特許第6275846号(P6275846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275846求電子性官能基を有するヘテロアリールピリドン及びアザ−ピリドン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275846
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】求電子性官能基を有するヘテロアリールピリドン及びアザ−ピリドン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20180129BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20180129BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 17/12 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   C07D487/04 140
   C07D495/04 105Z
   A61K31/4985
   A61K31/5025
   A61K31/502
   A61P37/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P9/00
   A61P3/00
   A61P5/00
   A61P25/00
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P31/12
   A61P37/06
   A61P37/08
   A61P19/02
   A61P1/04
   A61P11/06
   A61P17/00
   A61P17/12
   A61P7/04
   A61P7/00
   A61P11/00
   A61P17/06
   A61P37/02
   A61P9/02
   A61P1/16
   A61P3/10
   A61K45/00
   A61K31/496
   A61K31/519
   A61K39/395 T
【請求項の数】44
【全頁数】101
(21)【出願番号】特願2016-535205(P2016-535205)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2017-502933(P2017-502933A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2014076498
(87)【国際公開番号】WO2015082583
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】61/912,147
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クロフォード, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, ビンチン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング, ウェンディー ビー.
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/067274(WO,A1)
【文献】 特表2013−528595(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0222325(US,A1)
【文献】 特表2013−533300(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/067264(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/158843(WO,A2)
【文献】 国際公開第2013/092854(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/108754(WO,A1)
【文献】 特表2009−537485(JP,A)
【文献】 特表2010−502751(JP,A)
【文献】 LOU,Yan et al,J.Med.Chem.,2012年,55(10),4539-4550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/00−421/14
C07D487/00−491/22
C07D493/00−497/22
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
A61K 39/395
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
I
から選択される化合物又はその立体異性体、互変異性体、若しくは薬学的に許容される塩(式中、
が、CR又はNであり、
が、CR又はNであり、
が、CR又はNであり、
、R及びRが、H、F、Cl、CN、−NH、−NHCH、−N(CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH及びC−Cアルキルから独立して選択され、
、X、X及びXが、CH及びNから独立して選択され、
及びYが、CH及びNから独立して選択され、
Zが、O又はNRであり、Rが、H又はC−Cアルキルであり、
Qが、構造:
を有する基から選択され、
が、−CH=CH、−C(CH)=CH、−C(CN)=CH、−C≡CCH及び−C≡CHから選択され、Rが、H及びC−Cアルキルから選択され、
6a、R6b、R7a及びR7bが、H、F、Cl、CN、−NH、−NHCH、−N(CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH及びC−Cアルキルから独立して選択され、
又はR6a及びR7aが、5員、6員又は7員カルボシクリル又はヘテロシクリル環を形成しており、
又はR及びR6aが、5員、6員又は7員ヘテロシクリル環を形成しており、
又はZが窒素である場合、Z及びR7a又はZ及びR6aが、5員、6員又は7員ヘテロシクリル環を形成しており、
が、H、F、Cl、CN、−CHOH、−CH(CH)OH、−C(CHOH、−CH(CF)OH、−CHF、−CHF、−CHCHF、−CF、−C(O)NH、−C(O)NHCH、−C(O)N(CH、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHC(O)CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、1−ヒドロキシシクロプロピル、イミダゾリル、ピラゾリル、3−ヒドロキシ−オキセタン−3−イル、オキセタン−3−イル及びアゼチジン−1−イルから選択され、
が、構造:
から選択され、
波線が、結合部位を指し示しており、
アルキル、カルボシクリル及びヘテロシクリルが、F、Cl、Br、I、−CN、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHOH、−CHOCH、−CHCHOH、−C(CHOH、−CH(OH)CH(CH、−C(CHCHOH、−CHCHSOCH、−CHOP(O)(OH)、−CHF、−CHF、−CF、−CHCF、−CHCHF、−CH(CH)CN、−C(CHCN、−CHCN、−COH、−COCH、−COCH、−COC(CH、−COCH(OH)CH、−CONH、−CONHCH、−CON(CH、−C(CHCONH、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−N(CH)COCH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(CHCONH、−N(CH)CHCHS(O)CH、−NO、=O、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOCH、−OCHCHOH、−OCHCHN(CH、−OP(O)(OH)、−S(O)N(CH、−SCH、−S(O)CH、−S(O)H、シクロプロピル、オキセタニル、アゼチジニル、1−メチルアゼチジン−3−イル)オキシ、N−メチル−N−オキセタン−3−イルアミノ、アゼチジン−1−イルメチル、ピロリジン−1−イル、及びモルホリノから独立して選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい)。
【請求項2】
が、Nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、Nである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、Nである、請求項1から3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
及びXが、Nであり、X及びXが、Nであり、又はX及びXが、Nである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
及びXが、CHであり、Xが、CFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、Nである、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
及びXが、Nである、請求項1から7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が、CHであり、Yが、Nである、請求項1から8の何れか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が、Nであり、Yが、CHである、請求項1から8の何れか一項に記載の化合物。
【請求項11】
及びYが、それぞれCHである、請求項1から8の何れか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が、−CH=CHである、請求項1から11の何れか一項に記載の化合物。
【請求項13】
が、H又は−CHである、請求項1から12の何れか一項に記載の化合物。
【請求項14】
6a、R6b、R7a及びR7bが、Hである、請求項1から13の何れか一項に記載の化合物。
【請求項15】
が、−CHOHである、請求項1から14の何れか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が、
から選択される、請求項1から15の何れか一項に記載の化合物。
【請求項17】
式Ia:
Ia
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式Ib:
Ib
から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
基:
が、
から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
式Ic:
Ic
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
式Id:
Id
から選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
N−{2−[(6−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル}プロパ−2−エナミド;
N−(シアノメチル)−1−(4−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−カルボキサミド;
N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[2−(6−tert−ブチル−8−フルオロ−1−オキソ−フタラジン−2−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド;及び
N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]ブタ−2−イナミド
から選択される、請求項1から21の何れか一項に記載の化合物。
【請求項23】
N−[(1S)−2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]−1−メチル−エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[(1S)−2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]−1−メチル−エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−メチル−アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−メチル−アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]−N−メチル−プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]−N−メチル−プロパ−2−エナミド;
N−[(3S)−1−[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−3−ピペリジル]プロパ−2−エナミド;
N−[(3S)−1−[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−3−ピペリジル]プロパ−2−エナミド;
N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]ブタ−2−イナミド;
2−シアノ−N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド;及び
2−シアノ−N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド
から選択される、請求項1から21の何れか一項に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1から23の何れか一項の記載の化合物及び薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項25】
請求項1から23の何れか一項に記載の化合物を、薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤と混合することを含む、薬学的組成物を作製するための方法。
【請求項26】
治療的有効量の請求項24に記載の薬学的組成物を含む、疾患又は障害を治療する医薬
【請求項27】
疾患又は障害が、免疫障害である、請求項26に記載の医薬
【請求項28】
免疫障害が、関節リウマチである、請求項27に記載の医薬
【請求項29】
疾患又は障害が、全身性及び局所性炎症、関節炎、免疫抑制に関連した炎症、臓器移植片拒絶反応、アレルギー、潰瘍性大腸炎、クローン病、皮膚炎、喘息、全身性紅斑性狼瘡、腎外性狼瘡、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強皮症/全身性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)脈管炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬である、請求項26に記載の医薬
【請求項30】
疾患又は障害が、乳がん、卵巣がん、頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器がん、食道がん、喉頭がん、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃がん(stomach cancer)、皮膚がん、ケラトアカントーマ、肺がん、類表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺がん、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆管がん、腎臓癌、膵臓がん、骨髄障害、リンパ腫、毛様細胞がん、口腔がん、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口のがん、小腸がん、結直腸がん、大腸がん、直腸がん、脳及び中枢神経系のがん、ホジキン病、白血病、気管支がん、甲状腺がん、肝臓がん及び肝内胆管がん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)、神経膠腫/膠芽細胞腫、子宮内膜がん、メラノーマ、腎臓がん及び腎盂がん、膀胱がん、子宮体がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、骨髄性白血病、口腔がん及び咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、メラノーマ並びに絨毛結腸腺腫から選択されるがんである、請求項26に記載の医薬
【請求項31】
疾患又は障害が、血液悪性腫瘍である、請求項26に記載の医薬
【請求項32】
血液悪性腫瘍が、白血病又はリンパ腫である、請求項31に記載の医薬
【請求項33】
抗炎症薬、免疫調節剤、化学療法剤、アポトーシスエンハンサー、神経栄養因子、心血管疾患を治療するための薬剤、肝臓疾患を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液障害を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤及び免疫不全障害を治療するための薬剤から選択されるさらなる治療剤をさらに含む、請求項26に記載の医薬
【請求項34】
さらなる治療剤が、Bcl−2阻害剤である、請求項33に記載の医薬
【請求項35】
Bcl−2阻害剤が、ベネトクラックスである、請求項34に記載の医薬
【請求項36】
さらなる治療剤が、Btk阻害剤である、請求項33に記載の医薬
【請求項37】
Btk阻害剤が、イブルチニブである、請求項36に記載の医薬
【請求項38】
さらなる治療剤が、JAK阻害剤である、請求項33に記載の医薬
【請求項39】
さらなる治療剤が、抗CD20抗体である、請求項33に記載の医薬
【請求項40】
抗CD20抗体が、オビヌツズマブ又はリツキシマブである、請求項39に記載の医薬
【請求項41】
a)請求項24に記載の薬学的組成物、及び
b)使用説明書
を含む、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害を治療するためのキット。
【請求項42】
免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害の治療における使用のための、請求項1から23の何れか一項に記載の化合物。
【請求項43】
免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害の治療のための医薬の製造における、請求項1から23の何れか一項に記載の化合物。
【請求項44】
免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害の治療のための、請求項1から23の何れか一項に記載の化合物を含む医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、炎症、免疫障害及びがんを含むブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)によって媒介される障害を治療するための化合物に関し、より具体的には、Btk活性を阻害する化合物に関する。本発明は、哺乳動物細胞又は関連の病理学的状態のインビトロ、in situ及びインビボにおける診断又は治療のためにこの化合物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは最大のヒト酵素ファミリーであり、500個を優に上回るタンパク質を包含する。ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)は、チロシンキナーゼのTecファミリーのメンバーであり、早期B細胞の発生並びに成熟B細胞の活性化、シグナル伝達及び生存の制御因子である。
【0003】
B細胞受容体(BCR)を介したB細胞シグナル伝達は、多種多様な生物学的生産物をもたらし得るが、こうした多種多様な生物学的生産物は、B細胞の発生段階に依存する。BCRシグナルの大きさ及び持続期間は、正確に調節されなければならない。異常なBCR媒介性シグナル伝達は、複数の自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患をもたらす、無調節のB細胞活性化及び/又は病原性自己抗体の形成を引き起こす可能性がある。ヒトにおけるBtkの突然変異により、X連鎖性無γグロブリン血症(XLA)が起きる。この疾患には、B細胞の成熟障害、免疫グロブリン産生の減少、T細胞非依存性免疫応答不全、及び、BCR刺激時における持続的カルシウムサインの顕著な減衰が伴う。アレルギー性障害及び/又は自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患におけるBtkの役割の根拠は、Btk欠損マウスモデルにおいて確立されてきた。例えば、全身性紅斑性狼瘡(SLE)に関する標準的なマウスの前臨床モデルにおいて、Btk欠損は、疾患進行の顕著な改善をもたらすことが示されてきた。さらに、Btk欠損マウスは、コラーゲン誘導性関節炎の発病に対して抵抗性でもあり得るし、ブドウ球菌属誘導性関節炎にもかかりにくくすることができる。数多くの根拠が、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の発生機序におけるB細胞及び体液性免疫系の役割を支持している。B細胞を大幅に減少させるために開発されたタンパク質ベース治療薬(Rituxan(登録商標)、Genentech/Biogen Idec等)は、いくつかの自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患を治療する手法を代表するものである。B細胞活性化におけるBtkの役割のため、Btkの阻害剤は、B細胞媒介性病原性活性(自己抗体産生等)の阻害剤として有用であり得る。Btkは、破骨細胞、マスト細胞及び単球においても発現するものであり、これらの細胞の機能にとって重要であることが示されてきた。例えば、マウスにおけるBtk欠損には、IgE媒介性マスト細胞活性化障害(TNF−α及び他の炎症サイトカインの放出の顕著な現象)が伴い、ヒトにおけるBtk欠損には、活性化単球によるTNF−α産生の大幅な低減が伴う。
【0004】
したがって、Btk活性の阻害は、SLE、関節リウマチ、多発性血管炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、重症筋無力症、アレルギー性鼻炎及び喘息等、アレルギー性障害並びに/又は自己免疫疾患及び/若しくは炎症性疾患の治療に有用であり得る(Di Paolo等(2011) Nature Chem. Biol. 7(1):41-50;Liu (2011) Drug Metab. and Disposition 39(10):1840-1849;Liu等(2011) Jour. of Pharm. and Exper. Ther. 338(1):154-163;Lou等(2012) J. Med. Chem. 55(10):4539-4550;Farooqui等(2013) Expert Opinion on Orphan Drugs, Volume: 1, Issue: 11: 925-933)。さらに、Btkは、アポトーシスにおいて役割を担うことも報告されてきており、したがって、Btk活性の阻害は、がんに対しても有用であり得るし、同様に、B細胞リンパ腫、白血病及び他の血液悪性腫瘍の治療のためにも有用であり得る(米国特許第7514444号)。破骨細胞機能におけるBtkの役割を考えれば、Btk活性の阻害は、骨粗鬆症等の骨障害の治療に有用であり得る。特定のBtk阻害剤が報告されてきた(米国特許第7884108号、国際公開第2010/056875号、米国特許第7405295号、米国特許第7393848号、国際公開第2006/053121号、米国特許第7947835号、米国特許出願第2008/0139557号、米国特許第7838523号、米国特許出願第2012/0040949号、米国特許出願第2012/0295885号、米国特許出願第2013/0045965号、米国特許第7683064号、米国特許第7902194号、米国特許第7906509号、米国特許第8124604号、米国特許出願第2008/0125417号、米国特許出願第2011/0118233号、国際公開第2011/140488号、米国特許出願第2012/0010191号、国際公開第2013/067274号、米国特許出願第2013/0116235号、国際公開第2013/067277号、米国特許出願第2013/0116245号、国際公開第2013/067260号、米国特許出願第2013/0116262号、国際公開第2013/067264号、米国特許出願第2013/0116246号。
【0005】
不可逆的阻害剤は、チロシンキナーゼ酵素の強力で選択的な阻害を提供するものであり、可逆的チロシンキナーゼ阻害剤を用いると生じる腫瘍抵抗性を克服することもできる(Carmi等(2012) Biochem. Pharmacol. 84(11):1388-1399)。阻害剤と標的との間での共有結合形成による不可逆的標的結合に関して認識されている利点は、有効性、競合を克服する能力、及びクラス内選択性である。固有の難点は、標的依存性応答及び突然変異依存性応答並びに毒性を含む。不可逆的阻害剤は、キナーゼドメインのヌクレオチド結合ポケット内の求核システイン残基との間での共有結合的相互作用によって、当該阻害剤のタンパク質標的を不活性化させる。上皮増殖因子受容体(EGFR)、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)及び線維芽細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼ(FGFR)を対象とする多様な不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤が開発されてきており、こうした不可逆的チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかは、抗がん剤として臨床的に使用されてきた。
【0006】
B細胞悪性腫瘍であるマントル細胞リンパ腫(MCL)を有する患者を治療するためにFDAによって承認されたイブルチニブ(IMBRUVICA(登録商標)、Pharmacyclics、Sunnyvale、CA、Janssen Biotech,Inc.、Raritan、NJ)を含む、Btkとの間に共有結合を形成する化合物が報告されてきた(米国特許第7514444号、米国特許第8088781号)。イブルチニブもまた、慢性リンパ球性白血病(CLL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)における臨床的有効性を実証してきた。さらに、PF−112(Pfizer,Inc.)は、自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療のために開発されている、Btkの共有結合的可逆的阻害剤である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は一般に、その立体異性体、互変異性体又は薬学的に許容される塩を含む、式Iの構造:
I
を有し、求電子性官能基及びブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)をモジュレートする活性を有する、ヘテロアリールピリドン及びアザ−ピリドンアミド化合物に関する。様々な置換基が本明細書で定義されている。
【0008】
本発明の一態様は、Btkに共有結合的に結合する式Iの化合物である。
【0009】
本発明の別の態様は、Btk、及びBtk中にあるシステイン481のアミノ酸配列位置と相同であるチロシンキナーゼのアミノ酸配列位置の中にシステイン残基を有するチロシンキナーゼとの結合に選択的である式Iの化合物である。
【0010】
一実施態様において、式Iの化合物は、標的チロシンキナーゼの活性化型(例えば、チロシンキナーゼのリン酸化型)を選択的且つ不可逆的に阻害する。例えば、活性化Btkは、チロシン551のところでリン酸基転移される。したがって、こうした実施態様において、一旦標的キナーゼがシグナル伝達事象によって活性化されたら、不可逆的Btk阻害剤は、細胞内の標的キナーゼのみを阻害する。
【0011】
例示的な一実施態様において、式Iの化合物は、マイケルアクセプター部分を有する。
【0012】
本発明の別の態様は、式Iの化合物及び薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤を含む、薬学的組成物である。薬学的組成物は、第2の治療剤をさらに含んでいてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、式Iの化合物を薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤と混合することを含む、薬学的組成物を作製するための方法である。
【0014】
本発明の別の態様は、治療的有効量の式Iの化合物を、免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害を有する患者に投与することを含む、疾患又は障害を治療する方法である。
【0015】
本発明は、a)式Iの化合物を含む第1の薬学的組成物、及びb)使用説明書を含む、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される状態を治療するためのキットを含む。
【0016】
本発明は、医薬としての使用のため、並びに、免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害の治療における使用のための式Iの化合物を含む。
【0017】
本発明は、医薬としての使用のための式Iの化合物を含む。
【0018】
本発明は、免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害から選択され、ブルトン型チロシンキナーゼによって媒介される疾患又は障害の治療における使用のための式Iの化合物を含む。
【0019】
本発明は、疾患又は障害の治療におけるさらなる治療剤と組み合わせた使用のための式Iの化合物を含む。
【0020】
本発明は、免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害の治療のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用であって、医薬が、ブルトン型チロシンキナーゼを媒介する、式Iの化合物の使用を含む。
【0021】
本発明は、免疫障害、がん、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌機能障害及び神経障害の治療のための、式Iの化合物の使用であって、医薬が、ブルトン型チロシンキナーゼを媒介する、式Iの化合物の使用を含む。
【0022】
本発明は、式Iの化合物を作製する方法を含む。
【0023】
本発明は、本明細書に記載の発明を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、本発明の特定の実施態様について詳細に言及するが、これらの実施態様の例は、付属する構造及び式中で例示する。本発明については、列挙する実施態様と結びつけて記述するが、これらの実施態様が、本発明を当該実施態様に限定することを目的としていないことは、理解されよう。一方、本発明は、特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲に含まれ得るすべての代替形態、修正形態及び等価物を包摂することを目的としている。当業者ならば、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載の方法及び材料に類似した又は等価な数多くの方法及び材料を認識している。本発明は、記載された方法及び材料に限定されることは決してない。限定されるわけではないが定義された用語、用語の使用法又は記載された技術等を含む、援用された文献、特許及び類似の材料の1つ又は複数が本出願と相違又は矛盾する場合、本出願が規制する。別途定義のない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料に類似した又は等価な方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することもできるが、適切な方法及び材料についても後述している。本明細書で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考資料は、その全内容が参照により援用される。本出願で使用される命名法は、別途指示がない限り、IUPAC式体系的命名法に基づいている。
【0025】
定義
標準的な化学用語の定義は、Mcmurry「ORGANIC CHEMISTRY Fifth ED.」(2000)Brooks/Cole、Pacific Groveを含む参考文献に見出すことができる。
【0026】
置換基の数を指し示す場合、用語「1つ又は複数の」とは、1個の置換基から可能な最大数の置換までの範囲を指し、すなわち、置換基による1個の水素の置き換えからすべての水素原子の置き換えに至るまでを指す。用語「置換基」とは、親分子上の水素原子を置き換える、原子又は原子の基を表す。用語「置換された」とは、指定された基が1個又は複数の置換基を有することを表す。任意の基が複数の置換基を有していてもよく、種々の可能な置換基が提示されている場合、置換基は、独立して選択され、同じである必要がない。用語「無置換」とは、指定された基が置換基を有さないことを意味する。用語「置換されていてもよい」とは、指定された基が無置換であるか又は可能な置換基の群から独立して選択される1つ若しくは複数の置換基で置換されていることを意味する。置換基の数を指し示す場合、用語「1つ又は複数の」とは、1個の置換基から可能な最大数の置換までを意味し、すなわち、置換基による1個の水素原子の置き換えからすべての水素原子の置き換えに至るまでを意味する。
【0027】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1個から12個までの炭素原子(C−C12)の飽和した直鎖又は分岐鎖状の一価の炭化水素基を指しており、アルキル基は、後述する1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよいものであり得る。別の実施態様において、アルキル基は、1個から8個までの炭素原子(C−C)又は1個から6個までの炭素原子(C−C)である。アルキル基の例には、限定されるわけではないが、メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH、1−ヘプチル、1−オクチル等が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される用語「アルキレン」とは、1個から12個までの炭素原子(C−C12)の飽和した直鎖又は分岐鎖状の二価の炭化水素基を指しており、アルキレン基は、後述する1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよいものであり得る。別の実施態様において、アルキレン基は、1個から8個までの炭素原子(C−C)又は1個から6個までの炭素原子(C−C)である。アルキレン基の例には、限定されるわけではないがメチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)及びプロピレン(−CHCHCH−)等が挙げられる。
【0029】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素−炭素sp二重結合を有する2個から8個までの炭素原子(C−C)の直鎖又は分岐鎖状の一価の炭化水素基を指しており、アルケニル基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよく、「シス」及び「トランス」配向、又は代替的には、「E」及び「Z」配向を有する基を含む。例には、限定されるわけではないがエチレニル又はビニル(−CH=CH)及びアリル(−CHCH=CH)等が挙げられる。
