(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水分を吸収しうる第1の状態と、前記第1の状態のときに吸収した水分を液体状態で放出する第2の状態とを有し、一定以上の温度になったとき前記第1の状態から前記第2の状態に変化し、かつ、前記一定以上の温度ではなくなったときには前記第1の状態に戻る性質を有する高分子ゲル吸湿材料による吸湿材と、
外部から刺激要因としての光を受けることによって熱を発生する性質を有し、前記吸湿材の内部に埋め込まれるように配置されたエネルギ変換粒子とを備え、
前記吸湿材は円板形状に形成されており、前記調湿装置は、前記吸湿材を前記円板形状の中心軸のまわりに回転させる回転装置と、前記吸湿材の表面に光を照射する照射装置とを備える、調湿装置。
前記照射装置は、前記吸湿材の表面に対して垂直に光を照射するように配置されており、前記照射装置は、光を点状に絞って前記吸湿材の表面に対して照射しつつ前記吸湿材の中心近傍から外周に向けて走査するものである、請求項1に記載の調湿装置。
前記照射装置は、前記吸湿材の表面に対して垂直に光を照射するように配置されており、前記照射装置は、光をリング状に絞って前記吸湿材の表面に対して前記吸湿材の外形と同心状に照射しつつ前記吸湿材の中心近傍から外周に向けてリング径を拡大させるように走査するものである、請求項1に記載の調湿装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明に基づく実施の形態1における調湿装置について説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態における調湿装置101は、水分を吸収しうる第1の状態と、前記第1の状態のときに吸収した水分を液体状態で放出する第2の状態とを有し、一定以上の温度になったとき前記第1の状態から前記第2の状態に変化し、かつ、前記一定以上の温度ではなくなったときには前記第1の状態に戻る性質を有する高分子ゲル吸湿材料による吸湿材1と、外部から光、電波、高周波磁場の少なくともいずれかである刺激要因を受けることによって熱を発生する性質を有し、吸湿材1の内部に埋め込まれるように配置されたエネルギ変換粒子2とを備える。
【0017】
高分子ゲル吸湿材料の第1の状態とは親水性の状態であり、第2の状態とは疎水性の状態である。
【0018】
ここで示した調湿装置101は、一例として筐体6を備える。吸湿材1は筐体6の内部に保持されている。筐体6は、吸湿材1に風を導くための空気入口と吸湿材1に当たって後の風が出ていくための空気出口を備えている。
【0019】
調湿装置101は、高分子ゲル吸湿材料による吸湿材1を備えている。この高分子ゲル吸湿材料はいわゆる刺激応答型の感応ゲルである。この高分子ゲル吸湿材料が空気中の水分を吸収する現象と、刺激に応答して水を吐き出す現象とを利用することで、過冷却や大きな熱量を用いることなく、水蒸気を凝縮水に変換することができる。吸湿材1においては、水と高分子との間で起こる体積相転移を、水蒸気(気体)を含む空気から水(液体)を取り出すために利用している。この場合、熱刺激によって吸湿材1の親水化と疎水化とを制御し、親水状態のときには高分子ネットワーク中に取り込んだ多くの水分子同士が水素結合で結びつきクラスター状態となっている。加熱により疎水化した高分子ネットワークが取りこんでいた水分子を追いやることで、水分子が集まる微視的な領域が形成され、最終的にはこれらの水分子が水として外に出ることになる。このような感応ゲルによる吸湿材に対して外から熱を加える場合、吸湿材の外側から先に疎水性になり、その疎水性になった部分が内部の親水性の部分が疎水性になる際の、または、疎水性になった後の水の行き場を妨げてしまうという懸念があった。しかし、本実施の形態では、吸湿材1の内部に熱振動する部分としてエネルギ変換粒子2を含包しているので、このエネルギ変換粒子2に刺激要因を与えて発熱させることによって内部から外へ順に熱が伝わり、内部から外へと順に疎水性部分が広がるので取り込んだ水分を効率よく外部に押し出すことができる。
