特許第6275786号(P6275786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275786
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】血液処理を行なうシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A61M1/16 135
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-156342(P2016-156342)
(22)【出願日】2016年8月9日
(62)【分割の表示】特願2012-557441(P2012-557441)の分割
【原出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-790(P2017-790A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】102010011465.0
(32)【優先日】2010年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ポールマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヘレンバウアー
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア ゲンペル−クライン
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート クラウゼ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ヴェーマイヤー
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−149299(JP,A)
【文献】 特開2000−014771(JP,A)
【文献】 特開昭57−110257(JP,A)
【文献】 米国特許第05914047(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理を行なうシステムであって、
少なくとも1つの血液処理装置(100)と、
柔軟な壁を有する少なくとも1つの複数チャンバー袋(210)であって、少なくとも一つのチャンバーは治療液(220)の受領部として機能し、少なくとも1つの他のチャンバーは、使用済の治療液(230)の受領部として機能し、前記チャンバーと前記他のチャンバーは互いに繋がっていて、一方の体積が増加すると、それに対応するぶん他方の体積が減少するようになっており、前記血液処理中に前記治療液(220)が前記チャンバーから取り出され、且つ/又は、前記血液処理中に前記使用済の治療液(230)が前記他のチャンバーに充填される少なくとも1つの複数チャンバー袋(210)とを備え、
前記使用済の治療液(230)のための他のチャンバーが前記治療液(220)のための前記チャンバーを囲み、
前記複数チャンバー袋(210)は、少なくとも1つの可動式装置(200)の構成要素であり、前記可動式装置(200)は前記血液処理装置(100)に接続されて、ホースであっても良い治療液が流れる接続部材を介する少なくとも1つの流体接続を前記複数チャンバー袋(210)と前記血液処理装置(100)との間に成立させ
前記可動式装置(200)は、前記複数チャンバー袋(210)を支持するように作られているシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記血液処理装置(100)自体は、血液処理中に前記治療液(220)がそこから取り出され、且つ/又は、血液処理中に前記使用済の治療液(230)が充填される複数チャンバー袋(210)を備えていないことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記システムは、前記可動式装置(200)が前記血液処理装置(100)における所定の位置に移動した後に、自動的に又は要求に応じて、前記複数チャンバー袋(210)と前記血液処理装置(100)との間に少なくとも1つの流体接続を成立させる手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのシステムにおいて、
前記血液処理装置(100)は、前記可動式装置(200)を受入れるための搭載部として、切り欠き又は空間を有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのシステムにおいて、
