【文献】
Biotechnology and Bioengineering,2009年,Vol.103, No.6,pp.1192-1201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酵母における、GLP-1ペプチドを含むポリペプチドの組換え発現のための方法であって、前記方法は、ポリペプチドの上流にプロセシング及び分泌シグナルをコードするDNA配列を含む酵母株を培養する工程を含み、前記プロセシング及び分泌シグナルは、38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアントを含み:
X38-X39-X40-X41-X42 (配列番号1) (I)
(式中、
X38は、Vであり、
X39は、L、I、V、又はMであり、
X40は、G、R、又はKであり、
X41は、Yであり、
X42は、L又はIである)
前記α接合因子プロペプチドバリアントが、配列番号2(アミノ酸残基20〜85)に記載のα接合因子プロペプチドに比べて、X38〜X42配列の外に4個未満のアミノ酸残基の変更を有し、且つ、組換えポリペプチドの収率を高め、及び/又はO-グリコシル化不純物の量を低下させる機能を有する、方法。
前記N末端延長部が、EEK、EEAEK、HK、EEAHK、E(EA)2HK、E(EA)3HK、EEGHK、EHPK、EEGEPK、EEAHELK、EEAHEVK、EEAHEMK、EEAHEFK、EEAHEYK、EEAHEWKEEGNTTPK、及びEELDARLEALKからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
前記N末端延長部が、DV、DVKPGQPLA、DVKPGQPEY、DVKPGEPLY、DVKPGQPLY、DVKPGQPLE、DVKPGQPMY、及びDVKPGQPMYDDDDKからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
前記N末端延長部が、QPMYKR、GQPMYK、PGQPMY、KPGQPM、LKPGQP、QLKPGQ、LQLKPG、WLQLKP、HWLQLK、WHWLQL、AWHWLQ、EAWHWL、AEAWHW、及びEAEAWHからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様では、酵母におけるポリペプチドの組換え発現のための方法であって、ポリペプチドの上流にプロセシング及び分泌シグナルをコードするDNA配列を含む酵母株を培養する工程を含み、前記プロセシング及び分泌シグナルは、38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアントを含む、方法を提供する:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)。
【0026】
本明細書で用いる「リーダー配列」の語は、プレペプチド(シグナルペプチド)及びプロペプチドからなるアミノ酸配列を意味するものとされる。リーダー配列の非限定的な例として、例えば、サッカロミセス・セレビシエ由来のアルファ因子シグナルリーダー、及びWO95/34666に記載されている酵母のための合成のリーダー配列がある。
【0027】
本明細書で用いる「プレペプチド」は、発現させようとするポリペプチドの前駆体のN末端配列として存在するシグナルペプチドを意味するものとされる。シグナルペプチドの機能は、宿主細胞におけるポリペプチドの小胞体への移動を促進することである。シグナルペプチドは通常、このプロセスの間に切り離される。シグナルペプチドは、ポリペプチドを産生する宿主細胞とって異種性(heterologous)であっても、同種性(homologous)であってもよい。
【0028】
本明細書で用いる「プロペプチド」は、その機能が、発現されたポリペプチドが小胞体からゴルジ装置に向かうようにし、培養培地中に分泌させるために更に分泌小胞に向かうようにする(すなわちポリペプチドを、細胞壁を越えて搬出する、又は少なくとも細胞膜を通過して酵母細胞の細胞周辺腔へと搬出する)、ペプチド配列を意味するものとされる。プロペプチドの非限定的な例として、酵母α因子プロペプチド(US4,546,082及びUS4,870,008参照)、並びにUS5,395,922、US5,795,746、US5,162,498、及びWO98/32867に開示されている合成プロペプチドがある。プロペプチドが、Lys-Arg配列又はそのあらゆる機能的類似体等、C末端終端にエンドペプチダーゼプロセシング部位を含むことが好ましい。
【0029】
本明細書で用いる「α接合因子」(MFα、MFa、又はMFアルファ)の語は、構造中に、アミノ酸残基1〜19としてα接合因子プレペプチド、及びアミノ酸残基20〜85としてα接合因子プロペプチドを含む、サッカロミセス・セレビシエのプレプロ配列を意味するものとされる:
MRFPSIFTAVLFAASSALAAPVNTTTEDETAQIPAEAVIGYLDLEGDFDVAVLPFSNSTNNGLLFINTTIASIAAKEEGVSLDKR (配列番号2)。
【0030】
α接合因子は、アミノ酸残基38〜42として配列VIGYL(配列番号3)を含む。α接合因子のバリアントは、α接合因子の配列におけるアミノ酸残基38〜42として配列VIGYS(配列番号4)を含むポリペプチドの組換え発現に用いられている。
【0031】
本発明の文脈において、「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」の語は交換可能に用いられてポリペプチドを意味することができる。使用する特定の語は、(特定の文脈において直接記載がなければ)分子のサイズに関して制限がないことを理解されたい。
【0032】
アミノ酸残基は、IUPAC命名法による一文字表記に従って一般的に命名され、例えば、Dはアスパラギン酸(Asp)を意味し、Gはグリシンを意味する。しかし、ある場合には、対応する3文字表記も用いられる。
【0033】
本明細書で用いる「遺伝的にコードされたアミノ酸」は、以下のアミノ酸:G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S、Tからなる群、及びこれらのあらゆる生物学的修飾を意味するものとされる。このような生物学的修飾の非限定的な例として、例えば、アミド化、グリコシル化、及びジスルフィド結合形成がある。
【0034】
