(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗りかごのかご扉をガイドするかご敷居と、乗場の乗場扉をガイドする乗場敷居と、前記乗りかごに設けられ、前記かご敷居と前記乗場敷居との間に生じる隙間を塞ぐことができる塞ぎ部材と、を備え、前記塞ぎ部材の上面は、前記かご敷居の上面及び前記乗場敷居の上面より下方に位置し、前記塞ぎ部材は、前記隙間を塞いだ塞ぎ位置と前記かご敷居の下方の退避位置との間を移動可能になっており、前記塞ぎ部材は、前記塞ぎ位置にある場合に、前記隙間に向かって光を放射し、
前記塞ぎ部材は、前記塞ぎ位置にある場合に光を連続的に放射し、前記乗りかご内に設けられたドア閉ボタンが押下された場合に、光を断続的に放射することを特徴とするエレベータ装置。
前記塞ぎ部材は、前記光源溝に収容された、前記光源を上方から覆うとともに透光性を有するカバーを更に有していることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ装置。
前記塞ぎ部材の前記上面に、反射面が設けられ、前記かご敷居及び前記乗場敷居のうちの少なくとも一方に、前記反射面に向かって光を発する光源が設けられ、前記塞ぎ部材は、前記光源からの光を前記反射面で反射させることによって、前記隙間に向かって光を放射することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
前記塞ぎ部材は、透光性を有し、前記かご敷居の下方に、前記塞ぎ部材に向かって光を発する光源が設けられ、前記塞ぎ部材は、前記光源からの光を透過させることによって、前記隙間に向かって光を放射することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
前記塞ぎ部材は、前記乗りかごの積載重量が所定の値以上であるか否かに応じて、又は、非常時であるか否かに応じて、異なる色の光を放射することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレベータ装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態におけるエレベータ装置について説明する。
【0008】
先ず、
図1によりエレベータ装置の全体構成を説明する。
図1で示すように、エレベータ装置1は、昇降路3内に配置された乗りかご4及び釣合いおもり5を備える。昇降路3の上方には、メインロープ9を駆動する巻上機7及び制御装置8等が設置された機械室6が設けられている。巻上機7には、メインロープ9を巻き上げるトラクションシーブ7aが連結されている。制御装置8は、エレベータ装置1の全体を制御するものである。制御装置8は、乗場呼び又はかご呼びに応じて巻上機7を運転制御し、乗りかご4を呼びのあった階へ着床させる。
【0009】
なお、エレベータ装置1は、
図1に示す形態に限られることはない。例えば、所謂機械室レスのエレベータ装置であってもよい。すなわち、機械室6を設けることなく、巻上機7や制御装置8を小形化して昇降路3内の上部に設けるようにしてもよい。
【0010】
図1に示すエレベータ装置1では、建屋の各階床に設けられた乗場11に、昇降路3内の乗りかご4に通じる出入口12が設けられている。この出入口12には、乗場扉2が設けられている。この乗場扉2は、乗りかご4の着床時、乗りかご4の出入口24に設けられたかご扉25と、図示しないインターロック機構を介して係合し、かご扉25の開閉に連動して開閉動作する。
【0011】
図2は乗りかご4の出入口24に設けられたかご扉25を、乗場11側から見た正面図である。かご扉25は2枚の扉パネル25a、25b(戸当たり部分のみを示し、その他の部分は図示を省略している)を、互いに異なる図示左右方へ開動作させる所謂両開き方式である。これら2枚の扉パネル25a、25bは、乗りかご4の出入口24の両側に構成された扉開閉機構27に連結されており、この扉開閉機構27により図示左右方向に駆動され、開閉動作する。
【0012】
扉開閉機構27は、図示しないモータの動力により、2枚の扉パネル25a、25bを互いに連動させ、ガイドレールに沿って左右方向に駆動し、開閉動作させる。なお、扉開閉機構27は公知のものを用いることができ、ここでは詳細な構造説明は省略する。
【0013】