前記可動式装置(200)は移動を容易にするためのキャスターを有していることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つのシステムにおいて、
前記可動式装置(200)は、気密に作られていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つのシステムにおいて、
前記可動式装置(200)は前記使用済の治療液(230)を液出口か又は他の受領ユニットに誘導する手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つのシステムにおいて、
少なくとも1つの充填ユニット(300)を更に備え、
前記充填ユニット(300)の手段によって前記可動式装置(100)の前記複数チャンバー袋(210)を前記治療液(220)によって充填できることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8のシステムにおいて、
前記充填ユニット(300)は、前記治療液(220)を複数の構成要素から調整する手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項8又は9のシステムにおいて、
前記充填ユニット(300)は、RO水の供給ユニットと接続されているか又はRO水の供給ユニットを有していることを特徴とするシステム。
【請求項11】
制御ユニットを備える血液処理装置(100)の作動方法であって、
柔軟な壁を有する複数チャンバー袋(210)が可動式装置(200)の構成要素であり、少なくとも一つのチャンバーは治療液(220)の受領部として機能し、少なくとも1つの他のチャンバーは、使用済の治療液(230)の受領部として機能し、前記チャンバーと前記他のチャンバーは互いに繋がっていて、一方の体積が増加すると、それに対応するぶん他方の体積が減少するようになっており、前記使用済の治療液(230)のための他のチャンバーが前記治療液(220)のための前記チャンバーを囲み、前記可動式装置(200)は、血液処理を行うための前記血液処理装置(100)に接続された状態において、前記制御ユニットが作動して、前記複数チャンバー袋(210)と前記血液処理装置(100)との間に流体接続を成立させ、
前記可動式装置(200)は、前記複数チャンバー袋(210)を支持するように作られている、血液処理装置の作動方法。
【請求項12】
請求項11の血液処理装置の作動方法において、
前記制御ユニットが作動して、ホースであっても良い治療液が流れる接続部材を介する更なる流体接続を成立させ、使用済の治療液(230)を前記可動式装置(200)の前記(210)又は他のに供給するか、又は、前記可動式装置(200)の手段によるか、前記可動式装置(200)無しに直接、液出口又は他の受領ユニットに供給することを特徴とする血液処理装置の作動方法。
【請求項13】
請求項11又は12の血液処理装置の作動方法において、
前記血液処理装置(100)は、少なくとも1つの流体接続を、自動的に又はユーザの要求により前記複数チャンバー袋(210)と前記血液処理装置(100)との間に成立させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1つの血液処理装置の作動方法において、
前記血液処理装置(100)は、少なくとも1つのデータ接続を、自動的に又はユーザの要求により前記可動式装置(200)と前記血液処理装置(100)との間に成立させることを特徴とする血液処理装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液処理、特に透析治療を行なうシステムに関し、当該システムは少なくとも1つの血液処理装置、特に透析装置を含む。
【背景技術】
【0002】
透析液が治療中に調整されるのではなく、透析治療に必要な透析液の全量が治療の前にタンクに供給されるような透析装置が、従来技術により知られている。この形式の透析装置は、「バッチ型」透析装置とも呼ばれる。
【0003】
そのような装置を、可動型ユニットであって、その中で透析液が調整され、調整済の透析液により透析装置のタンクを満たす可動型ユニットに接続することも、従来技術の国際出願 WO 2008/104356 A2により知られている。
【0004】
WO 2008/104356 A2により知られるシステムでは、調整済の透析液は、可動型ユニットのタンクから透析装置のタンクに輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/104356号
