特許第6275881号(P6275881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6275881デュオカルマイシンのプロドラッグを製造するための改良された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275881
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】デュオカルマイシンのプロドラッグを製造するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/60 20060101AFI20180129BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20180129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20180129BHJP
   A61K 31/437 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
   C07D209/60
   C07D471/04 108E
   A61K47/68
   !A61P35/00
   !A61K31/437
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-570985(P2016-570985)
(86)(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公表番号】特表2017-516822(P2017-516822A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2014061701
(87)【国際公開番号】WO2015185142
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】516205959
【氏名又は名称】シントン・バイオファーマシューティカルズ・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SYNTHON BIOPHARMACEUTICALS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】フイーブレグッツ、ティール
(72)【発明者】
【氏名】エルゲルスマ、ロナルド・クリスチャーン
(72)【発明者】
【氏名】ベウスカー、パトリック・ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーステン、ヨハンネス・アルベルトゥス・フレデリクス
(72)【発明者】
【氏名】コーマンズ、ルディ・ゲラルドゥス・エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】スピーカー、ヘンリ・ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】メンゲ、ウィロ
(72)【発明者】
【氏名】デ・グルート、フランシスコ・マリヌス・ヘンドリクス
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−525347(JP,A)
【文献】 特表2012−513954(JP,A)
【文献】 LUTZ F TIETZE,SYNTHESIS OF FLUORESCENCE-LABELLED GLYCOSIDIC PRODRUGS BASED ON THE CYTOTOXIC ANTIBIOTIC DUOCARMYCIN,EUROPEAN JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,WILEY-VCH,2010年11月 2日,VOL:2010, NR:36,,PAGE(S):6909 - 6921,URL,http://dx.doi.org/10.1002/ejoc.201000966
【文献】 LUTZ F TIETZE,ENANTIO- AND DIASTEREOSELECTIVE SYNTHESIS OF DUOCARMYCINE-BASED PRODRUGS FOR A SELECTIVE TREATMENT OF CANCER BY EPOXIDE OPENING,CHEMISTRY - A EUROPEAN JOURNAL,ドイツ,WILEY-VCH VERLAG GMBH & CO. KGAA,2008年 1月18日,VOL:14, NR:3,,PAGE(S):895 - 901,URL,http://dx.doi.org/10.1002/chem.200700988
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
A61K 47/68
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物を、適切な溶媒中でのモノメタル有機リチウム試薬との反応によって、式(II)
【化2】
の化合物に変換することを含む方法であって、
式中、PおよびP’は、独立して、保護基であり、
1は、CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、CF3、OCF3、ClもしくはFであり、
2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、
1およびR2は、一緒になって、5または6員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成し、
Xは、ハロゲンである方法。
【請求項2】
1が、CH3、CH2CH3、OCH3もしくはOCH2CH3であり、R2、R3、R4が、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、R1およびR2が、一緒になって、5員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノメタル有機リチウム試薬が、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムおよびメチルリチウムからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲンが、臭素またはヨウ素である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
強塩基を添加する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の化合物を、塩素化試薬との一段階または二段階の反応のいずれかによって、式(III)
【化3】
の化合物に変換することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩素化試薬が、LiCl、KCl、NaCl、NH4Cl、HCl、濃塩酸中のAlCl3、PPh3/CCl4、PPh3/NCS、SOCl2およびPCl3/PCl5からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩素化試薬が、LiClまたはPPh3/CCl4である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
式(III)の化合物を、
a)保護基Pの除去、および
b)カップリング試薬の存在下での、式(V)
【化4】
の化合物との反応、続いて、
c)保護基P’の脱離
