特許第6275877号(P6275877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275877
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ヘパリンの局所製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/727 20060101AFI20180129BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61K31/727
   A61P9/10
   A61P9/00
   A61K9/08
   A61K47/10
   A61K47/34
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-568157(P2016-568157)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公表番号】特表2017-505344(P2017-505344A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】IB2015050986
(87)【国際公開番号】WO2015118512
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】475/MUM/2014
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】509337908
【氏名又は名称】トロイカ ファーマスーティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パテル ケイ アール
(72)【発明者】
【氏名】パテル エム アール
(72)【発明者】
【氏名】パテル エイ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】シャー プラカシュ ジェイ
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/135422(WO,A2)
【文献】 特開昭60−036414(JP,A)
【文献】 特開平10−279466(JP,A)
【文献】 特表2013−525505(JP,A)
【文献】 特開平02−207018(JP,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,1992年,Vol.82,pp.171-177,タイトル、「Materials」の項、表2の上から5番目のサンプル
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K47/00−47/69
A61K9/00−9/72
A61P1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50から2500IU/mlのヘパリンの薬学的許容塩と、
30%v/v以下の水と、
10から30%v/vの低級鎖アルコールと、
45%v/v以上のプロピレングリコール、グリセロール、グリコフロール、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物から成る群より選ばれる水混和性ビヒクルと、
を含むことを特徴とする、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項2】
前記水の量が、前記製剤の25%v/v以下であることを特徴とする、請求項1に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項3】
前記低級鎖アルコールの量が、前記製剤の10から20%v/vの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項4】
前記低級鎖アルコールが、C1からC5の炭素鎖長範囲の1つ以上のアルコールまたはその混合物より選ばれることを特徴とする、請求項3に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項5】
前記水混和性ビヒクルが、プロピレングリコールであることを特徴とする、請求項1に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項6】
前記水混和性ビヒクルが、プロピレングリコールとグリセロールとの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項7】
前記水の量が、前記製剤の前記水混和性ビヒクルの量より少ないことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項8】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、前記製剤の粘度が、10から50mPa・sの範囲であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項9】
