特許第6275836号(P6275836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275836硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275836
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/28 20060101AFI20180129BHJP
   C10M 159/22 20060101ALI20180129BHJP
   C07C 323/20 20060101ALI20180129BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20180129BHJP
   C10N 40/26 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
   C07C319/28
   C10M159/22
   C07C323/20
   C10N20:00 Z
   C10N30:04
   C10N30:06
   C10N30:10
   C10N30:12
   C10N40:25
   C10N40:26
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-527364(P2016-527364)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公表番号】特表2016-535050(P2016-535050A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】US2014042253
(87)【国際公開番号】WO2015065536
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】14/067,121
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユーケス、ロナルド、テオドラス、ファケ
(72)【発明者】
【氏名】スパラ、ユージーン エドワード
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−190295(JP,A)
【文献】 米国特許第04016093(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0123157(US,A1)
【文献】 特開昭56−076496(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0190185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C10M、C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を調製する方法であって、
(a)250より高い全塩基価(TBN)を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、190℃から250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること、
を含む方法。
【請求項2】
前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を、(i)ヒドロキシ芳香族化合物を1種以上のノルマルアルファオレフィンを用いてアルキル化すること;及び(ii)前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、任意の順序にて硫化、中和、及び過塩基化すること、によって生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノールであり、そして、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを用いるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化から誘導される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
記250より高いTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、250より高く且つ450までのTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スパージング工程が、減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スパージング工程が、加圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を1.5重量%未満含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を0.3重量%未満含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
内燃機関で使用される潤滑油組成物の酸化安定性を改良する方法であって、(a)主要量の潤滑粘度の油;及び(b)より少ない量の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩であって、該硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩が以下の(i)及び(ii)を含むプロセスにより調製されるもの、を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関を動作させることを含む上記方法:
(i)250より高い全塩基価を有する、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
(ii)該硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、190℃から250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
【請求項11】
前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が、(i)ヒドロキシ芳香族化合物を、1種以上のノルマルアルファオレフィンを用いてアルキル化すること;及び(ii)該アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、任意の順序にて硫化、中和、及び過塩基化すること、によって生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、そして前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを用いる前記ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化から誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
記250より高いTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、250より高く且つ450までのTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記スパージング工程が、減圧下又は加圧下で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記潤滑油組成物が、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物であり、そして前記内燃機関が、船舶用ディーゼルエンジンである、請求項10に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤用添加剤産業は一般的に、アルキルフェノール(例えば、テトラプロペニルフェノール、TPP)を使用して、硫化金属アルキルフェネートを含む清浄剤を調製する。硫化アルキルフェノールの金属塩は、洗浄力特性及び分散力特性を、船舶用、自動車用、鉄道用及び空気冷却エンジン用の潤滑油組成物に付与し、且つ油中に予備アルカリ度(alkalinity reserve)をもたらす有用な潤滑油添加剤である。予備アルカリ度は、エンジン動作中に発生する酸を中和するために必要である。この予備アルカリ度がなければ、そのようにして発生した酸により、有害なエンジン腐食へと至るであろう。
【0003】
あまり遠くない過去では、急速に高騰するエネルギーコスト、特に原油及び液体石油を蒸留する際に生じるエネルギーコストは、輸送燃料の使用者、例えば海洋船舶の所有者及び経営者にとって負担となった。それに呼応して、そのような使用者は、蒸気タービン推進ユニットから離れ、燃料効率のより良い大型船舶用ディーゼルエンジンの方を利用するようになった。ディーゼルエンジンは一般的に、低速、中速、又は高速エンジンに分類することができるが、低速のものは、最も大型のディープシャフト船舶及び特定の他の産業用途に使用される。
【0004】
低速ディーゼルエンジンは、サイズ及び動作方法において独特である。エンジン自体は巨大で、より大型のユニットは、重さが200トンに達し、長さは10フィート及び高さは45フィート以上になる場合がある。これらのエンジンの出力は、エンジン回転数が1分間当たり60から約200回転で、100,000制動馬力にも達することができる。これらは典型的に、クロスヘッド設計であり、2ストロークサイクルで動作する。
【0005】
一方、中速エンジンは典型的に、約250rpmから約1100rpmの範囲内で動作し、そして4ストローク又は2ストロークサイクルのいずれかで動作することができる。これらのエンジンは、トランクピストン設計又は場合によってクロスヘッド設計とすることができる。これらは典型的に、低速ディーゼルエンジンのように残留燃料で動作するが、残留物を少し含有する又は全く含有しない留出燃料でも動作できるものもある。これらのエンジンは、深海用船舶における推進、補助的用途又はその両方に使用することもできる。
【0006】
低速及び中速ディーゼルエンジンは、発電所の運転においてもまた広範に使用される。2ストロークサイクルで動作する低速又は中速ディーゼルエンジンは典型的に、クロスヘッド構造の直結型及び自己逆転型エンジンであり、ダイヤフラムと、燃焼生成物がクランクケースに進入してクランクケース油と混合するのを防止するためにパワーシリンダをクランクケースから隔離する1つ以上のスタフィングボックスとを備える。クランクケースと燃焼領域との注目すべき完全な隔離によって、当業者は、燃焼室及びクランクケースを異なる潤滑油で潤滑するようになった。
【0007】
従って、船舶及び大型固定式用途で使用するクロスヘッド型の大型ディーゼルエンジンでは、シリンダは、他のエンジン部品とは別々に潤滑される。シリンダは、全損ベースで、シリンダライナの周りに位置する注油器を用いて、各シリンダのクイルに別々に注入されるシリンダ油を用いて潤滑される。油は、ポンプを用いて注油器に分配され、ポンプは、現代のエンジン設計では、油の無駄を減らすために、油を直接リングに塗布するように動作される。
【0008】
これらのエンジンで発生する高いストレス及び残留燃料の使用により、油が短期間だけ熱及び他のストレスに曝される場合であっても、高洗浄力及び中和能力を有する潤滑剤が必要になる。これらのディーゼルエンジンで普通に使用する残留燃料は典型的に、かなりの量の硫黄を含有し、硫黄は、燃焼行程において水と結合して硫酸を形成し、硫酸が存在すると腐食磨耗を引起こす。特に、船用2ストロークエンジンでは、シリンダライナ及びピストンリングの周りの領域は、酸により腐食及び磨耗される可能性がある。従って、ディーゼルエンジン潤滑油がそのような腐食及び磨耗に耐える能力を有することが重要である。
【0009】
従って、船舶用シリンダ潤滑剤の主要な機能は、低速2サイクルクロスヘッドディーゼルエンジンで燃焼した高硫黄燃料油の硫黄系酸性成分を中和することである。この中和は、船舶用シリンダ潤滑剤に、金属清浄剤等の塩基性化学種、例えば、硫化金属アルキルフェネートを含ませることにより達成される。残念ながら、船舶用シリンダ潤滑剤の塩基性は、船舶用シリンダ潤滑剤の酸化(エンジン内で潤滑剤が受ける熱及び酸化ストレスにより引起こされる)により低下し得るため、潤滑剤の中和能力が低減される。船舶用シリンダ潤滑剤に、エンジン動作の間、潤滑剤中に存在することが一般的に知られている摩耗金属等の酸化触媒が含有される場合、酸化は加速され得る。
【0010】
中速トランクピストンエンジンは典型的に、種々のタイプ及び品質のディーゼル燃料及び重質燃料油を使用して動作する。これらのエンジンは、運動面間に保護層を形成し、酸を中和し、そして油中に汚染物質を懸濁した状態に維持する能力を有する必要があるトランクピストンエンジン油を用いて潤滑される。残念ながら、これらの特性は、粘度の上昇、中和能力の損失及び洗浄力の損失に至る油の酸化によって悪影響を受け得る。従って、潤滑油組成物、例えば船舶ディーゼルエンジン潤滑油組成物、例えば船舶用シリンダ潤滑剤及びトランクピストンエンジン油に、より良好な酸化安定性をもたらす硫化金属アルキルフェネート等の改良された清浄剤が必要である。