乗りかご4の出入口24には、かご敷居31が設けられている。かご敷居31は、上述したかご扉25を構成する2枚の扉パネル25a、25bを、その開閉方向に沿ってスライド可能にガイドする。このかご敷居31は、乗りかご4の出入口24の下辺部に設けられており、かご敷居31の上面31aに形成されガイド溝31bは、2枚の扉パネル25a、25bの下端部とそれぞれ係合し、これらを開閉方向にガイドする。
【0014】
かご敷居31に対し、乗場11にも
図6乃至
図8で示すように敷居32が設けられている。この乗場敷居32は、かご敷居31の一側面(
図6乃至
図8の左側面)と所定の間隔を保って対向配置される。この乗場敷居32の上面32aにもガイド溝32bが形成されており、乗場敷居32は、
図1で示した乗場扉2を、その開閉方向に沿ってスライド可能にガイドする。
【0015】
乗場扉2も、図示しないが2枚の扉パネルを有する両開き方式であり、前述のように、乗りかご4が乗場11に着床すると、かご扉25と係合し、かご扉25と共に開閉動作する。すなわち、乗場扉2は、乗りかご4が着床していないときは、図示しないインターロック機構により2枚の扉パネルが閉状態にロックされており、乗りかご4が着床すると、乗りかご4の図示しない係合部材と係合して上述したロック状態が解かれ、かご扉25と共に開閉動作する。
【0016】
乗りかご4が所定階へ着床したとき、前述のように、かご敷居31と乗場敷居32との間に、
図6乃至
図8で示す隙間Gが生じる。本発明の実施形態では、この隙間Gを塞ぐために塞ぎ部材35が、乗りかご4に設けられる。
【0017】
この塞ぎ部材35は、
図2で示すように、左右に分割されている。分割された2つの塞ぎ部材35の間の部分は、乗りかご4の昇降時に、かご敷居31が、乗場11に設けられた上述したインターロック機構との干渉を回避する部分である。このため、塞ぎ部材35は、インターロック機構に対する乗りかご4の通過を許容するために左右に間隔を保って分割されている。
【0018】
なお、2つの塞ぎ部材35の間の部分は、乗りかご4が着床すると、乗場敷居32の対応する部分に設けられた図示しない凸部が挿入される。このことにより、2つの塞ぎ部材35の間の部分は、この凸部によりほぼ塞がれる。
【0019】
塞ぎ部材35の上面35cは、
図6で示すように、かご敷居31の上面31a及び乗場敷居32の上面32aより下方に位置している。また、その平面形状は、敷居31,32の隙間Gを、
図6で示すように塞ぐことができる形状寸法に形成されている。すなわち、
図2で示したかご側の出入口24の間口よりやや大きな長さと、
図6乃至
図8で示す敷居31,32の隙間Gよりやや大きな幅とからなる平面形状を有する。
【0020】
また、塞ぎ部材35の横断面は縦長の形状とし、乗場敷居32の図示右側面との対向部には凹部35aが形成されている。この凹部35aは、乗場敷居32の図示右側面に設けられたビス36aの頭部を避けるために設けられている。ビス36aは、下階間空間を仕切るプレート36の取付け用である。さらに、この塞ぎ部材35の上部角部には面取り35bが施されている。
【0021】
塞ぎ部材35は、
図6で示す敷居31,32の間の隙間Gを塞いだ塞ぎ位置と、
図7及び
図8で示すかご敷居31の下方に退避した退避位置との間をスライド移動可能に構成されている(
図8は退避位置での塞ぎ部材35の状態を見易くするため、
図7から、一部の部品を取り除いて示した図である)。そして、塞ぎ部材35は、後述するリンク機構41により、かご扉25の開閉動作に伴い、上述した塞ぎ位置と退避位置との間でスライド駆動される。
【0022】
塞ぎ部材35は、乗りかご4に設けられたブラケット51上に板バネ52を介して取り付けられている。リンク機構41は、かご扉25の開閉動作に伴い、
図3で示すように、かご扉25側の作動部材42と係合可能に構成されている。そして、リンク機構41は、この作動部材42との係合により作動部材42から受ける力を塞ぎ部材35のスライド移動方向に変換して、塞ぎ部材35をスライド移動方向に駆動する。
【0023】
この実施形態では、リンク機構41は、
図4、