【0020】
よって、本実施の形態では、外側に疎水性の膜が形成されてしまって内部の水分子が取り出しにくくなるという問題を回避することができる調湿装置を提供することができる。
【0021】
エネルギ変換粒子2に熱を発生させる刺激要因の種類は、たとえば光であることが好ましい。光であれば、所望の位置を狙って供給することができるからである。以下、エネルギ変換粒子2は光を熱に変換する微粒子(以下「光熱変換微粒子」という。)であるものとして説明する。光熱変換微粒子としては、たとえばカーボンブラック微粒子を採用することができる。その他にも、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、ジルコニア、酸化鉄といった一般的な金属酸化物や、金ナノ粒子などが、光熱変換微粒子として使用できる。あるいは、高温に関しては難があるものの、ナイロン、PMMA、シリコーン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリスチレンなどの一般的な架橋樹脂粒子であっても条件によっては光熱変換微粒子として使用できる。
【0022】
図1では吸湿材1は大きな1つの塊であるものとして例示した。しかし、吸湿材1の形態はこれに限らない。たとえば
図2に示すように、吸湿材1は粒子状となっており、エネルギ変換粒子2は、吸湿材1の粒子の各々に埋め込まれていることが好ましい。この構成を採用することにより、表面積が多くなるので、水分を効率良く吸収させることができる。1つの吸湿材1の粒子に1つのエネルギ変換粒子2のみが入っているとは限らず、
図2に示すように、1つの吸湿材1の粒子に複数のエネルギ変換粒子2が入っていてもよい。
図2では筐体などは図示省略している。
【0023】
図2では粒子のサイズにばらつきがあるが、粒子のサイズが揃っていてもよい。
図2では各粒子が不定形となっているが、各粒子が球形に近い形状であってもよい。
【0024】
粒子状の吸湿材1の内部にエネルギ変換粒子2が埋め込まれた構成は、以下のようにして得ることができる。空気中の水蒸気を収集し吸収する性質の高分子材料を作成する際に、ゲル化もしくは凝固する前にエネルギ変換粒子2となる光熱変換微粒子を適量分散させ、ナノサイズの光熱変換微粒子を含んだ高分子材料を塊状に形成する。この塊として形成した高分子材料を粉砕し、さらに分級する。このようにして、粒子径の揃った吸湿材1を得ることができる。吸湿材1は、粒子状の高分子ゲル吸湿材料である。吸湿材1は、内部にエネルギ変換粒子2を包含したものとなる。
【0025】
あるいは、高分子材料がゲル化もしくは凝固する際に界面活性剤を入れ、感温点程度の加熱条件下で粒子化するという一般的な沈殿法によっても、粒子状の高分子ゲル吸湿材料を作成することができる。粉砕や沈殿法を用いずに形成した場合にはエネルギ変換粒子2となる光熱変換微粒子を分散させたブロック高分子材又はフィルム状高分子材が形成できる。
【0026】
(動作例)
吸湿材1の温度が一定以下で、第1の状態、すなわち、吸湿材1が水分を吸収しうる状態であるときに、
図3に示すように、エネルギ変換粒子2を内部に含む粒子状の吸湿材1の集合に対して、水分を含んだ風3を当てる。このようにすることによって、吸湿材1は風3に含まれる水分を吸収するので、風3の湿度を下げることができる。第1の状態は、吸湿材1が親水性となっている状態である。
【0027】
図4に示すように、水分を吸収している吸湿材1の集合に対して光4を当てることによって、吸湿材1の内部のエネルギ変換粒子2は発熱する。その結果、吸湿材1は内部から温度上昇し、内部から広がるように順に第2の状態へと変化する。第2の状態とは、吸収されていた水分を液体状態で放出する状態である。第2の状態は、吸湿材1が疎水性となっている状態である。粒子状の吸湿材1の中心に配置されたエネルギ変換粒子2が発熱することによって吸湿材1が中心から外表面に向かって順に疎水性領域を広げていく様子を