【0011】
潤滑剤用添加剤産業は一般的に、アルキルフェノール(例えば、テトラプロペニルフェノール、TPP)を使用して、硫化金属アルキルフェネートを含む清浄剤を調製する。硫化アルキルフェノールの金属塩は、洗浄力特性及び分散力特性を、船舶用、自動車用、鉄道用及び空気冷却エンジン用の潤滑油組成物に付与し、且つ油に予備アルカリ度(alkalinity reserve)をもたらす有用な潤滑油添加剤である。予備アルカリ度は、エンジン動作中に発生する酸を中和するために必要である。この予備アルカリ度がなければ、そのようにして発生した酸が、有害なエンジン腐食を招くことになる。しかし、硫化金属アルキルフェネート中及び1種以上の硫化金属アルキルフェネートを含有する潤滑油中に存在するテトラプロペニルフェノール等、幾らか未反応のアルキルフェノールが存在し得る。
【0012】
米国化学工業協会石油用添加剤委員会(the Petroleum Additives Panel of the American Chemistry Council)により資金提供されたラットでの最近の生殖毒性研究は、遊離した又は未反応のTPPが男性及び女性の生殖器に悪影響を及ぼし得ることを示す。更に、TPPは、腐食性又は皮膚に対して刺激性があり得ると考えられる。
【0013】
米国特許出願公開第20080070818号(「‘818号公報」)は、潤滑油組成物を開示しており、これには、C〜C15のアルキルフェノール、少なくとも1種の硫化剤、少なくとも1種の金属、及び少なくとも1種の過塩基化剤から調製される少なくとも1種の硫化過塩基性金属フェネート清浄剤が含まれ、この清浄剤には、合計質量で6.0%未満の未硫化C〜C15のアルキルフェノール及びその未硫化金属塩が含まれる。
【0014】
米国特許出願公開第20090143264号(「‘264号公報」)は、低含量のアルキルフェノールを有する硫化金属アルキルフェネート組成物を開示している。‘264号公報の硫化金属アルキルフェネート組成物は、テトラプロペニルフェノール等のフェノール化合物をアルデヒドと反応させてフェノール系樹脂を形成し、その後フェノール系樹脂を金属塩基及び第1の硫化剤と同時に反応させることにより調製することができる。
【0015】
米国特許第4,328,111号(「‘111号特許」)は、硫化フェネートを含む過塩基性フェネートが普通は、生成物からの除去が困難なエチレングリコールの存在下で製造され、これにより原材料を浪費し、そして、時には最終的な生成物中のグリコールによって望ましくない副作用が起きることを開示している。’111号特許は更に、エチレングリコールを除去するために、酸性化合物を過塩基性金属スルホナート、フェネート又はこれらの混合物を含む塩基性化合物と反応させ、その後、反応生成物を窒素ストリップしてエチレングリコールを除去することを開示している。
【0016】
従って、例えば、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物等の潤滑油組成物中で酸化安定性を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の改良された過塩基性塩に対する必要性がなお残っている。加えて、顧客に対するあらゆる潜在的な健康リスクを低減するため及び潜在的な規制の問題を回避するため、簡単でコスト効率のよい方法により、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩中の、遊離した未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の量を低減する必要性がある。従って、更に、比較的低レベルの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を調製するための改良された方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0017】
本発明の一実施態様では、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を調製するための以下の(a)及び(b)を含むプロセスが提供される:
【0018】
(a)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
【0019】
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージング(sparging)すること。
【0020】
本発明の第2の実施態様では、以下の(a)及び(b)を含むプロセスにより調製される硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が提供される:
【0021】
(a)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
【0022】
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
【0023】
本発明の第3の実施態様では、以下の(a)及び(b)を含む潤滑油組成物が提供される:
【0024】
(a)主要量の潤滑粘度の油;及び
【0025】
(b)以下の(i)及び(ii)を含むプロセスにより調製される、より少ない量の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩:
【0026】
(i)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
【0027】
(ii)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
【0028】
本発明の第4の実施態様では、内燃機関内で使用する潤滑油組成物の酸化安定性を改良する方法が提供されており、その方法には、(a)主要量の潤滑粘度の油;及び(b)より少ない量の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩であって、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩が以下の(i)及び(ii)を含むプロセスにより調製されるもの、を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関を動作させることが含まれる:
【0029】
(i)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
【0030】
(ii)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
【0031】
本発明の第5の実施態様では、以下の(a)及び(b)を含むプロセスにより調製される硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩の使用が提供される:
【0032】
(a)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
【0033】
(b)内燃機関で使用する潤滑油組成物の酸化安定性を改良するために、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
【0034】
とりわけ、本発明は、本明細書に記載したプロセスにより調製された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、得られた組成物が、(1)前記未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及び前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の未硫化金属塩を実質的に含まず、そして(2)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩であって、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングする工程を経ていないものと比較して、内燃機関における改良された酸化安定性を有するものを、有利に且つ予想外に提供するという驚くべき発見に基づいている。改良された酸化安定性を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩により、エンジン内での堆積物の形成を低減しつつ、油の寿命を延ばすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0035】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明をより詳細に説明する前に、以下の用語を定義する。
【0036】
定義
【0037】
本明細書で使用する場合、明らかに断りがなければ、下記の用語は下記の意味を有する:
【0038】
本明細書で使用する「全塩基価」若しくは「TBN」の用語は、1gの試料におけるKOHのミリグラムに等価な塩基の量を指す。従って、TBN数が大きい程、アルカリ性生成物が多いこと、よって、予備アルカリ度が高いことを指す。試料のTBNは、2011年5月15日に発行されたASTM試験番号D2896−11又は任意の他の同等の手順により測定することができる。
【0039】
「フェネート」の用語は、フェノールの金属塩を意味する。
【0040】
「アルキルフェネート」の用語は、アルキルフェノールの金属塩を意味する。
【0041】
「アルキルフェノール」の用語は、1つ以上のアルキル置換基を有するフェノールであって、少なくとも1つの前記アルキル置換基が、フェノールに油溶性を付与するのに十分な数の炭素原子を有するものを意味する。
【0042】
「石灰」の用語は、消石灰又は水和石灰としても知られている水酸化カルシウムを指す。
【0043】
「金属」の用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はこれらの混合物を意味する。
【0044】
「アルカリ土類金属」の用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムを指す。
【0045】
「アルカリ金属」の用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを指す。
【0046】
「金属塩基」の用語は、金属水酸化物、金属酸化物、金属アルコキシド等及びこれらの混合物であって、前記金属がアルカリ土類金属又はアルカリ金属であるものを指す。
【0047】
「過塩基性」の用語は、金属塩又は金属錯体の種類を指す。これらの材料は、「塩基性」、「超塩基性」(superbased)、「ハイパー塩基性」(hyperbased)、「錯体」、「金属錯体」、「高金属含有塩」等とも称されてきた。過塩基性生成物は、金属及び金属と反応する特定の酸性有機化合物、例えばカルボン酸の化学量論に応じて存在するであろう金属含量より過剰な金属含量を特徴とする、金属塩又は金属錯体である。好適な過塩基性金属には、マグネシウム、カルシウム、バリウム及びストロンチウム等のアルカリ土類金属が含まれる。好適な過塩基性金属は、対応する金属水酸化物から提供されることができ、例えば、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムは、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウムの供給源をそれぞれ提供する。追加的な過塩基化は、酸性過塩基化化合物、例えば二酸化炭素及びホウ酸の添加により達成することができる。
【0048】
「硫酸灰分含量」の用語は、潤滑油組成物中の金属含有添加剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、亜鉛等)の量を指し、そして典型的に、ASTM D874−07に準拠して測定され、これを、参照により本明細書に援用する。
【0049】
本発明は、(a)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること:を含むプロセスにより調製される硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩に関する。
【0050】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩
【0051】
一般に、約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、(i)プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを含む1種以上のオレフィン等のアルキル化剤を用いて、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化して、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を供給すること;及び(ii)前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を任意の順序で硫化、中和、及び過塩基化して、約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること:により得られる。