本明細書で用いる「類似体」は、ポリペプチドにおける1個又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は付加によって、基準のポリペプチドから派生させたポリペプチドを意味するものとされる。GLP-1(7-37) (配列番号5)の類似体の非限定的な例として、残基34がアルギニン残基によって置換されているGLP-1(7-37)[K34R] (配列番号6)、及び残基34がアルギニン残基で置換されており、アミノ酸残基7〜8が欠失しているGLP-1(9-37)[K34R] (配列番号7)がある(GLP-1ペプチドに対するアミノ酸残基の共通のナンバリングを用いて)。
【0035】
ポリペプチドに関して本明細書で用いる「バリアント」は、オリジナルのタンパク質と実質的に同じ主機能を保持する、ポリペプチドの化学的バリアントを意味するものとされる。それゆえバリアントは典型的には、修飾されたポリペプチドが所望の性質をいくつか有するのに必要なくらい少数の修飾が導入される、ポリペプチドの修飾されたバージョンである一方、オリジナルのポリペプチドの実質的に同じ主機能を保存している。ポリペプチドバリアントの非限定的な例として、例えば、延長されたポリペプチド、切断されたポリペプチド、融合ポリペプチド、及び類似体がある。α接合因子プロペプチドのバリアントの非限定的な例として、L42S-α接合因子(20-85) (配列番号8)がある。GLP-1(7-37)のバリアントの非限定的な例として、GLP-1(7-37)[K34R]がある。
【0036】
一実施形態において、ポリペプチドのバリアントは、非修飾のポリペプチドに比べて、アミノ酸1〜2個の置換、欠失、又は付加を含む。別の一実施形態において、バリアントは、非修飾のポリペプチドに比べて、アミノ酸1〜5個の置換、欠失、又は付加を含む。別の一実施形態において、バリアントは、対応する非修飾のポリペプチドに対して、アミノ酸1〜15個の置換、欠失、又は付加を含む。
【0037】
本発明の第2の態様では、38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアントを提供する:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)。一実施形態において、α接合因子プロペプチドバリアントは、X
38〜X
42としてVIGYS、VIDYS、VATYL、VIGYR、又はAIGYLを含まない。
【0038】
本発明の第3の態様では、
- プレペプチド
- 38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアント:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)
- 任意選択により、延長ペプチド、及び
- GLP-1ペプチド
を含む融合ポリペプチドであるGLP-1前駆体を提供する。
【0039】
本明細書で用いる「GLP-1ペプチド」の語は、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)アミド、及びこれらの類似体を指定するものとされ、これらは従来の組換えDNA技術及び従来の合成方法によって産生することができる。このようなGLP-1ペプチドには、それだけには限定されないが、天然のグルカゴン様ペプチド-1、例えば、WO87/06941に開示されているようなGLP-1(7-37)及びその機能的なバリアントを含むペプチドフラグメント、WO90/11296に開示されているようなGLP-1(7-36)及びその機能的な派生体を含むペプチドフラグメント、WO91/11457に開示されているような活性なGLP-1ペプチド7-34、7-35、7-36、及び7-37の類似体、EP0699686-A2に開示されているようなGLP-1のN末端切断フラグメント、並びにEP0708179-A2に開示されているようなN末端イミダゾール基を含むGLP-1類似体及び派生体が含まれる。GLP-1ペプチドの非限定的な例として、GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-37)[K34R]がある。
【0040】
本明細書で用いる「GLP-1前駆体」の語は、延長部がGLP-1ペプチドの分泌、発現、又は回収を促進するように働く、延長されたGLP-1ペプチドを含むポリペプチドを意味するものとされる。GLP-1前駆体の例は、WO03/010186及びWO09/083549に見出すことができる。GLP-1前駆体は、アミノ酸残基2〜5個等、小型の延長部を有するGLP-1ペプチド、並びにプレペプチド及びプロペプチドを含むより長い延長部を有するGLP-1ペプチドを含むものとされる。
【0041】
酵母におけるポリペプチドの組換え発現のための方法の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、
X
38が、F、L、又はVであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、G又はRであり、
X
41が、S、Y、L、I、V、又はMであり、
X
42が、Y、W、L、V、又はMである
配列を有する。
【0042】
別の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、
X
38が、I又はVであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41が、Y、F、又はWであり、
X
42が、L又はIである
配列を有する。
【0043】
別の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、
X
38が、Vであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、G又はRであり、
X
41が、Yであり、
X
42が、Lである
配列を有する。
【0044】
別の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、X
40がRである配列を有する。別の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、X
40がRであり、X
42がLである配列を有する。
【0045】
更に別の一実施形態において、一般式(I)の前記アミノ酸配列は、X
38がVであり、X
39がIであり、X
40がRであり、X
41がYであり、X
42がLである配列を有する。
【0046】
別の一実施形態において、組換え発現されるポリペプチドは、GLP-1ペプチド又はそのバリアント、例えば、GLP-1(7-37)[K34R]又はGLP-1(9-37)[K34R]である。
【0047】