図5で示すように、4個のリンク46,47,48,49と、これらリンクの各一端と連結軸50を介して回動可能に連結しているブラケット51とを有する。4個のリンク46,47,48,49は、乗りかご4に設けられた支持部材44上に枢支軸45を介して回動可能に支持されている。支持部材44は、かご敷居31を支持する敷居支持部43に取り付けられている。敷居支持部43は乗りかご4に取り付けられている。
【0024】
4個のリンクのうち内側のリンク47,48は連結駆動用のもので、それらの他端は、連結軸54を介して連結桿55に連結している。この連結桿55の図示右端と支持部材44との間には引っ張りバネ56が張設されており、引っ張りバネ56は、ブラケット51を支持部材44側に平行移動させる方向の力を与える。
【0025】
リンク機構41を構成するリンク46の枢支軸45には、レバー58の基端部が一体的に取り付けられている。このレバー58の先端部には、作動ピン59が立設されている。この作動ピン59の上部側面は、
図3で示すように、かご扉25の扉パネル25aに一体的に設けられた作動部材42と係合可能に配置されている。すなわち、作動ピン59は、かご扉25が所定の開位置まで開動作することにより作動部材42と当接係合し、レバー58及びこれと一体の枢支軸45を図示反時計回りに回動させる。
【0026】
この回動により、枢支軸45と一体のリンク46、及びブラケット51を介して連結している他のリンク47,48,49も、引っ張りバネ56の張力に抗して図示反時計回りに回動する。このリンク機構41の動作により、ブラケット51及びその上部に板バネ52を介して支持された塞ぎ部材35は、
図4及び
図7、
図8で示す退避位置から、
図5及び
図6で示す塞ぎ位置へ繰り出される。
【0027】
ここで、前述した引っ張りバネ56は、リンク機構41及びブラケット51などを介して最終的には塞ぎ部材35と連結している。この引っ張りバネ56は、リンク機構41を介して塞ぎ部材35を
図4及び
図7、
図8で示す退避位置へ戻す方向の力を与えている。したがって、この引っ張りバネ56は、塞ぎ部材35を退避位置へ戻す戻りバネとして機能する(以下、戻りバネ56と呼ぶ)。
【0028】
このように、リンク機構41は、かご扉25が所定の開位置まで開動作することで、その作動ピン59が
図3で示すようにかご扉25側の作動部材42と係合し、かご扉25の開方向への移動力を受けて、退避位置にある塞ぎ部材35を、戻りバネ56のバネ力に抗して塞ぎ位置までスライド移動させる。
【0029】
図6乃至
図8で示すように支持部材44上に、スライド移動する塞ぎ部材35を塞ぎ位置及び退避位置に停止させるストッパー61が設けられる。
図9は、このストッパー61を取り出して示している。このストッパー61は、支持部材44に固定設置されたU形部材を有している。このU形部材の両内側面にゴムなどの緩衝材62を設けている。緩衝材62の間に、塞ぎ部材35側のブラケット51から延設された断面L形の当接部材63を配置している。
【0030】
この構成により、ブラケット51から延設された当接部材63が、ストッパー61のU形部材の両内側面に緩衝材62を介して当接することで、塞ぎ部材35のスライド移動を、塞ぎ位置及び退避位置に正しく停止させることができる。なお、ゴムなどの緩衝材62は、ストッパー61と当接部材63とのいずれか一方又は双方に設けてもよい。
【0031】
リンク機構41を構成する枢支軸45のうち、
図2、
図3の右端に配置されたレバー58と一体のものは、レバー58に立設された作動ピン59が、かご扉25側の作動部材42と当接係合することにより回転する回転軸である。この回転軸には、
図6乃至
図8で示すようにトーションバネ65を設け、作動部材42との係合による回転方向に抗する回転力を与える。
【0032】
この構成により、作動ピン59が作動部材42と係合していない状態において、作動ピンを常に正しい位置に戻すことができる。
【0033】
上記構成において、かご扉25が閉じた状態のとき、
図3で示したかご扉25側の作動部材42は、リンク機構41側の作動ピン59には当接係合しておらず、リンク機構41はかご扉25側からの作用力を受けていない。このため塞ぎ部材35及びそれを支持するブラケット51は、
図4で示した戻りバネ56の張力により支持部材44側に引き戻され、塞ぎ部材35は
図7及び
図8で示すように、かご敷居31の下方の退避位置にある。
【0034】