【0052】
本発明で使用するアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、当該技術分野で周知の方法により調製される。アルキル化され得る有用なヒドロキシ芳香族化合物には、1個から4個、好ましくは1個から3個のヒドロキシル基を有する単核性モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール等、及びこれらの混合物が含まれる。一実施態様では、ヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0053】
一般に、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化するのに使用されるアルキル化剤には、約10から約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンが含まれる。使用されるオレフィンは、線状、異性化した線状、分枝状、又は部分的に分枝した線状であってもよい。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分枝オレフィンの混合物、部分的に分枝した線状の混合物、又は前者の何れかの混合物であってもよい。
【0054】
一実施態様では、使用することができる線状オレフィンの混合物は、1分子当り約12個から約30個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施態様では、ノルマルアルファオレフィンは、少なくとも1種の固体又は液体触媒を使用して異性化される。
【0055】
別の実施態様では、オレフィンは、約20個から約80個の炭素原子を有する分枝オレフィン系プロピレンオリゴマー又はこれらの混合物、即ち、プロピレンの重合から誘導される分枝鎖オレフィンである。オレフィンは、他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボン酸基、ヘテロ原子等を用いて置換されていてもよい。一実施態様では、分枝オレフィン系プロピレンオリゴマー又はこれらの混合物は、約20個から約60個の炭素原子を有する。一実施態様では、分枝オレフィン系プロピレンオリゴマー又はこれらの混合物は、約20個から約40個の炭素原子を有する。
【0056】
別の実施態様では、ヒドロキシ芳香族化合物をアルキル化するのに使用するアルキル化剤には、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを含む1種以上のオレフィンが含まれる。一般的に、1種以上のオレフィンには、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーが主要量で含有される。このようなオレフィンの例には、プロピレン四量体、ブチレン三量体等が含まれる。当業者には容易に理解されるように、他のオレフィンが存在していてもよい。例えば、CからC18のオリゴマーに加えて使用することができる他のオレフィンには、線状オレフィン、環状オレフィン、ブチレン又はイソブチレンオリゴマー等のプロピレンオリゴマー以外の分枝オレフィン、アリールアルキレン等及びこれらの混合物が含まれる。好適な鎖状オレフィンには、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等及びこれらの混合物が含まれる。特に好適な線状オレフィンは、C16からC30のノルマルアルファ−オレフィン等の高分子量ノルマルアルファ−オレフィンであり、エチレンオリゴマー化又はワックスクラッキング等の方法により得ることができる。好適な環状オレフィンには、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン等及びこれらの混合物が含まれる。好適な分枝オレフィンには、ブチレン二量体若しくは三量体又はより高分子量のイソブチレンオリゴマー等及びこれらの混合物が含まれる。好適なアリールアルキレンには、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等及びこれらの混合物が含まれる。
【0057】
アルキル化剤を用いるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化は一般的に、アルキル化触媒の存在下で行う。有用なアルキル化触媒には、ルイス酸触媒、固体酸触媒、トリフルオロメタンスルホン酸及び酸性分子ふるい触媒が含まれる。好適なルイス酸触媒には、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素等が含まれる。
【0058】
好適な固体酸触媒には、ゼオライト、酸性白土、及び/又はシリカ−アルミナが含まれる。触媒は、分子ふるいであってもよい。適格な分子ふるいは、シリカ−アルミノホスファート分子ふるい又は金属シリカ−アルミノホスファート分子ふるいであり、ここで、当該金属は、例えば鉄、コバルト又はニッケルであってもよい。一実施態様では、固体触媒は、その酸形態におけるカチオン交換樹脂、例えば架橋スルホン酸触媒である。好適なスルホン化酸性イオン交換樹脂型触媒には、Amberlyst36(登録商標)が含まれ、ダウケミカル社から入手できる。酸触媒を、バッチ法又は連続法で使用した場合、再循環又は再生することができる。
【0059】
アルキル化の反応条件は、使用する触媒のタイプに依存しており、そしてアルキルヒドロキシ芳香族生成物への高い転化率をもたらす任意の好適な反応条件のセットを使用することができる。典型的に、アルキル化反応の反応温度は、約25℃から約200℃、好ましくは約40℃から約135℃の範囲にある。反応圧力は一般的に、大気圧であるが、これより高くても又は低くても使用できる。アルキル化プロセスは、バッチ式、連続式、又は半連続式で実施することができる。ヒドロキシ芳香族化合物対1種以上のオレフィンのモル比は通常、約0.5:1から約10:1の範囲にあり、好ましくは約3:1から約5:1の範囲にある。
【0060】
アルキル化反応は、未希釈で、又はヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物との反応に対して不活性な溶媒の存在下で行うことができる。溶媒を使用する場合、典型的な溶媒は、ヘキサンである。
【0061】
反応完了後、所望のアルキルヒドロキシ芳香族化合物を、従来技術を使用して単離することができる。典型的に、過剰のヒドロキシ芳香族化合物を反応生成物から蒸留する。
【0062】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物のアルキル基は典型的に、ヒドロキシル基に対して、主としてオルト位及びパラ位にてヒドロキシ芳香族化合物に結合している。
【0063】
続いて、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、任意の順序で硫化、中和、及び過塩基化して、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給する。硫化、中和及び過塩基化の工程は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給するように、任意の順序で実施することができる。あるいは、硫化及び中和を同時に行い、その後、過塩基化工程を行うことができる。
【0064】
一般に、硫化は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、塩基の存在下で、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物間にSx架橋基(式中、xは1から7である)を導入する硫黄供給源と接触させることにより行う。任意の好適な硫黄供給源を使用することができ、その例としては、硫黄元素又はそのハロゲン化物、例えば一塩化硫黄又は二塩化硫黄、硫化水素、二酸化硫黄及び硫化ナトリウム水和物である。硫黄は、溶融硫黄若しくは固体(例えば、粉末又は顆粒)として、又は相溶性炭化水素液体中の固体懸濁液としてのいずれかで使用することができる。
【0065】
塩基は、アルキルヒドロキシ芳香族化合物に硫黄を結合させる反応を触媒する。好適な塩基には、非限定的に、NaOH、KOH、Ca(OH)等及びこれらの混合物が含まれる。
【0066】
塩基は一般的に、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に対して約0.01から約1モルパーセントで使用される。一実施態様では、塩基は、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に対して約0.01から約0.1モルパーセントで使用される。塩基は、反応混合物に固体又は液体として添加することができる。好ましい一実施態様では、塩基は水溶液として添加される。
【0067】
硫黄は一般的に、反応系中のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約0.5から約4モルで使用される。一実施態様では、硫黄は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約0.8から2モルで使用される。一実施態様では、硫黄は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物1モル当たり約1から1.5モルで使用される。
【0068】
硫化反応が行われる温度範囲は一般的に、約130℃から約200℃である。一実施態様では、当該温度範囲は約150℃から約180℃である。反応は、大気圧(又はわずかにそれより低い圧力)下又は高圧で行うことができる。硫化中、かなりの量の副生成物である硫化水素ガスが発生する。一実施態様では、反応は、HS除去を促進するために減圧(vacuum)下で行われる。反応の間に現れる正確な圧力は、システムの設計及び操作、反応温度、並びに反応物及び生成物の蒸気圧等の要因に依存し、反応の過程の間に変えることができる。一実施態様では、プロセスの圧力は、大気圧から約20mmHgまでである。
【0069】
硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の中和は、当業者に既知の任意の方法により、連続法又はバッチ法にて行うことができる。硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を中和するための、及び塩基の供給源を組入れることにより塩基性フェネートを生成するための、数多くの方法が当該技術分野において既知である。一般に、中和は、反応性条件下、好ましくは不活性で相溶性の液体炭化水素希釈剤中で、硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と金属塩基とを接触させることにより行うことができる。所望ならば、反応は不活性ガス下、典型的には窒素下で行うことができる。金属塩基は、反応間の中間点にて、1回の添加又は複数回の添加のいずれかで添加することができる。
【0070】
好適な金属塩基性化合物には、(1)アルカリヒドロキシド、アルカリオキシド若しくはアルカリアルコキシドから選択される金属塩基から誘導されるアルカリ金属塩、又は(2)アルカリ土類水酸化物、アルカリ土類酸化物若しくはアルカリ土類アルコキシドから選択される金属塩基から誘導されるアルカリ土類金属塩等の、金属の水酸化物、酸化物又はアルコキシドが含まれる。ヒドロキシド官能性を有する金属塩基性化合物の代表的な例には、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム等が含まれる。オキシド官能性を有する金属塩基性化合物の代表的な例には、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム等が含まれる。一実施態様では、アルカリ土類金属塩基は、例えば酸化カルシウムに対して、その取扱いの便利さ及びコストを理由に、消石灰(水酸化カルシウム)である。
【0071】
中和は典型的に、トルエン、キシレン等の好適な溶媒又は希釈油中で、そして普通は、アルコール、例えば、メタノール、デシルアルコール若しくは2−エチルヘキサノール等のCからC16のアルコール;ジオール、例えば、エチレングリコール等のCからCのアルキレングリコール;及び/又はカルボン酸等の促進剤を用いて行われる。好適な希釈油には、ナフテン系油及び混合油、例えば100中性油等のパラフィン系油が含まれる。使用される溶媒又は希釈油の量は、最終的な生成物中の溶媒又は油の量が最終的な生成物の約25重量%から約65重量%、好ましくは約30%から約50%を占めるような量である。例えば、アルカリ土類金属の供給源をスラリーとして(即ち、アルカリ土類金属石灰、溶媒又は希釈油の供給源の前混合物(pre−mixture)として)過剰に添加し、その後硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と反応させる。
【0072】
