【文献】
Ultra Lifting Moisturising High-Tech Mask,ID 2888729,Mintel GNPD[online],2015年1月,[検索日2017.05.12],インターネット,URL,http://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分枝状多糖類がキサンタンガム、ローカストビーンガム、デキストラン及びアミロペクチンから選ばれる一種以上である請求項1又は2に記載の水不溶性粒子含有化粧料。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、水不溶性粒子が安定に分散している、直鎖状多糖類及び分枝状多糖類含有化粧料の発明である。本発明の化粧料は水不溶性の粒子とこれを分散している化粧料溶液(分散相)からなる。
本発明の水不溶性粒子含有化粧料の構成成分について説明する。
<水不溶性粒子>
本発明で用いる水不溶性粒子とは、化粧料に配合可能な成分で構成された、目視で確認できる大きさの、水に不溶の粒子であり、審美的効果やスクラブ効果を付与する目的で配合される。水不溶性粒子としては、皮膚に適用されてその使用時に力を加えることにより崩壊・分散する粒子として顆粒状を呈するもの、果実の外果皮などが好ましく例示できる。顆粒状の水不溶性粒子は顆粒の一般的な製造方法(流動層造粒法、撹拌造粒法、押出し造粒法、液中造粒法、スプレークーリング、融解分散冷却法、転動造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法、噴霧乾燥造粒法、液相造粒法など)により製造することができる。本発明に用いる水不溶性粒子の粒径は、100〜2000μmの範囲のものを用いることが好ましい。水不溶性粒子の粒径の調整は、その種類、使用目的、用途において、篩い、バーチカルグラニュレイターなどを用い、一般的な方法で任意に調整することができる。また水不溶性粒子の比重は、0.9〜1.3のものが好ましい。一般的に、化粧料(分散相)に対する相対比重が小さい場合に水不溶性粒子は化粧料中で液面に浮上しやすく、相対比重が大きい場合は沈降してしまうが、本発明においては、化粧料との相対比重を考慮せずに配合することができる。
本発明に用いる水不溶性粒子は、市販されているものを使用することもできる。一丸ファルコス株式会社製のMPG顆粒(登録商標)、FLORATECH社製のFloraspheres(登録商標)などを使用することができる。例えば、「MPG顆粒〈白〉新」はポリエチレン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースから構成されている化粧品に配合する白色のスクラブ粒子である。「MPG顆粒〈青〉新」はポリエチレン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、グンジョウから構成されている化粧品に配合する青色のスクラブ粒子である。
「Floraspheres」はホホバ油由来のワックスエステル(ホホバエステル)を500〜1500μmの球状に成型された軟質球体で、皮膚温度で融解し化粧料成分として皮膚にすりこむことができる。「Floraspheres Jojoba SMS white」(商品名)(比重;0.9、最小粒径;500μm)は「Floraspheres」の主成分であるホホバエステルとトコフェロールから成る水不溶性粒子である。MICRO POWDERS社製の「Ecoscrub 20PC」(比重;1.23−1.25、最小粒径;840μm、最大粒径;20メッシュ篩過)や、「Ecoscrub 50PC」(比重;1.23−1.25、最小粒径;297μm、最大粒径;50メッシュ篩過)はバイオ由来の再生可能資源から生産された100%生分解性微粉末で低刺激性の角質除去粒子である。Baobab Fruit Company Senegal社製の「Baobab seeds epicarp micronized EPI−400」(比重;1.2−1.3、平均粒径;400μm)はBaobabの外果皮を細かく砕いたものでスクラブ粒子である。これらは本発明に適している水不溶性粒子として例示できる。
本発明の化粧料への前記水不溶性粒子の配合量は、0.001〜10質量%程度が好ましいが、用いる剤型、使用対象等の様々な条件に応じて、その配合量を適宜設定できる。
本発明において水不溶性粒子は化粧料(分散相)中では沈降したり浮上することなく安定に分散する。
【0010】
<直鎖状多糖類及び分枝状多糖類>
本発明の効果を得るためには「直鎖状多糖類」及び「分枝状多糖類」というタイプの異なる多糖類を含むことが必須である。
