特許第6275645号(P6275645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62756454−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドの即放性製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275645
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドの即放性製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20180129BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61K31/506
   A61K9/36
   A61K47/38
   A61P35/02
   A61P35/00
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-541363(P2014-541363)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公表番号】特表2014-533283(P2014-533283A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012064610
(87)【国際公開番号】WO2013074432
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】61/559,281
(32)【優先日】2011年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バードワジ,ウプカー
(72)【発明者】
【氏名】ボルダウェカー,マンゲシュ サダシフ
(72)【発明者】
【氏名】コンフォート,アン リース
(72)【発明者】
【氏名】リ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】リ,シューフェン
(72)【発明者】
【氏名】マカロフ,アレクセイ
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0136097(US,A1)
【文献】 特表2005−533827(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164578(WO,A1)
【文献】 L. ZEMA,JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,2007年 1月 1日,V96 N6,P1527-1536
【文献】 KLEINEBUDDE PETER,EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACEUTICS AND BIOPHARMACEUTICS,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS B.V.,2004年 9月 1日,V58 N2,P317-326
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;
(ii)少なくとも1つのポリマーであって、前記ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースE50であり、前記ポリマーが前記コアをコーティングする、ポリマーとを含む固形製剤であって、前記コーティングは前記固形製剤の7〜13重量%である、前記固形製剤の崩壊が4〜15分遅延する固形製剤。
【請求項2】
ポリマーのコーティングが前記固形製剤の7〜10重量%である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
ポリマーのコーティングが前記固形製剤の10〜13重量%である、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記固形製剤の0〜8%が、pH2.0において5分後に溶解する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項5】
前記固形製剤の45〜60%が、pH2.0において30分後に溶解する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項6】
硬ゼラチンカプセルと同等の絶食状態における生物学的利用能を有し、
そのCmaxおよびAUCは、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含むカプセルと比較して、生物学的に同等な範囲にある、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項7】
(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアをローラー圧縮する工程と;(ii)前記コアを少なくとも1つのポリマーでコーティングする工程であって、前記ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースE50である工程とを含む、非晶質の4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含む固形製剤の調製方法。
【請求項8】
前記固形製剤が錠剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固形製剤の崩壊が4〜15分間遅延する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用のニロチニブ化合物(式I)を含む医薬組成物に関する。特に、本発明はニロチニブ錠剤コアを含み、さらにニロチニブコア上に少なくとも1つのポリマーコーティングを含む医薬組成物を対象とし、コーティングされていない錠剤製剤と比較して、ラグタイムを有する速崩性錠剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