図5に示す。吸湿材1の中心付近において吸収されていた水分もこのような原理で表面近傍に押し出されてくる。吸湿材1の表面までほぼ完全に第2の状態となることにより、水分は吸湿材1の外へと押し出される。
【0028】
こうして、
図4に示すように液体状態の水5が吸湿材1の周辺に押し出されて現れる。水5は重力に従って液体状態のまま落下する。この落下する水を容器に受けて回収してもよい。このようにして、液体状態の水を得ることができる。一方、吸湿材1は水分を吸収していない状態へと戻る。光4を当てるのをやめればエネルギ変換粒子2の発熱は終了し、吸湿材1の温度が下がる。温度が下がれば吸湿材1は再び水分を吸収しうる第1の状態に戻る。
【0029】
エネルギ変換粒子2に熱を発生させる刺激要因が光である場合、加熱能力は、吸湿材の光の透過率に左右される。加熱能力がこのような要因に左右されることを避け、より均一な熱分布を得るためには、刺激要因として光の代わりに高周波磁場を採用することも考えられる。たとえば高周波磁場を印加することでエネルギ変換粒子2を発熱させることが考えられる。これを実現するためには、エネルギ変換粒子2の一般的な材料としては酸化鉄が考えられるが、LaSrMn系材料なども考えられる。
【0030】
なお、吸湿材1の内部から周辺に押し出された水5を排出するためには、重力を利用する他に、遠心力などを利用してもよい。
【0031】
なお、ここでは、吸湿材1は粒子状であるものとして説明したが、粒子状としたのはあくまで一例であり、吸湿材は、粒子状の他に、シート状、フィルム状、ファイバ状などの形状であってもよい。
【0032】
(実施の形態2)
図6を参照して、本発明に基づく実施の形態2における調湿装置について説明する。
【0033】
図6に示すように、本実施の形態における調湿装置102においては、吸湿材1は板状となっている。吸湿材1の内部に埋め込まれるようにエネルギ変換粒子2が配置されている点は、実施の形態1と同様である。エネルギ変換粒子2は吸湿材1の内部でランダムな位置に埋め込まれていてよい。調湿装置102は、一例として筐体6を備える。
【0034】
本実施の形態では、吸湿材1が板状となっているので、表面積を大きく確保することができ、水分を効率良く吸収することができる。また、水分を放出する際にも効率良く放出することができる。
【0035】
図7に示すように、エネルギ変換粒子2は、吸湿材1の一方の面に近い位置に偏って分布していることが好ましい。
図7では全てのエネルギ変換粒子2が吸湿材1の一方の面に沿って整列しているように描かれているが、エネルギ変換粒子2の配置に関しては、一方の面に近い位置に偏っているならばランダムな配置であってもよい。全てのエネルギ変換粒子2が一方の表面に接している必要はない。たとえば
図8に示すようなおおまかな偏りであってもよい。
【0036】
図7または
図8に示したように、エネルギ変換粒子2が吸湿材1の一方の面に近い位置に偏って分布していれば、刺激要因が与えられてエネルギ変換粒子2が発熱する際には、吸湿材1は一方の面から他方の面に向かって徐々に昇温することとなるので、吸湿材1の内部に含まれていた水分の多くを一方の面の近傍から他方の面に向かって順次送り出すことができ、最終的に他方の面から外へ放出することができる。
図7に示したようにほぼ全てのエネルギ変換粒子2が吸湿材1の一方の面に接するように配置されていれば、より確実に一方の面から他方の面に向かって水分を送り出せるので好ましい。
【0037】
図9に示すように、板状の吸湿材1は基板7によって支持されていてもよい。この場合、吸湿材1の内部のエネルギ変換粒子2は基板7に近い側の面の近傍に偏っていることが好ましい。このように分布していれば、エネルギ変換粒子2が発熱することによって、吸湿材1の内部に吸収されていた水分は、基板7がない側の表面に向かって送り出され、基板7がない側の表面から円滑に放出されることとなる。
【0038】
図10に示すように、基板などなしに板状の吸湿材1が単独で薄い姿勢を維持できる場合には、エネルギ変換粒子2が発熱することによって表裏の区別なく、水5が放出される。吸湿材1から放出された水5は重力に従って下方に落下する。