本発明でいう多糖類とは、単糖類又はその誘導体がグリコシド結合により結合してなる高分子化合物のことを言う。グリコシド結合部位は単糖類(主にグルコース)の1,4位、および1,6位間であり、すなわち1つの単糖類から、1,4,6位の3方向に結合が延びることができる。ここで、末端以外全ての単糖類が2方向の結合で構成されている多糖類を直鎖状多糖類、一部の単糖類が3方向の結合により分岐されている多糖類を分枝状多糖類と呼ぶ。
直鎖状多糖類及び分枝状多糖類というタイプの異なる多糖類を配合することにより、化粧料として使用感が良好で、粒子の沈降や浮上のない状態が長期間維持された、水不溶性粒子含有化粧料とすることができる。また直鎖状と分枝状というタイプの異なる多糖類を組み合わせることで化粧料の耐塩性が向上している。
直鎖状多糖類としては、アミロース、ペクチン、キトサン、キチン、ヘパリン、アルギン酸、デキストラン、デフィコール、カラギナン、グルコサミノグリカン、プルラン、セルロース誘導体を用いることができる。セルロース誘導体及び/又はプルランを用いることが好ましい。セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。プルランは、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)に属する微生物によって産生される多糖であり、基本的にマルトトリオースがα−1,6結合により繰り返し結合した直鎖状のα−グルカンである。カルボキシメチルセルロースナトリウムの市販品としてはダイセルファインケム(株)製のCMCダイセル1260、CMCダイセル1330、CMCダイセル1340を用いることができる。プルランの市販品としては(株)林原製のプルランを用いることができる。
分枝状多糖類としては、アミロペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、デキストランを例示できる。キサンタンガム、ローカストビーンガムを用いることが好ましい。キサンタンガムは、キサントモナス属菌を用いて炭水化物を醗酵させて菌体外に蓄積した多糖類を精製した天然のガム質である。市販品としては、日清オイリオグループ(株)製のノムコートZZ、香栄興業(株)製のケルトロールTを用いることができる。ローカストビーンガムは、マメ科植物カロブ樹の種子の胚乳部分等から得られる水溶性の多糖類である。D−グルコースとD−マンノースを主成分としている。市販品としては、ネオソフトL−16(太陽化学(株)製)、メイプロLBG(三晶(株)製)、GENUGUMRL−200−J(三晶(株)製)等を用いることができる。
直鎖状多糖類及び分枝状多糖類の配合にあたっては、必ず直鎖状多糖類を分枝状多糖類に比して多く配合することが好ましい。直鎖状多糖類と分枝状多糖類の配合比率は20:1〜55:1、より好ましくは25:1〜55:1である。直鎖状多糖類がこの範囲を外れて多くなると、水不溶性粒子が沈降または浮上する恐れがある。また分枝状多糖類がこの範囲を外れて多くなるとぬるつきなど使用感面で好ましくない問題が生じる恐れがある。
【0011】
<多価アルコール>
多価アルコールは、一般的には化粧料の保湿効果を高める効果を発揮する。具体的な多価アルコールとして1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ブドウ糖、プロピレングリコール、マンニトール、イソプレングリコール、キシリトール、マルトースが好ましい化合物として例示できる。これらを単独あるいは混合して使用しても良い。
また、本発明においては、多価アルコールを併用すると多糖類による増粘効果が良好となる効果も発揮する。一部の多糖類は多量に配合するとぬるついたりべたついたりして使用感を著しく阻害することがあるが、多価アルコールを併用することで多糖類を多量に配合しなくても粘度を高く調整でき、べたつきやぬるつきなどを抑えた処方設計が可能となる。このため多価アルコールを併用することは本発明の水不溶性粒子含有化粧料において特に好ましい。
多価アルコールによる多糖類の増粘効果が期待できる配合量は、水不溶性粒子含有化粧料全量に対し10〜60質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。10質量%に満たないと、多価アルコールによる多糖類の増粘効果が無配合の時と比べて大きく違わない場合がある。
【0012】
<塩類>
近年、洗い流し用パック剤などの化粧料において、老廃物の除去や肌の引き締め効果を期待して塩類を配合するタラソテラピーのための処方が増加している。本発明の水不溶性粒子含有化粧料においても塩類をタラソテラピーの目的のために配合することができる。塩類としては塩化ナトリウムを好ましく例示できる。