乗りかご4が乗場11に着床して、かご扉25が開動作し、所定の開位置へ移動すると、扉パネル25aに設けられた作動部材42が、リンク機構41を構成する作動ピン59に当接係合し、扉パネル25aの開動作力により作動ピン59が設けられたレバー58を、枢支軸45を中心に、図示反時計回りに回動させる。
【0035】
この動作によりリンク機構41が、戻りバネ56の張力に抗して同方向に回動し、ブラケット51及びこれに支持されている塞ぎ部材35を、
図4の状態から
図5の状態へ繰り出す。したがって、塞ぎ部材35は
図7、
図8で示すかご敷居31の下方の退避位置から図示左方にスライド移動し、
図6で示す塞ぎ位置に達する。
【0036】
この塞ぎ位置では、塞ぎ部材35は敷居31,32間の隙間Gを塞ぐので小物類がこの隙間Gからピット内まで落下するようなことはなく、容易に回収可能である。また、塞ぎ部材35の上面35cは、敷居31,32の上面31a、32aより下方に位置しているので、敷居31,32上に位置する物体の荷重が塞ぎ部材35に加わることはなく、荷重が加わることによる塞ぎ部材35の支持部の損傷を防止できる。
【0037】
この塞ぎ部材35による隙間Gの塞ぎ状態において、乗りかご4の荷重が大きく変化すると、乗りかご4が一時的に僅かに上昇することがある。このような乗りかご4の一時的上昇が生じても、塞ぎ部材35の上部角部に面とり35bが施され、かつ塞ぎ部材35が板バネ52で支持されていることから、損傷などの問題は生じない。
【0038】
例えば、乗りかご4内に満員状態で乗っていた乗客が一度に下りた場合など、乗りかご4が僅かではあるが一時的に上昇する。このとき、
図6で示す塞ぎ位置にある塞ぎ部材35も上昇し、乗場敷居32の側辺部と当接することがある。しかし、乗場敷居32の側辺部と対向する塞ぎ部材35の上部角部に面とり35bが施されているため、塞ぎ部材35が受ける当接時の衝撃は弱められ、当接による損傷を防止できる。また、塞ぎ部材35が板バネ52で支持されていることから、上述した当接時、板バネ52が上下方向にも撓む。これにより、板バネ52の緩衝作用により、当接時の衝撃は弱められ、この点においても当接による損傷を防止できる。
【0039】
一方、かご扉25が閉動作し、所定の戸閉位置に移動すると、扉パネル25aに設けられた作動部材42は、リンク機構41を構成する作動ピン59から離れる。このため、作動ピン59を介してリンク機構41に加わっていた力から開放される。そして、リンク機構41は、戻りバネ56の張力により、枢支軸45が図示時計回りに回動し、ブラケット51及びこれに支持されている塞ぎ部材35を、
図5の状態から
図4の状態へ引き戻す。したがって、塞ぎ部材35は
図6で示す塞ぎ位置から
図7、
図8で示すかご敷居31の下方の退避位置まで図示右方にスライド移動する。
【0040】
このように、塞ぎ部材35は、かご扉25の開方向への移動力を受けて作動するリンク機構41により、退避位置から塞ぎ位置までスライド移動し、かご扉25の閉動作時は、戻りバネ56のバネ力により塞ぎ位置から退避位置へスライド移動する。このスライド移動は、ストッパー61により、塞ぎ部材35を、塞ぎ位置と退避位置の双方に正しく停止させることができる。このため、塞ぎ部材35が正規位置に停止せずオーバランし、他の部品と衝突して損傷するようなことは確実に防止できる。また、仮にオーバランが生じても、塞ぎ部材35は板バネ52により支持されているため、他の部品との衝突による衝撃を板バネ52の撓みにより緩衝でき、部品の損傷に至ることを防止できる。
【0041】
なお、板バネ52が撓んだ場合、ブラケット51との接合部に隙間が生じることがあり、この隙間に塵埃などが挟まると元の形状に復帰できなくなることが考えられる。そこで、この隙間が生じる可能性のある部分に予めコーキングや、ガバーの設置などのガードを施しておくとよい。
【0042】
また、板バネ52は、前述したように上下方向への撓み機能を有する。このため、上下方向の撓みをより効果的に生じさせるために、板バネ52の縦方向中間部に、少なくとも1個の横方向への曲げ部を形成し、縦方向のバネ力を生じさせてもよい。この曲げ部としては
図10で示すように、板バネ52を、断面く字形に折り曲げたり、
図11で示すように半円形に湾曲させたりしてもよい。さらに、く字形の折り曲げを上下に複数連続させたり、半円を上下に複数連続させてS字形の湾曲を形成させたりしてもよい。
【0043】