ニロチニブとは、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。特に有用なニロチニブの塩は、ニロチニブ塩酸塩一水和物である。これらの治療用化合物は、Bcr−Ablプロテインチロシンキナーゼ(TK)活性の阻害剤として有用である。このような治療用化合物によって治療され得る状態の例は、慢性骨髄性白血病および消化管間質性腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【発明の概要】
【0003】
ニロチニブおよび以下に開示する他の治療用化合物は、該化合物の治療効果をそれを必要とする患者に送達し得るような医薬組成物、特に固形経口剤形に製剤化する必要がある。このようなニロチニブを含有する組成物を提供するための1つの問題は、ニロチニブの生理化学的性質であるが、それはニロチニブならびにその塩は水に溶けにくい化合物であり、製剤化および送達する(すなわち経口摂取した時に生物学的に利用可能にする)ことが困難だからである。相異なる剤形、すなわち錠剤とカプセルとを用いて、対応する薬物動態プロファイルを実現することもまた困難である。食物はニロチニブの生物学的利用能を増大させるため、別の問題は食効である。絶食状態と比較して、食物摂取後まもなく単位用量を投与した場合、AUCおよびCmaxに反映されるように、ニロチニブの全身曝露が際だって増大し、患者に潜在的な有害作用をもたらす。
【0004】
本発明は、(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;(ii)コアをコーティングする少なくとも1つのポリマーとを含む固形製剤であって、固形製剤の崩壊が4〜15分遅延する固形製剤を提供する。
【0005】
本発明は、(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;(ii)コアをコーティングする少なくとも1つのポリマーとを含む固形製剤であって、固形製剤の崩壊が4〜15分間遅延し、固形製剤は4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含む硬ゼラチンカプセルと同等の絶食状態における生物学的利用能を有する固形製剤も提供する。
【0006】
本発明は、(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;(ii)コアをコーティングする少なくとも1つのポリマーとを含む固形製剤であって、固形製剤の崩壊が4〜15分間遅延し、固形製剤は4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含むコーティングされていない固形製剤と比較して、減少したCmaxを有する固形製剤も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ニロチニブ錠剤(湿式造粒およびローラー圧縮)の溶解速度の概要を、ニロチニブカプセルと比較して示す図である。
図2】ニロチニブフィルムコーティング錠剤(7〜10%フィルムコーティング)のpH2.0における溶解速度の概要を示す図である。
図3】ニロチニブフィルムコーティング錠剤(10〜13%フィルムコーティング)のpH2.0における溶解速度の概要を示す図である。
図4】ローラー圧縮法によって調製されたニロチニブフィルムコーティング錠剤(10%フィルムコーティング)のpH2.0における溶解速度の概要を、湿式造粒法によって調製されたコーティングされていないニロチニブ錠剤と比較して示す図である。
図5】異なるニロチニブ固形製剤に関して、時間に対する平均ニロチニブ濃度のプロファイルの比較の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、錠剤形態に製剤化され、市販のニロチニブカプセル形態と生物学的に同等な薬物動態プロファイルを有する、ニロチニブまたはその薬学的に許容される塩の結晶質医薬組成物を提供する。
【0009】
本明細書で使用する場合、ニロチニブとは、式I:
【0010】
【化1】

の4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを意味する。
【0011】
ニロチニブは、式(II)の化合物およびN−オキシドならびにこのような化合物の薬学的に許容される塩のメンバーである:
【0012】
【化2】

(式中、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを表し;
は、水素、低級アルキル、1つ以上の同一もしくは異なる基で置換されていてもよいR、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基を表し、ここで基は、それぞれの場合に非置換または一置換もしくは多置換であり;
ならびにRは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式もしくは二環式ヘテロアリール基を表し、ここで基は、それぞれの場合に非置換または一置換もしくは多置換であり;
または、RおよびRは一緒になって、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルもしくはピリミジニルで一もしくは二置換されていてもよい4、5または6個の炭素原子のアルキレン;4もしくは5個の炭素原子のベンズアルキレン;1個の酸素原子および3もしくは4個の炭素原子のオキサアルキレン;または1個の窒素原子および3もしくは4個の炭素原子のアザアルキレンを表し、ここで窒素は、非置換であるか、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、もしくはピラジニルで置換されており;