によって、式(IV)
【化5】
の化合物に変換することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法
[式中、R1、R2、R3、R4、PおよびP’は、請求項1に定義の意味を有し、
P”は、独立して、保護基であり、
1、X2、X3は、独立して、CまたはNである]。
【請求項10】
前記カップリング試薬が、BOP、DCC、DIC、EDC、HATU、TBTUおよびT3Pからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記カップリング試薬が、EDCである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(II)の前記化合物が、
【化6】
である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(IV)の前記化合物が、
【化7】
である、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対応する抗体薬物複合体の合成において式(IV)の化合物を使用することをさらに含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、抗腫瘍抗生物質のデュオカルマイシンのプロドラッグの製造方法における改良に関する。このようなプロドラッグは、抗体指向性酵素プロドラッグ治療(ADEPT)中癌の選択的な治療に使用することができる。化合物は、細胞傷害性の抗生物質である、(+)−CC−1065、(+)−デュオカルマイシンAおよび(+)−デュオカルマイシンSAに基づく。
【0002】
CC−1065およびデュオカルマイシン類縁体、これらは、典型的にはDNAアルキル化およびDNA結合部分からなり、それらの強力な抗腫瘍特性が公知であるが、それらの非常に高い毒性のために、それらだけでは通常使用されない。最近、それらは抗体薬物複合体(ADCs)における細胞傷害性の薬剤として研究されている。
【0003】
ADCsは、非常に強力な細胞傷害性の薬物を癌細胞に特異的に指し向けることによって、依然として主要な死因である癌の効果的な新たな治療の満たされていない大きな必要性に対処する可能性を有していると思われる。したがって、デュオカルマイシンのプロドラッグの工業的規模での合成は、デュオカルマイシン類縁体を含むADCsの将来的な商業的成功のための重要な側面の1つである。
【0004】
デュオカルマイシン類縁体およびそれらの中間体を製造するための、特に、このような類縁体のDNAアルキル化部分を製造するための、様々な方法が従来技術において公知である。
【0005】
Chem.Eur.J.2008,14,895−901においてL.F.Tietzeらは、エポキシドの開環によるデュオカルマイシン系プロドラッグのエナンチオおよびジアステレオ選択的な合成を記載している。化合物(1)の金属が媒介する環化によって化合物(2)を得るためには、妥当な結果を得る幾つかの異なる反応条件を検討しなければならなかった。
【0006】
【化1】
【0007】
立体選択的な反応を達成するために、著者らは、リチウムがエポキシドの酸素に配位して立体的に固定された遷移状態の形成を可能にする傾向があること(これは前記文献のスキーム5に示されている)が公知であるので、リチウム含有クプラートの使用に集中した。環化反応の最良の結果は、銅オルガニルLi2Cu(CN)Me2(収率78%)および亜鉛オルガニルLi2Zn(SCN)Me3(収率72%)を使用することによって達成されたが、一方で、n−BuLiを使用すると、脱ハロゲン化生成物だけがほとんど得られ(収率47%)、所望の5員環の生成物(2)はわずか7%であった。前記文献の表2を参照のこと。
【0008】
L.F.Tietzeらは、Eur.J.Org.Chem.2010,6909−6921のスキーム6および7に、n−ブチルリチウムを使用する、所望のエナンチオピュアな5員環の生成物への、エポキシドのtert−ブチル(8−シアノ−4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモナフタレン−2−イル)(オキシラン−2−イル)カルバメートの金属が誘導する閉環を記載しているが、収率はわずか12%である。ジンケートおよびクプラートを介した環化を引き起こすための他の全ての試みが失敗したことを、さらに言及している。
【0009】
したがって、デュオカルマイシン類縁体およびそれらの重要な中間体の製造方法は、従来技術において公知であるが、改良の必要性が依然として存在している。特に、デュオカルマイシン類縁体の中間体を、良好な純度、許容可能な収率、ならびに、DNAアルキル化部分およびDNA結合部分を有するデュオカルマイシン類縁体と、対応する抗体薬物複合体への次の変換工程に良く適した形態で与えるエナンチオ選択的な方法を有することが望ましく、この方法は、上述の、高価で、取り扱いが難しく、容易に入手できないリチウムクプラートおよびジンケートのような金属間試薬の使用を必要としない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、デュオカルマイシン類縁体の改良された製造方法に関し、これは、方法の条件に関して簡便で、所望の5員の閉環生成物を許容可能な収率で提供する。
【0011】
第1の側面において、本発明は、式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
の化合物を、有機リチウム試薬との反応によって、式(II)
【0014】
【化3】
【0015】
の化合物に変換することを含む方法
[式中、PおよびP’は、独立して、保護基であり、
1は、CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、CF3、OCF3、ClもしくはFであり、
2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、
1およびR2は、一緒になって、5または6員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成し、
Xは、ハロゲンである]を提供する。
【0016】
本発明の方法の好ましい態様において、有機リチウム試薬は、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムおよびメチルリチウムからなる群から選択される。
【0017】
本発明の態様において、R1は、CH3、CH2CH3、OCH3もしくはOCH2CH3であり、R2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、R1およびR2は、一緒になって、5員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成する。有利には、R2、R3、R4は、独立して、HまたはCH3である。
【0018】
Xは、有利には、臭素またはヨウ素である。
【0019】
第2の側面において、本発明は、式(II)の化合物を、塩素化試薬との一段階または二段階の反応のいずれかによって、式(III)
【0020】
【化4】
【0021】
の化合物に変換することをさらに含む方法
[式中、R1、R2、R3、R4、PおよびP’は、上記定義の意味を有する]
を提供する。
【0022】
本発明の方法の好ましい態様において、塩素化試薬は、LiClまたはPPh3/CCl4である。
【0023】
第3の側面において、本発明は、式(III)の化合物を、
a)保護基Pの除去、および
b)カップリング試薬の存在下での、式(V)
