(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前後進切換え装置は、係合時に前記車両の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する前進用係合要素と、係合時に前記車両の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する後進用係合要素と、を備え、
前記係合要素は、前記後進用係合要素である請求項2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
前記シンクロ機構は、前記係合圧の供給時には前記係合状態を維持し、前記係合圧の非供給時には前記解放状態に切り換える付勢部を備える請求項3に記載の自動変速機の油圧制御装置。
前記無段変速機構は、プライマリプーリ圧が供給され前記変速比を調整するプライマリプーリと、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリとを備え、
前記第2のソレノイドバルブは、前記セカンダリプーリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイドバルブであり、
前記対抗圧は、前記セカンダリリニアソレノイドバルブから供給されるセカンダリ制御圧である請求項7又は8に記載の自動変速機の油圧制御装置。
前記無段変速機構は、プライマリプーリ圧が供給され前記変速比を調整するプライマリプーリと、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリとを備え、
前記信号圧供給部は、前記プライマリプーリ圧を調圧するプライマリリニアソレノイドバルブであり、
前記信号圧は、前記プライマリリニアソレノイドバルブから供給されるプライマリ制御圧である請求項5に記載の自動変速機の油圧制御装置。
前記前後進切換え装置は、係合時に前記車両の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する前進用係合要素と、係合時に前記車両の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する後進用係合要素と、を備え、
前記係合要素は、前記前進用係合要素である請求項2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
前記係合要素は、前記第2の動力伝達経路に介在され、前記第2のモードにおいては係合状態になり、前記入力軸と前記駆動軸とを前記第2の動力伝達経路により接続して回転伝達する請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る自動変速機10の油圧制御装置12を、
図1乃至
図6Bに沿って説明する。尚、本明細書中で駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、あるいはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
【0012】
本実施形態の自動変速機10を備える車両1の概略構成について
図1に沿って説明する。車両1は、自動変速機10と、制御装置(ECU)11と、油圧制御装置12とを備えている。
【0013】
自動変速機10は、不図示のトルクコンバータと、入力軸2を有する前後進切換え装置3と、無段変速機構4と、減速ギヤ機構5と、駆動軸60を有する出力ギヤ部6と、カウンタシャフト部7と、ディファレンシャル装置8と、これらを収容するミッションケース9とを備えている。また、自動変速機10には、前後進切換え装置3の入力軸2と出力ギヤ部6の駆動軸60とを前後進切換え装置3を介して連結する第1の動力伝達経路a1と、入力軸2と駆動軸60とを少なくとも一部は第1の動力伝達経路a1とは別の経路で、かつ無段変速機構4を介して連結する第2の動力伝達経路a2とが形成されている。また、自動変速機10は、第1軸AX1〜第5軸AX5までの互いに平行な軸を備えている。
【0014】
第1軸AX1は、不図示の内燃エンジン(駆動源)のクランク軸と同軸になっている。この第1軸AX1上には、クランク軸に連結される自動変速機10の入力軸、トルクコンバータ、前後進切換え装置3及び無段変速機構4の入力軸2、前後進切換え装置3のプラネタリギヤDP、第1のクラッチ(前進用係合要素、係合要素)C1、第1のブレーキ(後進用係合要素、係合要素)B1、無段変速機構4のプライマリプーリ41が配置されている。
【0015】
第2軸AX2上には、減速ギヤ機構5が配置されている。第3軸AX3上には、無段変速機構4のセカンダリプーリ42、第2のクラッチ(係合要素)C2、出力ギヤ部6が配置されている。第4軸AX4上には、カウンタシャフト部7が配置されている。第5軸AX5上には、ディファレンシャル装置8、左右のドライブシャフト81L,81Rが配置されている。
【0016】
クランク軸に連結される自動変速機10の入力軸は、トルクコンバータを介して前後進切換え装置3及び無段変速機構4の入力軸2に連結されている。前後進切換え装置3は、プラネタリギヤDPと、第1のブレーキB1と、第1のクラッチC1とを備え、車両1の走行方向により回転方向を切り換えて伝達するようになっている。入力軸2は、プラネタリギヤDPの内周側を通って無段変速機構4のプライマリプーリ41に接続されていると共に、プラネタリギヤDPのキャリヤCRに接続されている。プラネタリギヤDPは、サンギヤS、リングギヤR、サンギヤSに噛合するピニオンP1及びリングギヤRに噛合するピニオンP2を回転自在に支持するキャリヤCRを有している所謂ダブルピニオンプラネタリギヤで構成されている。このうちのリングギヤRは、第1のブレーキB1によりミッションケース9に対して回転を係止自在となるように構成されている。また、サンギヤSは中空軸30に直接的に連結され、キャリヤCRは第1のクラッチC1を介して中空軸30に接続され、中空軸30は正逆回転出力ギヤ31に連結されている。尚、中空軸30は、第1のクラッチC1のクラッチドラム32にも連結されており、これら正逆回転出力ギヤ31と、中空軸30と、クラッチドラム32とが一体となって回転部材を構成している。
【0017】
第1のクラッチC1は、係合時に車両1の前進方向の回転を伝達させる経路を形成するようになっており、第1のブレーキB1は、係合時に車両1の後進方向の回転を伝達させる経路を形成するようになっている。正逆回転出力ギヤ31は、減速ギヤ機構5の入力ギヤ51に噛合している。
【0018】
減速ギヤ機構5は、第2軸AX2上に配置される第1の回転軸50と、第1の回転軸50に設けられる入力ギヤ51と、第1の回転軸50に設けられ第1の動力伝達経路a1に介在されるシンクロ機構(シンクロメッシュ機構)S1と、第1の回転軸50に対して相対回転可能な中空軸からなる第2の回転軸53及び出力ギヤ56とを備えている。入力ギヤ51は、第1の回転軸50の一方側に一体的に固定され連結されている。第2の回転軸53は、第1の回転軸50の他方側の外周側に、例えばニードルベアリング(不図示)により相対回転自在に支持されている。即ち、第2の回転軸53は、第1の回転軸50と軸方向に重なる二重軸として配置されている。第2の回転軸53には、出力ギヤ56が一体的に固定されて連結されている。出力ギヤ56は、出力ギヤ部6の入力ギヤ61に噛合されている。
【0019】
シンクロ機構S1は、ドライブギヤ52と、ドリブンギヤ55と、不図示のシンクロナイザと、スリーブ57と、シフトフォーク58と、付勢ばね(付勢部)59と、シンクロ検出部15とを備えており、第1の回転軸50と第2の回転軸53とを係脱可能になっている。
【0020】
ドライブギヤ52は、入力ギヤ51よりも小径で、第1の回転軸50の一方側に一体的に固定されて連結されている。ドリブンギヤ55は、ドライブギヤ52と同径、かつ出力ギヤ56よりも小径で、第2の回転軸53に一体的に固定されて連結されている。シンクロナイザは、ドリブンギヤ55のドライブギヤ52側に配設されている。
【0021】
スリーブ57は、内周面に歯面が形成され、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55との外周側に軸方向に移動可能に配設されている。スリーブ57は、後述する油圧サーボ93(
図3参照)により駆動されるシフトフォーク58により軸方向に移動駆動されることで、ドライブギヤ52だけに噛合する位置と、ドライブギヤ52及びドリブンギヤ55に跨って両方に噛合する位置とにスライド駆動される。これにより、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とは、解放状態(切離し状態)又は係合状態(駆動連結状態)に切換自在にされる。
【0022】
付勢ばね59は、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とが解放状態になる方向にシフトフォーク58に付勢力を与える。このため、油圧サーボ93に係合圧PSLG又はモジュレータ圧P
LPM2が供給された時は、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とを係合状態にするように、油圧サーボ93が付勢ばね59の付勢力に抗してシフトフォーク58を移動させる。また、油圧サーボ93がドレーンされた時は、ドライブギヤ52とドリブンギヤ55とを解放状態にするように、付勢ばね59がシフトフォーク58を移動させる。即ち、係合圧PSLG又はモジュレータ圧P
LPM2の供給時には、シンクロ機構S1は係合状態(作動状態)に維持され、係合圧PSLG又はモジュレータ圧P
LPM2の非供給時には、付勢ばね59がシンクロ機構S1を解放状態に切り換える。
【0023】
シンクロ検出部15は、シンクロ機構S1が係合状態であるか否かを検出し、その結果をECU11に送信するようになっている。シンクロ検出部15としては、例えば、油圧サーボ93の可動部材やシフトフォーク58及びスリーブ57等の可動部材の移動を検出するセンサやスイッチ等を適用することができる。
【0024】
無段変速機構4は、変速比を連続的に変更可能であり、本実施形態ではベルト式無段自動変速機構を適用している。但し、これには限られず、無段変速機構4として、例えばトロイダル式無段変速機構やコーンリング式無段変速機構等を適用してもよい。無段変速機構4は、入力軸2に接続されたプライマリプーリ41と、セカンダリプーリ42と、該プライマリプーリ41及び該セカンダリプーリ42に巻き掛けられた無端状のベルト43とを備えて構成されている。プライマリプーリ41は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、入力軸2に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ41aと、入力軸2に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ41bとを有しており、これら固定シーブ41aと可動シーブ41bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト43を挟持している。
【0025】
同様に、セカンダリプーリ42は、それぞれが対向する円錐状に形成された壁面を有し、中心軸44に対して軸方向移動不能に固定された固定シーブ42aと、中心軸44に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ42bとを有しており、これら固定シーブ42aと可動シーブ42bとによって形成された断面V字状となる溝部によりベルト43を挟持している。これらプライマリプーリ41の固定シーブ41aとセカンダリプーリ42の固定シーブ42aとは、ベルト43に対して軸方向反対側となるように配置されている。
【0026】
また、プライマリプーリ41の可動シーブ41bの背面側には、油圧サーボ45が配置されており、セカンダリプーリ42の可動シーブ42bの背面側には、油圧サーボ46が配置されている。油圧サーボ45には、油圧制御装置12の不図示のプライマリ圧コントロールバルブからプライマリ圧が作動油圧として供給され、油圧サーボ46には、油圧制御装置12の不図示のセカンダリ圧コントロールバルブからセカンダリ圧が作動油圧として供給されるようになっている。そして、これら油圧サーボ45,46は、各作動油圧が供給されることにより負荷トルクに対応するベルト挟圧力を発生させると共に、変速比を変更又は固定するための挟圧力を発生させるように構成されている。