は、水素、低級アルキル、またはハロゲンを表す)。
このような治療用化合物は、キナーゼ依存性疾患、特にBcr−AblおよびTie−2キナーゼ依存性疾患を治療するための医薬組成物、例えば1つ以上の増殖性疾患を治療するための薬剤としての医薬組成物の調製に適している。
【0013】
「治療用化合物」の定義において、接頭語「低級」は最大で7以下、特に最大で4以下の炭素原子を有する基を表し、該基は直鎖または1つ以上の分枝を有する分枝鎖である。
【0014】
本明細書で使用する場合、化合物、塩などについて複数形が用いられている場合、単数の化合物、塩なども意味すると解釈される。
【0015】
いずれの不斉炭素原子も、(R)、(S)または(R,S)立体配置、例えば(R)または(S)立体配置で存在し得る。したがって、化合物は異性体の混合物として、または純粋な異性体、例えばエナンチオマーとして純粋なジアステレオマーとして存在し得る。さらに本発明において、式Iの化合物の、あり得るいずれの互変異性体の使用も意図される。
【0016】
低級アルキルは、例えば1以上7以下、例えば1以上4以下を有するアルキルであって、直鎖または分枝鎖であり;例えば、低級アルキルはn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのブチル、n−プロピルもしくはイソプロピルなどのプロピル、エチルまたはメチルである。例えば、低級アルキルはメチル、プロピルまたはtert−ブチルである。
【0017】
低級アシルは、例えばホルミルまたは低級アルキルカルボニル、特にアセチルである。
【0018】
アリール基は、基の芳香環炭素原子に位置する結合を介して分子と結合する芳香族基である。例示的な実施形態において、アリールは6〜14個の炭素原子を有する芳香族基、特にフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルまたはフェナントレニルであって、非置換であるか、または1つ以上の、例えば3個まで、特に1もしくは2個の置換基、特にアミノ、一もしくは二置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換された低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化されたもしくはエステル化されたヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化されたカルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル、特にトリフルオロメタンスルホニルなど、ジヒドロキシボラ(−B(OH)2)、ヘテロシクリル、単環式もしくは二環式ヘテロアリール基および環の隣接する炭素原子に結合した低級アルキレンジオキシ(例えばメチレンジオキシ)、から選択される置換基で置換されている。アリールは、例えばフェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチルであって、それぞれの場合に、非置換であるか、または独立してハロゲン、特にフッ素、塩素、もしくは臭素;ヒドロキシ;低級アルキル(例えばメチル)、ハロゲン−低級アルキル(例えばトリフルオロメチル)、もしくはフェニルでエーテル化されたヒドロキシ;隣接する2個の炭素原子に結合する低級アルキレンジオキシ(例えばメチレンジオキシ、低級アルキル、例えばメチルもしくはプロピル);ハロゲン−低級アルキル(例えばトリフルオロメチル);ヒドロキシ−低級アルキル(例えば、ヒドロキシメチルもしくは2−ヒドロキシ−2−プロピル);低級アルコキシ−低級アルキル(例えば、メトキシメチルもしくは2−メトキシエチル);低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(例えば、メトキシカルボニルメチル);低級アルキニル(例えば1−プロピニル);エステル化されたカルボキシ、特に低級アルコキシカルボニル(例えばメトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルもしくはiso−プロポキシカルボニル);N−一置換カルバモイル、特に低級アルキル(例えばメチル、n−プロピルもしくはiso−プロピルで一置換されたカルバモイル);アミノ;低級アルキルアミノ(例えばメチルアミノ);ジ−低級アルキルアミノ(例えばジメチルアミノもしくはジエチルアミノ);低級アルキレン−アミノ(例えばピロリジノもしくはピペリジノ);低級オキサアルキレン−アミノ(例えばモルホリノ)、低級アザアルキレン−アミノ(例えばピペラジノ)、アシルアミノ(例えばアセチルアミノもしくはベンゾイルアミノ);低級アルキルスルホニル(例えばメチルスルホニル);スルファモイル;またはフェニルスルホニルを含む群から選択される1もしくは2個の置換基で置換されている。
【0019】
シクロアルキル基は、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであって、非置換であるか、または1つ以上の、特に1もしくは2個の、アリールの置換基として上記に定義した群から選択される置換基、例えば低級アルキル(例えばメチル)、低級アルコキシ(例えばメトキシもしくはエトキシ)、またはヒドロキシで置換されていてもよく、さらにオキソで置換されていてもよくまたはベンゾ環に縮合していてもよく、例えばベンズシクロペンチルもしくはベンズシクロヘキシルなどであってもよい。
【0020】
置換アルキルは、先に定義したようなアルキルであって、特に低級アルキル、例えばメチル;ここで1つ以上の、特に3個までの置換基が存在し得、主としてハロゲン、特にフッ素、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、およびフェニル−低級アルコキシカルボニルから選択される群からのものである。トリフルオロメチルが特に有用である。
【0021】