一実施形態において、組換え発現されるポリペプチドはN末端延長部を有し、すなわち製造しようとするポリペプチドとα接合因子バリアントとの間に位置する。この延長部は、宿主細胞からのポリペプチドの発現若しくは分泌を促進し得、又はポリペプチドの一部を、N末端における望ましくないタンパク質分解性のプロセシングから保護し得る。別の一実施形態において、N末端延長部は、アミノ酸残基2〜10個を有し、又はアミノ酸残基約8個から約200個を有するポリペプチドである。延長部が、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を促進するように働く場合、又は延長部が、ポリペプチドを、N末端におけるタンパク質分解性のプロセシングから保護するように働く場合、より小型のN末端延長部がしばしば用いられる。別の一実施形態において、N末端延長部は、EEK、EEAEK、HK、EEAHK、E(EA)2HK、E(EA)3HK、EEGHK、EHPK、EEGEPK、EEAHELK、EEAHEVK、EEAHEMK、EEAHEFK、EEAHEYK、EEAHEWKEEGNTTPK、及びEELDARLEALKからなる群から選択される。別の一実施形態において、N末端延長部は、QPMYKR、GQPMYK、PGQPMY、KPGQPM、LKPGQP、QLKPGQ、LQLKPG、WLQLKP、HWLQLK、WHWLQL、AWHWLQ、EAWHWL、AEAWHW、及びEAEAWHからなる群から選択される。
【0048】
発現されたポリペプチドがN末端延長部を含む場合、プロテアーゼ、ペプチダーゼの使用によって、又は化学的切断によって、このN末端延長部を切り離すことが慣例である。トリプシン、アクロモバクター・リティカス(Acromobacter lyticus)のプロテアーゼ、及びエンテロキナーゼ等のプロテアーゼを用いてもよい。切断に選択される特定のタンパク質分解酵素は、製造されるポリペプチドによってしばしば決定される。それゆえ、当業者であれば、ポリペプチド配列、特に内部の一次又は二次切断部位の有無、及び良好な切断部位が形成されるようにN末端延長部を適合させることに基づいて、タンパク質分解酵素をしばしば選択するはずである。
【0049】
プロテアーゼの切断効率は、N末端延長部とともに発現されるポリペプチドを切断するのに用いる場合、以下のような単純なアッセイによって決定することができる:ポリペプチドの適切な水溶液を、プロテアーゼに都合のよいpH及び温度でインキュベートし、試料を時の経過とともに反応混合物から回収する。試料を回収したらすぐに、酵素活性を不活性化する。対象とする時間枠を網羅する試料を全て回収した後、N末端延長部のない対応するポリペプチドの濃度を、HPLC分析等によって決定する。切断されたポリペプチドの濃度を時間の関数として描くことで、反応の進行が示される。このような反応軌跡を、ポリペプチドの様々なN末端延長部に対して比較することで、プロテアーゼがN末端延長部のないポリペプチドを遊離する能力に従ってN末端延長部を順位づけることができる。
【0050】
ポリペプチドをコードする核酸構築物は、適切に、ゲノム、cDNA、又は合成の起源のものとしてもよい。アミノ酸配列の改変は、よく知られている技術によって遺伝コードを修飾することにより達成される。
【0051】
ポリペプチドをコードするDNA配列は通常、組換えDNA手順を施す上で好都合であり得る任意のベクターであってよい組換えベクターに、挿入する。ベクターの選択は、ベクターを導入しようとする宿主細胞にしばしば依存する。よって、ベクターは自己複製ベクターであってよく、すなわち染色体外の実体として存在し、その複製はプラスミド等の染色体の複製に独立であるベクターである。或いは、ベクターは、宿主細胞中に導入した場合、宿主細胞のゲノム中に組み入れられ、それが組み入れられている染色体と一緒に複製されるベクターでもよい。
【0052】
ベクターは、ポリペプチドをコードするDNA配列が、DNAの転写に必要とされる付加的な諸セグメントに作動可能に連結している発現ベクターであることが好ましい。「作動可能に連結している」の語は、転写がプロモーターで始まり、ポリペプチドをコードするDNA配列を通り、ターミネーター内で終結するまで進行する等、これらセグメントが、その意図する目的のために協同して機能するように配列されていることを示す。
【0053】
よって、ポリペプチドの発現において用いるための発現ベクターは、クローニングされた遺伝子又はcDNAの転写を、開始及び指示することができるプロモーターを含む。プロモーターは、選んだ宿主細胞において転写活性を示すあらゆるDNA配列であってよく、宿主細胞に同種性又は異種性いずれかでタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。
【0054】
加えて、ポリペプチドの発現に用いるための発現ベクターは、転写を終結するよう宿主細胞によって認識される配列であるターミネーター配列も含む。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列の3'末端に作動可能に連結している。選んだ宿主細胞において機能的である任意のターミネーターを本発明において用いることができる。
【0055】
ポリペプチドの発現は、増殖培地中に細胞外発現されるよう分泌経路に振り分けられることを目的とする。酵母宿主細胞における発現のためのリーダーでプレペプチドとして用いるのに有用なシグナルペプチドは、サッカロミセス・セレビシエのアルファ因子及びサッカロミセス・セレビシエのインベルターゼに対する遺伝子等から得られる。有用なプレペプチド(シグナルペプチド)の他の例として、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(Yps1)シグナルペプチド(Egel-Mitaniら(1990) YEAST 6:127〜137頁及びUS5,726,038号)、MFα1遺伝子のアルファ因子シグナル(Thorner (1981) The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae、Strathernら編、143〜180頁、Cold Spring Harbor Laboratory社、NY及びUS4,870,008号)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchleら、Nature 289、1981、643〜646頁)、修飾されたカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. Vallsら、Cell 48、1987、887〜897頁)、及び酵母BAR1シグナルペプチド(WO87/02670)がある。
【0056】
