【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を更に有するシステムによって達成される。血液処理中に治療液、特に透析液がそこから取り出されるタンクは、少なくとも1つの可動式装置における構成要素であり、血液処理装置に接続することができ、少なくとも1つの流体接続を、タンクと血液処理装置との間に成立させることができる。本発明において、血液処理又は透析治療中に透析液がそこから取り出されるタンクは可動式装置の構成要素である。つまり、ユーザーによって移動でき且つ治療前に血液処理装置に接続されてタンクと血液処理装置との間に流体接続が成立させられ、治療液が血液処理装置に供給可能にされる装置の構成要素である。
【0008】
血液処理装置自体は、治療中に治療液、特に透析液がそこから取り出される、及び/又は、血液処理が行なわれる間に使用済の治療液、特に使用済の透析液がそこに入れられるタンクを備えていなくても良い。
【0009】
しかしながら、本発明のそのような実施形態において、例えば、抗凝血剤又は他の添加剤のためのひとつ又はより多くの容器が、血液処理装置自体に配置されることを除外するものではない。
【0010】
比較的小さい緩衝液貯蔵部、例えば容積が1Lまでの容器が血液処理装置自体に配置されている実施形態も考えられ、本発明の範疇である。これにより、バッチが接続されていないときに血液が戻ることを可能とする。
【0011】
従って、血液処理装置自体は、透析液の受け入れ場所として機能するタンクを有していなくても良いことから、比較的簡潔に作られることができる。この実施形態は、順応性及びタンク交換が可能である点において有利である。
【0012】
本発明の更なる実施形態では、システムは、可動式装置を血液処理装置の予め決められた位置に移動させた後に、タンクと血液処理装置との間に少なくとも1つの流体接続を自動的に又は要求に応じて成立させる手段を有する。
【0013】
一般に、血液処理装置が自動的に可動式装置の存在を認識し、タンクと血液処理装置との間に少なくとも1つの流体接続を自動的に又はユーザーの要求に応じて成立させて、透析液を血液処理装置又は血液処理を行なう手段に供給することが考えられる。
【0014】
一方の可動式装置のタンクと、他方の血液処理装置との間に流体接続を成立させるための手段が設けられても良い。これは、接続の後に治療液が流れるホース及び/又は接続部材を含んでいても良い。前述の手段は、血液処理装置に内蔵若しくは外付けされること、及び/又は可動式装置に内蔵若しくは外付けされることが可能である。
【0015】
血液処理装置は、可動式装置が予め定められ且つ指定された終端位置に移動されると自動的に認識し、流体接続及び/又はデータ接続を自動的に成立させる、又は、少なくとも、要求により同様の接続を形成する選択をユーザーに与えることが考えられる。
【0016】
流体接続の場合、(従来技術のように)微生物による汚染を最小限にするように、流体接続は、例えば、一方の少なくとも1つのタンクと、他方の血液処理装置との間において、対応する接続部材によって成立させる。
【0017】
本発明の他の実施形態において、血液処理装置は搭載部、望ましくは切り欠き又は空間を備え、可動式装置を受け入れても良い。透析治療を始めるために、可動式装置は、これを受け入れるための該切り欠き又は空間に導入されて、接続される。これに続いて、血液処理装置又は体外血液処理を行なうための手段によって血液処理が開始されても良い。
【0018】
可動式装置が操作しやすく、且つ、血液処理装置に望ましい形で接続可能であり、好ましくはラッチ留め可能であれば、可動式装置を血液処理装置内に確実に一体化するために有利である。可動式装置の良好な操作性は、例えば、可動式装置のキャスター又は適切なキャスターシステムによって達成できる。キャスター又はキャスターシステムは、可動式装置の信頼できる方向安定性が実現されるように作られていることが望ましい。これは、可動式装置は、血液処理装置に対して方向が安定した形で押し入れられるべきだからである。
【0019】
