(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水素等の高純度のガスを精製する際、主成分以外の不純物を含む原料ガスから圧力スウィング吸着(PSA、Pressure Swing Adsorption)で不純物を除去する圧力スウィング吸着装置(以下、「PSA装置」という。)が多用される。
【0003】
上記PSA装置では、原料ガス中の不純物を吸着塔内に充填される吸着剤によって吸着除去し(以下、上記吸着除去する工程を「吸着除去工程」という。)、その後に減圧下でこの吸着剤が吸着した不純物を除去して吸着剤を再生する(以下、上記再生する工程を「再生工程」という。)。通常PSA装置は2塔以上の吸着塔を有し、吸着工程及び再生工程を複数の吸着塔で交互に繰り返すことで連続的に高純度ガスの精製を可能としている(例えば特開2008−63152号公報参照)。
【0004】
従来のPSA装置では、上記再生工程において、吸引ポンプ(特許文献1でいう「真空ポンプ」に相当する。)で吸着塔内を減圧した状態で高純度ガスを供給し吸着剤を再生するが、吸着塔内を吸引ポンプで減圧するのに一定の時間が必要となる。そのため、吸着塔再生のサイクルタイムが長くならざるを得ない。
【0005】
また、従来のPSA装置では、再生効率を上げる目的で吸着塔内の真空度を高めるには吸引ポンプを大型化する必要があり、設備のコスト上昇及び大型化が避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような事情に基づいてなされたものであり、PSA装置を大型化することなく、吸着剤の再生工程の時間を短縮し、かつ再生効率を向上できるPSA装置及びPSA装置を用いた吸着除去方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、原料ガス中の特定成分を圧力スウィング吸着法により吸着除去する複数の吸着塔と、この複数の吸着塔に連通する原料ガス供給ラインと、上記複数の吸着塔に連通する製品ガス排出ラインと、上記複数の吸着塔に連通するオフガス排出ラインと、このオフガス排出ラインに接続される吸引ポンプとを備えるPSA装置であって、上記オフガス排出ラインの吸引ポンプの上流側にバルブを介して接続される減圧容器を備えることを特徴とする。
【0009】
当該PSA装置は、上述のようにオフガス排出ラインにおける吸引ポンプの上流側に減圧容器を備えることから、吸着塔内の吸着剤の再生の際に、予め吸着塔に接続されていない状態で減圧しておいた減圧容器と再生対象の吸着塔とを均圧し、その後にその吸着塔を吸引ポンプでさらに減圧することで、再生工程のサイクルタイムの短縮化が実現できる。この結果、当該PSA装置は、吸引ポンプを大型化することなく、吸着剤の再生工程の時間を短縮し、かつ再生効率を向上できる。
【0010】
上記減圧容器の容積としては、吸着塔の容積の0.2倍以上1.6倍以下が好ましい。このように上記減圧容器の容積を上記範囲とすることで、PSA装置を大型化させることなく、吸着剤再生工程のサイクルタイム短縮及び再生効率向上を促進することができる。なお、「吸着塔の容積」とは、吸着塔の気体を充填可能な容積を意味する。
【0011】
上記原料ガスが、水蒸気改質法により炭化水素系ガスから生成される水素リッチな水素含有ガスであるとよい。当該PSA装置は、吸着剤の再生工程の短時間化及び再生効率に優れるため、水蒸気改質法を用いた水素製造に好適に用いることができる。
【0012】
