(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の幅の第1矩形部と、前記第1矩形部より小さい幅の第2矩形部と、前記第1矩形部と前記第2矩形部を連続させるくびれ部とを備え、前記切欠部は、前記第2矩形部の端面に形成されることを特徴とする請求項3に記載のガイド板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した架構は、クロスヘッドの上下方向の移動により内燃機関における幅方向に対して荷重を受ける。この荷重は左右で非対称となっている。そのため、特許文献2に記載された往復動内燃機関の本体構造では、架構に水平リブなどを左右で非対称に設けている。しかし、クロスヘッドは、架構のガイド板により上下方向に移動自在に支持されていることから、ガイド板は、クロスヘッドの上下方向の移動によりサイドフォースを受ける。このガイド板は、隔壁と天板と底板に溶接されていることから、このサイドフォースにより溶接部に応力が発生する。この溶接部は、ガイド板より強度が低く、溶接部を起点とした疲労による損傷が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ガイド板の接合部に発生する応力を低減することが可能なガイド板、隔壁ユニット、架構及びクロスヘッド式内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のガイド板は、下端部が底板の上面に接合されてクロスヘッドを上下方向へ移動自在に支持するガイド板であって、上下方向における下部に応力集中緩和部が設けられる、ことを特徴とするものである。
【0008】
従って、クロスヘッドがガイド板に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板に対してサイドフォースが作用する。このとき、ガイド板と底板との接合部に対して応力が集中しやすいが、ガイド板の上下方向における下部に応力集中緩和部が設けられていることから、ガイド板と底板との接合部に発生する応力がこの応力集中緩和部に分散されて緩和される。そのため、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができる。
【0009】
本発明のガイド板では、前記応力集中緩和部は、前記クロスヘッドの下死点位置における前記クロスヘッドの中心位置と前記下端部との間に設けられることを特徴としている。
【0010】
従って、応力集中緩和部がクロスヘッドの下死点位置と下端部との間に設けられることで、応力集中緩和部に対して、クロスヘッドの上下方向の移動により発生するサイドフォースが直接作用することはない。そのため、応力集中緩和部への過大な応力集中が抑制され、応力集中緩和部を起点とするガイド板の疲労による損傷を抑制することができる。
【0011】
本発明のガイド板では、前記応力集中緩和部は、切欠部を備えることを特徴としている。
【0012】
従って、応力集中緩和部を切欠部とすることで、簡単な構成で適正にガイド板と底板との接合部に集中する応力を分散して緩和し、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができる。
【0013】
本発明のガイド板では、前記切欠部は、前記クロスヘッドを移動自在に支持する支持面に交差する端面が切欠かれて形成されることを特徴としている。
【0014】
従って、クロスヘッドを支持する支持面ではなく、その端面に切欠部を設けることで、ガイド板における十分な剛性を確保した上で、ガイド板と底板との接合部へ作用する応力を低減することができる。
【0015】
本発明のガイド板では、所定の幅の第1矩形部と、前記第1矩形部より小さい幅の第2矩形部と、前記第1矩形部と前記第2矩形部を連続させるくびれ部とを備え、前記切欠部は、前記第2矩形部の端面に形成されることを特徴としている。
【0016】
従って、切欠部を小さい幅の第2矩形部の端面に形成することで、切欠部に作用するサイドフォースが低下し、ガイド板における十分な剛性を確保した上で、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができる。
【0017】
本発明のガイド板では、前記切欠部は、円弧形状をなすことを特徴としている。
【0018】
従って、切欠部を円弧形状とすることで、切欠部における過大な応力集中を抑制し、切欠部を起点とするガイド板の疲労による損傷を抑制することができる。
【0019】
本発明のガイド板では、前記切欠部は、U字形状をなすことを特徴としている。
【0020】
