特許第6275772号(P6275772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275772
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】橋桁の連結部と床版間のシール材
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/08 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   E01D19/08
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-113440(P2016-113440)
(22)【出願日】2016年6月7日
(62)【分割の表示】特願2012-92663(P2012-92663)の分割
【原出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-180303(P2016-180303A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英郎
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−155708(JP,A)
【文献】 特開2011−112140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁の連結部と該橋桁上方に配置される床版との間に橋桁の長さ方向に沿って配設されるシール材であって、
下側発泡体と該下側発泡体上に積層された上側発泡体とよりなり、
前記下側発泡体は、前記連結部上に載置された際、該載置箇所における該連結部上に突出している締結部材の端部を収容する窪みと、前記連結部に当接する支持面と、を下面に有し、
前記下側発泡体の窪みは、前記床版が前記シール材上に載置された状態で、前記締結部材の端部と当接する深さに設定されることを特徴とする橋桁の連結部と床版間のシール材。
【請求項2】
前記下側発泡体は、脚部と該脚部上に該脚部の一方の側面側へ突出して設けられた受け部とよりなり、前記脚部の一方の側面と前記受け部の下面とで前記窪みが構成されると共に、前記床版が前記シール材上に載置された状態で前記受け部の下面が前記締結部材の端部と当接するように、前記脚部の高さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の橋桁の連結部と床版間のシール材。
【請求項3】
前記下側発泡体は、前記脚部と前記受け部が一体に1部材で構成されたもの、または別体の2部材で構成されたものからなることを特徴とする請求項2に記載の橋桁の連結部と床版間のシール材。
【請求項4】
前記上側発泡体は、前記下側発泡体との接触面における前記橋桁の長さ方向と直交する横幅が、前記下側発泡体における前記橋桁の長さ方向と直交する横幅より小であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の橋桁の連結部と床版間のシール材。
【請求項5】
前記上側発泡体は、外側表面にスキン層を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の橋桁の連結部と床版間のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高架橋における橋桁の連結部と床版との間に橋桁の長さ方向に沿って配設されるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10に示すように、H型鋼からなる橋桁51を幅員方向Wに所要間隔あけて、かつ橋軸方向Lに沿って橋脚53上方に配置し、前記橋桁51の上面には幅員方向Wへ互いに所要間隔離したシール材55,55を橋桁51の長さ方向(橋軸方向Lと同じ)に沿って並設し、その後に前記シール材55上にプレストレストコンクリート床版(以下床版とも記す。)57を配置し、さらに前記橋桁51上面のシール材55,55間にコンクリートやモルタル59を打設することにより、前記床版57を橋桁51上に固定する方法が多用されている。
【0003】
前記シール材55は、床版57と橋桁51間における型枠として、及び床版57の一時的な支持部材として作用し、橋桁51と床版57間でコンクリートやモルタルが硬化するまでの間コンクリートやモルタルが吐露しない(垂れない)ようにシールする機能が求められる。前記シール材55として、従来では独立気泡型のポリエチレン発泡体やゴムスポンジ等からなる独立気泡型の発泡体を、断面四角形からなる長尺に形成したものが用いられている。
また、シール材を発泡体の二層構造とし、一側の発泡体を独立気泡型の発泡体、他側の発泡体を一側の発泡体よりも連続気泡が多く含まれる発泡体としたものが提案されている。
【0004】
また、橋梁や高架橋の長さに応じて前記橋桁51は長さ方向に所定数連結される。図11に示すように、前記橋桁51の連結部53は、橋桁51の対向する端部511、512の上下を上側添接板55と下側添接板57で挟み、前記上側添接板55と下側添接板57及び橋桁51を、複数箇所で上下に貫通したボルトやリベット等の締結部材61、62で締結し、前記橋桁51を連結固定することが行われている。