【0024】
【化5】
【0025】
の化合物との反応、続いて、
c)保護基P’の脱離
によって、式(IV)
【0026】
【化6】
【0027】
の化合物に変換することをさらに含む方法
[式中、R1、R2、R3、R4、PおよびP’は、上記定義の意味を有し、P”は、独立して、保護基であり、X1、X2、X3は、独立して、CまたはNである]
を提供する。
【0028】
本発明の方法の好ましい態様において、カップリング試薬は、BOP、EDC、HATUまたはTBTUである。
【0029】
本発明の態様において、X1はNであり、X2およびX3はCである。
【0030】
第4の側面において、本発明は、式(IV)の化合物から出発する、対応する抗体薬物複合体(ADCs)の調製法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0031】
デュオカルマイシンのプロドラッグにおける当業者によって、主題の発明がより完全に理解され得るように、以下の詳細な説明を提供する。
【0032】
定義
他に定義しない限り、ここで使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0033】
本明細書の全体にわたって使用される用語「有機リチウム試薬」は、炭素およびリチウムの間の結合を含有する任意の化学化合物である。この定義には、金属間試薬、たとえば、上記で引用した先行技術文献において使用される、リチウムクプラートおよびリチウムジンケートは包含しない。本発明によれば、有機リチウム試薬は、モノメタル有機リチウム試薬である。有利には、モノメタル有機リチウム試薬は、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムおよびメチルリチウムからなる群から選択される。n−ブチルリチウムは、特に好ましいモノメタル有機リチウム試薬である。
【0034】
本明細書の全体にわたって使用される用語「保護基」は、後に続く化学反応における化学選択性を得るために、官能基の化学修飾によって分子に導入される任意の基であるが、これらに限定されない。本発明によれば、アルコール保護基(すなわち、P’およびP”)およびアミン保護基(すなわち、P)が使用される。好ましいアルコール保護基は、ベンジル基およびメトキシメチルエーテル基である。好ましいアミン保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル基である。しかしながら、多くの他の適切なアルコールおよびアミン保護基が、Peter G.M.WutsおよびTheodora W.GreeneのGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis、第4版、2006(ISBN:978−0−471−69754−1)によって例示されるように、当業者には公知であり、これらの多くは本発明による方法において使用することができる。当業者は、前記文献から、本発明の方法に従って使用される適切な保護基を選択することが可能であろう。
【0035】
本明細書の全体にわたって使用される用語「5または6員の(ヘテロ)シクロアルキル基」は、R1およびR2から形成されるシクロペンタンまたはシクロヘキサン環であり、これらの置換基が結合する炭素原子であって、任意の1個以上の炭素原子は、ヘテロ原子、好ましくはOである。
【0036】
本明細書の全体にわたって使用される用語「塩素化試薬」は、一段階または二段階のいずれかでヒドロキシ基を塩素原子に置換することができる任意の試薬であるが、これらに限定されない。適切な塩素化試薬の例は、Comprehensive Organic Transformations,A Guide to Functional Group Preparations、第2版、1999、690−693頁(ISBN 0−471−19031−4)、Richard C.Larock著に見出すことができる。有利には、置換が、ヒドロキシ基の脱離基Lへの変換後に行われる場合(下記のスキーム1、ルートA参照)、前記塩素化試薬は、LiCl、KCl、NaCl、NH4Cl、HCl、および濃HCl中のAlCl3からなる群から選択される。好ましい塩素化試薬はLiClである。あるいは、置換が、ヒドロキシ基に対して直接行われる場合(下記のスキーム1、ルートB参照)、前記塩素化試薬は、PPh3/CCl4、PPh3/NCS、SOCl2、およびPCl3/PCl5からなる群から有利には選択される。好ましい塩素化試薬はPPh3/CCl4である。
【0037】
本明細書の全体にわたって使用される用語「カップリング試薬」は、当業者に公知の任意のペプチドカップリング試薬であるが、これらに限定されない。適切な例は、Ayman El−FahamおよびFernando AlbericioによってPeptide Coupling Reagents, more than a Letter Soup(Chem.Rev.2011,111,6557−6602)に記載されている。有利には、前記カップリング試薬は、BOP、DCC、DIC、EDC、HATU、TBTUおよびT3Pからなる群から選択される。本発明の方法の好ましい態様において、カップリング試薬は、BOP、EDC、HATUまたはTBTUである。より好ましいペプチドカップリング試薬はEDCである。
【0038】
以下の略号がここで使用され、示された定義を有する:Bn:ベンジル;DCM:ジクロロメタン;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMA:N,N−ジメチルアセトアミド;DMF:N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;NMP:1−メチル−2−ピロリジノン;HMPA:ヘキサメチルホスホルアミド;NCS:N−クロロスクシンイミド;BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;DIC:N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;DCC:N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド;EDC:1−[(3−ジメチルアミノプロピル)]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;EtOAc:酢酸エチル;HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;TBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート;T3P:1−プロパンホスホン酸無水物溶液、2,4,6−トリプロピル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリホスホリナン−2,4,6−トリオキシド溶液;Ms:メタンスルホニル;RT:室温;TFA:トリフルオロ酢酸;THF:テトラヒドロフラン;p−TsOH:p−トルエンスルホン酸;NH4HCO2:ギ酸アンモニウム。
【0039】
本発明によれば、従来技術における教示にもかかわらず、式(II)の化合物を、適切な溶媒中での有機リチウム試薬との反応によって、式(I)の化合物から、許容可能な収率で、有利に調製し得ることが、驚くべきことに見出された。本発明の好ましい態様において、ナトリウムメトキシドまたは水素化ホウ素ナトリウムのような強塩基が適切な溶媒に添加される。
【0040】
