特許第6275894号(P6275894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275894
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽容器
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20180129BHJP
   B65D 85/68 20060101ALI20180129BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H05K9/00 G
   B65D85/68 W
   B29C45/14
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-22511(P2017-22511)
(22)【出願日】2017年2月9日
(62)【分割の表示】特願2013-109294(P2013-109294)の分割
【原出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-103482(P2017-103482A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎田 智志
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−177699(JP,A)
【文献】 実開昭60−000996(JP,U)
【文献】 特開平07−299842(JP,A)
【文献】 特開2011−148290(JP,A)
【文献】 特開昭59−207699(JP,A)
【文献】 特開2008−306048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B29C 45/14
B65D 85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材からなる第1部材(20)と、樹脂材からなり、上記第1部材(20)と共に物品の収容空間(R)を区画形成する第2部材(10)とが結合され、
上記第1部材(20)における上記第2部材(10)と結合される側には、上記収容空間(R)の外方へ延びるように第1締結部(23)が設けられ、
上記第2部材(10)における上記第1部材(20)と結合される側には、上記収容空間(R)の外方へ延びる第2締結部(13)が上記第1締結部(23)に対応するように設けられ、
上記第1部材(20)には、電磁波遮蔽性を持たせるための導電体層(25)が設けられ、
上記第2部材(10)には、電磁波遮蔽性を持たせるための導電体層(15)が設けられ、
上記第1部材(20)の導電体層(25)は、上記第1締結部(23)における上記第2部材(10)と結合される側まで延びるシート材(T)で構成され、該シート材(T)は表面が該第1締結部(23)における上記第2部材(10)と結合される側から露出するように配置され、
上記第1締結部(23)には、樹脂成形時における上記シート材(T)を所定位置に保持するための保持部材(40)が、該シート材(T)における上記第1締結部(23)から露出した部分に対して裏側から接触した状態でインサート成形され、
上記第1締結部(23)にインサート成形された保持部材(40)は、該第1締結部(23)における上記第2部材(10)と結合される側とは反対側から突出するとともに、上記シート材(T)に接触する側の方が上記第1締結部(23)から突出する側に比べて幅広に形成され、
上記第2部材(10)の導電体層(15)は、上記第2締結部(13)における上記第1部材(20)と結合される側まで延びるシート材(T)で構成され、該シート材(T)は表面が該第2締結部(13)における上記第1部材(20)と結合される側から露出するように配置され、
上記第2締結部(13)には、樹脂成形時における上記シート材(T)を所定位置に保持するための保持部材(50)が、該シート材(T)における上記第2締結部(13)から露出した部分に対して裏側から接触した状態でインサート成形され、
上記第2締結部(13)にインサート成形された保持部材(50)は、該第2締結部(13)における上記第1部材(20)と結合される側とは反対側から突出するとともに、上記シート材(T)に接触する側の方が上記第2締結部(13)から突出する側に比べて幅広に形成され、