ポリペプチドをコードするDNA配列、プロモーター、ターミネーター、及び分泌シグナル配列をそれぞれライゲートし、これらを複製に必要な情報を含む適切なベクター中に挿入するのに用いる手順は、当業者にはよく知られている(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor社、New York、1989を参照されたい)。
【0057】
多くの酵母細胞は、酵母細胞における安定な維持を確実にする様々なエレメントを含む、2ミクロンプラスミドと呼ばれる内在性プラスミドを含んでいる[Guerineauら、1971、Biochem. Biophys. Res. Comm. 42(3):550〜557頁]。この内在性2ミクロンの全体又は一部を、組換え発現に必要な配列の安定な維持を確保するための方法として、組換え遺伝子と組み合わせて用いることができる(Beggs J.D.、1978、Transformation of yeast by a replicating hybrid plasmid、Nature、275:104〜109頁)。内在性2ミクロンプラスミドが細胞に存在する場合、組換え発現のための発現プラスミドは複製開始点及びSTB領域を含むことだけを必要とすることが、本発明者により見出されている。内在性2ミクロンプラスミド上に存在する他の因子は、トランスに機能し得る。複製開始点及びSTB領域は、内在性2μプラスミドの小部分を構成するにすぎない。
【0058】
本発明の一態様において、2ミクロンプラスミド由来の複製開始点及びSTB領域だけを含む発現プラスミドを提供する。それゆえ、この最小発現プラスミドは、FLP領域、リピート1領域、REP1領域、Dタンパク質、リピート2領域、及びREP2領域のいずれも含まない。ある実施形態において、このプラスミドは、発現カセット、AmpR遺伝子を含む大腸菌(E. coli)部分、Russell, PR (1985、Transcription of the triose-phosphate gene of Schizosaccharomyces pombe initiates from a start point different from that in Saccharomyces cerevisiae、Gene、40:125〜130頁)に記載されているトリオース-ホスフェート-イソメラーゼをコードする分裂酵母(S. pombe)配列を含む。別の一実施形態において、最小プラスミドは、AmpR又は他の抗生物質抵抗性遺伝子を含まない。このような抗生物質抵抗性遺伝子は、大腸菌等におけるクローニング作業中に有用であるが、工業規模の組換えタンパク質発現に用いるプラスミドにおいて抗生物質抵抗性遺伝子を排除するのに好ましい。抗生物質抵抗性遺伝子は、宿主細胞からよく知られている手順により、非機能性にし、又は除去することができ、例えば、WO00/04172を参照されたい。最小発現プラスミドは、酵母におけるポリペプチドの発現に有用である。
【0059】
本発明のベクターは、形質転換された細胞を容易に選択できるようにする1つ又は複数の選択マーカーを含むことが好ましい。選択マーカーは、その産物が、殺生物剤又はウイルス抵抗性、重金属に対する抵抗性、補完の栄養素要求性等を提供する遺伝子である。細菌の選択マーカーの例として、枯草菌(Bacillus subtilis)若しくはリケニホルミス菌(Bacillus licheniformis)由来のdal遺伝子、又はアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、若しくはテトラサイクリン抵抗性等の抗生物質抵抗性を付与するマーカーがある。栄養素要求性酵母細胞において用いるための選択マーカーには、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、及びURA3が含まれる。酵母において好ましい選択マーカーは、分裂酵母TPI遺伝子である(Russell (1985) Gene 40:125〜130頁)。
【0060】
ベクターにおいて、ポリヌクレオチド配列は適切なプロモーター配列に作動可能に接続している。プロモーターは、変異体の、切断された、及びハイブリッドのプロモーターを含め、選んだ宿主細胞において転写活性を示すあらゆる核酸配列であってよく、宿主細胞に同種性又は異種性いずれかの、細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得てもよい。酵母宿主細胞における有用なプロモーターの例として、サッカロミセス・セレビシエMFα1、TPI1、ADH2、TDH3、又はPGK1プロモーターがある。
【0061】
本発明のポリヌクレオチド構築物は、典型的には、適切なターミネーターにも作動可能に接続している。酵母において、適切なターミネーターの例として、TPI1ターミネーター(Alberら(1982) J. Mol. Appl. Genet. 1:419〜434頁)があるが、任意の内在性酵母ターミネーターでもよい。
【0062】
本発明のポリヌクレオチド配列、プロモーター、及びターミネーターをそれぞれライゲートし、これらを酵母の複製に必要な情報を含む適切な酵母ベクター中に挿入するのに用いる手順は、当業者にはよく知られている。ベクターは、発現させようとするポリペプチドをコードするDNA配列全体を含むDNA構築物を最初に調製し、続いてこのフラグメントを適切な発現ベクター中に挿入することによって、又は個々のエレメント(例えば、本発明のα接合因子バリアント、N末端延長部を任意選択で含む発現させようとするポリペプチド)に関する遺伝情報を含むDNAフラグメントを逐次的に挿入し、続いてライゲーション、シームレスクローニング法、若しくは相同組換えによる酵母細胞への直接クローニングによりエレメントを組み立てることによって構築され得ることが理解されよう。
【0063】
本発明は、本発明のα接合因子バリアント及び発現させようとするポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、組換え宿主細胞にも関する。このようなポリヌクレオチド配列を含むベクターを、ベクターが染色体の組込み体として、又は自己複製性染色体外ベクターとして維持されるように、宿主細胞中に導入する。
【0064】
本明細書で用いる「宿主細胞」は、対象のポリペプチドの発現に用いる微生物を意味するものとされる。宿主細胞は、複製の間に生じる変異のため、親細胞と同一ではない親細胞のあらゆる子孫を包含する。
【0065】