式(II)の化合物への式(I)の化合物のエナンチオ選択的な閉環のための適切な溶媒は、有機溶媒、好ましくは非プロトン性溶媒であるが、これに限定されない。好ましい溶媒は、エーテル溶媒であり、特に好ましい溶媒はTHFである。
【0041】
本発明の各種の側面による方法を下のスキーム1に示す[式中、PおよびP’は、独立して、保護基であり、R1は、CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、CF3、OCF3、ClもしくはFであり、R2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、R1およびR2は、一緒になって、5または6員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成し、Xは、ハロゲンである]。
【0042】
本発明の好ましい態様において、R1は、CH3、CH2CH3、OCH3もしくはOCH2CH3であり、R2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、R1およびR2は、一緒になって、5員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成する。Xは、有利には、臭素またはヨウ素である。
【0043】
【化7】
【0044】
本発明の出発物質、すなわち、式(I)の化合物は、従来技術において公知の任意の適切な方法、たとえば、L.F.TietzeらによってEur.J.Org.Chem.2010,6909−6921のスキーム3〜6に記載された方法によって、またはその類似の方法によって製造してもよい。
【0045】
好ましい出発物質の式(I)の化合物は以下の化合物:
【0046】
【化8】
【0047】
[式中、Pは、tert−ブチルオキシカルボニルであり、P’は、ベンジルであり、Xは、臭素またはヨウ素である]である。
【0048】
上に示した式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物は単一のエナンチオマー(すなわち、100%の光学純度を有する)に相当するが、本発明は、関連する場合はいつでも、100%未満の光学純度を有する化合物も包含することが理解されるべきである。しかしながら、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物は、少なくとも95%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の光学純度であることが好ましい。
【0049】
所望のまたは有利な場合、式(II)の化合物は、反応混合物から、たとえば、単一のエナンチオマーとして単離されてもよく、任意に精製されてもよい。
【0050】
本発明の具体的な態様において、有機リチウム試薬との式(I)の化合物の反応後、式(II)の化合物は精製されず、OH基を有利には脱離基Lに変換した、式(VI)の化合物に、直接、さらに変換する(スキーム1参照)。Lは、当業者に公知の任意の適切な脱離基である。有利には、Lは、スルホネート基、たとえばメシレート、トシレート、またはベシレートである。好ましくは、Lはメシレートである。
【0051】
その後、式(VI)の化合物を、適切な溶媒中での塩素化試薬との反応によって、式(III)の化合物に変換する。
【0052】
有利には、前記塩素化試薬は、LiCl、KCl、NaCl、NH4Cl、HCl、および濃HCl中のAlCl3からなる群から選択される。式(III)の化合物への式(II)の化合物の好ましい二段階での変換のための好ましい塩素化試薬は、LiClである。
【0053】
塩素化反応のための適切な溶媒は、有機溶媒であり、好ましくは極性の非プロトン性溶媒である。好ましい溶媒はDMFである。
【0054】
好ましい式(III)の化合物は、以下の化合物:
【0055】
【化9】
【0056】
である。
【0057】
あるいは、式(II)の化合物は、PPh3/CCl4、PPh3/NCS、SOCl2、およびPCl3/PCl5からなる群から選択される塩素化試薬との反応によって、式(III)の化合物に直接変換してもよい。式(III)の化合物への式(II)の化合物の一段階での変換のための好ましい塩素化試薬は、PPh3/CCl4である。
【0058】
本発明のさらに具体的な態様において、本発明による式(VII)の化合物を製造する有利な方式において、スキーム1に示すように、式(III)の化合物をまず酸で処理して保護基Pを除去し、次いで、生成物を、カップリング試薬の存在下、適切な溶媒中で式(V)の化合物と反応させて、式(VII)の化合物を得る。1つの態様において、塩基を適切な溶媒に添加する。適切な塩基は、3級アミンである。特に適切な塩基はDIPEAである。
【0059】
有利には、酸は、無機鉱酸、たとえばHClである。
【0060】
ペプチドカップリング反応での使用のための適切な溶媒は、有機溶媒であり、好ましくは極性の非プロトン性溶媒である。有利には、前記適切な溶媒は、DMA、DMF、DMSO、NMP、HMPA、メチルエチルケトン、アセトニトリル、THF、DCM、アセトン、EtOAc、および2−ブタノンからなる群から選択される。好ましい溶媒はDMAである。
【0061】
有利には、カップリング試薬は、ペプチドカップリングにおいて慣用されているカップリング試薬である。好ましくは、前記カップリング試薬は、BOP、DCC、DIC、EDC、HATU、TBTUおよびT3Pからなる群から選択され、より好ましくは、BOP、EDC、HATUまたはTBTUである。特に好ましいカップリング試薬はEDCである。
【0062】
その後、式(VII)の化合物を、適切な溶媒中での保護基P’の脱離によって、P’がベンジル基である場合は好ましくは水素化分解によって、式(IV)の化合物に変換する。
【0063】
有利には、水素化分解は、水素化金属触媒、好ましくは炭素担持パラジウム、および水素源の存在下で、触媒的に行われる。有利には、水素源は、水素またはギ酸アンモニウムである。水素化分解のための好ましい水素源は、ギ酸アンモニウムである。
【0064】
式(IV)の化合物は、典型的には固体の生成物であり、単離された生成物は安定な物質で、これは通常の保管条件で保管してもよく、有利には、当業者に周知の手順および装置を使用して、たとえばWO2010/062171AおよびWO2011/133039Aに記載されているように、対応する抗体薬物複合体(ADCs)の合成に使用される。
【0065】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図しており、本発明の範囲をそれらに限定する意図はない。
【0066】
[実施例]
例1
式(II)の化合物の調製のための一般的手順
【0067】
【化10】
【0068】
式(I)の化合物を乾燥THFに溶解し、アルゴン雰囲気下、−20℃に冷却する。次に、n−ブチルリチウム(1.1当量)を−20℃で滴加し、終了するまで撹拌する。次いで、反応を塩化アンモニウムの飽和水溶液を使用してクエンチする。得られた反応混合物をEtOAcで2回抽出し、有機層を合わせる。次いで、選択肢1として、乾燥剤を使用して有機層を乾燥し、濃縮し、任意に続いて、たとえばシリカゲルクロマトグラフィーを使用して、精製して、生成物の式(II)の化合物を得る。または、選択肢2として、有機層に、ある量(たとえば0.15当量)のp−TsOHおよび水を添加し、混合物を60分間撹拌する。副生成物は、分解して、所望の式(II)の化合物からより容易に分離する。これに続いて、1MのNa2CO3水溶液、飽和NaCl溶液で抽出し、有機層を乾燥し、続いて濃縮して、式(II)の粗生成物を得る。粗生成物は、たとえばシリカゲルクロマトグラフィーによって、任意に精製することができる。