【0005】
しかしながら、前記橋桁の連結部53では、連結部53上に突出している締結部材61、62の端部(ボルトの頭やナットあるいはリベットの頭等)611、621が邪魔して前記シール55材を橋桁の連結部53に安定して配置できなかったり、シール材55の下面が締結部材61、62の端部形状に追従できずにシール材55の下面と上側添接板55との間に隙間を生じてシール不良を生じたりすることがあり、コンクリートやモルタルの打設に際してコーキング剤塗布工程が余分に必要となることがある。
【0006】
また、前記シール材55が前記橋桁連結部53の上側添接板55上に安定して配置されていないと、床版をクレーンで吊り上げて橋桁上のシール材に載せる際に行われる床版の位置微調整時に、床版の下面で擦られる等によって横方向の力が加わると、簡単に横に倒れたり横へずれたりする。シール材が横に倒れたり横へずれたりすると、一旦床版をシール材の上方へ離してシール材を正しい位置に直した後、再度床版の位置調整をしなければならず、施工作業に手間取る問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−155708号公報
【特許文献2】特開2003−155709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、床版をシール材上に載置する際に行われる床版の位置調整時に、シール材が横方向へ倒れたり位置ズレを生じたりし難く、またコンクリートやモルタルの打設時には、橋桁の連結部で良好なシール性を得ることができ、コーキング剤塗布作業の簡略化及びコーキング剤の使用量を低減することができる橋桁の連結部と床板間のシール材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、橋桁の連結部と該橋桁上方に配置される床版との間に橋桁の長さ方向に沿って配設されるシール材であって、下側発泡体と該下側発泡体上に積層された上側発泡体とよりなり、前記下側発泡体は、前記連結部上に載置された際、該載置箇所における該連結部上に突出している締結部材の端部を収容する窪みと、前記連結部に当接する支持面と、を下面に有し、前記下側発泡体の窪みは、前記床版が前記シール材上に載置された状態で、前記締結部材の端部と当接する深さに設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記下側発泡体は、脚部と該脚部上に該脚部の一方の側面側へ突出して設けられた受け部とよりなり、前記脚部の一方の側面と前記受け部の下面とで前記窪みが構成されると共に、前記床版が前記シール材上に載置された状態で前記受け部の下面が前記締結部材の端部と当接するように、前記脚部の高さが設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2において、前記下側発泡体は、前記脚部と前記受け部が一体に1部材で構成されたもの、または別体の2部材で構成されたものからなることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記上側発泡体は、前記下側発泡体との接触面における前記橋桁の長さ方向と直交する横幅wbが、前記下側発泡体における前記橋桁の長さ方向と直交する横幅waより小であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記上側発泡体は、外側表面にスキン層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、シール材が橋桁の連結部上に載置された際、該連結部上に突出している締結部材の端部が、シール材の下側発泡体の下面に形成されている窪みに収容されるため、前記締結部材の端部に邪魔されることなくシール材を前記連結部上に配置することができ、しかも、床版がシール材上に載置された状態で、下側発泡体下面の窪みが締結部材の端部と当接して支持されると共に、前記連結部に直接当接する支持面によっても支持されるため、前記シール材を安定した状態で連結部材上に配置することができ、シール材が横からの力で倒れにくくなり、シール材全体が倒れたり位置がずれたりするのを効果的に防ぐことができ、シール材の貼り直し作業等の面倒な作業を不要にでき、施工作業の簡略化を実現できる。
【0013】
請求項2の発明によれば、下側発泡体は、脚部と該脚部上に該脚部の一方の側面側へ突出して設けられた受け部とよりなり、前記脚部の一方の側面と前記受け部の下面とで前記窪みが構成されているため、前記窪みは連結部上に突出する締結部材の端部の周囲に空間を保持できる。そのため、シール材を橋桁の連結部上に配置してシール材間にモルタルやコンクリートを打設する際、前記下側発泡体の下面の窪みにモルタルやコンクリートが進入し易くなって隙間無く充填することができ、モルタルやコンクリートの充填不良による内部欠損を防ぐことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、下側発泡体は、前記脚部と前記受け部が一体に1部材で構成されたもの、または別体の2部材で構成されたものからなるため、2部材で構成した場合には、断面四角形の発泡体からなる角材を組み合わせて下側発泡体を形成することができ、窪みのための切り欠きが不要なことから無駄となる部分が少なく、シール材のコスト削減及び廃棄物の削減が可能となる。