【0039】
図10では板状の吸湿材1が水平方向に延在していたが、放出された水5を重力で効率良く落下させるためには、板状の吸湿材1を円直方向に延在するように配置することが好ましい。
【0040】
吸湿材1は薄膜状であってもブロック状であってもよい。吸湿材1を平面的に見たときに、エネルギ変換粒子2は、面内の部位による偏りがなく、なるべく均一に分布することが望ましい。深さ方向には、エネルギ変換粒子2は吸湿材1の中央付近または表面付近に偏在させることも考えられる。あるいは、吸湿材1が基材の一方の側に重なるように配置される場合、吸湿材1のうち基材に近い側に偏在させることも考えられる。エネルギ変換粒子2の偏在については、それぞれ周辺環境によって調整できる。一般的には、吸湿材を基材に付ける場合においては、エネルギ変換粒子を基材近傍に偏在させる方が放水を妨げず好ましいが、吸湿材の吸湿能力と伝熱特性とを鑑みて調整することとしてよい。上述のスキン効果を避けると共に膨潤収縮に伴う粒子の脱落を防ぐためには、エネルギ変換粒子は、空気にさらされる表面ではなく、表面からある程度遠ざかった内部に配すべきである。
【0041】
(付記1)前記刺激要因は、光である。
(付記2)前記吸湿材は板状となっている。
【0042】
(付記3)前記エネルギ変換粒子は、前記吸湿材の一方の面に近い位置に偏って分布している。
【0043】
(実施の形態3)
図11〜
図12を参照して、本発明に基づく実施の形態3における調湿装置について説明する。
【0044】
本実施の形態における調湿装置においては、エネルギ変換粒子2に熱を発生させる刺激要因は光であり、
図11に示すように、吸湿材1は円板形状に配置されており、調湿装置は、吸湿材1を中心軸15のまわりに回転させる回転装置10と、吸湿材1の表面に光を照射する照射装置11とを備える。他の基本的な構成は、これまでの実施の形態で説明したものと同様である。吸湿材1には板厚方向に貫通する多数の通気口8が設けられている。この調湿装置は、送風ファン9を備えており、送風ファン9は風3を起こすことができる。吸湿材1は矢印91に示すように回転することができる。回転装置10は、ここでは、吸湿材1の外周に巻いたベルトを通じて吸湿材1を回転させるように表示しているが、これはあくまで一例であり、他の機構によって吸湿材1を回転させるものであってもよい。たとえば吸湿材1の中心軸15に沿うように回転軸部材を設けて、この回転軸部材に直接回転運動を与える構造であってもよい。
図11では、吸湿材1に空気中の水分を吸収させる工程を示している。
【0045】
照射装置11は、光を点状に絞って吸湿材1の表面に対して照射しつつ吸湿材1の内側から外側に向けて走査するものである。
【0046】
吸湿材1に吸収した水分を取り出す工程においては、
図12に示すように、照射装置11からレーザ光14を照射する。ここでは、光の一例としてレーザ光14を採用しているが、レーザ光に限らず他の種類の光であってもよい。ただし、レーザ光であることは好ましい。
図12に示すように、照射装置11は、矢印92に示すようにレーザ光14を点状に絞って吸湿材1の内側から外側に向けて走査することができる。この走査は、照射装置11自体が移動することによって行なわれてもよいが、照射装置11自体が必ずしも移動しなくても、吸湿材1の表面が結果的に光によって走査されるのであればよい。
【0047】
本実施の形態では、光の走査によって吸湿材の各部位に埋め込まれたエネルギ変換粒子2を順次発熱させ、各部位における吸湿材1を第1の状態から第2の状態に変化させることができるので、吸収されていた水を効率良く取り出すことができる。
【0048】
走査中の
図12におけるZ1部を拡大したところを
