特許第6275691号(P6275691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275691任意の時点でストリーミングメディアにコンテンツを挿入する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275691
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】任意の時点でストリーミングメディアにコンテンツを挿入する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/262 20110101AFI20180129BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20180129BHJP
   H04N 21/238 20110101ALI20180129BHJP
【FI】
   H04N21/262
   G06F13/00 540A
   H04N21/238
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-506053(P2015-506053)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2015-520545(P2015-520545A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】CA2013000379
(87)【国際公開番号】WO2013155611
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/635,222
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】インドラヴァダン・ヴィピンバイ・パテル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ロバート・フィルポット
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ゲイリー・ディン
【審査官】 福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/059286(WO,A1)
【文献】 特開2010−103718(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0153988(US,A1)
【文献】 特開2001−238172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00−21/858
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
番組マニフェストによって規定されたストリーミングメディア番組であってデータのチャンクに配列されているストリーミングメディア番組に、少なくとも一つの特定の時点で、コンテンツを挿入するための方法であって、
(i)前記特定の時点で前記ストリーミングメディア番組を、1つ又は複数のプロセッサ上で実行されるストリーム再パッケージャによりレンダリングするためのデータを含む前記ストリーミングメディア番組の前記チャンクを識別するステップと、
(ii)第1および第2の置き換えチャンクを生成するために前記識別されたチャンクを、前記ストリーム再パッケージャにより再パッケージングするステップであって、前記第1の置き換えチャンクは、特定の時点まで前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記特定の時点の後に前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために必要な前記識別されたチャンクの前記データを含むステップと、
(iii)前記第1および前記第2の置き換えチャンクを参照して、前記識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために前記番組マニフェストを、前記ストリーム再パッケージャにより更新するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ストリーミングメディア番組は、少なくとも二つの異なる品質レベルで利用可能であり、各品質レベルは、異なるセットのデータのチャンクからなり、前記番組マニフェストは、各セットにおける前記チャンクを示し、前記ステップ(i)、(ii)、および(iii)は、各セットのデータのチャンクについて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリーミングメディア番組は、オーディオ番組である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリーミングメディア番組は、オーディオおよびビデオ番組である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ストリーミングメディア番組は、ビデオオンデマンド番組である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ストリーミングメディア番組は、ライブ番組であり、前記番組マニフェストは、前記番組の放送中に規定される、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記更新されたマニフェストがレンダリングデバイスに提供された場合、前記ステップ(ii)における第1および第2の置き換えチャンクの生成は、前記レンダリングデバイスがそれら各置き換えチャンクのダウンロードを試みたときにのみ実施される、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記特定の時点で挿入されるべき前記コンテンツの識別を、前記ストリーム再パッケージャにより受信するステップと、
前記ストリーミングメディア番組の再生が前記挿入されたコンテンツを含むように、挿入されるべき前記識別されたコンテンツに対する参照を前記番組マニフェストに含めるために前記番組マニフェストを、前記ストリーム再パッケージャにより更新するステップと、を含む請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記挿入されたコンテンツは、広告コンテンツである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの特定の番組時間にストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入することを可能とするためにデータのチャンクに配列された前記ストリーミングメディア番組を処理するストリーム再パッケージャであって、
少なくとも一つのプロセッサとメモリとを備え、再パッケージングプログラムを実行することが可能な演算デバイスと、
前記演算デバイスがネットワークを通じて前記ストリーミングメディア番組を表す前記データのチャンクを読み出すと共に前記ストリーミングメディア番組を表す前記再パッケージングされたデータのチャンクをネットワークに出力することが可能なネットワークインターフェイスと、
を備え、ここで、前記再パッケージングされた番組は、
前記ストリーミングメディア番組内の少なくとも一つの特定の番組時間でコンテンツの前記挿入を可能とするための要求を受信し、そして、前記少なくとも一つの特定の番組時間で前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために前記データを含む前記ストリーミングメディア番組の前記チャンクを識別するように作動し、