一または二置換アミノは、特に、互いに独立して、低級アルキル、例えばメチルなど;ヒドロキシ−低級アルキル(例えば2−ヒドロキシエチル);低級アルコキシ低級アルキル(例えばメトキシエチル);フェニル−低級アルキル(例えばベンジルもしくは2−フェニルエチル);低級アルカノイル(例えばアセチル);ベンゾイル;置換ベンゾイル(ここで、フェニル基は、特に1つ以上の、例えば1もしくは2個の、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、およびカルバモイルから選択される置換基で置換されている);およびフェニル−低級アルコキシカルボニル(ここでフェニル基は、非置換であるか、または特に、1つ以上の、例えば1もしくは2個の、ニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、およびカルバモイルから選択される置換基で置換されている)から選択される1または2個の基で置換されているアミノであり;ならびに、例えばN−低級アルキルアミノ(例えばN−メチルアミノ)ヒドロキシ−低級アルキルアミノ(例えば2−ヒドロキシエチルアミノもしくは2−ヒドロキシプロピル)、低級アルコキシ低級アルキル(例えばメトキシエチル)、フェニル−低級アルキルアミノ(例えばベンジルアミノ)、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルフェニルアミノ、低級アルカノイルアミノ(例えばアセチルアミノ)であるか、あるいは、ベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノを含む群から選択される置換基である(ここでフェニル基は、それぞれの場合に、非置換であるか、または特にニトロもしくはアミノ、または同様にハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルもしくはアミノカルボニルアミノで置換されている)。また、二置換アミノは、低級アルキレン−アミノ(例えばピロリジノ、2−オキソピロリジノもしくはピペリジノ);低級オキサアルキレン−アミノ(例えばモルホリノ)、または低級アザアルキレン−アミノ(例えばピペラジノもしくはN−置換ピペラジノ、例えばN−メチルピペラジノもしくはN−メトキシカルボニルピペラジノ)である。
【0022】
ハロゲンは、特にフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、特にフッ素、塩素、または臭素である。
【0023】
エーテル化されたヒドロキシは、特にC−C20アルキルオキシ、例えばn−デシルオキシ、低級アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、もしくはtert−ブチルオキシ)、フェニル−低級アルコキシ(例えばベンジルオキシ、フェニルオキシ)、ハロゲン−低級アルコキシ(例えばトリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシもしくは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)、または1もしくは2個の窒素原子を含む一もしくは二環式ヘテロアリールで置換された低級アルコキシ(例えばイミダゾリルで置換された低級アルコキシ、例えば1H−イミダゾール−1−イル、ピロリル、ベンゾイミダゾリル、例えば1−ベンゾイミダゾリル、ピリジル、特に2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、特に2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、特に3−イソキノリニル、キノリニル、インドリルもしくはチアゾリル)である。
【0024】
エステル化されたヒドロキシは、特に低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、低級アルコキシカルボニルオキシ(例えばtert−ブトキシカルボニルオキシ)、またはフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシ(例えばベンジルオキシカルボニルオキシ)である。
【0025】
エステル化されたカルボキシは、特に低級アルコキシカルボニル(例えばtert−ブトキシカルボニル、iso−プロポキシカルボニル、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニル)、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0026】
アルカノイルは、主としてアルキルカルボニル、特に低級アルカノイル、例えばアセチルである。
【0027】
N−一置換またはN,N−二置換カルバモイルは、特に低級アルキル、フェニル−低級アルキルおよびヒドロキシ−低級アルキル、もしくは低級アルキレン、オキサ−低級アルキレンもしくは末端の窒素原子において置換されていてもよいアザ−低級アルキレンから独立して選択される1または2個の置換基で置換されている。
【0028】
0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環式または二環式ヘテロアリール基は、、それぞれの場合において非置換または一置換もしくは多置換であり、ヘテロアリール基を式Iにおける分子の残部に結合させる環において不飽和である複素環部分を指し、例えば、結合環において、ただし、また任意に、いずれかの縮環(annealed ring)において、少なくとも1つの炭素原子が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子で置き換えられている環であり、結合環は、例えば5〜12個、例えば5もしくは6個の環原子を有し、上記単環式または二環式ヘテロアリール基は、非置換でもよく、あるいはアリールの置換基として上記に定義した群、とりわけ例えば低級アルキル(例えばメチル)、低級アルコキシ(メトキシもしくはエトキシ)、またはヒドロキシから選択される、1つ以上の、特に1または2個の置換基で置換されていてもよい。