【0030】
用語「アルケニレン」とは、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素−炭素sp2二重結合を有する2個から8個までの炭素原子(C−C)の直鎖又は分岐鎖状の二価の炭化水素基を指しており、アルケニレン基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよく、「シス」及び「トランス」配向、又は代替的には「E」及び「Z」配向を有する基を含む。例には、限定されるわけではないがエチレニレン又はビニレン(−CH=CH−)及びアリル(−CHCH=CH−)等が挙げられる。
【0031】
用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素−炭素sp三重結合を有する2個から8個までの炭素原子(C−C)の直鎖又は分岐状の一価の炭化水素基を指しており、アルキニル基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。例には、限定されるわけではないがエチニル(−CH≡CH)、プロピニル(プロパルギル、−CHC≡CH)等が挙げられる。
【0032】
用語「アルキニレン」とは、少なくとも1つの不飽和部位、すなわち、炭素−炭素sp三重結合を有する2個から8個までの炭素原子(C−C)の直鎖又は分岐状の二価の炭化水素基を指しており、アルキニレン基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。例には、限定されるわけではないがエチニレン(−C≡C−)、プロピニレン(プロパルギレン、−CHC≡C−)等が挙げられる。
【0033】
用語「炭素環」、「カルボシクリル(carbocyclyl)」、「炭素環式環」及び「シクロアルキル」とは、単環式環としての3個から12個までの炭素原子(C−C12)又は二環式環としての7個から12個までの炭素原子を有する、一価の非芳香族の飽和した又は部分不飽和の環を指す。7個から12個までの原子を有する二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系として配列され得、9個又は10個の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]又は[6,6]系、又はビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン及びビシクロ[3.2.2]ノナン等の架橋系として配列され得る。スピロ部分もまた、上記定義の範囲に含まれる。単環式炭素環の例は、限定されるわけではないがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンタ−1−エニル、1−シクロペンタ−2−エニル、1−シクロペンタ−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシル等が挙げられる。カルボシクリル基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0034】
「アリール」とは、親芳香環系にある単一の炭素原子からの1個の水素原子の抜き取りによって得られた、6−20個までの炭素原子(C−C20)の一価の芳香族炭化水素基を意味する。一部のアリール基は、例示的な構造中において「Ar」と表されている。アリールは、飽和環、部分不飽和環又は芳香族炭素環式環に縮合した芳香環を含む、二環式基を含む。典型的なアリール基には、限定されるわけではないがベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン及び1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等に由来する基が挙げられる。アリール基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0035】
「アリーレン」とは、親芳香環系にある2個の炭素原子からの2個の水素原子の抜き取りによって得られた、6−20個までの炭素原子(C−C20)の二価の芳香族炭化水素基を意味する。一部のアリーレン基は、例示的な構造中において「Ar」と表されている。アリーレンは、飽和環、部分不飽和環、又は芳香族炭素環式環に縮合した芳香環を含む、二環式基を含む。典型的なアリーレン基には、限定されるわけではないが、ベンゼン(フェニレン)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニレン、インデニレン、インダニレン、1,2−ジヒドロナフタレン及び1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等に由来する基が挙げられる。アリーレン基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
用語「複素環」、「ヘテロシクリル」及び「複素環式環」は、本明細書において互換的に使用されており、3個から約20個までの環原子の飽和又は部分不飽和(すなわち、1つ又は複数の二重結合及び/又は三重結合を環内に有する)炭素環式基を指しており、この炭素環式基中では、少なくとも1個の環原子が、窒素、酸素、リン及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子が、Cであり、1個又は複数の環原子が、後述する1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。複素環は、3個から7個までの環員(2個から6個までの炭素原子、並びにN、O、P及びSから選択される1個から4個までのヘテロ原子)を有する単環、又は7個から10個までの環員(4個から9個までの炭素原子、並びにN、O、P及びSから選択される1個から6個までのヘテロ原子)を有する二環、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系であってもよい。複素環については、Paquette,Leo A.、「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin、New York、1968)、特に第1章、第3章、第4章、第6章、第7章及び第9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley&Sons、New York、1950年版から現行版まで)、特に第13巻、第14巻、第16巻、第19巻及び第28巻;及びJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566で記述されている。「ヘテロシクリル」は、複素環基が飽和環、部分不飽和環又は芳香族炭素環式環若しくは複素環式環と縮合している、基も含む。複素環式環の例には、限定されるわけではないが、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピペラジニル、ピペラジン−4−イル−2−オン、ピペラジン−4−イル−3−オン、ピロリジン−1−イル、チオモルホリン−4−イル、S−ジオキソチオモルホリン−4−イル、アゾカン−1−イル、アゼチジン−1−イル、オクタヒドロピリド[1,2−a]ピラジン−2−イル、[1,4]ジアゼパン−1−イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリルキノリジニル及びN−ピリジルウレアが挙げられる。スピロ部分もまた、上記定義の範囲に含まれる。2個の環原子がオキソ(=O)部分で置換された複素環式基の例は、ピリミジノニル及び1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書における複素環基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0037】
用語「ヘテロアリール」とは、5員、6員又は7員環の一価の芳香族基を指しており、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1個又は複数のヘテロ原子を含有する、5−20個までの原子の縮合環系(その少なくとも1つが芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば、2−ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4−ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、本明細書に記載の1個又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0038】
複素環又はヘテロアリール基には、複素環又はヘテロアリール基への結合が可能である場所に炭素が結合(炭素結合型)していてもよく、又は窒素が結合(窒素結合型)していてもよい。限定ではなく例として、炭素が結合した複素環又はヘテロアリールは、ピリジンの2位、3位、4位、5位若しくは6位、ピリダジンの3位、4位、5位若しくは6位、ピリミジンの2位、4位、5位若しくは6位、ピラジンの2位、3位、5位若しくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2位、3位、4位若しくは5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2位、4位若しくは5位、イソオキサゾール、ピラゾール若しくはイソチアゾールの3位、4位若しくは5位、アジリジンの2位若しくは3位、アゼチジンの2位、3位若しくは4位、キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位若しくは8位又はイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位若しくは8位に結合している。
【0039】
限定ではなく例として、窒素が結合した複素環又はヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン又は1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位に結合している。
【0040】
用語「マイケルアクセプター部分」とは、新たな共有結合がマイケルアクセプター部分の一部とドナー部分との間に形成されることになるマイケル反応に関与し得る、官能基を指す。マイケルアクセプター部分は求電子剤であり、「ドナー部分」は求核種である。式Iの化合物中に提示された「Q」基は、マイケルアクセプター部分の非限定的な例である。
【0041】
用語「求核種」又は「求核」とは、電子が豊富な化合物又はその部分を指す。求核種の例には、例えばBtkのCys481等、ある分子のシステイン残基が挙げられるが、これらに限定されることは決してない。
【0042】
用語「求電子剤」又は「求電子性」とは、電子が不足した分子若しくは電子が欠乏した分子又はその部分を指す。求電子剤の例には、アクリルアミド、アクリル酸エステル、α,β−不飽和ケトン、アクリロニトリル及びα,β−不飽和ニトロ等のα,β−不飽和アシル官能基等、マイケルアクセプター部分が挙げられるが、これらに限定されることは決してない。
【0043】
用語「不可逆的阻害剤」は、反応性官能基を介して安定な共有結合を形成し、標的の認識部分に直接結合する、目的化合物を意味する。Btkの不可逆的阻害剤は、Btkのキナーゼドメインのヌクレオチド結合ポケット内の求核システイン残基との間での共有結合的相互作用によって、当該不可逆的阻害剤のBtk標的を不活性化させることができる。
【0044】
用語「治療する」及び「治療」とは、治療的処置を指しており、その目的は、関節炎又はがんの進行又は広がり等の望ましくない生理的変化又は障害を減速させる(軽減する)ことである。本発明に関しては、有益な又は所望の臨床結果には、限定されるわけではないが、検出可能であるか否かにかかわらず、症候の緩和、疾患重症度の低下、病態の安定化(すなわち、悪化がないこと)、疾患進行の遅延又は減速、病態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であるか完全であるかにかかわらない)が挙げられる。「治療」とは、治療を受けなかった場合に予想される生存と比較して生存を延長することも意味し得る。治療を必要としているものは、状態又は障害を有するものを含む。
【0045】
語句「治療的有効量」とは、(i)特定の疾患、状態若しくは障害を治療し、(ii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ若しくは複数の症候を減じ、改善し、若しくは消失させ、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態若しくは障害の1つ若しくは複数の症候の発症を予防若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。がんの場合、薬物の治療的有効量は、がん細胞の数を低減することができ、腫瘍サイズを低減することができ、周辺臓器中へのがん細胞浸潤を阻害することができ(すなわち、ある程度減速させることができ、好ましくは停止させることができ)、腫瘍転移を阻害することができ(すなわち、ある程度減速させることができ、好ましくは停止させることができ)、腫瘍増殖をある程度阻害することができ、且つ/又はある程度がんに関連した症候の1つ若しくは複数を軽減することができる。薬物が既存のがん細胞の増殖を予防することができ、且つ/又は既存のがん細胞を殺滅することができる限り、薬物は、細胞分裂停止性及び/又は細胞傷害性であり得る。がんの治療に関しては、有効性は、例えば、無増悪期間(TTP)の検定及び/又は奏功率(RR)の決定によって測定することができる。
【0046】
本明細書で使用される「炎症性障害」は、過剰な又は無調節の炎症応答が過剰な炎症性症候、宿主組織損傷又は組織機能喪失をもたらす、任意の疾患、障害又は症候群を指し得る。「炎症性障害」は、白血球の流入及び/又は好中球走化性によって媒介される病理学的状態も指す。
【0047】
本明細書で使用される「炎症」は、組織の傷害又は破壊によって引き起こされて、損傷を与える薬剤と損傷した組織の両方を破壊し、希釈し、又は遮断する(封鎖する)ように働く、限局的な防御応答を指す。炎症には特に、白血球の流入及び/又は好中球走化性が伴う。炎症は、病原性生物体及びウイルスによる感染、並びに、心筋梗塞又は脳卒中後の外傷又は再灌流、外来抗原への免疫応答及び自己免疫応答等の非感染性の手段に起因し得る。したがって、式Iの化合物による治療に適合する炎症性障害は、特異的防御系の反応及び非特異的防御系の反応に関連した障害を包摂する。
【0048】
「特異的防御系」とは、特異的抗原の存在に対して反応する免疫系の成分を指す。特異的防御系の応答に起因した炎症の例には、T細胞によって媒介される外来抗原への古典的応答、自己免疫疾患及び遅延型過敏症応答が挙げられる。慢性炎症性疾患、移植された固形の組織及び臓器、例えば腎臓移植片及び骨髄移植片の拒絶反応、並びに移植片対宿主病(GVHD)は、特異的防御系の炎症反応のさらなる例である。
【0049】
本明細書で使用される用語「非特異的防御系」は、免疫記憶の機能がない白血球(例えば、顆粒球及びマクロファージ)によって媒介される炎症性障害を指す。非特異的防御系の反応に少なくとも部分的に起因した炎症の例には、成人(急性)呼吸促迫症候群(ARDS)又は多臓器傷害症候群;再灌流傷害;急性糸球体腎炎;反応性関節炎;急性炎症成分による皮膚疾患;急性化膿性髄膜炎又は脳卒中等の他の中枢神経系炎症性障害;熱傷;炎症性腸疾患;顆粒球輸血関連症候群;並びにサイトカイン誘導性毒性等の状態に関連した炎症が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「自己免疫疾患」とは、組織傷害に、身体自体の構成要素への体液性又は細胞媒介性応答が伴う、任意の群の障害を指す。
【0051】
本明細書で使用される「アレルギー性疾患」は、アレルギーに起因した任意の症候、組織損傷又は組織機能喪失を指す。本明細書で使用される「関節炎型疾患」とは、様々な原因に起因した関節の炎症病変によって特徴を明らかにする、任意の疾患を指す。本明細書で使用される「皮膚炎」とは、様々な原因に起因した皮膚の炎症によって特徴を明らかにする、1つの大きなファミリーの皮膚疾患のいずれかを指す。本明細書で使用される「移植片拒絶反応」とは、移植組織及び周辺組織の機能喪失、疼痛、腫れ、白血球増多及び血小板減少症によって特徴を明らかにする、臓器又は細胞(例えば、骨髄)等の移植組織を対象とする任意の免疫応答を指す。本発明の治療方法は、炎症細胞活性化に関連した障害の治療のための方法を含む。
【0052】
「炎症細胞活性化」とは、増殖性細胞の応答の刺激(限定されるわけではないが、サイトカイン、抗原又は自己抗体を含む)、可溶型メディエーター(限定されるわけではないが、サイトカイン、酸素ラジカル、酵素、プロスタノイド又は血管作動性アミンを含む)の産生、又は、炎症細胞(限定されるわけではないが、単球、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球及び好酸球等の多形核白血球)、マスト細胞、樹状細胞、ランゲルハンス細胞及び内皮細胞を含む)における新たな若しくは数を増やしたメディエーター(限定されるわけではないが、主要な組織適合抗原又は細胞接着分子を含む)の細胞表面発現による誘導を指す。上記細胞における上記表現型の1つ又は組合せの活性化が、炎症性障害の開始、恒久化又は増悪に寄与し得ることは、当業者には理解されよう。
【0053】
用語「NSAID」とは、「非ステロイド系抗炎症薬」の頭字語であり、鎮痛効果、解熱効果(意識を損なうことなく、高い体温を低下させ、疼痛を和らげる)、及び用量をより多くした場合の抗炎症効果(炎症を低減する)を有する、治療剤である。用語「非ステロイド系」は、これらの薬物を、(多種多様な効果の中でもとりわけ)エイコサノイドを抑制する類似の抗炎症作用を有するステロイドから区別するために使用されている。NSAIDは非麻酔性であるため、鎮痛剤としてNSAIDは一般的でない。NSAIDには、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンが挙げられる。NSAIDは通常、疼痛及び炎症が存在する急性又は慢性状態の治療のために必要とされる。NSAIDは一般に、下記の状態、すなわち、関節リウマチ、変形性関節症、炎症性関節症(例えば、強直性脊椎炎)、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛及び片頭痛、術後痛、炎症及び組織傷害に起因した軽度から中等度までの疼痛、発熱、イレウス並びに腎仙痛の症候を軽減するために必要とされる。大部分のNSAIDは、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤として作用して、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)とシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)アイソエンザイムの両方を阻害する。シクロオキシゲナーゼは、アラキドン酸(このアラキドン酸自体は、ホスホリパーゼAによる細胞リン脂質二重層に由来する。)からのプロスタグランジン及びトロンボキサンの形成を触媒する。プロスタグランジンは、炎症のプロセスにおけるメッセンジャー分子として(とりわけ)作用する。COX−2阻害剤には、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ及びバルデコキシブが挙げられる。
【0054】
用語「がん」とは、無調節の細胞増殖によって典型的には特徴を明らかにする、哺乳類における生理的状態を指し、又はこうした生理的状態について記述する。「腫瘍」は、1つ又は複数のがん性細胞を含む。がんの例には、限定されるわけではないがカルシノーマ、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。このようながんのより詳細な例には、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)、膵臓がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん又は腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌、肛門癌、陰茎癌並びに頭頸部がんが挙げられる。
【0055】
「血液悪性腫瘍(hematological malignancies)」(イギリス英語式のつづりでは「haematological」malignancies)は、血液、骨髄及びリンパ節に影響するがんの型である。血液、骨髄及びリンパ節の3つは、免疫系を介して密接に接続されているため、血液、骨髄及びリンパ節という3つのうちの1つに影響する疾患は、しばしば、これらの3つのうちの残りにも同様に影響する。リンパ腫はリンパ節の疾患であるが、しばしば、骨髄に拡がって、血液に影響する。血液悪性腫瘍は、悪性腫瘍(「がん」)であり、一般には、血液学及び/又は腫瘍学の専門家によって治療される。一部の機関においては、「血液学/腫瘍学」とは、内科医学の一専門分科となっているが、他の機関においては、「血液学/腫瘍学」とは、別個の部門だと考えられている(腫瘍外科医及び照射がん専門医も存在する。)。すべての血液障害が悪性(「がん性」)であるとは限らないが、こうした他の血液状態もまた、血液病専門医によって管理され得る。血液悪性腫瘍は、2つの主要な血液細胞系譜、すなわち、骨髄及びリンパ系細胞株のいずれかに由来し得る。骨髄細胞株は通常、顆粒球、赤血球、トロンボサイト、マクロファージ及びマスト細胞を産生し、リンパ系細胞株は、B細胞、T細胞、NK細胞及び形質細胞を産生する。リンパ腫、リンパ性白血病及び骨髄腫は、リンパ球系に由来するが、急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群並びに骨髄増殖性疾患は、骨髄由来である。白血病には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMOL)及び小リンパ球性リンパ腫(SLL)が挙げられる。リンパ腫には、ホジキンリンパ腫(4つすべての亜型)及び非ホジキンリンパ腫(NHL、すべての亜型)、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫並びに濾胞性リンパ腫が挙げられる。血液悪性腫瘍には、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症及び多発性骨髄腫も挙げられる。
【0056】
「化学療法剤」とは、作用機序にかかわらずがんの治療に有用な化合物である。化学療法剤のクラスには、限定されるわけではないがアルキル化剤、代謝拮抗剤、スピンドル毒型植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光感作物質及びキナーゼ阻害剤が挙げられる。化学療法剤は、「標的化療法」及び従来の化学療法で使用される化合物を含む。化学療法剤の例には、イブルチニブ(IMBRUVICA(登録商標)、PCI−32765、Pharmacyclics Inc.;CAS登録番号936563−96−1、米国特許第7514444号)、イデラリシブ(以前はCAL−101、GS1101、GS−1101、Gilead Sciences Inc.、CAS登録番号1146702−54−6)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS登録番号51−21−8)、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS番号391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(cis−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS番号15663−27−1)、カルボプラチン(CAS番号41575−94−4)、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、テモゾロミド(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS番号85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))及びドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、Akti−1/2、HPPD及びラパマイシンが挙げられる。
【0057】
化学療法剤には、Bcl−2阻害剤、Btk阻害剤、JAK阻害剤、Syk阻害剤、Tyk阻害剤及び抗CD20抗体が挙げられる。
【0058】
本発明の化合物と組み合わせた使用のためのbcl−2阻害剤は、ベネトクラックス(CAS登録番号1257044−40−8、ABT−199、GDC−0199、RG−7601、AbbVie Inc.、Genentech Inc.)である。ベネトクラックスは、タンパク質Bcl2の機能をブロックするように設計されたいわゆるBH3−模倣薬であり、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、全身性紅斑性狼瘡、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病及び非ホジキンリンパ腫の治療のための第3相臨床治験に入っている(Souers等Nat Med.2013年1月6日. doi: 10.1038/nm.3048)。ベネトクラックスは、IUPAC名:4−(4−{[2−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチルシクロヘキサ−1−エン−1−イル]メチル}ピペラジン−1−イル)−N−({3−ニトロ−4−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)−2−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルオキシ)ベンズアミドを有する。
【0059】
本発明の化合物と組み合わせた使用のための抗CD20抗体は、治療未経験者の患者における化学療法と組み合わせた慢性リンパ球性白血病の治療のために2013年に米国のFDAによって承認された、オビヌツズマブ(CAS登録番号949142−50−1、GAZYVA(登録商標)、Genentech Inc.)である。オビヌツズマブは、Bリンパ球抗原CD20を標的とし、慢性リンパ球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞中心リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を治療する。
【0060】
化学療法剤のさらなる例には、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(スニチニブ(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、国際公開第2007/044515号)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma、Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SARASAR(商標)、SCH66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、チピファルニブ(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、アブラキサン(商標)(Cremophor無含有)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU5271、Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、NEOSAR(登録商標));ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(CC−1065のアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムヌスチン等のニトロソウレア類;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、カリケアマイシンγ1I、カリケアマイシンωI1(Angew Chem.Intl. Ed. Engl.(1994年)33:183-186)等の抗生物質;ダイネミシン、ダイネミシンA;クロドロネート等のビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、ネモルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸アナログ;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤(anti−adrenal);フォリン酸等の葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びサンサミトシン等のメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金アナログ;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(ゼローダ(登録商標)、Roche);イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体が挙げられる。
【0061】
「化学療法剤」の定義にさらに含まれるものは、(i)例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びフェアストン(登録商標)(トレミフェンクエン酸塩)を含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)等、腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;(ii)例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン、Pfizer)、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール、Novartis)及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾ−ル、AstraZeneca)等、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ)等の抗アンドロゲン;(iv)MEK阻害剤(国際公開第2007/044515号)等のプロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子、例えばPKC−α、Raf及びH−Rasの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばオブリメルセン(GENASENSE(登録商標)、Genta Inc.);(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤等のリボザイム;(viii)遺伝子療法ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)等のトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech)等の抗血管新生剤;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体である。
【0062】
「化学療法剤」の定義にさらに含まれるものは、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガミシン(マイロターグ(登録商標)、Wyeth)等の治療用抗体である。
【0063】
本発明のBtk阻害剤と組み合わせた化学療法剤として治療可能性を有するヒト化モノクローナル抗体には、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメシタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パシコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ及びビジリズマブが挙げられる。
【0064】
「代謝物」とは、身体内における指定された化合物又はその塩の代謝によって生成された生成物である。化合物の代謝物は、当該技術分野で公知の常套的技術を使用して同定することができ、化合物の代謝物の活性は、本明細書に記載の試験等の試験を使用して決定することができる。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化及び酵素的切断等から生じ得る。代謝物は、式Iの化合物の求電子性官能基へのBtkのシステインチオールのマイケル付加の逆転によっても形成され得る。したがって、本発明は、本発明の式Iの化合物の代謝生成物を産生するために十分な時間の期間にわたって本発明の式Iの化合物を哺乳類と接触させることを含む方法によって生成された化合物を含む、本発明の化合物の代謝物を含む。
【0065】
用語「添付文書」は、治療用製品の市販の包装中に慣例的に含まれている指示書を指すために使用され、この指示書は、こうした治療用製品の使用に関する指示、使用法、用量、用法、禁忌及び/又は警告についての情報を内包する。
【0066】
用語「キラルな」とは、鏡像となる相手と重ね合わせることができないという特性を有する分子を指すが、用語「アキラルな」とは、鏡像となる相手の上に重ね合わせることができる分子を指す。
【0067】
用語「立体異性体」とは、同一の化学的構成を有するが、空間中の原子又は基の配列が異なる、化合物を指す。
【0068】
「ジアステレオマー」とは、2つ以上の中心性キラリティーを有する立体異性体であって、ジアステレオマーである分子どうしが互いに対して鏡像にならない、立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物性、例えば融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動及びクロマトグラフィー等の高分解能分析手順によって分離してもよい。
【0069】
「光学異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である、ある化合物の2つの立体異性体を指す。
【0070】
本明細書で使用される立体化学的定義及び規約は一般に、S.P.Parker編集、McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company、New York;並びにEliel,E.及びWilen,S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley&Sons,Inc.、New York、1994に従う。本発明の化合物は、不斉中心又はキラル中心を含有してもよく、したがって、異なる立体異性形態で存在し得る。限定されるわけではないがジアステレオマー、光学異性体及びアトロプ異性体、並びにラセミ混合物等のこれらの混合物を含む、本発明の化合物のすべての立体異性形態が、本発明の一部を形成することが目的とされている。数多くの有機化合物は、光学活性な形態で存在し、すなわち、これらの有機化合物は、平面偏光の平面を回転させることができる。光学活性な化合物について記述しているとき、接頭辞D及びL又はR及びSは、当該化合物のキラル中心(一又は複数)の周りにある分子の絶対立体配置を表すために使用される。接頭辞d及びl又は(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転に関する符号を示すために使用されており、(−)又は1は、化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdが前に付いた化合物は、右旋性である。所与の化学的構造に関しては、これらの立体異性体は、互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体は、光学異性体と呼ばれることもあり、こうした異性体の混合物は、しばしば、光学異性体混合物と呼ばれる。光学異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物又はラセミ体と呼ばれており、こうしたラセミ混合物又はラセミ体は、化学反応又は化学的プロセス中に立体選択又は立体特異性が存在していなかった場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」は、光学活性を有さない2つの光学異性体種の等モル混合物を指す。光学異性体は、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)等のキラル分離方法によってラセミ混合物から分離してもよい。分離された光学異性体中のキラル中心における立体配置の割り当ては、暫定的なものである可能性があるので、X線による結晶学的データ等の立体化学決定を待つことになるのだが、説明を目的として構造を表1に示している。