キャスターシステム又はキャスターは、同時に、可動式装置が比較的単純に操作できるように作られているべきである。可動式装置は、充填された状態では、15kgから150kg程度のオーダーの重量を有し、特には120kg以下、例えば80kgである。
【0020】
本発明の望ましい他の実施形態において、可動式装置のキャスターは、側方にはできるだけ小さく突き出しているか、又は、できるだけ小さな「トラック幅」を占めることが望ましく、平らで且つ可能なら外側には動かない又は外側には僅かにしか動かないことにより、血液処理装置がキャスターに引っ掛かるのを避けるように設計されていることが望ましい。可動式装置のキャスター又は車輪は、この点について参照しているDE 19 39 923 A1に従って設計されていることが望ましい。従って、キャスター又は車輪は、回転可能に配置されたハブ本体を含み、ハブ本体は、複数の回転可能で且つハブ本体の円周を超えて突き出した円周を有する複数のキャスターを備え、キャスターの回転軸はハブ本体の円周の接線方向に延びている。この設計によれば、搭載された状態において可動式装置を互いに直交する方向に動かすことも容易に可能である。
【0021】
キャスター又は車輪についての更なる可能な実施形態に関してDE 19 39 923 A1に言及すると、この内容は本発明の開示に含まれる。
【0022】
タンクは、硬い容器として作られていても良いし、少なくとも一部が柔軟な袋であっても良い。
【0023】
タンクは使い捨ての部品として作られているのが好ましい。タンクは、袋として作られていても良いが、本発明の好ましい実施形態では新しい充填のたびに取り替えられる。これにより、充填の間の洗浄は不要になる。
【0024】
可動式装置は、タンク、特に袋を機械的に支えるように作られているのが良い。これは、タンク又は袋自体が、可動式装置による支えが無い場合より強度が低くても良い点で有利である。更に、本発明の好ましい実施形態では、装置は気密に作られている。これは、装置自体がCO
2の損失を防ぐガスバリアとして機能することを意味する。本発明の本実施形態によると、タンク(例えば袋として作られる)のガスバリア性についての要求は、相応に低くなる。従って、比較的安価な材料からなるものを用いることができる。
【0025】
本発明の更なる実施形態において、タンクは複数チャンバータンク、特に複数チャンバー袋として作られ、少なくとも1つのチャンバーは治療液の受領部として機能し、且つ、少なくとも1つのチャンバーは使用済の治療液の受領部として機能すると共に/又は可動式装置は使用済治療液を液出口又は他の受領ユニットに誘導する手段を有する。
【0026】
タンクが複数チャンバー袋として設けられている場合、治療中、袋の全体としての体積は変化しないか又は重要でない程度の変化しかしないという利点がある。治療装置に供給される治療液の量は、使用済の治療液の量と、場合により限外濾過液とによって置き換えられる。
【0027】
更なる利点は、内部熱回収を含む。使用済透析液は新鮮な透析液に熱を与え、これにより加熱の必要は低減される。使用済透析液のためのタンク又は袋が新鮮な透析液のためのタンク又は袋を囲んでいれば(袋内袋という考え)、新鮮な透析液に対する良好な断熱が得られるという利点がある。
【0028】
このような工程に代える物として、別のタンク又は袋を使用済透析液及び場合により限外濾過液を受け入れるために用いることが当然可能である。更に、直接流出路を設けて、使用済透析液及び場合により限外濾過液を、可動式装置における手段により液出口又は他の受領手段に誘導することもできる。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、システムは、少なくとも1つの充填ユニットを有し、これによって可動式装置のタンクが治療液によって充填される。
【0030】
充填ユニットは、複数の成分、好ましくは1つ又はそれ以上の濃縮物と、水とから治療液を調製する手段を有していても良い。
【0031】
充填ユニットは、適切な質(純度、温度及び量)の水だけを供給することも考えられる。この場合、濃縮物は予めタンク又は袋に存在するようにしてもよい。
【0032】
充填ユニットは、使用済溶液を取り出す手段を有していても良い。
【0033】