例えば単環式または二環式ヘテロアリール基は、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。例えば単環式または二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル(例えば1H−イミダゾール−1−イル)、ベンゾイミダゾリル(1−ベンゾイミダゾリル)、インダゾリル(特に5−インダゾリル)、ピリジル(特に2−,3−もしくは4−ピリジル)、ピリミジニル(特に2−ピリミジニル)、ピラジニル、イソキノリニル(特に3−イソキノリニル)、キノリニル(特に4−もしくは8−キノリニル)、インドリル(特に3−インドリル)、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニル、およびフラニルからなる群から選択される。本発明の1つの例示的な実施形態において、ピリジル基は、窒素原子に対してオルト位においてヒドロキシで置換され、それゆえに少なくとも部分的に、対応する互変異性体すなわちピリジン−(1H)2−オンの形態で存在する。別の例示的な実施形態において、ピリミジニル基は、2および4位の両方においてヒドロキシで置換され、それゆえに例えばピリミジン−(1H,3H)2,4−ジオンのような、いくつかの互変異性型で存在する。
【0029】
ヘテロシクリルは、特に窒素、酸素、および硫黄を含む群から選択される1もしくは2個のヘテロ原子を含む5、6または7員の複素環系であり、不飽和または完全もしくは部分飽和でもよく、非置換であるか、または特に低級アルキル(例えばメチル)、フェニル−低級アルキル(例えばベンジル)、オキソ、もしくはヘテロアリール(例えば2−ピペラジニル)で置換されており、ヘテロシクリルは、特に2−もしくは3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル、例えば2−もしくは3−モルホリニル、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、または2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
【0030】
塩は、特に式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。このような塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する式Iの化合物から、例えば有機酸または無機酸との酸付加塩として、特に薬学的に許容される塩として形成される。適当な無機酸としては、ハロゲン酸(例えば塩酸)、硫酸、またはリン酸などがあげられるが、これらに限定されない。
【0031】
適当な有機酸は、例えばカルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸もしくはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸もしくはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、2−、3−もしくは4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0032】
1つの有用なニロチニブ塩は、ニロチニブ塩酸塩一水和物、または4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イル)アミノ]ベンズアミド塩酸塩水和物である。ニロチニブの適当な塩およびそれらの多形は、WO2007/015870およびWO2007/015871に、より一般的に開示されている。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、例えば、薬学的に許容される担体中に、特定の量、例えば治療有効量の治療用化合物を含有し、キナーゼ依存性疾患の治療のために哺乳動物、例えばヒトに投与される混合物を意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比の釣り合いに対して、過度な毒性、炎症、アレルギー反応および他の問題となる合併症を引き起こさずに、哺乳動物、特にヒトの組織と接触させるのに適した化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0035】
医薬組成物中の治療用化合物の濃度は、ある量、例えば治療有効量で存在し、それは医薬品の吸収、不活化および排出の速度ならびに当業者に公知の他の要因に依存するであろう。さらに、用量値は、緩和しようとする状態の重篤度によっても変わることになることに注意すべきである。さらに、特定のいずれの被治療者に対して、個体の必要性および医薬組成物の投与者または医薬組成物投与の管理者の専門的な判断に従って、個別の投与レジメンを経時的に調節すべきであることを理解すべきである。治療用化合物は、1回で投与してもよく、またはいくつかのより少ない用量に分けて様々な時間間隔で投与してもよい。このように、適切な量、例えば適切な治療有効量は、当業者に公知である。
【0036】