1つ以上の追加的な浸透促進剤を更に含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項10】
前記1つ以上の追加的な浸透促進剤が、脂肪酸、界面活性剤、アゾン、アミド、エステル、エーテル、胆汁塩、ポリオール、または錯体形成剤、およびこれらの混合物から成る群より選ばれることを特徴とする、請求項9に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項11】
防腐剤、安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、着色剤、もしくは香料、およびこれらの混合物から成る群より選ばれる、薬学的に許容される賦形剤を更に含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項12】
前記製剤が溶液の形態をしていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【請求項13】
前記製剤の粘度が、25から40mPa・sの範囲であることを特徴とする、請求項8に記載のヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤に関する。より詳細には、本発明は、経皮透過性の高い、ヘパリン塩の先進的な局所製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
表在性血栓静脈炎(Superficial venous thrombophlebitis:SVT)は、静脈の損傷により皮膚表面下の静脈内に血栓が形成されて起こる、静脈の炎症の状態である。これは、静脈内カテーテルの使用や外科的処置によっても起こる。
【0003】
輸液の関連する表在性血栓静脈炎(SVT)は、静脈内療法を受けている入院患者によく起こる。この局所的な血栓静脈炎は患者の苦痛を増し、静脈カテーテルラインの頻繁な変更や、局所血栓静脈炎の合併症の治療のため、治療コストを増大させる(Arun B and Sharmila V. Prophylactic topical heparin can prevent or postpone intravenous cannula induced superficial thrombophlebiyis. Med Hypotheses 2010; 74: 857-858)。表在性血栓静脈炎はまた、拡張蛇行静脈を悪化させることがある。既刊文献によれば、この合併症の発病率は5.6から44%の範囲である(Katzenschlager R, Ugurluoglu A, Hirsch M. Liposomal heparin-spraygel in comparison with subcutaneous low molecular weight heparin in patients with superficial venous thrombosis. A randomized, controlled, open multicentre study, J Kardiol 2003; 10(9): 375-378)。
【0004】
SVTの治療には、局所的にも全身的にもヘパリンが使用される。これは、血液凝固を阻害する化合物群、および/または、血小板凝集を阻害する化合物群に属する。これらの化合物の局所使用は、全身投与よりも便利な選択肢である。全身投与による合併症の回避とは別に、局所的に作用する抗凝固剤/抗血栓剤は、血栓(凝血塊)を小さくし、痛み/炎症を抑える効能がある。局所用ヘパリン製剤は、様々な種類の外傷、炎症性浸潤物、静脈性潰瘍による拡張蛇行静脈のあざの治療にも用いられる(Belcaro G, Cesarone M, Dugall M, Feragalli B, Ippolito E, Corsi M ほか, Topical formulation of heparin is effective in reducing the symptoms of superficial venous thrombosis: a monocenter, observer-blind, placebo-controlled randomized study. Panminerva Med 2011; 53 (Suppl. 1 to No. 3): 3-11)。
【0005】
ヘパリンまたはその薬学的許容塩の局所製剤は血栓静脈炎の治療に用いられる。これらの製剤は、粘着性のゲル、チキソトロピ性のスプレ可能なゲル、軟膏、クリームとして、または、薬物がリン脂質二重層の中に組み込まれているリポソーム製剤として入手できる。高用量の局所用ヘパリン製剤は、低用量製剤に比べて有利な治療効果がある。ヘパリン塩濃度の高い製剤を用いても、既知の局所製剤からの薬物の不十分な皮膚透過では治療効果が基準以下となってしまう。血栓静脈炎に伴う痛みや炎症などの症状の鎮静に要する治療期間が長引くことから、これは明らかである。
【0006】
ヘパリンまたは分子量の異なるその変形物(エノキサパリンなど)、ヘパリン塩(ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウムなど)、またはヘパリノイドの用量は、国際単位(IU)で表される。50から2500IU/gの範囲の強さのヘパリンの局所製剤が推奨されている。