上記第1締結部(23)と上記第2締結部(13)とを締結部材(B)により締結した状態で、上記第1部材(20)の導電体層(25)は、上記第2部材(10)の導電性を有する部分(15)に接触することを特徴とする電磁波遮蔽容器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を遮蔽することができる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば電子部品等を収容する容器には、電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性が求められている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の容器は、上側部材と下側部材とで構成されている。上側部材は、上壁部と下方へ延びる周壁部とを備えており、導電体で構成された導電体層が上壁部と周壁部の厚み方向中間部に設けられている。この導電体層は、周壁部の下端面を覆うようにも設けられている。また、下側部材は、下壁部と上方へ延びる周壁部とを備えており、同様に導電体層が下壁部と周壁部に設けられている。この下側部材の導電体層は、周壁部の上端面を覆うようにも設けられている。上側部材の周壁部の下端面の凸部と下側部材の周壁部の上端面の凹部とが嵌合して1つの容器を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−169190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように上側部材と下側部材を組み合わせて1つの容器を構成する場合には、両部材の結合構造が問題となる。すなわち、上側部材と下側部材との間に、仮に隙間が生じた場合には、上側部材の周壁部下端面の導電体層と、下側部材の周壁部上端面の導電体層とが離れることになり、それらの間を電磁波が通ってしまい、電磁波の遮蔽性が低下する結果となる。
【0005】
特に、容器を構成する部材を軽量化の観点から樹脂製とする場合には、例えば熱変形や経年変化等による変形に起因して上側部材と下側部材との間に隙間が生じやすくなる。また、容器に例えば電気自動車用のバッテリー等のような重量物を収容する場合には、その重量により容器を構成する部材が変形して上側部材と下側部材との間に隙間が生じてしまうこともある。しかしながら、特許文献1の容器では、上側部材と下側部材とが単純な凹凸嵌合であるため、両部材の開きを有効に防止できる構造とはなっていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂製の部材を含む複数の部材で電磁波遮蔽容器を構成する場合に、それら部材間に隙間が生じないようにするとともに、各部材の導電部分が離れないようにして電磁波の遮蔽性を良好に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、複数の部材を締結部材によって締結するようにし、さらに、複数の部材の合わせ部において各部材の導電部分を接触させるようにした。
【0008】
第1の発明は、
樹脂材からなる第1部材と、樹脂材からなり、上記第1部材と共に物品の収容空間を区画形成する第2部材とが結合され、
上記第1部材における上記第2部材と結合される側には、上記収容空間の外方へ延びるように第1締結部が設けられ、
上記第2部材における上記第1部材と結合される側には、上記収容空間の外方へ延びる第2締結部が上記第1締結部に対応するように設けられ、
上記第1部材には、電磁波遮蔽性を持たせるための導電体層が設けられ、
上記第2部材は、電磁波遮蔽性を持たせるための導電体層が設けられ、
上記第1部材の導電体層は、上記第1締結部における上記第2部材と結合される側まで延びるシート材で構成され、該シート材は表面が該第1締結部における上記第2部材と結合される側から露出するように配置され、
上記第1締結部には、樹脂成形時における上記シート材を所定位置に保持するための保持部材が、該シート材における上記第1締結部から露出した部分に対して裏側から接触した状態でインサート成形され、
上記第1締結部にインサート成形された保持部材は、該第1締結部における上記第2部材と結合される側とは反対側から突出するとともに、上記シート材に接触する側の方が上記第1締結部から突出する側に比べて幅広に形成され、
上記第2部材の導電体層は、上記第2締結部における上記第1部材と結合される側まで延びるシート材で構成され、該シート材は表面が該第2締結部における上記第1部材と結合される側から露出するように配置され、
上記第2締結部には、樹脂成形時における上記シート材を所定位置に保持するための保持部材が、該シート材における上記第2締結部から露出した部分に対して裏側から接触した状態でインサート成形され、
上記第2締結部にインサート成形された保持部材は、該第2締結部における上記第1部材と結合される側とは反対側から突出するとともに、上記シート材に接触する側の方が上記第2締結部から突出する側に比べて幅広に形成され、
上記第1締結部と上記第2締結部とを締結部材により締結した状態で、上記第1部材の導電体層は、上記第2部材の導電性を有する部分に接触することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、少なくとも第1部材を樹脂製としたので、電磁波遮蔽容器の軽量化を図ることが可能になる。そして、第1部材の導電体層と第2部材の導電性を有する部分とを接触させた状態で、第1部材の第1締結部と第2部材の第2締結部とを締結しているので、温度変化や経年変化等に起因して第1部材と第2部材との間に隙間が生じることはなくなる。よって、第1部材の導電体層と第2部材の導電性を有する部分とを接触させた状態で維持することが可能になり、電磁波の遮蔽性が良好に維持される
