特許第6275804号(P6275804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275804
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】荷電粒子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A61N5/10 M
   A61N5/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-230120(P2016-230120)
(22)【出願日】2016年11月28日
(62)【分割の表示】特願2013-551544(P2013-551544)の分割
【原出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2017-38975(P2017-38975A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-287810(P2011-287810)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】矢島 暁
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538785(JP,A)
【文献】 特開2011−092424(JP,A)
【文献】 特開2010−075512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体に荷電粒子線を照射する照射部を有する荷電粒子線照射装置であって、
前記照射部が配置され、中心軸線を中心として回転可能又は揺動可能なガントリと、
前記中心軸線に沿って延伸する筒状の側壁と、前記側壁の一部に設けられた開口部と、を有し、前記中心軸線を囲むように形成されて前記被照射体がその内部に配置されるエンクロージャーと、
加速器から出射された前記荷電粒子線が入射する入口部を前記エンクロージャーの外に有し、前記ガントリに支持されると共に前記入口部から入射した前記荷電粒子線を前記照射部へ輸送するガントリ側輸送ラインと、
前記ガントリと連結され、前記ガントリのバランスを取るカウンタウェイトと、
を備え、
前記ガントリは、前記中心軸線に沿った方向において前記エンクロージャーを挟むように設けられており、前記ガントリを回転可能又は揺動可能に支持する第1の軸受け部及び第2の軸受け部を有し、
前記第1の軸受け部は、前記エンクロージャーの前記入口部側に隣接して設けられており、
前記ガントリ側輸送ラインは、
前記入口部を構成し、前記中心軸線に沿って入射した前記荷電粒子線の進行方向を前記中心軸線から離れる方向へ偏向する第1のガントリ側偏向電磁石と、
前記第1のガントリ側偏向電磁石によって偏向された前記荷電粒子線の進行方向を前記中心軸線に沿った方向へ偏向する第2のガントリ側偏向電磁石と、
前記第2のガントリ側偏向電磁石によって偏向された前記荷電粒子線の進行方向を前記中心軸線に近づく方向へ偏向する第3のガントリ側偏向電磁石と、を有し、
前記カウンタウェイトは、前記中心軸線に対して前記第2のガントリ側偏向電磁石及び前記第3のガントリ側偏向電磁石の反対側に配置され、且つ、前記中心軸線に沿った方向において前記第2のガントリ側偏向電磁石の前記入口部とは反対側の端部より前記第3のガントリ側偏向電磁石側に当該カウンタウェイトの少なくとも一部が位置するように配置されている、
ことを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
記第1の軸受け部は、前記中心軸線に沿った方向において、前記第2のガントリ側偏向電磁石よりも前記入口部から離れた位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項3】
前記ガントリは、矩形状の照射室内に、平面視において前記中心軸線が前記照射室の一の対角線上に位置するように配置されており、
前記第2の軸受け部は、前記照射室の一の角部の壁に固定されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射体に荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、がん等に対する放射線治療を行う荷電粒子線照射装置として、がん等に荷電粒子線を照射する照射部と、当該照射部が配置され、中心軸線を中心として所定角度内を揺動可能なガントリと、を備えたものが知られている(非特許文献1参照)。このような荷電粒子線照射装置では、ガントリの角度変更により照射部の照射角度を変更することができるので、がん等の位置に応じた適切な角度から荷電粒子線を照射することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Eros Pedroni “IMPROVINGGANTRY-BASED PROTONSCANNING BEYOND THE CURRENT STATE OF THE ART” ESTRO292010年9月12日−9月16日BARCELONA SPAIN