【0015】
請求項4の発明によれば、上側発泡体は、下側発泡体との接触面における橋桁の長さ方向と直交する横幅が、下側発泡体の受け部における橋桁の長さ方向と直交する横幅より小であるため、上側発泡体の下側発泡体との接合幅が小さくなり、横方向の力が加わって回転変形する際に、下側発泡体の上面で横方向へ変形し易くなる。そのため、床版の位置調等の際に横方向の力が加わった際に、上側発泡体がより変形し易くなり、シール材全体が倒れたり位置がずれたりするのをより効果的に防ぐことができ、シール材の貼り直し作業等の面倒な作業を不要にでき、施工作業の簡略化を実現できる。
請求項5の発明によれば、上側発泡体が外側表面にスキン層を有するため、床版の位置調整等の際、床版の下面で上側発泡体が擦られたりしても、表面が傷付き難く、シール性が損なわれ難い効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るシール材の斜視図である。
図2図1のシール材における上側発泡体の上面付近を示す拡大断面図である。
図3図1のシール材を橋桁の連結部上に配置した状態を示す斜視図である。
図4図3の4−4断面図である。
図5図3における連結部の両側に非連結部用シール材を配置した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態のシール材に横方向の力が加わった際の作用を示す断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るシール材の斜視図である。
図8】本発明の更に他の実施形態に係るシール材の斜視図である。
図9】更に他の実施形態に係るシール材の斜視図である。
図10】橋桁、シール材及び床版等を示す概略斜視図である。
図11】橋桁の連結部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すシール材10は、図11に示した橋桁51の連結部53における上側添接板55上に、橋桁51の長さ方向(橋軸方向Lと同じ)に沿って橋桁51の幅員方向Wの両縁に配設されるものである。
【0018】
前記シール材10は、下側発泡体11と上側発泡体21が接着剤や両面粘着テープ等で積層一体化されたものからなる。
前記下側発泡体11は、脚部12と該脚部12上に該脚部12の一方の側面13側へ突出して設けられた受け部16とによって、前記橋桁51の長さ方向に対して垂直方向の断面が、断面逆L字形とされ、前記脚部12の一方の側面13と前記受け部16の下面17とで窪み18が構成されている。また、本実施形態では、前記下側発泡体11は、前記脚部12と受け部16の2部材の接合体からなる。前記脚部12及び受け部16の2部材は、前記橋桁51の長さ方向に対して垂直方向の断面が、何れも断面長方形の四角形からなる角材状の発泡体で構成され、上下方向に立たせた脚部12の上端に、略水平方向に寝させた受け部16の一端部が載置されて接着剤あるいは両面粘着テープ等で接合されている。前記下側発泡体11の高さ(a2+a3)は10〜100mmが好ましい。
【0019】
前記脚部12の横幅a1は、図11に示す前記連結部53の上側添接板55における上面の幅員方向Wの両縁において、前記締結部材の端部611、621が位置しない部分の幅e以下にされる。横幅は、前記幅員方向Wの幅を意味する。また、前記脚部12の下面と前記受け部16の下面17間の距離a2は、前記上側添接板55から突出している前記締結部材の端部611の高さと略等しく設定される。一方、前記受け部16の厚みa3は、前記受け部16の硬さや脚部12の硬さ等に応じて設定される。前記a1、a2、a3の例として、a1=15mm、a2=20mm、a3=25mmを挙げる。
【0020】
前記下側発泡体11の材質としては、ポリウレタンフォーム、ゴムスポンジ、ポリオレフィンフォーム等を挙げることができる。特にポリエチレンフォーム等のポリオレフィンフォームが好ましい。
また、前記下側発泡体11は、密度(JIS K7222:2005)が20〜200kg/m、25%圧縮硬さ(JIS K6400−2:2004 D法)が30〜350kPaであるものが好ましい。密度が前記範囲より低い場合には止水性が不十分となり、一方高い場合には硬くなってハンドリング性が悪くなる。また、25%圧縮硬さが前記範囲より低い場合には止水性が不十分となり、一方高い場合にはハンドリング性が悪くなる。
【0021】
前記上側発泡体21は、前記橋桁51の長さ方向に対して垂直方向の断面が、角25が丸い四角形または円形の断面形状を有する棒状体からなる。前記上側発泡体21の材質としてはポリウレタンフォームなどの弾性を有する発泡体が好適である。前記上側発泡体21は、図2の拡大断面図に示すように外側表面にスキン層22を有するものが好ましい。前記スキン層22は、気泡の圧縮により、あるいは気泡サイズが小さくなることによって緻密な膜状となったもので、平滑性が高く、また破れにくいため、前記床版57側として使用すれば、作業時に前記上側発泡体21の上面を擦ることがある床版57の位置調整が容易になるのみならず、床版57に擦られても破損し難くなる。さらに、透水性も低いため、前記コンクリートやモルタルの水分漏出防止に対するシール性も向上する。