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、第1部材の第1締結部と、第2部材の第2締結部とを締結部材により締結し、第1部材の導電体層と第2部材の導電性を有する部分とを接触させるようにしたので、電磁波の遮蔽性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電磁波遮蔽容器の斜視図である。
図2】電磁波遮蔽容器の下側部材を上方から見た斜視図である。
図3図1のIII−III線に相当する断面図であり、(a)は上側部材と下側部材とを結合する前の状態を示し、(b)は上側部材と下側部材とを結合した後の状態を示す。
図4】実施形態の変形例1に係る図3相当図である。
図5】実施形態の変形例2に係る図3相当図である。
図6】実施形態の変形例3に係る図3相当図である。
図7】実施形態の変形例4に係る図3相当図である。
図8】変形例4に係る下側部材の成形要領を説明する金型の断面図である。
図9】変形例4に係る上側部材の成形要領を説明する金型の断面図である。
図10】実施形態の変形例5に係る図3相当図である。
図11】実施形態の変形例6に係る図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る電磁波遮蔽容器1を示すものである。この電磁波遮蔽容器1は、例えば、電気自動車に搭載されるバッテリー(物品)を収容することができる大型の容器である。尚、電磁波遮蔽容器1は、電気自動車のバッテリーの他、例えば電磁波に弱い電子部品等を収容してもよいし、電磁波を発生する電子部品等を収容してもよい。また、電磁波遮蔽容器1の大きさは収容する物に合わせて任意に設定することができる。
【0014】
電磁波遮蔽容器1は、下側部材10と上側部材20とが結合されてなるものであり、下側部材10及び上側部材20によって内部に物品の収容空間Rが区画形成される。下側部材(本発明の第2部材)10は、電磁波遮蔽容器1の上下方向略中央部よりも下側部分を構成するものであり、上方に開放する凹状をなしている。凹状の部材は、下側部材10と上側部材20との一方であってもよい。この場合、他方の部材は蓋状に成形する。
【0015】
図2に示すように、下側部材10は、底壁部11と、底壁部11の周縁部から上方へ延びる周壁部12と、周壁部12の上端部(上側部材20と結合される側)から収容空間Rの外方へ延びる第1締結部としての下側フランジ部13とを備えている。底壁部11、周壁部12及び下側フランジ部13は、非導電性を有する樹脂材を用いて一体成形されている。底壁部11は、略平坦で、平面視で略矩形状に形成されている。周壁部12は、上端に近づくほど水平断面が拡大するように傾斜して延びている。
【0016】
下側フランジ部13は、周壁部12の周方向に連続していて略水平方向に延びている。下側フランジ部13には、下側部材10と上側部材20とを締結するための締結部材としてのボルトB(図1に示す)を挿入する複数の孔部13aが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。孔部13aは上下方向に延びている。下側フランジ部13における孔部13aが形成された部位は、他の部位に比べて大きく延出している。孔部13aには、雌ネジ部材Cが嵌入されている。雌ネジ部材Cは、ボルトBが螺合するネジ孔を有しており、孔部13aの内面に固定されている。
【0017】
図3に示すように、下側フランジ部13の上面13dは略水平に延びており、この上面13dには、シール材Sが嵌まるシール溝13bが形成されている。シール溝13bは、下側フランジ部13の上面13dにおける孔部13aよりも延出方向内側に位置付けられており、下側部材10の上方の開放部分を囲む環状溝で構成されている。シール材Sは、下側部材10と上側部材20との間をシールして主に水密性を確保するためのものであり、例えばゴム等の弾性材料で構成されている。このシール材Sは、シール溝13bの形状に対応して環状となっている。上側フランジ部23には、下面23dにシールSが嵌まるシール溝が形成されていてもよい。
【0018】
また、下側フランジ部13の上面13dには、シール溝13bよりも延出方向内側に、段部13cが形成されている。この段部13cは、後述する上側部材20の突出部23aが収容される収容部となっており、下側フランジ部13の周方向に連続している。段部13cの底面は略水平に延びている。また、段部13cの側面13sは上下方向に延びている。
【0019】
下側部材10の内面には、導電体層15が設けられている。この導電体層15は、シート材で構成されたものである。シート材は、例えば金属が蒸着されたシート、金属繊維からなるシート、多数の細孔が形成された金属シート等のような導電性を有するシートを使用することができる。導電体層15はシート材をインサート成形することによって得られる。すなわち、下側部材10を成形する金型の内部にシート材を配置しておき、この状態で溶融樹脂を金型内に射出して溶融樹脂の成形と同時にシート材を成形して下側部材10に貼り付けた状態とする。