例えば、治療用化合物の用量は、約0.1〜約100mg/被験者の体重(kg)/日の範囲であろう。代わりに、より低い用量、例えば0.5〜100mg、0.5〜50mg、または0.5〜20mg/kg体重/日の用量で投与されてもよい。薬学的に許容される塩の有効な用量の範囲は、送達されるべき活性部分の重量に基づいて算出し得る。もし塩それ自体が活性を示す場合、塩の重量を用いて、または当業者に公知の他の方法によって上記のように有効な用量を推定し得る。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「即時放出」は、治療用化合物の大部分が、例えば約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または約90%超が、例えば経口服用後1時間、40分、30分または20分内などの比較的短時間で迅速に放出されることを指す。即時放出として特に有用な条件は、経口服用の30分内に、少なくとも約80%以上の治療用化合物が放出されることである。特定の治療用化合物のための特定の即時放出条件は、当業者に認識され、または知られていよう。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「ラグタイム」は、経口摂取後、治療用化合物の大部分の放出が遅延している期間を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「添加剤」は、顆粒および/または固形経口投与製剤を調製するために、製剤技術において一般に用いられる薬学的に許容される成分を指す。添加剤の種類の例としては、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定化剤、充填剤(fillers)および希釈剤(diluents)があげられるが、これらに限定されない。当業者は、顆粒および/または固形経口剤形の特定の所望特性に関して、過度の負担なく、通常の実験により前記の添加剤の1つ以上を選択し得る。使用する各添加剤の量は、当技術分野で一般的な範囲内で変化し得る。以下の参考文献は、経口投与剤形を製剤化するために使用する技術および添加剤を開示し、その全ては参照により本明細書に組み込まれる。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th edition, Rowe et al., Eds., American Pharmaceuticals Association (2003);およびRemington: the Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2000)を参照のこと。
【0040】
本発明の例示的な実施形態において、発明されたニロチニブ固形製剤は、ニロチニブ錠剤コアをローラー圧縮し、ニロチニブ錠剤コアを機能性ポリマーでフィルムコーティングすることによって調製し、前記固形製剤の崩壊が4〜15分間遅延する。
【0041】
本発明は、本発明の組成物または医薬組成物を、それぞれ、動物もしくは患者に投与することによって生物学的利用能を増大させる方法も提供し、増大した生物学的利用能は、本発明の組成物または医薬組成物のCmax値もしくはAUC値を、本発明において開示されている組成物と比較することによって決定する。好ましくは、本方法は、投与された動物または患者において、薬物の生物学的利用能を、少なくとも1.3倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍増大させる。
【0042】
本方法の好ましい一実施形態において、本発明の組成物または医薬組成物は、それぞれ、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドを含み、Novartisによって製造された、上市されている市販のTasigna(商標)硬ゼラチンカプセル中の4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドと比較したとき、匹敵する生物学的利用能を有する。匹敵するとは、CmaxおよびAUCについて試験品(発明の製剤)と参照品(Tasigna(商標)カプセル製剤)との間の比率として表したとき、CmaxおよびAUCの90%CIが0.8〜1.25の範囲にあることと定義される。
【0043】
生物学的利用能は、当業者が一般的な方法によって測定することができる。例えば、錠剤、カプセル、液剤、散剤などを経口的にヒトまたは動物に与え、血中濃度を測定する。
【0044】
本発明による組成物または医薬組成物は、1つ以上の結合剤、増量剤、滑沢剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、発泡剤および他の添加剤も含み得る。このような添加剤は、本技術分野で公知である。増量剤の例は、乳糖一水和物、乳糖無水物、微結晶セルロース(例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102)、微結晶セルロースおよびケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(登録商標))、ならびに種々のデンプン類であり、結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドンである。適当な滑沢剤は、圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含み、コロイド状二酸化ケイ素(例えばAerosil(登録商標)200)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびシリカゲルである。甘味剤の例は、任意の天然または人工甘味剤であり、例えばスクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、スクラロース、マルチトールおよびアセスルファムなどである。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガムフレーバー、および果実フレーバー、などである。適当な希釈剤(diluents)としては、薬学的に許容される不活性な充填剤(filler)、例えば微結晶セルロース、乳糖、リン酸水素カルシウム、糖類および/または前記のいずれかの混合物があげられる。希釈剤(diluents)の例としては、微結晶セルロース(例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102);乳糖(例えば乳糖一水和物、乳糖無水物、およびPharmatose(登録商標)DCL21);リン酸水素カルシウム(例えばEmcompress(登録商標));マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;ならびにブドウ糖があげられる。発泡剤の例は、発泡性一対、例えば有機酸と炭酸塩または炭酸水素塩である。