従って、切欠部をU字形状とすることで、切欠部の深さに対して幅を大きくすることができ、切欠部における過大な応力集中を抑制することができ、切欠部を起点とするガイド板の疲労による損傷を抑制することができる。
【0021】
本発明のガイド板では、前記切欠部は、円弧と弦で構成される形状であり、前記円弧にかかる円の直径が前記弦の長さよりも長く設定されることを特徴としている。
【0022】
従って、切欠部を円弧と弦で構成される形状とし、円弧にかかる円の直径を弦の長さよりも長く設定することで、切欠部の深さに対して幅を大きくすることができ、切欠部における過大な応力集中を抑制することができ、切欠部を起点とするガイド板の疲労による損傷を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の隔壁ユニットは、中央部分を形成する中央板と、両端部分を形成する中間板と、前記中央板及び前記中間板の間に配置される前記ガイド板と、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
従って、クロスヘッドがガイド板に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板に対してサイドフォースが作用する。このとき、ガイド板と底板との接合部に対して応力が集中しやすいが、ガイド板の上下方向における下部に応力集中緩和部が設けられていることから、ガイド板と底板との接合部に集中する応力がこの応力集中緩和部に分散されて緩和される。そのため、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができ、隔壁ユニットの耐久性を向上することができる。
【0025】
本発明の隔壁ユニットでは、サポートリブが前記ガイド板に直交するように互いに所定間隔を空けて前記中間板及び前記ガイド板に接続されることを特徴としている。
【0026】
従って、クロスヘッドがガイド板に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板の受ける荷重がサポートリブに分散される。そのため、応力集中緩和部に作用する応力が減少し、ガイド板と底板との接合部に集中する応力を更に緩和することができる。また、サポートリブを設けることで、ガイド板と底板との接合部に加わる荷重を低減することができ、応力集中緩和部のクランク軸方向の深さを小さくすることができる。
【0027】
また、本発明の架構は、頂部に配置されて燃焼装置に接続される天板と、底部に配置されて台板に接続される底板と、側部に配置されて上端部が前記天板に接続されると共に下端部が前記底板に接続される側板と、前記天板と前記底板と前記側板に接続される前記隔壁ユニットと、を備えることを特徴とするものである。
【0028】
従って、クロスヘッドがガイド板に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板に対してサイドフォースが作用する。このとき、ガイド板と底板との接合部に対して応力が集中しやすいが、ガイド板の上下方向における下部に応力集中緩和部が設けられていることから、ガイド板と底板との接合部に集中する応力がこの応力集中緩和部に分散されて緩和される。そのため、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができ、ガイド板と底板との接合部の信頼性を確保すると同時に製作効率の高い架構を提供することができる。
【0029】
また、本発明のクロスヘッド式内燃機関は、台板と、前記台板上に設けられる前記架構と、前記架構上に設けられる燃焼装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0030】
従って、強度信頼性が高い内燃機関を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のガイド板、隔壁ユニット、架構およびクロスヘッド式内燃機関によれば、クロスヘッドを上下方向へ移動自在に支持するガイド板の下部に応力集中緩和部を設けるので、ガイド板と底板との接合部に発生する応力を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るガイド板、隔壁ユニット、架構およびクロスヘッド式内燃機関の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0034】
[第1実施形態]
図1は、ディーゼルエンジンを表す概略図である。
【0035】
第1実施形態にて、