【0027】
セカンダリプーリ42の可動シーブ42bの出力軸47は、第2のクラッチC2を介して、出力ギヤ部6の駆動軸60に接続されている。即ち、第2のクラッチC2は、第2の動力伝達経路a2に介在されている。出力ギヤ部6は、駆動軸60と、該駆動軸60の一端側に固定されて連結された入力ギヤ61と、該駆動軸60の他端側に固定されて連結されたカウンタギヤ62と、を有して構成されており、カウンタギヤ62は、カウンタシャフト部7のドライブギヤ71に噛合されている。
【0028】
カウンタシャフト部7は、カウンタシャフト70と、該カウンタシャフト70に固定されて連結されたドライブギヤ71と、カウンタシャフト70に固定されて連結されたドリブンギヤ72と、を有して構成されており、ドリブンギヤ72は、ディファレンシャル装置8のデフリングギヤ80に噛合されている。
【0029】
ディファレンシャル装置8は、デフリングギヤ80の回転をそれぞれ左右ドライブシャフト81L,81Rにそれらの差回転を吸収しつつ伝達するように構成されており、左右ドライブシャフト81L,81Rは、それぞれ不図示の左右車輪に連結されている。尚、デフリングギヤ80がドリブンギヤ72に噛合し、ドライブギヤ71がカウンタギヤ62に噛合していることから、出力ギヤ部6の駆動軸60、カウンタシャフト部7のカウンタシャフト70、ディファレンシャル装置8は、左右ドライブシャフト81L,81Rを介して車輪と駆動連結されており、常に車輪に連動していることになる。
【0030】
ECU11は、例えば、CPUと、処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備えており、油圧制御装置12への制御信号等、各種の信号を出力ポートから出力するようになっている。尚、車両1には運転者が走行レンジを選択操作可能なシフトレバー13と、シフトレバー13のシフトポジションを検出するシフトポジション検出部14とが設けられている。ECU11には、シフトポジション検出部14と、シンクロ検出部15とが入力ポートを介して接続されている。
【0031】
ECU11は、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態であることを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、後述するセカンダリ制御圧(対抗圧)PSLSを制御して切換えバルブ27を後進状態にするようになっている(
図6Aのt2以降、
図6Bのt13以降参照)。また、ECU11は、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態でないことを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、セカンダリ制御圧PSLSを制御して切換えバルブ27を非後進状態にするようになっている(
図6Bのt11〜t13参照)。また、ECU11は、シフトポジションがRレンジに切り換わったことを検出してからの経過時間を計測するタイマ機能を備えている(
図4ステップS8参照)。また、ECU11は、セカンダリ制御圧PSLSを低減させる指令を発してからの経過時間を計測するタイマ機能を備えている(
図5ステップS20参照)。
【0032】
以上のように構成された自動変速機10は、
図1のスケルトン図に示す第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、シンクロ機構S1及び第1のブレーキB1が、
図2の係合表に示す組み合わせで係脱されることにより、前進の非無段モード(第1のモード)、前進の無段モード(第2のモード)、後進の非無段モードが達成される。尚、本実施形態では、第1のモードである非無段モードは、駆動力を第1の動力伝達経路a1により回転伝達する前進1速段又は後進1速段を意味しているが、これには限られず、多段変速であってもよい。また、本実施形態では、第2のモードである無段モードは、駆動力を第2の動力伝達経路a2により回転伝達する前進無段変速を意味している。
【0033】
油圧制御装置12は、不図示のオイルポンプで発生された油圧をプライマリレギュレータバルブ及びセカンダリレギュレータバルブにより、スロットル開度に基づきライン圧PL及びセカンダリ圧に調圧するようになっている。
図3に示すように、油圧制御装置12は、ライン圧モジュレータバルブ(元圧生成部)20と、マニュアルバルブ21と、リニアソレノイドバルブSL1と、リニアソレノイドバルブSL1に接続されるアキュムレータ22及びチェックバルブ23と、リニアソレノイドバルブSL2と、リニアソレノイドバルブSL2に接続されるアキュムレータ24及びチェックバルブ25と、クラッチアプライコントロールバルブ26と、切換えバルブ(シンクロ機構アプライコントロールバルブ)27と、リニアソレノイドバルブ(第1のソレノイドバルブ)SLGと、プライマリリニアソレノイドバルブSLP(
図7A参照)と、セカンダリリニアソレノイドバルブ(第2のソレノイドバルブ)SLS等を備えている。
【0034】
油圧制御装置12は、油圧により作動され第1のクラッチC1を係脱可能な油圧サーボ91と、油圧により作動され第2のクラッチC2を係脱可能な油圧サーボ92と、油圧により作動されシンクロ機構S1を係脱可能な油圧サーボ93と、油圧により作動され第1のブレーキB1を係脱可能な油圧サーボ94とに接続されている。また、プライマリリニアソレノイドバルブSLPは、プライマリ圧コントロールバルブにプライマリ制御圧PSLPを供給することで、プライマリ圧コントロールバルブから無段変速機構4の油圧サーボ45(
図1参照)に供給されるプライマリ圧を調圧するようになっている。更に、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSは、セカンダリ圧コントロールバルブにセカンダリ制御圧PSLSを供給することで、セカンダリ圧コントロールバルブから無段変速機構4の油圧サーボ46(
図1参照)に供給されるセカンダリ圧を調圧するようになっている。
【0035】
これにより、油圧制御装置12は、ECU11の指令により、係合圧を給排することで無段変速機構4の変速や、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1、シンクロ機構S1の係脱等の制御を行うようになっている。即ち、本実施形態の油圧制御装置12によれば、リニアソレノイドバルブSL1、リニアソレノイドバルブSL2、リニアソレノイドバルブSLGの3つのリニアソレノイドバルブを利用することにより、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1、シンクロ機構S1の4つの係合要素の係脱を実現するようになっている。
【0036】
ライン圧モジュレータバルブ20は、ライン圧PLを調圧して、ライン圧PLより低圧の一定圧であるモジュレータ圧(元圧、係合圧)P
LPM2を生成するようになっている。
【0037】
マニュアルバルブ21は、シフトレバー13(
図1参照)の操作により機械的あるいは電気的に移動されるスプール21pと、モジュレータ圧P
LPM2が入力される入力ポート21aと、スプール21pがD(ドライブ)レンジ位置の場合にモジュレータ圧P
LPM2を前進レンジ圧PDとして出力する出力ポート21bと、スプール21pがR(リバース)レンジ位置の場合にモジュレータ圧P
LPM2を後進レンジ圧(信号圧)PRとして出力する出力ポート21cと、を備えている。
【0038】
リニアソレノイドバルブSL1は、前進レンジ圧PDが入力される入力ポートSL1aと、後述するクラッチアプライコントロールバルブ26の第1の作動油室26a及び第1の入力ポート26cに連通される出力ポートSL1bとを備え、入力される前進レンジ圧PDを自在に調圧制御し、油圧サーボ91に供給するための係合圧PSL1を生成して出力ポートSL1bから供給するようになっている。
【0039】
アキュムレータ22は、可動部材22pと、該可動部材22pを押圧する圧縮コイルばねから成るスプリング22sと、可動部材22pをスプリング22sに抗して押し込んで蓄圧するための蓄圧油室22aと、を備えている。蓄圧油室22aは、前進レンジ圧PDを蓄圧可能になっている。アキュムレータ22は、マニュアルバルブ21の切換時に前進レンジ圧PDが無くなる際に、一定時間の間、リニアソレノイドバルブSL1に前進レンジ圧PDに相当する油圧を供給し続けるようになっており、ガレージ抜け制御をリニアソレノイドバルブSL1にて行うようになっている。
【0040】
チェックバルブ23は、前進レンジ圧PDが供給される入力ポート23aと、アキュムレータ22の蓄圧油室22a及びリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aに連通する出力ポート23bと、入力ポート23a及び出力ポート23bの連通及び遮断を切換可能な封止部材23pと、不図示のスプリングと、を備えている。スプリングは、入力ポート23a及び出力ポート23bを遮断するように封止部材23pに付勢すると共に、前進レンジ圧PDより低い油圧で入力ポート23aから出力ポート23bに向けて連通させるように設定されている。このため、入力ポート23aに前進レンジ圧PDが入力されることにより、封止部材23pはスプリングに抗して切り換わり、入力ポート23a及び出力ポート23bを連通し、入力ポート23aから出力ポート23bの一方向にのみ油圧を流通可能にしている。
【0041】
また、マニュアルバルブ21の出力ポート21bとチェックバルブ23の入力ポート23aとを連通する油路と、チェックバルブ23の出力ポート23bとリニアソレノイドバルブSL1の入力ポートSL1aとを連通する油路と、を連通する油路には、オリフィス95が配置されている。これにより、前進レンジ圧PDが無くなってアキュムレータ22がリニアソレノイドバルブSL1に前進レンジ圧PDに相当する油圧を供給する場合に、オリフィス95が設けられていない場合に比べて、供給可能な時間を延長することができる。
【0042】
リニアソレノイドバルブSL2は、前進レンジ圧PDが入力される入力ポートSL2aと、クラッチアプライコントロールバルブ26の第2の入力ポート26d及び第3の入力ポート26eに連通される出力ポートSL2bとを備え、入力される前進レンジ圧PDを自在に調圧制御し、油圧サーボ92に供給するための係合圧PSL2を生成して出力ポートSL2bから供給するようになっている。尚、リニアソレノイドバルブSL2に対して、アキュムレータ24、チェックバルブ25、オリフィス95が接続されているが、これらは上述したリニアソレノイドバルブSL1に接続されたアキュムレータ22、チェックバルブ23、オリフィス95と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
【0043】
クラッチアプライコントロールバルブ26は、図中左半分で示す位置(通常状態)(以下、「左半位置」という)と図中右半分で示す位置(タイアップ防止状態)(以下、「右半位置」という)とを切換自在なスプール26pと、該スプール26pを左半位置に付勢する圧縮コイルばねから成るスプリング26sと、を備えている。クラッチアプライコントロールバルブ26は、スプール26pを右半位置に押圧作用する方向に係合圧PSL1を入力する第1の作動油室26aと、スプール26pを左半位置に押圧作用する方向にモジュレータ圧P
LPM2を入力する第2の作動油室26bと、を備えている。また、クラッチアプライコントロールバルブ26は、係合圧PSL1を入力する第1の入力ポート26cと、係合圧PSL2を入力する第2の入力ポート26d及び第3の入力ポート26eと、を備えている。更に、クラッチアプライコントロールバルブ26は、油圧サーボ91に連通する第1の出力ポート26fと、ドレーンポート26gと、油圧サーボ92に連通する第2の出力ポート26hと、ドレーンポート26iと、を備えている。
【0044】
第1の作動油室26aと第2の作動油室26bとでは、スプール26pの受圧面積を同じに設定している。また、第2の入力ポート26dでは、スプール26pの軸方向両側で受圧面積を異ならせており、スプール26pを右半位置に押圧作用する側の受圧面積が大きくなるように設定している。更に、スプリング26sの付勢力は、第2の入力ポート26dに係合圧PSL2が供給された際にスプール26pの受圧面積差によってスプール26pを右半位置に押圧作用する押圧力よりも小さくなるように設定している。これにより、リニアソレノイドバルブSL1,SL2が同時に作動して、係合圧PSL1,PSL2が同時に出力された場合は、スプール26pの両端面で係合圧PSL1とモジュレータ圧P