【特許文献2】独国特許公開1939923明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基本的な目的は、初めに名を出したようなシステム、つまり、扱いが簡易で且つシステムの治療ユニットに患者が接続されたまま透析液を交換できるようなシステムを更に進歩させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を更に有するシステムによって達成される。血液処理中に治療液、特に透析液がそこから取り出されるタンクは、少なくとも1つの可動式装置における構成要素であり、血液処理装置に接続することができ、少なくとも1つの流体接続を、タンクと血液処理装置との間に成立させることができる。本発明において、血液処理又は透析治療中に透析液がそこから取り出されるタンクは可動式装置の構成要素である。つまり、ユーザーによって移動でき且つ治療前に血液処理装置に接続されてタンクと血液処理装置との間に流体接続が成立させられ、治療液が血液処理装置に供給可能にされる装置の構成要素である。
【0008】
血液処理装置自体は、治療中に治療液、特に透析液がそこから取り出される、及び/又は、血液処理が行なわれる間に使用済の治療液、特に使用済の透析液がそこに入れられるタンクを備えていなくても良い。
【0009】
しかしながら、本発明のそのような実施形態において、例えば、抗凝血剤又は他の添加剤のためのひとつ又はより多くの容器が、血液処理装置自体に配置されることを除外するものではない。
【0010】
比較的小さい緩衝液貯蔵部、例えば容積が1Lまでの容器が血液処理装置自体に配置されている実施形態も考えられ、本発明の範疇である。これにより、バッチが接続されていないときに血液が戻ることを可能とする。
【0011】
従って、血液処理装置自体は、透析液の受け入れ場所として機能するタンクを有していなくても良いことから、比較的簡潔に作られることができる。この実施形態は、順応性及びタンク交換が可能である点において有利である。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、システムは、可動式装置を血液処理装置の予め決められた位置に移動させた後に、タンクと血液処理装置との間に少なくとも1つの流体接続を自動的に又は要求に応じて成立させる手段を有する。
【0013】
一般に、血液処理装置が自動的に可動式装置の存在を認識し、タンクと血液処理装置との間に少なくとも1つの流体接続を自動的に又はユーザーの要求に応じて成立させて、透析液を血液処理装置又は血液処理を行なう手段に供給することが考えられる。
【0014】
一方の可動式装置のタンクと、他方の血液処理装置との間に流体接続を成立させるための手段が設けられても良い。これは、接続の後に治療液が流れるホース及び/又は接続部材を含んでいても良い。前述の手段は、血液処理装置に内蔵若しくは外付けされること、及び/又は可動式装置に内蔵若しくは外付けされることが可能である。
【0015】
血液処理装置は、可動式装置が予め定められ且つ指定された終端位置に移動されると自動的に認識し、流体接続及び/又はデータ接続を自動的に成立させる、又は、少なくとも、要求により同様の接続を形成する選択をユーザーに与えることが考えられる。
【0016】
流体接続の場合、(従来技術のように)微生物による汚染を最小限にするように、流体接続は、例えば、一方の少なくとも1つのタンクと、他方の血液処理装置との間において、対応する接続部材によって成立させる。
【0017】
本発明の他の実施形態において、血液処理装置は搭載部、望ましくは切り欠き又は空間を備え、可動式装置を受け入れても良い。透析治療を始めるために、可動式装置は、これを受け入れるための該切り欠き又は空間に導入されて、接続される。これに続いて、血液処理装置又は体外血液処理を行なうための手段によって血液処理が開始されても良い。
【0018】
可動式装置が操作しやすく、且つ、血液処理装置に望ましい形で接続可能であり、好ましくはラッチ留め可能であれば、可動式装置を血液処理装置内に確実に一体化するために有利である。可動式装置の良好な操作性は、例えば、可動式装置のキャスター又は適切なキャスターシステムによって達成できる。キャスター又はキャスターシステムは、可動式装置の信頼できる方向安定性が実現されるように作られていることが望ましい。これは、可動式装置は、血液処理装置に対して方向が安定した形で押し入れられるべきだからである。
【0019】
キャスターシステム又はキャスターは、同時に、可動式装置が比較的単純に操作できるように作られているべきである。可動式装置は、充填された状態では、15kgから150kg程度のオーダーの重量を有し、特には120kg以下、例えば80kgである。