このように形成すれば、板バネ52を、板面と平行な縦方向へも効果的に撓ませることができる。
【0044】
上述の実施形態では、リンク機構41は、
図4及び
図5で示すように、戻りバネ(引っ張りバネ)56の張力により、ブラケット51を支持部材44側に常時引き戻すように構成していた。しかしながら、この戻りバネ56に代えて、支持部材44とリンク47の右端との間に反発力を生じる作動バネ66を設け、ブラケット51を
図5に示す塞ぎ位置の方向に繰り出す力を常時与えるようにリンク機構41を構成してもよい。すなわち、ブラケット51及びこのブラケット51上に板バネ52を介して支持された塞ぎ部材35は、リンク機構41を介して作動バネ66と連結し、
図5及び
図6で示す塞ぎ位置への移動力を常時受けることとなる。
【0045】
この場合、リンク機構41は、かご扉25が完全に閉まった
図12で示す戸閉端位置にあるとき、
図13で示すように、作動ピン59が、扉パネル25aに設けられた作動部材72と係合している。このため、リンク機構41は、作動バネ66の反発力を蓄勢した
図4の状態に保持される。すなわち、塞ぎ部材35は、
図7及び
図8で示した退避位置に保持される。
【0046】
これに対し、かご扉25が開動作し、扉パネル25aが、
図12の戸閉端からの戸開動作を開始すると、かご扉25側の作動部材72が、
図13の状態から図示右方に移動するので、この作動部材72との係合が解かれる。このため、リンク機構41を構成する各リンク46,47,48,49は、作動バネ66の反発力により枢支軸45を中心に図示反時計回りに回動する。このリンク機構41の動作により、ブラケット51及びこのブラケット51上に板バネ52を介して支持された塞ぎ部材35は、
図4の状態から
図5の状態へ繰り出される。すなわち、塞ぎ部材35は、
図7及び
図8で示した退避位置から、
図6で示す塞ぎ位置へスライド移動する。
【0047】
一方、かご扉25が全開状態から閉じる場合、扉パネル25aが戸閉端近くまで閉じることにより、作動部材72がリンク機構41側の作動ピン59と
図13で示すように係合する。このため、作動ピン59を有するレバー58は、扉パネル25aの閉方向の力により、図示時計方向に駆動される。すなわち、リンク機構41は扉パネル25aの閉方向の力により、ブラケット51及びこのブラケット51上に板バネ52を介して支持された塞ぎ部材35を、
図5の状態から
図4の状態へ戻す。すなわち、塞ぎ部材35は、
図6で示す塞ぎ位置から、
図7及び
図8で示した退避位置へスライド移動する。
【0048】
このようにリンク機構41は、かご扉25の戸閉端からの戸開動作開始により、作動部材72との係合が解除されるため、作動バネ66の反発力による塞ぎ部材35の塞ぎ位置へのスライド移動を許容する。また、かご扉25の戸閉端への移動に伴いかご扉25側の作動部材72と係合し、扉パネル25aの移動力を受けて、塞ぎ位置にある塞ぎ部材35を退避位置までスライド移動させる。
【0049】
すなわち、かご扉25が開き始めると、塞ぎ部材35は直ちに塞ぎ位置まで移動する。かご扉25が閉じる場合は、全閉状態になる直前で塞ぎ部材35は塞ぎ位置から退避位置に移動する。このため、かご扉25が開動作途中又は閉動作途中で乗客や貨物が出入りしても、塞ぎ部材35は敷居31,32間の隙間Gを塞いだ状態であるので、小物が隙間Gから落下するようなことを確実に防止できる。
【0050】
なお、リンク機構41の、かご扉25側の作動部材42、72との係合部分、すなわち、作動ピン59が設置された位置は、かご扉25により開閉される乗りかご4の出入口24の間口の外側とする。
【0051】
次に、
図14乃至
図16を用いて、本実施形態による塞ぎ部材35について、より詳細に説明する。本実施形態による塞ぎ部材35は、塞ぎ位置にある場合に、かご敷居31と乗場敷居32との間の隙間Gに向かって光を放射するように構成されている。なお、
図14は、図面を明瞭にするために各部材を模式的に示している。
図14では、塞ぎ部材35のみが断面として示されている。後述する
図16乃至
図18も同様である。
【0052】
より具体的には、