LPM2とが打ち消し合うと共に、第2の入力ポート26dに供給された係合圧PSL2がスプール26pの受圧面積差によってスプール26pを右半位置に押圧作用する押圧力がスプリング26sに打ち勝って、スプール26pが右半位置に切り換わる。
【0045】
そして、クラッチアプライコントロールバルブ26は、スプール26pが左半位置の通常状態にある時は、第1の入力ポート26cと第1の出力ポート26fとが連通され、第3の入力ポート26eと第2の出力ポート26hとが連通されるようになっている。また、クラッチアプライコントロールバルブ26は、スプール26pが右半位置のタイアップ防止状態にある時は、第1の入力ポート26cと第1の出力ポート26fとが遮断され、第1の出力ポート26fとドレーンポート26gとが連通され、第3の入力ポート26eと第2の出力ポート26hとが遮断され、第2の出力ポート26hとドレーンポート26iとが連通されるようになっている。
【0046】
従って、リニアソレノイドバルブSL1が作動してリニアソレノイドバルブSL2が作動しない場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26は通常状態のままで、係合圧PSL1が油圧サーボ91に供給される。また、リニアソレノイドバルブSL2が作動してリニアソレノイドバルブSL1が作動しない場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26は通常状態のままで、係合圧PSL2が油圧サーボ92に供給される。更に、リニアソレノイドバルブSL1,SL2の両方が作動した場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26はタイアップ防止状態に切り換わり、油圧サーボ91,92はいずれもドレーンされるが、それには限られず、油圧サーボ91,92のいずれか一方はドレーンされ、他方は係合するようにしてもよい。これにより、油圧サーボ91及び油圧サーボ92に同時に係合圧が供給されることを防止できるので、第1のクラッチC1及び第2のクラッチC2の同時係合によるタイアップの発生を防止することができる。
【0047】
リニアソレノイドバルブSLGは、切換えバルブ27の第3の出力ポート27iに連通される入力ポートSLGaと、切換えバルブ27の第1の入力ポート27cに連通される出力ポートSLGbとを備え、入力されるモジュレータ圧P
LPM2又は後進レンジ圧PRを自在に調圧制御し、油圧サーボ93,94のいずれかに供給するための係合圧PSLGを生成して出力ポートSLGbから供給するようになっている。
【0048】
セカンダリリニアソレノイドバルブSLSは、モジュレータ圧P
LPM2が入力される入力ポートSLSaと、切換えバルブ27の第2の作動油室27bに連通される出力ポートSLSbとを備え、入力されるモジュレータ圧P
LPM2を自在に調圧制御し、セカンダリ制御圧PSLSを生成して出力ポートSLSbから切換えバルブ27に対向圧として供給するようになっている。尚、出力ポートSLSbは、不図示のセカンダリ圧コントロールバルブに連通されている。
【0049】
切換えバルブ27は、図中左半分で示す位置(非後進状態)と図中右半分で示す位置(後進状態)とを切換自在なスプール27pと、該スプール27pを左半位置に付勢する圧縮コイルばねから成るスプリング27sと、を備えている。切換えバルブ27は、スプール27pを右半位置に押圧作用する方向に後進レンジ圧PRを入力する第1の作動油室27aと、スプール27pを左半位置に押圧作用する方向にセカンダリ制御圧PSLSを入力する第2の作動油室27bとを備えている。また、切換えバルブ27は、係合圧PSLGを入力する第1の入力ポート27cと、モジュレータ圧P
LPM2を入力する第2の入力ポート27dと、後進レンジ圧PRを入力する第3の入力ポート27eと、を備えている。更に、切換えバルブ27は、油圧サーボ93に連通する第1の出力ポート27fと、油圧サーボ94に連通する第2の出力ポート27gと、ドレーンポート27hと、リニアソレノイドバルブSLGの入力ポートSLGaに連通される第3の出力ポート27iと、を備えている。
【0050】
第1の作動油室27a及び第3の入力ポート27eと、マニュアルバルブ21の出力ポート21cとを連通する油路には、オリフィス96が配設されている。これにより、走行レンジが後進レンジ以外のレンジから後進レンジに切り換わった際に、切換えバルブ27が非後進状態から後進状態に切り換わる速度を遅延することができ、特にシンクロ機構S1が係合する前に走行レンジが後進レンジに切り換わった場合には、後進レンジ圧PRが切換えバルブ27のスプール27pを移動させる前にセカンダリリニアソレノイドバルブSLSからセカンダリ制御圧PSLSを切換えバルブ27に供給してスプール27pを非後進状態に維持することができる(
図6Bのt11〜t13参照)。また、走行レンジが後進レンジから他のレンジに切り換わった際に、切換えバルブ27が後進状態から非後進状態に切り換わる速度を遅延することができ、ひいては油圧サーボ93及び油圧サーボ94のドレーン速度を遅延することができる。
【0051】
第2の出力ポート27gと油圧サーボ94とを連通する油路には、オリフィス97が配設されている。これにより、切換えバルブ27が後進状態から非後進状態に切り換わった後に、油圧サーボ94のドレーン速度を遅延することができる。
【0052】
第1の作動油室27aと第2の作動油室27bとでは、スプール27pの受圧面積を同じに設定している。また、スプリング27sの付勢力は、第1の作動油室27aに後進レンジ圧PRが供給された際にスプール27pを右半位置に押圧作用する押圧力よりも小さくなるように設定している。これにより、後進レンジ圧PRが供給されると共にセカンダリ制御圧PSLSが供給されない場合は、スプール27pが右半位置に切り換わり、後進レンジ圧PRが供給されると共にセカンダリ制御圧PSLSが供給される場合は、スプール27pの両端面で後進レンジ圧PRとセカンダリ制御圧PSLSとが打ち消し合ってスプール27pはスプリング27sの付勢力によって左半位置に位置する。
【0053】
そして、切換えバルブ27は、スプール27pが左半位置の非後進状態にある時は、第1の入力ポート27cが第1の出力ポート27fとは連通されるが第2の出力ポート27gとは遮断され、第2の入力ポート27dは第3の出力ポート27iとは連通されるが第1の出力ポート27fとは遮断され、第2の出力ポート27gとドレーンポート27hとが連通され、第3の入力ポート27eが遮断されるようになっている。また、切換えバルブ27は、スプール27pが右半位置の後進状態にある時は、第1の入力ポート27cが第2の出力ポート27gとは連通されるが第1の出力ポート27fとは遮断され、第2の入力ポート27dは第1の出力ポート27fとは連通されるが第3の出力ポート27iとは遮断され、第3の入力ポート27eと第3の出力ポート27iとが連通され、ドレーンポート27hが遮断されるようになっている。
【0054】
従って、マニュアルバルブ21のシフトポジションが後進レンジ以外で後進レンジ圧PRが生成されないか、あるいはシフトポジションが後進レンジで後進レンジ圧PRが生成されてもセカンダリ制御圧PSLSが供給される場合は、切換えバルブ27は非後進状態のままで、モジュレータ圧P
LPM2が切換えバルブ27を通過してリニアソレノイドバルブSLGに供給され、係合圧PSLGが切換えバルブ27を通過して油圧サーボ93に供給され、油圧サーボ94は切換えバルブ27を介してドレーンされる。また、シフトポジションが後進レンジで後進レンジ圧PRが生成されると共にセカンダリ制御圧PSLSが供給されない場合は、切換えバルブ27は後進状態に切り換わり、モジュレータ圧P
LPM2が切換えバルブ27を通過して油圧サーボ93に供給され、後進レンジ圧PRが切換えバルブ27を通過してリニアソレノイドバルブSLGに供給され、係合圧PSLGが切換えバルブ27を通過して油圧サーボ94に供給される。
【0055】
次に、自動変速機10の油圧制御装置12の動作について、
図4及び
図5に示すフローチャートと、
図6A及び
図6Bに示すタイムチャートに基づいて説明する。ここでは、内燃エンジンの始動後、所定時間が経過してシンクロ機構S1が係合してからシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合(
図4及び
図6A)と、所定時間が経過せずシンクロ機構S1が係合する前にシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合(
図5及び
図6B)と、のそれぞれの場合について説明する。尚、
図6A及び
図6B中、PSLS指令とは、セカンダリ制御圧PSLSを供給するためにECU11がセカンダリリニアソレノイドバルブSLSに対して出力する指令値を意味しており、実際のセカンダリ制御圧PSLSとは若干異なっている。
【0056】
まず、内燃エンジンの始動後、所定時間が経過してシンクロ機構S1が係合してから、シフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合について説明する。
図4に示すように、運転者が内燃エンジンを始動する(ステップS1、
図6Aのt0)。これにより、ライン圧PL及びモジュレータ圧P
LPM2が急上昇する。この時、シフトポジションはPレンジであり、前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRのいずれも出力されていないものとし、切換えバルブ27は非後進状態にあるものとする。これにより、シンクロ機構S1は係合圧PSLGにより係合可能になっており、第1のブレーキB1はドレーン状態になっている。
【0057】
ECU11は、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGがシンクロ機構S1を係合する係合圧にまで上がるように増加を開始し、シンクロ機構S1の油圧サーボ93に供給する(ステップS2、
図6Aのt1)。これにより、シンクロ機構S1は、徐々に係合状態に遷移していく。また、ECU11は、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSを制御して、セカンダリ制御圧PSLSを待機油圧Paにまで増加させる(ステップS3)。尚、ここでの待機油圧Paは、後進レンジ圧PRに比べて十分に小さく、後進レンジ圧PRによる切換えバルブ27のスプール27pの切換えに影響するものではない。シンクロ機構S1の係合状態への遷移が進むことで、係合状態になる(ステップS4、
図6Aのt2)。
【0058】
ここで、運転者は、シフトレバー13を操作して、シフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(ステップS5、
図6Aのt3)。ECU11は、シフトポジション検出部14の検出結果に基づきシフトポジションがRレンジに切り換わったと判定し、その判定を得たことにより、次にシンクロ機構S1が係合状態であるか否かを判断する。この判断は、シンクロ検出部15の検出結果に基づいて行われる。ここでは、シンクロ機構S1は既に係合しているので、ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断する(ステップS6)。ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断することで、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGがほぼ0になるまで下がるように低減を開始する(ステップS7)。
【0059】
一方、シフトポジションがRレンジに切り換わったことにより、マニュアルバルブ21からは後進レンジ圧PRが出力され、切換えバルブ27の第1の作動油室27aに供給され、切換えバルブ27は後進状態に切り換わり始める(
図6Aのt3)。そして、所定の時間経過後に、切換えバルブ27は後進状態になる(
図6Aのt4)。切換えバルブ27の切り換わりにより、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には、係合圧PSLGの供給が停止され、モジュレータ圧P
LPM2を供給可能になる。また、切換えバルブ27の切り換わりにより、第1のブレーキB1の油圧サーボ94には、係合圧PSLGを供給可能になる。これにより、リニアソレノイドバルブSLGから供給される係合圧PSLGの他に、元圧であるモジュレータ圧P