本発明に適する宿主細胞は酵母細胞である。本明細書で用いる「酵母」には、有子嚢胞子酵母(ascosporogenous yeast)(エンドミセス目(Endomycetales))、担子菌酵母(basidiosporogenous yeast)、及び不完全菌類(Fungi Imperfecti)に属する酵母(ブラストミセス(Blastomyces))が含まれる。有子嚢胞子酵母は、スペルモフソラセア(Spermophthoraceae)科及びサッカロミセス(Saccharomycetaceae)科に分けられる。後者はシゾサッカロミコイデアエ(Schizosaccharomycoideae)(例えば、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属)、ナドソニオイデアエ(Nadsonioideae)、リポミコイデアエ(Lipomycoideae)、及びサッカロミコイデアエ(Saccharomycoideae)(例えば、ピキア(Pichia)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、及びサッカロミセス(Saccharomyces)属)の4亜科からなる。担子菌酵母には、ロイコスポリジウム(Leucosporidium)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、スポリジオボルス(Sporidiobolus)属、フィロバシディウム(Filobasidium)属、及びフィロバシディエラ(Filobasidiella)属が含まれる。不完全菌類に属す酵母は、スポロボロミセス科(Sporobolomycetaceae)(例えば、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属及びブレラ(Bullera)属)及びクリプトコッカス科(Cryptococcaceae)(例えば、カンジダ(Candida)属)の2科に分けられる。酵母の分類は将来変わる可能性があるので、本発明の目的では、酵母はBiology and Activities of Yeast(Skinner, F.A.、Passmore, S.M.、及びDavenport, R.R.編、Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No. 9、1980)に記載される通りに規定される。酵母の生物学及び酵母の遺伝的性質の操作は当技術分野ではよく知られている(例えば、Biochemistry and Genetics of Yeast、Bacil, M.、Horecker, B.J.、及びStopani, A.O.M.編、第2版、1987; The Yeasts、Rose, A.H.及びHarrison, J.S.編、第2版、1987;並びにThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、Strathernら編、1981を参照されたい)。
【0066】
本発明のプロセスにおいて用いる酵母宿主細胞は、培養に際して、発現させようとするポリペプチドを大量に産生する、あらゆる適切な酵母生物体であってよい。
【0067】
適切な酵母生物体の例として、カンジダ、クルイベロミセス、サッカロミセス、シゾサッカロミセス、ピキア、ハンセヌラ(Hansenula)、及びヤロウイア(Yarrowia)の種の細胞から選択される株がある。一実施形態において、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・ジアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、及びゲオトリクム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)から選択される。他の有用な酵母宿主細胞には、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クルイベロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ヤロウイア・リポリティカ、分裂酵母、トウモロコシ黒穂病菌(Ustilgo maylis)、カンジダ・マルトース(Candida maltose)、ピキア・ギリエルモンディ(Pichia guilliermondii)、及びピキア・メタノリオール(Pichia methanoliol)がある(Gleesonら、J. Gen. Microbiol. 132、1986、3459〜3465頁;US4,882,279及びUS4,879,231を参照されたい)。酵母細胞の形質転換は、例えば、プロトプラスト形成、その後それ自体知られている様式の形質転換によって行ってもよい。
【0068】
ポリペプチドを発現させるための宿主細胞は、いかなる機能的な抗生物質抵抗性遺伝子も含まない細胞であることが好ましい。このような抗生物質抵抗性遺伝子は、大腸菌等において最初のクローニングステップの間は有用であるが、抗生物質抵抗性遺伝子は、よく知られている手順によって、機能を失わせるか、又は宿主細胞から除去することがでる。例えば、WO00/04172を参照されたい。
【0069】
本明細書で用いる「培地」は、宿主細胞を培養するための、すなわち、酵母の増殖及び産物の生成を補助するための液体溶液を意味するものとされる。酵母に適する培地は、例えば、YPD、又はWO2008/037735に記載されている通りである。培地は、少なくとも1つの炭素源、1つ又はいくつかの窒素源、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、ホスフェート、及びサルフェートの塩を含めた必須の塩、微量金属、水溶性ビタミン、並びにそれだけには限定されないが、消泡剤、プロテアーゼインヒビター、安定化剤、リガンド、及び誘発剤を含めた加工助剤を含有する。典型的な炭素源は、例えば単糖又は二糖である。典型的な窒素源は、例えば、アンモニア、尿素、アミノ酸、酵母抽出物、コーンスティープリカー、及び完全又は部分的に加水分解されたタンパク質である。典型的な微量金属は、例えば、Fe、Zn、Mn、Cu、Mo、及びH
3BO
3である。典型的な水溶性ビタミンは、例えば、ビオチン、パントテン酸塩、ナイアシン、チアミン、p-アミノ安息香酸、コリン、ピリドキシン、葉酸、リボフラビン、及びアスコルビン酸である。
【0070】
本明細書で用いる「発酵」は、液体培地中に浸水されている微生物を増殖させるのに用いる無菌的なプロセスを意味するものとされる。発酵は、それだけには限定されないが、空気、酸素、及びアンモニアからなる、圧縮された無菌の気体を加えるための供給ラインを有する、無菌の、撹拌されているタンク中で行うことが好ましい。発酵タンクは、pH、温度、圧力、撹拌速度、溶存酸素レベル、液体含量、泡沫レベル、フィード添加速度、並びに酸及び塩基の添加速度をモニタリングするためのセンサー及び装置を含むことができる。更に、発酵タンクはその物理化学形態に関係なく、細胞密度のレベル、代謝産物及び産物の濃度をモニタリングするための光学装置を備えていてもよい。