金属塩基と硫化又は未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物との間の中和反応は典型的に、室温(20℃)より高い温度で行われる。一般に、中和は、約100℃と約150℃の間の温度で行うことができる。中和反応自体は、約5分から約60分の期間で行うべきである。所望ならば、中和反応は、エチレングリコール、ギ酸、酢酸等及びこれらの混合物等の促進剤の存在下で行われる。
【0073】
過塩基化は、硫化工程及び/又は中和工程のうちの1つ工程の間又は後のいずれかに、当業者に既知の任意の方法により行うことができる。あるいは、硫化、中和及び過塩基化は、同時に行うことができる。一般に、過塩基化は、例えば二酸化炭素又はホウ酸等の酸性の過塩基性化合物との反応により行われる。一実施態様では、過塩基化プロセスは、炭酸化、即ち二酸化炭素との反応による。このような炭酸化は、芳香族溶媒、アルコール又はポリオール等の溶媒、典型的にアルキレンジオール、例えばエチレングリコールの添加により簡便に行うことができる。好都合なことに、反応は、気体状二酸化炭素を反応混合物に泡立てて通す単純な方法で行われる。過剰な溶媒及び過塩基化反応中に形成されるあらゆる水は、反応の間又は後のいずれかで蒸留により簡便に除去することができる。
【0074】
一実施態様では、過塩基化反応は、反応器中で、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を、例えば石灰(即ち、アルカリ土類金属水酸化物)等のアルカリ度類金属の供給源と、二酸化炭素の存在下、そして芳香族溶媒(例えば、キシレン)、及びメタノール等のヒドロカルビルアルコールの存在下で反応させることにより行う。好都合なことに、反応は、反応混合物に気体状二酸化炭素を泡立てて通す単純な方法で行われる。二酸化炭素を、約1時間から約3時間の期間にわたり、約150℃から約200℃の範囲の温度で導入する。過塩基化の程度は、反応混合物に添加されるアルカリ土類金属、二酸化炭素及び反応物の供給源の量、並びに炭酸化プロセスの間に使用される反応条件により制御することができる。
【0075】
本発明の別の実施態様では、過塩基化反応は、140℃から180℃の間で、ポリオール、典型的にはアルキレンジオール、例えばエチレングリコール、及び/又はアルカノール、例えばCからC16のアルカノール、例えばデシルアルコール、2−エチルヘキサノールの存在下で行うことができる。過剰な溶媒及び過塩基化反応の間に形成されるあらゆる水は、反応の間又は後のいずれかで蒸留により簡便に除去することができる。
【0076】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、約250より高いTBNを有する。一実施態様では、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、約250から約400のTBNを有する。
【0077】
一般に、得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩を合計質量で幾らかの量で含有する。当業者にはわかるように、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩には、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩に加えて、他の成分を含有させることができる。
【0078】
本プロセスの(b)工程には、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージング、即ち、バブリングすることが含まれる。当業者にはわかるように、種々の技術及び装置を、空気を硫化アルキル置換ヒドロキシル芳香族組成物の過塩基性塩中にスパージングするのに有利に使用することができ、如何なる特定の技術又は装置に限定されるものではない。例えば、空気を、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族の過塩基性塩に、空気と液体とを効率的に接触させることができる多孔質焼結素子を備えたスパージングチューブを使用することにより導入することができる。空気/液体の接触は、ガス分散インペラーを使用することによっても促進することができる。空気のスパージングは、減圧条件下で、好ましくは大気圧から高圧までのどこでも行うことができる。
【0079】
一般に、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすることには、ほぼ全ての、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の未硫化金属塩を、組成物から除去して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の未硫化金属塩を実質的に含まない組成物を供給することが含まれる。本明細書で使用する「実質的に含まない」(“substantially free”)の用語は、(b)工程の後に残留する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の未硫化金属塩が、存在するとしても比較的低レベルであることを意味し、例えば、約1.5wt%未満又は約0.3wt%未満であることを意味する。一実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、約0.1wt%から約1.5wt%未満の範囲である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、約0.1wt%から約1wt%未満の範囲である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、約0.1wt%から約0.3wt%までの範囲である。別の実施態様では、「実質的に含んでいない」の用語は、約0.3wt%未満である。
【0080】
潤滑油組成物
【0081】
本発明の別の態様は、少なくとも(a)主要量の潤滑性粘度の油;並びに(b)より少ない量の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩であって、(i)約250より高い全塩基価を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び(ii)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること:含むプロセスにより調製されるもの、を含有する潤滑油組成物に関する。
【0082】
一般に、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約40重量%の範囲の量で潤滑油組成物中に存在するであろう。
【0083】
本発明の潤滑油組成物で使用するための潤滑粘度の油は、基油とも称され、典型的に、主要量で存在し、例えば組成物の合計重量に基づいて、50重量%より多量、又は約70重量%より多量、又は約80重量%から約99.5重量%までの量で存在する。本明細書で使用する「基油」の用語は、単一の製造者によって同じ仕様に(供給源又は製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、そして独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えばエンジン油、船舶用シリンダー油等の、任意のそして全てのこのような用途に対して潤滑油組成物を配合する際に使用する潤滑粘度の任意の現在知られている又は後に発見される油であり得る。加えて、本明細書で使用するための基油には、任意選択で、粘度指数向上剤、例えばポリマーアルキルメタクリラート;オレフィンコポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー又はスチレン−ブタジエンコポリマー等及びこれらの混合物を含有させることができる。
【0084】
当業者には容易に分かるように、基油の粘度は、その用途に依存する。従って、本明細書で使用するための基油の粘度は通常は、摂氏100度(100℃)で約2から約2000センチストークス(cSt)の範囲であろう。一実施態様では、基油は、100℃で約30cStから約35cStの粘度を有する船舶用油である(ブライトストック)。別の実施態様では、基油は、約4cStから約12cStの範囲の粘度を有する船舶用油である。別の実施態様では、基油は、単一等級の基油であり、例えば、20、30、40又は50のSAE粘度等級を有する基油である。
【0085】
別の一実施態様では、基油は、100℃で約2cStから約30cSt、又は約3cStから約16cSt、又は約4cStから約12cStの動粘度範囲を有するエンジン油であり、所望の最終使用及び最終的な油中の添加剤に応じて選択され又はブレンドされて、所望の等級のエンジン油、例えば、0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、又は15W−40のSAE粘度等級を有する潤滑油組成物を得る。ギア油として使用される油は、100℃で約2cStから約2000cStの範囲の粘度とすることができる。本明細書に開示した基油又は潤滑油組成物の動粘度は、ASTM D445準拠して測定することができ、参照により本明細書に援用する。
【0086】
ベースストックは、種々の異なる方法を使用して製造でき、それには、非限定的に、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製が含まれる。再精製ストックには、製造、汚染又はそれまでの使用を介して導入された物質は実質的に含まれないものとする。本発明の潤滑油組成物の基油は、任意の天然又は合成の潤滑基油とすることができる。好適な炭化水素合成油には、非限定的に、ポリアルファオレフィン又はPAO油等のポリマーを得るためのエチレンの重合若しくは1−オレフィンの重合から調製される油、又はフィッシャートロプシュ法におけるような一酸化炭素と水素ガスを使用して炭化水素合成工程から調製される油が含まれる。例えば、適切な基油は、重質留分を含むとしてもほとんど含まない、例えば、100℃で20cSt以上の粘度の潤滑油留分を含んだとしてもほとんど含まない基油である。
【0087】
基油は、天然潤滑油、合成潤滑油又はこれらの混合物から誘導できる。好適な基油には、合成ワックス及びスラックワックスの異性化により得られるベースストック並びに原油の芳香族成分及び極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解することにより製造される水素化分解ベースストックが含まれる。好適な基油には、API刊行物1509、第14版、補遺I、1998年12月、に定義されている全APIカテゴリーI、II、III、IV及びVの基油が含まれる。グループIVの基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVの基油には、グループI、II、III、又はIVに含まれない他の全ての基油が含まれる。
【0088】
有用な中性油には、鉱物潤滑油、例えば、液体石油、パラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン−ナフテン系の溶媒処理又は酸処理した鉱物潤滑油、石炭又はシェールから誘導される油、動物油、植物油(例えば、菜種油、ヒマシ油、及びラード油)等が含まれる。
【0089】
有用な合成潤滑油には、非限定的に、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば重合オレフィン及び共重合オレフィン、例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等、及びこれらの混合物;アルキルベンゼン、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン等;ポリフェニル、例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等;アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド及びこれらの誘導体、類似体及び同族体等が含まれる。
【0090】
他の有用な合成潤滑油には、非限定的に、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテン及びこれらの混合物等の炭素原子数が5個未満のオレフィンを重合することにより作製された油が含まれる。このようなポリマー油を調製する方法は、当業者に周知である。
【0091】
追加的な有用な合成炭化水素油には、適当な粘度を有するアルファオレフィンの液体ポリマーが含まれる。特に有用な合成炭化水素油は、例えば1−デセン三量体等のCからC12のアルファオレフィンの水素化液体オリゴマーである。
【0092】