上記複数の吸着塔の少なくとも一部に一酸化炭素を選択的に吸着するCO吸着剤が充填されているとよい。このようにCO吸着剤を吸着塔に充填することで、CO吸着剤のCO吸着能力とこのCO吸着剤の再生効率の高さとに起因して、高純度の水素ガスを効率よく得ることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、複数の吸着塔を備えるPSA装置を用い、原料ガス中の特定成分を圧力スウィング吸着法により吸着除去する方法であって、上記複数の吸着塔に原料ガスを供給し、特定成分を吸着除去する工程と、上記複数の吸着塔内の吸着剤を減圧により再生する工程とを有し、上記再生工程が、減圧された減圧容器と上記吸着塔との均圧工程を有することを特徴とする。
【0014】
当該PSA装置を用いた吸着除去方法によれば、上述のように吸着塔内の吸着剤の再生工程が減圧容器及び再生対象の吸着塔の均圧工程を有することで、吸引ポンプにより予め減圧容器を減圧しておけば、均圧工程によりその減圧容器と再生対象の吸着塔とを均圧し、その後に吸引ポンプでその吸着塔の減圧を行うことで、再生対象の吸着塔内を従来よりも短時間で、かつ従来よりも真空度の高い状態にすることができる。さらに、当該PSA装置を用いた吸着除去方法によれば、特定の吸着塔で吸着除去している間等に減圧容器内を予め吸引ポンプで減圧しておくことができるため、各吸着塔における一連のサイクルタイムの短縮化が実現できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のPSA装置及びPSA装置を用いた吸着除去方法は、装置を大型化することなく、吸着剤の再生工程の時間を短縮し、かつ再生効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明のPSA装置及びPSA装置を用いた吸着除去方法の実施形態を詳説する。
【0018】
<PSA装置>
図1のPSA装置は、原料ガスA中の特定成分を圧力スウィング吸着法により吸着除去する3つの吸着塔1a,1b,1cと、この3つの吸着塔1a,1b,1cに連通する原料ガス供給ライン101と、上記3つの吸着塔1a,1b,1cに連通する製品ガス排出ライン201と、上記3つの吸着塔1a,1b,1cに連通するオフガス排出ライン103と、このオフガス排出ライン103に接続される吸引ポンプ2と、このオフガス排出ライン103の吸引ポンプ2の上流側にバルブを介して接続される減圧容器3と、製品ガス用バッファタンク4とを主に備える。
【0019】
当該PSA装置は水素、ヘリウム、アルゴン等の純度の高いガスを精製することができる。従って、当該PSA装置に供給する原料ガスAとしては、特に限定されず、例えば水素を含む原料ガス、ヘリウムを含む原料ガス、アルゴンを含む原料ガス等を用いることができる。また、当該PSA装置は、ガスの精製以外にも原料ガス中の特定成分を除去する用途に好適に用いられ、天然ガスの精製、放射性ガスの濃縮、パラフィンの分離などの種々のプロセスに用いることができる。
【0020】
特に、当該PSA装置は水蒸気改質法を用いた水素製造に好適に用いることができる。以下、原料ガスとして水蒸気改質法により炭化水素系ガスから生成される水素リッチな水素含有ガスを用いた場合の当該PSA装置の実施形態について説明する。
【0021】
水素リッチな水素含有ガスは、例えば公知の水蒸気改質器と変成器とを組み合わせた改質器で天然ガス等の炭化水素を含有するガスを水蒸気改質して得られる。具体的には、炭化水素系ガスを水蒸気改質器での改質反応により水蒸気で改質し、水素及び一酸化炭素を主成分とするガスとした後、さらに変成器でこのガスを水蒸気で変成し、水素リッチな水素含有ガスを生成する。この水素含有ガス中には、水素の他、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等の未反応の天然ガス成分や水などの不純物が含まれる。
【0022】
原料ガスAは、原料ガス供給ライン101を通して3つの吸着塔1a,1b,1cに供給される。
【0023】