このために、充填ユニットはRO水(逆浸透圧水)供給ユニットに接続されていても良いし、そのようなユニットを備えていても良い。
【0034】
上記のように、可動式装置は血液処理装置に適切な方法で接続されることが考えられる。この点について、可動式装置がその配置場所から移動して離れるのを避けるように考慮すべきである。可動式装置が最終位置に来たときに、可動式装置を誘導部材、例えば血液処理装置の誘導片に接続するか又はラッチすることが考えられる。この誘導部材又は誘導片は、更に、可動式装置を血液処理装置に押し入れるとき、引っ掛かること無しに、比較的重い充填された可動式装置を血液処理装置に導入することを良い確率で可能にする。このような誘導手段は、可動式装置及び/又は血液処理装置に設けることができる。
【0035】
可動式装置を小さな労力でラッチし且つ開放するために、例えばラッチされるためのボールを可動式装置の下方に設けても良く、該ボールは血液処理装置の例えば誘導片に設けられた切り欠きに組み合わされても良い。
【0036】
本発明は更に、血液処理装置、特に透析装置に、血液処理を行なう際にタンクから取り出される治療液、特に透析液を供給する方法に関する。当該方法は、タンクが可動式装置の構成要素であって、血液処理を行なうために、タンクと血液処理装置との間に流体接続があるようにタンクが血液処理装置に接続されていることを特徴とする。
【0037】
「タンク」との語は広い意味に理解されると共に、例えば、HF溶液(hemofiltration溶液、血液濾過用補充液)のような独占的医療用製品を含む。
【0038】
更に、当該方法は、可動式装置の手段によって、使用済の治療液、特に使用済の透析液をタンク若しくは可動式装置のタンクに供給するか、又は、液出口若しくは他の受領ユニットに供給される工程を含む。
【0039】
本発明の他の実施形態において、可動式装置は初めに充填ユニットに向けて動かされ、そこで可動式装置のタンクに治療液、特に新鮮な透析液が充填される。
【0040】
この方法は、同時に又は補正時間を空けて、少なくとも1つのタンクから治療液が取り出されると共に、使用済の治療液が少なくとも1つの他のタンクに供給されるようにして行なわれる。異なる複数のタンク又は袋が一方では新鮮な治療液が蓄えられ、他方では使用済の治療液が供給される場合も、一般に本発明に含まれる。
【0041】
更に、この方法は、可動式装置を血液処理装置に向けて所定位置に動かされた後、少なくとも1つの流体接続を自動的に又は要求によりタンクと治療装置との間に成立させる工程を含む。同じことは、データ接続についても適用でき、可動式装置から血液処理装置へのデータの移動及び/又はその逆のデータの移動が行なわれる。
【0042】
可動式装置は充填ユニットに対して動かされ、使用済治療液、特に使用済透析液が可動式装置のタンクから充填ユニットに供給される。充填ユニットは、可動式装置のタンクを治療液で満たすために機能するだけではなく、可動式装置のタンクから使用済の治療液を取り出すためにも機能する。個別の流体回路を設けることは、衛生上の理由から特に有利である。個別の取り出しユニットを用いることもできる。
【0043】
本発明は更に、血液処理、望ましくは体外血液、特に透析治療を行なう手段を有する血液処理装置、特に透析装置に関係する。この装置は、血液処理を行なうために必要な治療液、特に透析液が入ったタンクを備えないことを特徴とする。血液処理装置は、血液処理装置を、少なくとも1つの治療液が入ったタンクに接続する接続部であって、血液処理の最中にはそこを通って液を血液処理装置に供給する少なくとも1つの接続部を備えていても良い。
【0044】
血液処理装置は、少なくとも1つの搭載部を有し、そこに、少なくとも1つのタンクを有する可動式装置、望ましくは本発明の可動式装置が受け入れられてもよい。
【0045】
本発明は、最後に、少なくとも1つのタンクを有する可動式装置の使用に関し、タンクには治療液、特に透析液が入れられ、血液処理装置、特に透析装置に、血液処理中、治療液を供給するために配置する。可動式装置は、1つ又はより多くの既に述べた特徴及び/又は以下に述べる特徴を有するように作られていることが望ましい。