第1および第2の置き換えチャンクを生成するために前記識別されたチャンクを再パッケージングするように作動し、前記第1の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間まで前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間の後に前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、
そして、前記第1および第2の置き換えチャンクを参照して各識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために番組マニフェストを更新するように作動するストリーミング再パッケージャ。
【請求項11】
前記再パッケージングプログラムは、前記ストリーミングメディア番組をプレイするプレイヤが前記第1または第2の置き換えチャンクのそれぞれをダウンロードすることを試みる場合にのみ、前記第1および第2の置き換えチャンクを形成する、請求項10に記載のストリーミング再パッケージャ。
【請求項12】
前記ストリーミングメディア番組は、オーディオおよびビデオ番組である、請求項10または11に記載のストリーミング再パッケージャ。
【請求項13】
少なくとも一つのエンドユーザレンダリングデバイスにストリーミングメディア番組を配信するためのストリーミングコンテンツ配信システムであって、
ユーザによって要求され得る少なくとも一つの利用可能なストリーミング番組を記述する少なくともメタデータを含むコンテンツ情報システムと、
少なくとも一つのストリーミングメディア番組を表すデータのチャンクを格納するように作動するオリジンサーバと、
記少なくとも一つのストリーミングメディア番組をプレイするためにレンダリングされ得る前記利用可能なデータのチャンクを規定する番組マニフェストを受信し、前記少なくとも一つのストリーミングメディア番組内の少なくとも一つの特定の番組時間にコンテンツの挿入を可能とするための要求を受信し、前記少なくとも一つの特定の番組時間に前記番組をレンダリングするための前記データを含む前記ストリーミング番組の前記チャンクを識別し、前記識別されたチャンクを再パッケージングして第1および第2の置き換えチャンクを形成するように動作可能なストリーム再パッケージャであって、前記第1の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間まで前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間の後に前記番組をレンダリングし、第1および第2の置き換えチャンクのそれぞれを参照して各識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために前記番組マニフェストを更新するのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含む、ストリーム再パッケージャと、
前記更新された番組マニフェストが、挿入されるべき前記コンテンツに対する参照を含むように、前記更新された番組マニフェストを修正するための挿入マネージャと、
前記少なくとも一つのエンドユーザのレンダリングデバイスに前記修正された番組マニフェストを配信するコンテンツ配信ネットワークであって、前記レンダリングデバイスが、前記修正された番組マニフェストに従い且つ前記コンテンツ配信ネットワークを通じて、前記挿入されたコンテンツと前記番組の前記チャンクとをダウンロードし、それに応じて、前記ストリーミングメディア番組と前記挿入されたコンテンツとをレンダリングする、コンテンツ配信ネットワークと、
を備えるストリーミングコンテンツ配信システム。
【請求項14】
前記挿入マネージャに前記少なくとも一つの特定の時間で挿入されるべきコンテンツを識別するコンテンツ挿入システムを更に備えた、請求項13に記載のストリーミングコンテンツ配信システム。
【請求項15】
前記挿入されるべきコンテンツは、広告コンテンツである、請求項14に記載のストリーミングコンテンツ配信システム。
【請求項16】
前記ストリーミングメディア番組は、オーディオおよびビデオ番組である、請求項13に記載のストリーミングコンテンツ配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年4月18日付けで出願された米国仮出願第61/635222号に基づく優先権を主張するものであり、この先出願の内容は、そのまま参照することにより、本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ストリーミングメディアにコンテンツを挿入するためのシステム及び方法に関する。更に詳しくは、本発明は、ストリーミングメディア内の1又は2以上の任意の時点(time point)でストリーミングメディアにコンテンツを挿入するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
データ接続の一般的な利用可能性とインターネットの拡散は、メディアの提供形態や使用形態を変えている。特に、従来のテレビ及び/又はラジオ(即ち、オーディオ)サービスは、次第にオンデマンドのデジタルネットワークベースのストリーミングメディア及び/又はライブストリーミングメディアに取って代わられつつある。このようなストリーミングメディアコンテンツは、ケーブル会社のセットトップボックスベースのネットワークのような任意のデジタルネットワークを通じて、または、次第にインターネットを通じて配信され得る。上記配信は、テレビまたはモニタに接続されたアップルTVまたはXbox360のような任意の適切なレンダリングデバイス(rendering device)に対してなされ、または、インターネットTVのようなレンダリングデバイス及びディスプレイ、または、アップルのiPad、ラップトップコンピュータ、携帯電話等において稼働するプレイヤソフトウェアのような携帯デバイスに対してなされる。
【0004】
ほとんどの場合、ストリーミングメディアは、ネットワークを通じてプレイヤに配信される“チャンク(chunk)”にセグメント化される。各チャンクは、例えば10分など、所定の分解能でメディアの選択期間(Selected duration)をレンダリングするのに必要とされるビデオ及び/又はオーディオ情報を含む。
【0005】
プレイヤが番組のプレイバック(playback)を開始する場合、最初に番組の1又は2以上のチャンクをプレイヤキャッシュにダウンロードし、そして、次に必要とされるチャンクがネットワークを通じてダウンロードされている間、上記ダウンロードしたそれらのチャンクでプレイバックを開始する。このように、番組全体がダウンロードされる前に番組のプレイバックを開始できる。
【0006】
このようなストリーミングメディア配信システムによるコンテンツの配信に市場がシフトするにつれ、このようなストリーミングメディアにおいて広告するための能力は、また、広告主やコンテンツ配信者に新たな機会を提供している。例えば、視聴者によってメディアが要求された場合、番組の配信中に提示され及び/又は再生されるべき広告、プレイヤ/視聴者が位置している場所、及び/又は、コンテンツを見ている特定の視聴者を含む視聴者層、コンテンツが表示されているデバイスのタイプ(モバイル対固定)などのような、任意の適切な基準に基づき選択されている広告を選択することが可能である。実際に、広範な視聴者層および他の基準は、広告(又は他のコンテンツ)がどの視聴者に提示されるかの選択に適用可能であり、このような考慮の全範囲は、当業者には明らかであり、本明細書では説明されない。