図1に示すように、ディーゼルエンジン10は、例えば、船舶推進用の主機として用いられ、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である。このディーゼルエンジン10は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられる燃焼装置13とを有している。この台板11と架構12と燃焼装置13は、上下方向に延在する複数のテンションボルト(タイボルト)14,15により一体に締結されて固定されている。
【0036】
燃焼装置13は、シリンダライナ16が設けられており、このシリンダライナ16の上端にシリンダカバー17が設けられている。シリンダライナ16とシリンダカバー17は、空間部18を区画しており、この空間部18内にピストン19が上下に往復動自在に設けられることで、燃焼室20が形成される。また、シリンダカバー17は、排ガス弁21が設けられている。この排ガス弁21は、燃焼室20と排ガス管22とを開閉するものである。なお、排ガス弁21は、燃焼室20と排ガス管22とを開閉する機能を有していればよく、必ずしもシリンダカバー17の中央部に設ける必要はない。
【0037】
そのため、燃焼室20に対して、図示しない燃料噴射ポンプから供給された燃料(例えば、低質油、天然ガス、またはその混合燃料)と、図示しない圧縮機により圧縮された燃焼用ガス(例えば、空気、EGRガス、またはその混合ガス)が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼で発生したエネルギによりピストン19が上下動する。また、このとき、排ガス弁21により燃焼室20が開放されると、燃焼によって生じた排ガスが排ガス管22に押し出される一方、図示しない掃気ポートから燃焼用ガスが燃焼室20に導入される。
【0038】
ピストン19は、下端部にピストン棒23の上端部が回動可能に連結されている。台板11は、クランクケースとされており、クランクシャフト24を回転自在に支持する軸受25が設けられている。また、クランクシャフト24は、クランク26を介して連接棒27の下端部が回動自在に連結されている。架構12は、上下方向に延在する一対のガイド板28が所定間隔を空けて固定されており、一対のガイド板28の間にクロスヘッド29が上下に移動自在に支持されている。クロスヘッド29は、ピストン棒23の下端部と連接棒27の上端部がそれぞれ回動自在に連結されている。
【0039】
そのため、燃焼装置13からエネルギが伝達されたピストン19は、ピストン棒23と共に、ディーゼルエンジン10の設置面の方向(台板11側の方向、即ち、鉛直方向における下向き)に押し下げる。すると、ピストン棒23は、クロスヘッド29を同方向に押し下げ、連接棒27及びクランク26を介してクランクシャフト24を回転させる。
【0040】
ここで、ディーゼルエンジン10を構成する架構12について詳細に説明する。
図2は、第1実施形態の架構を表す斜視図、
図3は、架構の要部を表す斜視図、
図4は、隔壁ユニットを表す正面図、
図5は、ガイド板を表す要部正面図、
図6は、ガイド板を表す要部斜視図である。
【0041】
図2及び
図3に示すように、架構12は、天板31と、底板32と、側板33と、複数(本実施形態では、7個)の隔壁ユニット34とを有している。天板31は、頂部に配置されて燃焼装置13(
図1参照)に接続される。底板32は、底部に配置されて台板11(
図1参照)に接続される。側板33は、左右の側部に配置されてピストン動作方向(上下方向)における一端部(下端部)が底板32に接続され、他端部(上端部)が天板31に接続される。複数の隔壁ユニット34は、クランク軸方向に沿って一定間隔を空けて平行に配置される。
【0042】
この架構12は、天板31と底板32と側板33と各隔壁ユニット34により空間部Sが形成されている。この空間部Sは、クロスヘッド29(
図1参照)がガイド板28に支持されて移動することができる空間部であり、クロスヘッド29は、この空間部Sに収容され、ピストン動作方向(上下方向)を往復移動することができる。
【0043】
なお、ディーゼルエンジン10にて、この空間部Sの数(Sn)は、燃焼装置13における気筒(燃焼室20)の数(Cn)と一致するように設けられるため、隔壁ユニット34は、Cn+1の数のユニットが必要となる。即ち、本実施形態のように、6気筒のディーゼルエンジン10であれば、7個の隔壁ユニット34が設けられることとなる。
【0044】
天板31は、架構12におけるピストン動作方向の頂部を構成する板材である。この天板31は、テンションボルト15(
図1参照)が貫通する貫通孔31aが複数形成されており、この各貫通孔31aを通るテンションボルト15により燃焼装置13に固定される。底板32は、架構12におけるピストン動作方向の底部を構成する板材である。この底板32は、天板31と同様に、テンションボルト14(