LPM2を係合圧として利用することにより、2つのリニアソレノイドバルブを設置することなく、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とを同時に作動させるために2つの係合圧を供給することができる。
【0060】
ECU11は、シフトポジションがRレンジに切り換わったことを検出してからの経過時間をタイマで計測しており、経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS8)。ここでの所定時間は、シフトポジションがRレンジに切り換わってから切換えバルブ27が後進状態に切り換わるまでの時間より長く設定している。ECU11が、経過時間は所定時間以上であると判断した場合は、既に切換えバルブ27が後進状態に切り換わっているものとして、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGが第1のブレーキB1を係合する係合圧にまで上がるように増加を開始し、第1のブレーキB1の油圧サーボ94に供給する(ステップS9、
図6Aのt5)。ここで、係合圧PSLGは一旦ほぼ0にまで低減されているので(
図6Aのt4〜t5)、油圧サーボ94には急激に高圧油が供給されることを抑制でき、第1のブレーキB1の円滑な係合を実現できる。このように、第1のブレーキB1は、徐々に係合状態に遷移していき、遷移が進むことで係合状態になる(ステップS10)。
【0061】
また、運転者は、シフトレバー13を操作して、例えば、シフトポジションをRレンジからNレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図6Aのt6)。これにより、マニュアルバルブ21からは前進レンジ圧PDも後進レンジ圧PRも出力されなくなり、切換えバルブ27は非後進状態に切り換わり始める。そして、所定の時間経過後に、切換えバルブ27は非後進状態になる(
図6Aのt7)。切換えバルブ27の切り換わりにより、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には、モジュレータ圧P
LPM2の供給が停止され、係合圧PSLGを供給可能になる。また、切換えバルブ27の切り換わりにより、第1のブレーキB1の油圧サーボ94はドレーン状態になる。
【0062】
次に、内燃エンジンの始動後、所定時間が経過せずシンクロ機構S1が係合する前にシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合について説明する。尚、所定時間が経過した場合でも何らかの理由でシンクロ機構S1が係合しないうちにシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えた場合も含むものとする。
図5に示すように、運転者が内燃エンジンを始動する(ステップS11、
図6Bのt10)。これにより、ライン圧PL及びモジュレータ圧P
LPM2が急上昇する。この時、シフトポジションはPレンジであり、前進レンジ圧PD及び後進レンジ圧PRのいずれも出力されていないものとし、切換えバルブ27は非後進状態にあるものとする。これにより、シンクロ機構S1は係合圧PSLGにより係合可能になっており、第1のブレーキB1はドレーン状態になっている。
【0063】
ここで、運転者は、シンクロ機構S1が係合する前にシフトレバー13を操作して、シフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(ステップS12、
図6Bのt11)。ECU11は、シフトポジション検出部14の検出結果に基づきシフトポジションがRレンジに切り換わったと判定し、その判定を得たことにより、次にシンクロ機構S1が係合状態であるか否かを判断する。ここでは、シンクロ機構S1はまだ係合していないので、ECU11は、シンクロ機構S1が非係合状態にあると判断する(ステップS13)。ECU11は、シンクロ機構S1が非係合状態にあると判断することで、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSを制御して、セカンダリ制御圧PSLSを対抗圧Pbにまで増加し、切換えバルブ27の第2の作動油室27bに供給する(ステップS14)。尚、セカンダリ制御圧PSLSを対抗圧Pbにまで増加することにより、ライン圧PL及びモジュレータ圧P
LPM2が上昇する。
【0064】
ECU11は、セカンダリ制御圧PSLSを増加した少し後に、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGがシンクロ機構S1を係合する係合圧にまで上がるように増加を開始し、シンクロ機構S1の油圧サーボ93に供給する(ステップS15、
図6Bのt12)。これにより、シンクロ機構S1は、徐々に係合状態に遷移していき、遷移が進むことで係合状態になる(ステップS16、
図6Bのt13)。
【0065】
一方、シフトポジションがRレンジに切り換わったことにより、マニュアルバルブ21からは後進レンジ圧PRが出力され、切換えバルブ27の第1の作動油室27aに供給され、切換えバルブ27は後進状態に切り換わろうとする。これに対し、切換えバルブ27の第2の作動油室27bにはセカンダリ制御圧PSLSが対抗圧として供給されているので、切換えバルブ27のスプール27pは移動できず非後進状態に維持される。
【0066】
ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態であるか否かを常に判断しており、シンクロ機構S1が係合して係合状態にあると判断する(ステップS17)。ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断することで、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSを制御して、セカンダリ制御圧PSLSを待機油圧Paにまで低減させる(ステップS18)。これにより、切換えバルブ27の第2の作動油室27bに供給されていたセカンダリ制御圧PSLSによる対抗圧が低減するので、後進レンジ圧PRによって切換えバルブ27は後進状態に切り換わり始め(
図6Bのt13)、所定の時間経過後に切換えバルブ27は後進状態になる(
図6Bのt14)。
図6Aの場合と同様に、切換えバルブ27の切り換わりにより、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には、係合圧PSLGの供給が停止され、モジュレータ圧P
LPM2を供給可能になる。また、切換えバルブ27の切り換わりにより、第1のブレーキB1の油圧サーボ94には、係合圧PSLGを供給可能になる。これにより、リニアソレノイドバルブSLGから供給される係合圧PSLGの他に、元圧であるモジュレータ圧P
LPM2を係合圧として利用することにより、2つのリニアソレノイドバルブを設置することなく、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とを同時に作動させるために2つの係合圧を供給することができる。
【0067】
更に、ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断することで、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGがほぼ0になるまで下がるように低減を開始する(ステップS19)。
【0068】
ECU11は、セカンダリ制御圧PSLSを低減させる指令(ステップS18)を発してからの経過時間をタイマで計測しており、経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS20)。ここでの所定時間は、セカンダリ制御圧PSLSを低減させる指令を発してから切換えバルブ27が後進状態に切り換わるまでの時間より長く設定している。ECU11が、経過時間は所定時間以上であると判断した場合は、既に切換えバルブ27が後進状態に切り換わっているものとして、リニアソレノイドバルブSLGを制御して係合圧PSLGが第1のブレーキB1を係合する係合圧にまで上がるように増加を開始し、第1のブレーキB1の油圧サーボ94に供給する(ステップS21、
図6Bのt15)。第1のブレーキB1は、徐々に係合状態に遷移していき、遷移が進むことで係合状態になる(ステップS22)。
【0069】
また、
図6Aと同様に、運転者は、シフトレバー13を操作して、例えば、シフトポジションをRレンジからNレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図6Bのt16)。これにより、マニュアルバルブ21からは前進レンジ圧PDも後進レンジ圧PRも出力されなくなり、切換えバルブ27は非後進状態に切り換わり始める。そして、所定の時間経過後に、切換えバルブ27は非後進状態になる(
図6Bのt17)。切換えバルブ27の切り換わりにより、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には、モジュレータ圧P
LPM2の供給が停止され、係合圧PSLGを供給可能になる。また、切換えバルブ27の切り換わりにより、第1のブレーキB1の油圧サーボ94はドレーン状態になる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によると、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGを、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ27を備えているので、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とでリニアソレノイドバルブSLGを係合圧の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等を含めた油圧制御装置12の小型軽量化を図ることができる。
【0071】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、前後進切換え装置3は、係合時に車両1の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する第1のクラッチC1と、係合時に車両1の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する第1のブレーキB1と、を備え、係合要素は第1ブレーキB1であるようにしている。
【0072】
このため、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、後進レンジにおける非無段モードではシンクロ機構S1と第1のブレーキB1との両方が係合するが(
図2参照)、その場合でもシンクロ機構S1と第1のブレーキB1とを同時係合することができる。
【0073】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1は、係合圧の供給時には係合状態を維持し、係合圧の非供給時には解放状態に切り換える付勢ばね59を備えるようにしている。このため、内燃エンジンの停止時にはシンクロ機構S1が解放状態になるので、シンクロ機構S1が係合状態にある場合に比べて、例えば車両1を容易に牽引可能になる。
【0074】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、モジュレータ圧P
LPM2を生成するライン圧モジュレータバルブ20と、後進レンジ圧PRを供給可能なマニュアルバルブ21と、を備え、切換えバルブ27は、後進レンジ圧PRにより切換可能であり、後進レンジ圧PRが供給されない場合は、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGがシンクロ機構S1に供給されると共に第1のブレーキB1の油圧がドレーンされる非後進状態に切り換わり、後進レンジ圧PRが供給される場合は、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGが第1のブレーキB1に供給されると共にモジュレータ圧P
LPM2がシンクロ機構S1に係合圧として供給される後進状態に切換可能になるようにしている。
【0075】
ここで、この種のシンクロ機構S1等の係合要素を用いた自動変速機10の油圧制御装置12では、従来より係合圧を供給するリニアソレノイドバルブの共用化が望まれていた。しかしながら、シンクロ機構S1は、他の係合要素と同時に動作するので(