【0007】
今まで、ストリーミングメディア番組に挿入された広告コンテンツのようなコンテンツの再生は、1または2つの手法でなされている。即ち、二つのプレイヤを使用するユーザのレンダリングデバイスを有することによる手法であり、それぞれぞれが、メディアデータの二つのストリームのうちの一つをプレイし、必要に応じて二つのプレイヤの間で切り替わる。または、ユーザのレンダリングデバイス上で単一のプレイヤによってプレイされるトータルメディア番組のための単一のコンポジットストリームを形成するためにメイン番組ストリームにコンテンツを挿入する手法である。
【0008】
広告主または他のエンティティが他のコンテンツをプレイすることを望む場合、プレイヤ間での切り替えで、メイン番組を含むストリームは、特定された時点に到達されるまでプレイされ、それから、レンダリングデバイスは、他のコンテンツを含む他のストリームをプレイする第2のプレイヤに切り替えられる。他のコンテンツの再生が完了すると、レンダリングデバイスは、停止した点からメイン番組の再生を開始する元の第1のプレイヤに切り替わる。
【0009】
このようなプレイヤ切り替えシステムが作動できるとはいえ、エンドユーザのレンダリングデバイスは、両方のプレイヤのストリーミングコンテンツをダウンロードして適切にバッファリングする必要があり、これは、ネットワークを通じたダウンロードのマネージメントに関する発見的問題解決法(heuristics)およびコントロールロジックに悪影響を与え得る。
【0010】
更にまた、プレイヤ間の切り替えのためのロジックおよびコントロールは、ユーザレンダリングデバイスで実施されなければならず、それは、好ましくないプレイバック可変性(variability)(即ち、ユーザが挿入されたコンテンツを“スキップ”することを潜在的に可能とすること)をもたらし得る。
【0011】
挿入されたコンテンツをプレイする更に好ましい方法は、上記挿入されたコンテンツをメディア番組のチャンクのストリームに組み込んで単一コンポジットストリームを形成することである。このような単一のストリーム放送システムでは、挿入されるコンテンツは、プレイヤが単にチャンクのストリームをプレイするようにしてダウンロードされるチャンクのストリームに挿入され、そのストリームは、メディア番組と上記挿入されたコンテンツの両方を含む。
【0012】
単一のストリーミングにコンテンツを挿入することは、プレイヤ切り替えソリューションよりも洗練されたソリューションではあるが、それは、これまでに幾つかの不利益に苦しんでいる。具体的には、ストリーミングメディア番組は、メディア番組を表すチャンクと挿入されたコンテンツを表すチャンクとの両方を含み、メディア番組は、挿入されたコンテンツをプレイするのに望ましい時点で、挿入されたコンテンツの開始を表すチャンクがプレイされ得るようにメディア番組の現在の区間を表すチャンクが終了するように、符号化(圧縮およびセグメント化、または“チャンク化(chunked)”)されなければならない。従って、単一のストリームの生成を許容するため、メディア番組は、チャンク境界(即ち、レンダリングされるコンテンツ終了点)が正しく生成されるように、追加的なコンテンツの挿入が発生すべき時点の予備知識(prior knowledge)を用いて符号化されなければならない。
【0013】
従って、チャンク化されたストリーミングメディア番組を製作する場合、コンテンツ提供者は、コンテンツをストリームに挿入するのに望ましく、挿入されるコンテンツの直前にレンダリングされるべき番組コンテンツを含むチャンク境界が、挿入されるコンテンツの最初のチャンクのプレイを所望の時点でデコーダが継ぎ目なく開始することを可能とするその所望の挿入時点で終了することを保証するのに望ましい各時点および全ての時点を把握しなければならない。
【0014】
このことは、挿入されるコンテンツに適合する適切な時点での境界が、コンテンツを提供するコストを増加させ、そしてまた、必要なチャンク境界を提供するために前もって規定され符号化された符号化番組におけるそれらの時点のみにコンテンツの挿入を制限している状態で、メディア番組のチャンクを生成することを必要とする。もし、引き続き、メディア番組における異なるコンテンツを挿入することが望まれれば、メディア番組の符号化およびセグメント化は、新たに望まれる挿入時点で必要なチャンク境界が生成されることを保証するために再実施されなければならない。
【0015】
例えば、本来は、30分メディア番組内で、2分時点と18分時点でコンテンツを挿入することが望まれている。メディア番組は、これを可能とするために、所望の2分時点と18分時点でメディア番組チャンク境界を提供するために符号化されセグメント化され得る。もし、引き続き、また、メディア番組における所望の10分時点でコンテンツを挿入することが望まれれば、必要なメディア番組チャンク境界が10分時点でも提供されることを保証するためにメディア番組が再符号化および再セグメント化されなければ、そのようにすることはできない。
【0016】
また、ライブストリーミング番組のための単一ストリーム放送システムでも問題が存在する。このような場合、コンテンツ提供者は、ストリーミング番組中に“オンザフライ(on the fly)で”広告または他のコンテンツを挿入することを決定する。典型的には、ストリーミング番組は、例えば、7秒などの或る遅延を持って伝送され、そして、コンテンツ提供者は、適切な信号手段により、適切な信号が送信された後に或る選択された量の時間だけコンテンツが挿入されることを、コンテンツ配信システムにおける符号化およびセグメント化システムに示す。そして、符号化およびセグメント化システムは、所望のコンテンツが所望の時点で挿入され得るように、その所望の時点で境界を有するチャンクを生成(construct)する。
【0017】
明らかなように、ライブ番組のこの時点固有の符号化およびセグメント化は、より高い演算負荷をエンコーダに課し、より高い性能を必要とし、そのために、符号化およびセグメント化が放送遅延時間内に完了されなければならないので、高価なシステムを必要とする。また、時点固有の符号化システムでは、ダウンストリームコンテンツ提供者(地方の放送者など)が、オリジナルのコンテンツ提供者と連携することなく、ライブストリーミング番組内の異なる時点で彼ら自身のコンテンツを挿入することは可能ではなく、そうでなければ、主番組チャンク境界は、必要な時点で必ずしも発生しない。
【0018】