【0020】
本発明の望ましい他の実施形態において、可動式装置のキャスターは、側方にはできるだけ小さく突き出しているか、又は、できるだけ小さな「トラック幅」を占めることが望ましく、平らで且つ可能なら外側には動かない又は外側には僅かにしか動かないことにより、血液処理装置がキャスターに引っ掛かるのを避けるように設計されていることが望ましい。可動式装置のキャスター又は車輪は、この点について参照しているDE 19 39 923 A1に従って設計されていることが望ましい。従って、キャスター又は車輪は、回転可能に配置されたハブ本体を含み、ハブ本体は、複数の回転可能で且つハブ本体の円周を超えて突き出した円周を有する複数のキャスターを備え、キャスターの回転軸はハブ本体の円周の接線方向に延びている。この設計によれば、搭載された状態において可動式装置を互いに直交する方向に動かすことも容易に可能である。
【0021】
キャスター又は車輪についての更なる可能な実施形態に関してDE 19 39 923 A1に言及すると、この内容は本発明の開示に含まれる。
【0022】
タンクは、硬い容器として作られていても良いし、少なくとも一部が柔軟な袋であっても良い。
【0023】
タンクは使い捨ての部品として作られているのが好ましい。タンクは、袋として作られていても良いが、本発明の好ましい実施形態では新しい充填のたびに取り替えられる。これにより、充填の間の洗浄は不要になる。
【0024】
可動式装置は、タンク、特に袋を機械的に支えるように作られているのが良い。これは、タンク又は袋自体が、可動式装置による支えが無い場合より強度が低くても良い点で有利である。更に、本発明の好ましい実施形態では、装置は気密に作られている。これは、装置自体がCOの損失を防ぐガスバリアとして機能することを意味する。本発明の本実施形態によると、タンク(例えば袋として作られる)のガスバリア性についての要求は、相応に低くなる。従って、比較的安価な材料からなるものを用いることができる。
【0025】
本発明の更なる実施形態において、タンクは複数チャンバータンク、特に複数チャンバー袋として作られ、少なくとも1つのチャンバーは治療液の受領部として機能し、且つ、少なくとも1つのチャンバーは使用済の治療液の受領部として機能すると共に/又は可動式装置は使用済治療液を液出口又は他の受領ユニットに誘導する手段を有する。
【0026】
タンクが複数チャンバー袋として設けられている場合、治療中、袋の全体としての体積は変化しないか又は重要でない程度の変化しかしないという利点がある。治療装置に供給される治療液の量は、使用済の治療液の量と、場合により限外濾過液とによって置き換えられる。
【0027】
更なる利点は、内部熱回収を含む。使用済透析液は新鮮な透析液に熱を与え、これにより加熱の必要は低減される。使用済透析液のためのタンク又は袋が新鮮な透析液のためのタンク又は袋を囲んでいれば(袋内袋という考え)、新鮮な透析液に対する良好な断熱が得られるという利点がある。
【0028】
このような工程に代える物として、別のタンク又は袋を使用済透析液及び場合により限外濾過液を受け入れるために用いることが当然可能である。更に、直接流出路を設けて、使用済透析液及び場合により限外濾過液を、可動式装置における手段により液出口又は他の受領手段に誘導することもできる。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、システムは、少なくとも1つの充填ユニットを有し、これによって可動式装置のタンクが治療液によって充填される。
【0030】
充填ユニットは、複数の成分、好ましくは1つ又はそれ以上の濃縮物と、水とから治療液を調製する手段を有していても良い。
【0031】
充填ユニットは、適切な質(純度、温度及び量)の水だけを供給することも考えられる。この場合、濃縮物は予めタンク又は袋に存在するようにしてもよい。
【0032】
充填ユニットは、使用済溶液を取り出す手段を有していても良い。
【0033】
このために、充填ユニットはRO水(逆浸透圧水)供給ユニットに接続されていても良いし、そのようなユニットを備えていても良い。
【0034】
上記のように、可動式装置は血液処理装置に適切な方法で接続されることが考えられる。この点について、可動式装置がその配置場所から移動して離れるのを避けるように考慮すべきである。可動式装置が最終位置に来たときに、可動式装置を誘導部材、例えば血液処理装置の誘導片に接続するか又はラッチすることが考えられる。この誘導部材又は誘導片は、更に、可動式装置を血液処理装置に押し入れるとき、引っ掛かること無しに、比較的重い充填された可動式装置を血液処理装置に導入することを良い確率で可能にする。このような誘導手段は、可動式装置及び/又は血液処理装置に設けることができる。