【0022】
なお、表面にスキン層を有する発泡体の製造方法としては、特許第3987252号に記載されている方法、すなわち厚紙ロールから連続的に繰り出されて走行する成形紙(離型紙)の上部平滑面にウレタン原料を連続的に供給し、該成形紙の両端を合わせて角筒状にして発泡させる方法、あるいはウレタン原料を成形型内で発泡させるモールド成形法等がある。前者の方法によって発泡成形されたものは、パーティングライン(PL)が一つのみの長尺品とすることができて好ましい。PL上ではスキン層が切れてしまうか、周囲よりも凸部となってシール性が低下するため、この方法で成形された上部発泡体のPLを、下側発泡体に当接させて、上側発泡体と下側発泡体間に挟むように接合することが好ましい。このように成形すれば、床版の接する可能性のある上側発泡体の露出する表面全面にスキン層を有するシール材とすることができる。
また、前記上側発泡体11の断面を角15が丸い四角形とすれば、前記下側発泡体上に接合する際に、接合面が平滑となるので安定して接合しやすい。上記のように、PLが一つのみの長尺品でできた前記上側発泡体のPLを有する面と、下側発泡体の上面を両面接着テープや接着剤等で接合することで、容易にPLをシール材10の内部に挟みこんで、上側発泡体11と下側発泡体21を一体化することができる。
【0023】
前記上側発泡体21は、密度(JIS K7222:2005)が90〜170kg/m、25%圧縮硬さ(JIS K6400−2:2004 D法)が5〜25kPaであるものが好ましい。密度が前記範囲より小さい場合には止水性が不十分となり、一方大きい場合には硬くなってハンドリング性が悪くなる。また、25%圧縮硬さが前記範囲より小さい場合には止水性が不十分となり、一方大きい場合には圧縮残留歪が大きくなる。さらに、前記上側発泡体21の25%圧縮硬さは、前記下側発泡体11の25%圧縮硬さよりも小さい、すなわち硬度が低いものとされる。
【0024】
また、前記上側発泡体21の横幅b1と高さb2は適宜設定されるが、b1=10〜100mm、b2=10〜100mmとされることが多い。また、前記上側発泡体21の横幅b1と前記下側発泡体11の脚部12の横幅a1は、b1>a1が好ましく、かつa1/b1=0.3以上が好ましい。さらに、上側発泡体21の25%圧縮硬さをB、下側発泡体11の25%圧縮硬さをAとすると、(B×b1)<(A×a1)が好ましい。(25%圧縮硬さ×横幅)の値及び横幅の比を前記関係とすることにより、脚部12と比較して上部発泡体21が縦横両方向に変形しやすくなるので、相対的に脚部12の縦横両方向への変形を抑えることができる。それにより、受け部16が連結部上に突出する締結部材の端部611、621(添接板固定ボルト、リベットなど)の上部に位置させて、それらと当接させることができる。上記状態で床版が載置されると、その荷重により、受け部16は、締結部材の端部611、621に圧接されるため、下側発泡体11が横方向にずれにくくなり、その結果、シール材10全体の位置をずれにくくすることができる。また、脚部12の下面(支持面)と受け部16の下面17の両方でブリッジ状に支持されていることで、窪みの形状も変形しにくいので、連結部上に突出する締結部材の端部611、621の周囲の空間を保持でき、その空間にモルタルやコンクリートが回り込むことで断面欠損を防ぐことができる。なお、連結部53の上側添接板55上に載置される際に、前記シール材全体の重心が左右に偏りすぎないようにするために前記上側発泡体21の横幅b1は、前記下側発泡体11の横幅と等しいか、小さいことが好ましい。
【0025】
前記シール材10を使用する床版の施工(橋桁の修繕工事を含む)例を説明する。床版の施工時、図3図5に示すように、前記シール材10は、前記下側発泡体11における脚部12の下面(底面または支持面)に設けた両面接着テープや接着剤等からなる接着部材31により、橋桁51の連結部53における上側添接板55の上面の幅員方向Wの両縁に、固定される。その際、前記脚部12から突出している受け部16の突出側が前記上側添接板55の幅員方向W中央を向くようにされる。前記下側発泡体11の脚部12が前記上側添接板55の上面に固定された状態では、前記橋桁51の連結部53における幅員方向Wの縁で、前記上側添接板55の上方へ突出している締結部材61の端部611が、前記脚部12の一方の側面13側へ突出している受け部16の下面17と前記脚部12の一方の側面13との間の窪み18に収容されて前記受け部16の下面17と当接し、前記受け部16が締結部材61の端部611で支持された状態となっている。
【0026】
また、前記橋桁51の連結部53以外の部分では、前記シール材10の長さ方向((橋軸方向Lと同じ)の端部と接して、非連結部用シール材100が両面粘着テープや接着剤等で橋桁51の橋軸方向Lに沿って固定される。前記非連結部用シール部材100は、図示の例では、前記橋桁51の長さ方向に対して垂直方向の断面が断面四角形の角材状の下側発泡体101上に、前記橋桁51の長さ方向に対して垂直方向の断面の角が丸い四角形の断面形状を有する棒状の上側発泡体111が両面粘着テープや接着剤等で固定されたものからなる。前記非連結部用シール材100の下側発泡体101及び上側発泡体111は、前記連結部の上側添接板上に配置されるシール材10の下側発泡体11及び上側発泡体21と同様の材質からなる。