【0020】
尚、導電体層15の形成方法は、インサート成形に限られるものではなく、下側部材10の成形後に作業者がシート材を手作業で貼り付けていく、いわゆる手貼り作業による形成方法であってもよい。
【0021】
導電体層15は、下側部材10の下側フランジ部13の段部13cの側面13sから底面まで連続して設けられている。
【0022】
図1に示す上側部材(本発明の第1部材)20は、電磁波遮蔽容器1の上下方向略中央部よりも上側部分を構成するものであり、下方に開放する凹状をなしている。上側部材20は、上壁部21と、上壁部21の周縁部から下方へ延びる周壁部22と、周壁部22の下端部(下側部材10と結合される側)から収容空間Rの外方へ延びる第2締結部としての上側フランジ部23とを備えている。上壁部21、周壁部22及び上側フランジ部23は、非導電性を有する樹脂材を用いて一体成形されている。上壁部21は、略平坦で、平面視で略矩形状に形成されている。周壁部22は、下端に近づくほど水平断面が拡大するように傾斜して延びている。
【0023】
上側フランジ部23は、下側フランジ部13と対応しており、周壁部22の周方向に連続して略水平方向に延びている。上側フランジ部23には、上記ボルトBが挿通する複数の挿通孔(図示せず)が上記下側部材10の孔部13aと一致するように形成されている。上側フランジ部23における挿通孔が形成された部位は、下側フランジ部13と同様に大きく延出している。
【0024】
図3に示すように、上側フランジ部23の下面23dは、下側フランジ部13の上面13dと略平行に延びており、この下面23dの延出方向内端部には、下方へ突出する突出部23aが形成されている。突出部23aは、上側フランジ部23の周方向に連続する突条部を構成している。この突出部23aの鉛直方向の断面は、略矩形状とされている。突出部23aにおける収容空間Rに臨む内側面は、周壁部22の内面と同一面を形成するように上下方向に延びている。また、突出部23aにおける上記内側面とは反対側の外側側面23sも上下方向に延びており、段部13cの側面に沿うように形成されている。さらに、突出部23aの突出方向先端面は、略水平に延びており、段部13cの底面に沿うように形成されている。図3(a)に示すように、突出部23aの突出高さ寸法Hは、段部13cの深さ寸法Dと同じであってもよいが、変形などを考慮して、突出高さ寸法Hは段部13cの深さ寸法Dよりも長く設定されている。これにより、突出部23aを段部13cに収容して突出部23aの突出方向先端面を段部13cの底面に接触させた状態で、突出部23aが段部13cに完全に収容されずに、突出部23aの基端部が段部13cから出た状態となり、下側フランジ部13の上面13dと、上側フランジ部23の下面23dとの間に所定の隙間が形成されることになる。
【0025】
上側フランジ部23の下面23dにおいて突出部23aが形成された部分以外は、略平坦に形成されている。この平坦な部分にシール材Sが接触するようになっている。
【0026】
上側部材20の内面には、導電体層25が設けられている。この導電体層25は、下側部材10の導電体層15と同様なシート材で構成されたものである。
【0027】
導電体層25は、上側部材20の上側フランジ部23の突出部23aの内側面から突出方向先端面23t、外側側面23sまで連続して設けられている。
【0028】
次に、上記のように構成された電磁波遮蔽容器1に物品を収容する場合について説明する。下側部材10に例えば電気自動車の走行用バッテリーを収容した後、そのバッテリーを上方から覆うように上側部材20をバッテリーにかぶせる。そして、上側部材20の上側フランジ部23と、下側部材10の下側フランジ部13とを合わせるようにして、上側フランジ部23の突出部23aを下側フランジ部13の段部13cに嵌めて収容した状態とする。この状態で、突出部23aの先端面23tを覆う導電体層25と、段部13cの底面を覆う導電体層15とが接触するとともに、突出部23aの外側側面23sを覆う導電体層25と、段部13cの側面13sを覆う導電体層15とが接触するか又は若干の隙間を形成して隣接する。
【0029】
そして、ボルトBを上側部材20の上側フランジ部23の挿通孔に挿通して下側部材10の下側フランジ部13の雌ネジ部材Cに螺合させ、上側フランジ部23と下側フランジ部13とを締結する。このとき、突出部23aの突出高さ寸法Hを、段部13cの深さ寸法Dよりも長く設定して下側フランジ部13の上面13dと上側フランジ部23の下面23dとの間に所定の隙間を形成するようにしているので、突出部23aの先端面23tを覆う導電体層25と、段部13cの底面を覆う導電体層15とをボルトBの締結力によって強く接触させることができる。突出部23aと段部13cが接触していれば、隙間が若干開いているだけでもよい。