従って、所望の時間でのチャンク境界の存在を必要とせずに、単一のストリーム放送を取得するためにストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入するシステム及び方法を得ることが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも一つの欠点を除去または低減し、ストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入するための新規なシステム及び方法を提供することにある。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、番組マニフェストによって規定されたストリーミングメディア番組であってデータのチャンクに配列されているストリーミングメディア番組に、少なくとも一つの特定の時点で、コンテンツを挿入するための方法が提供され、前記方法は、(i)前記特定の時点で前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするためのデータを含む前記ストリーミング番組の前記チャンクを識別するステップと、(ii)第1および第2の置き換えチャンクを生成するために前記識別されたチャンクを再パッケージングするステップであって、前記第1の置き換えチャンクは、特定の時点まで前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記特定の時点の後に前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために必要な前記識別されたチャンクの前記データを含むステップと、(iii)前記第1および前記第2の置き換えチャンクを参照して、前記識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために前記番組マニフェストを更新するステップとを含む。
【0021】
好ましくは、本方法は、更に、本方法は、更に、
前記特定の時点で挿入されるべき前記コンテンツの識別を受信するステップと、前記ストリーミング番組の再生が前記挿入されたコンテンツを含むように、挿入されるべき前記識別されたコンテンツに対する参照を前記番組マニフェストに含めるために前記番組マニフェストを更新するステップと、を含む。
【0022】
また、好ましくは、前記ストリーミングメディア番組は、少なくとも二つの異なる品質レベルで利用可能であり、各品質レベルは、異なるセットのデータのチャンクからなり、前記マニフェストは、各セットにおける前記チャンクを示し、本方法のステップ(i)、(ii)、および(iii)は、各セットのデータのチャンクについて実施される。
【0023】
本発明の他の態様によれば、少なくとも一つの特定の番組時間にストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入することを可能とするためにデータのチャンクに配列された前記ストリーミングメディア番組を処理するストリーム再パッケージャ(repackager)が提供され、少なくとも一つのプロセッサとメモリとを備え、再パッケージングプログラムを実行することが可能な演算デバイスと、前記演算デバイスがネットワークを通じて前記ストリーミングメディア番組を表す前記データのチャンクを読み出すと共に前記ストリーミングメディア番組を表す前記再パッケージングされたデータのチャンクをネットワークに出力することが可能なネットワークインターフェイスと、を備え、ここで、前記再パッケージングされたプログラムは、前記ストリーミングメディア番組内の少なくとも一つの特定の番組時間でコンテンツの前記挿入を可能とするための要求を受信し、そして、前記少なくとも一つの特定の番組時間で前記ストリーミングメディア番組をレンダリングするために前記データを含む前記ストリーミングメディア番組の前記チャンクを識別するように作動し、第1および第2の置き換えチャンクを生成するために前記識別されたチャンクを再パッケージングするように作動し、前記第1の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間まで前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間の後に前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、そして、前記第1および第2の置き換えチャンクを参照して各識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために前記番組マニフェストを更新するように作動する。
【0024】
好ましくは、少なくとも一つの実施形態において、前記再パッケージングプログラムは、前記ストリーミングメディア番組をプレイするプレイヤが前記第1または第2の置き換えチャンクのそれぞれをダウンロードすることを試みる場合にのみ、前記第1および第2の置き換えチャンクを形成する。
【0025】
本発明の更なる他の態様によれば、少なくとも一つのエンドユーザレンダリングデバイスにストリーミングメディア番組を配信するためのストリーミングコンテンツ配信システムが提供され、本システムは、ユーザによって要求され得る少なくとも一つの利用可能なストリーミング番組を記述する少なくともメタデータを含むコンテンツ情報システムと、少なくとも一つのストリーミングメディア番組を表すデータのチャンクを格納するように作動するオリジンサーバ(origin server)と、前記識別されたチャンクを再パッケージングして第1および第2の置き換えチャンクを構成するために、前記少なくとも一つのストリーミングメディア番組をプレイするためにレンダリングされ得る前記利用可能なデータのチャンクを規定する番組マニフェストを受信し、前記少なくとも一つのストリーミングメディア番組内の少なくとも一つの特定の番組時間に前記コンテンツの挿入を可能とするための要求を受信し、前記少なくとも一つの特定の番組時間に前記番組をレンダリングするための前記データを含む前記ストリーミング番組の前記チャンクを識別し、前記第1の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間まで前記番組をレンダリングするのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含み、前記第2の置き換えチャンクは、前記少なくとも一つの特定の番組時間の後に前記番組をレンダリングし、第1および第2の置き換えチャンクのそれぞれを参照して各識別されたチャンクに対する参照を置き換えるために前記番組マニフェストを更新するのに必要な前記識別されたチャンクの前記データを含む、ストリーム再パッケージャと、前記更新された番組マニフェストが、挿入されるべき前記コンテンツに対する参照を含むように、前記更新された番組マニフェストを修正するための挿入マネージャと、前記少なくとも一つのエンドユーザのレンダリングデバイスに前記修正された番組マニフェストを配信し、前記レンダリングデバイスが、前記修正された番組マニフェストに従い且つ前記コンテンツ配信システムを通じて、前記挿入されたコンテンツと前記番組の前記チャンクとをダウンロードし、それに応じて、前記ストリーミングメディア番組と前記挿入されたコンテンツとをレンダリングする、コンテンツ配信ネットワークと、を備える。
【0026】
従って、本発明は、前記番組の所望の挿入点でチャンク境界を有する第1の置き換えチャンクと第2の置き換えチャンクとの対応するペアに、関連するチャンクを再パッケージングすることにより、全ストリーミングメディア番組の再符号化または再セグメント化を必要とすることなく、ストリーミングメディア番組内の任意の点でのコンテンツの挿入を提供することができる。演算処理上で高価なメディアデータの再符号化または再セグメント化を必要としないので、必要な処理(operation)が、リアルタイムまたは近リアルタイムに、ストリーミングメディアチャンクに実施されることができる。
【0027】
本発明は、番組の再符号化、及び/又は、番組の再セグメント化を必要とすることなく、単一のストリーム放送を取得するためにストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入する方法及びシステムを教示し、従って、要求に従って選択されるメディア番組内の挿入点を可能とする。本システムおよび方法は、ストリーミングメディア番組と挿入されるコンテンツとの間の継ぎ目のない再生の推移を可能とするチャンク境界を提供するために、要求に応じて、チャンクを再パッケージングするためのメディア番組の関連のチャンクに関して作用する。パッケージングは、近リアルタイムに実施され、必要に応じて、コンテンツストリーミング番組の動的な挿入を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付の図面を参照して、一例として、本発明の好ましい実施形態が説明される。