図2参照)、シンクロ機構S1に係合圧を供給するリニアソレノイドバルブを他の係合要素に係合圧を供給するリニアソレノイドバルブと共用化することは困難であった。これに対し、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とが同時に係合する場合には、第1のブレーキB1にはリニアソレノイドバルブSLGからの係合圧PSLGを供給し、シンクロ機構S1にはモジュレータ圧P
LPM2を供給することで、両方の係合を実現するようにしている。即ち、1本のリニアソレノイドバルブSLGからの係合圧PSLGの供給先をタイミングによって切り換えると共に、内燃エンジンの稼働時には常時供給されるモジュレータ圧P
LPM2も使用することで、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1との同時係合を実現している。
【0076】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、信号圧供給部は、走行レンジが後進レンジである時に出力される後進レンジ圧PRを供給するマニュアルバルブ21であり、信号圧は後進レンジ圧PRであるようにしている。このため、走行レンジが後進レンジであるか否かに応じて切換えバルブ27を切り換えて、第1のブレーキB1への係合圧PSLGの供給の有無を切り換えることができる。即ち、走行レンジが後進レンジであるか否か
の判断と第1のブレーキB1への係合圧PSLGの供給の有無の
切り換えのタイミングを一致させることができるので、油圧制御装置12の回路構成を簡素化することができる。
【0077】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1が係合状態であることを検出するシンクロ検出部15と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部14と、後進レンジ圧PRに対抗して切換えバルブ27を非後進状態に維持するセカンダリ制御圧PSLSを供給可能なセカンダリリニアソレノイドバルブSLSと、を備え、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSは、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態であることを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、セカンダリ制御圧PSLSを制御して切換えバルブ27を後進状態にするようにしている。
【0078】
このため、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、ECU11が、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態であることを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSを制御してセカンダリ制御圧PSLSを低減し(
図5ステップS18、
図6Bのt13参照)、切換えバルブ27を後進レンジ圧PRによって後進状態に切り換えるようにしている。即ち、シンクロ機構S1が係合状態であることから、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には係合圧PSLGが供給されている。このため、その状態であれば切換えバルブ27を非後進状態から後進状態に切り換えて油圧サーボ93に供給される油圧を係合圧PSLGからモジュレータ圧P
LPM2に切り換えても急激な油圧の変化は無く、シンクロ機構S1の急激な動作を招くことなく油圧を円滑に切り換えることができる。
【0079】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1が係合状態であることを検出するシンクロ検出部15と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部14と、後進レンジ圧PRに対抗して切換えバルブ27を非後進状態に維持するセカンダリ制御圧PSLSを供給可能なセカンダリリニアソレノイドバルブSLSと、を備え、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSは、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態でないことを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、セカンダリ制御圧PSLSを制御して切換えバルブ27を非後進状態にするようにしている。
【0080】
ここで、シンクロ機構S1が係合状態でない場合は、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には係合圧PSLGが供給されていない。このため、その状態で切換えバルブ27を非後進状態から後進状態に切り換えて油圧サーボ93に供給される油圧をモジュレータ圧P
LPM2に切り換えたとすると油圧が急激に上昇してしまい、シンクロ機構S1が急激に動作してしまい円滑な切換えの妨げになってしまう。これに対し、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、ECU11が、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態でないことを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSを制御してセカンダリ制御圧PSLSを増加し(
図5ステップS14、
図6Bのt11参照)、後進レンジ圧PRに対抗して切換えバルブ27を非後進状態に切り換え又は維持するようにしている。このため、油圧サーボ93に供給される油圧をモジュレータ圧P
LPM2に切り換えることを抑制し、シンクロ機構S1が急激に動作してしまうことを未然に防止することができる。
【0081】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、無段変速機構4は、プライマリプーリ圧が供給され変速比を調整するプライマリプーリ41と、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリ42とを備え、第2のソレノイドバルブは、セカンダリプーリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイドバルブSLSであり、対抗圧は、セカンダリリニアソレノイドバルブSLSから供給されるセカンダリ制御圧PSLSであるようにしている。
【0082】
このため、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、対抗圧としてセカンダリリニアソレノイドバルブSLSから供給されるセカンダリ制御圧PSLSを使用しているので、後進走行中にセカンダリ制御圧PSLSを変化させてもベルト43の挟持圧が変わる程度で走行自体への影響を抑えることができる。また、新たなソレノイドバルブを設ける必要が無いので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0083】
尚、上述した本実施形態においては、切換えバルブ27において信号圧である後進レンジ圧PRへの対抗圧としてセカンダリ制御圧PSLSを適用した場合について説明したが、これには限られず、例えば、他のソレノイドバルブからの油圧等、適宜な油圧を適用してもよい。
【0084】
また、上述した本実施形態においては、切換えバルブ27への信号圧として後進レンジ圧PRを適用した場合について説明したが、これには限られず、例えば、プライマリリニアソレノイドバルブSLPから供給されるプライマリ制御圧PSLPや、オンオフソレノイドバルブSL3等、他のソレノイドバルブからの油圧等を適用してもよい。
【0085】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る自動変速機10の油圧制御装置12を、
図7A及び
図7Bに沿って説明する。本実施形態では、第1の実施形態の切換えバルブ27への信号圧としてプライマリリニアソレノイドバルブSLPから供給されるプライマリ制御圧PSLPを適用する場合について説明する。切換えバルブ27への信号圧及び対抗圧以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。尚、
図7B中、PSLP指令とは、プライマリ制御圧PSLPを供給するためにECU11がプライマリリニアソレノイドバルブSLPに対して出力する指令値を意味しており、実際のプライマリ制御圧PSLPとは若干異なっている。
【0086】
図7Aに示すように、プライマリリニアソレノイドバルブSLPは、モジュレータ圧P
LPM2が入力される入力ポートSLPaと、切換えバルブ27の第1の作動油室27aに連通される出力ポートSLPbとを備え、入力されるモジュレータ圧P
LPM2を自在に調圧制御し、プライマリ制御圧PSLPを生成して出力ポートSLPbから切換えバルブ27に信号圧として供給するようになっている。尚、出力ポートSLPbは、不図示のプライマリ圧コントロールバルブに連通されている。また、この場合、後進走行中にプライマリ制御圧PSLPを調圧することができるので、対抗圧は不要にすることができる。
【0087】
このような油圧制御装置12を利用して、第1の実施形態の
図6Bと同様に、内燃エンジンの始動後、所定時間が経過せずシンクロ機構S1が係合する前にシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合について、特徴的な異なる部分を中心に説明する。運転者が内燃エンジンを始動すると(
図7Bのt20)、ライン圧PL及びモジュレータ圧P
LPM2が急上昇する。運転者は、シンクロ機構S1が係合する前にシフトレバー13を操作して、シフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図7Bのt21)。ECU11は、シンクロ機構S1が非係合状態にあると判断することで、プライマリ制御圧PSLPを0のまま維持する(
図7Bのt20〜t23)。
【0088】
ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断することで、プライマリリニアソレノイドバルブSLPを制御して、プライマリ制御圧PSLPを信号圧Pcまで増加させる(
図7Bのt23〜t24)。これにより、プライマリ制御圧PSLPによって切換えバルブ27は後進状態に切り換わり始め(
図7Bのt23)、所定の時間経過後に切換えバルブ27は後進状態になる(
図7Bのt24)。
【0089】
また、運転者は、シフトレバー13を操作して、例えば、シフトポジションをRレンジからNレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図7Bのt26)。ECU11は、シフトチェンジを検出して、プライマリ制御圧PSLPを0にまで低減させる(
図7Bのt26〜t27)。これにより、切換えバルブ27は非後進状態に切り換わり始め、所定の時間経過後に非後進状態になる(
図7Bのt27)。
【0090】
本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によっても、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGを、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ27を備えているので、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とでリニアソレノイドバルブSLGを係合圧の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等を含めた油圧制御装置12の小型軽量化を図ることができる。