別の種類の有用な合成潤滑油には、非限定的に、末端ヒドロキシル基が例えばエステル化又はエーテル化により修飾されたアルキレンオキシドポリマー、即ちホモポリマー、インターポリマー及びこれらの誘導体が含まれる。これらの油の例には、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合により調製される油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテル及びフェニルエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリプロピレングリコールエーテル、500から1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000から1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、又は、これらのモノ−及びポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合CからCの脂肪酸エステル若しくはテトラエチレングリコールのC13のオキソ酸ジエステル等がある。
【0093】
更に別の種類の有用な合成潤滑油には、非限定的に、ジカルボン酸、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等と種々のアルコール、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例には、ジブチルアジパート、ジ(2−エチルヘキシル)セバカート、ジ−n−ヘキシルフマラート、ジオクチルセバカート、ジイソオクチルアゼラート、ジイソデシルアゼラート、ジオクチルフタラート、ジデシルフタラート、ジエイコシルセバカート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることにより形成される複合エステル等が含まれる。
【0094】
更に、合成油として有用なエステルには、非限定的に、約5個から約12個の炭素原子を有するカルボン酸と、アルコール、例えばメタノール、エタノール等、ポリオール及びポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等とから作製されるものが含まれる。
【0095】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリカート油のようなケイ素系油は、合成潤滑油の別の有用な種類を構成する。これらの具体例には、非限定的に、テトラエチルシリカート、テトライソプロピルシリカート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリカート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリカート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリカート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサン等が含まれる。更に別の他の有用な合成潤滑油には、非限定的に、リンを含有する酸の液体エステル、例えばトリクレジルホスファート、トリオクチルホスファート、デカンホスフィン酸のジエチルエステル等、重合体のテトラヒドロフラン等が含まれる。
【0096】
潤滑油は、上記の種類のうち、天然、合成、又はそれらのうち任意の2種以上の混合物の未精製、精製及び再精製の油から誘導できる。未精製油は、更なる精製又は処理なしで、天然又は合成源(例えば、石炭、シェール又はタールサンドビチューメン)から直接得られるものである。未精製油の例には、非限定的に、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油又はエステル化プロセスから直接得られるエステル油が含まれ、その後、これらの各々は、更なる処理なしで使用される。精製油は、1つ以上の性質を改良するために1つ以上の精製工程にて更に処理されたことを除いて、未精製油に類似している。これらの精製技術は、当業者に既知であり、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過、パーコレーション、水素化処理、脱ろう等が含まれる。再精製油は、精製油を得るために使用されるプロセスに類似したプロセスにおいて、使用済みの油を処理することにより得られる。このような再精製油は、再生又は再処理油としても知られ、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的とする技術によって追加的に処理されることが多い。
【0097】
ワックスの水素異性化から誘導される潤滑油ベースストックもまた、単独で、又は、前述の天然及び/若しくは合成ベースストックと組合せて使用することができる。このようなワックス異性化油は、水素異性化触媒上で天然又は合成ワックス又はそれらの混合物の水素異性化により製造される。
【0098】
天然ワックスは典型的に、鉱油の溶媒脱ろうにより回収された軟ろうであり、合成ワックスは典型的に、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたろうである。
【0099】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の所望の特性を付与又は改良することができる他の従来の添加剤もまた含有してもよく、これらの添加剤は潤滑油組成物中に分散又は溶解されている。当業者に既知の任意の添加剤を、本明細書に開示した潤滑油組成物中で使用してもよい。幾つかの好適な添加剤は、Mortierらの「潤滑剤の化学及び技術(Chemistry and Technology of Lubricats)」第2版、ロンドン、スプリンガー、(1996年);及びLeslie R.Rudnickの「潤滑剤添加剤(Lubricat Additives):化学及び応用(Chemistry and Applications)」ニューヨーク、Marcel Decker、(2003年)に記載されており、これらの両方を参照により本明細書に援用する。例えば、潤滑組成物は、酸化防止剤、耐摩耗剤、金属清浄剤等の清浄剤、防錆剤、抗曇り剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、発泡防止剤、補助溶剤、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、無灰性分散剤、染料、極圧剤等及びこれらの混合物とブレンドすることができる。種々の添加剤が知られており、そして市販されている。これらの添加剤又はこれの類似化合物を、通常の配合手順により、本発明の潤滑油組成物の調製に用いることができる。
【0100】
一般に、使用する場合、潤滑油組成物中の添加剤の各々の濃度は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約20重量%、約0.01重量%から約15重量%、又は約0.1重量%から約10重量%の範囲とすることができる。
【0101】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、基油の酸化を低減又は防止できる1種以上の抗酸化剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の抗酸化剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な抗酸化剤の非限定的な例には、アミン系抗酸化剤(例えば、ビス−ノニル化ジフェニルアミン、ビス−オクチル化ジフェニルアミン、及びオクチル化/ブチル化ジフェニルアミン等のアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル又はアリールアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化p−フェニレンジアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルアミン等)、フェノール系抗酸化剤(例えば、2−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−ジ−tert−ブチル−o−クレゾール)等)、硫黄系抗酸化剤(例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート、硫化フェノール系抗酸化剤等)、リン系抗酸化剤(例えば、ホスファイト等)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物及びこれらの組合せが含まれる。抗酸化剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%とすることができる。幾つかの好適な抗酸化剤は、Leslie R.Rudnickの「潤滑剤添加剤(Lubricat Additives):化学及び応用(Chemistry and Applications)」ニューヨーク、Marcel Decker、第1章、1〜28頁(2003年)に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0102】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、使用中の酸化によって生じた不溶性物質を懸濁液中に維持し、その結果、金属部品上へのスラッジのフロキュレーション及び沈殿又は堆積を防止する1種以上の無灰分散剤化合物を含有させることができる。更に、分散剤は、潤滑剤中の大きな汚染物質粒子の成長を防止することによる潤滑油粘度の変化を低減させるように作用することができる。当業者に既知の任意の分散剤を、潤滑油組成物で使用することができる。無灰分散剤は一般的に、分散させる粒子と会合することができる官能基を有する油溶性の重合体の炭化水素骨格を含む。
【0103】
一実施態様では、無灰分散剤は、1種以上の塩基性窒素含有無灰分散剤である。窒素含有塩基性無灰(金属非含有)分散剤は、追加的な硫酸灰分を導入することなく、添加される潤滑油組成物の塩基価又はBN(ASTM D 2896により測定できる)に寄与する。本発明に有用な塩基性窒素含有無灰分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド;ヒドロカルビルスクシンアミド;ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を段階的に、又はアルコール及びアミンの混合物と、及び/又はアミノアルコールと反応させることにより形成されるヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド;ヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物;並びに、高分子量脂肪族又は脂環式ハロゲン化物とポリアルキレンポリアミン等のアミンとを反応させることにより形成されるアミン分散剤が含まれる。また、このような分散剤の混合物も使用することができる。
【0104】
無灰分散剤の代表的な例には、非限定的に、重合体主鎖に架橋基を介して結合したアミン、アルコール、アミド又はエステル極性部位が含まれる。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシラート誘導体、ポリアミンが直接結合している長鎖脂肪族炭化水素;並びに、長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合させることにより形成したマンニッヒ縮合生成物から選択することができる。
【0105】
カルボン酸分散剤は、炭素原子を少なくとも約34個、好ましくは少なくとも約54個含むカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と、窒素含有化合物(例えば、アミン)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、又はフェノール及びナフトールを含む芳香族化合物)、及び/又は塩基性無機物質との反応生成物である。これらの反応生成物には、イミド、アミド及びエステルが含まれる。
【0106】
コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸分散剤の一種である。それらは、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシ化合物と、又は窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含むアミンと、又はヒドロキシ化合物とアミンとの混合物と反応させることにより生成される。「コハク酸アシル化剤」の用語は、炭化水素置換コハク酸又はコハク酸生成化合物を指し、後者には酸自体が含まれる。このような物質には、典型的に、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステル類を含む)及びハロゲン化物が含まれる。
【0107】
コハク酸系分散剤は、種々の化学構造を有する。コハク酸系分散剤の種類は下記式により表すことができる。
【化1】

式中、各Rは、独立的に、ヒドロカルビル基、例えばポリオレフィン誘導基である。典型的に、ヒドロカルビル基は、アルキル基、例えばポリイソブチル基である。別の方法で表せば、R基は、約40から約500個の炭素原子を含むことができ、そしてこれらの原子は脂肪族の形態で存在することができる。Rは、アルキレン基、普通はエチレン(C)基である。コハク酸イミド分散剤の例には、例えば米国特許第3,172,892号、第4,234,435号及び第6,165,235号に記載されたものが含まれる。