図1】ストリーミングメディア番組の概略表現を示す図である。
図2図1のストリーミングメディア番組の3つのチャンクを示す図である。
図3】本発明によるストリーミングパッケージャを備えたストリーミングコンテンツ配信システムの概略表現を示す図である。
図4図2のストリーミングメディア番組の特定例のチャンクの再パッケージングの概略表現を示す図である。
図5】本発明による図4の再パッケージング後の挿入されたコンテンツと結果として生じるチャンクのストリームの概略表現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書では、ストリーミング番組及び/又はストリーミングメディア番組なる用語は、ストリーミングにセグメント化され、且つ、1又は2以上のデータ接続の受信端でのレンダリングデバイスによってレンダリング又はプレイされる少なくともデジタルビデオ及び/又はデジタルオーディオコンテンツを含む任意のメディア番組を広範に包含することを意図している。ストリーミングメディア番組は、オーディオ番組及び/又は音楽、オンデマンド番組のビデオ、リニア(linear)ビデオ番組、ライブビデオ番組または双方向番組であってもよく、当業者が想起するような任意の適切な手法でデータネットワークを通じて伝送され得る。
【0030】
また、本明細書では、“チャンク(chunk)”なる用語は、コンテンツ提供者による適切なネットワークを通じた伝送のために配列される任意のセグメント(segment)、フラグメント(fragment)または他の部分を含むことを意図している。当業者であれば理解できるように、チャンクは、続いて各ネットワークのトランスポート(または他の)レイヤによって再配列されてもよいが、本明細書では、チャンクは、メディア番組のストリーミングに備えてメディア番組のセグメント化(segmentation)によって製作されるようなストリーミングメディアデータの一部である。
【0031】
更に、次の説明は、一例として、IETF RFCのようなアップルによって提案されたHLSプロトコル、および、TCP/IPネットワークを通じたプロトコルで伝送されるMPEG−2トランスポートストリームに関するが、本発明は、それに限定されない。それに代えて、本発明は、ストリーミングメディア番組を配信するための広範な種々のストリーミングプロトコルおよびネットワークプロトコルで用いることができる。
【0032】
HLSプロトコルのための現在のRFCは、2012年10月15日付けで、“HTTP Live Streaming: draft-pantos-http-live-streaming-10”と題され、この文書の内容は、参照することにより、そのまま本明細書に組み込まれる。MPEGコンソーシアムによって開発され、ISO/IEC 23009−1に規定されたMPEG−DASHプロトコル(参照することにより本明細書に組み込まれる)は、本発明を用いることができ、他の適切なプロトコルが存在し又は将来開発され得るストリーミングメディアプロトコルの他の例である。
【0033】
更にまた、本明細書では、“挿入されるコンテンツ”なる用語は、ストリーミングメディア番組に挿入することが望まれる任意のメディアコンテンツ、ビデオ及び/又はオーディオを含むことを意図している。挿入されるコンテンツの最も一般的な例は番組の宣伝であり、また、他のコンテンツが必要に応じて挿入され得ると考えられ、このように挿入されるコンテンツは、ストリーミングメディア番組への代替えのエンディング、スポーツ“中継なし(blackout)”のためのような番組部分の代用、ストリーミングメディア番組内の場面または場面の一部への変更、TVのような“チャンネルサーフィン”(ここで、挿入されるコンテンツは、ユーザが切り替えたチャネル上のメイン番組である)など、を含むことができる。明らかになるように、TVチャネルサーフィングなどで使用する場合には、メインメディア番組および他のコンテンツがその後に挿入され得るので、上記挿入されるコンテンツとして“ストリームスイッチ”が導入される。
【0034】
図1は、ビデオオンデマンド番組についてHLSストリーミングメディア番組20の概略表現を示す図である。番組20は、任意の挿入されるコンテンツを含み、番組をレンダリングのに必要なコンテンツを規定する番組マニフェスト24を含む。マニフェスト24は、番組がユーザまたは他のエンティティに要求される前に予め構成されることができ、または、番組が要求されたときに構成されることができる。ライブストリーミング番組について、マニフェスト24は、番組が放送されているときに動的に生成される。
【0035】
マニフェスト24は、とりわけ、ユーザに伝送される番組と挿入されるコンテンツを構成するメディアコンテンツのチャンクを識別するURI(Uniform Resource Identifires)のセットを含む。HLSでは、マニフェスト24は、サブマニフェストのセットを含むことができ、そのサブマニフェストのそれぞれは、異なる品質レベルで番組を構成するメディアのチャンクを規定する。URIの各セットは、プレイされるべきメインメディア番組と挿入されるコンテンツの両方を表すチャンクを識別すると共に、各チャンクがプレイされるべきときを規定する。他のプロトコルでは、レンダリングされるべきデータのチャンクの他の識別子と、それらがレンダリングされる他のものが提供され得る。
【0036】
このようなマニフェストベースのコンテンツ配信システムは、概念がシンプルであるが、以下に更に詳細に説明するように、或るストリームから他のもの(挿入されるコンテンツ)に切り替わることがレンダリングデバイスにとって単純(straightforward)ではないという点において、複雑性が導入されている。
【0037】
上述したように、ストリーミングメディア配信システムにおいて、コンテンツは、典型的には、一連のセグメント(segment)、またはチャンクに分割されており、そのそれぞれは、番組の或る既知の期間(duration)についてのストリーミングメディアのオーディオ及び/又はビデオをレンダリングするために必要なデータを含む。
【0038】
代表的には、マニフェスト24は、URIを含み、このURIは、ストリーミングされる番組を適時に配信するためにネットワークの能力が変動するにもかかわらず、番組のストリーミングが完了されることを許容するために異なる品質レベルで番組のコンテンツを識別する。図1において、マニフェスト24は、番組の低分解能コンテンツチャンク32を識別するURI 28のセット(それは、マニフェス24から参照されるサブマニフェストによって特定され得る)と、番組の中分解能コンテンツチャンク40を識別するURI 36のセット(それは、異なるサブマニフェストによって特定され得る)と、番組の高分解能のコンテンツチャンク48を識別するURI 44のセットをと含む。ネットワーク伝送レート、または他の要因の変化に応答して、プレイヤは、チャンク境界で、或る分解能/品質でのメディア番組のレンダリングから(例えば、チャンク40の中分解能ストリームから)、他の分解能/品質(例えば、チャンク32の低分解能ストリーム)でのメディア番組のレンダリングに切り替えることができる。
【0039】