【0069】
例2a
以下の反応スキームによる、化合物(3)および(4)からの、式(II)の化合物である化合物(12)の調製:
【0070】
【化11】
【0071】
2−メチルベンズアルデヒド(3)(1.5kg)およびジメチルスクシネート(4、1.75当量)を、メタノール(約4l)中のメタノール性ナトリウムメトキシド(1.3当量)の存在下、65〜80℃で1時間、反応させた。次いで、混合物を20℃に冷却し、過剰の塩基をHClで中和し、水で希釈し、DCMで抽出することによって、未反応のジメチルスクシネートを除去した。混合物を過剰のHClで酸性化し、生成物をDCMに抽出した。この抽出物をMgSO4で脱水した。真空下、ロータリーエバポレーターで(80mbar、40〜60℃浴)、溶媒をDCMからTHFに交換して、粗(E)−3−(メトキシカルボニル)−4−(o−トリル)ブタ−3−エン酸(5)のTHF(10l)溶液を得た。
【0072】
次いで、この化合物(5)の溶液を、還流温度で、トリフルオロ酢酸無水物(2.49kg)と反応させて、メチル4−ヒドロキシ−8−メチル−2−ナフトエート(6)への変換を終了した。反応混合物をK2CO3水溶液で中和した。生成物をEtOAcで抽出し、MgSO4で乾燥し、濃縮し、−5℃に冷却することによって結晶化させた。結晶(白色/黄色)をろ過し、アセトニトリルで洗浄し、48〜53℃で16時間乾燥して、化合物(6)を1119gの量で得た(収率41.4%、純度99.8%)。
【0073】
メチル4−ヒドロキシ−8−メチル−2−ナフトエート(6)(0.83kg)を、K2CO3(1.4当量)の存在下、50〜80℃で、DMF(3.3l)中の塩化ベンジル(1.05当量)で処理した。
【0074】
反応が終了したら、混合物を50℃に冷却し、DCMで希釈し、20℃に冷却し、水を添加した。有機層を分離し、液状抽出物を、大気圧下、次いで真空下、蒸留によって濃縮して、DMFを除去した。中間体のメチル4−(ベンジルオキシ)−8−メチル−2−ナフトエート(7)を含む残渣をトルエン(5l)およびMeOH(6.6l)で希釈し、還流下で2時間、NaOH(水7.6l中に1.24kg(約8当量))水溶液で処理した。水(29l)を数回に分けて徐々に添加し、メタノールおよびトルエンを蒸留によって除去した。溶媒を水に変換後、溶液の容積は約32〜33lであった。粗4−(ベンジルオキシ)−8−メチル−2−ナフトエ酸(8)を過剰の4MのHCl(3.32l)の添加によって沈殿させ、懸濁液を10℃に冷却し、沈殿物をろ別し、水(30l、10℃)で洗浄し、70℃で16時間乾燥した。純4−(ベンジルオキシ)−8−メチル−2−ナフトエ酸(8)を、トルエン(29.4l)からの結晶化によって、オフホワイト結晶として得た。沈殿した結晶をろ過し、トルエンで洗浄し、103〜108℃で16時間乾燥した(956g、収率92.5%、純度99.9%)。
【0075】
4−(ベンジルオキシ)−8−メチル−2−ナフトエ酸(8)(1kg)を、Et3N(1.1当量)の存在下、82〜88℃で約3時間、過剰のtert−ブタノール(2.6当量)を含有するトルエン(5l)中、ジフェニルホスホリルアジド(1.16当量)と反応させた。30℃に冷却後、反応混合物をEtOAcおよび水の間で分配した。有機層を分離し、Na2CO3水溶液、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。EtOAcを留去し、イソプロパノールを用いて粗生成物を粉砕した。粉砕した結晶をろ過し、イソプロパノールで洗浄し、62〜68℃で16時間乾燥して、純tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−8−メチルナフタレン−2−イル)カルバメート(9)を1096gの量で得た(収率92.8%、純度99.6%)。
【0076】
tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−8−メチルナフタレン−2−イル)カルバメート(9)(1.05kg)を、−10℃で、THF(17.6l)中、1.05当量のN−ブロモスクシンイミドで処理した。反応を、Na2SO3水溶液、続いて1Mの水酸化ナトリウム溶液の添加によってクエンチした。酢酸エチルを添加し、生成物(10)を有機層に抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、真空下、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固させた。粗中間体のtert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモ−8−メチルナフタレン−2−イル)カルバメート(10)をTHF(3.3l)に溶解し、約10℃で、カリウムtert−ブトキシド(1.3当量)で脱プロトン化し、約25℃で3時間、(S)−グリシジルノシレート(1.2当量)でアルキル化した。反応をNH4Cl水溶液の添加によってクエンチし、反応混合物をEtOAcで抽出した。EtOAc層を水およびブラインで洗浄した。溶媒の蒸発後、粗(S)−tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモ−8−メチルナフタレン−2−イル)(オキシラン−2−イルメチル)カルバメート(11)を得た。ヘプタンから結晶化して1185gの純(S)−tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモ−8−メチルナフタレン−2−イル)(オキシラン−2−イルメチル)カルバメート(11)を、収率82.3%(純度96.09%)でベージュ結晶として得た。
【0077】
(S)−tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモ−8−メチルナフタレン−2−イル)(オキシラン−2−イルメチル)カルバメート(11)(1034g)をTHF(10.4l)に溶解した。乾燥窒素雰囲気下、溶液を−25℃に冷却した。次いで、n−ブチルリチウム(1l、ヘキサン中2.5M)を、温度を−25〜−20℃に維持しながら、徐々に添加し、さらに10分間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水(1.1l中366g)でクエンチし、水層を酢酸エチル(2×4.8l)で抽出した。合わせた有機層を、真空下、20分間撹拌した。その後、p−TsOHの水溶液(520mlの水中に、121gのPTSA一水和物)を添加し、反応混合物を1時間撹拌した。反応を1Mの炭酸ナトリウム溶液の添加によってクエンチした。水層を排出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発乾固させた。
【0078】
粗(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(ヒドロキシメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(12)の半分を、2.13lのDCMに溶解し、2.4kgのシリカゲル60Å、粒子径0.063〜0.1mmでろ過した。(副)生成物をDCM(11l)、続いてDCM/酢酸エチル(9:1;13.4l)およびDCM/酢酸エチル(8:2;12l)で溶出した。この手順を残りの半分の粗化合物に対して繰り返し、化合物(12)を含有する画分を合わせ、濃縮し、真空中で乾燥し、DCM/ペンタン(残渣1gあたり4ml/60ml)中で結晶化させ、真空下、35〜40℃で12〜16時間乾燥して、(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(ヒドロキシメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(12)をベージュから白色の固体として得た(347g、収率39.9%、純度96.3%、(R)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(ヒドロキシメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート収率5.14%)。