【0071】
発酵の間に産生された所望の産物は、可溶性材料の形態において、又は凝集した材料を含めた不溶性材料としてのいずれかの、可溶性細胞外材料として、又は細胞内材料として存在する。産物が可溶性細胞外材料として存在することが好ましい。発酵プロセスは、100mLから200.000Lまでの範囲の実動容積を有するタンク中で行うのが典型的である。発酵プロセスは、バッチプロセス、流加培養プロセス、反復流加培養プロセス、又は持続性のプロセスとして操作することができる。
【0072】
分泌されたポリペプチドは、かなりの比率が正しくプロセシングされた形態で培地中に存在するが、酵母細胞を培地から遠心分離、ろ過によって分離し、又はイオン交換マトリクス若しくは逆相吸収マトリクスによりポリペプチドを捕捉し、上清若しくはろ液のタンパク質成分を硫酸アンモニウム等の塩により沈澱させ、引き続き様々なクロマトグラフィー手順、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等により精製することを含めた従来の手順によって培地から回収してもよい。
【0073】
本発明の新規なα接合因子バリアントはまた、酵母における発現の間、ポリペプチドのO-グリコシル化の低減を促進する。したがって、本発明のα接合因子バリアントは、酵母においてGLP-1ペプチド等のポリペプチドを作るための改善された方法において用いることができる。O-グリコシル化の能力が低減した酵母細胞においてポリペプチドを発現させることで、前記前駆体の収率の改善を維持し、同時に発現の間にO-グリコシル化される前記ポリペプチドの割合を更により低減することができる。
【0074】
タンパク質O-マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)は、真菌における重要なタンパク質修飾であるO-マンノシルグリカンの組立てを開始する。PMTは真菌において保存されており、PMTファミリーは系統学的にPMT1、PMT2、及びPMT4サブファミリーに分類され、これらはタンパク質基質の特異性が異なる。タンパク質O-マンノシルトランスフェラーゼPmt1p及びPmt2pは、ドリコールリン酸D-マンノースからマンノシル残基を転移することにより、酵母の小胞体中のタンパク質におけるセリン及びスレオニン残基のO-グリコシル化を触媒する(Gentzschら、FEBS Lett 1995、18、128〜130頁)。サッカロミセス・セレビシエ及び他の多くの酵母では、PMTファミリーは高度に重複性であり、PMT1/PMT2及びPMT4サブファミリーメンバーの同時欠失だけが致死的である(Girrbach及びStrahl、J. Biol. Chem. 2003、278、12554〜62頁)。US5,714,377は、PMT1/PMT2修飾からO-グリコシル化能力が低減した酵母細胞は依然として生存性であり、工業的な発酵条件下で良好な増殖の特徴を示すと記載している。
【0075】
非限定的な実施形態
本発明を、以下の非限定的な実施形態によって更に記述する:
1. 酵母におけるポリペプチドの組換え発現のための方法であって、前記方法は、ポリペプチドの上流にプロセシング及び分泌シグナルをコードするDNA配列を含む酵母株を培養する工程を含み、前記プロセシング及び分泌シグナルは、38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアントを含む、方法:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)。
2. X
38が、F、L、又はVであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、G又はRであり、
X
41が、S、Y、L、I、V、又はMであり、
X
42が、Y、W、L、V、又はMである、
実施形態1に記載の方法。
3. X
38が、I又はVであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41が、Y、F、又はWであり、
X
42が、L又はIである、
実施形態1に記載の方法。
4. X
38が、Vであり、
X
39が、L、I、V、又はMであり、
X
40が、G又はRであり、
X
41が、Yであり、
X
42が、Lである、
実施形態1から3のいずれか一項に記載の方法。
5. X
38-X
39-X
40-X
41-X
42における4個のアミノ酸残基が、VIGYL又はVIGYSにおける対応するアミノ酸残基に同一である、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
6. X
38-X
39-X
40-X
41-X
42における少なくとも3個のアミノ酸残基が、VIGYL又はVIGYSにおける対応するアミノ酸残基に同一である、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
7. X
41がYである、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
8. X
41がLである、実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
9. X
42がLである、実施形態1から8のいずれか一項に記載の方法。
10. X
42がSである、実施形態1及び5から8のいずれか一項に記載の方法。
11. X
42がY、W、L、I、V、又はMである、実施形態1及び5から8のいずれか一項に記載の方法。
12. X
40がRである、実施形態1から11のいずれか一項に記載の方法。
13. X
38がVであり、X
39がIであり、X
41がYであり、X
42がLである、実施形態12に記載の方法。
14. X
38がVであり、X
39がIであり、X
41がYであり、X
42がSである、実施形態12に記載の方法。
15. 式(I)がVI-X
40-YL又はVI-X
40-YSである、実施形態1又は12に記載の方法。
16. X
40がA、Y、F、W、R、K、L、I、V、又はMである、実施形態15に記載の方法。
17. 前記α接合因子プロペプチドバリアントが、配列番号2(アミノ酸残基20〜85)に記載のα接合因子プロペプチドに比べて、X
38〜X
42配列の外に10個未満のアミノ酸残基の変更を有する、実施形態1から16のいずれか一項に記載の方法。