3つの吸着塔1a,1b,1cは、原料ガスA中の上記不純物を吸着する吸着剤が充填されており、製品ガス排出ライン201から高純度の製品ガスBを排出する。これらの吸着塔1a,1b,1cは、それぞれ吸着、減圧、均圧及び洗浄、昇圧、並びに吸着の一連の工程を順次切り替えて運転される。吸着塔内の圧力を減圧する工程及び製品ガスである水素ガスで洗浄する工程により、吸着した不純物を除去し、吸着剤を再生する。その後、吸着剤を再生した吸着塔を再び昇圧し水素精製に再び供する。当該PSA装置の運転中、いずれかの吸着塔が吸着工程となるように上記一連の工程のタイミングを各吸着塔でずらして行うことで、吸着と再生とを異なる吸着塔で同時に行うことが可能となり、連続的に製品ガスBを製造できる。
【0024】
吸着塔1a,1b,1cには、原料ガスAの主な不純物である一酸化炭素、二酸化炭素及びメタンを吸着可能な吸着剤が充填される。この吸着剤は各不純物をPSAにより吸着可能なものであれば特に限定されない。特に、吸着塔1a,1b,1cの少なくとも一部に一酸化炭素を選択的に吸着するCO吸着剤が充填されているとよい。このようにCO吸着剤を吸着塔に充填することで、得られる水素ガスの純度をより高めることができる。このCO吸着剤としては、例えばゼオライト、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等を用いることができるが、特に多孔質シリカ、多孔質アルミナ、ポリスチレンのうち1種以上の担体に、ハロゲン化銅(I)及び/又はハロゲン化銅(II)を担持させた材料、この材料を還元処理した材料、あるいはゼオライト中のカチオンを1価の銅(Cu(I))にイオン交換した材料を用いることが好ましい。このような材料は、一酸化炭素の吸着性能が大きいため、吸着剤使用量を削減できると共に、水素回収率の向上を図ることが出来る。
【0025】
原料ガス供給ライン101は原料ガスAを吸着塔1a,1b,1cへ導入するためのラインである。原料ガス供給ライン101と3つの吸着塔1a,1b,1cとはそれぞれ原料ガス供給弁V1a,V1b,V1cを介して接続される。
【0026】
オフガス排出ライン103は吸着塔1a,1b,1cの再生時に吸着塔内を減圧するために用いるラインである。オフガス排出ライン103は、3つの吸着塔1a,1b,1cとオフガス排出弁V3a,V3b,V3cをそれぞれ介して接続される。このオフガス排出ライン103には吸着塔1a,1b,1cの再生時に大気圧以下まで減圧するための吸引ポンプ2の吸入側が吸引ポンプ接続弁V8を介して接続される。さらに、オフガス排出ライン103の吸引ポンプ2の上流側には減圧容器供給弁V9と減圧容器排出弁V10とを介して減圧容器3が接続される。
【0027】
また、オフガス排出ライン103の吸引ポンプ2の上流側には大気開放ライン102が接続され、大気開放弁V7を開けることで吸着塔内が大気開放される。
【0028】
減圧容器3は、耐圧容器であり、吸引ポンプ2によって内部が減圧される。また、減圧容器3は、減圧容器供給弁V9及び減圧容器排出弁V10を介してオフガス排出ライン103の吸引ポンプ2の上流側に吸引ポンプ接続弁V8と並列に接続されている。
【0029】
減圧容器3の容積の下限としては、吸着塔1a,1b,1cの各容積の0.2倍が好ましく、0.4倍がより好ましく、0.6倍がさらに好ましい。一方、減圧容器3の容積の上限としては、吸着塔1a,1b,1cの各容積の1.6倍が好ましく、1.4倍がより好ましく、1.2倍がさらに好ましい。減圧容器3の容積が上記下限未満の場合、吸着塔1a,1b,1c内を迅速にかつより低い圧力まで減圧する効果が不十分となるおそれがある。逆に、減圧容器3の容積が上記上限を超える場合、当該PSA装置が不要に大型化するおそれがある。なお、複数の吸着塔1a,1b,1cの容積が異なる場合は、最も大きい吸着塔の容積に対する比を上記範囲とすることが好ましい。
【0030】