【0079】
例2b
例2aのスキームによる化合物(9)からの、式(II)の化合物である化合物(12)の調製:
tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−8−メチルナフタレン−2−イル)カルバメート(9)(10.5g)を、−10℃で、THF(31.5g)中、1.01当量のN−ブロモスクシンイミド(5.20g)で処理した。反応を水酸化ナトリウム水溶液(0.75gのNaOHおよび7.5gの水)の添加によってクエンチした。抽出物を飽和NaCl水溶液(15g)で洗浄し、水層を酢酸エチル(11.25g)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaCl水溶液(15g)で洗浄し、真空下で濃縮して、tert−ブチル(4−(ベンジルオキシ)−1−ブロモ−8−メチルナフタレン−2−イル)カルバメート(10)を得た(14.36g、収率112.36%)。
【0080】
粗中間体(10)(14.36g)をTHF(15g)およびトルエン(10g)に溶解し、約10℃で、2分割して添加した(1×4.30および1×0.20g、全部で1.39当量)カリウムtert−ブトキシドで脱プロトン化し、約25℃で2時間、(S)−グリシジルノシレート(8.80g、1.19当量)でアルキル化した。反応物をトルエン(37.5g)で希釈し、Kieselguhr(商標)の活性炭(0.75g)でろ過した。固体残渣をトルエン(30g)で洗浄し、ろ液を飽和NaCl水溶液(2×15g)で洗浄し、真空下で濃縮して、(11)を油状物として得た(13.75g、収率95.49%)。
【0081】
油状物(11)(13.75g)をTHF(135g)に溶解した。乾燥窒素雰囲気下、溶液を−10℃に冷却した。次いで、ナトリウムメトキシド(1.50g、1.06M)およびn−ブチルリチウム(8.40g、1.16M、ヘキサン中2.5M)を、撹拌しながら、−10℃で徐々に添加した。さらに80分撹拌後、反応混合物を飽和NaCl水溶液(15g)および水(9.75)でクエンチした。有機層を、まず、酢酸水(0.30gの酢酸および2.70gの水)および飽和NaCl溶液(15gの溶液)の混合物を使用して行う酸洗浄に付した。これに続いて、飽和NaHCO3水溶液(11.25gの溶液)および飽和NaCl水溶液(11.25gの溶液)の混合物でアルカリ洗浄した。
【0082】
炭素ろ過後、フィルター上の活性炭(1.12g)をEtAc(15g)で洗浄した。ろ液を蒸発乾固させ(11.20g)、温めた(55℃)メチルtert−ブチルエーテル(33.75g)に溶解した。溶液を約45℃に冷却した。懸濁液をメチルtert−ブチルエーテル(22.5g)で希釈し、徐々に−15℃まで冷却し、ろ過し、メチルtert−ブチルエーテル(2×5g)で洗浄し、真空下で乾燥して、(12)を得た(5.40g、化合物(11)からの収率49.35%、純度99.56%)。
【0083】
例3a
以下のスキームによる化合物(12)からの化合物(14)の調製
【0084】
【化12】
【0085】
(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(ヒドロキシメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(12)(170g、405mmol)を、0〜5℃で90分間、Et3N(2.6当量)の存在下、DCM(1.4l)中、塩化メタンスルホニル(1.3当量)で処理した。反応混合物を塩酸、水およびブラインで洗浄した。抽出物を硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発乾固させた。溶媒の蒸発後、中間体の(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−9−メチル−1−(((メチルスルホニル)オキシ)メチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(13)を含む残渣をDMF(1.2l)に溶解し、約80℃で90分間、塩化リチウム(5当量)で処理した。DMFの蒸発(8〜4mbar)後、残渣をDCMおよび水の間で分配した。下層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した。次いで、DCMを蒸発させ、残渣を温ヘプタン(3.5l)に溶解し、活性炭で処理し、4lのジャケット付反応器内にろ過した。フィルター上の活性炭を別量のヘプタンで洗浄した。粗生成物の溶液を約50℃に冷却し、種晶を加え、この温度で1時間維持した。懸濁液を2時間で7℃まで冷却し、この温度でさらに1時間撹拌し、ろ過し、ヘプタンで洗浄し、真空下で乾燥した。乾燥結晶(135g、76%)を、上述の手順を使用してヘプタンから再結晶して、(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(クロロメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(14)を得た(111g、82%、光学純度99.99%(合計収率63.0%))。
【0086】
例3b
例3aのスキームによる化合物(12)からの化合物(14)の調製:
化合物(12)(10g)を、Et3N(3.3g、1.37当量)の存在下、0〜5℃で90分間、THF(50g)中、塩化メタンスルホニル(3.0g、1.1当量)で処理した。反応混合物を塩酸水(1.70gの36%HClおよび10gの水)の添加によってクエンチした。有機層を、飽和NaHCO3水溶液(5g)、および飽和NaCl水溶液(5g)で洗浄した。水層を酢酸エチル(13.3g)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaCl水溶液(10g)で洗浄し、次いで真空下で濃縮して、(13)(13.10g)を得た。
【0087】
中間体(13)を含む残渣をDMF(20g)に溶解し、約80℃で180分間、塩化リチウム(2.40g、2.38当量)で処理した。40℃に冷却後、反応混合物をトルエン(30g)および水(50g)で希釈した。有機層を分離し、水(50g)を有機層に添加し、この混合物をトルエン(2×15g)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液(25g)、次いで水(25g)で洗浄した。
【0088】
炭素ろ過後、フィルター上の活性炭(0.83g)をトルエン(11.7g)で洗浄した。ろ液を蒸発乾固させ(8.3g)、ヘプタン(33.3g)およびエタノール(33.3g)の温めた(60℃)混合物に溶解した。溶液を徐々に−15℃に冷却し、ろ過し、ヘプタン(2×8g)で洗浄し、真空下60℃(1時間)で乾燥して、(14)を得た(7.60g、化合物(12)に対して72.80%、純度99.36%、光学純度99.99%)。
【0089】
例4
例5に使用するための4−(メトキシメトキシ)安息香酸の調製