【0071】
用語「互変異性体」又は「互変異性形態」とは、小さなエネルギー障壁を介して相互変換可能である、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピーによる互変異性体としても公知である)は、ケト−エノール異性化及びイミン−エナミン異性化等、プロトンの移動による相互変換を含む。原子価による互変異性体は、結合電子のいくつかが再編成されることによる相互変換を含む。
【0072】
用語「薬学的に許容される塩」とは、生物学的に又は他の観点から望ましくないものでない、塩を表す。薬学的に許容される塩は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。語句「薬学的に許容される」とは、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分及び/又はその物質若しくは組成物によって治療される哺乳類と化学的に及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを指し示す。
【0073】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」とは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸、並びに、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシレート」、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びサリチル酸等、脂肪族化合物類、脂環式化合物類、芳香族化合物類、アリール脂肪族化合物類、複素環式化合物類、カルボン酸類及びスルホン酸類の有機酸から選択される有機酸によって形成された、薬学的に許容される塩を表す。
【0074】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、有機又は無機塩基によって形成された薬学的に許容される塩を表す。許容される無機塩基の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩及びアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される無毒性の有機塩基に由来する塩には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン並びにポリアミン樹脂等、第一級、第二級及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられる。
【0075】
「溶媒和物」とは、1つ又は複数の溶媒分子と本発明の化合物との会合体又は錯体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例には、限定されるわけではないが水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸及びエタノールアミンが挙げられる。
【0076】
用語「EC50」とは、半数効果濃度であり、インビボにおける特定の効果の最大限度の50%を得るために要求される特定の化合物の血漿濃度を表す。
【0077】
用語「Ki」とは、阻害定数であり、受容体への特定の阻害剤の絶対的な結合親和性を表す。Kiは競合結合アッセイを使用して測定され、競合するリガンド(例えば、放射性リガンド)が存在していなかった場合に特定の阻害剤が受容体の50%を占有することになる濃度に等しい。Ki値は、pKi値(−log Ki)に対数変換することができ、値が高くなるほど、力価が指数関数的に大きくなることを指し示す。
【0078】
用語「IC50」とは半数阻害濃度であり、生物学的プロセスの50%阻害をインビトロで得るために要求される特定の化合物の濃度を表す。IC50値は、pIC50値(−log IC50)に対数変換することができ、値が高くなるほど、力価が指数関数的に大きくなることを指し示す。IC50値は絶対値ではないが、実験条件、例えば使用される濃度に依存し、チェン−プルソフ式(Biochem. Pharmacol. (1973) 22:3099)を使用して絶対阻害定数(Ki)に変換することができる。IC70、IC90等の他のパーセント阻害パラメーターを計算してもよい。
【0079】
用語「本発明の化合物(compound of this invention)」及び「本発明の化合物(compound of the present invention)」及び「式Iの化合物」は、式Iの化合物並びにその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物及び薬学的に許容される塩及びプロドラッグを含む。
【0080】
式Iの化合物を含む本明細書で与えられている任意の式又は構造は、こうした式Iの化合物の水和物、溶媒和物及び多形並びにこれらの混合物を表すことも目的としている。
【0081】
式Iの化合物を含む本明細書で与えられている任意の式又は構造は、式Iの化合物の未標識の形態及び同位体標識された形態を表すことも目的としている。同位体標識された化合物は、1個又は複数の原子が、選択された原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えされていることを除いて、本明細書で与えられた式によって示される構造を有する。本発明の化合物中に組み込まれ得る同位体の例には、限定されるわけではないが2H(デューテリウム、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Cl及び125I等、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体が挙げられる。様々な同位体標識された本発明の化合物、例えば、3H、13C及び14C等の放射性同位体が組み込まれた本発明の化合物。このような同位体標識された化合物は、代謝研究、反応速度論的研究、薬物若しくは基質組織分布アッセイを含む陽電子放出断層撮影法(PET)若しくは単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)等の検出技術若しくはイメージング技術、又は患者の放射線治療に有用であり得る。デューテリウム標識された又は置換された本発明の治療用化合物は、分配、代謝及び排泄(ADME)に関係する、改善されたDMPK(薬物代謝及び薬物の薬物動態)特性を有し得る。デューテリウム等のより重い同位体による置換は、代謝安定性の向上に起因した特定の治療的利点、例えばインビボ半減期の延長又は投薬必要量の低減を実現し得る。18F標識された化合物は、PET又はSPECTについての研究に有用であり得る。同位体標識された本発明の化合物及びそのプロドラッグは一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識された試薬を用いることにより、後述するスキーム又は例及び調製で開示された手順を実施することによって調製することができる。さらに、より重い同位体、特にデューテリウム(すなわち、2H又はD)による置換は、代謝安定性の向上、例えばインビボ半減期の延長又は投薬必要量の低減又は治療指数の改善に起因した特定の治療的利点を与え得る。上記との関連におけるデューテリウムが式(I)の化合物中の置換基として考えられると理解しておく。このようなより重い同位体、特にデューテリウムの濃度は、同位体濃縮因子によって定義され得る。本発明の化合物において、特定の同位体だと明確に表されていない任意の原子は、当該原子の任意の安定同位体を表すように意図されている。別途指定のない限り、ある位置が「H」又は「水素」だと明確に表されている場合、その位置は、当該位置での天然存在度による同位体組成において、水素を有すると理解しておく。したがって、本発明の化合物中において、デューテリウム(D)だと明確に表された任意の原子は、デューテリウムを表すように意図されている。
【0082】
求電子性官能基を有するヘテロアリールピリドン及びアザ−ピリドンアミド化合物
本発明は、Btkによってモジュレートされる疾患、状態及び/又は障害の治療に潜在的に有用である、式Ia−Idを含む式Iのヘテロアリールピリドン及びアザ−ピリドンアミド化合物並びにこれらの薬学的製剤を提供する。
【0083】
式Iの化合物は、構造:
I
又はその立体異性体、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩を有する(式中、
が、CR又はNであり、
が、CR又はNであり、
が、CR又はNであり、
、R及びRが、H、F、Cl、CN、−NH、−NHCH、−N(CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH及びC−Cアルキルから独立して選択され、
、X、X及びXが、CH及びNから独立して選択され、
及びYが、CH及びNから独立して選択され、
Zが、O又はNRであり、Rが、H又はC−Cアルキルであり、
Qが、構造:
を有する基から選択され、
が、−CH=CH、−C(CH)=CH、−C(CN)=CH、−C≡CCH及び−C≡CHから選択され、Rが、H及びC−Cアルキルから選択され、
6a、R6b、R7a及びR7bが、H、F、Cl、CN、−NH、−NHCH、−N(CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH及びC−Cアルキルから独立して選択され、
又はR6a及びR7aが、5員、6員又は7員カルボシクリル又はヘテロシクリル環を形成しており、
又はR及びR6aが、5員、6員又は7員ヘテロシクリル環を形成しており、
又はZが窒素である場合、Z及びR7a又はZ及びR6aが、5員、6員又は7員ヘテロシクリル環を形成しており、
が、H、F、Cl、CN、−CHOH、−CH(CH)OH、−C(CHOH、−CH(CF)OH、−CHF、−CHF、−CHCHF、−CF、−C(O)NH、−C(O)NHCH、−C(O)N(CH、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHC(O)CH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOH、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、1−ヒドロキシシクロプロピル、イミダゾリル、ピラゾリル、3−ヒドロキシ−オキセタン−3−イル、オキセタン−3−イル及びアゼチジン−1−イルから選択され、
が、構造:
から選択され、
波線が、結合部位を指し示しており、
アルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールが、F、Cl、Br、I、−CN、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHOH、−CHOCH、−CHCHOH、−C(CHOH、−CH(OH)CH(CH、−C(CHCHOH、−CHCHSOCH、−CHOP(O)(OH)、−CHF、−CHF、−CF、−CHCF、−CHCHF、−CH(CH)CN、−C(CHCN、−CHCN、−COH、−COCH、−COCH、−COC(CH、−COCH(OH)CH、−CONH、−CONHCH、−CON(CH、−C(CHCONH、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−N(CH)COCH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(CHCONH、−N(CH)CHCHS(O)CH、−NO、=O、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCHCHOCH、−OCHCHOH、−OCHCHN(CH、−OP(O)(OH)、−S(O)N(CH、−SCH、−S(O)CH、−S(O)H、シクロプロピル、オキセタニル、アゼチジニル、1−メチルアゼチジン−3−イル)オキシ、N−メチル−N−オキセタン−3−イルアミノ、アゼチジン−1−イルメチル、ピロリジン−1−イル、及びモルホリノから独立して選択される1個又は複数の基で置換されていてもよい。)。
【0084】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、
が、Nであり、
が、Nであり、
が、Nであり、
及びXが、Nであり、X及びXが、Nであり、若しくはX及びXが、Nであり、
及びXが、CHであり、Xが、CFであり、
が、Nであり、
及びXが、Nであり、
が、CHであり、Yが、Nであり、
が、Nであり、Yが、CHであり、
及びYが、それぞれCHであり、
が、−CH=CHであり、
が、H若しくは−CHであり、
6a、R6b、R7a及びR7bが、Hであり、又は
が、−CHOHである
場合を含む。
【0085】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、Rが、
から選択される場合を含む。
【0086】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、式Ia−Id:
Ia
Ib
Ic
Id
の化合物を含む。
【0087】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、基:
が、
から選択される場合を含む。
【0088】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、Zが、窒素であり、Z及びR6aが、5員、6員又は7員ヘテロシクリル環を形成しており、ヘテロシクリル環が、ピロリジニルである場合を含む。
【0089】
式Iの化合物の例示的な実施態様は、表1の化合物を含む。
【0090】
本発明の範囲は、いかなる特定の作用機序、結合特性又は本発明の化合物とBtk等のキナーゼ標的との相互作用にも限定されないが、式Iの化合物の求電子性官能基は、Btkとの間に共有結合を形成し得る。このようにして形成された共有結合は、可逆的に形成されてもよいし、又は不可逆的に形成されてもよい。
【0091】
本発明の式Iの化合物は、不斉中心又はキラル中心を含有してもよく、したがって、異なる立体異性形態で存在し得る。限定されるわけではないがジアステレオマー、光学異性体及びアトロプ異性体、並びにラセミ混合物等のこれらの混合物を含む本発明の化合物のすべての立体異性形態も本発明の一部を形成することが目的とされている。
【0092】
さらに、本発明は、シス−トランス(幾何)異性体及び配座異性体を含む、すべてのジアステレオマーを包摂する。例えば、式Iの化合物が二重結合又は縮合環を組み込んでいる場合、シス形態及びトランス形態並びにこれらの混合物も、本発明の範囲に包摂される。
【0093】
本明細書で示された構造中において、いかなる特定のキラルな原子の立体化学も指定されていない場合、すべての立体異性体が本発明の化合物として想定され、含まれる。立体化学が、特定の立体配置を表す実線のくさび形又は点線によって指定されている場合、その立体異性体は、こうした実線のくさび形又は点線によって指定されているとおりに指定及び定義される。
【0094】
本発明の化合物は、水及びエタノール等の薬学的に許容される溶媒と溶媒和していない形態及び溶媒和した形態で存在し得、本発明が溶媒和した形態と溶媒和していない形態の両方を包摂することが目的である。
【0095】
本発明の化合物は、異なる互変異性形態で存在することもでき、こうしたすべての形態は、本発明の範囲に包摂される。用語「互変異性体」又は「互変異性形態」とは、小さなエネルギー障壁を介して相互変換可能である、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピーによる互変異性体としても公知である)は、ケト−エノール異性化及びイミン−エナミン異性化等、プロトンの移動による相互変換を含む。原子価による互変異性体は、結合電子のいくつかが再編成されることによる相互変換を含む。
【0096】
生物学的評価
酵素活性(又は他の生物活性)の阻害剤としての式Iの化合物の相対的有効性は、各化合物が、あらかじめ定められた程度まで活性を阻害する濃度を決定した後、結果を比較することによって、確立することができる。典型的には、好ましい決定は、生化学的アッセイにおいて活性の50%を阻害する濃度、すなわち、50%阻害濃度又は「IC50」である。IC50値の決定は、当該技術分野で公知の従来の技術を使用して達成することができる。一般に、IC50は、研究対象とするある範囲の濃度の阻害剤の存在下で所与の酵素の活性を測定することによって決定することができる。次いで、実験により得られた酵素活性の値を、使用された阻害剤濃度に対してプロットする。(阻害剤が全く存在しないときの活性に比較した)50%酵素活性を示す阻害剤の濃度は、IC50値として取り扱われる。同様に、他の阻害濃度も、活性の適当な測定によって定義することができる。例えば、設定によっては、90%阻害濃度、すなわち、IC90等を確立することが望ましいこともあり得る。
【0097】
式Iの化合物を、生化学的Btkキナーゼアッセイによって試験した(実施例901)。
【0098】
式Iの化合物を試験するために使用され得る標準的な細胞Btkキナーゼアッセイのための一般手順は、Ramos細胞Btkアッセイである(実施例902)。
【0099】
標準的で細胞を用いる型のB細胞増殖アッセイを使用して、Balb/cマウスの脾臓から精製したB細胞によって式Iの化合物を試験することができる(実施例903)。
【0100】
標準的なT細胞増殖アッセイを使用して、Balb/cマウスの脾臓から精製したT細胞によって式Iの化合物を試験することができる(実施例904)。
【0101】
CD86阻害アッセイを、8−16週齢Balb/cマウスの脾臓から精製した全マウス脾細胞(実施例905)を使用してB細胞活性の阻害について式Iの化合物に対して実施してもよい。
【0102】
B−ALL細胞生存アッセイを式Iの化合物に対して実施して、培養物中のB−ALL生細胞の数を測定することができる(実施例906)。
【0103】
CD69全血アッセイを式Iの化合物に対して実施して、表面IgMとヤギF(ab’)2抗ヒトIgM(実施例907)とを架橋することによって活性化されるヒト全血中のBリンパ球による、CD69の産生を阻害する化合物の能力を決定することができる。CD69は、リンパ球遊走及びサイトカイン分泌に関与する、タイプIIのC型レクチンである。CD69発現は、最も早期に利用可能となっていた白血球活性化の指標のうちの1つを表しており、CD69発現の迅速な誘導は、転写活性化によって起きる(Vazquez等(2009) Jour. of Immunology 2009年10月19日公開、doi:10.4049/jimmunol.0900839)。選択的なBtk阻害剤による抗原受容体刺激の濃度依存性阻害は、リンパ球活性化マーカーCD69の細胞表面発現を誘導する(Honigberg等(2010) Proc. Natl. Acad. Sci. 107(29):13075-13080)。したがって、選択的なBtk阻害剤によるCD69阻害は、特定のB細胞障害の治療的有効性と相互に関係付けられ得る。例示的な式Iの化合物のCD69ヒト血液FACS IC70値を、表1及び表2に示している。
【0104】
例示的な式Iの化合物の細胞傷害活性又は細胞分裂停止活性は、増殖させる哺乳動物腫瘍細胞株を細胞培地中に確立し、式Iの化合物を添加し、約6時間から約5日までの期間にわたって細胞を培養し、細胞生存能力を測定することによって、測定することができる(実施例908)。細胞ベースインビトロアッセイは、生存能力、すなわち増殖(IC50)、細胞傷害性(EC50)及びアポトーシス誘導(カスパーゼ活性化)を測定するために使用され、血液悪性腫瘍及び固形腫瘍に対する臨床的有効性の予測に有用であり得る。
【0105】
式Iの化合物と化学療法剤との組合せのインビトロ力価は、実施例908の細胞増殖アッセイ、Promega Corp.、Madison、WIから市販のCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayによって測定することができる。この均一アッセイ方法は、甲虫類ルシフェラーゼ(米国特許第5583024号、米国特許第5674713号、米国特許第5700670号)の組み換え発現に基づいており、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの定量化に基づいて培養物中の生細胞の数を決定する(Crouch等(1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88、米国特許第6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)Assayは、96ウェル又は384ウェルフォーマットによって実施すると、自動式ハイスループットスクリーニング(HTS)に適合するようになる(Cree等(1995) AntiCancer Drugs 6:398-404)。均一アッセイ手順は、単一の試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を、血清補充済み培地中で培養された細胞に直接添加することを包含する。細胞の洗浄、培地の除去及び複数回のピペッティング工程は要求されない。こうした系は、384ウェルフォーマットにおいて、試薬を添加して混合した後10分で1ウェル当たりわずか15個の細胞をも検出する。
【0106】
均一「添加−混合−測定」フォーマットにより、細胞溶解が起き、存在するATPの量に比例した発光シグナルが発生する。ATPの量は、培養物中に存在する細胞の数に対して正比例する。CellTiter−Glo(登録商標)Assayは、ルシフェラーゼ反応によって生成される「グロータイプ(grow−type)」発光シグナルを発生させるが、このグロータイプ発光シグナルは、使用される細胞型及び培地に応じて、一般に5時間超の半減期を有する。生細胞は、相対発光ユニット(RLU)に反映される。基質である甲虫ルシフェリンは、組み換えホタルルシフェラーゼによって酸化的脱炭酸され、付随してATPがAMPに変換され、光子が発生する。半減期の延長により、試薬注入器を使用する必要性がなくなり、複数のプレートの連続処理又はバッチ式処理に柔軟性がもたらされる。この細胞増殖アッセイは、様々なマルチウェルフォーマット、例えば96ウェル又は384ウェルフォーマットによって使用され得る。データは、照度計又はCCDカメラ型イメージング装置によって記録することができる。ルミネセンス出力は、経時的に測定された相対発光量(RLU:relative light unit)として提供される。
【0107】
例示的な式Iの化合物及び化学療法剤との組合せの抗増殖作用的有効性は、特定の血液学的腫瘍細胞株に対するCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(実施例908)によって測定する。EC50値を、試験された化合物及び組合せについて確立する。
【0108】
自己免疫疾患を治療するための式Iの化合物の投薬は、関節リウマチのマウスモデルにおいて検定することができる。このモデルにおいて、関節炎は、抗コラーゲン抗体及びリポ多糖類を投与することによって、Balb/cマウスにおいて誘導される。Nandakumar等(2003)、Am.J.Pathol 163:1827−1837を参照されたい。別の例において、B細胞増殖性疾患の治療のための式Iの化合物の投薬は例えば、ヒトB細胞リンパ腫細胞(例えば、Ramos細胞)が例えばPagel等(2005)、Clin Cancer Res 11(13):4857−4866に記載の免疫不全マウス(例えば、「ヌード」マウス)に移植される、ヒトからマウスへの異種移植モデルにおいて検査することができる。
【0109】
上記疾患の1つに対する式Iの化合物の治療的有効性は、治療が進行している間でも最適化することができる。例えば、治療される対象は、病徴又は病的状態の軽減と、所与の用量の式Iの化合物を投与することによって得られるインビボBtk活性の阻害とを相互に関係付けるために診断評価を受けてもよい。当該技術分野で公知の細胞アッセイを使用すると、式Iの化合物の存在下又は非存在下におけるBtkのインビボ活性を決定することができる。例えば、活性化Btkがチロシン223(Y223)及びチロシン551(Y551)のところでリン酸化されるため、P−Y223陽性又はP−Y551陽性細胞のホスホ特異的な免疫細胞化学的染色は、例えば染色細胞と未染色細胞とを対比させたFACS解析によって、ある集団の細胞におけるBtkの活性化を検出又は定量化するために使用することができる(Nisitani等(1999)、Proc. Natl. Acad. Sci、USA 96:2221-2226)。したがって、対象に投与される式Iの化合物の量は、対象の病状を治療するために最適なBtk阻害のレベルを維持しようとして必要とされる量として、増大又は減少し得る。
【0110】
一般に、本明細書に記載の方法で使用される式Iの化合物は、インビトロアッセイ、例えば、細胞を用いない型の生化学的アッセイ(acellular biochemical assay)又は細胞機能アッセイにおいて同定され、又は特徴を明らかにする。このようなアッセイは、式Iの化合物のインビトロIC50を決定するために有用である。例えば、細胞を用いない型のキナーゼアッセイは、ある範囲の濃度の候補となる不可逆的Btk阻害剤化合物の非存在下又は存在下におけるキナーゼのインキュベーション後のBtk活性を決定するために使用することができる。実際、式Iの化合物が不可逆的Btk阻害剤である場合、Btkキナーゼ活性は、阻害剤無含有培地によって繰り返し洗浄しても回復されない(Smaill等(1999)、J. Med. Chem. 42(10):1803-1815)。さらに、Btkと候補となる不可逆的Btk阻害剤との間での共有結合的錯体形成は、当該技術分野で公知のいくつかの方法(例えば、質量分析)によって容易に決定され得る、Btkの不可逆的阻害の有用な指標である。例えば、一部の不可逆的Btk−阻害剤化合物は、(例えば、マイケル反応によって)BtkのCys481との間に共有結合を形成し得る。Btk阻害のための細胞機能アッセイは、ある範囲の濃度の式Iの化合物の非存在下又は存在下で細胞株中のBtk媒介性経路を刺激すること(例えば、Ramos細胞におけるBCR活性化)に応答させて、1つ又は複数の細胞エンドポイントを測定することを含む。BCR活性化に対する応答を決定するために有用なエンドポイントには、例えば、Btkの自己リン酸化、Btk標的タンパク質(例えば、PLC−γ)のリン酸化及び細胞質カルシウムの流動が挙げられる。
【0111】
Btkと同じ場所にCys残基を有する一団のキナーゼ(Blk、Bmx、Btk、EGFR、ErbB2、ErbB4、Fgr、Itk、JAK1、JAK2、JAK3、Lck、Lyn、SLK、Src、TEC及びTXK)に対する場合、化合物101は、1μMの薬物濃度における%阻害によって測定すると、イブルチニブより良好なBtkに対する選択性を示した。
【0112】
ペプチドマッピング及びLCMS検出によって、イブルチニブ及び化合物101は、野生型Btkにのみ不可逆的に結合し、Cys−481 Ser突然変異体型Btk(S481C)には不可逆的に結合しないことが判明したため、Cys−481がこうした不可逆的結合に必須であることが指し示された。化合物102は、野生型Btkへの可逆的バインダーであると判明した。
【0113】
表1及び表2の例示的な式Iの化合物を作製し、特徴を明らかにし、本発明の方法に従ったBtkの阻害について試験したが、これらの式Iの化合物は、下記構造及び対応する名称を有する(ChemDraw Ultra、バージョン9.0.1及びChemBioDraw、バージョン11.0、CambridgeSoft Corp、Cambridge MA)。1つより多い名称が式Iの化合物又は中間体に関連している場合、化学的構造が当該化合物を定義するものとする。
【0114】
化合物119を、還元された化合物101の飽和二重結合アナログとして調製した。
119
化合物101は、質量分析法及びX線結晶構造分析により、BTKに共有結合的に結合することが示された。化合物119(BTK LC3K(Ki=0.000963μM)は、BTKに共有結合的に結合しないと予想されていた。
【0115】
式Iの化合物の投与
本発明の化合物は、治療しようとする状態に適した任意の経路によって投与してもよい。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)、経皮、直腸、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、膣内、腹腔内、肺内及び鼻腔内が挙げられる。局所的な免疫抑制治療に関しては、上記式Iの化合物は、移植前に阻害剤を潅流すること又は移植片を阻害剤と接触させることを含む、病巣内投与によって投与してもよい。好ましい経路が、例えばレシピエントの状態に応じて異なり得ることは、理解されよう。上記式Iの化合物が経口投与される場合、上記式Iの化合物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤と一緒にした丸剤、カプセル、錠剤等として調合してもよい。上記式Iの化合物が非経口投与される場合、後で詳述するように、上記式Iの化合物は単位投与注射可能形態において、薬学的に許容される非経口ビヒクルと調合してもよい。
【0116】
ヒト患者を治療するための用量は、式Iの化合物に関しては、約10mgから約1000mgまでの範囲であり得る。典型的な用量は、式Iの化合物に関しては、約100mgから約300mgまでであり得る。用量は、特定の化合物の吸収、分配、代謝及び排泄を含む薬物動態学的特性及び薬力学的特性に応じて、1日1回(QID)、1日2回(BID)又はより頻繁に投与してもよい。さらに、毒性因子は、用量用法レジメンに影響し得る。経口投与される場合、丸剤、カプセル又は錠剤は、指定された期間の時間にわたって、毎日又は頻度をより少なくして摂取することができる。レジメンは、数サイクルの治療法にわたって繰り返してもよい。
【0117】
式Iの化合物による治療の方法
本明細書に記載の方法は、必要としている対象に、治療的有効量の式Iの化合物を含有する組成物を投与することを含む。理論に拘束されるわけではないが、様々な造血細胞機能においてBtkシグナル伝達が担う多様な役割、例えばB細胞受容体活性化は、小分子型Btk阻害剤が、例えば自己免疫疾患、異種免疫状態又は疾患、炎症性疾患、がん(例えば、B細胞増殖性疾患)及び血栓塞栓障害を含む、造血系列に関する数多くの細胞型によって影響され又はこれらの細胞型に影響する様々な疾患の危険性を低減し又はこれらの疾患を治療するために有用であることを示唆している。さらに、本明細書に記載の不可逆的Btk阻害剤化合物は、不可逆的阻害剤との間に共有結合を形成し得るシステイン残基(Cys481残基を含む)を有することによってBtkとの間に相同性を共有する、1つの小さなサブセットになった他のチロシンキナーゼを阻害するために使用してもよい。
【0118】
本発明の式Iの化合物は、免疫障害、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌障害又は神経障害等、Btkに関連した異常な細胞増殖、機能又は挙動に起因した疾患又は障害を患っているヒト又は動物患者を治療するために有用であり、したがって、上記で定義された本発明の化合物を上記ヒト又は動物患者に投与することを含む方法によって治療してもよい。がんを患っているヒト又は動物患者は、上記で定義された本発明の化合物を上記ヒト又は動物患者に投与することを含む方法によって治療してもよい。このようにして治療することにより、患者の状態が好転又は改善され得る。
【0119】
式Iの化合物は、哺乳動物細胞、生物体又は関連の病理学的状態、例えば全身性及び局所性炎症、免疫性炎症又は自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、免疫抑制、臓器移植片拒絶反応、アレルギー、潰瘍性大腸炎、クローン病、皮膚炎、喘息、全身性紅斑性狼瘡、腎外性狼瘡、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強皮症/全身性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)脈管炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、乾癬性関節炎、変形性関節症、スティル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、グレーブス病 シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン−バレー症候群、急性播種性脳炎、アジソン病、オプソクローヌス−ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自律神経失調、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、強皮症及びヴルヴォディニァのインビトロ、in situ及びインビボにおける診断又は治療に有用であり得る。
【0120】
本発明の方法は、関節リウマチ、単関節性関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎、脊椎炎等の関節炎型疾患;ベーチェット病;敗血症、敗血症性ショック、内毒素性ショック、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症及び毒物ショック症候群;敗血症、外傷又は出血に付随する多臓器傷害症候群;アレルギー性結膜炎、春季カタル、ブドウ膜炎及び甲状腺関連眼病等の眼障害;好酸球性肉芽腫;喘息、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎、ARDS、慢性肺炎症性疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患)、珪肺、肺サルコイドーシス、胸膜炎、肺胞炎、脈管炎、気腫、肺炎、気管支拡張症及び肺酸素中毒等の肺疾患又は呼吸器疾患;心筋、脳又は四肢の再灌流傷害;嚢胞性線維症等の線維症;ケロイド形成又は瘢痕組織形成;アテローム性動脈硬化症;全身性紅斑性狼瘡(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症、一部の型の糖尿病及びレイノー症候群等の自己免疫疾患;並びにGVHD及び同種移植片拒絶反応等の移植片拒絶反応障害;慢性糸球体腎炎;慢性炎症性腸疾患(CIBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎及び壊死性腸炎等の炎症性腸疾患;接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬又はじん麻疹等の炎症性皮膚疾患;感染による発熱及び筋肉痛;髄膜炎、脳炎、及び軽微な外傷による脳又は脊髄の傷害等の中枢神経系又は末梢神経系炎症性障害;シェーグレン症候群;白血球漏出を伴う疾患;アルコール性肝炎;細菌性肺炎;抗原−抗体複合体媒介性疾患;血液量減少性ショック;I型糖尿病;急性及び遅延型過敏症;白血球性悪液質及び転移による病状;熱傷;顆粒球輸血関連症候群;並びにサイトカイン誘導性毒性等の疾患を治療することをさらに含む。
【0121】
さらに他の実施態様において、本明細書に記載の方法は、がん、例えば、B細胞増殖性疾患を治療するために使用することができ、B細胞増殖性疾患には、限定されるわけではないがびまん性大B細胞型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクロブリン血症、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病及びリンパ腫様肉芽腫症が挙げられる。