【0035】
可動式装置を小さな労力でラッチし且つ開放するために、例えばラッチされるためのボールを可動式装置の下方に設けても良く、該ボールは血液処理装置の例えば誘導片に設けられた切り欠きに組み合わされても良い。
【0036】
本発明は更に、血液処理装置、特に透析装置に、血液処理を行なう際にタンクから取り出される治療液、特に透析液を供給する方法に関する。当該方法は、タンクが可動式装置の構成要素であって、血液処理を行なうために、タンクと血液処理装置との間に流体接続があるようにタンクが血液処理装置に接続されていることを特徴とする。
【0037】
「タンク」との語は広い意味に理解されると共に、例えば、HF溶液(hemofiltration溶液、血液濾過用補充液)のような独占的医療用製品を含む。
【0038】
更に、当該方法は、可動式装置の手段によって、使用済の治療液、特に使用済の透析液をタンク若しくは可動式装置のタンクに供給するか、又は、液出口若しくは他の受領ユニットに供給される工程を含む。
【0039】
本発明の他の実施形態において、可動式装置は初めに充填ユニットに向けて動かされ、そこで可動式装置のタンクに治療液、特に新鮮な透析液が充填される。
【0040】
この方法は、同時に又は補正時間を空けて、少なくとも1つのタンクから治療液が取り出されると共に、使用済の治療液が少なくとも1つの他のタンクに供給されるようにして行なわれる。異なる複数のタンク又は袋が一方では新鮮な治療液が蓄えられ、他方では使用済の治療液が供給される場合も、一般に本発明に含まれる。
【0041】
更に、この方法は、可動式装置を血液処理装置に向けて所定位置に動かされた後、少なくとも1つの流体接続を自動的に又は要求によりタンクと治療装置との間に成立させる工程を含む。同じことは、データ接続についても適用でき、可動式装置から血液処理装置へのデータの移動及び/又はその逆のデータの移動が行なわれる。
【0042】
可動式装置は充填ユニットに対して動かされ、使用済治療液、特に使用済透析液が可動式装置のタンクから充填ユニットに供給される。充填ユニットは、可動式装置のタンクを治療液で満たすために機能するだけではなく、可動式装置のタンクから使用済の治療液を取り出すためにも機能する。個別の流体回路を設けることは、衛生上の理由から特に有利である。個別の取り出しユニットを用いることもできる。
【0043】
本発明は更に、血液処理、望ましくは体外血液、特に透析治療を行なう手段を有する血液処理装置、特に透析装置に関係する。この装置は、血液処理を行なうために必要な治療液、特に透析液が入ったタンクを備えないことを特徴とする。血液処理装置は、血液処理装置を、少なくとも1つの治療液が入ったタンクに接続する接続部であって、血液処理の最中にはそこを通って液を血液処理装置に供給する少なくとも1つの接続部を備えていても良い。
【0044】
血液処理装置は、少なくとも1つの搭載部を有し、そこに、少なくとも1つのタンクを有する可動式装置、望ましくは本発明の可動式装置が受け入れられてもよい。
【0045】
本発明は、最後に、少なくとも1つのタンクを有する可動式装置の使用に関し、タンクには治療液、特に透析液が入れられ、血液処理装置、特に透析装置に、血液処理中、治療液を供給するために配置する。可動式装置は、1つ又はより多くの既に述べた特徴及び/又は以下に述べる特徴を有するように作られていることが望ましい。
【発明の効果】
【0046】
以上の技術によると、扱いが簡易で且つ治療ユニットに患者が接続されたまま透析液を交換できるシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、透析装置、可動式装置及び充填ユニットを備える本発明のシステムを模式的に示す図である。
図2図2は、可動式装置のタンクを充填ユニットによって満たすことと、可動式装置を血液処理装置に組み合わせることについて模式的に示す図である。
図3図3は、2チャンバー袋を備える可動式装置を模式的に示す図であり、チャンバーは消費済ではない透析液を受け入れて満たされている。
図4図4は、2チャンバー袋を備える可動式装置を模式的に示す図であり、チャンバーは消費済の透析液を受け入れて満たされている。
図5図5は、可動式装置と共に充填ユニットを模式的に示す図であり、充填ユニットは、可動式装置のタンクを空にするためのユニットとしても機能している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の更なる細部及び利点について、図面を参照して以下により詳しく説明する。