【0007】
局所的な投与径路で使用する場合、ヘパリンまたはその塩を表皮層下で作用させることを意図している。適切な治療的有用性を発揮するには、これらの製剤が皮膚を通して良く吸収される必要がある。クリーム/軟膏/ゲル/リポソームの形で皮膚に塗布する局所製剤の多くは、必要濃度において皮膚の角質層バリアから薬物が必要なほど透過しないため、望ましい治療的有用性を発揮するというより、プラセボ同然にしか作用しない。チキソトロピ誘発剤などの様々な成分を含み、スプレ可能な製剤であることを謳っている製剤でも、患部の表面にフレーク状の被膜ができてしまうため、このような製剤は患者に受け入れられず、美容上好まれない。
【0008】
ヘパリンまたはその塩の局所製剤を製造するためのこれまでの取り組みは、脂質様のべたつく成分またはポリマ、あるいは、製剤を粘着性および/またはゲル様(非常に粘性)にする他の成分を使用するもので、このため、患部にこれを塗布するには十分な圧力が必要であり、および/または、皮膚表面にフレーク状またはゲル様の被膜ができてしまう。更に、一部の製剤では、DMSOなどの、影響の強い/細胞障害性の成分を必要とするため、目標部分の皮膚を更に刺激し、患者を不快にさせることがある。
【0009】
これらのヘパリンまたはその塩の局所製剤は全て、ヘパリンの経皮透過性に対する、このような主に水から成る製剤の影響を考慮することなく、主要キャリヤとして高比率の水を使用している。
【0010】
様々な薬学的活性試剤、特に、薬学的活性試剤の塩などの極性活性薬剤の透過性を高めるために様々な取り組みが行われてきた。その1つは、エマルション/マイクロエマルションを生成するため、油相中に親油性浸透促進剤を、水相中に薬物を組み込むものである。
【0011】
更に、水を含む系の中にミセルを形成し、または、水中油(o/w)エマルションを調製して、親油性の高い成分を溶解させるため、様々な乳化剤/界面活性剤が使用されている。しかし、このような乳剤は、上手く配合しないと、本来、非常に不安定で、貯蔵の間に脂質小球が合体してクリーム化し易く、製剤中の用量分布が不均一になってしまう。このような製剤中の分散相小球の粒径を制御して、用量均一性と安定性を保つことも重要である。これらのエマルションは、不透明なクリーム、ローション、または半透明の製剤として入手可能である。
【0012】
もうひとつの取り組みは、製剤に、必須成分としてリン脂質成分を組み込み、これが薬剤を溶解状態で包み込んで、リポソームとして知られる、薬物の水溶液で満たされた小胞を形成するものである。しかし、元々の安定性の問題とは別に、このような系の形成は複雑で時間がかかり、再現性がない。
【0013】
更に、いくつかの製剤では、ポリマまたは界面活性剤の形態をした特定の賦形剤、あるいは1つ以上の浸透促進剤の使用が必要な、主に水から成る系の使用が提案されている。これらはいずれも、界面活性剤などの成分がなくても、あるいは、高い割合の浸透促進剤を使用しなくても、それ自体で最適の経皮透過性が得られる改善されたキャリヤ系を目的とするものではない。
【0014】
従って、薬物の透過性が高く、同時に、悪影響が少ないだけでなく、皮膚表面への付け心地も良くて、患者の薬剤使用順守に優れた、治療的有効量のヘパリンの薬学的許容塩を供給することのできる安定な局所製剤に対する満たされていない要望がある。
【0015】
国際特許出願公開第02083086A1号は、皮膚および/または粘膜損傷、より詳細には、熱傷の治療に使用される局所製剤を開示している。これらの製剤は、少なくとも1つの浸透圧補正剤を含んでいる。
【0016】
国際特許出願公開第2011138262号は、ヘパリンと、少なくとも1つのヒドロキシ脂肪酸のポリオキシアルキレンエステルとの水溶液と、少なくとも1つのアルコールまたはその混合物とから成る局所用溶液を開示している。
【0017】
欧州特許第0733357B1号は、ゲル化剤としてコロイド状ケイ酸塩を含み、ゲル様の粘稠度を持った、機械式ポンプで噴霧できるチキソトロピ性局所製剤を開示している。
【0018】
米国特許第5958379号は、患部に噴霧すると、皮膚/粘膜表面に濃厚なゲル様の製剤を形成する、局所に適用可能な物質の医薬組成物を開示しており、この組成物は、5から40質量%の範囲の揮発し易いアルコール(1つまたは複数)と、50から90質量%の範囲の水とを含んでいる。
【0019】
米国特許出願公開第2002032171号は、キャリヤ中の治療薬である医薬組成物を開示しており、このキャリヤは、トリグリセリドと、少なくとも2つの界面活性剤(その少なくとも1つは親水性)との組合せでできている。水媒体で希釈すると、これらの製剤はトリグリセリドと界面活性剤との透明な水分散液となる。
【0020】
最適量の水を用いて、安全、安定、再現性のある、必要量の薬物のための投薬形態とすることができ、同時に、経皮透過性が高く、また、投与が容易であるため患者の薬剤使用順守の良い、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際特許出願公開第02/083086号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第2011/138262号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第0733357号明細書