図1参照)が貫通する貫通孔32aが複数形成されており、この各貫通孔32aを通るテンションボルト14により台板11に固定される。
【0045】
側板33は、矩形状をなす平面板であり、側板33におけるピストン動作方向の上端部が天板31に接続され、側板33におけるピストン動作方向の下端部が底板32に接続される。また、側板33は、矩形状をなす平面部が隔壁ユニット34におけるピストン動作方向及びクランク軸方向に直交する方向(内燃機関幅方向)の両側部に接続される。
【0046】
図4に示すように、隔壁ユニット34は、中央板41と、中間板42と、ガイド板28とを有している。中央板41は、隔壁ユニット34における内燃機関幅方向の中央部分を形成するものである。各中間板42は、隔壁ユニット34における内燃機関幅方向の両端部分を形成するものである。ガイド板28は、隔壁ユニット34における中央板41と各中間板42との間に配置され、溶接により接続されている。
【0047】
中央板41は、一辺に切欠部41aが形成された矩形状をなす平面板であり、切欠部41aが隔壁ユニット34の下部に位置するように配置される。中央板41は、内燃機関幅方向における両端部がガイド板28に溶接により接続されている。
【0048】
各中間板42は、上辺が下辺よりも短い寸法に設定され、且つ、上辺と下辺に垂直な一辺を有する台形状をなす平面板であり、隔壁ユニット34に2個設けられている。この各中間板42は、上辺側端部が天板31に接続され、下辺側端部が底板32に接続される。また、各中間板42は、上辺と下辺に垂直な一辺側端部がガイド板28に接続され、他辺側端部がそれぞれ側板33に接続される。
【0049】
ガイド板28は、
図4及び
図5に示すように、クロスヘッド29をピストン動作方向(上下方向)に移動自在に支持できるような左右一対の平面板であり、それぞれが第1矩形部51と、第2矩形部52と、くびれ部53とを有している。第1矩形部51は、クランク軸方向での所定幅H1を有し、第2矩形部52は、第1矩形部51の幅H1より小さいクランク軸方向での所定幅H2を有している。くびれ部53は、第1矩形部51と第2矩形部52との間に位置し、幅H1と幅H2とを連続させる湾曲形状となっている。この場合、第1矩形部51と第2矩形部52とくびれ部53は、中央板41(中間板42)に対して、左右対称形状となっている。
【0050】
そして、ガイド板28にて、第1矩形部51と第2矩形部52とくびれ部53を有する平面部のうち、対向する一方の平面部が中央板41の内燃機関幅方向における端部に接続され、対向しない他方の平面部が中間板42の一辺側端部に接続されている。また、第1矩形部51は、上端部が天板31に接続され、第2矩形部52は、下端部が底板32に接続されている。
【0051】
一対のガイド板28は、中央板41の内燃機関幅方向における端部が接続された一面にクロスヘッド29を移動自在に支持する摺動面28aが形成され、この対向する一対の摺動面28aによりクロスヘッド29を上下方向に移動自在に支持することができる。ここで、クロスヘッド29は、一対のガイド板28に沿って上下方向へ移動するとき、天板31の下面から第2矩形部52の上部側までの間が移動ストロークStに設定されている。なお、
図4にて、2点鎖線で表したクロスヘッド29は、下死点位置(クロスヘッド29の上下方向の移動における最下点位置)を示している。
【0052】
このように構成された本実施形態のガイド板28は、
図4から
図6に示すように、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部61が設けられている。この切欠部(応力集中緩和部)61は、隔壁ユニット34を構成する2個のガイド板28のうちの少なくとも1個のガイド板28に設けられている。本実施形態にて、切欠部61は、
図4にて、右側のガイド板28における第2矩形部52に設けられ、ガイド板28におけるクランク軸と垂直な面(隔壁面)に形成されている。
【0053】
この切欠部61は、クロスヘッド29を移動自在に支持する摺動面(支持面)28aに交差する端面が切欠かれて形成されている。即ち、切欠部61は、ガイド板28における第2矩形部52の端面一部が幅方向の深さを持って切欠かれて形成されている。そして、切欠部61は、内燃機関幅方向から見た形状が円弧形状、具体的に、半円形状をなしている。即ち、切欠部61は、幅W1に対して深さD1が半分(D1=W1/2)に設定されており、幅W1が直径、深さD1が半径の寸法となっている。
【0054】
また、切欠部61は、クロスヘッド29の下死点位置(
図4に二点鎖線で表す位置)におけるクロスヘッド29の中心位置Oと、ガイド板28の下端部(底板32との接合部)との間に設けられている。また、切欠部61は、ガイド板28における幅方向の左右の端面にそれぞれ設けられている。