【0122】
本発明の方法は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍を治療することをさらに含む。式Iの化合物によって治療され得るがんの型には、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器がん、食道がん、喉頭がん、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃がん(stomach cancer)、皮膚がん、ケラトアカントーマ、肺がん、類表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺がん、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆管がん、腎臓癌、膵臓がん、骨髄障害、リンパ腫、毛様細胞がん、口腔がん、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口のがん、小腸がん、結直腸がん、大腸がん、直腸がん、脳及び中枢神経系のがん、ホジキン病、白血病、気管支がん、甲状腺がん、肝臓がん及び肝内胆管がん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)、神経膠腫/膠芽細胞腫、子宮内膜がん、メラノーマ、腎臓がん及び腎盂がん、膀胱、子宮体がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、骨髄性白血病、口腔及び咽頭、非ホジキンリンパ腫、メラノーマ並びに絨毛結腸腺腫が挙げられる。
【0123】
本発明の方法は、再灌流傷害、すなわち、組織又は臓器が再灌流後に虚血期間を経験する状況に起因した傷害を患っている又は患う可能性がある、対象の治療に役立ち得る。用語「虚血」とは、動脈血の流入の遮断による限局的な組織の貧血を指す。再灌流に後続する一過性の虚血は、好中球の活性化、及び影響領域中の血管内皮を介した遊出が起きることを特徴とする。次いで、活性化された好中球の蓄積により反応性の酸素代謝物の発生が起こり、この結果、関係のある組織又は臓器の成分を損傷させる。こうした「再灌流傷害」という現象には一般的に、血管発作(全体的虚血及び局所的虚血を含む)、出血性ショック、心筋虚血又は梗塞、臓器移植及び脳血管レン縮等の状態を伴う。例えば、再灌流傷害は、心臓バイパス手順の終了時又は心臓停止中に、血液の受け入れを一旦止められていた心臓が再灌流を開始したときに起きる。Btk活性の阻害は、上述の状況における再灌流傷害の量の低減に帰結し得ると予想される。
【0124】
上記の各状態に関する症候、診断試験及び予後試験は、当該技術分野で公知である。例えば、「Harrison’s Principles of Internal Medicine」、第16版、2004、The McGraw−Hill Companies,Inc.Dey等(2006)、Cytojournal 3(24)及び「Revised European American Lymphoma」(REAL)分類体系(例えば、the National Cancer Instituteが管理しているウェブサイトを参照されたい。)を参照されたい。いくつかの動物モデルが、上記疾患のいずれかを治療するための式Iの化合物の治療的有効用量の範囲を確立するのに有用である。
【0125】
薬学的製剤
ヒトを含む哺乳類の治療的処置のために本発明の化合物を使用するという目的では、本発明の化合物は通常、標準的な製薬慣行に従って薬学的組成物として調合される。こうした本発明の態様によれば、薬学的に許容される希釈剤又は担体と会合した本発明の化合物を含む、薬学的組成物が提供される。
【0126】
本明細書に記載の薬学的製剤には、限定されるわけではないが水性液体分散体、半乳化作用のある分散体、固溶体、リポソーム分散体、エーロゾル、固体剤形、粉末、速放性製剤、放出制御性製剤、速溶融性製剤(fast melt formulation)、錠剤、カプセル、丸剤、放出遅延性製剤、持続放出性製剤、パルス式放出製剤、多粒子製剤、及び、即時制御放出混合型製剤が挙げられる。
【0127】
本明細書に記載の化合物を含む薬学的組成物は、例にすぎないが従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、研和、乳化、噴霧乾燥、カプセル化、封入又は圧縮、パンコーティング、溶融造粒、造粒、流動層噴霧乾燥又はコート処理(例えば、ワースターコート処理(wurster coating))、接線方向コート処理(tangential coating)、トップスプレー法(top spraying)、打錠及び押出成形等による従来の方法によって製造してもよい。典型的な製剤は、本発明の化合物及び担体、希釈剤又は賦形剤を混合することによって調製される。適切な担体、希釈剤及び賦形剤は当業者に周知であり、糖(炭水化物)、ワックス、水溶性及び/又は膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、オイル、溶媒並びに水等の材料が挙げられる。使用される特定の担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物を施用する手段及び目的に依存する。溶媒は一般に、当業者が哺乳類に投与しても安全である(GRAS)と考えている溶媒に基づいて選択される。一般に、安全な溶媒は、水及び水に可溶型の又は水に混和性の他の無毒性溶媒等、無毒性の水性溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)等及びこれらの混合物が挙げられる。製剤は、1つ又は複数のバッファー、バインダー、安定剤、消泡剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤、及び、薬物(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)の安定な若しくは的確な提供を実現し又は薬学的生成物(すなわち、医薬)の製造に役立てるための他の公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0128】
バインダーは、凝集性を付与するものであり、例えば、アルギン酸及びアルギン酸の塩;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース(例えばMethocel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、エチルセルロース(例えば、Ethocel(登録商標))及び微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))等のセルロース誘導体;微結晶性デキストロース;アミロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;多糖類酸;ベントナイト;ゼラチン;ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体;クロスポビドン;ポビドン;デンプン;アルファ化デンプン;トラガカント、デキストリン、糖、例えばショ糖(例えば、Dipac(登録商標))、グルコース、デキストロース、糖蜜、マンニトール、ソルビトール、キシリトール(例えば、Xylitab(登録商標))及びラクトース;天然又は合成ゴム、例えばアカシア、トラガカント、イサポルフスク(isapol husk)ガティガム粘液、ポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidone(登録商標)CL、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL−10)、カラマツアラビノガラクタン、Veegum(登録商標)、ポリエチレングリコール、ワックス及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられる。一般に、20−70%のバインダーレベルが、粉末充填済みゼラチンカプセル製剤において使用されている。錠剤製剤中のバインダー使用レベルは、直接的な圧縮、湿式造粒、ローラー圧縮、又はそれ自体が適度なバインダーとして作用し得る充填剤等の他の賦形剤が使用されるかどうかで変動する。当業者の調剤師ならば、製剤のためのバインダーレベルを決定することができるが、錠剤製剤中で最大70%のバインダー使用レベルが一般的である。
【0129】
製剤は、従来の溶解手順及び混合手順を使用して調製してもよい。例えば、バルク原体(すなわち、本発明の化合物又は安定化された形態の本化合物(例えば、シクロデキストリン誘導体又は他の公知の錯化剤との錯体)を、上記賦形剤の1つ又は複数の存在下で適切な溶媒に溶解する。本発明の化合物は典型的には、容易に制御可能な薬物投薬量を提供して、処方されたレジメンを患者が遵守できるようにするために、薬学的剤形中に調合される。
【0130】
施用のための薬学的組成物(又は製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に応じて、様々な方法で包装することができる。一般に、分配のための物品は、適当な形態の薬学的製剤が内部に収められた容器を含む。適切な容器は当業者に周知であり、ボトル(プラスチック及びガラス)、サシェ剤、アンプル、プラスチック袋及び金属製シリンダー等の材料を含む。容器は、包装の内容物への不注意による利用機会を予防するための不正開封防止用にまとめ上げた要素をさらに含んでいてもよい。さらに、容器は、容器の内容物について記載しているラベルが当該容器上に付着している。ラベルは、適当な警告をさらに含んでいてもよい。
【0131】
本発明の化合物の薬学的製剤は、様々な投与経路及び投与方式のために調製することができる。例えば、所望の度合いの純度を有する式Iの化合物は、凍結乾燥製剤、破砕紛体又は水溶液の形態において、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)第16版、Osol, A.編集)と任意選択的に混合してもよい。製剤は、常温において適当なpH且つ所望の度合いの純度で生理的に許容される担体、すなわち、使用される投薬量及び濃度においてレシピエントにとって無毒性の担体と混合することによって実施してもよい。製剤のpHは、化合物の特定の使用及び濃度に主に依存するが、約3から約8までの範囲であり得る。pH5の酢酸バッファー中の製剤は、適切な実施態様である。
【0132】
本化合物は通常、固体組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として貯蔵することができる。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、特定の様式によって調合、投薬及び投与され、すなわち、医学行動規範との間に一貫性がある量、濃度、スケジュール、経過、ビヒクル及び投与経路によって調合、投薬及び投与される。上記との関連において考慮する因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳類、個体患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール策定及び医療施術者に公知の他の因子が挙げられる。投与しようとする化合物の「治療的有効量」は上述の考慮事項に左右され、過剰増殖性疾患を改善又は治療するために必要な最小限の量である。
【0134】
一般の条件提示として、用量当たりの非経口投与される阻害剤の初期薬学的有効量は、1日当たり患者体重に対して約0.01−100mg/kg、すなわち、約0.1mg/kgから20mg/kgまでの範囲であり、使用される化合物の典型的な初期範囲は、0.3mg/kg/日から15mg/kg/日までである。
【0135】
許容される希釈剤、担体、賦形剤及び安定剤は、使用される投薬量及び濃度においてレシピエントにとって無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の糖(炭水化物);EDTA等のキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成処理用対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書に記載の固体剤形における使用のための適切な担体には、限定されるわけではないがアカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、リン酸エステル、リン酸塩又はリン酸エステル、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、カゼイン酸ナトリウム、大豆レシチン、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、ショ糖、微結晶性セルロース、ラクトース及びマンニトール等が挙げられる。本明細書に記載の固体剤形における使用のための適切な充填剤には、限定されるわけではないがラクトース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、セルロース粉末、デキストロース、デキストレート、デキストラン、デンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、ショ糖、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0136】
医薬品有効成分は、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョン中において、例えばコアセルベーション技術又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルのそれぞれの中に封入されていてもよい。このような技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton, Pa.: Mack Publishing Company、1995);Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.1975;Libetman,H.A.及びLachman,L.編集、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(Lippincott Williams & Willins 1999)で開示されている。
【0137】
式Iの化合物の徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適例には、式Iの化合物を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、こうしたマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとの重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドを含む、注射用ミクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0138】
製剤は、本明細書で詳述された投与経路に適した製剤を含む。製剤は、簡便には、単位剤形で提供することができ、製薬分野で周知の方法のいずれかによって調製してもよい。技術及び製剤は一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.、Easton、PA)に見出される。このような方法は、有効成分を、1つ又は複数の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、有効成分を液体担体又は微粉固体担体又はこれらの両方と均一かつ密接に会合させ、次いで必要ならば、生成物の整形も行うことによって調製される。
【0139】
経口投与に適した式Iの化合物の製剤は、それぞれが所定量の式Iの化合物を含有する丸剤、カプセル、カシェ剤又は錠剤等、別個の単位として調製してもよい。圧縮された錠剤は、バインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤又は分散剤と任意選択的に混合される粉末又は顆粒等、自由自在に流動する形態の有効成分を適切な機械内で圧縮することによって調製してもよい。成形された錠剤は、濡らした粉末状有効成分と不活性液体希釈剤との混合物を適切な機械内で成形することによって作製してもよい。錠剤は、任意選択的にコートすることもできるし、又は切れ目を入れることもでき、任意選択的に、当該錠剤から有効成分を緩やかに放出し又は制御放出するように調合される。錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬カプセル若しくは軟カプセル、例えばゼラチンカプセル、シロップ剤又はエリキシル剤は、経口による使用のために調製してもよい。経口による使用を目的とした式Iの化合物の製剤は、薬学的組成物の製造用として当該技術分野で公知の任意の方法に従って調製してもよく、こうした組成物は、口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤を含む、1つ又は複数の薬剤を含有してもよい。錠剤の製造に適した薬学的に許容される無毒性の賦形剤と混合された有効成分を含有する錠剤も許容される。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;トウモロコシデンプン又はアルギン酸等の顆粒化剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン又はアカシア等の結合剤;並びにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク等の滑沢剤であってもよい。錠剤は、コートなしであってもよいし、又は、消化管中での崩壊及び吸着を遅延させ、これにより、より長期間にわたって持続的な作用を提供するためのマイクロカプセル化を含む公知の技術によってコートしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリル等、時限遅延作用のある材料を単独で使用してもよいし、ワックスと一緒に使用してもよい。
【0140】
「崩壊剤(disintegration agent)」又は崩壊剤(disintegrant)は、物質の解体又は崩壊を容易化する。崩壊剤(disintegration agent)の例には、デンプン、例えば、コーンスターチ若しくはジャガイモデンプン等の天然デンプン、National1551若しくはAmijel(登録商標)等のアルファ化デンプン、又はPromogel(登録商標)若しくはExplotab(登録商標)等のデンプングリコール酸ナトリウム、木材製品等のセルロース、微結晶性セルロース、例えばAvicel(登録商標)、Elceme(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tia(登録商標)及びSolka−Floc(登録商標)、メチルセルロース、クロスカルメロース又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac−Di−Sol(登録商標))、架橋カルボキシメチルセルロース又は架橋クロスカルメロース等の架橋セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム等の架橋デンプン、クロスポビドン、架橋ポリビニルピロリドン等の架橋ポリマー、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩等のアルギネート、Veegum(登録商標)HV(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)等のクレー、寒天、グアーゴム、ローカストビーンゴム、カラヤンゴム、ペクチンゴム又はトラガカントゴム等のゴム、デンプングリコール酸ナトリウム、ベントナイト、天然スポンジ、界面活性剤、カチオン交換樹脂等の樹脂、柑橘類のパルプ、ラウリル硫酸ナトリウム及びデンプンと組み合わせたラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0141】
分散剤及び/又は「粘度調整剤」は、液体媒体又は造粒方法若しくはブレンド方法によって薬物の拡散及び均一性を制御する、材料を含む。一部の実施態様において、こうした薬剤は、マトリックスをコート又は浸食する効率を向上させもする。例示的な拡散促進剤/分散剤には、例えば、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60又は80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP、商業的にはPlasdone(登録商標)として知られる)、及び糖(炭水化物)ベース分散剤、例えば例としてヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、H−−PC−SL及びHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、RPMC K4M、HPMC K15M及びHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S630)、酸化エチレンとホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られる)、ポロキサマー(例えば、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体であるPluronics(登録商標));並びにポロキサミン(例えば、Tetronic908(登録商標)、Poloxamine(登録商標)としても知られており、酸化プロピレン及び酸化エチレンからエチレンジアミンへの逐次付加に由来する四官能性ブロック共重合体である(BASF Corporation、Parsippany、N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25又はポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S−630)、ポリエチレングリコール、例えば、約300から約6000までの分子量又は約3350から約4000までの分子量又は約7000から約5400までの分子量を有し得るポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート−80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば例としてトラガカントゴム及びアラビアゴム、グアーゴム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖類、セルロース系化合物、例えば例としてカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート−80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシ化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシ化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギネート、キトサン並びにこれらの組合せが挙げられる。セルロース又はトリエチルセルロース等の可塑剤は、分散剤として使用することもできる。リポソーム分散体及び半乳化作用のある分散体に特に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、鶏卵に由来の天然ホスファチジルコリン、鶏卵、コレステロール及びミリスチン酸イソプロピルに由来の天然ホスファチジルグリセロールである。
【0142】
「潤滑剤」及び「流動促進剤」とは、材料の接着又は摩擦を予防、低減又は阻害する化合物である。例示的潤滑剤には、例えば、ステアリン酸、水酸化カルシウム、タルク、ナトリウムステアリルルメレート、鉱油等の炭化水素、又は水素化大豆油(Sterotex(登録商標))等の水素化植物油、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール、タルク、ワックス、Stearowet(登録商標)、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG4000)又はCarbowax(商標)等のメトキシポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸マグネシウム又はラウリル硫酸ナトリウム、Syloid(登録商標)、Cab−O−Sil(登録商標)等のコロイダルシリカ、コーンスターチ等のデンプン、シリコーン油及び界面活性剤等が挙げられる。
【0143】
眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の治療に関しては、製剤は好ましくは、例えば0.075%w/wから20%w/wまでの量の有効成分(一又は複数)を含有する、局所軟膏又はクリームとして施用される。軟膏中に調合される場合、有効成分は、パラフィン系基剤又は水混和性軟膏基剤のいずれかと一緒に使用してもよい。代替的には、有効成分は、水中油型クリーム基剤と一緒にしてクリーム中に調合してもよい。所望ならば、クリーム基剤の水性相は、多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)並びにこれらの混合物等、2個以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含んでいてもよい。局所製剤は、望ましくは、皮膚又は他の影響領域を介した有効成分の吸収又は浸透を増進する化合物を含み得る。このような経皮浸透エンハンサーの例には、ジメチルスルホキシド及び関連アナログが挙げられる。本発明のエマルジョンの油性相は、公知の方法により公知の成分から構成され得る。この油性相は、乳化剤のみを含んでいてもよいが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪若しくはオイルとの混合物、又は脂肪とオイルの両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。オイルと脂肪の両方を含むことも好ましい。まとめると、安定剤(一又は複数)の有無にかかわらず乳化剤(一又は複数)は、いわゆる乳化作用のあるワックスを構成しており、油及び脂肪と一緒になったワックスは、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化作用のある軟膏基剤を構成する。本発明の製剤中への使用に適した乳化剤及びエマルジョン安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0144】
式Iの化合物の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性材料を含有する。このような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム等の懸濁化剤、並びに、分散剤又は湿潤剤、例えば天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、酸化アルキレンと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液は、エチル又はn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、ヒドロキシ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸エステル又は塩等の1つ又は複数の防腐剤、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の香味剤及びショ糖又はサッカリン等の1つ又は複数の甘味剤をさらに含有してもよい。
【0145】
式Iの化合物の薬学的組成物は、滅菌注射用水性又は油性懸濁液等、滅菌注射用製剤の形態であってもよい。この懸濁液は、上記で言及された適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って調合してもよい。滅菌注射用製剤は、1,3−ブタンジオール中溶液等、非経口摂取可能な無毒性の希釈剤又は溶媒に溶かした滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよいし、又は凍結乾燥粉末として調製してもよい。使用され得る許容されるビヒクル及び溶媒の中でもとりわけなのが、水、リンゲル液及び塩化ナトリウム等張液である。さらに、滅菌不揮発性油は一般的に、溶媒又は懸濁培地として使用され得る。こうした目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意のブランド品不揮発性油が使用され得る。さらに、オレイン酸等の脂肪酸も、注射剤の調製に同様に使用することができる。
【0146】
単一剤形を生成するために担体材料と混合され得る有効成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変動する。例えば、ヒトへの経口投与を目的とした持効性製剤は、総組成に対して約5%から約95%(重量:重量)までで変動し得る適当で簡便な量の担体材料と混ぜ合わせた、およそ1mgから1000mgまでの活性材料を含有してもよい。薬学的組成物は、投与のための容易に測定可能な量を用意するように調製することができる。例えば、静脈内注入目的の水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な体積の注入を実施できるようにするために、溶液1ミリリットル当たり約3μgから500μgまでの有効成分を含有してもよい。
【0147】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、及び目的のレシピエントの血液を製剤と等張の状態にする溶質、並びに、懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液を含有し得る、水性及び非水性の滅菌注射液を含む。
【0148】
眼への局所投与に適した製剤は、有効成分が有効成分のための適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁した、点眼薬をさらに含む。有効成分は、約0.5%w/wから20%w/wまでの濃度、例えば約0.5%w/wから10%w/wまでの濃度、例えば約1.5%w/wの濃度で上述の製剤中に存在するのが好ましい。
【0149】
口中への局所投与に適した製剤には、通常ショ糖及びアカシア又はトラガカント等の香味剤を主体とする型の有効成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシア等の不活性物質を主体とする型の有効成分を含む香錠;並びに適切な液体担体に溶かした有効成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0150】
直腸投与のための製剤は、例えばココアバター又はサリチレートを含む適切な基剤と一緒になった坐薬として提供してもよい。
【0151】
肺内又は鼻腔投与に適した製剤は、例えば、0.1ミクロンから500ミクロンまでの範囲(0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロン等、ミクロン単位で増えていく0.1ミクロンから500ミクロンの間の範囲の粒径を含む)の範囲の粒径を有し、こうした製剤は、鼻腔経路を介した迅速な吸入又は口を介した吸入によって、肺胞嚢に到達するように投与される。適切な製剤には、有効成分の水性又は油性溶液が挙げられる。エーロゾル又はドライパウダー投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製してもよく、後述する治療又は予防障害においてこれまでに使用されてきた化合物等、他の治療剤と一緒に送達してもよい。
【0152】
膣内投与に適した製剤は、有効成分に加えて適当であると当該技術分野で知られた担体も含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提供してもよい。
【0153】
製剤は、単位用量又は多回用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアル内に包装されていてもよく、使用直前の注射のために滅菌液体担体、例えば水の添加しか必要としないフリーズドライさせた(凍結乾燥させた)状態で貯蔵してもよい。即時注射液及び懸濁液は、先述した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましい単位投与製剤は、本明細書中の上記に記載された1日用量又は単位1日分割用量の有効成分を含有する単位投与製剤、又は、適当なその画分である。
【0154】
したがって、本発明は、獣医学的担体と一緒に上記で定義された少なくとも1つの有効成分を含む、獣医学的組成物をさらに提供する。獣医学的担体は、本組成物を投与するという目的に有用な材料であり、そうでない場合は不活性の又は獣医学的技術分野で許容され且つ有効成分と適合性な固体材料、液体材料又は気体材料であってよい。これらの獣医学的組成物は、非経口投与され、経口投与され、又は所望される任意の他の経路によって投与される。
【0155】
併用療法
式Iの化合物は、単独で使用してもよいし、又は炎症又は過剰増殖性疾患(例えば、がん)などの本明細書に記載の疾患又は障害の治療のためのさらなる治療剤と組み合わせて使用してもよい。特定の実施態様において、式Iの化合物は、組み合わせ医薬製剤において又は併用療法としての投薬レジメンにおいて、抗炎症特性又は抗過剰増殖特性を有し又は炎症、免疫応答障害又は過剰増殖性疾患(例えば、がん)を治療するために有用であるさらなる第2の治療用化合物と混合される。さらなる治療薬は、Bcl−2阻害剤、Btk阻害剤、JAK阻害剤、抗CD20抗体、抗炎症薬、免疫調節剤、化学療法剤、アポトーシス−エンハンサー、神経栄養因子、心血管疾患を治療するための薬剤、肝臓疾患を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液障害を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、及び免疫不全障害を治療するための薬剤であってもよい。第2の治療剤は、NSAID抗炎症薬であってもよい。第2の治療剤は、化学療法剤であってもよい。組み合わせ医薬製剤又は投薬レジメンの第2の化合物は好ましくは、第2の化合物と式Iの化合物とが互いに対して悪影響しないように、式Iの化合物に対する補体活性を有する。このような化合物は、目的の成果のために有効な量と相まって適切に存在する。一実施態様において、本発明の組成物は、NSAID等の治療剤と組み合わせた、式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物又は薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを含む。
【0156】
併用療法は、同時的又は逐次的レジメンとして施行してもよい。逐次的に投与される場合、こうした併用療法は、2回以上の施行にして施行してもよい。組合せ投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する共投与、及びいずれかの順序での逐次的投与を含み、好ましくは、両方の(又はすべての)活性作用物質が生物学的活性を同時に発揮する間に、ある時間の期間が存在する。
【0157】
上記の共投与される薬剤のいずれかのための適切な投薬量は、現在使用されている投薬量であるが、新たに同定された薬剤と他の治療剤又は治療との複合作用(相乗効果)に起因して少なくなることもある。
【0158】
併用療法は、「相乗効果」を提供することができ、「相乗的」であることを実証でき、すなわち、有効成分が一緒に使用された場合に得られる効果が、これらの化合物を別々に使用して生じる効果の合計より大きい。相乗的効果は、有効成分が(1)共調合され、組み合わせる単位投与製剤中に同時に投与若しくは送達され、(2)別個の製剤の代替として若しくは並行して送達され、又は(3)何らかの他のレジメンによる場合に得ることができる。代替療法において送達される場合、相乗的効果は、本化合物が例えば、別個の注射器、別個の丸剤若しくはカプセル、又は別個の注入での異なる注射によって逐次的に投与又は送達された場合に得ることができる。一般に、代替療法中には、有効投薬量の各有効成分が逐次的に、すなわち、段階的に投与されるが、併用療法においては、有効投薬量の2つ以上の有効成分が一緒に投与される。