【特許文献4】米国特許第5,958,379号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/032171号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Arun B and Sharmila V. Prophylactic topical heparin can prevent or postpone intravenous cannula induced superficial thrombophlebiyis. Med Hypotheses 2010; 74: 857-858
【非特許文献2】Katzenschlager R, Ugurluoglu A, Hirsch M. Liposomal heparin-spraygel in comparison with subcutaneous low molecular weight heparin in patients with superficial venous thrombosis. A randomized, controlled, open multicentre study, J Kardiol 2003; 10(9): 375-378
【非特許文献3】Belcaro G, Cesarone M, Dugall M, Feragalli B, Ippolito E, Corsi M ほか, Topical formulation of heparin is effective in reducing the symptoms of superficial venous thrombosis: a monocenter, observer-blind, placebo-controlled randomized study. Panminerva Med 2011; 53 (Suppl. 1 to No. 3): 3-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の主な目的は、表在性血栓静脈炎(SVT)などの症状に局所的に適用した場合に、優れた経皮透過性と高い治療有効性を持つ、ヘパリンの薬学的許容塩の製剤の提示である。
【0024】
本発明のもうひとつの目的は、望ましくは、溶液またはスプレの形での投与に適し、皮膚表面に適用した後に、フレーク状/ゲル様の被膜が形成されない、透明でべたつかず、水で洗い流せる液剤の形態をしたヘパリンの薬学的許容塩の安定な局所製剤の提示である。
【0025】
本発明のもうひとつの目的は、患者が薬剤の用法を守り易く、副作用の少ない、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤の提示である。
【0026】
本発明もうひとつの目的は、用量範囲が50から2500IU/mlである、透明で再現性の良い、最適量の水を使用したヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤の提示である。
【0027】
本発明の均質な局所製剤は、製剤のある1つの相から別の相へ薬物を分配させる必要がなく、皮膚を通して薬物がすぐに浸透する、均質な“吸収され易い”組成物として、ヘパリンの薬学的許容塩を供給する。
【0028】
本発明は、患部への投与が容易であるだけでなく、粘着性/ゲル様の、またはフレーク状の残分を皮膚上に残さずに、皮膚を通して薬物を素早くかつ良く透過させる、透明溶液の形態をした、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の態様に従って、
50から2500IU/mlのヘパリンの薬学的許容塩と、
30%v/v以下の水と、
10から30%v/vの低級鎖アルコールと、
プロピレングリコール、グリセロール、グリコフロール、ポリエチレングリコール、またはこれらのいずれかの混合物から成る群より選ばれる水混和性ビヒクルと、
を含む、ヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】3日目の、静脈病変部の長さの比較を示すグラフである。
図2(a)】ベースラインでの静脈病変のグレードを示すグラフである。
図2(b)】3日目の静脈病変のグレードを示すグラフである。
図3】7日目に完治している患者の割合を示すグラフである。
図4(a)】本発明のヘパリン製剤(実施例13)および市販のヘパリンゲルに対する、患者の全体的評価を示すグラフである。
図4(b)】本発明のヘパリン製剤(実施例13)および市販のヘパリンゲルに対する、医師の全体的評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、先進的なキャリヤ系を含む、均質な液剤の形態をしたヘパリンの薬学的許容塩の局所製剤を提示することで、前述およびその他の要求に応える。
【0032】