【0055】
そのため、一対のガイド板28に対してクロスヘッド29が上下方向へ沿って移動するとき、このガイド板28に対してサイドフォースが作用する。このとき、ガイド板28は、底板32との接合部(溶接部)に対して過大な応力が集中しやすい。しかし、ガイド板28は、下部に切欠部(応力集中緩和部)61が設けられていることから、ガイド板28と底板32との接合部に作用する応力の一部がこの切欠部61に分散される。すると、ガイド板28と底板32との接合部に作用する応力が低減される。
【0056】
また、切欠部61は、ガイド板28におけるクロスヘッド29の下死点位置と底板32との間の領域に設けられていることから、クロスヘッド29の上下方向の移動により発生するサイドフォースが切欠部61に対して直接作用することはない。そのため、切欠部61への過大な応力集中が抑制される。
【0057】
なお、上述の説明では、切欠部61を半円形状としたが、この形状に限定されるものではない。
図7−1及び
図7−2は、ガイド板の切欠部の変形例を表す概略図である。
【0058】
図7−1に示すように、ガイド板28は、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部62が設けられている。この切欠部(応力集中緩和部)62は、U字形状をなしている。この切欠部62は、クロスヘッド29を移動自在に支持する摺動面(支持面)28aに交差する端面が切欠かれて形成されている。即ち、切欠部62は、ガイド板28における第2矩形部52の端面一部が幅方向の深さをもって切欠かれることで、内燃機関幅方向から見た形状がU字形状をなしている。つまり、切欠部62は、1対の円弧部62aとの間に直線部62bが形成されて構成されている。ここで、切欠部62は、幅W2に対して深さD2が半分以下(D2<W2/2)に設定されている。そのため、切欠部62は、直線部62bを有することで、各円弧部62aへの応力集中が緩和される。
【0059】
また、
図7−2に示すように、ガイド板28は、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部63が設けられている。この切欠部(応力集中緩和部)63は、円弧と弦で構成される形状であり、この円弧にかかる円の直径が弦の長さよりも長く設定されている。この切欠部63は、クロスヘッド29を移動自在に支持する摺動面(支持面)28aに交差する端面が切欠かれて形成されている。即ち、切欠部63は、ガイド板28における第2矩形部52の端面一部が幅方向の深さをもって切欠かれることで、内燃機関幅方向から見た形状が円弧形状をなしている。つまり、切欠部63は、円弧にかかる円の直径2Rが弦の長さ(幅W3)よりも長い形状となるように設定されてもよい。結果として、幅W3に対して深さD3が半分以下(D3<W3/2)に設定されている。そのため、切欠部63は、円弧にかかる円の直径2Rが比較的大きいことで、応力集中が緩和される。
【0060】
このように第1実施形態のガイド板にあっては、下端部が底板32の上面に接合されてクロスヘッド29を上下方向へ移動自在に支持するガイド板28であって、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部61を設けている。
【0061】
従って、クロスヘッド29がガイド板28に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板28に対してサイドフォースが作用する。このとき、ガイド板28と底板32との接合部に対して応力が集中しやすいが、ガイド板28の上下方向における下部に切欠部61が設けられていることから、ガイド板28と底板32との接合部に集中する応力がこの切欠部61に分散されて緩和される。そのため、ガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができる。
【0062】
この場合、応力集中緩和部を切欠部61とすることで、簡単な構成で適正にガイド板28と底板32との接合部に集中する応力を分散して緩和し、この接合部に発生する応力を低減することができる。
【0063】
第1実施形態のガイド板では、切欠部61をクロスヘッド29の下死点位置におけるクロスヘッド29の中心位置Oと、底板32との接合部下端部との間に設けている。従って、切欠部61に対して、クロスヘッド29の上下方向の移動により発生するサイドフォースが直接作用することはない。そのため、切欠部61への過大な応力集中が抑制され、切欠部61を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。
【0064】