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の荷電粒子線照射装置においては、機械的なガタや照射部やガントリ自身の重みの影響のため、ガントリの角度変更に伴って荷電粒子線照射装置のアイソセンター精度が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、アイソセンター精度を向上させることができる荷電粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被照射体に荷電粒子線を照射する照射部を有する荷電粒子線照射装置であって、照射部が配置され、中心軸線を中心として回転可能又は揺動可能なガントリと、中心軸線に沿って延伸する筒状の側壁と、側壁の一部に設けられた開口部と、を有し、中心軸線を囲むように形成されて被照射体がその内部に配置されるエンクロージャーと、加速器から出射された荷電粒子線が入射する入口部をエンクロージャーの外に有し、ガントリに支持されると共に入口部から入射した荷電粒子線を照射部へ輸送するガントリ側輸送ラインと、を備え、ガントリは、中心軸線に沿った方向においてエンクロージャーを挟むように設けられており、ガントリを回転可能又は揺動可能に支持する第1の軸受け部及び第2の軸受け部を有し、第1の軸受け部は、エンクロージャーの入口部側に隣接して設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
上記荷電粒子線照射装置によれば、ガントリを支持する第1及び第2の軸受け部がエンクロージャーを挟む位置に設けられているので、エンクロージャーの片側にのみ軸受け部が設けられていた従来の装置と比べて、エンクロージャー付近のガントリ及び照射部を精度良く保持することができる。その結果、ガントリの角度変更による照射部のアイソセンター位置のずれを抑制することができるので、装置のアイソセンター精度を向上させることができる。また、エンクロージャーは、中心軸線に沿って延伸する筒状の側壁と側壁の一部に設けられた開口部とを有するため、患者らは中心軸線に沿った方向からではなく、エンクロージャーの側方からエンクロージャー内に入ることができる。つまり、照射室において、荷電粒子線照射装置の中心軸線に沿った方向における端部側に、患者らがエンクロージャー内に入るためのスペースを設ける必要が無くなる。この省略可能となったスペースに第2の軸受け部を設置することで、中心軸線に沿った方向の照射室の大型化を抑制すると共に、装置のアイソセンター精度を向上させることができる。
【0008】
上記荷電粒子線照射装置において、ガントリ側輸送ラインは、入口部を構成し、中心軸線に沿って入射した荷電粒子線の進行方向を中心軸線から離れる方向へ偏向する第1のガントリ側偏向電磁石と、第1のガントリ側偏向電磁石によって偏向された荷電粒子線の進行方向を中心軸線に沿った方向へ偏向する第2のガントリ側偏向電磁石と、第2のガントリ側偏向電磁石によって偏向された荷電粒子線の進行方向を前記中心軸線に近づく方向へ偏向する第3のガントリ側偏向電磁石と、を有し、第1の軸受け部は、中心軸線に沿った方向において、第2のガントリ側偏向電磁石よりも入口部から離れた位置に設けられていてもよい。
【0009】
上記荷電粒子線照射装置において、ガントリは、矩形状の照射室内に、平面視において中心軸線が照射室の一の対角線上に位置するように配置されており、第2の軸受け部は、照射室の一の角部の壁に固定されていてもよい。
【0010】
上記荷電粒子線照射装置によれば、照射室が矩形状である場合、中心軸線が照射室の一の対角線に沿うようにガントリが照射室内に配置されると、他の対角線に沿った方向のスペースを活用して患者らがエンクロージャー内に入ることができるため、より照射室の大型化を抑制できる。
【0011】
上記荷電粒子線照射装置において、ガントリの回転又は揺動のバランスを取るためのカウンタウェイトと、ガントリ側輸送ラインの入口部とエンクロージャーとの間に配置され、ガントリとカウンタウェイトとを連結するカウンタウェイト連結部と、を更に備えても良い。
【0012】
上記荷電粒子線照射装置によれば、カウンタウェイトを備えることで、ガントリの回転又は揺動を安定させることができる。しかも、上記荷電粒子線照射装置によれば、設計上スペースを確保しやすいガントリ側輸送ラインの入口部とエンクロージャーとの間にカウンタウェイト連結部を配置しているので、装置全体の小型化に有利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アイソセンター精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る荷電粒子線照射装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のガントリが90°回転して水平面内に位置する状態を示す平面図である。