図13に示す。レーザ光14が既に走査した領域は疎水性領域12となっており、レーザ光14がまだ走査していない領域は親水性領域13となっている。レーザ光14が円板状の吸湿材1の中心近傍から外周に向かって走査することによって、疎水性領域12の直径が徐々に拡大していく。疎水性領域12の外側にリング状に親水性領域13が残ることとなる。吸湿材1に含まれていた水分は中心近傍から外周に向かって押し出されることとなる。最終的には外周から液体状態の水が排出されることとなる。また、走査の途中で吸湿材1の上下の表面に排出された液体状態の水は、吸湿材1の回転による遠心力によって外周寄りに導かれるので、効率良く水を排出することができる。
【0049】
なお、レーザ光14の照射スポットが移動していく際に、ある部位が照射された時点では温度が上がって疎水性となっても、照射スポットが去った後に温度が下がって当該部位が再び水分を吸収可能になり、一旦追い出された水分が再び吸収されてしまうという現象がありうる。このような現象を防ぐためには、点状に絞ったレーザ光14を吸湿材1の内側から外側に向けて走査するという工程は1回だけでなく、複数回繰り返すこととしてもよい。
【0050】
(実施の形態4)
図14〜
図18を参照して、本発明に基づく実施の形態4における調湿装置について説明する。本実施の形態における調湿装置は、実施の形態3で説明したものと類似しているが、光による走査の仕方が異なる。
図14に示すように、本実施の形態における調湿装置においては、照射装置11は、光をリング状に絞って吸湿材1の表面に対して吸湿材1の外形と同心状に照射しつつ吸湿材1の内側から外側に向けてリング径を拡大させるように走査するものである。本実施の形態では、光はレーザ光14である。他の基本的な構成は、これまでの実施の形態で説明したものと同様である。
【0051】
図14に示すように照射が開始された光は、
図15に示すように外径を徐々に拡大する。
図15におけるZ2部を拡大したところを
図16に示す。元々、吸湿材1は親水性であるが、光が照射されることによって吸湿材の各部位に埋め込まれたエネルギ変換粒子2が順次発熱するので、疎水性へと変化する。したがって、
図15に示すように光がまだ照射されていない領域は親水性領域13であるのに対して、光が照射されている領域は、疎水性領域12となっている。
図15に示すように外径が拡大するのに引き続いて
図17に示すようにリングの内径も拡大する。内径の拡大は外径の拡大が完了してから始まるとは限らない。外径の拡大中に内径も並行して拡大してもよい。
図17におけるZ3部を拡大したところを
図18に示す。光の照射が通り過ぎた部分も疎水性領域12となっている。
【0052】
本実施の形態では、リング状に絞られた光の走査によって吸湿材の各部位に埋め込まれたエネルギ変換粒子2を順次発熱させ、各部位における吸湿材1を第1の状態から第2の状態に変化させることができるので、吸湿材1に含まれていた水分は中心近傍から外周に向かってリング状に押し出されることとなる。したがって、吸湿材1に含まれている水分を確実に外周に向けて押し出すことができ、吸収されていた水を効率良く取り出すことができる。
【0053】
(参考技術)
図19〜
図20を参照して、参考技術について説明する。
【0054】
気化式加湿装置は、外部の空気を取り込んで装置内を通過させるための送風機と、気化フィルタとを備える。気化フィルタとは、蓄えた水分を水蒸気として放出するためのものである。気化フィルタは、吸水性のある材料、たとえば吸水性のある繊維、不織布などをフィルタ状に加工したものとして形成される。気化フィルタに予め水分を蓄えて、送風機で気化フィルタに風を通すことで、加湿を行なう。
【0055】
しかし、これを行なうには、気化フィルタが十分湿っていることが重要であり、スケール成分の固着や汚れによって気化フィルタの吸水性能が低下している場合には、気化フィルタが全体的または部分的に乾燥した状態となっていることがありうる。そのような状態では十分な加湿性能を発揮することができない。このような事態を避けるためには、気化フィルタを定期的に手入れしたり交換したりする必要があるが、従来の気化フィルタは乾燥しているのか湿っているのか容易に確認することができなかったので、気化フィルタの吸水性能の低下にユーザが気付かないことが多かった。
【0056】