異なる分解能/品質間でストリームの切り替えを可能とするために、メディア番組の所定の部分を表す全てのHLSストリームにおけるチャンクは、番組の同一部分をレンダリングするためのデータを含む。換言すれば、期間(duration)、即ち、番組時間(Program Time)(“PT”)=1495秒からPT=1505秒までの期間をレンダリングするためのデータを含む或るストリーム32における各チャンクは、同一の期間PT=1495秒からPT=1505秒までを適切な分解能/圧縮でレンダリングするために、互いのストリーム(40,48)において対応チャンクを有する。したがって、高分解能ストリームにおけるチャンクは、低分解能ストリームにおける対応チャンクよりも多くのデータを含むが、全ての対応チャンクは、メディア番組の同一の期間をレンダリングする。
【0040】
本明細書では、番組時間(Program Time)は、レンダリングされる番組におけるプレイバック時点を規定する任意の適切な方法含む。採用される方法及び/又は技術によって、番組時間(Program Time)は、秒、わずかの秒、多くのフレームのビデオなどで表すことができ、本発明は、番組時間の任意の特定の表現に限定されない。例えば、MPEG2トランスポートストリームを採用するシステムでは、番組時間は、トランスポートストリームにおけるPTS情報を含む多くの関連クロック情報源のうちの任意の一つから導出し得る。
【0041】
図2は、チャンク32の低分解能ストリームを詳細に示す。示された例では、各チャンク32a,32b,32c等は、一又は二以上のビデオデータのセグメント(V1,V2,V3等)と、一又は二以上のオーディオデータのセグメント(A1,A2,A3等)を含む。この構成は、次の説明のために示され、本発明は、チャンク32のコンテンツの任意の特定の構成に限定されない。
【0042】
上述したように、チャンク32aのような、各チャンクは、10秒のような、メディア番組の選択された期間(duration)をレンダリングするのに必要なデータを含み、図2の例における期間は、番組時間PT=1495秒からPT=1505秒である。同様に、チャンク32bは、番組時間TP=1505秒からPT=1515秒をレンダリングするのに必要なデータを含み、チャンク32cは、番組時間PT=1515秒からPT=1525秒をレンダリングするのに必要なデータを含む。
【0043】
番組時間PT=1505秒で、メイン番組から挿入コンテンツへのストリーム切り替えを実施することが望まれれば、チャンク32aの境界(即ち、チャンク32aからレンダリングされる番組データのエンドと一致する時点)は、適切な位置に配置され、そして、挿入コンテンツの第1チャンクは、チャンク32aのレンダリングが完了した後にレンダリングされることができ、そして、順に続く挿入コンテンツがレンダリングされる。挿入コンテンツのレンダリングが完了したときに、メイン番組のプレイバックが、チャンク32bのレンダリングと共に再開する。
【0044】
しかしながら、メイン番組のチャンク境界が存在しない時点(例えば、PT=1510秒)でコンテンツを挿入することは不可能である。従来技術では、このような場合、メディア番組は、メイン番組のチャンクが所望の時点(例えば、PT=1510秒)でのチャンク境界で構成されることを保証するように指示されているエンコーダおよびセグメンタ(segmenter)によって再符号化され再セグメント化なけされならない。明らかなように、メディア番組の再符号化および再セグメント化は、時間を消費する処理であり、それは、コンテンツがストリームに挿入される時点のリアルタイムまたは近リアルタイムな選択を妨害する。
【0045】
したがって、本発明は、メイン番組コンテンツの再符号化を要することなく、ストリーミングメディア番組のレンダリング前の任意の時間で、コンテンツの挿入が決定され及び/又は変化されることを許容するストリーミングメディア番組へのコンテンツの挿入を可能とする新規なシステムおよび方法を開発した。
【0046】
図3は、本発明の実施形態による、ストリーミングコンテンツシステム100の概要表現を示し、ここで、ストリーミングメディア番組の再符号化を要することなく、コンテンツをストリーミングメディア番組に挿入することができる。システム100は、コンテンツ情報システム104を含むことができ、それは、メディア番組タイトル、ストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入することが望まれる時点および記述のような、利用可能な番組のためのメタデータを含む。エンドユーザ、コンポーネントまたは他のエンティティが、例えばビデオオンデマンドネットワークからメディア番組を要求すると、その要求108は、コンテンツ情報システム104に受け渡されることができる。
【0047】
システム100は、オリジンサーバ112を備え、オリジンサーバ112は、システム100のメディア番組を含み、その番組は、全ての必要な品質/分解能/圧縮レベルでメディア番組を符号化するために処理され、番組ストリームのための対応チャンクを形成するためにセグメント化される。
【0048】
システム100は、更に、ストリーム再パッケージャ116を備え、ストリーム再パッケージャ116は、要求されたストリーミング番組においてメディア番組にコンテンツを挿入することが望ましいことについて、コンテンツ情報システム104、または、任意の他の適切なソースから、時点情報を受信し、また、可能であれば複数の分解能で、オリジンサーバ112上のチャンクに格納されている要求されるメディア番組(または、番組コンテンツを符号化しチャンク化するエンコーダによって作成され、または、マニフェストを生成することができる任意の他の処理またはシステムによって引き続き修正されたようなものの何れか)についてのマニフェスト114(または、等価なもの)を受信する。
【0049】
ストリーム再パッケージャ116は、以下に更に詳しく記述されるが、要求された番組の適切なチャンク(それらは、コンテンツを挿入することが望まれるメディア番組の時点を含むメディア番組期間をレンダリングするためのデータを含む)をオリジンンサーバ112から読み出し、そして、他のコンテンツの挿入を許容する要求されたチャンク境界と共に新たな対応チャンクのペアを形成するために、それらのチャンクのそれぞれを再パッケージ化するように作動する。そして、ストリーム再パッケージャ116は、上記生成されたチャンクのペアをシステム100に利用可能にし、レンダリングデバイスによってダウンロードが要求されたときにリアルタイムにそれらの新たなチャンクを作成するか、または、それらを作成して、システム100内の任意の他のアクセス可能な場所またはオリジンサーバ112上にそれらを格納する。
【0050】
要求されたときにストリーム再パッケージャが新たなチャンクを作成する場合、ストリーム再パッケージャは、生成されるべき各新たなチャンクについての適切な識別子を規定し、そして、新たなチャンクについての識別子で元のチャンクを置き換える更新されたマニフェスト120(または、等価なもの)を生成する。ストリーム再パッケージャ116は、要求された新たなチャンクを積極的に生成し、それは、それらの置き換えチャンク(replacement chanks)に関する更新されたマニフェスト120(または、等価なもの)を生成する。何れの場合においても、更新されたマニフェスト120(または、等価なもの)は、それから挿入マネージャ124に受け渡される。挿入マネージャ124は、多くの異なるコンテンツのピースがどのように挿入されたかを判定するために、更新されたマニフェスト120と、その挿入されたコンテンツの各ピースの期間(duration)を検証し、そして、挿入マネージャ124は、広告または他の挿入のコンテンツシステム128から各挿入点について挿入されるべきコンテンツの識別(identity)(身元)を要求する。