【0049】
図1は、本発明に従って血液処理を行なうためのシステムを示す。システムは、体外血液処理手段を有する実際の血液処理装置100と、可動式装置200と、充填ユニット300とを有する。
【0050】
システムは、体外血液処理、特に血液透析、HHD(home hemodialysis、家庭用血液透析)及び急性腎不全の治療に用いられるのが望ましい。他には、腹膜透析、特にAPD(Automated Peritoneal Dialysis、自動腹膜透析)にも適用できる。当該システムは、不連続工程(iHD及びEDD)に用いることもできるし、連続的な応用(例えばCWHD、CVVH)も可能である。
【0051】
可動式装置200はタンクを有し、タンクは2チャンバー袋210(又は2つの個別の袋)の形であり、その一方のチャンバーには新鮮な透析液220が充填される。透析液220は、充填ユニット300によって調整された後、2チャンバー袋210に充填される。ここに示す実施形態では、透析液はバッチ形式にて供給される。
【0052】
しかしながら、例えば透析液が袋又は他の受領容器に入れられている発明も利用でき、可動式装置を利用して血液処理装置100に動かされることもできる。特に、例えばHF溶液を用いることもできる。
【0053】
透析液のバッチは、望ましくは固定式の充填ユニット300において、濃縮物を純粋、望ましくはRO水にて希釈することで調整されるのがよい。充填ユニット300は、小さなユニットであって、例えば壁に固定されるか若しくは他の形で固定式であるか、又は、移動可能であっても良い。更に、別途にROユニットを備えても良いし、ROユニットに接続されていても良いし、一体化されたROユニットを備えていても良い。更なる水処理ユニットが充填ユニットに備えられても良い。例えば、消毒剤の供給手段を備え、任意で構成要素又は透析液の製造に用いる水の消毒を行なっても良い。更に、充填ユニットは、加熱手段を有し、水又は製造された透析液の加熱に用いられるのが有利である。
【0054】
水に混ぜて透析液を作るための液体濃縮物又は固体濃縮部のどちらも、透析液をつくるのに用いることができる。
【0055】
充填ユニット300では汚染の危険を減らした(最小限とした)接続を用い、これにより微生物数の少ない環境にて透析液を製造することが望ましい。
【0056】
透析液220を調整した後、これはタンク210に充填されるか又は可動式装置200の2チャンバー袋210に充填される。この工程は、図2に模式的に示され、Aの記号によって示されている。袋210は、移動のために可動式装置200に配置される。袋又はタンク210の大きさは、例えば、15リットルから120リットルの範囲であり、望ましくは40リットルから80リットルの範囲であっても良い。
【0057】
可動式装置200の袋210は柔軟であり、且つ、2チャンバー袋210の2つのチャンバーは互いに接続されていて、一方のチャンバーの体積が増加すると他方のチャンバーの体積が小さくなることが望ましい。これについては以下により詳しく示す。
【0058】
可動式装置200のタンク210を満たした後、可動式装置200は血液処理装置100の方に動かされる(工程B)。このために、可動式装置200はキャスターを備えている。
【0059】
血液処理装置100は、制御ユニットを含み、可動式装置200が血液処理装置100における所定の位置(例えば、最終位置であっても良いし、中間位置であっても良い)に達したことを認識するようになっていても良い。血液処理装置100は、更にユーザーインターフェースを含み、これによって血液処理装置100又は可動式装置200の動作状態をユーザーに向けて表示し、且つ、ユーザーは任意で入力を行えるようにしても良い。血液処理装置100は、更に、体外血液処理を行なう手段、特に透析治療を行なうための例えばホースキット(カセットシステム/一体型使い捨て部品)、血液ポンプ、透析ポンプ、対応のホースラインを備える透析装置等を備えていても良い。
【0060】
一旦、可動式装置200が血液処理装置100の指定された位置に到達するか又は血液処理装置100に一体化されると、可動式装置200のタンク210と血液処理装置100との間で、自動的に又はユーザからの要求により流体接続が成立する。流体接続が成立すると、透析が進行する間、新鮮な治療液220が2チャンバー袋210の部分から血液処理装置100に供給される。更なる流体接続が形成され、透析治療中に発生する使用済透析液230が2チャンバー袋210の他のチャンバーに充填される。加えて、限外濾過液がこのチャンバーか又は他のチャンバーに導かれる。血液処理装置は、実際の治療装置105を備え、その下には可動式装置を受け入れるための受入れスペース106が設けられている。