第1実施形態のガイド板では、切欠部61は、クロスヘッド29を移動自在に支持する支持面28aに交差する端面が切欠かれて形成されている。従って、クロスヘッド29を支持する支持面28aではなく、その端面に切欠部61を設けることで、ガイド板28における十分な剛性を確保した上で、ガイド板28と底板32との接合部へ作用する応力を低減することができる。
【0065】
第1実施形態のガイド板では、所定の幅を有する第1矩形部51と、第1矩形部51より小さい幅を有する第2矩形部52と、第1矩形部51と第2矩形部52を連続させるくびれ部53とを設け、切欠部61を第2矩形部52の端面に形成している。従って、切欠部61を小さい幅の第2矩形部52の端面に形成することで、切欠部61に作用するサイドフォースが低下し、ガイド板28における十分な剛性を確保した上で、ガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができる。
【0066】
第1実施形態のガイド板では、切欠部61を円弧形状としている。従って、切欠部61における過大な応力集中を抑制し、切欠部61を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。
【0067】
第1実施形態のガイド板では、切欠部62をU字形状としている。従って、切欠部62の深さD2に対して幅W2を大きくすることができ、切欠部62における過大な応力集中を抑制することができ、切欠部62を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。
【0068】
第1実施形態のガイド板では、切欠部63を円弧と弦で構成される形状とし、円弧にかかる円の直径を弦の長さよりも長く設定している。従って、切欠部63の深さD3に対して幅W3を大きくすることができ、切欠部63における過大な応力集中を抑制することができ、切欠部63を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。
【0069】
また、第1実施形態の隔壁ユニットにあっては、中央部分を形成する中央板41と、両端部分を形成する中間板42と、中央板41及び中間板42の間に配置されるガイド板28とを設けている。従って、ガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができ、隔壁ユニット34の耐久性を向上することができる。
【0070】
また、第1実施形態の架構にあっては、頂部に配置されて燃焼装置13に接続される天板31と、底部に配置されて台板11に接続される底板32と、側部に配置されて上端部が天板31に接続されると共に下端部が底板32に接続される側板33と、天板31と底板32と側板33に接続される隔壁ユニット34とを設けている。従って、ガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができ、ガイド板28と底板32との接合部の信頼性を確保すると同時に、製作効率の高い架構12を提供することができる。
【0071】
また、第1実施形態のクロスヘッド式内燃機関にあっては、台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられる燃焼装置13とを設けている。従って、強度信頼性が高い内燃機関を提供することができる。
【0072】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の架構における隔壁ユニットを表す正面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
第2実施形態において、
図8に示すように、架構70は、天板31と、底板32と、側板33と、複数の隔壁ユニット71とを有している。隔壁ユニット71は、中央板41と、中間板42と、ガイド板28とを有している。そして、隔壁ユニット71は、中間板42及びガイド板28に複数のサポートリブ72,73が設けられている。サポートリブ72は、一方(
図8にて、右側)の中間板42及びガイド板28に固定され、サポートリブ73は、他方(
図8にて、左側)の中間板42及びガイド板28に固定されている。サポートリブ72,73は、ガイド板28に直交するように互いに所定間隔を空けて設けられている。
【0074】
即ち、サポートリブ72,73は、内燃機関幅方向に長手方向が沿うように中間板42及びガイド板28に接続される。サポートリブ72,73は、クロスヘッド29が上下方向に沿って移動するときに、発生したサイドフォースによりガイド板28の疲労による損傷を防止するものであり、サイドフォースによって発生する応力が大きくなる位置に配置される。本実施形態では、より強いサイドフォースを受ける側のガイド板28に対して、より多くのサポートリブ72,73を配置している。