18. 前記α接合因子プロペプチドバリアントが、配列番号2(アミノ酸残基20〜85)に記載のα接合因子プロペプチドに比べて、X
38〜X
42配列の外に5個未満のアミノ酸残基の変更を有する、実施形態1から17のいずれか一項に記載の方法。
19. 前記α接合因子プロペプチドバリアントが、配列番号2(アミノ酸残基20〜85)に記載のα接合因子プロペプチドに比べて、X
38〜X
42配列の外に2個未満のアミノ酸残基の変更を有する、実施形態1から18のいずれか一項に記載の方法。
20. 前記α接合因子プロペプチドバリアントが、C末端部分としての前記α接合因子プロペプチドバリアントに融合している、N末端部分としてのプレペプチドを含むα接合因子プレプロペプチドの一部である、実施形態1から19のいずれか一項に記載の方法。
21. 前記プレペプチドが、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド由来、サッカロミセス・セレビシエ由来のMFα1遺伝子のα因子シグナル由来、又はそのバリアントである、実施形態20に記載の方法。
22. 前記酵母が、O-グリコシル化に対するその能力を低減する、少なくとも1つの遺伝子修飾を保有する、実施形態1から21のいずれか一項に記載の方法。
23. 前記酵母が、O-グリコシル化に対するその能力を低減する、PMT1又はPMT2に対する遺伝子内の少なくとも1つの遺伝子修飾を保有する、実施形態22に記載の方法。
24. 前記酵母が、対応する非修飾の遺伝子を保有する酵母に比べて、アルファリーダーとともに発現される場合、ポリペプチドGLP-1(7-37)[K34R]のタンパク質O-マンノシルトランスフェラーゼ1(PMT1)によるO-グリコシル化に対するその能力を低減する、少なくとも1つの遺伝子修飾を保有する、実施形態22又は23に記載の方法。
25. 前記酵母が、対応する非修飾の遺伝子を保有する酵母に比べて、アルファリーダーとともに発現される場合、ポリペプチドGLP-1(7-37)[K34R]のタンパク質O-マンノシルトランスフェラーゼ2(PMT2)によるO-グリコシル化に対するその能力を低減する、少なくとも1つの遺伝子修飾を保有する、実施形態22から24のいずれか一項に記載の方法。
26. O-グリコシル化に対する前記能力が、2分の1以下に低減している、実施形態22から25のいずれか一項に記載の方法。
27. O-グリコシル化に対する前記能力が、4分の1以下に低減している、実施形態22から26のいずれか一項に記載の方法。
28. 前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、PMT1又はPMT2のコード領域に位置する、実施形態22から27のいずれか一項に記載の方法。
29. 前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、PMT1又はPMT2の発現及び/若しくは転写の調節を担い、又はその調節に関与する領域に位置する、実施形態22から27のいずれか一項に記載の方法。
30. 前記酵母においてPMT1遺伝子が欠失している、実施形態22から27のいずれか一項に記載の方法。
31. 前記酵母におけるPMT1及びPMT2遺伝子が両方とも欠失している、実施形態22から27のいずれか一項に記載の方法。
32. 前記ポリペプチドがGLP-1ペプチドを含む、実施形態1から31のいずれか一項に記載の方法。
33. 前記ポリペプチドが、GLP-1(9-37)[K34R]又はGLP-1(9-37)[K34R]を含む、実施形態32に記載の方法。
34. 前記ポリペプチドが、GLP-1(7-37)[K34R]、GLP-1(9-37)[K34R]、又はGLP-1(9-37)[K34R,G37K] (配列番号44)である、実施形態33に記載の方法。
35. 前記ポリペプチドがN末端延長部を有する、実施形態32から34のいずれか一項に記載の方法。
36. 前記N末端延長部が、EEK、EEAEK、HK、EEAHK、E(EA)2HK、E(EA)3HK、EEGHK、EHPK、EEGEPK、EEAHELK、EEAHEVK、EEAHEMK、EEAHEFK、EEAHEYK、EEAHEWKEEGNTTPK、及びEELDARLEALKからなる群から選択される、実施形態35に記載の方法。
37. 前記N末端延長部が、DV、DVKPGQPLA、DVKPGQPEY、DVKPGEPLY、DVKPGQPLY、DVKPGQPLE、DVKPGQPMY、及びDVKPGQPMYDDDDKからなる群から選択される、実施形態35に記載の方法。
38. 前記N末端延長部が、QPMYKR、GQPMYK、PGQPMY、KPGQPM、LKPGQP、QLKPGQ、LQLKPG、WLQLKP、HWLQLK、WHWLQL、AWHWLQ、EAWHWL、AEAWHW、及びEAEAWHからなる群から選択される、実施形態35に記載の方法。
39. 38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアント:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)。
40. X
38〜X
42が、VIGYS、VIDYS、VATYL、VIGYR、及びAIGYLではない、実施形態39に記載のα接合因子プロペプチドバリアント。
41. - プレペプチド
- 38〜42位のVIGYL配列に少なくとも1つの置換を有し、以下の一般式(I)のアミノ酸配列を含むα接合因子プロペプチドバリアント:
X
38-X
39-X
40-X
41-X
42 (配列番号1) (I)
(式中、
X
38は、F、L、I、又はVであり、
X
39は、L、I、V、又はMであり、
X
40は、A、G、S、E、Q、Y、F、W、R、K、H、L、I、V、又はMであり、
X
41は、S、Y、F、W、L、I、V、又はMであり、
X
42は、Y、W、L、I、V、M、又はSであり、
ただし、X
38〜X
42は、VIGYSではない)
- 任意選択により、延長ペプチド、及び
- GLP-1ペプチド
を含む融合ポリペプチドであるGLP-1前駆体。
42. 前記GLP-1前駆体に含まれる諸ペプチドが、これらを列挙した順序、すなわちプレペプチド-α接合因子プロペプチドバリアント、任意選択の延長ペプチド及びGLP-1ペプチドに従って融合される、実施形態41に記載のGLP-1前駆体。
43. 実施形態39から42のいずれか一項に規定のポリペプチドをコードするDNA配列。
44. 実施形態43に記載のDNA配列を含む発現ベクター。
45. 発現させようとするポリペプチドをコードする前記DNA配列が、上流のプロモーター及び下流のターミネーターに作動可能に連結されている、実施形態44に記載の発現ベクター。