【0091】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、無段変速機構4は、プライマリプーリ圧が供給され変速比を調整するプライマリプーリ41と、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリ42とを備え、信号圧供給部は、プライマリプーリ圧を調圧するプライマリリニアソレノイドバルブSLPであり、信号圧は、プライマリリニアソレノイドバルブSLPから供給されるプライマリ制御圧PSLPであるようにしている。尚、プライマリ制御圧PSLPを昇圧して切換えバルブ27を切り換えることにより、そのままでは無段変速機構4がアップシフトしてしまう可能性があるので、同時にセカンダリ制御圧PSLSも昇圧してアップシフトを抑制することが好ましい。
【0092】
このため、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、後進走行中にプライマリ制御圧PSLPを調圧することができるので、切換えバルブ27の対抗圧を不要にすることができ、油圧回路の簡素化を図ることができる。
【0093】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る自動変速機10の油圧制御装置12を、
図8A及び
図8Bに沿って説明する。本実施形態では、第1の実施形態の切換えバルブ27への信号圧として
、専用のオンオフソレノイドバルブSL3
から供給される信号圧PSL3を適用する場合について説明する。切換えバルブ27への信号圧及び対抗圧以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。尚、
図8B中、PSL3指令とは、信号圧PSL3を供給するためにECU11がオンオフソレノイドバルブSL3に対して出力する指令値を意味しており、実際の信号圧PSL3とは若干異なっている。
【0094】
図8Aに示すように、オンオフソレノイドバルブSL3は、モジュレータ圧P
LPM2が入力される入力ポートSL3aと、切換えバルブ27の第1の作動油室27aに連通される出力ポートSL3bとを備え、入力されるモジュレータ圧P
LPM2を自在に調圧制御し、信号圧PSL3を生成して出力ポートSL3bから切換えバルブ27に供給するようになっている。また、この場合、後進走行中に信号圧PSL3を調圧することができるので、対抗圧は不要にすることができる。
【0095】
このような油圧制御装置12を利用して、第1の実施形態の
図6Bと同様に、内燃エンジンの始動後、所定時間が経過せずシンクロ機構S1が係合する前にシフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行した場合について、特徴的な異なる部分を中心に説明する。運転者が内燃エンジンを始動すると(
図8Bのt30)、ライン圧PL及びモジュレータ圧P
LPM2が急上昇する。運転者は、シンクロ機構S1が係合する前にシフトレバー13を操作して、シフトポジションをPレンジからRレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図8Bのt31)。ECU11は、シンクロ機構S1が非係合状態にあると判断することで、信号圧PSL3を0のまま維持する(
図8Bのt30〜t33)。
【0096】
ECU11は、シンクロ機構S1が係合状態にあると判断することで、オンオフソレノイドバルブSL3を制御して、信号圧PSL3を信号圧Peまで増加させる(
図8Bのt33〜t34)。これにより、信号圧PSL3によって切換えバルブ27は後進状態に切り換わり始め(
図8Bのt33)、所定の時間経過後に切換えバルブ27は後進状態になる(
図8Bのt34)。
【0097】
また、運転者は、シフトレバー13を操作して、例えば、シフトポジションをRレンジからNレンジに切り換えてガレージ制御を実行する(
図8Bのt36)。ECU11は、シフトチェンジを検出して、信号圧PSL3を0にまで低減させる(
図8Bのt36〜t37)。これにより、切換えバルブ27は非後進状態に切り換わり始め、所定の時間経過後に非後進状態になる(
図8Bのt37)。
【0098】
本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によっても、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGを、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ27を備えているので、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とでリニアソレノイドバルブSLGを係合圧の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等を含めた油圧制御装置12の小型軽量化を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、信号圧供給部は、信号圧PSL3を生成するオンオフソレノイドバルブSL3であるようにしている。このため、後進走行中にプライマリ制御圧PSLPを調圧することができるので、対抗圧を不要にすることができ、油圧回路の簡素化を図ることができる。しかも、無段変速機構4を制御するための油圧を利用していないので、信号圧PSL3の制御と無段変速機構4の制御とを独立して行うことができ、油圧回路及び制御の簡素化を図ることができる。
【0100】
上述した第2及び第3の実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1が係合状態であることを検出するシンクロ検出部15と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部14と、を備え、信号圧供給部(プライマリリニアソレノイドバルブSLP又はオンオフソレノイドバルブSL3)は、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態であることを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、プライマリ制御圧PSLP又は信号圧PSL3を制御して切換えバルブ27を後進状態にするようにしている。
【0101】
このため、第2及び第3の実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、ECU11が、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態であることを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、プライマリリニアソレノイドバルブSLP又はオンオフソレノイドバルブSL3を制御してプライマリ制御圧PSLP又は信号圧PSL3を増加し(
図7Bのt23、
図8Bのt33参照)、切換えバルブ27を後進状態に切り換えるようにしている。即ち、シンクロ機構S1が係合状態であることから、シンクロ機構S1の油圧サーボ93には係合圧PSLGが供給されている。このため、その状態であれば切換えバルブ27を非後進状態から後進状態に切り換えて油圧サーボ93に供給される油圧を係合圧PSLGからモジュレータ圧P
LPM2に切り換えても急激な油圧の変化は無く、シンクロ機構S1の急激な動作を招くことなく油圧を円滑に切り換えることができる。
【0102】
また、第2及び第3の実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12では、シンクロ機構S1が係合状態であることを検出するシンクロ検出部15と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部14と、を備え、信号圧供給部(プライマリリニアソレノイドバルブSLP又はオンオフソレノイドバルブSL3)は、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態でないことを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、プライマリ制御圧PSLP又は信号圧PSL3を制御して切換えバルブ27を非後進状態にするようにしている。
【0103】
このため、第2及び第3の実施形態の自動変速機10の油圧制御装置12によれば、ECU11が、シンクロ検出部15によりシンクロ機構S1が係合状態でないことを検出すると共に、シフトポジション検出部14により走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、プライマリリニアソレノイドバルブSLP又はオンオフソレノイドバルブSL3を制御してプライマリ制御圧PSLP又は信号圧PSL3を0に維持し(
図7Bのt21〜t23、
図8Bのt31〜t33参照)、切換えバルブ27を非後進状態に切り換え又は維持するようにしている。このため、油圧サーボ93に供給される油圧をモジュレータ圧P
LPM2に切り換えることを抑制し、シンクロ機構S1が急激に動作してしまうことを未然に防止することができる。
【0104】
尚、上述した第1〜第3の実施形態においては、シンクロ機構S1と第1のブレーキB1とについて、リニアソレノイドバルブSLGを共用化する場合について説明したが、これには限られない。即ち、シンクロ機構S1とリニアソレノイドバルブSLGを共用化する係合要素は、第1の動力伝達経路a1と第2の動力伝達経路a2との少なくとも1箇所に介在されていればよい。例えば、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とについてリニアソレノイドバルブSLGを共用化したり、あるいはシンクロ機構S1と第2のクラッチC2とについてリニアソレノイドバルブSLGを共用化するようにしてもよい。
【0105】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る自動変速機10の油圧制御装置112を、
図9に沿って説明する。本実施形態では、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とについてリニアソレノイドバルブSLGを共用化する場合について説明する。切換えバルブ27やクラッチアプライコントロールバルブ26等、各種のバルブの構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0106】
図9に示すように、油圧制御装置112は、ライン圧モジュレータバルブ20と、マニュアルバルブ21と、リニアソレノイドバルブSL1と、リニアソレノイドバルブSL2と、リニアソレノイドバルブSL2に接続されるアキュムレータ24及びチェックバルブ25と、クラッチアプライコントロールバルブ26と、切換えバルブ27と、リニアソレノイドバルブSLG等を備えている。
【0107】
リニアソレノイドバルブSL1は、後進レンジ圧PRが入力される入力ポートSL1aと、油圧サーボ94に連通される出力ポートSL1bとを備え、入力される後進レンジ圧PRを自在に調圧制御し、油圧サーボ94に供給するための係合圧PSL1を生成して出力ポートSL1bから供給するようになっている。出力ポートSL1bと油圧サーボ94とを連通する油路には、オリフィス97が配設されている。これにより、油圧サーボ94のドレーン速度を遅延することができる。
【0108】
クラッチアプライコントロールバルブ26は、第1の作動油室26aに連通され、切換えバルブ27の第2の出力ポート27gから係合圧PSLGを入力可能な第1の入力ポート26cと、係合圧PSL2を入力する第2の入力ポート26d及び第3の入力ポート26eと、を備えている。また、クラッチアプライコントロールバルブ26は、油圧サーボ91に連通する第1の出力ポート26fと、ドレーンポート26gと、油圧サーボ92に連通する第2の出力ポート26hと、ドレーンポート26iと、を備えている。
【0109】
係合圧PSLGが入力されて係合圧PSL2が入力されない場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26は通常状態のままで、係合圧PSLGが油圧サーボ91に供給される。また、係合圧PSL2が入力されて係合圧PSLGが入力されない場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26は通常状態のままで、係合圧PSL2が油圧サーボ92に供給される。更に、係合圧PSLG及び係合圧PSL2の両方が入力された場合は、クラッチアプライコントロールバルブ26はタイアップ防止状態に切り換わり、油圧サーボ91,92はいずれもドレーンされるが、それには限られず、油圧サーボ91,92のいずれか一方はドレーンされ、他方は係合するようにしてもよい。これにより、油圧サーボ91及び油圧サーボ92に同時に係合圧が供給されることを防止できるので、第1のクラッチC1及び第2のクラッチC2の同時係合によるタイアップの発生を防止することができる。