図3図1のエンクロージャーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る荷電粒子線照射装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る荷電粒子線照射装置1は、エンクロージャー2内の患者の腫瘍等(被照射体)に対して、照射部3から荷電粒子線を照射することで放射線治療を行う装置である。
【0017】
荷電粒子線照射装置1は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器4と、加速器4から出射された荷電粒子線を照射部3へ輸送する輸送ライン5と、中心軸線CLを中心として揺動可能なガントリ6と、を建屋100内に備えている。
【0018】
建屋100は、隔壁101によって照射室Aと加速器室Bとに隔てられている。照射室Aにはガントリ6及びエンクロージャー2が配置されており、加速器室Bには加速器4が配置されている。輸送ライン5は、照射室A及び加速器室Bの両方に跨がって設けられている。
【0019】
加速器4は、荷電粒子線として例えば陽子線、重粒子(重イオン)線等を出射する装置である。加速器4としては、例えばサイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン、線形加速器を用いることができる。小型化の観点からは、超伝導サイクロトロンを採用することが特に好ましい。
【0020】
輸送ライン5は、加速器4から出射された荷電粒子線を照射部3へ輸送する。輸送ライン5は、加速器側輸送ライン5A及びガントリ側輸送ライン5Bから構成されている。以下、輸送ライン5の加速器4側を上流側、照射部3側を下流側として説明に用いる。
【0021】
加速器側輸送ライン5Aは、加速器室Bの加速器4に接続されており、建屋100に対して固定された輸送ラインである。加速器側輸送ライン5Aは、加速器側真空ダクト8、加速器側収束電磁石9、及び加速器側偏向電磁石10を備えている。
【0022】
加速器側真空ダクト8は、加速器4とガントリ側輸送ライン5Bとを繋いでいる。加速器4から出射された荷電粒子線は、加速器側真空ダクト8内を通じてガントリ側輸送ライン5Bへ輸送される。
【0023】
加速器側収束電磁石9は、加速器側真空ダクト8に沿って配置され、輸送中の荷電粒子線のビームが拡散することを抑制する。加速器側収束電磁石9は、合計八個設けられている。加速器側収束電磁石9のうち四個は、二組の加速器側偏向電磁石10に挟まれるように配置されている。加速器側収束電磁石9の残りの四個は、二組の加速器側偏向電磁石10の上流側及び下流側に二個ずつ配置されている。
【0024】
加速器側偏向電磁石10は、荷電粒子線の進行方向の偏向を行う。加速器側偏向電磁石10は、加速器側真空ダクト8上で四個の加速器側収束電磁石9を挟むように二個ずつ配置されている。加速器側偏向電磁石10は、加速器側真空ダクト8に沿って荷電粒子線の進行方向を偏向させる。
【0025】
ガントリ側輸送ライン5Bは、照射部3に接続されており、ガントリ6に対して固定された輸送ラインである。ガントリ側輸送ライン5Bは、ガントリ6と一体となって中心軸線CLの周りを移動する。
【0026】
ガントリ側輸送ライン5Bは、ガントリ側真空ダクト11、第1のガントリ側偏向電磁石12、ガントリ側収束電磁石13、第2のガントリ側偏向電磁石14、第1の走査電磁石15、第3のガントリ側偏向電磁石16、第2の走査電磁石17、及び第4のガントリ側偏向電磁石18を備えている。
【0027】
ガントリ側真空ダクト11は、加速器側輸送ライン5Aの加速器側真空ダクト8と照射部3とを繋いでおり、荷電粒子線の通路を構成する。第1のガントリ側偏向電磁石12は、中心軸線CLに沿って加速器側真空ダクト8から入射した荷電粒子線の進行方向を中心軸線CLから離れる方向に偏向する電磁石である。第1のガントリ側偏向電磁石12は、荷電粒子線の進行方向を中心軸線CLから60°傾いた方向へ偏向する。
【0028】
第1のガントリ側偏向電磁石12及び第1のガントリ側偏向電磁石12内のガントリ側真空ダクト11は、加速器側輸送ライン5Aと接続された入口部Pを構成する。
【0029】
ガントリ側収束電磁石13は、第1のガントリ側偏向電磁石12で偏向された荷電粒子線のビーム径を収束させる三個の電磁石である。ガントリ側収束電磁石13で収束された荷電粒子線は、第2のガントリ側偏向電磁石14へ進行する。
【0030】