本発明では直鎖状と分枝状の多糖類を組み合わせることで化粧料(分散相)の耐塩性が向上する。塩類を水不溶性粒子含有化粧料全量に対し0.1〜3質量%配合することができる。しかし、3質量%を超えて塩類を配合すると水不溶性粒子を含有した化粧料の粘度が著しく低下して水不溶性粒子を長期間安定に分散させることができなくなる恐れがある。
【0013】
本発明の水不溶性粒子含有化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、抗癌剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0014】
油脂類としては、例えばツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
【0015】
炭化水素類としては、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0016】
高級脂肪酸として、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0017】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0018】
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0019】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0020】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0023】
防腐剤として、例えばメチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
【0024】
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
【0025】
高分子を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。例えば、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシビニルポリマー、ベントナイト等を挙げることができる。
【0026】
本発明の効果の一つは、美観に影響を与える目視で、粒子の一粒一粒が確認できる大きさの水不溶性粒子が、浮上または沈降せずに化粧料中で安定に分散していることであるが、目視で確認できない大きさの水不溶性粒子の配合を妨げない。このような水不溶性粒子としては、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、無機白色顔料、無機赤色顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
【0027】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
【0028】
保湿剤として、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0029】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD
2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。
【0030】
プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【0031】
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ぶなの木エキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0032】
本発明の水不溶性粒子含有化粧料は、パック、洗顔料等の顔面皮膚用化粧料、ボディローション等の身体用化粧料、ヘアパック剤等の毛髪用化粧料とすることができる。これらの顔面皮膚用化粧料、身体用化粧料、毛髪用化粧料は、特に洗い流し用途の製剤として応用することで本発明の効果が際立つ。
【0033】
本発明の化粧料は常法により製造することができる。
【実施例】
【0034】
本発明の構成を持つ実施例、及び比較例の水不溶性粒子含有化粧料を調製した。組成表の数字の単位は質量%である。以下に各化粧料中での水不溶性粒子の分散状態を観察した試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
【0035】
[試験評価基準、測定方法]
水不溶性粒子含有化粧料の安定性、使用感触を下記に示す評価基準により評価した。粘度は下記の測定方法により測定した。なお表中の「−」は評価していないことを表す。
<安定性>
水不溶性粒子含有化粧料をガラス製の容器に入れ、室温(25℃)、40℃に保管し、1週間目と6か月目に水不溶性粒子の分散状態を目視で評価した。