【0110】
切換えバルブ27は、左半位置(非前進状態)と右半位置(前進状態)とを切換自在なスプール27pと、該スプール27pを左半位置に付勢する圧縮コイルばねから成るスプリング27sと、を備えている。切換えバルブ27は、スプール27pを右半位置に押圧作用する方向に前進レンジ圧(信号圧)PDを入力する第1の作動油室27aと、解放された第2の作動油室27bとを備えている。また、切換えバルブ27は、係合圧PSLGを入力する第1の入力ポート27cと、モジュレータ圧P
LPM2を入力する第2の入力ポート27dと、前進レンジ圧PDを入力する第3の入力ポート27eと、を備えている。更に、切換えバルブ27は、油圧サーボ93に連通する第1の出力ポート27fと、クラッチアプライコントロールバルブ26の第1の作動油室26a及び第1の入力ポート26cに連通する第2の出力ポート27gと、ドレーンポート27hと、リニアソレノイドバルブSLGの入力ポートSLGaに連通される第3の出力ポート27iと、を備えている。
【0111】
第1の作動油室27a及び第3の入力ポート27eと、マニュアルバルブ21の出力ポート21bとを連通する油路には、オリフィス96が配設されている。また、ドレーンポート27hには、オリフィス98が設けられている。
【0112】
マニュアルバルブ21のシフトポジションが前進レンジ以外で前進レンジ圧PDが生成されない場合は、切換えバルブ27は非前進状態のままで、モジュレータ圧P
LPM2が切換えバルブ27を通過してリニアソレノイドバルブSLGに供給され、係合圧PSLGが切換えバルブ27を通過して油圧サーボ93に供給され、油圧サーボ91はクラッチアプライコントロールバルブ26及び切換えバルブ27を介してドレーンポート27hからドレーンされる。また、シフトポジションが前進レンジで前進レンジ圧PDが生成される場合は、切換えバルブ27は前進状態に切り換わり、モジュレータ圧P
LPM2が切換えバルブ27を通過して油圧サーボ93に供給され、前進レンジ圧PDが切換えバルブ27を通過してリニアソレノイドバルブSLGに供給され、係合圧PSLGが切換えバルブ27及びクラッチアプライコントロールバルブ26を通過して油圧サーボ91に供給される。
【0113】
本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置112によれば、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGを、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ27を備えているので、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とでリニアソレノイドバルブSLGを係合圧の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等を含めた油圧制御装置112の小型軽量化を図ることができる。
【0114】
また、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置112では、前後進切換え装置3は、係合時に車両1の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する第1のクラッチC1と、係合時に車両1の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する第1のブレーキB1と、を備え、係合要素は第1のクラッチC1であるようにしている。
【0115】
このため、本実施形態の自動変速機10の油圧制御装置112によれば、前進レンジにおける非無段モードではシンクロ機構S1と第1のクラッチC1との両方が係合するが(
図2参照)、その場合でもシンクロ機構S1と第1のクラッチC1とを同時係合することができる。
【0116】
上述した
図9に示す自動変速機10の油圧制御装置112では、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1とでリニアソレノイドバルブSLGを切り換えて使用する場合について説明したが、これには限られず、例えば、第1のクラッチC1と第2のクラッチC2とを入れ替えることにより、シンクロ機構S1と第2のクラッチC2とでリニアソレノイドバルブSLGを切り換えて使用するようにできる。この場合、係合要素は、第2の動力伝達経路a2に介在され、無段モードにおいては係合状態になり、入力軸2と駆動軸60とを第2の動力伝達経路a2により接続して回転伝達する第2のクラッチC2であるようにする。
【0117】
この場合、リニアソレノイドバルブSLGから供給された係合圧PSLGを、シンクロ機構S1と第2のクラッチC2とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ27を備えているので、シンクロ機構S1と第2のクラッチC2とでリニアソレノイドバルブSLGを係合圧の供給元として共用化することができる。
【0118】
尚、上述した第1〜第4の実施形態においては、シンクロ機構S1は付勢ばね59を有し、油圧サーボ93に油圧を供給しないことにより係合状態は維持されず解放状態になる場合について説明したが、これには限られず、係合後に油圧が供給されなくなっても係合状態を維持可能なロック機構を有するオンロックタイプのシンクロ機構S1としてもよい。
【0119】
また、上述した第1〜第4の実施形態においては、シンクロ機構S1と他の係合要素とに係合圧を供給するバルブをリニアソレノイドバルブSLGとした場合について説明したが、これには限定されず、他のリニアソレノイドバルブや、あるいはデューティ制御するソレノイドバルブとしてもよい。
【0120】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態に係る自動変速機110の油圧制御装置212を、
図10に沿って説明する。上述した第1〜第4の実施形態においては、自動変速機10として、前後進切換え装置3及び無段変速機構4を有するものを適用した場合について説明した。これに対し、本実施形態では、自動変速機110として、前後進切換え装置及び無段変速機構を有さないものを適用した場合について説明する。減速ギヤ機構5、出力ギヤ部6、カウンタシャフト部7、ディファレンシャル装置8等の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0121】
図10に示すように、自動変速機110は、不図示のトルクコンバータと、入力軸2と、有段変速機構104と、減速ギヤ機構5と、駆動軸60を有する出力ギヤ部6と、カウンタシャフト部7と、ディファレンシャル装置8と、を備えている。また、自動変速機110には、入力軸2と出力ギヤ部6の駆動軸60とをシンクロ機構S1を介して連結する第1の動力伝達経路a1と、入力軸2と駆動軸60とを少なくとも一部は第1の動力伝達経路a1とは別の経路で、かつ有段変速機構104を介して連結する第2の動力伝達経路a2とが形成されている。また、自動変速機110は、第1軸AX1〜第5軸AX5までの互いに平行な軸を備えている。
【0122】
第1軸AX1上には、クランク軸に連結される自動変速機110の入力軸、トルクコンバータ、有段変速機構104の入力軸2、第1のクラッチ(係合要素)C1が配置されている。第3軸AX3上には、有段変速機構104の出力軸147、第2のクラッチ(係合要素)C2、出力ギヤ部6が配置されている。
【0123】
この場合、油圧制御装置212は、第1のソレノイドバルブと切換えバルブとを有している。第1のソレノイドバルブは、シンクロ機構S1と、第1のクラッチC1若しくは第2のクラッチC2と、に係合圧を供給可能である。切換えバルブは、第1のソレノイドバルブから供給された係合圧を、シンクロ機構S1と、第1のクラッチC1若しくは第2のクラッチC2と、のいずれかに切り換えて供給可能である。
【0124】
この自動変速機110の油圧制御装置212によると、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1若しくは第2のクラッチC2とで第1のソレノイドバルブを係合圧の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構S1と第1のクラッチC1若しくは第2のクラッチC2とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等を含めた油圧制御装置212の小型軽量化を図ることができる。
【0125】
尚、上述した第1〜第5の実施形態は、以下の構成を少なくとも備える。各実施形態の自動変速機(10,110)の油圧制御装置(12,112,212)は、車両(1)の駆動源に駆動連結される入力軸(2)と、車輪に駆動連結される駆動軸(60)と、シンクロ機構(S1)と、前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記シンクロ機構(S1)を介して連結する第1の動力伝達経路(a1)と、前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを少なくとも一部は前記第1の動力伝達経路(a1)とは別の経路で連結する第2の動力伝達経路(a2)との少なくとも1箇所に介在される係合要素(B1,C1,C2)と、を備え、前記シンクロ機構(S1)を係合状態にして前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記第1の動力伝達経路(a1)により接続して回転伝達する第1のモードと、前記シンクロ機構(S1)を解放状態にして前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記第2の動力伝達経路(a2)により接続して回転伝達する第2のモードと、に切換可能な自動変速機(10,110)に用いられ、前記シンクロ機構(S1)及び前記係合要素(B1,C1,C2)に係合圧(PSLG)を給排する自動変速機(10,110)の油圧制御装置(12,112,212)において、前記係合圧(PSLG)を供給可能な第1のソレノイドバルブ(SLG)と、前記第1のソレノイドバルブ(SLG)から供給された前記係合圧(PSLG)を、前記シンクロ機構(S1)と前記係合要素(B1,C1,C2)とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ(27)と、を備える。この構成によれば、第1のソレノイドバルブ(SLG)から供給された係合圧(PSLG)を、シンクロ機構(S1)と係合要素(B1,C1,C2)とのいずれかに切り換えて供給可能な切換えバルブ(27)を備えているので、シンクロ機構(S1)と係合要素(B1,C1,C2)とで第1のソレノイドバルブ(SLG)を係合圧(PSLG)の供給元として共用化することができる。これにより、シンクロ機構(S1)と係合要素(B1,C1,C2)とで個別にソレノイドバルブを使用する場合に比べて、ソレノイドバルブの本数を削減することができ、バルブボディ等の小型軽量化を図ることができる。
【0126】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、前記車両(1)の走行方向により回転方向を切り換えて伝達する前後進切換え装置(3)と、変速比を連続的に変更可能な無段変速機構(4)と、を備え、前記第1の動力伝達経路(a1)は、前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記前後進切換え装置(3)を介して連結し、前記第2の動力伝達経路(a2)は、前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記無段変速機構(4)を介して連結する。この構成によれば、無段変速機構(4)を有する自動変速機(10)において、前進レンジにおける無段モード及び非無段モードと、後進レンジにおける非無段モードとを実現することができる。
【0127】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、前記前後進切換え装置(3)は、係合時に前記車両(1)の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する前進用係合要素(C1)と、係合時に前記車両(1)の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する後進用係合要素(B1)と、を備え、前記係合要素(B1,C1,C2)は、前記後進用係合要素(B1)である。この構成によれば、例えば、後進レンジにおいて、シンクロ機構(S1)と後進用係合要素(B1)との両方が係合する場合でも、シンクロ機構(S1)と後進用係合要素(B1)とを同時係合することができる。