図14(a)、(c)に示すように、塞ぎ部材35は、塞ぎ部材本体80と、塞ぎ部材35の上面35cに設けられた光源溝81と、光源溝81に収容された光源82と、光源82を上方から覆うカバー83と、を有している。このうち塞ぎ部材本体80は、金属製或いは樹脂製など何れの任意の材料により形成されるが、加工性や他の部品との緩衝性などを考慮すれば樹脂材を用いることが好適である。光源溝81及び光源82は、かご敷居31と乗場敷居32との間で、かご扉25の開閉方向に延びるように形成されている。
【0053】
図14(b)に示すように、光源82は、かご扉25の開閉方向に離間して配置された複数の発光素子84を有している。このことにより、かご敷居31と乗場敷居32との間の隙間Gを、全体的に照明することができる。複数の発光素子84は、電気的に直列状に接続されている。発光素子84としては、光を発するように構成されていれば任意であるが、消費電力を抑えることができるLED素子や有機EL発光素子84等を用いることが好適である。光源82としては、例えば、このような発光素子84を有するテープライトを用いることが好適である。テープライトとは、テープに、その長手方向に複数の発光素子84が離間して取り付けられたテープ状形態の光源を意味する。
【0054】
図14(a)、(c)に示すように、カバー83は、光源溝81内に収容されている。カバー83の上面83aは、塞ぎ部材35の上面35cと面一になっている。或いは、カバー83の上面83aは、塞ぎ部材35の上面35cよりも下方に位置していてもよい。カバー83の上面83aが塞ぎ部材35の上面35cから突出しないことにより、塞ぎ部材35の意匠性が低下することを防止できる。また、カバー83は、光源82から発せられた光を透過させるために、透光性を有する樹脂により形成されている。
【0055】
光源82は、任意の方法で塞ぎ部材本体80に固定することができるが、例えば、塞ぎ部材本体80に両面テープ85によって貼り付けられていることが好適である。また、カバー83も、両面テープ85によって光源82に貼り付けられていることが好適である。この場合、光源82及びカバー83を塞ぎ部材本体80に容易に取り付けることができる。なお、少なくともカバー83を光源82に貼り付けている両面テープ85は、透光性を有していることが好ましい。
【0056】
図14(a)、(b)に示すように、光源82には、第1配線86及び第2配線87が接続されている。第1配線86は、塞ぎ部材35の一方の端部(
図14(b)に示す左端部)から引き出され、第2配線87は、塞ぎ部材35の他方の端部(
図14(b)に示す右端部)から引き出されている。第2配線87は、かご敷居31内に設けられた貫通孔88を通って延び、第1配線86が引き出された側において第1配線86と結束されている。この貫通孔88は、かご敷居31の内部を、かご扉25の開閉方向に貫通している。
【0057】
結束された第1配線86及び第2配線87は、敷居支持部43に沿うとともに乗りかご4の側面に向かって延びており、敷居支持部43にクランプ89によって固定されている。なお、第2配線87の配線ルートに関し、第2配線87は、貫通孔88を通すことに限られない。すなわち、塞ぎ部材35の他方の端部から引き出された第2配線87が、塞ぎ部材35の反対側の端部から引き出された第1配線86と結束することができれば、第2配線87の配線ルートは任意であり、例えば、塞ぎ部材35の下面に沿って配置するようにしてもよい。
【0058】
図15に示すように、第1配線86及び第2配線87は、乗りかご4の側面(より具体的には、図示しないかご枠の側面)に沿って上方に延びている。乗りかご4の上面にはダクト90が設けられており、このダクト90内を第1配線86及び第2配線87が通り、制御装置8に接続されている。なお、第2配線87は、第1配線86とは反対側の乗りかご4の側面に配置してもよい。
【0059】
本実施形態では、制御装置8は、塞ぎ部材35が塞ぎ位置にある場合に、光源82を連続的に点灯させて、塞ぎ部材35から光を連続的に放射させる。なお、この場合、光源82は断続的に点灯して、塞ぎ部材35から断続的に光が放射されるようにしてもよい。一方、制御装置8は、塞ぎ部材35が退避位置にある場合に、光源82を消灯して、塞ぎ部材35から光が放射されないようにする。
【0060】