【0075】
このように第2実施形態の隔壁ユニットにあっては、サポートリブ72,73をガイド板28に直交するように互いに所定間隔を空けて中間板42及びガイド板28に接続している。
【0076】
従って、クロスヘッド29がガイド板28に支持されて上下方向に移動するとき、ガイド板28の受ける応力がサポートリブ72,73に分散される。そのため、切欠部61に作用する応力が減少し、ガイド板28と底板32との接合部に集中する応力を更に緩和することができ、切欠部61を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。また、サポートリブ72,73を設けることで、ガイド板28と底板32との接合部に加わる応力を低減することができ、切欠部61のクランク軸方向深さを小さくすることができる。
【0077】
また、第2実施形態の架構にあっては、サポートリブ72,73を有する隔壁ユニット71を採用している。従って、ガイド板28と底板32との接合部へ作用する応力を低減することができ、ガイド板28と底板32との接合部の信頼性を確保すると同時に、製作効率の高い架構70を提供することができる。
【0078】
また、第2実施形態のクロスヘッド式内燃機関にあっては、台板11と、台板11上に設けられる架構70と、架構70上に設けられる燃焼装置13とを設けている。従って、強度信頼性が高い内燃機関を提供することができる。
【0079】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の架構における隔壁ユニットを表す正面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0080】
第3実施形態において、
図9に示すように、架構80は、天板31と、底板32と、側板33と、複数の隔壁ユニット81とを有している。隔壁ユニット81は、中央板41と、中間板42と、ガイド板28とを有している。そして、ガイド板28は、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部82が設けられている。この切欠部(応力集中緩和部)82は、クロスヘッド29の下死点位置(
図9に二点鎖線で表す位置)におけるクロスヘッド29の中心位置Oと、底板32との接合部下端部との間に設けられている。
【0081】
このように第3実施形態のガイド板にあっては、上下方向における下部に応力集中緩和部としての切欠部82を設け、この切欠部82をクロスヘッド29の下死点位置におけるクロスヘッド29の中心位置Oと、底板32との接合部下端部との間に設けている。
【0082】
従って、ガイド板28と底板32との接合部に集中する応力がこの切欠部82に分散されて緩和されるため、ガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができる。また、ガイド板28の十分な強度を確保しつつ、切欠部82によりガイド板28と底板32との接合部に発生する応力を低減することができ、切欠部82を起点とするガイド板28の疲労による損傷を抑制することができる。
【0083】
なお、上述した各実施形態では、一方のガイド板28に切欠部(応力集中緩和部)61,62,63,82を設けたが、両方のガイド板28に切欠部を設けてもよい。また、切欠部61,62,63,82をクロスヘッド29の下死点位置と底板32との間に設けたが、クロスヘッド29の下死点位置より上方に切欠部を設けてもよい。更に、切欠部61,62,63,82の形状は、円弧形状に限らず、三角や四角などの多角形の形状であってもよい。更に、応力集中緩和部は、切欠部61,62,63,82に限らず、開口部や薄肉部であってもよい。
【0084】
また、切欠部(応力集中緩和部)61,62,63,82を、図示しない給油管を固定するための固定部として併用してもよい。これにより、天板31と底板32と側板33と隔壁ユニット34,71,81によって形成される空間部Sをより有効に活用することができる。
【0085】
また、上述した各実施形態では、ガイド板28を左右一対の平面板としたが、この形状に限定されるものではない。例えば、ガイド板をその摺動面が矩形状の平面板となるように形成してもよく、この場合、ガイド板の製造が容易となる。
【0086】
また、ガイド板28と各構成部品との接続は、溶接等の冶金学的接合が好ましいが、ボルト止め等の機械的接合によって接続されてもよい。この場合、溶接欠陥等の冶金学的接合に伴う欠陥による接合部の強度不足を考慮する必要がないため、応力集中緩和部を比較的容易に設計することができる。