【0159】
治療法に関する特定の実施態様において、式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物又は薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、本明細書に記載のもの等の他の治療剤、ホルモン剤又は抗体剤と混合してもよいし、同様に、外科療法及び放射線療法と組み合わせてもよい。したがって、本発明による併用療法は、少なくとも1つの式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物又は薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの投与、及び少なくとも1つの他のがん治療法の使用を含む。式Iの化合物(一又は複数)及び他の薬学的に活性な治療剤(一又は複数)の量、並びに投与の相対的タイミングは、所望の複合した治療的効果を得るために選択される。
【0160】
式Iの化合物の代謝物
同様に本発明の範囲に含まれるのが、本明細書に記載の式Iのインビボ代謝生成物である。このような生成物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、マイケル付加の逆転及び酵素的切断等から生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物の代謝生成物を産生するために十分な時間の期間にわたって本発明の化合物を哺乳類と接触させることを含む方法によって生成された化合物を含む、式Iの化合物の代謝物を含む。
【0161】
代謝物生成物は、典型的には、本発明の化合物の放射標識(例えば、14C又はH)同位体を調製し、この放射標識同位体を検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)でラット、マウス、モルモット、サル等の動物又は人間に非経口投与し、代謝が起きるのに十分な時間(典型的には約30秒から30時間まで)を放置し、尿、血液又は他の生物学的試料から変換生成物を単離することによって、同定される。これらの生成物は、標識されているため容易に単離される(他の生成物は、代謝物中で生存するエピトープを結合させることができる抗体の使用によって単離される)。代謝物構造は、従来の方式で決定され、例えば、MS分析、LC/MS分析又はNMR分析によって測定される。一般に、代謝物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で実施される。代謝物生成物は、インビボにおいて見出されない限り、本発明の化合物の治療的投薬のための診断アッセイに有用である。
【0162】
製造品
本発明の別の実施態様において、上記疾患及び障害の治療の治療に有用な材料を内包する製造品又は「キット」が提供される。一実施態様において、キットは、式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物又は薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを含む、容器を含む。キットは、容器上にある又は容器に取り付けられたラベル又は添付文書をさらに含んでいてもよい。用語「添付文書」とは、治療用製品の商業用包装中に慣例的に含まれている指示書を指すために使用され、この商業用包装は、こうした治療用製品の使用に関する指示、使用法、用量、用法、禁忌及び/又は警告についての情報を内包する。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器、ブリスターパック等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、状態を治療するために有効な式Iの化合物又はその製剤を保持することができ、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい。)を有し得る。組成物中の少なくとも1つの活性作用物質は、式Iの化合物である。ラベル又は添付文書は、組成物が、がん等、選択された状態を治療するために使用されることを指し示している。さらに、ラベル又は添付文書は、治療しようとする患者が、過剰増殖性疾患、神経変性、心肥大、疼痛、片頭痛又は神経外傷性疾患若しくは事象等の障害を有する患者であることも指し示し得る。一実施態様において、ラベル又は添付文書は、式Iの化合物を含む組成物が、異常な細胞増殖に起因した障害を治療するために使用することができることを指し示す。ラベル又は添付文書は、組成物が、他の障害を治療するために使用できることも指し示し得る。代替的には又はさらには、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等、薬学的に許容されるバッファーを含む、第2の容器をさらに含んでいてもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及び注射器を含む、使用者の観点から望ましい市販の他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0163】
キットは、式Iの化合物、及び存在する場合には、第2の薬学的製剤の投与に関する指導書をさらに含んでいてもよい。例えば、キットが、式Iの化合物及び第2の薬学的製剤を含む第1の組成物を含む場合、キットは、そのキットを必要としている患者への第1の薬学的組成物及び第2の薬学的組成物の同時投与、逐次投与又は別々にした投与に関する指導書をさらに含んでいてもよい。
【0164】
別の実施態様において、キットは、錠剤又はカプセル等、式Iの化合物の固体経口用形態の送達に適している。このようなキットは好ましくはいくつかの単位投与量を含む。このようなキットは、キットの目的の使用における順番に並べられた投薬量を有するカードを含み得る。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業において周知であり、薬学的単位剤形を包装するために広範に使用されている。所望ならば、備忘録(memory aid)は、例えば、数値、文字又は他のマーキング、又は、投薬量が投与され得る治療スケジュール中の日を表すカレンダー型挿入物の形態で提供することもできる。
【0165】
一実施態様によれば、キットは、(a)式Iの化合物が内部に内包された第1の容器;及び任意選択的に(b)第2の薬学的製剤が内部に内包された第2の容器を含んでいてもよく、第2の薬学的製剤は、抗過剰増殖活性を有する第2の化合物を含む。代替的には又はさらには、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容されるバッファーを含む、第3の容器をさらに含んでいてもよい。キットは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及び注射器を含む、市販されていて使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0166】
キットが式Iの組成物及び第2の治療剤を含む、特定の他の実施態様において、キットは、区分けされたボトル又は区分けされたホイルパケット等、別個の組成物を内包するための容器を含んでいてもよいが、別個の組成物は、区分けされていない単一の容器内に内包されていてもよい。典型的には、キットは、別個の成分の投与に関する指導書を含む。キット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形(例えば、経口及び非経口)で投与され、異なる投薬量間隔で投与され、又は組合せの個別成分の滴定が処方医師によって所望される場合、特に有利である。
【0167】
式Iの化合物の調製
式Iの化合物は、特に本明細書に内包された記載に照らして、化学技術分野で周知のプロセスと同様のプロセスを含む合成経路によって合成してもよく、下記に記載された他の複素環のための合成経路によって合成してもよい:Comprehensive Heterocyclic Chemistry II、Editors Katritzky and Rees、Elsevier、1997、例えば第3巻;Liebigs Annalen der Chemie、(9):1910−16、(1985);Helvetica Chimica Acta、41:1052−60、(1958);Arzneimittel−Forschung、40(12):1328−31,(1990)、これらのそれぞれは、参照により明示的に援用する。出発物質は一般に、Aldrich Chemicals(Milwaukee、WI)等の販売元から入手可能であり、又は、当業者に周知の方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F. Fieser及びMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、第1−23巻、Wiley、N.Y. (1967-2006版)、又は、Beilsteins Handbuch der organischen Chemie、4、Aufl. ed. Springer−Verlag、Berlin、増補も含む(Beilsteinオンラインデータベースを介して入手することもできる)において概略的に記載された方法によって調製される)。
【0168】
式Iの化合物並びに必要な試薬及び中間体の合成に有用な合成化学による形質転換、及び保護基方法(保護及び脱保護)は、当該技術分野で公知であり、例えば、R.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);T.W.Greene及びP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley and Sons(1999);及びL.Paquette編集、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)並びにこれらの後続版に記載のものが挙げられる。
【0169】
式Iの化合物は、個別に調製してもよいし、又は、少なくとも2つ、例えば5つから1,000までの化合物又は10から100までの化合物を含む化合物ライブラリーとして調製してもよい。式Iの化合物のライブラリーは、コンビナトリアル「分割混合」手法によって調製してもよいし、又は、溶液相化学反応若しくは固体相化学反応を使用した当業者に公知の手順による複数の並行合成によって調製してもよい。したがって、本発明のさらなる一態様によれば、少なくとも2つの化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、化合物ライブラリーが提供される。
【0170】
実施例は、式Iの化合物を調製するための例示的方法を提供している。当業者ならば、他の合成経路が式Iの化合物を合成するために使用され得ることは、理解されよう。特定の出発物質及び試薬について、図面及び実施例において図示及び論述されているが、他の出発物質及び試薬は、様々な誘導体及び/又は反応条件を提供するために容易に置換することができる。さらに、記載された方法によって調製された例示的化合物の数多くは、本開示に照らして、当業者に周知の従来の化学反応を使用してさらに修飾することができる。
【0171】
式Iの化合物の調製において、中間体の遠位官能基(例えば、第一級又は第二級アミン)の保護が必要なこともある。こうした保護の必要性は、遠位官能基の性質及び調製方法の条件に応じて変わってくる。適切なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)及び9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。こうした保護の必要性は、当業者ならば容易に判定することができる。保護基及び保護基の使用についての概略的な記載に関しては、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、New York、1991を参照されたい。
【0172】
別途指示がない限り、当該技術分野の技能に含まれる質量分析法、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術及び薬理学に関する従来の方法が使用される。特段の定義が設けられていない限り、本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、及び、医薬及び調剤系の化学との関連で使用される命名法、並びにこれらの化学に関する実験手順及び技術は、当該技術分野で公知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製物、製剤及び送達、並びに患者の治療のために使用することができる。反応及び精製技術は、例えば、製造業者の仕様書のキットを使用して、又は当該技術分野で一般的に達成されるキットを使用して、又は本明細書に記載されたキットを使用して実施することができる。上記技術及び手順は一般に、当該技術分野で周知であり、本明細書を通して引用及び論述された様々な概略的な参考資料及びより具体的な参考資料に記載されている、従来の方法によって実施することができる。
【0173】
式Iの化合物の調製のために有用な実験手順、中間体及び試薬は、国際公開第2011/140488号;米国特許出願第2012/0010191号;国際公開第2013/067274号;米国特許出願第2013/0116235号;国際公開第2013/067277号;米国特許出願第2013/0116245号;国際公開第2013/067260号;米国特許出願第2013/0116262号;国際公開第2013/067264号;米国特許出願第2013/0116246号に見出すことができ、これらは、その全内容が参照により援用される。
【0174】
一般調製用手順
スズキ式カップリング反応は、式Iの化合物及びA−3等の中間体の環に結合するように炭素−炭素結合を形成するために有用である(Suzuki (1991) Pure Appl. Chem. 63:419-422;Miyaura及びSuzuki (1979) Chem. Reviews 95(7):2457-2483;Suzuki (1999) J. Organometal. Chem. 576:147-168)。スズキカップリングは、パラジウムに媒介される、B−2又はB−4等のヘテロアリールハライドとA−1又はA−2等のボロン酸エステルとのクロスカップリング反応である。例えば、B−2は、約1.5当量の4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)と混合してもよく、約3当量の炭酸ナトリウム中に、1モル水溶液及び等しい体積のアセトニトリルとして溶解させてもよい。触媒量以上のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド等の低原子価型パラジウム試薬を添加する。場合によっては、酢酸カリウムを炭酸ナトリウムの代わりに使用して、水層のpHを調整する。次いで反応物を、加圧下においてマイクロ波反応器(Biotage AB、Uppsala、Sweden)内で約140−150℃に10分から30分まで加熱する。内容物を酢酸エチル又は別の有機溶媒で抽出する。有機層のエバポレーション後、ホウ素エステルA−1をシリカ上で精製してもよいし、又は逆相HPLCによって精製してもよい。置換基は、定義されたとおりであり、又は保護された置換基の形態若しくは前駆体である。同様に、臭化物中間体B−4をボロニル化して、A−2を与えることもできる。
【0175】
B−2とA−2とのスズキカップリング又はA−1とB−4とのスズキカップリングは、式Iの化合物又は中間体A−3を与える。ボロン酸エステル(又は酸)(1.5当量)A−1又はA−2、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.05当量)等のパラジウム触媒を、アセトニトリル及び1Mの炭酸ナトリウム水溶液(アセトニトリルと等しい体積)に溶かしたハロ中間体(1当量)B−2又はB−4の混合物に添加する。反応混合物を電子レンジ内で約150℃に約15分加熱する。LC/MSにより、反応が完了しているか又はさらなる時間若しくは試薬を必要としているのかを指し示す。水を混合物に添加し、沈殿した生成物を濾過し、HPLCによって精製して、生成物A−3を得る。置換基は、定義されたとおりであってもよいし、又は、保護された置換基の形態若しくは前駆体であってもよい。Rは、式Iの化合物の調製用の中間体のために有用なアルキル又はアリール等の基である。
【0176】
様々な低原子価型Pd(II)及びPd(0)パラジウム触媒、プレ触媒及びリガンドが、スズキカップリング又はスズキ/ミヤウラカップリング工程(Miyaura, N. (2002) Top. Curr. Chem.、219:11-59;Kotha, S.等(2002) Tetrahedron、58:9633-9695;Bellina, F.等(2004) Synthesis、15:2419-2440;Hassan, J.等(2002) Chem. Rev. 102:1359-1470;Littke, A. F.等(2002) Angew. Chem., Int. Ed. 41:4176-4211;Barder, T. E.ら(2005) J. Am. Chem. Soc.、127:4685-4696;Walker, S. D.等(2004) Angew. Chem., Int. Ed.、43:1871-1876;Yin, J.等(2002) J. Am. Chem. Soc.、124:1162-1163)中に使用され得、PdCl{PtBu(p−R−Ph)}(Guram等(2006) Organic Letters 8(9):1787-1789)、PdCl(PPh、Pd(t−Bu)、PdCldppfCHCl、Pd(PPh、Pd(OAc)/PPh、ClPd[(Pet)]、Pd(DIPHOS)、ClPd(Bipy)、[PdCl(PhPCHPPh)]、ClPd[P(o−トール)、Pd(dba)/P(o−トール)、Pd(dba)/P(フリル)、ClPd[P(フリル)、ClPd(PMePh、ClPd[P(4−F−Ph)、ClPd[P(C、ClPd[P(2−COOH−Ph)(Ph)、ClPd[P(4−COOH−Ph)(Ph)、及びカプセル化触媒Pd EnCat(商標)30、Pd EnCat(商標)TPP30及びPd(II)EnCat(商標)BINAP30(米国特許出願第2004/0254066号)を含む。
【0177】
低原子価型Pd(II)及びPd(0)パラジウム触媒、プレ触媒及びリガンドの例示的な実施態様は、「バックワルド」触媒、パラダサイクル及びリガンドであり、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2,4,6−トリイソプロピルビフェニル(X−Phos、CAS登録番号564483−18−7)及びクロロ(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル)[2−(2’−アミノ−1,1’−ビフェニル)]パラジウム(II)(X−Phosアミノビフェニルパラジウムクロリドプレ触媒、CAS登録番号1310584−14−5)、市販品(Johnson Matthey、West Deptford、NJ、Sigma−Aldrich Fine Chemicals及び他の供給業者)を含む。米国特許第7223879号、米国特許第6395916号、米国特許第6307087号を参照されたい。
【0178】
化合物A−1及びA−2を形成するためのB−2等のヘテロアリールハライド又はB−4等のアリールハライドと、ボロン酸又はボロン酸エステルとの反応は、それぞれ、表3中及び下記に記載されたバックワルドプレ触媒パラダサイクル及びリガンド試薬を用いるバックワルドパラジウム触媒条件下において実施することができる:Biscoe等(2008)J.Am.Chem.Soc.130:6686−6687;Kinzel等(2010)J.Am.Chem.Soc.132:14073−14075;Molander等(2012)J.Am.Chem.Soc. 134:11667−11673;Walker等(2004)Angew.Chem.Int.Ed. 43:1871;Billingsley等(2007)Angew.Chem.Int.Ed. 46:5359−5363;米国特許第6946560号;米国特許第7026498号;米国特許第7247731号;米国特許第7560582号;米国特許第6307087号;米国特許第6395916号;米国特許第7223879号;米国特許第7858784号、これらは、参照により援用される。このような試薬は、市販されている(Johnson Matthey Inc.、Wayne、PA;Sigma Aldrich Fine Chemical、St.Louis、MO;Strem Chemicals,Inc.、Newburyport、MA)。
【0179】
分離方法
式Iの化合物を調製する方法において、反応生成物を相互に分離すること及び/又は反応生成物を出発物質から分離することが有利であり得る。各工程又は一連の工程の所望生成物は、当該技術分野で一般的な技術によって、所望の度合いの均一性になるまで分離及び/又は精製される。典型的には、こうした分離は、多相抽出、溶媒若しくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華又はクロマトグラフィーを包含する。クロマトグラフィーは、例えば、逆相及び順相、サイズ排除、イオン交換、高圧、中圧及び低圧液体クロマトグラフィー方法及び装置;小規模な分析用、疑似移動層(SMB)及び分取薄層又は厚層クロマトグラフィー、並びに、小規模な薄層クロマトグラフィー及びフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む、任意の数の方法を包含し得る。
【0180】
別のクラスの分離方法は、分離可能な所望生成物、未反応の出発物質又は反応副生成物等に結合し又はそうでない場合はこれらを分離可能な状態に変えるように選択される試薬によって、ある混合物を処理することを包含する。このような試薬は、活性炭、分子ふるい又はイオン交換媒体等の吸着剤又は吸収剤を含む。代替的には、試薬は、塩基性材料の場合における酸、酸性材料の場合における塩基、結合試薬、例えば抗体、結合タンパク質、選択的キレート剤、例えばクラウンエーテル又は液/液イオン抽出試薬(LIX)等であり得る。適当な分離方法の選択は、蒸留及び昇華における沸点及び分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の存在の有無、及び、多相抽出における酸性及び塩基性媒体中の材料の安定性等、関係する材料の性質に依存する。
【0181】
ジアステレオマー混合物は、物理化学的差異に基づいて、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化等の当業者に周知の方法によって、個別のジアステレオマーに分離することができる。光学異性体は、ジアステレオマーを分離し、個別のジアステレオ異性体を変換して(例えば、加水分解して)、相当する純粋な光学異性体にする、適当な光学活性化合物(例えば、キラルなアルコール又はモッシャー酸塩化物等のキラル補助剤)との反応により、光学異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換することによって分離することができる。さらに、一部の本発明の化合物は、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であってもよく、本発明の一部として考えられる。光学異性体は、キラルHPLCカラムの使用によって分離することもできる。
【0182】
単一の立体異性体、例えば、立体異性体を実質的に無含有の光学異性体は、光学活性な分割剤を使用したジアステレオマーの形成等の方法を使用してラセミ混合物を分割することによって得てもよい(Eliel, E.及びWilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、New York、1994;Lochmuller, C. H.、(1975) J. Chromatogr.、113(3):283-302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)イオン性のキラル化合物とのジアステレオマー塩を形成し、分別結晶化又は他の方法によって分離すること、(2)キラルな誘導体化試薬によってジアステレオマー化合物を形成し、ジアステレオマーを分離し、純粋な立体異性体に変換すること、並びに(3)キラル条件下に直に置かれている実質的に純粋な又は富化された立体異性体を分離することを含む、任意の適切な方法によって分離及び単離することができる。「Drug Stereochemistry,Analytical Methods and Pharmacology」、Irving W.Wainer編集、Marce Dekker,Inc.、New York(1993)を参照されたい。
【0183】
方法(1)においては、ジアステレオマー塩が、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ及びα−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等の鏡像異性的に純粋でキラルな塩基と、カルボン酸及びスルホン酸等の酸性官能基を有する不斉化合物との反応によって形成され得る。ジアステレオマー塩は、分別結晶化又はイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘導してもよい。アミノ化合物の光学異性体の分離に関しては、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸又は乳酸等のキラルなカルボン酸又はスルホン酸を添加すると、ジアステレオマー塩の形成を起こすことができる。
【0184】
代替的には、方法(2)によって、分割しようとする基質をキラル化合物の一方の光学異性体と反応させて、ジアステレオマー対を形成する(E. and Wilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、1994、p. 322)。ジアステレオマー化合物が、不斉化合物をメンチル誘導体等の鏡像異性的に純粋でキラルな誘導体化試薬を反応させ、続いて、ジアステレオマーを分離し、加水分解して、純粋な又は富化された光学異性体を得ることによって、形成され得る。光学的純度を測定する方法は、ラセミ混合物の塩基又はモッシャーエステル、酢酸α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニル(Jacob III. J. Org. Chem. (1982) 47:4165)の存在において、メンチルエステル、例えば(−)メンチルクロロギ酸エステル等のキラルなエステルを作製すること、及び、アトロプ異性な2つの光学異性体又はジアステレオマーの存在を求めてH NMRスペクトルを分析することを包含する。アトロプ異性な安定ジアステレオマーは、アトロプ異性なナフチルイソキノリンの分離のための方法に従った順相及び逆相クロマトグラフィーによって分離及び単離することができる(国際公開第96/15111号)。方法(3)によって、2つの光学異性体のラセミ混合物は、キラル固定相(「Chiral Liquid Chromatography」(1989) W. J. Lough, Ed.、Chapman and Hall、New York;Okamoto, J. Chromatogr.、(1990) 513:375-378)を使用したクロマトグラフィーによって分離することができる。富化された又は精製された光学異性体は、旋光度及び円二色性等、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を区別するために使用される方法によって区別することができる。
【実施例】
【0185】
実施例101 N−{2−[(6−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル}プロパ−2−エナミド 101
工程1: 5−ブロモ−3−(6−ヒドロキシピリジン−2−イルアミノ)−1−メチルピリジン−2(1H)−オン 101a
還流コンデンサーを備えた100mL丸底フラスコに、6−アミノピリジン−2−オール(1.1g、10.0mmol)、3,5−ジブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(2.67g、10.0mmol)、炭酸セシウム(6.52g、20.0mmol)、キサントホス(576mg、1.0mmol)、Pd(dba)(460mg、0.50mmol)及びDMF(35mL)を充填した。この系に、真空/アルゴンによる3サイクルのフラッシュを施し、100℃で3時間加熱した。次いで系を室温に冷却し、濾過した。濾液をDCM(500mL)で希釈し、HO(80mL×3)で洗浄した。有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物固体を、DCM/MeOH(30:1から15:1まで)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、101a(580mg、20%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]296.0
【0186】
工程2: 2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチルカルバミン酸tert−ブチル 101b
0℃にて無水THF(40mL)に溶かした2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)−ピリジン−2−イルオキシ)エチルカルバミン酸tert−ブチル(500mg、1.70mmol)、2−ヒドロキシエチルカルバミン酸tert−ブチル(1.1g、6.8mmol)及びPPh(1.78g、6.8mmol)の混合物に、アゾジギ酸ジイソプロピル溶液(1.37g、6.8mmol)を滴下した。この混合物を40℃で3時間加熱した。次いで混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物をHOとDCMとに分配した。混合した有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物固体を、DCM/MeOH(60:1から40:1まで)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、101b(520mg、70%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]438.9
【0187】
工程3: 酢酸[4−(5−{[6−(2−{[(tert−ブトキシ)カルボニル]アミノ}エトキシ)ピリジン−2−イル]アミノ}−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)−2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}ピリジン−3−イル]メチル 101d
還流コンデンサーを備えた50mL丸底フラスコに、101b(500mg、1.14mmol)、酢酸[4−(ジヒドロキシボラニル)−2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}ピリジン−3−イル]メチル 101c(452mg、1.14mmol)、KPO(483mg、2.28mmol)、NaOAc(187mg、2.28mmol)、Pd(dppf)Cl(42mg、0.057mmol)及びCHCn/HO(20.0/0.5mL)を充填した。この系に、真空/アルゴンによる3サイクルのフラッシュを施し、次いでN下において95℃で1時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を、DCM/MeOH(70:1から30:1まで)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、101d(400mg、50%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]712.3
【0188】
工程4: 酢酸[4−(5−{[6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イル]アミノ}−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)−2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}ピリジン−3−イル]メチル 101e
101d(400mg、0.56mmol)のDCM(15mL)中溶液に、3M HCl(ジオキサン中)を滴下した。この混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮した。残留した黄色固体を酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、101e(290mg、80%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]612.3
【0189】
工程5: 酢酸(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−4−[1−メチル−6−オキソ−5−({6−[2−(プロパ−2−エナミド)エトキシ]ピリジン−2−イル}アミノ)−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル]ピリジン−3−イル)メチル 101f
101e(250mg、0.387mmol)及びTEA(78mg、0.77mmol)のDCM(10mL)中溶液に、塩化アクリロイル(42mg、0.46mmol)のDCM中溶液を滴下した。この混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮して、101fを黄色固体(粗製物)として得、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。MS−ESI:[M+H]666.4
【0190】
工程6: 101f(257mg、0.387mmol)のTHF/i−PrOH/HO(5.0/3.0/2.0mL)中溶液に、LiOH(46mg、1.95mmol)を室温で添加した。反応物を1時間撹拌した。混合物を水(15mL)で希釈し、DCM(15mL×3)で抽出した。混合した有機層をブライン(10mL)で洗浄し、NaSOで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物固体を逆相分取HPLCによって精製して、101(95mg、2工程で39%)を白色固体として得た。MS−ESI:[M+H]624.2。1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ 8.74 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.53 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 9.70 (s, 1H), 7.73 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.50-7.48 (m, 1H), 7.29-7.27 (m, 1H), 6.85 (s, 1H), 6.46-6.44 (m, 2H), 6.27-6.23 (m, 2H), 6.05-6.00 (m, 1H), 5.61-5.59 (m, 1H), 4.98-4.96 (m, 1H), 4.72-4.70 (m, 1H), 4.55-4.53 (m, 1H), 4.39-4.29 (m, 3H), 4.19-4.16 (m, 2H), 3.96-3.94 (m, 1H), 375-3.73 (m, 4H, 重複), 3.64-3.60 (m, 1H), 2.61-2.59 (m, 2H), 2.53-2.51 (m, 2H), 1.30 (s, 6H).
