特許第6275544号(P6275544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275544
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】端子固定構造及び回路遮断機
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/00 20060101AFI20180129BHJP
   H01H 9/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01R9/00 Z
   H01H9/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-104854(P2014-104854)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-220188(P2015-220188A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉茂 純
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】益子 拓樹
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−343217(JP,A)
【文献】 実開昭54−176887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24 − 4/46
H01R 9/00
H01R 9/15 − 9/18
H05K 5/00 − 5/06
F16B 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と、前記端子を上面に保持するケースと、前記端子を挟んで前記ケースと当接する
ことにより固定されるカバーと、からなる端子固定構造であって、
前記端子は、ネジが挿通される穴を有する第1の平板と、前記第1の平板と交差する方向に配置された第2の平板と、前記第1の平板と前記第2の平板とを接続する屈曲部とを有しており、前記屈曲部の中間領域の開口部の前記第1の平板側に位置する側の辺は円弧状の形状を有しており、
前記カバーには、前記ケース側に突出する爪部が形成されており、前記爪部が前記端子
の開口部に嵌入されることにより、前記端子と前記ケースと前記カバーとが一体化されて
いる
ことを特徴とする端子固定構造。
【請求項2】
端子と、前記端子を上面に保持するケースと、前記端子を挟んで前記ケースと当接する
ことにより固定されるカバーと、からなる回路遮断器であって、
前記端子は、請求項1に記載された端子であり、
前記カバーには、前記ケース側に突出する爪部が形成されており、前記爪部が前記端子
の開口部に嵌入されることにより、前記端子と前記ケースと前記カバーとが一体化されて
いる
ことを特徴とする回路遮断器。
【請求項3】
請求項に記載の回路遮断器であって、
前記ケースは、前記端子を保持するための仕切られた空間を有し、前記空間の幅と前記端子の幅とが同一となるように形成されている
ことを特徴とする回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子等が接続される端子及び当該端子を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路遮断器等の端子部構造として、特開平10−134859号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
当該特許文献1には、絶縁壁で仕切られたフレームの端子収容部に固定されたネジ孔を有する固定端子に丸形圧着端子等を接続する電気機器の端子装置において、前記ネジ孔に先端が結合する雄ネジと、この雄ネジに回動可能に保持され、一方を固定端子側に折曲した案内板部を有する逆L字形座金とからなる端子ネジを備え、前記端子収容部に、前記逆L字形座金の案内板部が挿入されて、該案内板部の上下方向の移動をガイドするとともに、雄ネジの先端が固定端子に結合した状態では、前記案内板部のガイドを解除する案内溝を形成するとともに、雄ネジの先端が固定端子との間で一定間隔を有するように前記案内溝にガイドされた案内板部を保持する係合部を、前記逆L字形座金の案内板部及び前記案内溝側に形成したものが記載されている(特許文献1の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−134859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された端子装置では、逆L字形座金は、案内板部と雄ネジが貫通する穴を有する水平部とからなり、このような形状の座金は、通常板材を折り曲げ及びプレス加工することにより形成される。
このような折り曲げ及びプレス加工において、上記逆L字形座金の水平部に設けられた穴の加工は、折り曲げ又はプレス加工の前に打ち抜き加工等で形成されることが一般的である。
しかしながら、予め穴が形成された板材を逆L字形に折り曲げる加工を行う場合に、当該折り曲げ加工部と水平部の穴との距離が近いと、折り曲げ加工時に銅等の導電性金属からなる板材の材料が流動することから、穴を形成する水平部の材料が折り曲げ加工部側に流れてしまい、水平部に形成した丸穴の形状が変形してしまうという問題があった。
特に、端子装置全体のコンパクト化、軽量化のために端子自体の水平部の大きさや板厚をより小さくしたい場合、穴が折り曲げ加工部により近づくこととなるため、穴の変形がより顕著となってしまう。
そこで、本発明は、端子板を折り曲げ加工して端子を製造する際に、ネジを挿通する穴の変形を抑制することができる端子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための構成として、本発明の端子固定構造は、
端子と、前記端子を上面に保持するケースと、前記端子を挟んで前記ケースと当接する
ことにより固定されるカバーとからなり、
前記端子は、ネジが挿通される穴を有する第1の平板と、前記第1の平板と交差する方向に配置された第2の平板と、前記第1の平板と前記第2の平板とを接続する屈曲部とを有しており、前記屈曲部の中間領域の開口部の前記第1の平板側に位置する側の辺は円弧状の形状を有しており、
前記カバーには、前記ケース側に突出する爪部が形成されており、前記爪部が前記端子
の開口部に嵌入されることにより、前記端子と前記ケースと前記カバーとが一体化されて
いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、端子板を折り曲げ加工して端子を製造する際に、ネジを挿通する穴の変形を抑制することができる端子を提供するができる。
また、本発明の端子は、当該端子を電気機器に固定するための構造を簡略化することも可能である。
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の端子の具体的形状を示す斜視図である。
図2】本発明の端子の形状の変形例を示す斜視図である。
図3】本発明の端子を回路遮断器の接点として適用した例を示す図である。
図4図3の端子とケースとカバーとを一体に固定した状態の回路遮断器における一方の側面を切断した断面斜視図である。
図5】回路遮断器の端子とケースとカバーとの固定構造の近傍を抜き出した概略斜視図である。
図6】回路遮断器の端子とケースとカバーとの固定構造の近傍を抜き出した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面とともに説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の端子の具体的形状を示す斜視図である。
図1に示すとおり、本発明の端子10は、第1の平板11と、第2の平板12と、これら第1の平板11及び第2の平板12を接続する屈曲部13と、上記第1の平板に形成されネジが挿通される丸穴14と、上記屈曲部13において上記第1の平板の幅の中間位置に形成された開口部15と、を備えている。
【0009】
本発明の端子10を製造するにあたり、まず最初に、例えば銅合金等の端子用導電性材料の板材から例えば打ち抜き加工等で端子10に必要な大きさの板材を切り抜く。
このとき、ネジが挿通される丸穴14と、屈曲部13に相当する位置に設けられる貫通した開口部15とを打ち抜き加工にて同時に形成する。これにより、切り抜かれた板材の丸穴14と開口部15との間に接続領域16が形成される。
【0010】
このように切り抜かれた板材を、屈曲部13において例えばプレス加工等で曲げ加工を行う。当該曲げ加工を行うことにより、図1に示すような端子10の形状となる。
このとき、上記曲げ加工を行う前に屈曲部13に開口部15を形成しておくことにより、曲げ加工後の丸穴14が変形することを抑制又は防止できる。
例えば、本発明の開口部15を形成しない状態で端子用の板材を屈曲部13で曲げ加工した場合、当該屈曲部13を介して第1の平板11と第2の平板とが連続的に接続されているため、金属の塑性変形に伴って材料が流動することにより丸穴14の形状が変形してしまう。
これに対して、本発明のように屈曲部13に開口部15を形成しておくことにより、当該開口部15の領域では第1の平板11と第2の平板12とが不連続となるため、上述した塑性変形に伴う材料の流れの影響が小さくなり、結果として丸穴14の変形が抑制又は防止できる。
【0011】
(実施例1の変形例)
図2は、本発明の端子の形状の変形例を示す斜視図である。
図1に示す実施例では、開口部15を断面矩形の形状としていたが、上述したとおり、第1の平板11と第2の平板12との間での曲げ加工時の材料の流れを生じないように不連続な部分を形成することができれば、任意の断面形状としても良い。
例えば、図2に示すように、開口部15の接続領域16側の辺が円弧状となるような断面形状を適用し得る。
このような断面形状の開口部15によれば、通常端子10と電気的に接続される圧着端子等はその先端が円形であることが多いため、当該円形の圧着端子の先端の全面と接触を確保することができる。
【0012】
(実施例2)
図3は、本発明の端子を回路遮断器の接点として適用した例を示す図である。
図3に示すように、回路遮断器は、本発明の端子10をケース20とカバー30とで上下から挟む態様で固定する構造を有する。
【0013】
図4は、図3に示す端子10とケース20とカバー30とを一体に固定した状態の回路遮断器において、一方の側面を切断した断面斜視図である。
図4に示すように、本実施例の回路遮断器では、ケース20に端子10の第2の平面と対応する形状の凹部を形成し、当該凹部に端子10を嵌合した後でカバー30を端子10の上側から嵌め込む際に、カバー30の内面側に設けられた爪部31を端子10の開口部15に挿入することにより、回路遮断器内で端子10の位置決めを確実にすることができる。
また、本発明の端子を用いた回路遮断器では、端子10をケース20に固定する際にネジ締結等をする必要がなく、さらにボルトの頭部の分のスペースを考慮する必要がないため、部品点数を削減し得るとともに構造を簡素化することができる。
【0014】
図5及び図6は、本実施例の回路遮断器の端子10とケース20とカバー30との固定構造の近傍を抜き出した概略斜視図である。
図5に示すとおり、本実施例の回路遮断器では、ケース20の内部を3分割し、それぞれの空間に端子10を嵌合した後、上側からカバー30を取り付けることにより固定構造を形成する。
カバー30は、外観上ケース20とほぼ同一の幅を有するとともに、ケース20と同様に内部を3分割してあり、それぞれの空間に爪部31が形成されている。
カバー30の3か所の爪部31を3つの端子10の開口部15にそれぞれ嵌入することにより、図6に示すように、端子10とケース20とカバー30とが一体となり、がたつきのない強固な固定構造が形成される。
【0015】
上述した実施例2において、端子10の幅は、ケース20の分割された空間の幅とほぼ同一であることが好ましい。
このような構成により、端子10に圧着端子等をボルト締結する際に、端子10の側面とケース20の上記空間の側面とが当接するため、回り止めの機能を果たすとともに位置決めがよりいっそう確実に行われる。
【0016】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
さらに、各実施例の構成の一部について、その他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0017】
また、上述した実施例において、本発明の端子部構造を回路遮断器に適用した例を示したが、本発明の端子部構造は、例えば、電磁接触器、電磁開閉器等の電気的に接点を形成するその他の電気機器や電子機器の接続部分にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0018】
10 端子
11 第1の平板
12 第2の平板
13 屈曲部
14 丸穴
15 開口部
16 接続領域
20 ケース
30 カバー
31 爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6