【0030】
下側部材10及び上側部材20を樹脂製にすると、熱変形や経年変化、物品の重量等によって下側部材10と上側部材20との間に隙間が形成される恐れがあるが、この実施形態では、下側フランジ部13と上側フランジ部23とを複数箇所で締結することで、下側フランジ部13と上側フランジ部23との開きが抑制される。その結果、突出部23aの先端面23tを覆う導電体層25と、段部13cの底面を覆う導電体層15とが離れるのを防止することができる。
【0031】
以上説明したように、この実施形態に係る電磁波遮蔽容器1によれば、下側部材10の下側フランジ部13と、上側部材20の上側フランジ部23とをボルトBにより締結し、下側部材10の導電体層15と上側部材20の導電体層25とを接触させるようにしたので、電磁波の遮蔽性を良好に維持することができる。
【0032】
また、上側部材20の上側フランジ部23に突出部23aを形成し、この突出部23aの外側側面23sから先端面23tまで連続するように導電体層25を内周面に設けたので、電磁波の遮蔽性をさらに良好にできる。
【0033】
また、下側部材10の下側フランジ部13に、上側部材20の突出部23aを収容するための段部13cを形成し、この段部13cの側面13sから底面まで連続するように導電体層15を内周面に設けたので、電磁波の遮蔽性をさらに良好にできる。
【0034】
また、図4に示す変形例1のように、下側部材10の下側フランジ部13の段部13cの底面に溝部13eを設けてもよい。溝部13eは下側フランジ部13の全周に亘って連続している。溝部13eの内面には、導電体層15が設けられている。下側フランジ部13の下面には、溝部13eの形成により、膨出部13fが形成されている。変形例1の上側部材20の上側フランジ部23の下面23dには、溝部23eが形成されている。溝部23eは上側フランジ部23の全周に亘って連続している。溝部23eは、突出部23aよりも上側フランジ部23の延出方向外側に位置しており、突出部23aと溝部23eとは上側フランジ部23の延出方向に隣接している。また、上側フランジ部23の上面には、溝部23eの形成により、膨出部23fが形成されている。
【0035】
溝部13e、23eを設けることによって、導電体層15、25を手作業で貼る時に、導電体層15、25の端末部分を溝部13e、23eに挿入することによってはがれにくくすることができるし、端末処理作業が容易になる。
【0036】
また、図5に示す変形例2のように、上側部材20の上側フランジ部23の下面23dにおける延出方向中間部に突出部23gを設けてもよい。突出部23gは、上側フランジ部23の周方向に連続している。導電体層25は、突出部23gの側面から突出方向先端面23tまで設けられている。下面23dにおける突出部23gの形成部分よりも上側フランジ部23の延出方向内側は、水平方向に延びる平坦面23hで構成されている。導電体層25は、平坦面23hにも設けられている。
【0037】
また、変形例2の下側部材10の下側フランジ部13の上面13dには、上記突出部23gが収容される収容部としての凹部13gが形成されている。導電体層15は、凹部13gの側面から底面まで設けられている。上面13dにおける凹部13gの形成部分よりも下側フランジ部13の延出方向内側は、水平方向に延びる平坦面13hで構成されている。導電体層15は、平坦面13hにも設けられている。
【0038】
図5(b)に示すように、下側部材10と上側部材20とを結合した状態で、突出部23gが凹部13gに嵌まって収容された状態となる。さらに、突出部23gを覆う導電体層25と凹部13gを覆う導電体層15とが接触するとともに、平坦面23hを覆う導電体層25と平坦面13hを覆う導電体層15とが接触する。
【0039】
図6に示す変形例3のように、下側部材10の下側フランジ部13の上面13dに、凹部13i及び凸部13jを設けてもよい。凹部13iは、段部13cよりも下側フランジ部13の延出方向外側に位置づけられている。導電体層15は、凹部13iの内面にも設けられている。
【0040】
変形例3の上側部材20の上側フランジ部23には、凹部13iに収容される凸部23iが設けられるとともに、凸部13jが収容される凹部23jが設けられている。導電体層25は、凸部23iの外面にも設けられている。
【0041】
図6(b)に示すように、下側部材10と上側部材20とを結合した状態で、凸部23iが凹部13iに嵌まって収容された状態となる。
【0042】