本発明の発明者は、意外にも、先進的なキャリヤ系中に、50IU/mlから2500IU/mlの範囲の量の、ヘパリンの薬学的許容塩の透明な製剤の調製が可能であり、このとき、薬物は、十分な量の水混和性/非水キャリヤ系と組み合わせた、最適量の水を含む製剤中に組み込まれており、更に、皮膚を通した薬物の透過性が高くなることを発見した。
【0033】
本発明の均質な製剤は透明溶液の形態をしており、これは、クリーミング(creaming)またはクラッキング(cracking)し易い、小胞、ミセルなどの分散相を含む製剤、またはチキソトロピ性ゲルに比べて、貯蔵の際により安定である。同時に、本発明の製剤は、製剤中に含まれている必要用量の薬物を良く浸透させることができる。
【0034】
本発明の製剤は、ヘパリン塩の安定な製剤であるだけではなく、驚くほどに経皮透過性が高くなるため、薬物の治療効果が劇的に改善される。本発明の局所製剤は、スプレとして使用できる、透明な均一溶液の形態をしている。
【0035】
本発明の製剤では、薬物を、均質な製剤中に一様に可溶化した状態で利用でき、製剤から薬物が瞬間的かつ再現性良く吸収される。これらの製剤は有利なことに、透明溶液状であり、圧力をかけずに、あるいは、皮膚表面に粘着性/ゲル様の、またはフレーク状の残分を残さずに、簡単に患部に塗布でき、同時に、粘着性ゲル、クリーム、軟膏などの比較的粘着性のある製剤に比べ、患者の薬剤使用順守が向上する。
【0036】
本発明の製剤の望ましい粘度は50mPa・s以下(オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した場合)である。望ましくは、本発明の製剤の粘度は10から50mPa・sの範囲である。より望ましくは、本発明の粘度は25から40mPa・sの範囲である。
【0037】
驚くべきことに、本発明の製剤では、最適量の水を含む先進的なキャリヤ系を用いることで、また、局所に適用した場合に安全で、従って、副作用が少なく、更には患者の健康に積極的に貢献するような成分の割合の選択を使用することで、前述およびその他の利点が得られる。
【0038】
本発明の製剤は、望ましい経皮透過性が得られ、同時に、局所に適用した場合に安全であるような、治療的有効量のヘパリン塩の用量を供給する。望ましくは、ヘパリンの薬学的許容塩の量は、50から2500IU/mlの範囲である。
【0039】
最も驚くべきことに、本発明の製剤は、主要ビヒクルとしての水混和性キャリヤ(1つまたは複数)と組み合わせた最適量の水を用いることで、50から2500IU/mlの範囲の量のヘパリン塩を供給することができ、更に、経皮透過性を高めることができる。
【0040】
本発明の製剤は、薬物の経皮透過性を高める、製剤のキャリヤ系または“ベース”と組み合わせた最適量の水を含んでいる。望ましくは、本製剤に含まれる水の量は30%v/v以下、より望ましくは25%v/v以下である。本発明の製剤で使用する水の量は、製剤の2%から30%v/vの範囲である。より望ましくは、本発明の製剤中の水の量は、製剤の2から25%v/vの範囲である。望ましい実施形態において、本発明の製剤で使用する水の量は、製剤の10%v/v以下である。
【0041】
本発明で使用する浸透促進剤(1つまたは複数)は、炭素鎖長範囲がC1からC5の低級鎖アルコール(1つまたは複数)、またはその混合物である。望ましくは、本発明の浸透促進剤は、エタノール、イソプロパノールなど、またはこれらの混合物から成る群より選ばれる。本発明の製剤は、このような浸透促進剤を高い割合で使用していないため、アルコールの場合の皮膚の脱水や刺激など、皮膚に対する悪影響が避けられる。本発明の前記浸透促進剤(1つまたは複数)は、製剤の10から30%v/vの範囲で使用する。望ましい実施形態において、本発明の浸透促進剤は、10から20%v/vの範囲で使用する。最も望ましくは、浸透促進剤(1つまたは複数)は、製剤の10%v/vの量で使用する。
【0042】
本発明の製剤では、局所製剤の主要ビヒクルとして、1つ以上の水混和性ビヒクル(1つまたは複数)を使用する。本発明の製剤に使用する前記水混和性ビヒクルは、プロピレングリコール、グリセロール、グリコフロール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG600など)、またはこれらの混合物から成る群より選ぶことができる。本発明の局所製剤のための前記ビヒクルは、製剤の少なくとも45%v/v、望ましくは少なくとも50%v/vの量で含まれている。
【0043】
本発明の製剤では、前記水混和性ビヒクル(単一成分、または多成分の組合せ)の量が、本製剤中で使用する水の割合よりも常に高い割合で含まれているキャリヤ系を使用する。
【0044】
本発明のある実施形態において、本発明の製剤に使用する水混和性ビヒクルは、単独のプロピレングリコール、あるいは、グリセロール、グリコフロール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG600など)の1つ以上と組み合わせたプロピレングルコールのいずれかである。望ましくは、本発明の製剤に使用する水混和性ビヒクルは、プロピレングリコールとグリセロールとの組合せを含んでいる。最も望ましくは、本発明の製剤の水混和性ビヒクルは、プロピレングリコールとグリセロールとの組合せを含み、グリセロールを、製剤の10から20%v/vの範囲の量で使用する。