より具体的には、例えば、図示しないドア開センサが、かご扉25が開いたことを検出したときに、光源82が点灯するようにしてもよい。すなわち、かご扉25が開いたことを検出したときにドア開センサが送信するドア開信号を制御装置8が受信している間、光源82を点灯させるようにしてもよい。そして、このドア開信号を受信しない間、光源82を消灯させるようにしてもよい。ドア開センサを用いる代わりに、かご扉25を開閉方向に移動させる上述したモータに流れる電流値の特性に基づいてかご扉25が開いたとみなすことができる場合に光源82を点灯させ、かご扉25が開いていないとみなすことができる場合に、光源82を消灯させるようにしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、かご扉25が開いている間であっても、乗りかご4内に設けられたドア閉ボタン75(
図1参照)が押下された場合には、光源82を断続的に点灯させて、塞ぎ部材35から光を断続的に放射させる。この場合、かご扉25が閉じられることを乗客に認識させることができ、注意を促すことができる。
【0062】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0063】
各階床間を昇降している間、乗りかご4のかご扉25は閉じている。この間、
図16(a)、(b)に示すように、塞ぎ部材35は退避位置にあり、光源82は点灯しない。すなわち、塞ぎ部材35は光を放射しない。
【0064】
乗りかご4が所望の階床に着床すると、かご扉25が乗場扉2とともに開く。かご扉25が開くと、かご扉25側の作動部材42が、リンク機構41側の作動ピン59と係合し、リンク機構41が、かご扉25の開方向への移動力を受ける。このことにより、退避位置にある塞ぎ部材35は、戻りバネ56のバネ力に抗して塞ぎ位置までスライド移動し、塞ぎ位置に繰り出される(
図14(a)、(b)参照)。このことにより、塞ぎ部材35は、かご敷居31と乗場敷居32との間の隙間Gの下方に配置される。
【0065】
塞ぎ部材35が塞ぎ位置にある場合、塞ぎ部材35の光源82は連続的に点灯する。このことにより、塞ぎ部材35から隙間Gに向かって光が連続的に放射される。ここでは、塞ぎ部材35からの光は、隙間Gを介して上方に放射され、乗場11の出入口12および乗りかご4の出入口24に向かう。
【0066】
乗客の乗り降りが終わり、乗りかご4内に設けられたドア閉ボタン75が押下されると、塞ぎ部材35の光源82の点灯が、連続的な点灯から断続的な点灯に切り替わる。このことにより、塞ぎ部材35から隙間Gに向かって光が断続的に放射される。
【0067】
かご扉25が閉じると、かご扉25側の作動部材42と、リンク機構41側の作動ピン59との係合が解除され、塞ぎ位置にある塞ぎ部材35が、戻りバネ56のバネ力により、退避位置まで退避する(
図16(a)、(b)参照)。このことにより、塞ぎ部材35は、かご敷居31の下方に配置される。
【0068】
塞ぎ部材35が退避位置にある場合、塞ぎ部材35の光源82は消灯する。このことにより、塞ぎ部材35からは光が放射されない。
【0069】
このように本実施の形態によれば、かご敷居31と乗場敷居32との間に生じる隙間Gを塞ぐための塞ぎ部材35は、塞ぎ位置にある場合に、隙間Gに向かって光を放射する。このことにより、出入口12を通る乗客は、塞ぎ部材35から放射された光を認識し、隙間Gに注意を向けることができる。このため、乗り降りする乗客が、この隙間Gで躓いたりすることを防止できる。この結果、隙間Gへの注意を促し、乗り降りする乗客の安全性を向上させることができる。
【0070】
また、本実施の形態による塞ぎ部材35は、乗りかご4のかご扉25が閉じている間、退避位置に配置される。このことにより、乗りかご4の昇降が、隙間Gに光を放射可能な塞ぎ部材35によって阻害されることを防止できるとともに、乗りかご4内及び乗場11の意匠性が低下することを防止できる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、塞ぎ部材35が、上面35cに設けられた光源溝81と、光源溝81に収容された光源82と、を有している。このことにより、塞ぎ部材35から放射される光の強度を高めることができ、乗り降りする乗客に対して、隙間Gへの注意をより一層促すことができる。
【0072】
さらに、本実施の形態によれば、塞ぎ部材35は、光源82を上方から覆うとともに透光性を有するカバー83を更に有している。このことにより、敷居31、32上に位置する物体の荷重が光源82に加わることを防止でき、荷重が加わることによる光源82の損傷を防止できる。また、カバー83を介して光を放射させることができ、乗り降りする乗客が光源82を直接視認することを防止できる。