【0108】
置換基が誘導されるポリアルケンは典型的に、2個から約16個の炭素原子、そして通常は2個から6個の炭素原子の重合可能なオレフィン単量体の単独重合体及び共重合体(interpolymer)である。コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミン又はポリアミンとすることができる。
【0109】
アミド官能基はアミン塩、アミド、イミダゾリン及びこれらの混合物の形態であってもよいが、コハク酸イミド分散剤は、普通はイミド官能基の形態で窒素を多く含有するので、このように称される。コハク酸イミド分散剤を調製するには、1種以上のコハク酸生成化合物と1種以上のアミンを、任意選択で、実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で、加熱し、そして典型的に水を除去する。反応温度は、約80℃からその混合物又は生成物の分解温度までの範囲とすることができ、典型的には、約100℃と約300℃の間に入る。本発明のコハク酸イミド分散剤を調製するための手順に関する追加的な詳細及び例には、例えば米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,272,746号、第4,234,435号、第6,165,235号及び第6,440,905号に記載されたものが含まれる。
【0110】
また、好適な無灰分散剤には、アミン分散剤も含まれ、これは、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。このようなアミン分散剤の例には、例えば米国特許第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号及び第3,565,804号に記載されたものが含まれる。
【0111】
更に、好適な無灰分散剤には「マンニッヒ分散剤」が含まれ、これは、アルキル基が少なくとも約30個の炭素原子を含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)、及びアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。このような分散剤の例には、例えば米国特許第3,036,003号、第3,586,629号、第3,591,598号及び第3,980,569号で説明されたものが含まれる。
【0112】
また、好適な無灰分散剤は、後処理されたコハク酸イミド等の後処理された無灰分散剤であってもよく、例えば、それは、例えば米国特許第4,612,132号及び第4,746,446号に開示されたボラート又は炭酸エチレンが関与する後処理プロセス等及び他の後処理プロセスによる。カーボナート処理したアルケニルコハク酸イミドは、分子量が約450から約3000、好ましくは約900から約2500、より好ましくは約1300から約2400、及び最も好ましくは約2000から約2400、並びにこれらの分子量の混合したものを有するポリブテンから誘導されたポリブテンコハク酸イミドである。好ましくは、それは、反応性条件下で、ポリブテンコハク酸誘導体、不飽和酸性試薬とオレフィンとの不飽和酸性試薬コポリマー、及びポリアミンの混合物を反応させることにより調製され、これは、米国特許第5,716,912号に開示されており、この内容を参照により本明細書に援用する。
【0113】
好適な無灰分散剤は重合体であってもよく、これは、デシルメタクリラート、ビニルデシルエーテル及び高分子量オレフィン等の油溶性化単量体と、極性置換基を含有する単量体との共重合体である。重合体の分散剤の例には、例えば米国特許第3,329,658号、第3,449,250号及び第3,666,730号に記載されたものが含まれる。
【0114】
本発明の好ましい一実施態様では、潤滑油組成物中で使用するための無灰分散剤は、数平均分子量が約700から約2300のポリイソブテニル基から誘導されるビス−コハク酸イミドである。
【0115】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩以外に追加的な清浄剤を含ませることができる。エンジン堆積物の蓄積を低減又は遅くできる任意の化合物又は化合物の混合物を、清浄剤として使用することができる。好適な金属清浄剤の非限定的な例には、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホナート、ホウ酸化スルホナート、多重(multi)ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホナート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテナート、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多重酸(multiacid)の金属塩、並びにこれらの化学的及び物理的な混合物が含まれる。好適な金属清浄剤の他の非限定的な例には、金属スルホナート、サリチラート、ホスホナート、チオホスホナート及びこれらの組合せが含まれる。金属は、スルホナート、サリチラート又はホスホナート清浄剤を作製するのに適した任意の金属とすることができる。好適な金属の非限定的な例には、アルカリ金属、アルカリ性金属及び遷移金属が含まれる。幾つかの実施態様では、金属は、Ca、Mg、Ba、K、Na、Li等である。
【0116】
一般的に、追加的な清浄剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約25重量%、約0.05重量%から約20重量%、又は約0.1重量%から約15重量%とすることができる。幾つかの好適な清浄剤は、Mortierら、「Chemistry and Technology of Lubricants」、第2版、London、Springer、第3章、75〜193頁(1996年);及びLeslie R.Rudnick、「Lubricant Additives:Chemistry and Applications」、New York、Marcel Dekker、第4章、113〜136頁(2003年)に記載されており、これらの両方を、参照により本明細書に援用する。
【0117】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、運動部品間の摩擦を低減することができる1種以上の摩擦調整剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の摩擦調整剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な摩擦調整剤の非限定的な例には、脂肪カルボン酸;脂肪カルボン酸の誘導体(例えば、アルコール、エステル、ホウ酸化エステル、アミド、金属塩等);モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸;モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換リン酸又はホスホン酸の誘導体(例えば、エステル、アミド、金属塩等);モノ−、ジ−又はトリ−アルキル置換アミン;モノ−又はジ−アルキル置換アミド、並びにこれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、摩擦調整剤の例には、非限定的に、アルコキシル化脂肪アミン;ホウ酸化脂肪エポキシド;脂肪ホスファイト、脂肪エポキシド、脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル;並びに参照により本明細書に援用する米国特許第6,372,696号に開示された脂肪イミダゾリン;CからC75、又はCからC24、又はCからC20の脂肪酸エステルと、アンモニア及びアルカノールアミン等からなる群から選択される窒素含有化合物との反応生成物及びこれらの混合物から得られる摩擦調整剤が含まれる。摩擦調整剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な腐摩擦調整剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、London、Springer、第6章、183〜187頁(1996年);及びLeslie R.Rudnick、「潤滑剤添加剤(Lubricant Additives):化学及び応用(Chemistry and Applications)」、New York、Marcel Dekker、第6章及び第7章、171〜222頁(2003年)に記載されており、これらの両方を、参照により本明細書に援用する。
【0118】
本明細書中に開示した潤滑油組成物には、摩擦及び過剰な摩耗を低減することができる、1種以上の摩耗防止剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の摩耗防止剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な摩耗防止剤の非限定的な例には、ジチオリン酸亜鉛、ジチオホスファートの金属(例えば、Pb、Sb、Mo等)塩、ジチオカルバマートの金属(例えば、Zn、Pb、Sb、Mo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、Sb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、ホスファイトエステル、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエンとチオリン酸との反応生成物、並びにこれらの組合せが含まれる。摩耗防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%、約0.05重量%から約3重量%、又は約0.1重量%から約1重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な摩耗防止剤が、Leslie R.Rudnick、「潤滑剤添加剤(Lubricant Additives):化学及び応用(Chemistry and Applications)」、New York、Marcel Dekker、第8章、223〜258頁(2003年)に記載されており、これを、参照により本明細書に援用する。
【0119】
特定の実施態様では、摩耗防止剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物等のジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩であり、又はこれを含む。ジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩の金属は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅であってもよい。幾つかの実施態様では、金属は亜鉛である。他の実施態様では、ジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩のアルキル基は、約3個から約22個の炭素原子、約3個から約18個の炭素原子、約3個から約12個の炭素原子、又は約3個から約8個の炭素原子を有する。更なる実施態様では、アルキル基は鎖状又は分枝状である。
【0120】
本明細書に開示した潤滑油組成物中のジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むジヒドロカルビルジチオホスファート金属塩の量は、そのリン含量により測定される。幾つかの実施態様では、本明細書に開示した潤滑油組成物のリン含量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約0.14重量%である。
【0121】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、油中の泡を破壊することができる1種以上の発泡防止剤又は抗発泡防止剤(anti−foam inhibitor)を含有させることができる。当業者に既知の任意の発泡防止剤又は抗発泡防止剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な発泡防止剤又は抗発泡防止剤の非限定的な例には、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシ化脂肪族酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分枝ポリビニルエーテル、アルキルアクリラートポリマー、アルキルメタクリラートポリマー、ポリアルコキシアミン及びこれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、発泡防止剤又は抗発泡防止剤には、グリセロールモノステアラート、ポリグリコールパルミタート、トリアルキルモノチオホスファート、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、メチルサリチラート、グリセロールモノオレアート又はグリセロールジオレアートが含まれる。発泡防止剤又は抗発泡防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.001重量%から約5重量%、約0.05重量%から約3重量%、又は約0.1重量%から約1重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な発泡防止剤又は抗発泡防止剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、London、Springer、第6章、190〜193頁(1996年)に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0122】