【0045】
意外なことに、当該技術で知られている製剤とは異なり、このようなキャリヤ系を浸透促進剤と組み合わせて使用すると、本発明の製剤が非常に安定となり、ヘパリン塩の経皮透過性が驚くほどに高まることがわかった。
【0046】
本発明の製剤は、追加的な浸透促進剤(1つまたは複数)を更に含んでいても良い。本製剤の追加的浸透促進剤(1つまたは複数)は、脂肪酸または脂肪酸誘導体、界面活性剤(アニオン、カチオン、または非イオン界面活性剤)、アゾン(ラウロカプラムなど)、アミド(尿素およびその誘導体など)、エステル(酢酸エチル、サリチル酸オクチルなど)、エーテル(ジメチル−イソソルビドなど)、胆汁塩(デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、またはグリココール酸ナトリウムなど)、ポリオールまたはグリコール誘導体(ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールのモノエチルエーテルなど)、または錯体形成剤(シクロデキストリンまたはその誘導体など)などの、当該技術で知られている浸透促進剤の非限定的な群より選ぶことができる。前記追加的浸透促進剤(1つまたは複数)は、製剤の0%から30%v/vの範囲の量で使用することができる。
【0047】
更に、本発明の製剤は、本発明の局所製剤の受容性/安定性を更に改善するため、またはこれに影響を与えるために、当該技術で公知の成分を含んでいても良い。当該技術で公知のこのような成分は、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、着色剤、pH調節剤、緩衝剤、もしくは香料、またはこれらの混合物から成る群(但し、これらに限定されない)より選ぶことができる。
【0048】
本発明の製剤は、主要キャリヤとしての水と、比較的少量の、プロピレングリコールなどの無極性溶媒とを含んでいる比較用製剤に比べて、ヘパリン塩の透過性が優れていることが分かった。更に、本製剤は、市販されている製剤(スロムボフォブ(Thrombophob)(登録商標)ジェル200IU)と比べても、ヘパリン塩の透過性が高い。
【実施例】
【0049】
透明溶液の形態をした、本発明の製剤の非制限的な例は、下に示すとおりである。
【0050】
[実施例1]
【表1】
【0051】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は23mPa・sである。
【0052】
[実施例2]
【表2】
【0053】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は35mPa・sである。
【0054】
[実施例3]
【表3】
【0055】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は30mPa・sである。
【0056】
[実施例4]
【表4】
【0057】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は32mPa・sである。
【0058】
[実施例5]
【表5】
【0059】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は47.76mPa・sである。
【0060】
[実施例6]
【表6】
【0061】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は37.45mPa・sである。
【0062】
[実施例7]
【表7】
【0063】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は35mPa・sである。
【0064】
[実施例8]
【表8】
【0065】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は20mPa・sである。
【0066】
[実施例9]
【表9】
【0067】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は34.3mPa・sである。
【0068】
[実施例10]
【表10】
【0069】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は27mPa・sである。
【0070】
[実施例11]
【表11】
【0071】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は21mPa・sである。
【0072】
[実施例12]
【表12】
【0073】
オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した、この製剤の粘度は30mPa・sである。
【0074】
本発明の製剤の粘度は10から50mPa・sの好ましい範囲にあり、製剤のpHは、皮膚を刺激しないよう、皮膚表面の生理的pH(pH6から7)と同じくほぼ中性に保たれている。必要ならば、製剤のpHを望ましい範囲に保つため、当該技術で知られるpH調整剤または緩衝剤を製剤に加えても良い。本発明の製剤は、製剤の全保存期限の間、安定に保存できることが分かった。