また、気化フィルタがどこに設置されているのかユーザにとってはわかりにくい場合もあった。気化フィルタの存在に気づいていないユーザも多かった。
【0057】
この問題に対して、以下の付記に示すような空気調和機が考えられる。この空気調和機の一例を
図19に示す。この空気調和機は、下部に水タンク21、上部に送風機22を備える円筒形であり、中間部には透明筒部23を備える。透明筒部23の内部には気化フィルタとして吸湿材1を備えている。
【0058】
(付記4)
水分を気化させて放出することで環境を加湿するための空気調和機であって、前記空気調和機は、水分を吸収することによって蓄えることが可能で、かつ、蓄えた水分を空気中に水蒸気として放出することも可能である気化フィルタを備え、前記気化フィルタは、乾燥時に第1の色であり、濡れると前記第1の色とは異なる第2の色に変わり、乾燥すると前記第1の色に戻るという可逆性を有する、空気調和機。
【0059】
たとえば、従来の気化フィルタの材料に、シリカ(二酸化ケイ素)を混合または塗布または印刷することとしてもよい。こうした場合、乾燥時には白色で、水に濡れた場合にはシリカが透明になり、シリカの下に隠れていた色が浮かび上がる。
【0060】
(付記5)
前記気化フィルタを外部から視認可能なように配置している、付記4に記載の空気調和機。
【0061】
たとえば透明なケースに気化フィルタを収容し、透明ケース越しにユーザが気化フィルタを外部から見ることができる構造としてもよい。
【0062】
(付記6)
前記第1の色と前記第2の色との間で可逆的に変色する部分を部分的に配置することによって、変色を以てユーザに異状を知らせることを可能にした、付記4または5に記載の空気調和機。
【0063】
たとえば、乾燥して変色することによって
図20に示すように、吸湿材1の表面に文字24を表示させることが考えられる。この文字24は透明筒部23を通じてユーザが視認することができる。
図20では例として「ABCDE」という文字列が表示されているが、この文字列は、変色によって文字の表示が可能であることを示すための仮のものであり、実際にはたとえば「乾燥」という意味の文言を適切な言語で入れることが考えられる。シリカを用いた場合、乾燥していることによって、文字が白く浮かび上がる。文字および背景のうち文字を変色させる構成に限らず、逆に背景を変色させることとしてもよい。文字に限らず、マーク、絵、模様などを表示してもよい。
【0064】
このような変色による文言表示の現象を利用して、気化フィルタの異常発生時や寿命がきて交換すべきであるときに、その旨をユーザに視覚的に知らせる仕組みも考えられる。
【0065】
なお、加湿要素と、水を溜めておくためのタンクとを備える加湿装置を想定したとき、以下の構成が考えられる。これまでの実施の形態で説明した高分子ゲル吸湿材料で、なおかつ、乾燥時には白濁し、吸湿したときには光透過率が高くなるような性質のもので形成された識別要素を用意し、この識別要素を加湿要素のうちタンクの水面から遠い位置、すなわち、たとえば加湿要素の上下方向の中間部または上部に装着しておくという構成が考えられる。タンクの水が無くなったときには加湿要素も識別要素も乾燥するので、識別要素は白濁する。タンクに水が入って一定時間経つと加湿要素によって吸い上げられた水分が識別要素に吸収されるので識別要素の光透過率が高くなる。ただし、加湿要素にスケールが付着するなどして加湿要素が劣化してくると、加湿要素がタンクの水を十分に吸い上げることができなくなってくる。そうなると、タンクに水を入れても十分な水分が識別要素にまで届かず、識別要素は乾燥時の白濁状態になったまま光透過率が回復しない状態になる。ユーザに対しては、「水を補給して一定時間経過しても識別要素が透明にならない場合は加湿要素の交換時期である」と事前に説明しておくとよい。あるいは、透過率または反射率を測定する装置で識別要素の光学特性をモニタして加湿要素の交換時期がきたら知らせるという構成であってもよい。
【0066】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。