本明細書中に開示した潤滑油組成物には、潤滑油組成物の流動点を低下させることができる1種以上の流動点降下剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の流動点降下剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な流動点降下剤の非限定的な例には、ポリメタクリラート、アルキルアクリラートポリマー、アルキルメタクリラートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタラート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物及びこれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、流動点降下剤には、エチレン−ビニルアセタートコポリマー、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレン等が含まれる。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な流動点降下剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、London、Springer、第6章、187〜189頁(1996年);及びLeslie R.Rudnick、「潤滑剤添加剤(Lubricant Additives): 化学及び応用(Chemistry and Applications)」、New York、Marcel Dekker、第11章、329〜354頁(2003年)に記載されており、これらの両方を、参照により本明細書に援用する。
【0123】
一実施態様では、本明細書に開示した潤滑油組成物には、1種以上の解乳化剤が含有されない。別の実施態様では、本明細書に開示した潤滑油組成物には、水又は蒸気に晒される潤滑油組成物中の油−水分離を促進することができる1種以上の解乳化剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の解乳化剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な解乳化剤の非限定的な例には、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキル−ナフタレンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート等)、非イオン性アルコキシ化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドのブロックコポリマー、プロピレンオキシド等)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、及びこれらの組合せが含まれる。解乳化剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な解乳化剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、London、Springer、第6章、190〜193ページ(1996年)に開示されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0124】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、腐食を低減することができる1種以上の腐食防止剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の腐食防止剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な腐食防止剤の非限定的な例には、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド、リン酸エステル、チオホスファート、アルキルイミダゾリン、サルコシン及びこれらの組合せが含まれる。腐食防止剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%、約0.05重量%から約3重量%、又は約0.1重量%から約1重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な腐食防止剤は、Mortierら、「潤滑剤の化学と技術(Chemistry and Technology of Lubricants)」、第2版、London、Springer、第6章、193〜196ページ(1996年)に記載されており、これを、参照により本明細書に援用する。
【0125】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、極圧の条件下で滑合う金属表面の焼付きを防止することができる1種以上の極圧(EP)剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の極圧剤を、潤滑油組成物で使用することができる。一般的に、極圧剤は、金属と化学的に結合して、高荷重下の対向する金属表面の凹凸部の溶着を防止する表面フィルムを形成することができる化合物である。好適な極圧剤の非限定的な例には、硫化動物性又は植物性の油脂、硫化動物性又は植物性の脂肪酸エステル、完全に又は部分的にエステル化されたリンの三価酸又は五価酸のエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールスアルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、硫化又は共硫化脂肪酸エステルと一不飽和オレフィンとの混合物、共硫化脂肪酸のブレンド、脂肪酸エステル及びα−オレフィン、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チア−アルデヒド、チア−ケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、共硫化テルペンと非環状オレフィンとのブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、並びにこれらの組合せが含まれる。極圧剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約5重量%、約0.05重量%から約3重量%、又は約0.1重量%から約1重量%の範囲で変えることができる。幾つかの好適な極圧剤は、Leslie R.Rudnick、「潤滑剤添加剤(Lubricant Additives): 化学及び応用(Chemistry and Applications)」、New York、Marcel Dekker、第8章、223〜258頁(2003年)に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0126】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、鉄を含む金属表面の腐食を防止することができる1種以上の防錆剤を含有させることができる。当業者に既知の任意の防錆剤を、潤滑油組成物で使用することができる。好適な防錆剤の非限定的な例には、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、及びポリエチレングリコールモノオレアート;ステアリン酸及び他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石けん;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩、;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;これらの部分エステル及びこれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホナート、例えば金属ジノニルナフタレンスルホナート等及びこれらの混合物が含まれる。防錆剤の量は、潤滑油組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%の範囲で変えることができる。
【0127】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、1種以上の多機能性添加剤を含有させることができる。好適な多機能性添加剤の非限定的な例には、硫化オキシモリブデンジチオカルバマート、硫化オキシモリブデン有機ホスホロジチオアート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチラートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物、及び硫黄含有モリブデン錯体化合物が含まれる。
【0128】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、1種以上の粘度指数向上剤を含有させることができる。好適な粘度指数向上剤の非限定的な例には、ポリメタクリラート系ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、水和スチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン及び分散剤型粘度指数向上剤が含まれる。
【0129】
本明細書に開示した潤滑油組成物には、1種以上の金属不活性化剤を含有させることができる。好適な金属不活性化剤の非限定的な例には、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、及びメルカプトベンゾイミダゾールが含まれる。
【0130】
所望の場合、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩は、前記潤滑油添加剤を任意選択で含む硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、実質的に不活性な、通常は液体の有機希釈剤、例えば鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等に組み込まれて添加剤濃縮物を形成する添加剤パッケージ又は濃縮物として提供されてもよい。これら濃縮物には通常、約20重量%から約80重量%のこのような希釈剤が含有される。典型的に、粘度が100℃で約4から約8.5cSt、好ましくは100℃で約4から約6cStの中性油を、希釈液として使用すると考えられるが、添加剤及び最終的な潤滑油と相溶性のある合成油及び他の有機液体も使用することができる。添加剤パッケージには典型的に、上記1種以上の種々の添加剤を所望の量及び割合で含有させて、潤滑粘度の必要量の油と直接組合せるのを容易にする。
【0131】
本明細書に開示した潤滑油組成物は、モーターオイル(又はエンジンオイル又はクランクケースオイル)、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物等として好適に使用することができる。
【0132】
一実施態様では、本明細書に開示した潤滑油組成物は、モーターオイル又はエンジンオイルである。このようなモーターオイル組成物は、任意のレシプロ型内燃機関、レシプロ型圧縮機、及びクランクケース設計の蒸気機関におけるすべての主要な運動部品を潤滑するのに使用することができる。自動車用途では、モーターオイル組成物は、高温のエンジン部品を冷却するため、錆及び堆積物が無い状態にエンジンを保つため、並びに燃焼ガスが漏出しないようにリング及びバルブを封止するために使用することもできる。モーターオイル組成物には、基油、本発明の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩、及び1種以上の任意選択による添加剤を含ませることができる。
【0133】
一実施態様では、本明細書に開示した潤滑油組成物は、船舶用エンジンオイルである。このような船舶用エンジンオイル組成物を、重質燃料と動作する2ストローククロスヘッド船舶用(船舶用シリンダー潤滑剤)エンジン又は所謂トランクピストンエンジンオイル(TPEO)エンジン、即ち、準速4ストロークエンジン等の船舶用エンジンを潤滑するのに使用することができる。船舶用エンジンオイル組成物には、基油、本明細書に開示した硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩、及び1種以上の任意選択による添加剤を含むことができる。