○:水不溶性粒子の沈降または浮上がない
△:水不溶性粒子がやや沈降または浮上する傾向が若干みられる(底部または上部に粒子が分散されていない層が少しある)
×:水不溶性粒子の完全な沈降、浮上のいずれかがある
<使用感>
水不溶性粒子含有化粧料を上腕内側部にのばし、下記評価基準により評価した。
○:べたつき、ぬるつきのいずれもない
×:べたつき、またはぬるつきがある
<粘度>
水不溶性粒子含有化粧料を直径約3cmのガラス容器に充填し25℃に保存して、B型粘度計、No.4号ローター或いはNo.3号ローターを用いて測定温度25℃、回転速度12rpm、測定開始後30秒後の条件で、調製翌日の粘度を測定した。ローターは粘度に応じて適宜選択した。
【0036】
1.多糖類(増粘剤)の選定
水不溶性粒子を分散した2成分系(水と増粘剤)において、一週間保管(25℃、40℃)にて水不溶性粒子の分散状態が維持できる増粘剤を選定するための試験を行った。まず表1の成分を計量し常法にて調製して組成物を得た。次に組成物全量に対して0.12%になるように粒子(MPG顆粒〈白〉新)を配合し、均一に分散するまで撹拌して水不溶性粒子含有化粧料とした。得られた水不溶性粒子含有化粧料を前述の評価基準にて評価した。
【0037】
【表1】
【0038】
比較例1、2では、直鎖状多糖類のみの配合ではその配合量を多くしても(粘度を増加させても)、水不溶性粒子の分散状態を良好に維持できていない。また比較例3では、直鎖状多糖類同士を2種組み合わせても水不溶性粒子の分散状態を良好に維持できていない。
一方、直鎖状多糖類と分枝状多糖類を組み合わせると水不溶性粒子がほぼ安定に分散維持できることがわかった(実施例1〜4)。
尚、水不溶性粒子の安定性が△の評価とは、概ね水不溶性粒子の分散安定性が良好ということであり、比較的短期間の分散維持でよい場合には問題とはならない。
【0039】
2.直鎖状多糖類と分枝状多糖類を組み合わせた系での粘度試験
2−1.多価アルコールによる増粘効果
実施例1の組成にさらに多価アルコールを加えた組成物(水と多価アルコールと直鎖状多糖類と分枝状多糖類と水不溶性粒子)について、多価アルコールを加えたことによる粘度変化を試験した。実施例5〜13の組成を表2に示す。表2の成分を計量し常法にて調製して組成物を得た。得られた組成物の粘度を前述の測定方法にて測定した。多価アルコールの配合量による多糖類の粘度変化を表したグラフを
図1に示す。尚、多価アルコールを加えない例として前述の実施例1も表中に記載した。
【0040】
【表2】
【0041】
ここで水不溶性粒子は実施例1及び実施例5〜13のすべての組成物に含まれ、また水不溶性粒子は組成物の粘度にはほとんど影響していないと考えられるので、水不溶性粒子を除いた分散相の成分について以下に考察する。直鎖状多糖類と分枝状多糖類と水の3成分系水で得られる組成物の粘度よりも、多価アルコールを配合した水に直鎖状多糖類と分枝状多糖類を膨潤させた4成分系の組成物の方が、多価アルコールの配合量の増加に応じて粘度が高まることがわかった。このことから目的とする化粧料の粘度を効率よく得るためには、直鎖状多糖類と分枝状多糖類の他に、さらに多価アルコールを組み合わせた方が好ましいことがわかった。分枝状多糖類と直鎖状多糖類は、配合量に依存してぬるつきやべたつきを生じやすいので、本発明の構成にさらに多価アルコールを組み合わせることで分枝状多糖類と直鎖状多糖類の合計配合量を減らすことが可能となる。このため、多価アルコールの配合は使用感を特に重視する化粧料には有利である。
【0042】
2−2.多価アルコールを加えた系での水不溶性粒子の安定性(水不溶性粒子の分散状態の評価)
実施例5〜13の水不溶性粒子含有化粧料を前述の評価基準にて、25℃保管で一週間経過後の化粧料中の水不溶性粒子の分散安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例5〜13の水不溶性粒子含有化粧料を室温(25℃)にて一週間保管後に目視観察したところ、実施例7の水不溶性粒子の分散安定性が良好であった。多糖類の配合量を増やして増粘しなくても多価アルコールを組み合わせることで組成物の粘度を高めることができ、粘度が高まることで粒子の分散安定性が良好になることがわかった。実施例7の水不溶性粒子含有化粧料の水不溶性粒子の安定性が特に良好であったことから、この試験系では粘度が5000mPa・s以上だと水不溶性粒子の分散安定性が高まることがわかった。
【0045】
3.実施例14〜19、実施例20〜23及び比較例5〜10の水不溶性粒子含有化粧料(洗い流しパック化粧料)
(1)調製手順