【0075】
上で詳細に述べた本発明の非制限的な実施例は、当該技術で公知の調剤法で調製可能である。本発明の製剤の調製に使用する製造工程の概略には、次の工程が含まれる。
1.所望量のヘパリン塩および他の親水性賦形剤(使用するならば)を水に溶解する。
2.工程1で得られた溶液を、水混和性キャリヤ系の一部と混合する。
3.保存料などの疎水性成分(使用するならば)を本発明の浸透促進剤中に可溶化する。
4.上記の工程2で得られた溶液を、上記の工程3で得られた溶液と混合する。
5.pH調整剤などの補助的成分(もしあるならば)を、上記の工程4で得られた混合物に加える。
6.十分な量の水混和性キャリヤ系を用いて、製剤を最終容量とする。
【0076】
更に、本製剤で使用する水の割合の変化による影響を調べ、また、水混和性ビヒクルよりも高い割合の水を含む製剤と、これとを比較するため、次のような処方の製剤を調製して、ヘパリン塩のin vitro経皮透過性について調べた。
【0077】
【表13】
【0078】
フランツ拡散試験により、本発明の製剤(実施例13、14、15)のヘパリン塩のin vitro 経皮透過性を、比較用製剤(実施例16、17、18)および市販の製剤(スロムボフォブ・ジェル(Thrombophob gel)、Zydus)と比較した。
【0079】
装置:この試験では、レセプタチャンバの内径9mm、レセプタチャンバの容量5ml、膜表面積0.64cmの仕様の、6連垂直セルスターラと黒色陽極酸化アルミセルホルダを備えた、フランツ拡散セル装置(パーメギア社、米国)を使用した。
【0080】
透過性試験:フランツ拡散セルのドナーチャンバとレセプタチャンバの間に置いたナイロン膜を用いて透過性試験を行った。HPLCグレードの水をレセプタチャンバに満たし、実験の間、内蔵型マグネチックスターラを用いて500rpmで連続撹拌した。レセプタチャンバ周囲のジャケットに水を循環させて、チャンバ内のHPLCグレードの水の温度を37℃に保った。レセプタチャンバ内のHPLCグレードの水の温度が平衡に達した後(37℃)、量り取った量のヘパリン製剤をドナーチャンバに入れた(下表に示すように、2連で行った)。レセプタチャンバのサンプリングポートから、所定の間隔で6時間まで、試料(0.5mlの分量)を取り出した。サンプリング後すぐに、同じ体積のHPLCグレードの水(37℃に保持)を用いて、レセプタチャンバの減った体積を戻した。採取した試料は、24時間以内にHPLCで分析した。
【0081】
結果:レセプタチャンバ中のヘパリン塩濃度を経時的に測定し、平均値(n=2)を用いて、下表(表2)に示す、流量、透過係数、その他のパラメータを求めた。
【0082】
【表14】
【0083】
フランツ拡散試験の結果は、比較的多い量の水を使用している製剤(実施例16、17、18)と比べ、本発明の製剤からのヘパリンナトリウムの透過性(流量)が著しく高いことを明示している。驚くべきことに、ヘパリンナトリウムの局所製剤に使用する水の量が増加してある範囲を超えると、ヘパリンナトリウムの透過性が急激に低下する。本製剤(実施例13から15)からのヘパリンナトリウムの透過性が、主要キャリヤ系として水を使用している市販のヘパリンナトリウム製剤(スロムボフォブ・ジェル)よりも著しく高いという事実からも、これが立証された。
【0084】
上記のin vitro試験の結果を確認するため、無作為化、非盲検、比較臨床試験を行って、本発明の局所用溶液(実施例13)の安全性と有効性を、輸液後表在性血栓静脈炎の治療用の市販のヘパリンゲル製剤(スロムボフォブ・ジェル)と比較した。
【0085】
この前向き、無作為化、2群、非盲検、実薬対照第三相臨床試験を、インド国内の6つの異なる病院で行った。Royal College of Nursing IV Therapy Forum July 2003 の“Standards for Infusion Therapy”による静脈炎スケールで、初期グレード2〜4静脈炎(表在性血栓静脈炎の中期、または進行期)に罹った、年齢18〜60歳の男女の患者を被験者とした。合計202名の患者を登録し、無作為に、本発明のヘパリン製剤(実施例13)(n=100)またはヘパリンゲル(n=102)のいずれかを投与した。静脈炎病変部を覆うのに十分な量の試験治療薬を、治癒するまで、または最大7連続日間、1日3回(朝、昼、晩)塗布した。
【0086】
主要有効性の評価項目は、3日目の静脈病変部の長さの変化、3日目の病変のグレードの変化、3日目および7日目での完治した患者の割合であり、副次的有効性の評価項目には、3日目の局所症状と、試験終了時の患者および治験責任医師による全体的評価が含まれる。安全性評価項目には、試験治療による局所または全身の有害事象の発生が含まれる。静脈病変部の長さ(mm)は目盛り付きステンレススチール定規を用いて測定し、病変のグレードは、静脈炎スケールを用いて、試験開始前(ベースライン)と、治療開始後3日目に記録した。静脈炎スケールは、下に詳細に示す5段階スケールで評価した(表3)。
【0087】
【表15】
【0088】