【0128】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、前記シンクロ機構(S1)は、前記係合圧(PSLG)の供給時には前記係合状態を維持し、前記係合圧(PSLG)の非供給時には前記解放状態に切り換える付勢部(59)を備える。この構成によれば、駆動源の停止時にはシンクロ機構(S1)が解放状態になるので、シンクロ機構(S1)が係合状態にある場合に比べて、例えば車両(1)を容易に牽引可能になる。
【0129】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、元圧(P
LPM2)を生成する元圧生成部(20)と、信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)を供給可能な信号圧供給部(21,SLP,SL3)と、を備え、前記切換えバルブ(27)は、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)により切換可能であり、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)が供給されない場合は、前記第1のソレノイドバルブ(SLG)から供給された前記係合圧(PSLG)が前記シンクロ機構(S1)に供給されると共に前記後進用係合要素(B1)の油圧がドレーンされる非後進状態に切り換わり、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)が供給される場合は、前記第1のソレノイドバルブ(SLG)から供給された前記係合圧(PSLG)が前記後進用係合要素(B1)に供給されると共に前記元圧(P
LPM2)が前記シンクロ機構(S1)に係合圧(P
LPM2)として供給される後進状態に切換可能になる。この構成によれば、第1のソレノイドバルブ(SLG)からの係合圧(PSLG)の供給先をタイミングによって切り換えると共に、駆動源の稼働時には常時供給される元圧(P
LPM2)も使用することで、シンクロ機構(S1)と後進用係合要素(B1)との同時係合を実現している。
【0130】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、前記信号圧供給部(21,SLP,SL3)は、走行レンジが後進レンジである時に出力される後進レンジ圧(PR)を供給するマニュアルバルブ(21)であり、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)は、前記後進レンジ圧(PR)である。この構成によれば、走行レンジが後進レンジであるか否かに応じて切換えバルブ(27)を切り換えて、後進用係合要素(B1)への係合圧(PSLG)の供給の有無を切り換えることができる。即ち、走行レンジが後進レンジであるか否か
の判断と後進用係合要素(B1)への係合圧(PSLG)の供給の有無の
切り換えのタイミングを一致させることができるので、油圧制御装置(12,112)の回路構成を簡素化することができる。
【0131】
また、第1の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出するシンクロ検出部(15)と、前記走行レンジが前記後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部(14)と、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)に対抗して前記切換えバルブ(27)を前記非後進状態に維持する対抗圧(PSLS)を供給可能な第2のソレノイドバルブ(SLS)と、を備え、前記第2のソレノイドバルブ(SLS)は、前記シンクロ検出部(15)により前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出すると共に、前記シフトポジション検出部(14)により前記走行レンジが前記後進レンジであることを検出した場合に、前記対抗圧(PSLS)を制御して前記切換えバルブ(27)を前記後進状態にする。この構成によれば、シンクロ機構(S1)が係合状態であることから、シンクロ機構(S1)には係合圧(PSLG)が供給されており、その状態であれば切換えバルブ(27)を非後進状態から後進状態に切り換えてシンクロ機構(S1)に供給される油圧を係合圧(PSLG)から元圧(P
LPM2)に切り換えても急激な油圧の変化は無く、シンクロ機構(S1)の急激な動作を招くことなく油圧を円滑に切り換えることができる。
【0132】
また、第1の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出するシンクロ検出部(15)と、前記走行レンジが前記後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部(14)と、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)に対抗して前記切換えバルブ(27)を前記非後進状態に維持する対抗圧(PSLS)を供給可能な第2のソレノイドバルブ(SLS)と、を備え、前記第2のソレノイドバルブ(SLS)は、前記シンクロ検出部(15)により前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態でないことを検出すると共に、前記シフトポジション検出部(14)により前記走行レンジが前記後進レンジであることを検出した場合に、前記対抗圧(PSLS)を制御して前記切換えバルブ(27)を前記非後進状態にする。この構成によれば、シンクロ機構(S1)に供給される油圧を元圧(P
LPM2)に切り換えることを抑制し、シンクロ機構(S1)が急激に動作してしまうことを未然に防止することができる。
【0133】
また、第1の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記無段変速機構(4)は、プライマリプーリ圧が供給され前記変速比を調整するプライマリプーリ(41)と、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリ(42)とを備え、前記第2のソレノイドバルブ(SLS)は、前記セカンダリプーリ圧を調圧するセカンダリリニアソレノイドバルブ(SLS)であり、前記対抗圧(PSLS)は、前記セカンダリリニアソレノイドバルブ(SLS)から供給されるセカンダリ制御圧(PSLS)である。この構成によれば、対抗圧(PSLS)としてセカンダリリニアソレノイドバルブ(SLS)から供給されるセカンダリ制御圧(PSLS)を使用しているので、後進走行中にセカンダリ制御圧(PSLS)を変化させてもベルトの挟持圧が変わる程度で走行自体への影響を抑えることができる。また、新たなソレノイドバルブを設ける必要が無いので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0134】
また、第2の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記無段変速機構(4)は、プライマリプーリ圧が供給され前記変速比を調整するプライマリプーリ(41)と、セカンダリプーリ圧が供給され挟持圧を調圧するセカンダリプーリ(42)とを備え、前記信号圧供給部(21,SLP,SL3)は、前記プライマリプーリ圧を調圧するプライマリリニアソレノイドバルブ(SLP)であり、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)は、前記プライマリリニアソレノイドバルブ(SLP)から供給されるプライマリ制御圧(PSLP)である。この構成によれば、後進走行中にプライマリ制御圧(PSLP)を調圧することができるので、切換えバルブ(27)の対抗圧(PSLS)を不要にすることができ、油圧回路の簡素化を図ることができる。
【0135】
また、第3の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記信号圧供給部(21,SLP,SL3)は、前記信号圧(PSL3)を生成するオンオフソレノイドバルブ(SL3)である。この構成によれば、後進走行中にプライマリ制御圧(PSLP)を調圧することができるので、切換えバルブ(27)への対抗圧(PSLS)を不要にすることができ、油圧回路の簡素化を図ることができる。しかも、無段変速機構(4)を制御するための油圧を利用していないので、信号圧(PSL3)の制御と無段変速機構(4)の制御とを独立して行うことができ、油圧回路及び制御の簡素化を図ることができる。
【0136】
また、第2及び第3の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12)では、前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出するシンクロ検出部(15)と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部(14)と、を備え、前記信号圧供給部(21,SLP,SL3)は、前記シンクロ検出部(15)により前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出すると共に、前記シフトポジション検出部(14)により前記走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)を制御して前記切換えバルブ(27)を前記後進状態にする。この構成によれば、シンクロ機構(S1)が係合状態であることから、シンクロ機構(S1)には係合圧(PSLG)が供給されており、その状態であれば切換えバルブ(27)を非後進状態から後進状態に切り換えてシンクロ機構(S1)に供給される油圧を係合圧(PSLG)から元圧(P
LPM2)に切り換えても急激な油圧の変化は無く、シンクロ機構(S1)の急激な動作を招くことなく油圧を円滑に切り換えることができる。
【0137】
また、第1〜第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(12,112)では、前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態であることを検出するシンクロ検出部(15)と、走行レンジが後進レンジであることを検出するシフトポジション検出部(14)と、を備え、前記信号圧供給部(21,SLP,SL3)は、前記シンクロ検出部(15)により前記シンクロ機構(S1)が前記係合状態でないことを検出すると共に、前記シフトポジション検出部(14)により前記走行レンジが後進レンジであることを検出した場合に、前記信号圧(PR,PSLP,PSL3,PD)を制御して前記切換えバルブ(27)を前記非後進状態にする。この構成によれば、シンクロ機構(S1)に供給される油圧を元圧(P
LPM2)に切り換えることを抑制し、シンクロ機構(S1)が急激に動作してしまうことを未然に防止することができる。
【0138】
また、第4の実施形態の自動変速機(10)の油圧制御装置(112)では、前記前後進切換え装置(3)は、係合時に前記車両(1)の前進方向の回転を伝達させる経路を形成する前進用係合要素(C1)と、係合時に前記車両(1)の後進方向の回転を伝達させる経路を形成する後進用係合要素(B1)と、を備え、前記係合要素(B1,C1,C2)は、前記前進用係合要素(C1)である。この構成によれば、例えば、前進レンジにおいて、シンクロ機構(S1)と前進用係合要素(C1)との両方が係合する場合でも、シンクロ機構(S1)と前進用係合要素(C1)とを同時係合することができる。
【0139】
また、第1〜第5の実施形態の自動変速機(10,110)の油圧制御装置(12,112,212)では、前記係合要素(C2)は、前記第2の動力伝達経路(a2)に介在され、前記第2のモードにおいては係合状態になり、前記入力軸(2)と前記駆動軸(60)とを前記第2の動力伝達経路(a2)により接続して回転伝達する。この構成によれば、シンクロ機構(S1)と係合要素(C2)とで第1のソレノイドバルブ(SLG)を係合圧(PSLG)の供給元として共用化することができる。