【0073】
なお、上述した本実施形態においては、塞ぎ部材35が、光源溝81と、光源82と、カバー83と、を有している例について説明した。しかしながら、塞ぎ部材35の構成は、これに限られることはない。
【0074】
例えば、塞ぎ部材35は、
図17に示すように構成してもよい。より具体的には、
図17に示すように、塞ぎ部材35の上面35cに、反射面91が設けられ、かご敷居31に、反射面91に向かって光を放射する光源92が設けられている。塞ぎ部材35は、光源92からの光を反射面91で反射させることによって、かご敷居31と乗場敷居32との間の隙間Gに向かって光を放射する。光源92は、上述した光源82と同様の構成となっており、かご敷居31の先端下部に設けられた光源溝93内に取り付けられている。この場合、光源92の上方は、かご敷居31によって覆われ、乗り降りする乗客が光源92を直接視認することを防止できることが好ましい。また、光源92は、塞ぎ部材35の反射面91よりも高い位置に配置され、反射面91で反射する光が効果的に上方に放射されることが好ましい。なお、
図17においては、塞ぎ部材35が、反射部材94を有しており、この反射部材94が、上述した反射面91を含んでいる。この場合、塞ぎ部材35の上面35cに、容易に反射面91を形成することができる。なお、反射部材94を用いることなく、塞ぎ部材35の上面35cを、光源92からの光が反射可能に形成してもよい。
【0075】
また、塞ぎ部材35は、
図18に示すように構成してもよい。より具体的には、
図18に示すように、塞ぎ部材35の塞ぎ部材本体80は、全体として透光性を有する樹脂により形成されている。光源95は、かご敷居31の下方に配置され、塞ぎ部材35に向かって光を放射する。
図17においては、光源95は、上述した光源82と同様の構成となっており、支持部材44上に配置されている。塞ぎ部材35は、光源95からの光を透過させることによって、かご敷居31と乗場敷居32との間の隙間Gに向かって光を放射する。すなわち、光源95からの光は、かご敷居31の下方の空間を通り、塞ぎ部材35を透過して、隙間Gに放射される。
【0076】
また、塞ぎ部材35は、特定の条件に応じて、放射する光の色が変化するようにしてもよい。
【0077】
例えば、塞ぎ部材35は、乗りかご4の積載重量が所定の値以上であるか否かに応じて、異なる色の光を放射するようにしてもよい。より具体的には、乗りかご4の積載重量が所定の値未満である場合に、光源82が点灯する光の色を緑色にし、積載重量が所定の値以上である場合に、光源82が点灯する光の色を赤色にしてもよい。この場合、乗りかご4の積載重量が所定の値以上になったことを、乗り降りする乗客に認識させることができ、当該乗りかご4への乗車を断念させやすくすることができる。なお、積載重量が所定の値以上であるか否かの判断は、乗りかご4に設けられた重量センサ(図示せず)から制御装置8に送信される信号に基づいて行うことができる。
【0078】
或いは、塞ぎ部材35は、非常時であるか否かに応じて、異なる色の光を放射するようにしてもよい。より具体的には、通常時に、光源82が点灯する光の色を緑色にし、非常時(例えば、地震や火災などの災害発生時)に、光源82が点灯する光の色を赤色にしてもよい。この場合、乗り降りする乗客に、非常時であることを認識させることができ、当該乗りかご4への乗車を断念させやすくすることができる。なお、非常時であるか否かの判断は、建物に設けられた監視盤(図示せず)から制御装置8に送信される、非常時を示す旨の信号に基づいて行うことができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】実施の形態によるエレベータ装置1は、かご敷居31と、乗場敷居32と、乗りかご4に設けられ、かご敷居31と乗場敷居32との間に生じる隙間Gを塞ぐことができる塞ぎ部材35と、を備えている。塞ぎ部材35の上面35cは、かご敷居31の上面31a及び乗場敷居32の上面32aより下方に位置している。塞ぎ部材35は、隙間Gを塞いだ塞ぎ位置とかご敷居31の下方の退避位置との間を移動可能になっている。塞ぎ部材35は、塞ぎ位置にある場合に、隙間Gに向かって光を放射する。