4がおむつの裏面シート33を構成する樹脂フィルム331の非肌対向面331dに形成されており、複数のセンサー素子がおむつの裏面シート33の樹脂フィルム331の非肌対向面331dに構成されるようになる。そして、おむつの裏面シート33の樹脂フィルム331の非肌対向面331dに形成された4個の電極群ET1〜ET4が不織布332で覆われている。
【0052】
電極群は、第2実施形態の着用物品100Bにおいては、4個の電極群ET1〜ET4それぞれが、樹脂フィルム331の非肌対向面331dに導電材料を塗布して形成された複数の電極からなる。詳述すると、第1実施形態の着用物品100Aのような下部絶縁層25を形成せずに、直接、Y方向に長いおむつの裏面シート33を構成する樹脂フィルム331の非肌対向面331dに、導電材料からなるインクを印刷により塗布して、電極21及び導線22を形成する。即ち、電極群ET1の4個の電極21a、電極群ET2の4個の電極21b、電極群ET3の4個の電極21c、及び電極群ET4の4個の電極21d、並びに電極群ET1の導線22a、電極群ET2の導線22b、電極群ET3の導線22c、及び電極群ET4の導線22dを、樹脂フィルム331の非肌対向面331dに印刷する。
【0053】
次いで、おむつの裏面シート33を構成する不織布332により電極群ET1〜ET4の全域を覆うように、樹脂フィルム331及び不織布332を固定して積層シートを形成する。尚、第2実施形態の着用物品100Bにおいては、各導線22の肌対向面に、上部絶縁層26は形成されていない。
【0054】
また、第2実施形態の着用物品100Bである使い捨ておむつ30は、図7図9に示すように、使い捨ておむつ30の長手方向(Y方向)に沿う両側部それぞれに配設固定された撥水性のサイドシート37を備え、サイドシート37の自由端部37fには、長手方向(Y方向)に伸長状態の立体ギャザー形成用の弾性部材38が配設固定されており、着用時には、立体ギャザー形成用の弾性部材38の収縮力によって、サイドシート37の自由端部37fが起立して立体ギャザー39を形成する。言い換えれば、使い捨ておむつ30の長手方向(Y方向)に沿う両側部それぞれには、使い捨ておむつ30の肌対向面側、即ち、おむつの表面シート32の肌対向面において、Y方向に伸長状態で固定された弾性部材38を有するサイドシート37が、おむつの表面シート32の両側部それぞれに、長手方向(Y方向)の全長に亘って配され固定されており、これによって一対の立体ギャザー39,39が形成される。
【0055】
サイドシート37としては、第1実施形態の着用物品100Aの備える立体ギャザー6を構成する撥水性のサイドシート61と同じ形成材料を用いることができる。また、立体ギャザー形成用の弾性部材38としては、第1実施形態の着用物品100Aの備える立体ギャザー6を構成する立体ギャザー形成用の弾性部材62と同じ形成材料を用いることができる。
【0056】
第2実施形態の着用物品100Bの効果については、着用物品100Aの効果と同様の効果を奏すると共に、更に、4個の電極群ET1〜ET4それぞれが、樹脂フィルム331の非肌対向面331dに直接形成されているので、排出体液検出の感度が良いものを安価に製作することができる等の効果を奏する。
【0057】
本発明の着用物品は、上述の第1〜第2実施形態の着用物品100A〜100Bに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1〜第2実施形態の着用物品100A〜100Bにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0058】
例えば、上述した着用物品100Aは、図1に示すように、尿とりパッド10と使い捨ておむつ30との間に、電極群ET1〜ET4を有する別シート20を配置して使用されているが、使い捨ておむつ30に換えて、ブリーフ,ショーツ、ガードル、紙パンツ、リハビリパンツ等の下着等、尿とりパッド10と別シート20を人体に固定できるものを用いてもよい。
【0059】
また、上述した着用物品100Aにおいては、尿とりパッド10、別シート20及び使い捨ておむつ30の内の別シート20が、着用物品を構成する複数のシートの内の「1枚のシート」に該当し、上述した着用物品100Bにおいては、使い捨ておむつ30のおむつの裏面シート33が、着用物品を構成する複数のシートの内の「1枚のシート」に該当しているが、それに限るものではない。具体的には、着用物品を構成する複数のシートの内の「1枚のシート」としては、尿とりパッド10を構成する表面シート2、裏面シート3、吸収体4のコアラップシート42、若しくは立体ギャザー6のサイドシート61、又は、使い捨ておむつ30を構成するおむつの表面シート32、おむつの裏面シート33、おむつの吸収体34を構成するコアラップシート、若しくは立体ギャザー39のサイドシート37が挙げられる。体液に触れる場所に配置するときはシートに直接体液が触れないように肌対抗面に絶縁層や防水層を設けることが好ましい。尚、「1枚のシート」としては、電極群ETの汚れ防止の観点から、尿とりパッド10の液難透過性の裏面シート3よりも非肌対向面側に配される、別シート20、使い捨ておむつ30を構成するおむつの表面シート32、おむつの裏面シート33が好ましい。
【0060】
また、上述した着用物品100Aの第1実施形態においては、別シート20は矩形状に形成されているが、別シート20の形状は、矩形状に限定されるものではない。
【0061】
また、上述した着用物品100Aにおいては、別シート20の肌対向面20uに電極群が形成されているが、別シート20の非肌対向面に形成されていてもよい。また、上述した着用物品100Bにおいては、使い捨ておむつ30のおむつの裏面シート33の樹脂フィルム331の非肌対向面331dに電極群が形成されているが、樹脂フィルム331の肌対向面、裏面シート33の不織布332の肌対向面、又は該不織布332の非肌対向面に形成されていてもよい。
【0062】
また、上述した着用物品100Aにおいては、各導線22を覆うように、各導線22の肌対向面に、絶縁性インクを印刷により塗布して、上部絶縁層26を形成しているが、絶縁性インクを印刷により塗布する範囲を電極21も覆うように広げることもできる。また、上部絶縁層26は必ずしも絶縁性インクを塗布して形成する必要はなく、絶縁シートを張り付けるなどで各導線22あるいは電極21を覆うようにしてもよいし、各導線22を、絶縁体で周囲を包んだいわゆる被覆電線とし、電極21のみを覆うように絶縁層を形成してもよい。
【0063】
また、上述した着用物品100Aにおいては、尿とりパッド10、別シート20及び使い捨ておむつ30を備え、上述した着用物品100Bにおいては、使い捨ておむつ30を備えているが、尿とりパッド10及び使い捨ておむつ30の替わりに、生理用ナプキン等の他の吸収性物品であってもよい。従って、本発明の着用物品は、尿以外の、例えば経血等の体液の広がりを検知することもできる。
【0064】
また、本発明の着用物品は、成人用又は乳幼児の着用物品であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
100A,100B 着用物品
10 尿とりパッド
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
41 吸収性コア
42 コアラップシート
5 吸収性本体
6 立体ギャザー
61 サイドシート
20 別シート
ET 電極群
21 電極
22 導線
23,24 端子
25 下部絶縁層
26 上部絶縁層
27 データ収集手段
28 情報処理手段
30 使い捨ておむつ
32 おむつの表面シート
33 おむつの裏面シート
34 おむつの吸収体
36 ファスニングテープ
37 サイドシート
38 弾性部材
39 立体ギャザー
A 背側領域、B 腹側領域、C 股下領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9