実施例14〜19、比較例5〜10の化粧料を常法にて調製した。得られた水不溶性粒子含有化粧料を前述の評価基準にて評価した。実施例14〜19、比較例5〜10の水不溶性粒子含有化粧料の成分組成を表4に、評価結果を表5に示す。実施例20〜23の水溶性粒子含有化粧料の成分組成と評価結果を表6に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
(2)結果
表4の実施例14〜19の水不溶性粒子含有化粧料は、分散相に塩類(塩化ナトリウム)が2質量%配合されている。これは水溶性高分子を増粘剤に選択した化粧料の成分組成としては塩類が高含有されているものと評価される。このため、一般的には分散相の粘度が塩類によって低下することが懸念される組成であるが、表5に示したとおり、実施例14〜19の化粧料は後述するチューブ容器に充填を想定したときの化粧料として好ましい粘度であり、実施例14〜19のすべてにおいて観察期間中に粒子が沈降したり浮上したりしておらず、長期にわたって粒子の分散が保持されており、分散安定性に優れることが確認できた。
また、実施例14〜19のいずれの粒子含有組成物もべたついたり、ぬるついたりせず、使用感は良好であった。
一方、比較例9は分枝状多糖類であるキサンタンガムのみを配合した水不溶性粒子含有化粧料であるが、2週間後の観察までは水不溶性粒子の分散が一応維持されていた。しかし、使用感は悪く、ぬるつきやべたつきが強かった。また比較例9の水不溶性粒子含有化粧料の粘度は2830mPa・sと低かった。化粧料を押し出し式のチューブに充填する場合に求められる粘度は5000〜85000mPa・s(B型粘度計、25℃測定)が好ましく、より好ましくは10000〜85000mPa・sである。この範囲だと液だれなどが生じにくく使用性がよいと一般的に理解されている。水不溶性粒子の分散状態、粘度、使用感を総合的に評価すると、キサンタンガムのみで増粘させて水不溶性粒子含有化粧料の処方を設計することは、特にチューブに充填されることが多いパック化粧料としては不適切であると判断した。比較例10は分枝状多糖類であるローカストビーンガムのみを配合した水不溶性粒子含有化粧料であるが、塩化ナトリウムの影響で179mPa・sと著しく粘度が低下し水不溶性粒子の分散維持はできなかった。
比較例5、6は直鎖状多糖類のみを2種(カルボキシメチルセルロースナトリウムとプルラン)配合した水不溶性粒子含有化粧料であるが、前述の好ましい粘度の範囲に入るものの水不溶性粒子の分散を維持できなかった。比較例7も直鎖状多糖類のみを2種(カルボキシメチルセルロースナトリウムとプルラン)配合した水不溶性粒子含有化粧料であり、同様に前述の好ましい粘度の範囲に入るものの、ぬるつきやべたつきなどの使用感が生じて化粧料として不適切であった。比較例8は直鎖状多糖類(カルボキシメチルセルロースナトリウムとプルラン)と、増粘剤として第一に選択されるカルボキシビニルポリマーを配合した水不溶性粒子含有化粧料であるが、粘度は前述の好ましい範囲に入るものの水不溶性粒子の分散を維持できなかった。
【0050】
表6の実施例20〜23は実施例14と分散相が同じ組成で、水不溶性粒子のみが異なる。いろいろな比重の水不溶性粒子を配合して、分散相との比重差があっても、本発明の構成によれば、水不溶性粒子の分散状態が安定に維持されることを確認した試験である。実施例20〜23の粘度は22240mPa・sであった(実施例14と粘度の値が異なるが、成分のロットぶれの範囲である)。実施例20〜23に示したとおり、比重0.9〜1.3で視認できる大きさ(100〜2000μm)の水不溶性粒子は、40℃で2週間保管後も、いずれも粒子の分散状態が安定に維持されていた。
【0051】
本発明の構成をとることで、水不溶性粒子が沈降または浮上しにくい分散安定性に優れた水不溶性粒子含有化粧料が提供できた。本発明の水不溶性粒子含有化粧料は、べたついたり、ぬるついたりせず、使用感が良好である。本発明の水不溶性粒子含有化粧料は分散相の耐塩性が高いので分散相に塩化ナトリウムなどの塩類の配合が可能である。塩類を高配合した水不溶性粒子含有化粧料は、洗い流し用途の化粧料として最適である。
【0052】
処方例
粒子含有パック化粧料
成分 配合量(質量%)
1.MPG顆粒 0.12
2.1,3−ブチレングリコール 5
3.1,2−ペンタンジオール 1.5
4.ジグリセリン 20
5.ジプロピレングリコール 5
6.カルボキシメチルセルロースNa 4
7.ローカストビーンガム 0.15
8.pH調整剤 適量
9.塩化ナトリウム 2
10.精製水 残余
【0053】
すべての成分を均一に混合し、水不溶性粒子含有パック化粧料とした。
【0054】
得られた水不溶性粒子含有パック化粧料は、保存安定性に優れ、水不溶性粒子が長期間分散した状態を維持でき、化粧料の外観も美的感の高いものであった。また、ぬるついたりべたついたりせず使用感も優れていた。