【0191】
実施例102 N−(シアノメチル)−1−(4−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−カルボキサミド 102
工程1: 1−(4−アミノピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−カルボン酸 102a
マグネティックスターラー及び還流コンデンサーを備えた100mL丸底フラスコに、ピロリジン−3−カルボン酸(1.20g、10mmol)、2−クロロピリミジン−4−アミン(1.30g、10mmol)、イソプロピルアルコール(IPA、40mL)及びTEA(6mL)を充填した。混合物を80℃で終夜(O/N)加熱した。この時間の後、反応物を室温(r.t.)に冷却した。次いで反応物を濾過し、濾過ケーキをDCMで洗浄して、102a(1.4g、67%)を淡黄色固体として得た。MS:[M+H]209.1
【0192】
工程2: 1−(4−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリミジン−2−イル)ピロリジン−3−カルボン酸 102c。
マグネティックスターラー及び還流コンデンサーを備えた100mL丸底フラスコに、10−[4−(5−ブロモ−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2−イル]−4,4−ジメチル−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−9−オン 102b(497mg、1.0mmol)、102a(312mg、1.5mmol)、Pd(dba)(92mg、0.10mmol)、キサントホス(4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、CAS登録番号161265−03−8、116mg、0.20mmol)、CsCO(652mg、2.0mmol)及びDMF(20mL)を充填した。真空/アルゴンによる3サイクルのフラッシュ後、混合物を80℃で4時間加熱した。この時間の後、反応物を室温に冷却した。次いで反応物を濾過し、濾液を減圧下でエバポレートした。残留物を逆相分取HPLCによって精製して、102c(82mg、13%)を白色固体として得た。MS:[M+H]625.4
【0193】
工程3: マグネティックスターラー及び還流コンデンサーを備えた50mL丸底フラスコに、102c(100mg、0.16mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU、152mg、0.40mmol)、トリエチルアミン(TEA、8滴)、THF(10mL)及び2−アミノアセトニトリル(5滴)を充填した。混合物を30℃で5時間加熱した。この時間の後、反応物を室温に冷却し、次いで反応物を濾過し、濾液を減圧下でエバポレートした。残留物を逆相分取HPLCによって精製して、102(30mg、28%)を白色固体として得た。MS:[M+H]663.2。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ 8.88 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.81 (s, 1H), 8.74 (s, 1H), 8.47 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.35 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 6.58-6.55 (m, 2H), 5.02 (s, 1H), 4.53-4.51 (m, 1H), 4.43-4.40 (m, 1H), 4.23-4.15 (m, 重複, 5H), 3.86-3.84 (m, 1H), 3.72-3.69 (m, 1H), 3.62 (s, 3H), 3.60-3.56 (m, 1H), 3.51-3.43 (m, 2H), 3.10-3.08 (m, 1H), 2.62-2.54 (m, 2H), 2.43 (s, 2H), 2.18-2.16 (m, 1H), 2.06-2.04 (m, 1H), 1.22 (s, 6H).
【0194】
実施例103 N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド 103
【0195】
工程1: 3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 103a
DCM(50mL)に溶かした2−ヒドロキシエチルカルバミン酸tert−ブチル(6.4g、40mmol)及びEtN(7.2mL、52mmol)の混合物に、塩化パラトルエンスルホニル、TsCl(8.4g、44mmol)を添加した。混合物を室温(rt)で終夜(ON)撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をEAと水とに分配した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=5/1)によって精製して、4−メチルベンゼンスルホン酸2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル(10.0g、79%)を白色固体として得た。
【0196】
DMF(40mL)に溶かした3,5−ジブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(2.67g、10.0mmol)、6−アミノピリジン−2−オール(1.1g、10.0mmol)、Pd(dba)(460mg、0.5mmol)、キサントホス(576mg、1.0mmol)及びCsCO(6.52g、20.0mmol)の混合物を、100℃で終夜撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をDCMで処理した。沈殿物を濾過によって収集し、乾燥させて、5−ブロモ−3−(6−ヒドロキシピリジン−2−イルアミノ)−1−メチルピリジン−2(1H)−オン 101a(4.0gの粗製物)を褐色固体として得た。
【0197】
DMF(40mL)に溶かした化合物101a(7.0g、23.75mmol)、4−メチルベンゼンスルホン酸2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル(3.0g、9.5mmol)及びCsCO(3.7g、11.4mmol)の混合物を、100℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。残留物をEAで処理し、濾過した。濾液を水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチルカルバミン酸tert−ブチル 101b(650mg、2工程で15%)を黄色固体として得た。HCl(5mL、1,4−ジオキサン中4M、20mmol)に溶かした101b(700mg、1.6mmol)の混合物を、室温で終夜撹拌した。反応混合物を濃縮して、103a(550mg、83%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]341.0
【0198】
工程2: 3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 103b
DCM(15mL)に溶かした103a(900mg、2.4mmol)及びEtN(0.83mL、6.0mmol)の混合物に、塩化アクリロイル(0.23mL、2.88mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、水でクエンチした。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、103b(620mg、66%)を明黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]393.1
【0199】
工程3: N−(2−(6−(1−メチル−2−オキソ−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)アクリルアミド 103c
ジオキサン(16mL)に溶かした103b(250mg、0.64mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)、Pin(570mg、2.23mmol)、Pd(dba)(116mg、0.128mmol)、Xphos(122mg、0.256mmol)及びKOAc(125mg、1.28mmol)の混合物を、N下において65℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、103c(825mgの粗製物)を褐色固体として得た。この物質を次の工程に直接使用した。MS−ESI:[M+H]441.2
【0200】
工程4: アセトニトリル(10mL)及び水(1mL)に溶かした103c(250mg、0.57mmol)、6−(3−ブロモ−5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)フェニル)−6,7,8,9−テトラヒドロジベンゾ[b,d]チエノ[3,2−d]ピリダジン−7(6H)−オン 103d(193mg、0.47mmol)、Pd(dppf)Cl(71mg、0.094mmol)及びKPO(250mg、1.18mmol)の混合物を、N下において90℃で5時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、103(40mg、2工程で10%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.64 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.52-7.49 (m, 1H), 7.35 (s, 1H), 7.27-7.25 (m, 1H), 7.14 (m, 1H), 6.61 (s, 1H), 6.47 (m, 1H), 6.23-6.22 (m, 1H), 5.98-5.92 (m, 1H), 5.51 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.40 (s, 2H), 4.29-4.27 (m, 2H), 3.74 (s, 3H), 3.52 (s, 2H), 3.00-2.98 (m, 2H), 2.88-2.87 (m, 2H), 1.99-1.97 (m, 4H).MS−ESI:[M+H]643.2
【0201】
実施例104 N−[2−[[6−[[5−[2−(6−tert−ブチル−8−フルオロ−1−オキソフタラジン−2−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド 104
工程1: 酢酸(2−(6−tert−ブチル−8−フルオロ−1−オキソフタラジン−2(1H)−イル)−4−クロロピリジン−3−イル)メチル 104b
テトラヒドロフラン、THF(2.5mL)に溶かした6−tert−ブチル−2−(4−クロロ−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2−イル)−8−フルオロフタラジン−1(2H)−オン 104a(150mg、0.42mmol)及びトリエチルアミン、EtN(0.12mL、0.84mmol)の混合物に、塩化アセチル、AcCl(44μl、0.62mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、水でクエンチし、酢酸エチル、EAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、104b(160mg)を無色油状物として得た。MS−ESI:[M+H]404.1
【0202】
工程2: 3−(アセトキシメチル)−2−(6−tert−ブチル−8−フルオロ−1−オキソフタラジン−2(1H)−イル)ピリジン−4−イルボロン酸 104c
ジオキサン(5mL)に溶かした104b(150mg、0.37mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)、Pin(379mg、1.48mmol)、Pd(dppf)Cl(28mg、0.037mmol)、Xphos(35mg、0.074mmol)及びKOAc(108mg、1.11mmol)の混合物を、N下において65℃で15時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。残留物をDCM/PE(1mL/20mL)で洗浄し、濾過した。濾液を濃縮して、104c(100mg、66%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]414.2
【0203】
工程3: 酢酸(4−(5−(6−(2−アクリルアミドエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)−2−(6−tert−ブチル−8−フルオロ−1−オキソフタラジン−2(1H)−イル)ピリジン−3−イル)メチル 104d
アセトニトリル(2mL)及び水(0.2mL)に溶かした104c(256mg、0.62mmol)、3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 103b(120mg、0.31mmol)、Pd(dppf)Cl(47mg、0.062mmol)及びKPO(131mg、0.62mmol)の混合物を、N下において90℃で3時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を石油エーテル、PEで洗浄して、104d(160mg)を褐色固体として得た。この物質を、次の工程に直接使用した。
【0204】
工程4: THF/i−PrOH/水(2.0mL/1.2mL/0.8mL)に溶かした104d(140mg、0.21mmol)及びLiOH(44mg、1.05mmol)の混合物を、室温で1時間撹拌した。混合物をEAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、104(10mg、2工程で10%)を明黄色固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.72-8.66 (m, 2H), 8.33 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.59-7.47 (m, 6H), 6.51 (s, 1H), 6.44 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.24-6.16 (m, 2H), 5.99-5.94 (m, 1H), 5.50 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.58-4.48 (m, 2H), 4.28-4.21 (m, 2H), 3.99-3.57 (m, 5H), 1.43 (s, 9H).MS−ESI:[M+H]640.3
【0205】
実施例105 N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 105
工程1: 6−ブロモピリジン−2−アミン(17.2g、100mmol)、BocO(45.9mL、200mmol)、EtN(40.4mL、300mmol)、DMAP(610mg、5.0mmol)及びt−BuOH(200mL)の混合物を、60℃で16時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、濾過し、乾燥させて、N,N−ビス−Boc−6−ブロモピリジン−2−アミン 105a(24.0g、65%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.58-7.25 (m, 3H), 1.46 (s, 18H).
【0206】
工程2: ジオキサン(100mL)に溶かした105a(3.72g、10mmol)、2−アミノエチルカルバミン酸tert−ブチル(1.60g、10mmol)、Pd(dba)(91.6mg、0.1mmol)、キサントホス(116mg、0.2mmol)、CsCO(9.78g、30mmol)の混合物を脱気し、窒素下において95℃で6時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA/PE=1/1)によって精製して、N,N−ビス−Boc−6−(2−N−Boc−アミノエチル)ピリジン−2−アミン 105b(2.62g、58%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]453.3
【0207】
工程3: ジオキサン(50mL)に溶かした105b(4.52g、10mmol)の混合物に、HCl(ジオキサン中4M、10mL、40mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮して、N2−(2−アミノエチル)ピリジン−2,6−ジアミン塩酸塩 105c(1.27g、84%)を黄色固体として得た。
【0208】
工程4: DCM(50mL)に溶かした105c(1.88g、10mmol)、アクリル酸(720mg、10mmol)、HATU(3.80g、10mmol)及びDIPEA(6.97mL、40mmol)の混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA/MeOH=4/1)によって精製して、N−(2−(6−アミノピリジン−2−イルアミノ)エチル)アクリルアミド 105d(1.07g、52%)を淡黄色油状物として得た。
【0209】
工程5: ジオキサン(100mL)に溶かした105d(2.06g、10mmol)、3,5−ジブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(2.65g、10mmol)、Pd(dba)(91.6mg、0.1mmol)、キサントホス(116mg、0.2mmol)、CsCO(9.78g、30mmol)の混合物を脱気し、窒素下において100℃で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA/PE=5/1)によって精製して、N−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)アクリルアミド 105e(2.54g、65%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]394.1。
【0210】
工程6: ACN(10mL)及びHO(2mL)に溶かした105e(235mg、0.601mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(299mg、0.601mmol)、Pd(dppf)Cl(42.8mg、0.06mmol)及びKPO(382mg、1.80mmol)の混合物を脱気し、窒素下において85℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(EA/PE=4/1)によって精製して、N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 105f(125mg、31%)を褐色固体として得た。MS−ESI:[M+H]684.3
【0211】
工程7: THF(6mL)、i−PrOH(2mL)及びHO(2mL)に溶かした105f(125mg、0.183mmol)の混合物に、LiOH・HO(37mg、0.915mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮した。残留物を水とDCMとに分配した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をEAで洗浄し、乾燥させて、105(73mg、60%)を灰色固体として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 8.56 (s, 1H), 8.48 (s, 1H), ), 8.20 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 7.42(s, 1H), 7.38-7.32(m, 2H), 7.23(t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.52(s, 1H), 6.35(d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.21-6.15(m, 1H), 6.05-6.02(m, 1H), 5.95(d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.73(s, 1H), 4.33(s, 2H), 3.59(s, 3H), 3.28-3.25(m, 5H), 2.93(bs, 2H), 2.84(bs, 2H), 1.88(bs, 4H).ESI−LCMS:m/z=642[C34H34FN7O5+H]+
【0212】
実施例106 N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]ブタ−2−イナミド 106
工程1: アセトニトリル(10mL)及び水(1mL)に溶かしたN−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)ブタ−2−イナミド 116a(224mg、0.45mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(240mg、0.59mmol)、Pd(dppf)Cl(90mg、0.12mmol)及びKPO(250mg、1.18mmol)の混合物を、N下において90℃で3時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮して、N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]ブタ−2−イナミド 106a(330mgの粗製物)を褐色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=696.8。この物質を、次の工程に直接使用した。
【0213】
工程2: THF/i−PrOH/水(5.0mL/3.0mL/2.0mL)に溶かした106a(330mg、0.47mmol)及びLiOH・HO(196mg、4.67mmol)の混合物を、室温で1時間撹拌した。混合物をEAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、106(30mg、2工程で8%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.52 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.52 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.13-7.10 (m, 1H), 6.69 (s, 1H), 6.52 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.22 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.34 (s, 2H), 4.27 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.98-2.97 (m, 2H), 2.87-2.85 (m, 2H), 1.99-1.96 (m, 4H), 1.86 (s, 3H).ESI−LCMS:m/z=655[C34H31FN6O5S+H]+
【0214】
実施例107 N−[(1S)−2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]−1−メチル−エチル]プロパ−2−エナミド 107
工程1: メタンスルホン酸(S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロピル 107a
DCM(50mL)に溶かした(S)−tert−ブチル1−ヒドロキシプロパン−2−イルカルバメート(3.0g、17.1mmol)及びEtN(4.8mL、34.2mmol)の氷冷混合物に、メタンスルホニルクロリド、MsCl(1.33mL、17.1mmol)を滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、DCMで希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、107a(3.72g、86%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 4.044-4.033 (d, 2H), 3.164 (s, 3H), 1.385 (s, 9H), 1.065-1.051 (d, 3H)
【0215】
工程2: (S)−tert−ブチル1−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)プロパン−2−イルカルバメート 107b
DMF(20mL)に溶かした107a(964mg、5.5mmol)、5−ブロモ−3−(6−ヒドロキシピリジン−2−イルアミノ)−1−メチルピリジン−2(1H)−オン 101a(4gの粗製物、16.5mmol)、CsCO(5.38g、11mmol)の混合物を、95℃で16時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1)によって精製して、107b(550mg、22%)を褐色固体として得た。MS−ESI:[M+H]453.1
【0216】
工程3: (S)−3−(6−(2−アミノプロポキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 107c
DCM(10mL)に溶かした107b(550mg、1.21mmol)の混合物を、HCl(ジオキサン中4M、3mL、12mmol)で処理した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、飽和NaCOでクエンチし、DCMで抽出した。混合した抽出物をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、107c(400mg、1.03mmol)を褐色固体として得た。MS−ESI:[M+H]352.9
【0217】
工程4: (S)−N−(1−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)プロパン−2−イル)アクリルアミド 107d
DCM(20mL)に溶かした107c(390mg、1.0mmol)及びTEA(0.53ml、3.0mmol)の氷冷混合物に、塩化アクリロイル(0.23ml、2.0mmol)を滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、水でクエンチした。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=10/1)によって精製して、107d(284mg、70%)を褐色固体として得た。MS−ESI:[M+H]409.0
【0218】
工程5: 4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g
4−クロロ−2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}ピリジン−3−カルバルデヒド 107eを、米国特許第8716274号、実施例108、図8の中間体108aのための手順に従って、米国特許8729072、実施例103eの4,4−ジメチル−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−9−オンから調製した。107e(12.0g、35.0mmol)のMeOH(40mL)及びDCM(40mL)中溶液に、NaBH(1.83g、38.4mmol)を小分けにして0℃で添加した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、水でクエンチし、濃縮した。残留物をEAとブラインとに分配した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。粗生成物4−クロロ−2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}ピリジン−3−カルビノール 107fを、さらに精製することなく次の工程に使用した(9.6g、80%)。EtOH(200mL)に溶かした化合物107f(9.6g、27.8mmol)、テトラヒドロキシジボロラン、次亜ジボロン酸(hypodiboric acid)(7.43g、83.5mmol)、Xphos−Pd−G2(218mg、0.278mmol)、Xphos(321mg、0.556mmol)及びKOAc(6.85g、83.5mmol)の混合物を、80℃で1時間加熱し、濃縮した。残留物を飽和KCO(100mL)に溶解させ、DCMで4回抽出した。有機相を廃棄し、水層を濃HClで中和した。白色沈殿物が発生したら、懸濁液をDCMで抽出した。有機層を混合し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、107gを灰色固体(6.21g、53%)として得た。
【0219】
工程6: アセトニトリル(20mL)及び水(5ml)に溶かした107d(150mg、0.37mmol)、107g(125mg、0.37mmol)、Pd(dppf)Cl(27mg、10mmol%)及びKPO(235mg、1.11mmol)の混合物を、窒素下において85℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮した。残留物を分取TLC(DCM/MeOH=30/1)によって精製して、107(80mg、34%)を黄色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.61-8.58 (m, 2H), 8.10 (bs, 1H), 7.52-7.45(m, 3H), 7.38-7.34 (m, 2H), 6.86(d, J = 7.6Hz, 1H), 6.51(s, 1H), 6.15(bs, 2H), 6.15-6.01 (m, 1H), 5.56(bs, 1H), 4.97(bs, 1H), 4.39-4.33(m, 2H), 4.19-4.03(m, 6H), 3.87(bs, 1H), 3.61(s, 3H), 2.56-2.42 (m, 4H), 1.21(s, 6H), 0.97-0.91 (m, 3H).ESI−LCMS:m/z=638[C35H39N7O5+H]+
【0220】
実施例108 N−[(1S)−2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]−1−メチル−エチル]プロパ−2−エナミド 108
工程1: 酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(ブロモ)フェニル)メチル 108b
8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−6−オンを、米国特許第8716274号、実施例191dの手順に従って調製し、(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(ブロモ)フェニル)カルビノール 108aに変換した。THF(50mL)に溶かした108a(4.1g、10mmol)及びEtN(1.95mL、14mmol)の混合物に、AcCl(0.85mL、12mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、水で希釈し、EAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、化合物108b(4.0g)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]451.0
【0221】
工程2: 酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c
ジオキサン(80mL)に溶かした化合物108b(4.5g、10mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)、Pin(7.6g、30mmol)、Pd(dppf)Cl(378mg、0.5mmol)及びKOAc(2.9g、30mmol)の混合物を、N下において90℃で5時間撹拌した。反応混合物を濃縮した。残留物をPE/EA(40mL/2mL)によってスラリー化し、濾過して、化合物108c(3.5g、70%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]498.9