46. 実施形態44又は45に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
47. サッカロミセス種、ピキア種、ハンセヌラ(Hansenula)種、アークスラ(Arxula)種、クルイベロミセス種、ヤロウイア種、及びシゾサッカロミセス種からなる群から選択される、実施形態46に記載の宿主細胞。
【0076】
本明細書に引用する、刊行物、特許出願、及び特許を含めた参考文献は全て、各参考文献が参照により援用されることが個々に及び特に指示され、本明細書にその全文が記載される如く、その全文において、及び同程度まで、参照により本明細書に援用される(法律により許容される最大の程度まで)。表題及び副表題は全て、便宜上本明細書において用いるにすぎず、本発明を限定するものとは決して解釈してはならない。本明細書に提供するあらゆる全ての例、又は例示的な表現(例えば「等の」)の使用は、本発明をより良好に解明することを意図するにすぎず、別段の請求がなければ、本発明の範囲に対して制限をおくものではない。本明細書におけるどの表現も、いずれかの非請求のエレメントが本発明の実践に不可欠であることを示すものとして解釈してはならない。本明細書における特許文献の引用及び援用は、便宜上行うにすぎず、このような特許文献の妥当性、特許性、及び/又は執行可能性のあらゆる視点を反映するものではない。本発明は、適用可能な法律によって許容される、本明細書に添付する特許請求の範囲において記載する主題の修飾及び等価を全て含む。
【実施例】
【0077】
(実施例1〜45)
本発明者らは、TDH3プロモーター、MFアルファプレプロペプチドをコードする遺伝子、N末端が延長されたGLP-1(DVKPGQPMYDDDDK-GLP-1(7-37)[K34R]) (配列番号45)をコードする遺伝子、酵母における維持のための最小2ミクロン領域、及び選択マーカー、すなわち分裂酵母由来のTPI遺伝子を含むプラスミドを構築した(
図1を参照されたい)。
【0078】
このプラスミドのバックグラウンドにおいて、本発明者らは、MFアルファプロペプチド領域の38〜42位をコードする領域であるX
38〜X
42=VIGYL配列に様々な単一変異を導入した(
図2を参照されたい)。実施例1は野生型VIGYL配列を用いた実験であり、Table 1〜5(表1〜5)を参照されたい。実施例5〜6、10〜11、28〜29、37〜38、及び44〜45は他の参照実験である。
【0079】
これらのプラスミドを、TPI1遺伝子を欠くサッカロミセス・セレビシエ株中に導入し、唯一の炭素源としてグルコースを含有する培地上で、プラスミドを抱え持つ形質転換体を選択させた。形質転換体を、この後、振盪フラスコ中関連の培地5ml中で3日間培養し、培養上清を、分泌されたGLP-1ペプチドの濃度、及びペプチドのO-グリコシル化の度合いについてLCMSによって分析した。Table 1〜5(表1〜5)に、野生型の、及び配列X
38〜X
42の単一のアミノ酸残基の変異体の、収率及びO-グリコシル化の度合いを示す(各位置に対する数例の参照用実施例を含む)。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
(実施例46)
TDH3プロモーター、MFアルファプレプロペプチドをコードする遺伝子、N末端が延長されたGLP-1(DVKPGQPMYDDDDK-GLP-1(7-37)[K34R])をコードする遺伝子、酵母内に維持するための最小2ミクロン領域、及び選択マーカー(
図1)を含む、実施例1〜45におけるプラスミドと同様のプラスミドを、一方はPMT1遺伝子を含み(PMT+)、他方はPMT1遺伝子が欠失している(PMT-)、異なる2つの株のバックグラウンドに形質転換した。PMT1遺伝子は、O-グリコシル化に関与するタンパク質マンノシルトランスフェラーゼをコードする。
【0086】
MFアルファプロペプチドは、野生型(40G)又は変異型(G40R)のいずれかであった。この株を、連続培養における理想的な条件下、希釈率=0.1及びpH5.8で培養した。試料をHPLCによって分析して使用済み培地中のGLP-1前駆体の濃度を決定し、LCMSによって分析してO-グリコシル化GLP-1前駆物質の比率を決定した。
【0087】
結果は、効果が実際に相加的であることを実証する。
【0088】
G40R変異により、O-グリコシル化は80%を超えて低減した。PMT1の欠失により、O-グリコシル化は更に80%を超えて低減し、この場合O-グリコシル化のレベルは検出限界付近になる。更に、G40R変異により、PMT+株及びpmt1欠失株の両方において、N末端が延長されたGLP-1の収率は、40G野生型バージョンに比べて驚くほど上昇する。
【0089】
これらの結果は、G40R等のMFアルファプロペプチドにおける有益な変異、及びPMT1欠失宿主株の組合せにより、O-グリコシル化における相加的な低減がもたらされることを実証する。
【0090】
【表6】
【0091】
(実施例47)
他のGLP-1ペプチドの発現の間の1つの変異の効果を調べるために、本発明者らは、TDH3プロモーター、野生型(40G)又は40R変異いずれかの形態におけるMFアルファプレプロペプチドをコードする遺伝子、N末端が延長されたGLP-1(DVKPGQPMYDDDDK-GLP-1(9-37)[K34R]又はDVKPGQPMYDDDDK-GLP-1(9-37)[K34R,G37K])をコードする遺伝子、酵母内に維持するための最小2ミクロン領域、及び選択マーカー、すなわち分裂酵母由来のTPI遺伝子を含むプラスミドを構築した(
図1を参照されたい)。
【0092】
これらのプラスミドを、TPI1遺伝子を欠くサッカロミセス・セレビシエ株中に導入し、唯一の炭素源としてグルコースを含有する培地上で、プラスミドを持つ形質転換体を選択させた。形質転換体を、この後、振盪フラスコ中の適切な培地5ml中で3日間培養し、培養上清を、分泌されたGLP-1ペプチドの濃度、及びペプチドのO-グリコシル化の度合いについてLCMSによって分析した。Table 7(表7)は、野生型及び40R変異が発現された場合の、GLP-1ペプチドの収率、及びGLP-1ペプチドのO-グリコシル化の度合いを含めた結果を示す。
【0093】
【表7】
【0094】
本発明のある種の特徴を本明細書に説明し記載してきたが、ここからは、当業者であれば、多くの修飾形態、置換形態、変更形態、及び均等物を思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、このような修飾形態及び変更形態は全て本発明の真の精神内にあるとして包含するものと理解されたい。