【0027】
その後、図10に示したような床版57をクレーンで吊り上げて橋桁51上で位置の調整をしながら前記連結部53上のシール材10及び非連結部用シール材100に載せる。その際、前記シール材10の上面、すなわち前記上側発泡体21の上面が床版の下面で擦られる等によって、図6に示すように、前記シール材10に横方向の力Fが加わった場合、相対的に硬度の低い前記上側発泡体21が主に変形し、相対的に硬度の高い前記下側発泡体11については変形を抑えることできる。また、前記上側発泡体21の外面に形成されている前記スキン層12によって上側発泡体21の上面で滑りが良くなり、前記上側発泡体21の上面と接触しながら行われることがある床版の位置調整が容易になるのみならず、前記上側発泡体21の上面が床版で擦られても前記上側発泡体21が破損し難くなる。
【0028】
さらに、前記上側発泡体21は角25が丸い四角形または円形の断面形状からなるため、横方向の力Fに対して底部の丸い角25a、25bでは前記下側発泡体11との接合幅が小さく支持力が小さいため、前記下側発泡体11の上面で横方向へ変形しやすい。加えて、前記下側発泡体11は受け部16の下面17が前記締結部材61の端部611で支持されているため、横方向の力に対して下側発泡体11が転がり難くなっている。そのため、前記シール材10は、横方向の力に対して主に前記上側発泡体21の部分で横方向へ変形することになり、前記シール材10の全体が底部から倒れたり位置がずれたりするのを防ぐことができる。従って、シール材の貼り直し作業等の面倒な作業が不要になり、施工作業の簡略化を実現できる。
【0029】
また、前記シール材10は、前記上側発泡体21及び下側発泡体11の何れも発泡体からなるため、軽量であり、施工時の取り扱いが容易である。さらに、前記下側発泡体11は、発泡体のシート材から断面四角形に切り出して前記脚部12と前記受け部16を作成することができるので、修繕工事などで当初の予定していた設定と異なる高さのシール材が必要となったり、工期の限られた急を要する場合にも速やかに成形して、対応することが可能である。
【0030】
前記床版を前記シール材10上に載置した後に、前記シール材10間にコンクリートやモルタルが充填される。その際、コンクリートやモルタルは前記下側発泡体11の前記脚部12の一方の側面13と前記受け部16の下面17間の窪み18における前記締結部材61の端部611周囲の空間に進入して隙間無く充填することができる。
【0031】
なお、前記実施形態では下側発泡体11の脚部12と受け部16を2部材で構成したが、図7に示すシール材10Aのように、下側発泡体11Aの脚部12Aと受け部16Aを一部材で一体に構成してもよい。その場合、前記下側発泡体11Aは、断面四角形の角材状の発泡体における下側の一角部を切り欠いて断面逆L字形にする。符号18Aは窪み、21Aは上側発泡体、25Aは丸い角である。その他の構成は、図1に示したシール材10と同様である。
【0032】
また、図8に示すシール材10Bのように、前記脚部12の一側面13と受け部16の下面17との間をつなぐようにリブ15を設けてもよい。前記締結部材の端部に干渉しないようにリブ15を断続的に設けることで、脚部12と受け部16の接合強度を高めて窪み18の形状を維持しやすくできる。さらに、前記下側発泡体11の窪み18形状に整合して下側発泡体11の断面視が矩形となるようにリブ15を設けることで、設置底面が大きくなるので、橋桁の連結部上に安定してシール材10Bを設置することができる。前記リブ15の材料は、下側発泡体11の材料と同じものが選択されれば、支持力や変形性能が同等となって好ましい。さらには、シール材を載置しやすく、かつモルタルまたはコンクリートの充填性を良好にするために、図9のシール材10Cのように、前記リブ15は前記シール材10Cの長手方向端部にのみ設けられることが好ましい。
【0033】
このように、本発明のシール材は、床版をシール材上に載置する際に行われる床版の位置調整時に、シール材が横方向へ倒れたり位置ズレを生じたりし難いため、シール材の貼り直し作業等の面倒な作業を不要にでき、施工作業の簡略化を実現できる。また、モルタルの打設時に、橋桁の連結部で良好なシール性を得ることができ、コーキング剤塗布作業の簡略化及びコーキング剤の使用量を低減することができる。さらに、コンクリートやモルタルをシール材間に隙間無く充填することができるため、モルタルの充填不良による内部欠損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0034】
10 シール材
11 下側発泡体
12 脚部
16 受け部
17 受け部の下面
18 窪み
21 上側発泡体
22 スキン層
25 丸い角
25a、25b 底部の丸い角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11