【0222】
工程3: N−[(1S)−2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]−1−メチル−エチル]プロパ−2−エナミド 108d
アセトニトリル(20mL)及び水(5ml)に溶かした(S)−N−(1−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)プロパン−2−イル)アクリルアミド 107d(150mg、0.37mmol)、108c(200mg、0.40mmol)、Pd(dppf)Cl(27mg、10mol%)及びKPO(235mg、1.11mmol)の混合物を、窒素下において85℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮した。残留物を分取TLC(DCM/MeOH=30/1)によって精製して、108d(70mgの粗製物)を黄色固体として得た。
【0223】
工程4: THF(6mL)、i−PrOH(2mL)及びHO(2mL)に溶かした108d(70mg、0.1mmol)の混合物に、LiOH・HO(42mg、1mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、108(20mg、2工程で8%)を黄色固体として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 8.61 (d, J = 10 Hz, 2H), 8.49 (s, 1H), 8.04-8.03 (m, 1H), 7.52-7.50(m, 2H), 7.40-7.35(m, 2H), 6.87(d, J = 8 Hz, 1H), 6.21-6.15(m, 2H), 6.05-6.02(m, 1H), 5.54(d, J = 10 Hz, 1H), 4.73(bs, 1H), 4.30 (bs, 2H), 4.15(bs, 2H), 4.02(bs, 1H), 3.61(s, 3H), 2.93(bs, 2H), 2.84(bs, 2H), 1.86(bs, 4H), 0.97(bs, 3H).ESI−LCMS:m/z=657.3[C34H33FN6O5S+H]+
【0224】
実施例109 N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 109
アセトニトリル(10mL)及びHO(2mL)に溶かしたN−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)アクリルアミド 105e(100mg、0.255mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(86mg、0.255mmol)、Pd(dppf)Cl(20mg、10mol%)、キサントホス(30mg、20mol%)及びKPO(160mg、0.765mmol)の混合物を、窒素下において85℃で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を分取HPLCによって精製して、109(10mg、6%)を黄色固体として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 8.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.46 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.22 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 8.18(s, 1H), 7.55(s, 1H), 7.35(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.24(t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.57 (s, 1H), 6.44(bs, 1H), 6.38(d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.19-6.14(m, 1H), 6.06-6.02(m, 1H), 5.96(d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.55(d, J = 12.5 Hz, 1H), 5.09(bs, 1H), 4.52-4.43(m, 2H), 4.25-4.19(m, 3H), 3.86-3.84(m, 1H), 3.61(s, 3H), 3.29-3.27(m, 2H), 3.24-3.22(m, 2H), 2.59-2.51(m, 2H), 2.42(s, 2H), 1.22(s, 6H).ESI−LCMS:m/z=623.0[C34H38N8O4+H]+
【0225】
実施例110 N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−メチル−アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 110
工程1: DMF(50mL)に溶かしたN,N−ビス−Boc−6−ブロモピリジン−2−アミン 105a(5.0g、13.4mmol)、2−(メチルアミノ)エチルカルバミン酸tert−ブチル(3.5g、20.0mmol)、Pd(dba)(610mg、0.67mmol)、キサントホス(774mg、1.34mmol)及びCsCO(10.9g、31.5mmol)の混合物を、N下において95℃で7時間撹拌した。混合物をろ過し、濾液をEA(50mL)で希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=9/1)によって精製して、N,N−ビス−Boc−6−(2−N−Boc−1−メチルアミノエチル)ピリジン−2−アミン 110a(ESI−LCMS:m/z=467.3)及びN−Boc−6−(2−N−Boc−1−メチルアミノエチル)ピリジン−2−アミン 110b(ESI−LCMS:m/z=367.3)の混合物、2.0g、40%を黄色固体として得た。
【0226】
工程2: HCl(10mL、1,4−ジオキサン中4M、40mmol)に溶かした110a及び110b(2.0g、4.3mmol)の混合物を、室温で7時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、tert−ブチル6−((2−アミノエチル)(メチル)アミノ)ピリジン−2−イルカルバメート塩酸塩 110c(1.2g、93%)を黄色固体として得、これを次の工程に直接使用した。ESI−LCMS:m/z=267.2
【0227】
工程3: DCM(30mL)に溶かした110c(1.2g、4.5mmol)、アクリル酸(0.37mL、5.4mmol)、HATU(2.05g、5.4mmol)及びDIPEA(4.6mL、10.8mmol)の混合物を、室温で終夜撹拌した。混合物を水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、tert−ブチル6−((2−アクリルアミドエチル)(メチル)アミノ)ピリジン−2−イルカルバメート 110d(1.2g、75%)を褐色油状物として得た。この物質を次の工程に直接使用した。ESI−LCMS:m/z=321.3
【0228】
工程4: DCM(10.0mL)に溶かした110d(2.0g、6.25mmol)及びTFA(2.0mL)の混合物を、室温で終夜撹拌した。混合物を濃縮し、EA(30mL)で希釈し、1M NaOHで中和した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取TLC(PE/EA=1/1)によって精製して、N−(2−((6−アミノピリジン−2−イル)(メチル)アミノ)エチル)アクリルアミド 110e(550mg、40%)を黄色油状物として得た。ESI−LCMS:m/z=221.2
【0229】
工程5: DMF(10mL)に溶かした110e(400mg、1.82mmol)、3,5−ジブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(534mg、2.0mmol)、Pd(dba)(83mg、0.091mmol)、キサントホス(105mg、0.182mmol)及びCsCO(1.48g、4.55mmol)の混合物を、N下において95℃で7時間撹拌した。混合物をEA(50mL)で希釈し、濾過した。濾液を水で洗浄し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=1/2)によって精製して、N−(2−((6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イル)(メチル)アミノ)エチル)アクリルアミド 110f(160mg、22%)を黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=408.0
【0230】
工程6: アセトニトリル(5mL)及び水(1mL)に溶かした110f(80mg、0.20mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(83mg、0.22mmol)、Pd(dppf)Cl(15mg、0.02mmol)及びKPO(106mg、0.5mmol)の混合物を、N下において90℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取TLC(EA/MeOH=20/1)によって精製して、110(60mg、48%)を明黄色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.63 (s, 1H), 8.46-8.45 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.81 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.41-7.34 (m, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 6.19-6.18 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.03-5.95 (m, 2H), 5.72-5.65 (m, 1H), 5.42-5.39 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 4.96-3.98 (m, 7H), 3.71 (s, 3H), 3.53-3.22 (m, 3H), 2.99 (s, 3H), 2.57 (s, 2H), 2.51 (s, 2H), 1.27 (s, 6H).ESI−LCMS:m/z=637[C35H40N8O4+H]+
【0231】
実施例111 N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−メチル−アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 111
工程1: アセトニトリル(5mL)及び水(1.0mL)に溶かしたN−(2−((6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イル)(メチル)アミノ)エチル)アクリルアミド 110f(120mg、0.3mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(179mg、0.36mmol)、Pd(dppf)Cl(23mg、0.03mmol)及びKPO(159mg、0.75mmol)の混合物を、N下において90℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取TLC(EA/MeOH=25/1)によって精製して、N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−メチル−アミノ]エチル]プロパ−2−エナミド 111a(150mg、60%)を明黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=698.2
【0232】
工程2: THF/i−PrOH/水(2.0mL/1.0mL/1.0mL)に溶かした111a(130mg、0.186mmol)及びLiOH・HO(40mg、0.93mmol)の混合物を、室温で2時間撹拌した。混合物をEAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取TLC(DCM/MeOH=20/1)によって精製して、111(40mg、33%)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.53 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.47 (s, 1H), 7.39-7.35 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.26-7.23 (m, 1H), 7.10-7.08 (m, 1H), 6.64 (s, 1H), 6.18-6.16 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.08-6.00 (m, 2H), 5.85-5.79 (m, 1H), 5.47-5.44 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 4.30-4.28 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 4.02-3.99 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.75-3.69 (m, 5H), 3.47-3.45 (m, 2H), 3.02-2.98 (m, 5H), 2.86 (m, 2H),1.98 (m, 4H).ESI−LCMS:m/z=656[C34H34FN7O4S+H]+
【0233】
実施例112 N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]−N−メチル−プロパ−2−エナミド 112
工程1: DCM(100mL)に溶かした2−(メチルアミノ)エタノール(5.0g、66.6mmol)の混合物に、(Boc)O(15.0g、67.9mmol)のDCM(20mL)中溶液を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、EA(100mL)で希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、2−ヒドロキシエチル(メチル)カルバミン酸tert−ブチル 112a(10.0g、86%)を無色油状物として得た。
【0234】
工程2: DCM(100mL)に溶かした112a(9.0g、51mmol)及びEtN(18.6mL、51mmol)の混合物に、TsCl(9.77g、51mmol)を添加した。混合物を室温で4時間撹拌し、濃縮した。残留物をEAで希釈し、水で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、4−メチルベンゼンスルホン酸2−(tert−ブトキシカルボニル(メチル)アミノ)エチル 112b(10.0g、61%)を明黄色油状物として得た。ESI−LCMS:m/z=230.0
【0235】
工程3: DMF(40mL)に溶かした112b(3.3g、10mmol)、5−ブロモ−3−(6−ヒドロキシピリジン−2−イルアミノ)−1−メチルピリジン−2(1H)−オン 101a(7.4g、25mmol)及びCsCO(4.1g、12.5mmol)の混合物を、100℃で4時間撹拌した。混合物をEAと水とに分配した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル(メチル)カルバミン酸tert−ブチル 112c(1.0g、22%)を黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=454.9
【0236】
工程4: HCl(5mL、1,4−ジオキサン4M、20mmol)に溶かした112c(900mg、1.99mmol)の混合物を、室温で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、5−ブロモ−1−メチル−3−(6−(2−(メチルアミノ)エトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)ピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 112d(660mg、85%)を黄色固体として得た。この物質を、次の工程に直接使用した。ESI−LCMS:m/z=354.9(遊離塩基)
【0237】
工程5: DCM(20mL)に溶かした112d(800mg、2.27mmol)及びEtN(0.79mL、5.67mmol)の混合物に、塩化アクリロイル(0.23mL、2.84mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、水でクエンチした。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、N−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)−N−メチルアクリルアミド 112e(250mg、27%)を明黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=407.0
【0238】
工程6: アセトニトリル(5mL)及び水(1mL)に溶かした112e(200mg、0.5mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(185mg、0.55mmol)、Pd(dppf)Cl(37mg、0.05mmol)及びKPO(265mg、1.25mmol)の混合物を、N下において90℃で16時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取TLC(EA/MeOH=25/1)によって精製して、112(70mg、22%)を明黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 80℃): δ 8.47-8.45 (m, 2H), 8.34 (s, 1H), 7.51 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 6.80 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 6.69-6.58 (m, 1H), 6.55 (s, 1H), 6.19 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.03-5.97(m, 1H), 5.53 (bs, 1H), 4.76 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 4.48-4.46 (m, 2H), 4.32 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 4.21-4.17 (m, 2H), 3.67 (t, J = 5.1 Hz, 2H), 3.61(s, 3H), 3.04 (s, 3H), 2.88 (bs, 2H), 2.57 (s, 2H), 2.44 (s, 2H), 1.23 (s, 6H).ESI−LCMS:m/z=638.0[C35H39N7O5+H]+
【0239】
実施例113 N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]−N−メチル−プロパ−2−エナミド 113
工程1: アセトニトリル(5mL)及び水(0.5mL)に溶かしたN−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)−N−メチルアクリルアミド 112e(100mg、0.25mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(187mg、0.375mmol)、Pd(dppf)Cl(19mg、0.025mmol)及びKPO(133mg、0.625mmol)の混合物を、N下において90℃で6時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取TLC(PE/EA=1/4)によって精製して、N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]−N−メチル−プロパ−2−エナミド 113a(100mg、57%)を明黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]699.2
【0240】
工程2: THF/i−PrOH/水(3.0mL/1.0mL/1.0mL)に溶かした113a(80mg、0.115mmol)及びLiOH・HO(24mg、0.573mmol)の混合物を、室温で6時間撹拌した。混合物をEAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取TLC(EA/MeOH=25/1)によって精製して、113(50mg、67%)を白色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 80℃): δ 8.42 (s, 2H), 8.35 (s, 1H), 7.52 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.33-7.30 (m, 2H), 6.81 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.68-6.59 (m, 1H), 6.19 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.05-5.99 (m, 1H), 5.56 (m, 1H), 4.37-4.32 (m, 2H), 3.68 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 3.62 (s, 3H), 3.07 (s, 3H), 2.95-2.86 (m, 6H), 1.91-1.89 (m, 4H).ESI−LCMS:m/z=657.3[C34H33FN6O5S+H]+
【0241】
実施例114 N−[(3S)−1−[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−3−ピペリジル]プロパ−2−エナミド 114
工程1: DMF(50mL)に溶かしたN,N−ビス−Boc−6−ブロモピリジン−2−アミン 105a(5.0g、13.4mmol)、(S)−tert−ブチルピペリジン−3−イルカルバメート(4g、20.0mmol)、Pd(dba)(610mg、0.67mmol)、キサントホス(774mg、1.34mmol)及びCsCO(10.9g、31.5mmol)の混合物を、N下において95℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液をEA(50mL)で希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=9/1)によって精製して、(S)−N−Boc−6−(3−(ビス−Boc−アミノ)ピペリジン−1−イル)ピリジン−2−アミン 114a及び(S)−N−Boc−6−(3−(Boc−アミノ)ピペリジン−1−イル)ピリジン−2−アミン 114b(2.3g、35%)の混合物を黄色固体として得た。
【0242】
工程2: HCl(10mL、1,4−ジオキサン中4M、40mmol)に溶かした114a及び114b(2.3g、4.69mmol)の混合物を、室温で7時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、(S)−tert−ブチル6−(3−アミノピペリジン−1−イル)ピリジン−2−イルカルバメート塩酸塩 114c(1.39g、90%)を黄色固体として得、これを次の工程に直接使用した。
【0243】
工程3: DCM(30mL)に溶かした114c(1.39g、4.22mmol)、アクリル酸(0.3mL、4.5mmol)、HATU(1.7g、4.5mmol)及びDIPEA(3.8mL、9mmol)の混合物を、室温で終夜撹拌した。混合物を水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮して、(S)−tert−ブチル6−(3−アクリルアミドピペリジン−1−イル)ピリジン−2−イルカルバメート 114d(880mg、60%)を褐色油状物として得た。この物質を、次の工程に直接使用した。
【0244】
工程4: DCM(10.0mL)に溶かした114d(880mg、2.53mmol)及びTFA(2.0mL)の混合物を、室温で終夜撹拌した。混合物を濃縮し、EA(30mL)で希釈し、1M NaOHで中和した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取TLC(PE/EA=1/1)によって精製して、(S)−N−(1−(6−アミノピリジン−2−イル)ピペリジン−3−イル)アクリルアミド 114e(440mg、70%)を黄色油状物として得た。MS−ESI:[M+H]247.2
【0245】
工程5: DMF(10mL)に溶かした114e(440mg、1.79mmol)、3,5−ジブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン(534mg、2.0mmol)、Pd(dba)(83mg、0.091mmol)、キサントホス(105mg、0.182mmol)及びCsCO(1.48g、4.55mmol)の混合物を、N下において95℃で7時間撹拌した。混合物をEAで希釈し、濾過した。濾液を水で洗浄し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=1/2)によって精製して、(S)−N−(1−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イル)ピペリジン−3−イル)アクリルアミド 114f(220mg、28%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]433.3
【0246】
工程6: アセトニトリル(5mL)及び水(1mL)に溶かした114f(86mg、0.20mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(83mg、0.22mmol)、Pd(dppf)Cl(15mg、0.02mmol)及びKPO(106mg、0.5mmol)の混合物を、N下において90℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、114(25mg、19%)を灰色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 80℃): δ 8.39 (s, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.82 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.32-7.46 (m, 6H), 6.51 (s, 1H), 6.42 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.03-6.24 (m, 3H), 5.54 (d, J = 13.5 Hz, 1H), 4.65 (bs, 1H), 4.41 (bs, 2H), 4.21-4.07 (m, 3H), 3.94-3.77 (m, 4H), 3.60 (s, 3H), 2.95 (bs, 2H), 2.58 (s, 2H), 2.44 (s, 2H), 1.85 (bs, 1H), 1.63-1.48 (m, 3 H), 1.24 (s, 6H).ESI−LCMS:m/z=663[C37H42N8O4+H]+
【0247】
実施例115 N−[(3S)−1−[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−3−ピペリジル]プロパ−2−エナミド 115
工程1: アセトニトリル(5mL)及び水(1.0mL)に溶かした(S)−N−(1−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イル)ピペリジン−3−イル)アクリルアミド 114f(127mg、0.3mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(179mg、0.36mmol)、Pd(dppf)Cl(23mg、0.03mmol)及びKPO(159mg、0.75mmol)の混合物を、N下において90℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取TLC(EA/MeOH=25/1)によって精製して、N−[(3S)−1−[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]−3−ピペリジル]プロパ−2−エナミド 115a(73mg、33%)を黄色固体として得た。MS−ESI:[M+H]724.3
【0248】
工程2: THF/i−PrOH/水(2.0mL/1.0mL/1.0mL)に溶かした115a(73mg、0.1mmol)及びLiOH・HO(40mg、1mmol)の混合物を、室温で2時間撹拌した。混合物をEAで抽出した。混合した有機層をNaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、115(20mg、29%)を灰色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 80℃): δ 8.42 (s, 1H), 8.40 (s, 1H), 8.00 (s, 1H), 7.77 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 7.41-7.29 (m, 5H), 6.44 (d, J = 3 Hz, 1H), 6.25-6.17 (m, 2H), 5.55-5.50 (m, 1H), 4.35 (s, 2H), 3.98-3.76 (m, 3H), 3.61 (s, 3H), 3.09-2.87 (m, 7H), 1.93-1.87 (m, 6H), 1.71 (bs, 1H), 1.49-1.45 (m, 2H).ESI−LCMS:m/z=682[C36H36FN7O4S+H]+
【0249】
実施例116 N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]ブタ−2−イナミド 116
工程1: DMF(10mL)に溶かした3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 103a(1.0g、2.66mmol)、ブタ−2−イン酸(268mg、3.19mmol)、HATU(1.21g、3.19mmol)及びDIPEA(1.14mL、6.65mmol)の混合物を、室温で終夜撹拌した。反応混合物をEAで希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、NaSOで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をPE/EA(2mL/20mL)で洗浄し、乾燥させて、N−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)ブタ−2−イナミド 116a(800mg、74%)を明黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=404.9
【0250】