【0134】
以下の非限定的な例により、本発明を説明する。
【0135】
本明細書に開示し、そして以下に例示する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、並びに硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を含有する潤滑剤及び油添加剤中の、遊離未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合計濃度(即ち、「合計TPP」又は「合計残存TPP」)を、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。HPLC法では、80mgから120mgの試料を10ml容メスフラスコ中に正確に秤量し、塩化メチレンを用いて標線まで希釈し、試料が完全に溶解するまで混合することにより、分析用試料を調製した。
【0136】
HPLC法に使用したHPLCシステムには、HPLCポンプ、サーモスタット付きHPLCカラムコンパートメント、HPLC蛍光検出器、及びPCベースのクロマトグラフィーデータ取得システムが含まれた。説明する具体的なシステムは、ChemStationソフトウェアを使用するAgilent 1200 HPLCに基づく。HPLCカラムは、Phenomenex Luna C8(2)150×4.6mm 5μm 100Å、P/N 00F4249E0であった。
【0137】
以下のシステム設定を、分析の実施に使用した。
【0138】
ポンプ流量=1.0ml/分
【0139】
最大圧力=200バール
【0140】
蛍光波長:225励起313発光:ゲイン=9
【0141】
カラムサーモスタット温度=25℃
【0142】
注入サイズ=1μLの希釈済み試料
【0143】
溶離タイプ:勾配(Gradient)、逆相
【0144】
勾配:0〜7分 85/15メタノール/水から100%メタノールに切換わる直線的勾配。
【0145】
運転時間:17分
【0146】
得られるクロマトグラムには典型的に、幾つかのピークが含有される。遊離した未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物によるピークは典型的に、短い保持時間で一緒に溶出するが、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の硫化塩によるピークは典型的に、より長い保持時間で溶出する。定量化のために、遊離した未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩による単一の最大のピークの面積を測定し、その後、この面積を、遊離した未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩に化学種の合計濃度を測定するのに使用した。アルキルヒドロキシ芳香族化合物の化学種生成(speciation)は変化しないと仮定するが、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の化学種生成を変化させるものがある場合は再較正が必要である。
【0147】
選択したピークの面積を較正曲線と比較して、遊離したアルキルフェノール及び遊離したアルキルフェノールの未硫化塩のwt%を得る。較正曲線は、フェネート生成物を作製するのに使用する遊離した未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物について得たクロマトグラムの同じピークを使用して展開した。
【0148】
改良型石油協会48(MIP−48)試験
【0149】
例えば使用中に全塩基価の減少を引起す可能性がある酸化に対抗する船舶用潤滑剤の傾向は、改良型石油協会48(MIP−48)試験MIP−48を使用して評価することができる。
【0150】
この試験では、潤滑剤の酸化に基づく粘度増加に対する安定性の程度を測定する。この試験は、熱パートと酸化パートとから構成される。試験の両パートの間、試験試料をある時間加熱する。試験の熱パートでは、窒素を加熱される油試料に24時間通過させ、そして平行して試験の酸化パートの間、空気を加熱される油試料に24時間通過させる。その後、2つの試料を冷却し、そして試料の粘度を測定した。酸化によって引起された試験油のBN低下及び粘度上昇を測定し、そして熱の影響について補正した。各船舶システム油組成物についての酸化に基づく粘度上昇を、窒素吹付け試料の100℃での動粘度を、空気吹付け試料の100℃での動粘度から減算し、そして、その減算結果を、窒素吹付け試料の100℃での動粘度で除算することにより計算した。
比較例A
【0151】
スパージングをしない、塩基性硫化炭酸化カルシウムアルキルフェネートの調製
【0152】
アルキルラジカルが平均12個の炭素原子を有するポリプロピレンから誘導されたアルキルフェノール、基油、フッ素含有ケイ素発泡防止剤、及び石灰のスラリーを反応器に添加する。スラリーを120℃に加熱し、そしてスルホン酸を添加する。硫黄を約130℃にて反応器にゆっくりと添加し、約150℃にてデシルアルコール及びエチレングリコールを反応器にゆっくりと添加し、その反応器を、全添加の間、約150℃から155℃に維持した。その後、反応混合物を約175℃に加熱し、そして同時にCOをスパージングしながら、別のアリコートのエチレングリコールを添加した。炭酸化後、混合物を約230℃に加熱し、そして減圧して、水、エチレングリコール、及びデシルアルコールを除去した。フェネートには、合計残留TPPが5.7重量%あり、これはHPLC法により測定した。追加的な潤滑油をブレンドして、希釈清浄剤添加剤を得、その特徴を以下の表1に示す。
【表1】

比較例B
【0153】
空気スパージングによる塩基性硫化炭酸化カルシウムアルキルフェネートの調製
【0154】
比較例Aの約3000グラムの塩基性硫化炭酸化カルシウムアルキルフェネートを外部加熱マントル及びスパージングチューブを備えた4リットルの反応器に添加した。その後、フェネートをできるだけ早く160℃に加熱した。160℃に達した後、空気を反応器にスパージングチューブを介して0.5グラム/分の速度で添加した。空気を、フェネートに24時間スパージングした。得られたフェネートには、合計残留TPPが4.2重量%あり、これはHPLC法により測定した。
実施例1
【0155】
空気スパージングによる塩基性硫化炭酸化カルシウムアルキルフェネートの調製
【0156】
比較例Aの約3000グラムの塩基性硫化炭酸化カルシウムアルキルフェネートを外部加熱マントル及びスパージングチューブを備えた4リットルの反応器に添加した。その後、フェネートをできるだけ早く202℃に加熱した。202℃に達した後、空気を反応器にスパージングチューブを介して0.5グラム/分の速度で添加した。空気を、フェネートに24時間スパージングした。得られたフェネートには、合計残留TPPが1.1重量%あり、これはHPLC法により測定した。
比較例C及び実施例2
【0157】
以下の潤滑油組成物を、以下の表2に示す成分及び量を使用して調製した。添加成分及び量は、例の各々について同じであった。潤滑油組成物をMIP−48試験を使用して評価した。
【表2】

比較例D及び実施例3
【0158】
以下の潤滑油組成物を、以下の表3に示す成分及び量を使用して調製した。添加成分及び量は、例の各々について同じであった。潤滑油組成物をMIP−48試験を使用して評価した。
【表3】
【0159】
本明細書に開示した実施態様に対して種々の修正を行うことができることは理解されるであろう。従って、上の説明は、限定的なものとしてではなく、単に好ましい実施態様の例示として解釈すべきである。例えば、上記の、本発明を実施するための最良の態様として示した作用は、単に例証目的のためである。他の装置及び方法は、本発明の範囲及び趣旨から乖離することなく。当業者によって実施することができる。更に、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲及び趣旨の範囲内で他の修正を想起するであろう。
なお、下記[1]から[15]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を調製する方法であって、
(a)約250より高い全塩基価(TBN)を有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること、
を含む方法。
[2]
前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を、(i)ヒドロキシ芳香族化合物を1種以上のノルマルアルファオレフィンを用いてアルキル化すること;及び(ii)前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、任意の順序にて硫化、中和、及び過塩基化すること、によって生成する、[1]に記載の方法。
[3]
前記ヒドロキシ芳香族化合物が、フェノールであり、そして、前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを用いるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化から誘導される、[2]に記載の方法。
[4]
前記約250より高いTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、約250より高く且つ約450までのTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である、[1]に記載の方法。
[5]
前記スパージング工程が、減圧下で行われる、[1]に記載の方法。
[6]
前記スパージング工程が、加圧下で行われる、[1]に記載の方法。
[7]
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を実質的に含まない、[1]に記載の方法。
[8]
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を約1.5重量%未満含有する、[1]に記載の方法。
[9]
得られた前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を約0.3重量%未満含有する、[1]に記載の方法。
[10]
内燃機関で使用される潤滑油組成物の酸化安定性を改良する方法であって、(a)主要量の潤滑粘度の油;及び(b)より少ない量の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩であって、該硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩が以下の(i)及び(ii)を含むプロセスにより調製されるもの、を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関を動作させることを含む上記方法:
(i)約250より高い全塩基価を有する、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩を供給すること;及び
(ii)該硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の前記過塩基性塩を、約190℃から約250℃の範囲の温度で空気を用いてスパージングすること。
[11]
前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩が、(i)ヒドロキシ芳香族化合物を、1種以上のノルマルアルファオレフィンを用いてアルキル化すること;及び(ii)該アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、任意の順序にて硫化、中和、及び過塩基化すること、によって生成される、[10]に記載の方法。
[12]
前記ヒドロキシ芳香族化合物がフェノールであり、そして前記アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択される単量体のCからC18のオリゴマーを用いる前記ヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化から誘導される、[10]に記載の方法。
[13]
前記約250より高いTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩が、約250より高く且つ約450までのTBNを有する硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩である、[10]に記載の方法。
[14]
前記スパージング工程が、減圧下又は加圧下で行われる、[10]に記載の方法。
[15]
前記潤滑油組成物が、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物であり、そして前記内燃機関が、船舶用ディーゼルエンジンである、[10]に記載の方法。