【0051】
広告コンテンツシステム128は、広告コンテンツシステム128は、要求された番組における各指定された挿入点で挿入されるべきコンテンツを表す情報132を有する挿入マネージャ124に応答する。本発明の実施形態では、この情報は、挿入されるべきコンテンツを規定するための適切なURIのセットを含むが、このようなコンテンツを識別する任意の他の適切な方法を用いることができる。
【0052】
広告システム128の動作は、公知のシステム及び/又は他のコンテンツ挿入マネージメントシステムとしてここでは説明されない。挿入されるべき実際のコンテンツは、事前に適切に符号化されチャンク化されて、オリジンサーバ112のようなシステム100における適切な場所に格納される。広告システム128は、単に、挿入されるべきコンテンツを識別するために、挿入マネージャ124に、適切な情報132(URIまたはコンテンツを識別し配置するための他の適切な手段)を受け渡す。
【0053】
そして、挿入マネージャ124は、更新されたマニフェスト120(または、等価なもの)と挿入コンテンツURI 132を取得し、修正されたプレイバックマニフェスト136(または、等価なもの)を生成し、そのマニフェスト136は、オリジンサーバ112などから、コンテンツ配信ネットワーク144を通じて、挿入コンテンツと要求番組の適切なチャンクをダウンロードするためにプレイバックマニフェスト136のURIを用いることにより、エンドユーザプレイヤ140に提供され、そして、エンドユーザプレイヤ140は、要求された番組のプレイバックを開始することができる。
【0054】
当業者には明らかであるように、コンテンツ配信システム144は、セットトップボックスのような占有の配信ネットワーク、インターネットなどのような、任意の適切なネットワークであり得る。また、明らかになるように、システム100の構成要素は、同じ場所に配置される必要のないシステム100の種々の構成要素や、私有のデータネットワークなどのような、任意の適切なデジタルネットワークを通じて相互接続されることができる。
【0055】
ストリーム再パッケージャ116によって実施される再パッケージングは、図2および図4を参照して更に詳細に説明される。この例では、チャンク32のストリームによって規定された、オーディオおよびビデオの両方を含む、メディア番組にコンテンツを挿入することが望まれ、特に、そのコンテンツを番組時間PT=1510秒で挿入することが望まれるものとする。図2から理解されるように、PT=1510秒ではチャンク境界は存在せず、実際、その時点は、チャンク32bのデータによって表される番組期間で発生する。
【0056】
本発明では、また、簡単に上述したように、ストリーム再パッケージャ116は、所望の挿入点でメディア番組をレンダリングするためのデータを含むチャンクを識別するためにメディア番組のチャンク32を検証する。当業者には明らかであるように、所望の挿入時点についてのコンテンツデータを含む実際のチャンクは、ストリーム再パッケージャ116によって決定されなければならない。チャンクが番組の特定の部分を含むマニフェスト114から概略的に分かるが、この例は、メディア番組の符号化において使用される圧縮処理に起因して、実際の時点が、マニフェストの定義から最も予期されるチャンクの前または後のチャンクにおいて発生することが起こり得るという十分な多様性に依存する。
【0057】
従って、ストリーム再パッケージャ116は、再パッケージングに必要な実施のチャンクを識別するためにオリジンサーバ112から一つよりも多くのチャンクを取得して検証することができる。この例では、PT=1510秒でコンテンツを挿入し、ストリーム再パッケージャ116が、その時点がチャンク32bの期間内であることを決定することが望まれている。
【0058】
要求されたチャンクが決定されると、この場合のチャンク32bでは、ストリーム再パッケージャ116は、挿入点(この例では、PT=1510秒)についての所望の番組時間まで発生するメディア番組のレンダリングに必要なオーディオ及び/又はビデオデータと、挿入時点後にメディア番組をレンダリングするのに必要なオーディオ及び/又はビデオデータを決定するために所定のチャンクのオーディオセグメント(もし、チャンク32bに存在すれば)とビデオセグメント(もしチャンク32bに存在すれば)を検証する。
【0059】
具体的には、図4に図式的に示されるように、ストリーム再パッケージャ116は、所望の番組時間挿入点(この例では、PT=1510秒)が発生するチャンク32bのビデオセグメント(V5)およびチャンク32bを識別する。
【0060】
次に、ストリーム再パッケージャ116は、所望の番組時点で、識別されたビデオセグメント(V5)を分割(split)して二つのサブセグメントV5aおよびV5bを生成し、その前者(V5a)は、所望の挿入点までメディア番組をレンダリングするためのオリジナルセグメントV5のビデオデータの全てを含み、その後者(V5b)は、挿入点後のメディア番組をレンダリングするためのビデオデータとオリジナルのビデオセグメントV5の全ての後続データを含む。
【0061】
そして、ストリーム再パッケージャ116は、オーディオセグメント、この例ではオーディオセグメントA2を識別し、それは、所望の挿入点でメディア番組のオーディオをレンダリングするためのデータを含み、ストリーム再パッケージャ116は、オーディオセグメントA2を二つのオーディオセグメントA2aおよびA2bに分割し、ここで、オーディオセグメントA2aは、所望の挿入点までのプレイバックのためのメディア番組のオーディオをレンダリングするのに必要なデータの全てを含み、そーディオセグメントA2bは、挿入後からオリジナルのチャンク32bのエンドまで、プレイバックのためのメディア番組のオーディオをレンダリングするのに必要なデータを含む。
【0062】
次に、ストリーム再パッケージャ116は、新たなチャンク32b1およびチャンク32b2を生成し、新たなチャンク32b1は、ビデオセグメントV4およびV5aとオーディオセグメントA2aを含み、新たなチャンク32b2は、セグメントV5bおよびV6とオーディオセグメントA2bを含む。この例では、新たなチャンク32b1は、番組時間PT=1505秒とPT=1510秒との間でメディア番組をレンダリングするのに必要なビデオおよびオーディオデータを含み、新たなチャンク32b2は、番組時間PT=1510秒とPT=1515秒との間でメディア番組をレンダリングするのに必要なビデオおよびオーディオデータを含む。
【0063】
この点で、ストリーム再パッケージャ116は、最初にチャンク32bを識別したURIを、現時点でチャンク32b1およびチャンクb2に挿入された点に置き換えるために、処理マニフェスト114により、更新マニフェスト120を生成することを開始することができる。何故ならば、今や、チャンク境界は、PT=1510秒に存在し、コンテンツは、所望のその点に挿入され得るからである。図5の例では、挿入されたコンテンツ(チャンク50a,50bおよび50cによって表される)は、PT=1510秒時点でチャンク32b1と32b2との間に挿入されており、マニフェスト120は、エンドユーザレンダリングデバイスにチャンク32a,32b1,50a,50b,50c,32b2および32cなどを含むストリームをプレイさせるために更新されている。
【0064】