工程2: アセトニトリル(5mL)及び水(1mL)に溶かした116a(150mg、0.37mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(150mg、0.445mmol)、Pd(dppf)Cl(28mg、0.037mmol)及びKPO(196mg、0.925mmol)の混合物を、N下において90℃で16時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、116(20mg、10%)を明黄色固体として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 8.66 (s, 1H), 8.56-8.55 (m, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.48 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.38 (s, 1H), 6.87 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 6.44 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.26 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.05-3.97 (m, 8H), 3.72 (s, 3H), 3.59-3.57 (m, 2H), 2.57 (s, 2H), 2.51 (s, 2H), 1.91 (s, 3H), 1.27 (s, 6H).ESI−LCMS:m/z=636.9[C35H37N7O5+H]+
【0251】
実施例117 2−シアノ−N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド 117
工程1: DCM(10mL)に溶かした3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン 103a(480mg、1.42mmol)、2−シアノアクリル酸(790mg、2.84mmol)、DIPEA(1.2mL、7.12mmol)及びHATU(810mg、2.13mmol)の混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=1/2)によって精製して、N−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)−2−シアノアクリルアミド 117a(400mg、67%)を緑色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=420.0
【0252】
工程2: アセトニトリル(10mL)及びHO(2mL)に溶かした117a(300mg、0.72mmol)、酢酸(4−フルオロ−2−{6−オキソ−8−チア−4,5−ジアザトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ−1(9),2(7),3−トリエン−5−イル}−6−(テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メチル 108c(430mg、0.86mmol)、Pd(dppf)Cl(52mg、0.072mmol)、KF(125mg、2.16mmol)の混合物を、窒素下において75℃で3時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=1/3)によって精製して、2−シアノ−N−[2−[[6−[[5−[5−フルオロ−2−(アセトキシメチル)−3−(4−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾチオフェノ[2,3−d]ピリダジン−3−イル)フェニル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド 117b(80mg、15%)を白色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=709.8
【0253】
工程3: THF(5mL)に溶かした117b(80mg、0.112mmol)の混合物に、HO(5mL)中のLiOH・HO(10mg、0.224mmol)を添加して、pH10−11にした。反応混合物を室温で4時間撹拌し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製して、117(12mg、16%)を白色固体として。アミド結合を、塩基性条件下で部分的に切断した。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.57 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 7.99 (bs, 1H), 7.49(t, J = 8 Hz, 2H), 7.26-7.24 (m, 1H), 7.12(d, J = 10 Hz, 1H), 6.48(d, J = 8 Hz, 1H), 6.26(d, J = 8 Hz, 1H), 4.41(t, J = 5 Hz, 2H), 4.31 (bs, 2H), 4.00-3.98 (m, 1H), 3.72(s, 3H), 3.63(t, J = 5.5 Hz, 1H), 3.58-2.56(m, 1H), 2.99(t, J = 5 Hz, 2H), 2.87(t, J = 5 Hz, 2H), 2.00-1.96(m, 4H).ESI−LCMS:m/z=668.0[C34H30FN7O5S+H]+
【0254】
実施例118 2−シアノ−N−[2−[[6−[[5−[2−(7,7−ジメチル−4−オキソ−1,2,6,8−テトラヒドロシクロペンタ[3,4]ピロロ[3,5−b]ピラジン−3−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−4−ピリジル]−1−メチル−2−オキソ−3−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]オキシ]エチル]プロパ−2−エナミド 118
アセトニトリル(5mL)及び水(0.5mL)に溶かしたN−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)−2−シアノアクリルアミド 117a(60mg、0.144mmol)、4−(4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル)[1,2]オキサボロロ[4,3−c]ピリジン−1(3H)−オール 107g(58mg、0.173mmol)、Pd(dppf)Cl(11mg、0.0144mmol)及びKF(25mg、0.432mmol)の混合物を、N下において75℃で6時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残留物をPE/EA(1/5)による分取TLCによって精製して、118(20mg、22%)を明黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, 80℃): δ 8.43 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.56-7.32 (m, 6H), 6.81 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 6.53 (s, 1H), 6.23 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 4.66-3.99 (m, 8H), 3.62 (s, 3H), 3.52-3.43 (m, 3H), 2.58 (s, 2H), 2.45 (s, 2H), 1.24 (s, 6H).ESI−LCMS:m/z=649[C35H36N8O5+H]+
【0255】
実施例119 N−{2−[(6−{[5−(2−{4,4−ジメチル−9−オキソ−1,10−ジアザトリシクロ[6.4.0.02,6]ドデカ−2(6),7−ジエン−10−イル}−3−(ヒドロキシメチル)ピリジン−4−イル)−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル]アミノ}ピリジン−2−イル)オキシ]エチル}プロパンアミド 119
工程1: DCM(15mL)に溶かした3−(6−(2−アミノエトキシ)ピリジン−2−イルアミノ)−5−ブロモ−1−メチルピリジン−2(1H)−オン塩酸塩 103a(250mg、0.66mmol)及びEtN(0.23mL、6.0mmol)の混合物に、塩化プロピオニル(70μL、0.79mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水(20mL×2)で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して、N−(2−(6−(5−ブロモ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イルアミノ)ピリジン−2−イルオキシ)エチル)プロピオンアミド 119a(140mg、54%)を明黄色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=395.1。
【0256】
工程2: CHCN(5mL)及び水(1mL)に溶かした119a(120mg、0.30mmol)、化合物9(111mg、0.33mmol)、Pd(dppf)Cl(23mg、0.03mmol)及びKPO(160mg、0.75mmol)の混合物を、N下において90℃で7時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を濃縮して、粗生成物を得た。この粗生成物を分取HPLCによって精製して、119(40mg、21%)を白色固体として得た。ESI−LCMS:m/z=626.3
【0257】
実施例901 生化学的Btkアッセイ
式Iの化合物を試験するために使用され得る標準的な生化学的Btkキナーゼアッセイのための一般化された手順は、下記のとおりである。1×細胞シグナル伝達キナーゼバッファー(25mM トリス−HCl、pH7.5、5mM β−グリセロホスフェート、2mMジチオスレイトール、0.1mM NaVO、10mM MgCl)、0.5μM Promega PTKビオチン化ペプチド基質2及び0.01%BSAを含有する、マスターミックスマイナスBtk酵素を調製する。1×細胞シグナル伝達キナーゼバッファー、0.5μM PTKビオチン化ペプチド基質2、0.01%BSA及び100ng/ウェル(0.06mU/ウェル)Btk酵素を含有する、マスターミックスプラスBtk酵素を調製する。Btk酵素を下記のように調製する。C末端V5及び6xHisタグが付いた完全長ヒト野生型Btk(寄託番号NM−000061)を、このエピトープタグ付きBtkを有するバキュロウイルスを作製するために、pFastBac(登録商標)ベクター(Invitrogen/Life Technologies)内にサブクローニングした。バキュロウイルスの発生を、Invitrogenが公開しているプロトコール「Bac−to−Bac Baculovirus Expression Systems」(Invitrogen/Life Technologies、カタログ番号10359−016及び10608−016)に詳述されているInvitrogenの指示書に基づいて実施する。継代3回目のウイルスを使用して、組み換えBtkタンパク質を過剰発現するようにSf9細胞を感染させる。次いでBtkタンパク質を、Ni−NTAカラムを使用して均一になるまで精製する。最終的なタンパク質調製物の純度は、感度の良いSypro−Ruby染色に基づいて95%超である。200μM ATP溶液を水中で調製し、1N NaOHによってpH7.4に調整する。1.25μLの量の5%DMSO中化合物を、96ウェルハーフエリアCostarポリスチレンプレートに移す。化合物を、11点式用量−応答曲線を用いて1つずつ試験する(出発濃度は10μMである。1:2希釈)。18.75μLの量のマスターミックスマイナス酵素(ネガティブコントロールとして)及びマスターミックスプラス酵素を、96ウェルハーフエリアcostarポリスチレンプレート中の適当なウェルに移す。5μLの200μM ATPを、40μMの最終ATP濃度を目指して、96ウェルハーフエリアCostarポリスチレンプレート中の上記混合物に添加する。反応物を、室温で1時間インキュベートする。反応を、30mM EDTA、20nM SA−APC及び1nM PT66Abを含有するPerkin Elmer 1×検出バッファーによって停止させる。プレートを、励起フィルター330nm型、発光フィルター665nm型及び第2の発光フィルター615nm型を使用するPerkin Elmer Envisionによって、時間分解型蛍光を使用して読み取る。続いて、IC50値を計算する。代替的には、Lanthascreenアッセイを使用して、このアッセイにおけるリン酸化ペプチド生成物の定量化によってBtk活性を評価することもできる。ペプチド生成物上のフルオレセインと検出抗体上のテルビウムとの間で起きるFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer:蛍光共鳴エネルギー移転)は、ペプチドのリン酸化を低減するBtkの阻害剤の添加に伴って減少する。25μLの最終的な反応物体積として、Btk(h)(0.1ng/25μl反応物)を、50mM HEPES pH7.5、10mM MgCl、2mM MnCl、2mM DTT、0.2mM NaVO、0.01%BSA及び0.4μMフルオレセインポリ−GATと一緒にインキュベートする。反応を、ATPを(ATPのKm)25μMになるまで添加することによって開始する。室温における60分のインキュベーション後、反応を、60mM EDTA中2nMの最終濃度のTb−PY20検出抗体を室温で30分添加することによって停止する。検出は、340nMにおける励起並びに495nm及び520nmにおける発光を用いて、Perkin Elmer Envisionによって判定する。
【0258】
代替的には、LabChip3000(登録商標)というマイクロ流体移動度シフト機器(PerkinElmer、Waltham、MA)を使用して検出することになる、BTKにより触媒される合成ペプチドのチロシンリン酸化を定量化する、インビトロBTK生化学的アッセイを実施することもできる。基質ペプチドであるProfilerPro(登録商標)FL−Peptide22(製品番号760366、PerkinElmer)は、アミノ末端蛍光性5−カルボキシフルオレセイン基(5−FAM)、及びBTKによってリン酸化され得るチロシン残基:5−FAM−EEPLYWSFPAKKK−NHを有する。精製された触媒活性な組み換えヒト完全長BTKタンパク質を、Carna Biosciences(製品番号08−080、Kobe、Japan)から得た。
【0259】
BTKアッセイ混合物は、最終濃度0.5%(体積対体積[v/v])のDMSOに溶かした50mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸バッファー(pH7.5)、10mM塩化マグネシウム、0.01%Triton X−100、1mMジチオスレイトール、1μM FL−Peptide22、45μM ATP、1nM BTK及び滴定1回分の最大10,000nMの試験品を含有していた。滴定実験において、試験品濃度のそれぞれ(10又は12種の濃度)2連で試験した。ブランク反応物は、ATP、ペプチド及びDMSOを含有するがBTK又は試験品を含有しない一方で、無阻害のコントロール反応物は、ATP、ペプチド、BTK及びDMSOを含有するが試験品を含有しない。
【0260】
反応物を、384ウェルプレート内のウェル1つ当たり20μLの最終体積として、室温(22℃−23℃)で30分インキュベートした。BTKとペプチドとの混合物10マイクロリットルを、ATP及び試験品(又はビヒクル)の混合物10μLに添加して、反応を開始した。反応を、pH8.0において10μLの0.25Mエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を各ウェルに添加することによって停止させた。毎回の反応において、残留したFL−Peptide22基質(S)及び生成したホスホ−ペプチド生成物(P)を、LabChip3000機器を使用して分離した。基質分子からの生成物分子の電気泳動式分離を、それぞれ−500及び−2250Vの下流側電圧及び上流型電圧を使用して、−1psiの動作圧において実施した。基質と生成物ペプチドの両方に存在する5FAM基を488nmにおいて励起し、530nmにおける蛍光を検出し、ピーク高さを報告した。
【0261】
データ分析: 生成物への基質の変換度(又はパーセント)を、HTS Well Analyzerソフトウェア、バージョン5.2(PerkinElmer)及び下記の式:
%変換=[(P)÷(S+P)]×100
を使用して電気記録図中の対応するピーク高さから計算した(式中、S及びPは、基質及び生成物のピーク高さをそれぞれ表す。)。BTKを内包しないブランク用ウェルからのあらゆるベースラインシグナルをすべての試験ウェルのシグナルから差し引いた後、%変換データを、式2に示された画分活性に変換し、v及びvは、それぞれ試験品の存在下及び非存在下における%変換である。BTK及びDMSOビヒクルを内包するが試験品を含有しない無阻害のコントロール反応ウェルにおいて観察された%変換は、画分活性=1(この場合、試験品が存在せず、v=vである。)を有するように定義したが、BTKを含まないブランク用ウェルは、画分活性=0を有するものとして定義した。画分活性を試験品濃度に対してプロットし、データを、Genedata Screenerソフトウェア(Genedata、Basel、Switzerland)を使用して、見かけの共結合阻害定数(Kapp)モリソン式[Williams, J.W.及びMorrison, J. F. (1979) The kinetics of reversible tight-binding inhibition. Methods Enzymol 63:437-67]に当てはめた。下記の式を使用して、画分活性及びKappを計算した:
(式中、[E]及び[I]は、それぞれ、活性酵素(0.001μM=1nMの固定値)及び試験品(例えば、阻害剤、可変パラメーター)の総濃度である。)。
【0262】
例示的なBtk阻害IC50値が表1に含まれている。
【0263】
実施例902 Ramos細胞Btkアッセイ
式Iの化合物を試験するために使用され得る標準的で細胞を用いる型のBtkキナーゼアッセイのための一般化された別の手順は、下記のとおりである。Ramos細胞を、0.5×10個細胞/mlの密度において、試験化合物の存在下にて37℃で1時間インキュベートする。次いで細胞を、10μg/mlの抗ヒトIgM F(ab)と一緒に37℃で5分インキュベートすることによって刺激する。細胞をペレット化し、溶解させ、タンパク質アッセイを、澄んだ溶解物に対して実施する。タンパク質量が等しい各試料に、抗ホスホBtk(Tyr223)抗体(Epitomics、カタログ番号2207−1)若しくはホスホBtk(Tyr551)抗体(BD Transduction Labs #558034)のいずれかによってSDS−PAGE及びウェスタンブロット法を施して、Btk自己リン酸化を検定し、又は、抗Btk抗体(BD Transduction Labs #611116)によってSDS−PAGE及びウェスタンブロット法を施して、各溶解物中のBtkの合計量に照合した。
【0264】
実施例903 B細胞増殖アッセイ
式Iの化合物を試験するために使用され得る標準的で細胞を用いる型のB細胞増殖アッセイのための一般化された手順は、下記のとおりである。B細胞を、B細胞単離キット(Miltenyi Biotech、カタログ番号130−090−862)を使用して8−16週齢Balb/cマウスの脾臓から精製する。試験化合物を0.25%DMSO中に希釈し、2.5×10個の精製済みマウス脾臓B細胞と一緒に30分インキュベートした後、10μg/mlのヤギF(ab’)2抗マウスIgM抗体(Southern Biotech カタログ番号1022−14)を、100μlの最終体積として、添加する。52時間のインキュベーション後、1μCi H−チミジンを添加し、プレートをさらに16時間インキュベートした後、SPA[H]チミジン取り込みアッセイ系(Amersham Biosciences #RPNQ0130)のための製造業者のプロトコールを使用して収集する。SPAビーズを主体とした蛍光を、マイクロベータカウンター(Wallace TripleX1450、Perkin Elmer)によって計数する。
【0265】
実施例904 T細胞増殖アッセイ
式Iの化合物を試験するために使用され得る標準的なT細胞増殖アッセイのための一般化された手順は、下記のとおりである。T細胞を、Pan T細胞単離キット(Miltenyi Biotech、カタログ番号130−090−861)を使用して8−16週齢Balb/cマウスの脾臓から精製する。試験化合物を0.25%DMSO中に希釈し、2.5×10個の精製済みマウス脾臓T細胞と一緒にして100μlの最終体積として、プリコート済み透明平底プレート内において37℃で90分、それぞれ10μg/mlの抗CD3(BD#553057)抗体及び抗CD28(BD#553294)抗体を用いてインキュベートする。24時間のインキュベーション後、1μCi H−チミジンを添加し、プレートをさらに36時間インキュベートした後、SPA[H]チミジン取り込みアッセイ系(Amersham Biosciences #RPNQ0130)のための製造業者のプロトコールを使用して収集する。SPAビーズを主体とした蛍光を、マイクロベータカウンター(Wallace TripleX1450、Perkin Elmer)によって計数した。
【0266】
実施例905 CD86阻害アッセイ
式Iの化合物を試験するために使用され得るB細胞活性の阻害用の標準的なアッセイのための一般化された手順は、下記のとおりである。全マウス脾細胞を、赤血球溶解(BD Pharmingen#555899)によって8−16週齢Balb/cマウスの脾臓から精製する。試験化合物を0.5%DMSOに希釈し、200μlの最終体積の1.25×10個の脾細胞と一緒に透明平底プレート(Falcon353072)内において37℃で60分インキュベートする。次いで細胞を、15μg/mlのヤギF(ab’)2抗マウスIgM(Southern Biotech カタログ番号1022−14)の添加によって刺激し、37℃、5%COで24時間インキュベートする。24時間のインキュベーション後、細胞を円錐底透明96ウェルプレートに移し、1200×g×5分における遠心分離によってペレット化する。細胞をCD16/CD32(BD Pharmingen#553142)によって予備ブロックし、続いてCD19−FITC(BD Pharmingen#553785)、CD86−PE(BD Pharmingen#553692)及び7AAD(BD Pharmingen#51−68981E)によって三重染色する。細胞を、BD FACSCalibur(登録商標)フローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA)によって選別し、CD19/7AAD集団にゲーティングした。ゲーティングした集団におけるCD86表面発現のレベルを、試験化合物濃度に対比させて測定する。
【0267】
実施例906 B−ALL細胞生存アッセイ
下記は、XTT読み出しを使用して生細胞の数を測定する、標準的なB−ALL(急性リンパ芽球性白血病)細胞生存についての研究のための手順である。このアッセイは、培養物中のB−ALL細胞の生存を阻害する能力について式Iの化合物を試験するために使用することができる。使用され得るヒトB細胞急性リンパ芽球性白血病系統の1つは、ATCCから入手できるSUP−B15というヒトプレB細胞ALL系統である。
【0268】
SUP−B15というプレB−ALL細胞を、複数の96ウェルマイクロタイタープレート内において100μlのIscove培地+20%FBS中で、5×10個細胞/mlの濃度にしてプレート化する。次いで試験化合物を、最終濃度0.4%のDMSOと一緒に添加する。細胞を37℃、5%COにおいて最大3日インキュベートする。3日後、細胞を1:3に分割して、試験化合物を内包する新たな96ウェルプレートに入れ、最大でさらに3日増殖する。24時間の期間が経った後毎回、50μlのXTT溶液を、反復用96ウェルプレートの1つに添加し、吸光度の読み取りを、製造業者の指導書に従って2時間、4時間及び20時間で実施する。次いで、アッセイの直線範囲(0.5−1.5)内でDMSOのみにより治療された細胞に対してODによって実施される読み取りを実施し、化合物により処理されたウェル内の生細胞の百分率を、DMSOのみにより処理された細胞に対比させて測定する。
【0269】
実施例907 CD69全血アッセイ
ヒト血液を、下記の制約によって健康な志願者から得る:1週間の間薬物が使われておらず、非喫煙者であること。血液(8つの化合物を試験するためのおよそ20ml)を、Vacutainer(登録商標)(Becton,Dickinson and Co.)菅中への静脈穿刺によって、ヘパリンナトリウムを用いて収集する。
【0270】
10mMの式Iの化合物のDMSO中溶液を、100%DMSO中で1:8希釈し、次いで、10点式用量−応答曲線用に100%DMSO中で3倍段階希釈によって希釈する。化合物をHO中でさらに1:12.5希釈し、次いで、各化合物のアリコート5.5μlを、2ml 96ウェル平方形上面/テーパ形V底ディープウェルプレート(カタログ番号59623−23、Analytical Sales and Services、Pompton Plains、NJ)に2連で添加し、5.5μlのHO中8%DMSOをコントロール用無刺激ウェルとして添加する。ヒト全血−HWB(100μl)を各ウェルに添加する。混合した後、プレートを37℃、5%CO、湿度100%で60分インキュベートする。ヤギF(ab’)2抗ヒトIgM(Southern Biotech カタログ番号2022−14、500μg/ml溶液10μl、50μg/ml 最終時点)を、混合しながら各ウェル(無刺激ウェルを除く)に添加し、プレートをさらに16時間インキュベートする。16時間のインキュベーションが終了したら、試料を、蛍光性標識された抗体と一緒に37℃、5%CO、湿度100%で30分インキュベートする。補正調整及び初期電圧設定のための、誘導されたコントロール用で未染色の単一の染料を組み入れる。次いで試料を、製造業者の指示書に従ってPharM Lyse(商標)(BD Biosciences Pharmingen)によって溶解させ、1%ウシ血清アルブミンを含有するPBSに溶かした1%パラホルムアルデヒド中に固定する。次いで試料を、LSRII機械上のBD Biosciences HTS96ウェル系上での運転に適した96ウェルプレートに移す。取得データ及び平均蛍光発光強度値を、BD Biosciences DIVA Softwareを使用して得た。結果は、FACS解析ソフトウェア(Flow Jo)によって初期に分析する。試験化合物の阻害濃度(IC50、IC70、IC90等)は、抗IgMによって刺激されたやはりCD19陽性且つCD27陰性である細胞におけるCD69発現の平均蛍光発光強度を例えば50%低下させる、濃度として定義されている。IC70値を、非線形後退曲線当てはめを使用してGenedata Screenerによって計算し、表1及び表2に示している。
【0271】
実施例908 インビトロ細胞増殖アッセイ
式Iの化合物の有効性を、下記プロトコール(Mendoza等(2002) Cancer Res. 62:5485-5488)を使用する細胞増殖アッセイによって測定する。試薬及びプロトコールを含むCellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayが、市販されている(Promega Corp.、Madison、WI、Technical Bulletin TB288)。上記アッセイは、化合物が細胞に進入して細胞増殖を阻害することができる度合いを検定する。アッセイ原理は、均一アッセイにおいて存在するATPを定量化することによる、存在する生細胞の数の測定に基づいており、ここで、Cell−Titer Glo試薬を添加すると、細胞溶解が起き、ルシフェラーゼ反応によって発光シグナルが発生する。発光シグナルは、存在するATPの量に比例する。
【0272】
一団のB細胞リンパ腫細胞株(例えば、BJAB、SUDHL−4、TMD8、OCI−Ly10、OCI−Ly3、WSU−DLCL2)を、正常増殖培地中の384ウェルプレート内にプレート化し、段階希釈されたBTK阻害剤又はDMSOのみを、各ウェルに添加した。細胞生存能力を、96時間のインキュベーション後にCellTiter−Glo(登録商標)(Promega)によって検定する。データは、DMSOにより処理されたコントロール細胞に対する、BTK阻害剤により処理された細胞の相対的な細胞生存能力として提供してもよい。データ点は、各用量レベルにおける4つの反復の平均である。エラーバーは、平均からのSDを表す。
【0273】
手順: 1日目− 細胞をプレート(384ウェル黒色、透明底、マイクロクリア、Falcon#353962で覆ったTCプレート)に播種し、細胞を収集し、細胞を、1ウェルごとに54μl当たり1000個の細胞において、3日アッセイのために384ウェル細胞プレート中に播種する。細胞培地:RPMI又はDMEM高グルコース、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、P/S。37℃、5%CO2においてO/Nインキュベートする。
【0274】
2日目− 薬物を細胞に添加し、化合物をDMSOプレートで希釈し(9点用に段階的1:2)、20μlの化合物を、10mMにおいて、96ウェルプレートの2番目の列に添加する。段階的1:2を、プレート(10μl+20μl 100%DMSO)にわたって合計で9点用に、Precisionを使用して実施する。Nunc製の培地プレート96ウェル円錐底ポリプロピレンプレート(カタログ番号249946)(1:50希釈)。147μlの培地をすべてのウェル内に添加する。DMSOプレート内の各ウェルから3μlのDMSO+化合物を、Rapidplate(登録商標)を使用して培地プレート上の対応する各ウェルに移す。
【0275】
薬物を細胞に添加し、細胞をプレート化し(1:10希釈)、6μlの培地+化合物を細胞(すでに細胞上で54μlの培地)に直接添加する。37℃、5%CO2において、頻繁に開くことがないインキュベータ内で3日インキュベートする。
【0276】
5日目− プレートを展開し、Cell Titer Gloバッファーを室温で解凍する。細胞プレートを37℃から取り出し、約30分室温に平衡化する。Cell Titer GloバッファーをCell Titer Glo基質(ボトルからボトル)に添加する。30μlのCell Titer Glo試薬(Promega cat.#G7572)を各ウェルの細胞に添加する。プレートシェーカー上に約30分置いておく。Analyst HT Plate Reader(1ウェル当たり2分の1秒)によってルミネセンスを読み取る。
【0277】
細胞生存能力アッセイ及び組合せアッセイ: 細胞を、1000−2000個細胞/ウェルにおいて、384−ウェルプレート内で16時間播種した。2日目に、9つの段階的1:2化合物希釈を、96ウェルプレート内のDMSO中で実施する。化合物を、Rapidplate(登録商標)ロボット(Zymark Corp.、Hopkinton、MA)を使用して増殖培地中にさらに希釈する。次いで希釈済み化合物を、384ウェル細胞プレート内の4連ウェルに添加し、37℃、5%CO2でインキュベートする。4日後、生細胞の相対数を、Cell−Titer Glo(Promega)を使用して製造業者の指示書に従ってルミネセンスによって測定し、Wallac Multilabel Reader(登録商標)(PerkinElmer、Foster City)によって読み取る。EC50値を、Prism(登録商標)4.0ソフトウェア(GraphPad、San Diego)を使用して計算する。式Iの化合物及び化学療法剤は、すべてのアッセイにおいて、同時に添加され、又は、4時間隔てる(一方の後に他方)。
【0278】
さらなる例示的なインビトロ細胞増殖アッセイは、下記工程を含む:
1. 培地中に約10個の細胞を含有する細胞培養物のアリコート100μlを、384ウェル不透明壁型プレートの各ウェル内に堆積する。
2. 培地を含有し、細胞を含まないコントロールウェルを調製する。
3. 化合物を実験用ウェルに添加し、3−5日インキュベートする。
4. プレートをおよそ30分室温に平衡化する。
5. 各ウェル中に存在する細胞培地の体積に等しい体積のCellTiter−Glo試薬を添加する。
6. 内容物をオービタルシェーカー上で2分混合して、細胞溶解を誘導する。
7. プレートを室温で10分インキュベートして、発光シグナルを安定化する。
8. ルミネセンスを、RLU=相対発光ユニットとしてグラフ中に記録し、報告する。
【0279】
上記発明については、理解を明瞭にする目的で説明及び例としていくらか詳細に記載してきたが、記載及び例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきでない。したがって、すべての適切な修正形態及び等価物は、下記の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲に含まれると考えることができる。本明細書で引用されたすべての特許及び科学技術文献の開示は、それらの全内容を参照により明示的に援用する。