また、図7に示す変形例4は、上記変形例1で示した形状の下側部材10の下側フランジ部13に、インサート部材50をインサート成形するようにしてもよい。インサート部材50は、複数用いられて導電体層25となるシート材Tを成形時の金型内で所定位置に断続的に保持するための保持部材である。すなわち、図8(a)に示すように、下側部材10を成形する金型として、第1型100及び第2型101を用意する。第2型101には、インサート部材50を挿入保持するための保持孔101aを形成する。また、第1型100には、溝部13eを成形するための凸部100aを形成する。導電体層15となるシート材Tは、キャビティ内に配置し、また、インサート部材50は、保持孔101aに保持しておく。この状態で、シート材Tをインサート部材50と凸部100aとで挟んでおく。そして、図8(b)に示すように溶融樹脂材Aをキャビティに射出すると、シート材Tが樹脂の流動圧によって押されて第1型100の内面に沿うように変形して成形されるとともに、樹脂材と一体化する。シート材Tが第1型100の内面に沿うように変形する際、シート材Tは、インサート部材50と凸部100aとの間を滑るようにして移動していくので、段部13cに樹脂材が射出圧によって圧入され、更にフランジ部端末に圧入される。よって、成形性が悪化することはない。
【0043】
また、変形例4では、上側部材20の上側フランジ部23に、インサート部材40をインサート成形している。インサート部材40は、導電体層15となるシート材を金型内で所定位置に保持するための保持部材である。すなわち、図9(a)に示すように、上側部材20を成形する金型として、第1型102及び第2型103を用意する。第1型102には、インサート部材40を挿入保持するための保持孔102aを形成する。また、第2型103には、溝部23eを成形するための凸部103aを形成する。導電体層25となるシート材Tは、キャビティ内に配置し、また、インサート部材40は、保持孔102aに保持しておく。この状態で、シート材Tをインサート部材40と凸部103aとで挟んでおく。そして、図9(b)に示すように溶融樹脂材Aをキャビティに射出すると、シート材Tが樹脂の流動圧によって押されて第2型103の内面に沿うように変形して成形されるとともに、樹脂材と一体化する。シート材Tが第1型103の内面に沿うように変形する際、シート材Tは、インサート部材40と凸部103aとの間を滑るようにして移動していくので、成形性が悪化することはない。
【0044】
各々のシート材Tは、上側フランジ部23の下面23dと下側フランジ部13の上面13dのシール材Sが設けられる部分に貼り付けないようにする必要がある。その理由は、シール材Sを嵌める溝部13bの底面にシート材Tが挟まっていたり、シール材Sの上側端部が当接する上側フランジ部23の下面23dにシート材Tが貼り付けられていると、シール性を保証できなくなる恐れがあるからである。
【0045】
その対策として、シート材Tをインサート成形する場合、インサート部材40,50を用いてシート材Tの端末近傍を金型と共に挟むことによって、シート材Tが捲れ上がることを防止でき、かつ、突出部23aの突出方向先端面23tと段部13cの底面とが確実に覆われるようになるので、突出部23aの先端面23tを覆うシート材T(導電体層25)と、段部13cの底面を覆うシート材T(導電体層15)とを接触させることができるようになり、確実に電磁波シールドできる。
【0046】
図10に示す変形例5のように、上記変形例3の上側部材20の上側フランジ部23に変形例4と同様なインサート部材40をインサート成形し、上記変形例3の下側部材10の下側フランジ部13に変形例4と同様なインサート部材50をインサート成形してもよい。
【0047】
また、図11に示す変形例6のように、下側部材10を、導電性を有する金属材料で構成してもよい。この場合、上側部材20の上側フランジ部23にシール材Sを挿入する溝23kを形成する。図11(b)に示すように、下側部材10と上側部材20とを結合した状態で、突出部23cを覆う導電体層25と、下側部材10の導電性を有する部分とが接触する。また、下側部材10と上側部材20とはボルト(図示せず)で締結する。
【0048】
尚、上記実施形態では、下側部材10の導電体層15を下側部材10の内面に設けているが、下側部材10の外面に設けてもよい。また、上側部材20の導電体層25を上側部材20の外面に設けてもよい。
【0049】
また、上側部材20と下側部材10のいずれか一方を板状に成形して他方に対して蓋となるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、上側部材20に突出部を形成し、下側部材10に段部や収容部を形成したが、上側部材20に段部や収容部を形成し、下側部材10に突出部を形成してもよい。
【0051】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明に係る電磁波遮蔽容器は、例えば、電気自動車の走行用バッテリーを収容するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電磁波遮蔽容器
10 下側部材(第2部材)
13 下側フランジ部(第2締結部)
13c 段部(収容部)
15 導電体層
20 上側部材(第1部材)
23 上側フランジ部(第1締結部)
23a 突出部
23s 外側側面
23t 先端面
25 導電体層
T シート材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11