オフガス排出ライン103又は大気開放ライン102から排出される吸着塔1a,1b,1cの特定成分等を含むオフガスCは、図示しないオフガス用バッファタンク等に一時的に貯蔵され、例えば改質器の水蒸気生成用の燃料ガスとして用いることができる。具体的には、上記オフガスCをボイラ等で燃焼させることで改質用の蒸気を生成し、改質器に導入する。
【0031】
製品ガス排出ライン201は吸着塔1a,1b,1cで原料ガスAの不純物を除去して得た製品ガスBの回収ラインであり、3つの吸着塔1a,1b,1cとはそれぞれ製品ガス排出弁V2a,V2b,V2cを介して接続される。回収した製品ガスBは製品ガス用バッファタンク4に一時的に貯蔵され、適宜供給される。なお、この製品ガスBは吸着塔の洗浄ガスとしても使用される。
【0032】
また、吸着塔1a,1b,1cの排出側には、それぞれ上記製品ガス排出ライン201の他に均圧ライン202及び洗浄ライン203が接続されている。均圧ライン202は、各吸着塔1a,1b,1cにそれぞれ均圧弁V4a,V4b,V4cを介して接続され、洗浄ライン203は、吸着塔1a,1b,1cにそれぞれ洗浄弁V5a,V5b,V5cを介して接続される。これらの製品ガス排出ライン201、均圧ライン202、及び洗浄ライン203によって、1つの吸着塔から製品ガスBを回収しながら、他の1つの吸着塔に対して残りの吸着塔から製品ガスBを供給して、均圧及び洗浄工程を行うことができる。これらの具体的な手順については、PSA装置を用いた吸着除去方法の説明にて詳述する。
【0033】
当該PSA装置は、後述する吸着除去方法を自動で行う制御手段を備えるとよい。この制御装置としては公知のものを用いることができる。
【0034】
<吸着除去方法>
次に、当該PSA装置を用い、原料ガス中の特定成分を圧力スウィング吸着法により吸着除去する方法について説明する。当該吸着除去方法は、上記3つの吸着塔1a,1b,1cに原料ガスAを供給し、特定成分を吸着除去する工程と、上記3つの吸着塔1a,1b,1c内の吸着剤を吸引ポンプ2による減圧により再生する工程とを有し、この再生工程が、吸引ポンプ2により減圧された減圧容器3と上記吸着塔1a,1b,1cとの均圧工程を有する。
【0035】
当該吸着除去方法は、1つの吸着塔で特定成分の吸着除去工程を行い、その間に残りの吸着塔で吸引ポンプ2での減圧による吸着剤の再生工程を行う。以下、これらの工程について、表1に示すように第一の吸着塔1aで吸着工程を行っている間に、第二の吸着塔1b及び第三の吸着塔1cで再生工程を行う場合を例にとり具体的に説明する。
【0037】
(ステップ0)
表中のステップ1の直前の状態(ステップ0)は、第二の吸着塔1bが再生工程中の製品ガスBによる洗浄が終わった直後の負圧状態、第三の吸着塔1cが吸着除去工程が終わった直後の加圧状態である。このとき、第一の吸着塔1aに原料ガスAが供給され、不純物が除去された製品ガスBが第一の吸着塔1aの製品ガス排出弁V2aを通して製品ガス排出ライン201から回収されている。
【0038】
(ステップ1)
上述の状態から、最初に第二の吸着塔1bと第三の吸着塔1cとの均圧が行われる。この均圧工程は、第二の吸着塔1bの均圧弁V4bと第三の吸着塔1cの均圧弁V4cとを開とし、第二の吸着塔1bと第三の吸着塔1cとを連通することにより第三の吸着塔1c内のガスを第二の吸着塔1bに移送して第二の吸着塔1bの内圧と第三の吸着塔1cの内圧とを等しくするものである。このとき、第二の吸着塔1bは昇圧され、第三の吸着塔1cは減圧される。また、これと同時に、減圧容器排出弁V10を開とし、吸引ポンプ2により減圧容器3内の減圧を開始する。
【0039】
(ステップ2)