【0061】
図2は、可動式装置200を血液処理装置100に組み合わせる工程を示す。工程Cによる体外血液回路は、これによって患者が血液処理装置100に接続されるのだが、図2においては二重の矢印によって示されている。
【0062】
可動式装置200は、透析治療中又は血液処理中に必要に応じて交換することができ、この際、患者が体外血液回路から外れる必要はない。可動式装置200は、新鮮な治療液220で満たされたタンク210を有する別の可動式装置200によって置き換えることができる。
【0063】
図3は、可動式装置200のタンク210が、使用済の治療液220を受入れるチャンバーは空であり、且つ、新鮮な治療液220を受入れるチャンバーは充填されている状態を示す。新鮮な治療液220が入ったチャンバーの体積は治療中に小さくなる。同時に、使用済の透析液及び任意で限外濾過液を受入れるチャンバーの体積は、透析液が戻ってくるので大きくなる。
【0064】
図4は、可動式装置200における2チャンバー袋210の治療後の状態を示す。ここで、使用済の透析液230及び任意で限外濾過液を受入れるチャンバーの体積が増加していることが示されている。
【0065】
限外濾過液が取り出されない場合、工程において袋210の体積は変化しないか又はほとんど変化しない。これは、使用済の透析液230が、新鮮な透析液220が取り出されるのと同じだけ供給されるからである。
【0066】
タンク210の他の実施形態についても本発明の範疇である。例えば、タンクは硬質に作られていても良い。互いに別々の袋又は他の容器、つまり、互いに接続されていない袋又は他の容器が一方を使用済ではない透析液220に、他方が使用済の透析液230に用いられる場合についても、本発明の範疇である。
【0067】
透析液が使用されると、可動式装置200は血液処理装置100から外され、充填ユニット300の方に動かされる。ここで、使用済の透析液230及び任意で限外濾過液は袋210からポンプにより取り出され、使い捨て部品として用いられたタンク又は袋210は廃棄される。
【0068】
その後、可動式装置200は新しい袋210と共に使用でき、充填のために再び利用できる。
【0069】
充填ユニット300によって可動式装置200の袋210を空にする工程は、図5に示されている(工程D)。
【0070】
空にするためには、例えば、充填ユニット300のポンプを使用し、この場合は充填ユニットは空にするユニットとしても機能する。一般に、異なるユニットを用いることも、個別の(1つの)ポンプを充填するため及び空にするための両方に用いることも、同様に考えられる。
【0071】
血液処理装置100は、制御ユニットを備え、特に単純な動作をするように作られていても良い。例えば、可動式装置200が血液処理装置100に導入されると自動的に認識されても良い。可動式装置200のタンク210又は袋210との接続は自動的に行なわれても良い。更に、可動式装置200からのデータが血液処理装置100によって読み取られるようにデータ接続が行なわれても良い。このようなデータは、例えば、袋210内の透析液220(量、組成)に関係しても良い。
【0072】
接続が成功したことをユーザーに示し、更にキーパッド又はスイッチ等を操作して透析治療を開始させることが考えられる。
【0073】
同様に、透析治療が終了したこと又は袋210の使用済の透析液230を受入れる容量が尽きたことを血液処理装置100がユーザーに示してもよい。
【0074】
この場合、例えば、可動式装置200が血液処理装置100から外れたことをユーザーに対して聴覚的に及び/又は視覚的に示しても良い。
【0075】
ここに示された実施形態において、血液処理装置100は、体外血液処理を行なう手段を有している。唯一の例外は、新鮮な透析液220を受入れるためのタンクである。このようなタンクは、血液処理装置100には設けられておらず、その代りに、上に述べた通り、可動式装置200によって提供される。可動式装置200は、血液処理装置100に動かすことができ、透析を開始できる。
【0076】
このシステムの利点は、本発明の好ましい実施形態において以下のように要約できる。
【0077】
患者を接続したままバッチを交換できること、
袋の交換が不要であること(5リットル袋/排液袋)、
労力を軽減できること(可動ユニットによる廃品処理)、
衛生:閉鎖されたシステムであり、汚染の危険を低減できること、
使い捨て部品による流体システム(可動システム/治療ユニットには固定の液圧系が無い、感染防止の労力低減)であること、
一体化された警報の運用(情報伝達)。
図1
図2
図3
図4
図5