1g(6.6mmol)の4−ヒドロキシ安息香酸メチルを、窒素雰囲気下、25mlのDCMに溶解した。次に、溶液を0℃に冷却し、続いて、600μl(7.9mmol)のクロロメチルメチルエーテルおよび3.25ml(19.7mmol)のDIPEAを添加した。混合物を撹拌して、一晩室温まで昇温させた。翌日、水(100ml)を添加し、混合物をDCM(100ml)で2回抽出した。合わせたDCM層をブライン(100ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空中で濃縮して、4−(メトキシメトキシ)安息香酸メチルエステルを得た。
【0090】
粗4−(メトキシメトキシ)安息香酸メチルエステルを10mlのMeOHに溶解し、続いて、4mlの4M NaOH溶液を添加した。混合物を70℃で4時間加熱した。TLCが変換の終了を示した。混合物を0℃に冷却し、100mlの0.5M KHSO4溶液を添加し(pH=3)、EtOAc(2×75ml)で抽出した。合わせたEtOAc層をNa2SO4で乾燥し、真空中で濃縮して、1g(84%)の4−(メトキシメトキシ)安息香酸を白色固体として得た。
【0091】
例5
以下の反応スキームによる化合物(18)および(19)からの化合物(15)の調製:
【0092】
【化13】
【0093】
5−ニトロピリジン−2−アミン(19、50g、359mmol)をエタノール(700ml、99+%)に懸濁させ、アルゴンを吹き込んだ。次に、1.1当量のブロモピルビン酸エチル(18、79ml、503mmol)を添加し、45分間撹拌した。次いで、反応混合物を85℃で6時間温め、別の0.3当量のブロモピルビン酸エチル(79ml、503mmol)を添加し、85℃に16時間温めた。
【0094】
その後、反応混合物を濃縮し、水(300ml)を添加し、得られた懸濁液をろ過した。固体残渣をEt2O(600ml)で洗浄し、乾燥して、エチル6−ニトロイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボキシレート(20)(75g、319mmol、収率89%)を、砂色の固体として得た。UPLC−MSで、所望の生成物が得られたことを確認した。
【0095】
MeOH(200ml)中のエチル6−ニトロイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボキシレート(20)(20g、85mmol)の懸濁液を0℃に冷却し、12M塩酸(70ml、850mmol)を滴加し、続いて亜鉛(22.3g、340mmol)を分割して添加した。反応混合物を30分間撹拌した。
【0096】
次に、MeOH(140ml)を添加し、反応を濃NH3(15当量)でクエンチし、ろ過した。固体残渣をMeOH(2×25ml)で洗浄した。ろ液を濃縮し、CHCl3(700ml)、H2O(300ml)および濃NH3(300ml、35%溶液)に再懸濁させた。この混合物を全てが溶解するまで撹拌した。層を分離し、水層をCHCl3で1回抽出した。有機層を合わせ、飽和NaCl水溶液(50ml)で洗浄し、MgSO4で脱水し、ろ過し、真空中で濃縮して、エチル6−アミノイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボキシレート(21)(11.8g、68%)を、灰色/緑色の固体として得た。UPLC−MSで、所望の生成物が得られたことを確認した。
【0097】
エチル6−アミノイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボキシレート(21)(13.29g、64.8mmol)のDMA(200ml)溶液に、4−(メトキシメトキシ)安息香酸(11.8g、64.8mmol)およびEDC(14.90g、78mmol)を添加した。得られた混合物を室温で18時間撹拌した。その後、反応混合物を濃縮し、続いて水(250ml)およびDCM(250ml)を添加した。層を分離し、有機層を水(100ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、真空中で濃縮した。得られた固体物質をフィルターに移し、EtOAc(200ml)でリンスした。生成物のエチル6−(4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボキシレート(22)を真空中で乾燥した。化合物(22)(22.16g、60mmol)を1,4−ジオキサン(50ml)および水(50ml)に溶解し、続いて2M NaOH水溶液(100ml、200mmol)を添加した。混合物を70℃で30分間撹拌した。
【0098】
次に、混合物を室温に冷却し、水(50ml)の添加後、(4M HCl溶液を使用して)酸性化した。得られた懸濁液をろ過し、固体物質を乾燥して、6−(4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボン酸(15)(12.1g、35.5mmol、収率59.1%)を、黄褐色固体として得た。UPLC−MSで、正しい生成物が生成したことを確認した。
【0099】
例6a
以下のスキームによる(14)および(15)からの化合物(17)の調製:
【0100】
【化14】
【0101】
(S)−tert−ブチル5−(ベンジルオキシ)−1−(クロロメチル)−9−メチル−1H−ベンゾ[e]インドール−3(2H)−カルボキシレート(14)(4.5g、10.27mmol)をHCl/ジオキサン(4M、30ml)に溶解し、20℃で4時間撹拌した。得られた懸濁液を濃縮し、真空中で乾燥して、白色/灰色固体を得た。
【0102】
次いで、得られたHCl塩をDMA(80ml)に溶解し、0℃に冷却し、6−(4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−カルボン酸(15)(3.86g、11.30mmol)およびEDC(5.91g、30.8mmol)を添加し、18時間撹拌して、混合物を20℃まで昇温させた。
【0103】
次いで、反応混合物を真空中で濃縮し、粗生成物をDCM/水(1200ml、1:1(v/v))に溶解し、層を分離した。有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜2.5%のMeOH勾配のDCM溶離液)によって精製した。生成物を有する画分を合わせ、濃縮して、(S)−N−(2−(5−(ベンジルオキシ)−1−(クロロメチル)−9−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]インドール−3−カルボニル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イル)−4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド(16)、(6.3g、9.53mmol、収率93%)を、白色/灰色固体として得た。UPLC−MSは、所望の生成物が得られたことを示した。
【0104】
MeOH(20ml)中のPd/C(0.507g、0.476mmol)と、10当量のギ酸アンモニウムの懸濁液を、95℃に5分間加熱した。次いで、混合物をRT(20℃)まで放冷した。次に、10当量のギ酸アンモニウム、続いてTHF(100ml)中の(S)−N−(2−(5−(ベンジルオキシ)−1−(クロロメチル)−9−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]インドール−3−カルボニル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イル)−4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド(16)(6.3g、9.53mmol)の懸濁液を添加した。得られた混合物を20℃で3時間撹拌した。100分後、追加の200mgのPd/Cを添加した。