ストリーム再パッケージャ116は、同様に、マニフェスト114の各チャンクを再パッケージングし、マニフェスト114の各チャンクは、挿入コンテンツについての所望の時点を含む。他の実施形態では、ストリーム再パッケージャ116は、必要な情報(即ち、どのチャンクが、どのペアのチャンクで置き換えられるか)を、必要な更新マニフェスト120を構築するシステム100の他の構成要素に提供することが考えられる。
【0065】
また、上述したように、ストリーム再パッケージャ116は、レンダリングデバイスがそれらの置き換えチャンクの一つ以上をダウンロードするときに置き換えチャンクへの所望の挿入点が発生するチャンクの実際の再パッケージングのみを実施してもよいことが考えられる。この場合、ストリーム再パッケージャ116は、生成されるべき置き換えチャンクのそれぞれについて、適切な識別子を生成し、そして、まだ生成されていない置き換えチャンクを参照するために、マニフェスト120を生成更新する。ユーザのレンダリングデバイスが、一つまたは両方の置き換えチャンクのダウンロードを試みたときに、ストリーム再パッケージャ116は、要求された置き換えチャンク、または、チャンクを生成し、そして、それらを要求しているレンダリングデバイスにダウンロードさせる。
【0066】
本発明の実施形態では、ストリーム再パッケージャ116は、BSD Unix(登録商標)が稼働する汎用のコンピュータ上で実行されるコンピュータソフトウェアプログラムとして実施される。上記コンピュータは、ストリーム再パッケージャ116がシステム100内のチャンクを読み書きすることを可能とする少なくとも一つのネットワークインターフェイスを含む。
【0067】
当業者には明らかであるように、ストリーム再パッケージャ116の実際的な実施は、特に限定されず、カスタムハードウェアベースの実施、及び/又は、システム100内の他のハードウェア上で実行される処理のような実施などを含み、当業者であれば想起し得るような、ストリームパッケージングシステム116を実施するための任意の適切な方法を採用することができる。
【0068】
特に、ストリーム再パッケージャ116は、チャンクを再パッケージングする再符号化されたデータを必要としないので、演算リソースの点で比較的負担が少なく、従って、当業者が想起するような広範な種々の手法で実施することができる。更に、ストリーム再パッケージャ116は、複数のストリームに関して作動することができ、複数の異なるユーザのためのストリーミング番組に対するコンテンツ挿入を可能とする。
【0069】
上述したように、HLSおよび他のプロトコルを用いてストリーミングされる番組は、異なる分解能と圧縮レベルで提供され得る。特に、HLSは、プレイヤ140が、コンテンツ配信ネットワーク144の性能レベルの変化に適応するためにプレイバックのストリーミング中に番組の利用可能な分解能/圧縮レベル間で変化することを可能とする。従って、このような場合、本発明のシステム100は、プレイバック品質における変化にもかかわらず、ストリーミング番組へのコンテンツの挿入を可能とするために、利用可能な各番組コンテンツのストリームの適切なチャンクを識別し再パッケージングする。
【0070】
従って、三つの異なる品質/分解能/圧縮レベルで符号化された番組における二つの挿入点を提供するために、ストリーム再パッケージャ116は、6個のオリジナルのチャンク(1レベルにつき2個)を12個の新たなチャンク(1レベルにつき4個)に再パッケージングして、プレイヤまたはレンダリングデバイスが必要に応じて異なる品質レベルのストリーム間で変化することを可能とする。
【0071】
明らかなように、ストリーム再パッケージャ116は、チャンクを再パッケージングする際にビデオデータを再符号化する必要がないので、近リアルタイムに容易に作動することができる。これは、ストリーミングメディアへのコンテンツの挿入が極めて柔軟な手法で実施されることを可能とする。
【0072】
例えば、ストリーミングコンテンツシステム100から番組を要求するプレミアムレベルのユーザは、それらの番組に挿入される2つの広告ブレーク(広告挿入点)を有するだけでよく、一方、ローレベルのユーザは、同一番組に挿入される4つの広告ブレークを持ってもよい。ストリーム再パッケージャ116を用いて、オリジンサーバ112上に格納されたコンテンツは、ストリーム再パッケージャ116がプレミアムユーザのための二つのターゲットチャンク(即ち、これらのチャンクは、所望の広告挿入点が発生する番組期間を含む)を分割することができ、低レベルのユーザのための4つのターゲットチャンクを分割することができるので、コンテンツ提供者によって再符号化及び/又は再セグメント化される必要がない。各ユーザは、適切で異なるプレイバックマニフェスト136を受け取り、そして、プレイバック中の適切な時間に挿入されたコンテンツを有する。
【0073】
図3のコンポーネントテンス配信システム100の例は、ビデオオンデマンドシステムとして示されるが、本発明は、ライブメディアをストリーミングするためのシステムにも適合することは当業者には明らかである。このような場合、ストリーム再パッケージャ116は、プレイバックマニフェスト136を適切に更新すること、および、必要に応じて1又は2以上のチャンクを再パッケージングすることにより、特定の時間でコンテンツを挿入するために、コンテンツ提供者、または、ダウンロード放送者(ブロードキャスタ)のような他の処理参加者からの信号に容易に応答することができる。同様に、本発明は、また、プレイバックが開始した後にマニフェスト(または、等価なもの)が更新されることができるという条件で、番組のストリーミングが開始した後に、そのストリーミング番組へのコンテンツの挿入を可能とする。
【0074】
従って、本発明は、番組の所望の挿入点でチャンク境界を有するチャンクのペアに関連のチャンクを再パッケージングすることにより、ストリーミング番組の再符号化及び/又は再セグメント化を要することなく、ストリーミング番組内の任意の点でのコンテンツの挿入を提供することができる。ビデオデータの演算上の高価な再符号化または再セグメント化を必要としないので、リアルタイム、または近リアルタイムで、必要な演算処理を、ストリーミングメディアチャンクについて実施することができる。
【0075】
本発明は、番組全体の再符号化または再セグメント化を必要とすることなく、単一ストリーム放送を通じたストリーミングメディア番組にコンテンツを挿入し、従って、メディア番組内の挿入点が要求に応じて選択されることを可能とする方法およびシステムを教示する。本システムおよび方法は、ストリーミングメディア番組と挿入コンテンツの継目のないプレイバックを可能とするためのチャンク境界を提供するために、必要に応じて、それらのチャンクを再パッケージングするメディア番組の関連のチャンクに作用する。再パッケージングは、近リアルタイムで実施されることができ、必要に応じて、挿入コンテンツとメイン番組とを含む単一ストリームの動的な生成を可能とする。
【0076】
上述した本発明の実施形態は、本発明の一例であり、その代替えおよび変形は、本明細書に添付された請求項によってのみ規定される本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によって達成され得る。
【符号の説明】
【0077】
20…番組、24…マニフェスト、28,36,44…URI、32…チャンク、40,48…ストリーム、100…システム、104…コンテンツ情報システム、108…要求、112…オリジンサーバ、114…マニフェスト、116…ストリーム再パッケージャ、120…マニフェスト、124…挿入マネージャ、128…広告コンテンツシステム、132…情報、136…マニフェスト、140…エンドユーザプレイヤ、144…コンテンツ配信ネットワーク、PT…番組時間。
図1
図2
図3
図4
図5