【0045】
ニロチニブ(Niliotinib)は、45%超の高い薬物負荷と関連した圧縮性の問題を示し、製剤が杵に付着およびピッキングする傾向も有するため、高いステアリン酸マグネシウム量を必要とする。製剤は、適切な結合剤が存在しない場合、破砕性の問題も有している。これら全ての難題を克服するために、製剤は、最適化された量の精選された添加剤を必要とする。
【0046】
一実施形態において、発明されたコア錠剤は、錠剤の重量に対して30〜70重量%の量のニロチニブ、錠剤の重量に対して、充填剤として20〜60重量%の範囲のAvicel(登録商標)PH102(微結晶セルロース)、結合剤として2〜6重量%の範囲のHPC EXF、超崩壊剤として2〜14重量%の範囲のクロスポビドン、流動促進剤(glidant)または流動性促進剤(flow enhancer)として0.25〜4重量%の範囲のAerosil、内部粒状成分(I)として0.25〜2重量%の範囲のステアリン酸マグネシウムおよび外部粒状成分(II)として0.7〜3.5重量%の範囲のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0047】
一実施形態において、組成物は固形経口剤形である。固形経口剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル、散剤があげられる。液体経口剤形としては、溶液および懸濁液があげられる。一実施形態において、固形製剤はポリマーフィルムコーティング錠剤である。
【0048】
錠剤からの初期放出の遅延に用いられ得る異なるクラスのポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、ポリビニルピロリドン(例えばK30、K90)、ポリビニルアセテート、Kollidon VA 64{Copovidoneまたは(ポリビニルアセテート40%およびポリビニルピロリドン60%)}、Kollidon SR(ポリビニルアセテート80%およびポリビニルピロリドン20%)メタクリル酸(ポリマーおよびグラフトコポリマー)、カルボマーポリマー(例えば、Carbopol 971P NF、Carbopol 974P NF)、ビーガム(veegum)、ベヘン酸グリセリル/ジベヘネート(Compritol(登録商標)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC AS)およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC−P)から選択される。
【0049】
一態様において、本発明は、ニロチニブと添加剤とをブレンドする工程と、それらをローラー圧縮して顆粒を形成する工程とを含む、組成物の製造方法を提供する。顆粒は、錠剤または丸剤に圧縮される。次に、ニロチニブ錠剤コアは、ポリマーコーティングを用いて種々の厚さまでフィルムコーティングされ、崩壊前のラグタイムがもたらされる。
【0050】
以下の例は、本発明を例示するために提供する。しかしながら、本発明は、以下の例において記載されている特定の条件または細目に限定されないことを理解すべきである。以下の例は例示的であり、本明細書に記載された本発明の範囲を限定するものではない。本例は、本発明を実施する方法を示唆することだけを意図している。
【0051】
成分の量は、医薬組成物に対する重量パーセントで表され、各例における使用量は、それぞれの記述の後にあるそれぞれの表に記載されている。カプセルについては、医薬組成物の重量を計算する時(すなわち、カプセル充填量)、カプセル外皮自体の重量は計算から除外する。
【実施例】
【0052】
実施例1 ニロチニブ錠剤コア
ニロチニブ錠剤コアの一例(処方A)を表1にまとめる。ニロチニブ錠剤コアは、ローラー圧縮法によって調製した。湿式造粒技術を使用して開発された市販のニロチニブカプセル製剤と比較して、ローラー圧縮法によって調製した発明されたニロチニブ錠剤コアは、一貫して優良な圧縮特性を示すニロチニブ錠剤コアを実現し、6〜10kpの圧縮ウィンドウ、低い破砕性を有する錠剤コア、速い崩壊時間(1〜2分)および高速で圧縮できる錠剤コアを含むが、これらに限定されない。
【0053】
【表1】

50mgおよび100mgの単位剤形もまた、ニロチニブ錠剤コア処方Aから製造した。単位剤形は、200mg、300mgおよび400mgの量の単位用量に合わせて調製した。
【0054】
実施例2 ニロチニブ錠剤コア
ニロチニブ錠剤コアの別の例(処方B)を表2にまとめる。ニロチニブ錠剤コアは、ローラー圧縮法によって調製した。湿式造粒技術を使用して開発された市販のニロチニブカプセル製剤と比較して、ローラー圧縮法によって調製した発明されたニロチニブ錠剤コアは、一貫して優良な圧縮特性を示すニロチニブ錠剤コアを実現し、6〜10kpの圧縮ウィンドウ、低い破砕性を有する錠剤コア、速い崩壊時間(1〜2分)および高速で圧縮できる錠剤コアを含むが、これらに限定されない。
【0055】
【表2】

50mgおよび100mgの単位剤形もまた、ニロチニブ錠剤コア処方Aから製造した。単位剤形は、200mg、300mgおよび400mgの量の単位用量に合わせて調製した。
【0056】
製造プロセス
ニロチニブをAerosil 200 PH、HPC EXF、およびクロスポビドンと混合した。微結晶セルロースを加え、混合物をブレンドした。ブレンドした混合物を、次に16メッシュ〜35メッシュのふるいで篩過した。篩過した混合物にステアリン酸マグネシウム(I)を加え、再び混合してステアリン酸マグネシウムを分散させた。この混合物を圧縮力15〜40kNを用いて、50mmローラー圧縮機でローラー圧縮した。次にリボンを、ふるい(範囲10〜18USメッシュサイズ)を通して粉砕した。粉砕された顆粒をステアリン酸マグネシウム(II)と混合してステアリン酸マグネシウムを分散させた。