【0105】
反応が終了したら、ハイフロフィルターで補助してろ過し、THF(50ml)でリンスし、続いて濃縮した。粗生成物を、MeOH勾配(2.5〜10%)のDCMで溶出する、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(あらかじめシリカが充填)によって精製した。合わせた生成物の画分を濃縮し、真空中で乾燥して、(S)−N−(2−(1−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−9−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]インドール−3−カルボニル)イミダゾ[1,2−a]ピリジン−6−イル)−4−(メトキシメトキシ)ベンズアミド(17)(4.9g、8.58mmol、収率90%)を、暗黄色固体として得た。UPLC−MSは、所望の生成物が得られたことを示した。
【0106】
例6b
例6aのスキームによる(14)および(15)からの化合物(17)の調製:
ジャケット付反応器中、化合物(14)(183g、0.418mol)をHCl/ジオキサン(4M、2.08L)溶液に懸濁させ、28〜32℃で3時間撹拌した。生成した懸濁液を18〜22℃に冷却し、次いで、懸濁液にメチル−t−ブチルエーテル(0.76L)を添加した。生成した固体をろ別し、メチル−t−ブチルエーテル(0.64L)で洗浄し、ロータリーエバポレーター中40℃で乾燥して、HCl塩[(S)−5−(ベンジルオキシ)−1−(クロロメチル)−9−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]インドール塩酸塩]を152.3g(収率97.4%)(HPLC純度98.08%)を得た。
【0107】
得られたHCl塩(76.1g、0.203mol)を、ジャケット付反応器中、DMA(1.25L)に懸濁させ、化合物(15)(74.3g、0.218mol)を添加した。反応混合物の温度を18〜22℃に調整し、EDC(58.5g、0.305mol)、続いてDMA(0.2L)を添加した。反応混合物を18〜22℃で1時間撹拌した。ジャケット内の温度を10℃に変更し、水酸化アンモニウム(6.8ml)を反応混合物に添加した。水(200mL)を反応混合物に徐々に添加し、生成物の結晶化を開始した。固体生成物をろ過し、メタノール(2×0.6L)で洗浄した。生成物をメタノール(1.2L)中で再度スラリー化し、懸濁液を2時間撹拌した。生成物をろ過し、メタノール(0.2L)で洗浄し、それを45〜50℃で乾燥して、化合物(16)を得た(122g、収率89%)。
【0108】
水素化反応器中で化合物16(240g、0.363mol)をTHF(3.9L)に懸濁させた。一方、5%Pd/C(86.5g、湿ペースト状、約50%)触媒をメタノールおよびギ酸アンモニウム(257.5g)中に懸濁させることによって、Pd/C触媒を活性化した。混合物を35℃に加熱し、この温度で15分間撹拌した。混合物を20℃に冷却した。触媒懸濁液を水素化反応器に添加した。反応器に窒素を流し、撹拌のスイッチを入れた。反応混合物を20℃で2.5時間撹拌した。窒素下で触媒をろ別し、THF(2×1L)で洗浄した。ろ液を、ロータリーエバポレーター上減圧で蒸発させ、固体残渣を得た。ジクロロメタン(1.15L)を固体残渣に添加し、混合物を撹拌して、結晶懸濁液を生成した。生成物をろ過し、ジクロロメタン(0.5L)およびメタノール(0.2L)で洗浄した。生成物をメタノール(1L)中で再度スラリー化し、DMA(50mL)を添加し、懸濁液を20℃で2時間撹拌した。生成物をろ過し、メタノール(250mL)で洗浄し、乾燥した。化合物(17)、167g(収率80.6%)を得た。
以下に出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1]
式(I)
【化15】
の化合物を、有機リチウム試薬との反応によって、式(II)
【化16】
の化合物に変換することを含む方法であって、
式中、PおよびP’は、独立して、保護基であり、
1は、CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、CF3、OCF3、ClもしくはFであり、
2、R3、R4は、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、
1およびR2は、一緒になって、5または6員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成し、
Xは、ハロゲンである方法。
[2]
1が、CH3、CH2CH3、OCH3もしくはOCH2CH3であり、R2、R3、R4が、独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、または、R1およびR2が、一緒になって、5員の(ヘテロ)シクロアルキル基を形成する、[1]に記載の方法。
[3]
前記有機リチウム試薬が、モノメタル有機リチウム試薬である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記モノメタル有機リチウム試薬が、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムおよびメチルリチウムからなる群から選択される、[3]に記載の方法。
[5]
前記ハロゲンが、臭素またはヨウ素である、[1]から[5]のいずれか一に記載の方法。
[6]
強塩基を添加する、[1]から[5]のいずれか一に記載の方法。
[7]
式(II)の化合物を、塩素化試薬との一段階または二段階の反応のいずれかによって、式(III)
【化17】
[式中、R1、R2、R3、R4、PおよびP’は、[1]に定義の意味を有する]
の化合物に変換することをさらに含む、[1]から[6]のいずれか一に記載の方法。
[8]
前記塩素化試薬が、LiCl、KCl、NaCl、NH4Cl、HCl、濃塩酸中のAlCl3、PPh3/CCl4、PPh3/NCS、SOCl2およびPCl3/PCl5からなる群から選択される、[7]に記載の方法。
[9]
前記塩素化試薬が、LiClまたはPPh3/CCl4である、[8]に記載の方法。
[10]
式(III)の化合物を、
a)保護基Pの除去、および
b)カップリング試薬の存在下での、式(V)
【化18】
の化合物との反応、続いて、
c)保護基P’の脱離
によって、式(IV)
【化19】
の化合物に変換することをさらに含む、[1]から[9]のいずれか一に記載の方法
[式中、R1、R2、R3、R4、PおよびP’は、[1]に定義の意味を有し、
P”は、独立して、保護基であり、
1、X2、X3は、独立して、CまたはNである]。
[11]
前記カップリング試薬が、BOP、DCC、DIC、EDC、HATU、TBTUおよびT3Pからなる群から選択される、[10]に記載の方法。
[12]
前記カップリング試薬が、EDCである、[11]に記載の方法。
[13]
式(II)の前記化合物が、
【化20】
である、[1]から[12]のいずれか一に記載の方法。
[14]
式(IV)の前記化合物が、
【化21】
である、[1]から[13]のいずれか一に記載の方法。
[15]
対応する抗体薬物複合体の調製のための、式(IV)
【化22】
の化合物の使用。