第2のガントリ側偏向電磁石14は、荷電粒子線の進行方向を中心軸線CLに沿う方向へ60°偏向する。第2のガントリ側偏向電磁石14で偏向された荷電粒子線は、第1の走査電磁石15へ進行する。第1の走査電磁石15は、その内部を通過する荷電粒子線の進行方向に直交する方向における荷電粒子線の走査を行う。
【0031】
第3のガントリ側偏向電磁石16は、第1の走査電磁石15で走査された荷電粒子線の進行方向を中心軸線CLに近づく方向へ45°偏向する。第3のガントリ側偏向電磁石16で偏向された荷電粒子線は、第2の走査電磁石17へ進行する。第2の走査電磁石17は、その内部を通過する荷電粒子線の進行方向に直交し、且つ、第1の走査電磁石15における走査方向と直交する方向における荷電粒子線の走査を行う。
【0032】
第4のガントリ側偏向電磁石18は、第2の走査電磁石17で走査された荷電粒子線の進行方向を中心軸線CLと直交する方向へ45°偏向する。第4のガントリ側偏向電磁石18は、ガントリ側輸送ライン5Bを構成する最後の偏向電磁石である。第4のガントリ側偏向電磁石18で偏向された荷電粒子線は、照射部3に供給される。
【0033】
照射部3は、エンクロージャー2内の治療台20aに配置された患者の腫瘍に対して荷電粒子線の照射を行う。エンクロージャー2は、中心軸線CLに沿って延伸した筒形状の側壁2aを有しており、中心軸線CLを囲むように形成されている(図3参照)。側壁2aの中心軸線CLに沿った方向における両端は中心軸線CLに垂直な垂直壁2bによって閉じられている。側壁2aの一部には開口部2cが設けられており、中心軸線CLに沿った方向から見ると側壁2aは側方に向かって開放されたU字形状となっている。患者や医師は、開口部2cを介して照射室Aとエンクロージャー2内との間を行き来することができる。側壁2aの一部は移動壁2dとなっており、移動壁2dを照射部3が貫通している。側壁2aは建屋100に対して固定されているが、移動壁2dはガントリ6の回転に伴って中心軸線CLまわりに回転する照射部3と共に移動可能となっている。エンクロージャー2は、中心軸線CLの延在方向に十分な長さを有しており、治療台20aに配置された患者が閉塞感を感じないよう開放的な構成とされている。
【0034】
エンクロージャー2内の治療台20aは、六軸多関節型ロボットアーム20bによって移動自在に支えられている。六軸多関節型ロボットアーム20bは、治療計画に応じて治療台20aの位置や姿勢を高精度に制御する。
【0035】
ガントリ6は、中心軸線CLを中心として揺動可能に構成されている。図1は、鉛直方向に立ち上がった姿勢のガントリ6を示している。図2は、図1の状態から90°回転して、ガントリ側輸送ライン5Bが水平面内に位置する姿勢のガントリ6を示している。ガントリ6は、図2に示す姿勢の角度を基準として、下側(ガントリ側輸送ライン5Bが水平面よりも下方へ向かう方向)へ90°、及び上側(ガントリ側輸送ライン5Bが水平面よりも上方へ向かう方向)へ110°の範囲で揺動可能に構成されている。本実施形態に係るガントリ6は、上側の角度範囲を90°ではなく110°とすることにより、わずかな角度の斜め照射のために患者の姿勢変更が必要となることを避け、装置の利便性を高めている。
【0036】
ガントリ6は、入口側支持部21、ラダー部22、軸保持部23、中央筐体部24、先端筐体部25、第1の軸受け部26、及び第2の軸受け部27を備えている。以下、中心軸線CLの延在方向における加速器側輸送ライン5A側を後側、その反対側を前側として説明する。
【0037】
入口側支持部21は、ガントリ側輸送ライン5Bの入口部Pを支持する部位である。入口側支持部21は、ガントリ側輸送ライン5Bに沿って設けられたラダー部22に固定されている。入口側支持部21は、ラダー部22と一体となってガントリ側輸送ライン5Bの入口部Pを支持する。また、ラダー部22は、ガントリ側輸送ライン5Bを構成する三個のガントリ側収束電磁石13を支持している。入口側支持部21及びラダー部22は、円筒状の軸保持部23と連結している。
【0038】
軸保持部23は、中心軸線CLに沿って突出する軸部23aを保持する円筒状の部位である。軸保持部23上には、ラダー部22の前端が接続された中央筐体部24が連結されている。
【0039】
中央筐体部24は、ガントリ側輸送ライン5Bを構成する第2のガントリ側偏向電磁石14、第1の走査電磁石15、第3のガントリ側偏向電磁石16を支持する筐体状のフレーム部位である。中央筐体部24は、中心軸線CLの延在方向で先端筐体部25と連結している。
【0040】
先端筐体部25は、第4のガントリ側偏向電磁石18を囲むように構成された筐体状のフレーム部位である。先端筐体部25は、エンクロージャー2の外周付近に位置する。先端筐体部25は、ガントリ側輸送ライン5Bを構成する第2の走査電磁石17及び第4のガントリ側偏向電磁石18を支持している。先端筐体部25の一部は、エンクロージャー2の前側に回り込んでおり、中心軸線CLに沿って突出する軸部25aを有している。
【0041】