【0057】
溶解
以下のニロチニブ錠剤コア(nilotinib table core)(処方AおよびB)、湿式造粒したニロチニブ製剤カプセル、およびニロチニブカプセル製剤に、2工程溶解条件を使用した:37℃;工程1、0〜60分、500ml、pH2緩衝液、工程2、>60分、1000ml、pH6.8緩衝液;パドル75rpm。
【0058】
ローラー圧縮したニロチニブ処方AおよびBから調製した発明されたニロチニブ錠剤コアは、市販のニロチニブカプセル製剤と比較して、錠剤の圧縮力および硬度と無関係に、速い崩壊速度(<2分)を示した(図1)。発明されたニロチニブ錠剤コアを市販のニロチニブカプセル製剤と生物学的に同等とするためには、ニロチニブ錠剤コアの崩壊時間を遅延させるための崩壊ラグタイムが必要であった。このラグタイム(4〜12分)は、コア錠剤上に機能性ポリマー系コーティングを使用して達成され、錠剤がラグタイム前に崩壊するのを防止した。
【0059】
フィルムコーティングニロチニブ錠剤コア
フィルムコーティングニロチニブ錠剤の組成を表3にまとめる。ニロチニブ処方AおよびBからフィルムコーティングニロチニブ錠剤コアを調製した。
【0060】
【表3】

フィルムコーティング厚は、ニロチニブ錠剤コアの重量増加に基づいて変更し得る。フィルムコーティングの重量増加の増大に対応して、崩壊時間の増大が観察された。
【0061】
Opadry White、YellowおよびRedは、錠剤を淡黄色に着色し、美的価値のためにのみ存在するが、HPMC E50は、崩壊時間を遅延させる機能性ポリマーである。
【0062】
機能性コーティングは、以下の特徴を有する独特の溶解プロファイルをもたらす:
1)7%の機能性コーティングの重量増加に関して、pH2.0、900mlにおいて以下の溶解プロファイルが観察される
・5分で0〜8%溶解
・10分で20〜30%溶解
・15分で35〜45%溶解
・30分で45〜60%溶解
2)10%の機能性コーティングの重量増加に関して、pH2.0、900mlにおいて以下の溶解プロファイルが観察される
・5分で0〜5%溶解
・10分で10〜25%溶解
・15分で25〜45%溶解
・30分で45〜55%溶解
3)13%の機能性コーティングの重量増加に関して、pH2.0、900mlにおいて以下の溶解プロファイルが観察される
・5分で0%溶解
・10分で2〜10%溶解
・15分で20〜35%溶解
・30分で45〜55%溶解
【0063】
【表4】
【0064】
ヒトのPKの結果
最初の研究において、いずれの機能性コーティングもしていない錠剤製剤をヒトで試験した。結果は下記の通りである。
【0065】
【表5】

上記のように、どの製剤も上市されている参照品のカプセル製剤と生物学的に同等ではなく、全ての剤形が上市されている参照品のカプセル製剤と比較してより高いCmaxを示したが、Cmax比はAUC比よりも不均衡に高かった。
【0066】
別の研究において、10%フィルムコーティングした300mg RC変形型をBEについて試験し、結果は下記の通りである。
【0067】
変形型BB(10%フィルムコーティングしたRC1)および変形型CC(10%フィルムコーティングしたRC2)のPKの結果。
【0068】
【表6】
濃度300mgの機能性フィルムコーティングをしたRC1およびRC2変形型について、生物学的同等性が実証された。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;(ii)前記コアをコーティングする少なくとも1つのポリマーとを含む固形製剤であって、前記固形製剤の崩壊が4〜15分遅延する固形製剤。
[2]
前記ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、[1]に記載の固形製剤。
[3]
前記固形製剤の7〜13%が、前記コアをコーティングするポリマーである、[2]に記載の固形製剤。
[4]
前記固形製剤の0〜8%が、pH2.0において5分後に溶解する、[1]に記載の固形製剤。
[5]
前記固形製剤の45〜60%が、pH2.0において30分後に溶解する、[1]に記載の固形製剤。
[6]
(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアと;(ii)前記コアをコーティングする少なくとも1つのポリマーとを含む固形製剤であって、
硬ゼラチンカプセルと同等の絶食状態における生物学的利用能を有し、
そのCmaxおよびAUCは、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含むカプセルと比較して、生物学的に同等な範囲にある
固形製剤。
[7]
前記ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、[6]に記載の固形製剤。
[8]
前記固形製剤の7〜13重量%が、前記コアをコーティングするポリマーである、[6]に記載の固形製剤。
[9]
前記固形製剤の0〜8重量%が、pH2.0において5分後に溶解する、[6]に記載の固形製剤。
[10]
前記固形製剤の45〜60重量%が、pH2.0において30分後に溶解する、[6]に記載の固形製剤。
[11]
(i)4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩および添加剤を含むコアをローラー圧縮する工程と;(ii)前記コアを少なくとも1つのポリマーでコーティングする工程とを含む、非晶質の4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩を含む固形製剤の調製方法。
[12]
前記固形製剤が錠剤である、[11]に記載の方法。
[13]
前記ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースである、[12]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5