次に、第三の吸着塔1cの均圧弁V4cを閉じ、第三の吸着塔1c内のガスをオフガス排出弁V3c及び大気開放弁V7を開いて排出することで第三の吸着塔1cを大気圧まで一次減圧する。このとき、バッファタンク接続弁V6を開けることで第二の吸着塔1bには製品ガス用バッファタンク4から製品ガスBが供給され昇圧が行われる。この第二の吸着塔1bの昇圧は、吸着圧力となるまで継続される。なお、表1では第三の吸着塔1cの洗浄が終わるまで、つまりステップ5まで昇圧されるように記載しているが、吸着圧力に到達した時点でバッファタンク接続弁V6及び第二の吸着塔1bの均圧弁V4bを閉じて昇圧を終了する。また、このステップ2の間も減圧容器3の減圧は必要であれば継続される。
【0040】
(ステップ3)
次に、吸引ポンプ2を停止し、第三の吸着塔1cのオフガス排出弁V3cを開けたまま、大気開放弁V7を閉じると共に減圧容器供給弁V9を開けることで、第三の吸着塔1c内のガスをさらに負圧状態の減圧容器3内に排出し、第三の吸着塔1cと減圧容器3とを二次均圧する。
【0041】
(ステップ4)
上記第三の吸着塔1cの二次均圧工程後、減圧容器供給弁V9を閉じ、吸引ポンプ接続弁V8を開け、吸引ポンプ2を駆動させることで第三の吸着塔1c内のガスをさらに吸引し、第三の吸着塔1cをさらに減圧する。
【0042】
(ステップ5)
第三の吸着塔1c内の圧力が十分低下した状態で、第三の吸着塔1cのオフガス排出弁V3cを閉じると共に洗浄弁V5cを開け、製品ガスBを第三の吸着塔1c内に導入して吸着剤を洗浄し、再生する。このとき、製品ガスBの導入により第三の吸着塔1c内の圧力は上昇するが、吸引ポンプ2により減圧し続けることで、第三の吸着塔1c内を大気圧以下の圧力に保つ。なお、洗浄中の吸着塔内の圧力は低いほど好ましい。
【0043】
(ステップ6以降)
第三の吸着塔1cの再生工程が終了した時点で吸引ポンプ2を停止し、各弁の操作により吸着除去を行う吸着塔を第二の吸着塔1bに切り替え、第三の吸着塔1cの再生工程での昇圧を継続しつつ、第一の吸着塔1aの再生工程を始める。以降は、上記ステップ1以降を吸着工程及び再生工程を行う吸着塔を入れ替えながら繰り返し行う。
【0044】
<利点>
当該PSA装置を用いた吸着除去方法によれば、吸引ポンプ2により予め減圧容器3を減圧し、均圧工程によりその減圧容器3と再生対象の吸着塔とを均圧し、その後に吸引ポンプ2でその吸着塔の減圧を行うことで、再生対象の吸着塔内を従来よりも短時間で、かつ従来よりも真空度の高い状態にすることができる。さらに、当該PSA装置を用いた吸着除去方法によれば、特定の吸着塔で吸着除去している間等に減圧容器3内を予め吸引ポンプ2で減圧しておくことができるため、各吸着塔における一連のサイクルタイムの短縮化が実現できる。
【0045】
<その他の実施形態>
本発明のPSA装置及びこれを用いた吸着除去方法は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、PSA装置の備える減圧容器の数は複数であってもよく、これらを並列又は直列に接続して使用することができる。なお、減圧容器の数が複数の場合、減圧容器全体の容積の吸着塔の容積に対する比を上述した範囲とすることが好ましい。
【0046】
また、吸引ポンプ及び減圧容器は、吸着塔の下流側(製品ガス排出側)に設けてもよい。ただし、水素精製に当該PSA装置を用いる場合、洗浄ガスを吸着塔の製品ガス排出側から原料ガス供給側へと供給することで洗浄効果が高まるため、上記実施形態のように吸引ポンプ及び減圧容器は吸着塔の上流側(原料ガス供給側)に設けることが好ましい。
【0047】
また、製品ガス用バッファタンクは必須の構成要素ではなく、吸着塔の昇圧及び洗浄には別途水電解装置で製造した洗浄用水素ガスを供給してもよい。この水電解装置としては、プロトン伝導高分子膜を用いた固体高分子水電解装置やアルカリ水電解装置等が利用できる。
【0048】
さらに、当該PSA装置を用いた吸着除去では、吸着塔内を大気開放、つまり一次減圧せずに、他の吸着塔との均圧後に直接減圧容器と均圧を行ってもよい。