第1の軸受け部26及び第2の軸受け部27は、建屋100に対して固定されており、中心軸線CLを中心としてガントリ6を揺動可能に支持している。第1の軸受け部26及び第2の軸受け部27は、エンクロージャー2を挟むようにエンクロージャー2の前後に配置されている。
【0042】
第1の軸受け部26は、ガントリ側輸送ライン5Bの入口部Pとエンクロージャー2との間に設けられており、エンクロージャー2の後側に位置している。第1の軸受け部26は、照射室A内に設けられた壁部102に固定されており、軸保持部23の軸部23aを回転可能に支持している。
【0043】
第2の軸受け部27は、エンクロージャー2に対して第1の軸受け部26の反対側に設けられており、エンクロージャー2の前側に位置している。第2の軸受け部27は、照射室Aの壁に固定されており、先端筐体部25の軸部25aを回転可能に支持している。
【0044】
また、荷電粒子線照射装置1は、ガントリ6の揺動のバランスを取るためのカウンタウェイト30を備えている。カウンタウェイト30は、中心軸線CLに対して中央筐体部24の反対側に位置するように配置されている。カウンタウェイト30は、カウンタウェイト連結部31を介してガントリ6と連結されている。
【0045】
カウンタウェイト連結部31は、ガントリ6とカウンタウェイト30とを連結する部位であり、ガントリ側輸送ライン5Bの入口部Pとエンクロージャー2との間に設けられている。カウンタウェイト連結部31は、第1の軸受け部26の後側に位置している。
【0046】
カウンタウェイト連結部31は、ガントリ6を構成する円筒状の軸保持部23の一部を共有している。カウンタウェイト30及びカウンタウェイト連結部31の形状や重量は、ガントリ6とのバランスによって適切なものが選択される。
【0047】
以上説明した本実施形態に係る荷電粒子線照射装置1によれば、ガントリ6を支持する第1及び第2の軸受け部26,27がエンクロージャー2を挟む位置に設けられているので、エンクロージャー2の片側にのみ軸受け部が設けられている従来の装置と比べて、エンクロージャー2付近のガントリ6及び照射部3を精度良く保持することができる。その結果、ガントリ6の角度変更による照射部3のアイソセンター位置のずれを抑制することができるので、装置のアイソセンター精度を向上させることができる。また、エンクロージャー2は、中心軸線CLに沿って延伸する筒状の側壁2aと側壁2aの一部に設けられた開口部2cとを有するため、患者らは中心軸線CLに沿った方向からではなく、エンクロージャー2の側方からエンクロージャー2内に入ることができる。つまり、照射室Aにおいて、荷電粒子線照射装置1の中心軸線CLに沿った方向における端部側に、患者らがエンクロージャー2内に入るためのスペースを設ける必要が無くなる。この省略可能となったスペースに第2の軸受け部27を設置することで、中心軸線CLに沿った方向の照射室Aの大型化を抑制すると共に、装置のアイソセンター精度を向上させることができる。
【0048】
更に、荷電粒子線照射装置1によれば、照射室Aが矩形状である場合、中心軸線CLが照射室Aの一の対角線に沿うようにガントリ6が照射室A内に配置されると、他の対角線に沿った方向のスペースを活用して患者らがエンクロージャー2内に入ることができるため、より照射室Aの大型化を抑制できる。
【0049】
また、荷電粒子線照射装置1によれば、設計上スペースを確保しやすいガントリ側輸送ライン5Bの入口部Pとエンクロージャー2との間にカウンタウェイト連結部31を配置しているので、中心軸線CLを中心としたガントリ6の揺動のバランスを取って安定させつつ、装置全体の小型化にも有利である。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の軸受け部26の後方に軸受け部を追加しても良い。また、軸受け部の形状や構成は上記実施形態に示すものに限られない。
【0051】
また、ガントリ6は、上記実施形態に示す角度範囲で揺動するものに限られず、その他の角度範囲で揺動する態様であっても良く、360°回転する態様であっても良い。また、ガントリ6や輸送ライン5の構成は、上記実施形態に示すものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、アイソセンター精度を向上させることができる荷電粒子線照射装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…荷電粒子線照射装置、2…エンクロージャー、2a…側壁、2b…垂直壁、2c…開口部、3…照射部、4…加速器、5…輸送ライン、5A…加速器側輸送ライン、5B…ガントリ側輸送ライン、6…ガントリ、20a…治療台、20b…ロボットアーム、26…第1の軸受け部、27…第2の軸受け部、30…カウンタウェイト、31…カウンタウェイト連結部、100…建屋、101…隔壁、102…壁部、A…照射室、B…加速器室、CL…中心軸線、P…入口部。
図1
図2
図3