この基準に基づき、完治した(静脈炎スケールでグレード0)患者の割合を3日目および7日目に記録した。疼痛、圧痛、赤み、局所の発熱、静脈の硬結などの局所症状を、ベースラインおよび3日目に、4段階重症度スケール(0−なし、1−軽度、2−中等度、3−重度)で評価した。
【0089】
合計202名の患者からデータを取り、統計分析を行った。2つの治療群の人口学的特性(年齢、性別、身長、体重)および基本特性(静脈病変部の平均長さ、局所症状、静脈炎のグレード)は同程度であった(表4)。登録した患者は全て、上肢に片側性の表在性血栓静脈炎があった。
【0090】
【表16】
【0091】
主要有効性の評価項目:
1.静脈病変部の長さの変化:ヘパリンゲルで治療した患者に比べて、本発明のヘパリン製剤(実施例13)で治療した患者では、3日目において、ベースラインからの、静脈病変部の長さの著しい減少が見られた(p=0.0144)(図1参照)。
2.静脈病変のグレードの変化:ベースラインにおいて、2つの治療群の静脈病変のグレードは同程度であった(p=0.7634)が、ヘパリンゲルに比べ、本発明のヘパリン製剤(実施例13)で治療した患者のうち、グレード2および3の患者の割合が著しく減少したことが報告された(p=0.0133)(図2(a)および図2(b)参照)。
3.完治した患者の割合:本発明ヘのパリン製剤(実施例13)の治療群では、90%の患者が、7日目には病変の完全な消散に至った。ヘパリンゲルで治療した患者の65.7%に比べ、これは著しく高かった(p<0.00001)(図3)。
【0092】
副次的有効性の評価項目:
1.ベースラインからの局所症状の変化:ベースラインにおいて、2つの治療群の局所症状は同程度であった。ヘパリンゲルに比べ、本発明のヘパリン製剤(実施例13)で治療した患者では、ベースラインと比べて、圧痛および局所発熱が著しく減少した(表5)。
【0093】
【表17】
【0094】
2.患者および医師の全体的評価:本発明のヘパリン製剤(実施例13)は、優良と評価された(大部分の症例で、患者(p<0.00001)および医師(p<00001)により良と評価された)(図4(a)および図4(b)参照)。
【0095】
安全性評価項目:試験の間、何らかの予想された、または予想外の局所および全身的な有害事象が報告/観察された症例はなかった。試験の間、バイタルデータおよび身体所見に何らかの異常のある症例は見られなかった。
【0096】
考察:本発明の製剤により静脈病変部の長さが著しく縮小したことから、前記製剤がヘパリンゲルよりも効力のあることが、本試験から明らかとなった。更に、病変および局所症状が完全に消散した患者が、ヘパリンゲルで治療した患者では65.7%であったのに比べ、本製剤では90%であったことから、治癒に関して優れた臨床反応を持つことが分かった。これらの好ましい結果は、本発明の製剤によって、ヘパリンの経皮透過性が高められたためと考えられる。更に、ヘパリンゲルと比較して、本発明の製剤で治療した患者では、静脈病変のグレードがベースラインの静脈炎から著しく改善した患者の数がより多かった。
【0097】
この試験では、有害事象が記録された症例は全くなかった。これは、本発明の素早く浸透する溶液によってヘパリンの効果が高まる一方、患者の安全性は損なわれなかったことを示唆している。
【0098】
両方の試験薬物の総合的な有効性および安全性に基づいた、患者および治験責任医師による全体的評価は、ヘパリンゲルよりも本発明のヘパリン製剤(実施例13)に対して好意的であった。更に、同様な安全性プロフィールでありながらもヘパリンの効果が大きく改善したことが、本発明のヘパリン製剤(実施例13)がより好まれる傾向に繋がったと考えられる。
【0099】
結論:本発明のヘパリン製剤(実施例13)は、市販のヘパリンゲルと同様の安全性プロフィールを持ちつつ、輸液後表在性血栓静脈炎の治療により効果があることが分かった。本発明のヘパリン製剤(実施例13)は手を使わずに使用できるため、患者だけでなく看護スタッフにとっても、塗布し易く、使用順守が向上すると考えられる。従って、本発明のヘパリン製剤(実施例13)は、輸液後表在性血栓静脈炎の治療において、より良く、より便利な選択肢となり得る。
【0100】
臨床試験の結果は、本発明の製剤が角質層を通って速く広範囲に浸透し、より多量のヘパリンナトリウムを下層組織に送達することを示している。これらの製剤は、最少の全身曝露で高い透過性が得られる。本発明の製剤は、輸液の関連する血栓静脈炎の治療において安全かつ効果的である。本発明の製剤は、患部の痛みを改善し、病変部を小さくし、グレードを下げる。更に、本製剤は、使い易い定量噴霧器に入れて供給できるため、患者の薬剤使用順守がより向上する。
【0101】
上記の開示内容において、“a”、“an”、“the”などの用語は、便宜上使用される単語であって、制限的な用語と解釈すべきではないことは当然である。本発明のある特定の望ましい実施形態を参照しながら本発明を十分詳しく述べてきたが、別の種類のものも可能である。更に、この例証は本発明の典型的な実施形態を記述することを目的としており、本発明の範囲を制限しないことは当然であろう。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4(a)】
図4(b)】