【0049】
また、当該PSA装置は、4つ以上の吸着塔を備えてもよい。4つ以上の吸着塔を備える場合でも、吸着除去工程と再生工程とを各吸着塔に振り分けることで3つの吸着塔を備える場合と同様、連続的にガスの精製を行うことができる。
【0050】
さらに、当該PSA装置を用いた吸着除去方法は上述の制御装置により自動化して行うことが好適であるが、手動で行ってもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<再生工程における圧力変動>
まず、当該PSA装置を用いた吸着除去方法における吸着塔の圧力変動について検証した。
【0053】
[実施例1]
図1に示すPSA装置を用いて、1つの吸着塔に対し上記表1に示した手順で再生工程を行い、その間の吸着塔内の圧力変化を測定した。なお、減圧容器の容積は、吸着塔の容積と同じとした。その結果を
図2に示す。
【0054】
[比較例1]
実施例1と同様のPSA装置を用いて、1つの吸着塔に対し下記表2に示した減圧容器を使用しない手順で再生工程を行い、その間の吸着塔内の圧力変化を測定した。なお、比較例1では、一次減圧の時間は実施例1と同じとし、二次減圧の時間は実施例1の二次均圧及び二次減圧の時間を合わせたものと同じとした。その結果を
図2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
図2に示すように、実施例1では減圧容器との均圧により吸引ポンプを用いた場合よりも迅速に真空度が上昇している。また、洗浄工程が進むにつれてより真空度が増していることがわかる。一方で、比較例1は、実施例1と同じ吸引ポンプを用いて同様の時間減圧を行ったにもかかわらず、真空度が低い。つまり、実施例1は同じ減圧時間、つまり同じ再生工程時間でより少ない洗浄ガスである製品ガスの量で吸着剤の再生を行えるため、水素回収率を向上できる。なお、二次減圧後に吸着塔内の圧力が上昇しているのは洗浄ガスを導入したことによる。
【0057】
<CO吸着剤の再生度>
次に、吸着塔への洗浄ガスの供給量とCO吸着剤の再生度の関係について検証した。吸着塔内にCO吸着剤を充填し、吸着塔内の圧力を大気圧(101kPa)から2kPaまで変化させながら洗浄ガスの供給量とCO吸着剤のCO脱着率を計測した。その結果を
図3に示す。
【0058】
図3では横軸をCO吸着剤が吸着したCOガス量(m
3)に対する供給した洗浄ガス量(m
3)の比をとり、縦軸にCOの吸着量に対する脱着量の比であるCO脱着率をとり、計測結果を吸着塔内の圧力ごとにグラフで示した。この図からわかるように、いずれの圧力でもCO脱着率を1にすることができるが、吸着塔内の圧力が低い、つまり真空度が高いほど、少ない洗浄ガス量で吸着剤のCO脱着率である再生度を高め、製品ガスの回収率を向上できることがわかる。
【0059】
<減圧容器の容積と減圧度>
さらに、減圧容器の容積と吸着塔の容積との比を変えつつ均圧工程を繰り返し行い、減圧容器の容積と吸着塔の容積との比及び減圧容器と均圧した際の吸着塔内の圧力の関係を求めた。この結果を
図4に示す。なお、均圧直前の減圧容器内の圧力、つまり真空度は不変とした。
【0060】
図4では横軸に減圧容器の容積(m
3)に対する吸着塔の容積(m
3)の比をとり、縦軸に均圧後の吸着塔内の圧力をとっている。この図からわかるように、吸着塔に対する減圧容器の容積の比を大きくするほど、均圧後の吸着塔の圧力を低くできることがわかる。例えば、上記比が0.4の場合、減圧容器との均圧で常圧から65kPaまで吸着塔内の減圧を行うことができ、吸引ポンプで排気した際の目標真空度への到達速度が大きく改善される。ただし、この容積の比が大きくなるにつれ、容積の増加に対して圧力低下の効果が小さくなるため、過度に減圧容器の容積を大きくすることはPSA装置の無用な大型化を招く。