(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6275912
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置
(51)【国際特許分類】
B65D 88/70 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
B65D88/70
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-197451(P2017-197451)
(22)【出願日】2017年10月11日
【審査請求日】2017年10月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】菊地 祐一
(72)【発明者】
【氏名】矢口 航
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−040544(JP,A)
【文献】
特開2001−019088(JP,A)
【文献】
実開昭61−110646(JP,U)
【文献】
実開昭60−039333(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第3103726(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
B65G 65/30−65/48
B65G 53/00−53/28
B65G 53/32−53/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体貯留容器に空気を吹き込み、該貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させる粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置において、前記貯留容器の円筒部の内面に沿って水平に円管で構成した環状の空気配管を配置し、該環状の空気配管に、貯留容器の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設するとともに、貯留容器のコニカル部の内面に沿って縦方向に円管で構成した直線状の空気配管を、複数本、等角度間隔に配置し、該直線状の空気配管に、貯留容器のコニカル部の内面の接線方向に対して斜め中心方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設したことを特徴とする粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置。
【請求項2】
前記円管で構成した直線状の空気配管に配設する噴射ノズルを、空気配管の管軸に対して直交する方向に配設したことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置。
【請求項3】
前記円管で構成した直線状の空気配管の下端に、貯留容器のコニカル部の内面と平行となるように斜め下方に向けて空気を噴射する噴射ノズルを配設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体(本明細書において、「粉体」、「粒体」、「粉体」及び「粒体」の混合物とを含み、以下、単に、「粉粒体」という。)貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラ式空気輸送装置等において用いられる粉粒体貯留容器において、貯留容器の排出口で粉粒体の粒子同士がアーチ構造を形成して閉塞し、粉粒体が排出口から円滑に排出されない現象(本明細書において、「ブリッジ」という。)や、ファネルフローで粉粒体の排出層周囲の粉粒体固定層が強固でくずれない場合、粉粒体は排出をストップし、中心に穴が形成される現象(本明細書において、「ラットホール」という。)が生じることがある。
【0003】
このような現象が生じることを防止するために、従来より、
(1)貯留容器に空気(セラ式空気輸送装置においては、粉流体を空気輸送するための空気を兼ねる場合がある。以下、本明細書において同じ。)を吹き込み、貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させることで「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止する方法(例えば、特許文献1〜2参照。)
(2)振動や衝撃を加える機器を取り付け、「ブリッジ」や「ラットホール」を強制的に破壊する方法
(3)貯留容器のコニカル部の傾斜角度や排出口の大きさを、「ブリッジ」や「ラットホール」が生じにくいように設計する方法
等が提案され、実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−109845号公報
【特許文献2】特開2005−335718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止する方法のうち、上記(1)の貯留容器に空気を吹き込み、貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させる方法、特に、特許文献1の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置の改善に係り、粉粒体貯留容器に空気を吹き込み、貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させることによって「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止しながら、粉粒体の排出を円滑に行うことができる粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置は、粉粒体貯留容器に空気を吹き込み、該貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させる粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置において、前記貯留容器の円筒部の内面に沿って水平に円管で構成した環状の空気配管を配置し、該環状の空気配管に、貯留容器の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設するとともに、貯留容器のコニカル部の内面に沿って縦方向に円管で構成した直線状の空気配管を、複数本、等角度間隔に配置し、該直線状の空気配管に、貯留容器のコニカル部の内面の接線方向に対して斜め中心方向
に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記円管で構成した直線状の空気配管に配設する噴射ノズルを、空気配管の管軸に対して直交する方向に配設することができる。
【0008】
また、前記円管で構成した直線状の空気配管の下端に、貯留容器のコニカル部の内面と平行となるように斜め下方に向けて空気を噴射する噴射ノズルを配設することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置によれば、貯留容器の円筒部の内面に沿って水平に円管で構成した環状の空気配管を配置し、該環状の空気配管に、貯留容器の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設することによって、貯留容器の円筒部に位置する粉粒体を、貯留容器のコニカル部に向けて円滑に移動させることができる。
また、貯留容器のコニカル部の内面に沿って縦方向に円管で構成した直線状の空気配管を、複数本、等角度間隔に配置し、該直線状の空気配管に、貯留容器のコニカル部の内面の接線方向に対して斜め中心方向
に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズルを配設することによって、貯留容器のコニカル部の内面に沿って位置する粉粒体を撹拌、流動化させる
とともに、旋回方向の流動成分を持たせることによって貯留容器の排出口に向けて円滑に移動させることができる。
これらによって、貯留容器内の粉粒体を全体的に撹拌、流動化させ、「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止しながら、粉粒体の排出を円滑に行うようにして、貯留容器からの粉粒体の排出量を増大させることができる。
【0010】
また、前記円管で構成した直線状の空気配管に配設する噴射ノズルを、空気配管の管軸に対して直交する方向に配設することにより、当該噴射ノズルから噴射する空気に上向きの方向性を持たせることができ、貯留容器のコニカル部の内面に沿って位置する粉粒体を持ち上げるようにして撹拌、流動化させることによって貯留容器のコニカル部に向けて円滑に移動させることができる。
【0011】
また、前記円管で構成した直線状の空気配管の下端に、貯留容器のコニカル部の内面と平行となるように斜め下方に向けて空気を噴射する噴射ノズルを配設することにより、粉粒体を貯留容器の排出口に向けてより一層円滑に移動させるようにして、貯留容器からの粉粒体の排出量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置の一実施例を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のE部の拡大図、(c)は
図2(a)及び(b)のC断面図、(d)は(b)のD断面図である。
【
図2】(a)は
図1(a)のA断面図、(b)は
図1(a)のB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図2に、本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置をセラ式空気輸送装置において用いられる粉粒体貯留容器に適用した一実施例を示す。
【0015】
この粉粒体貯留容器1におけるブリッジ及びラットホールの解消装置は、粉粒体貯留容器1に空気(この空気は、粉流体を空気輸送するための空気を兼ねている。)を吹き込み、貯留容器1内の粉粒体を撹拌、流動化させることで、ブリッジ及びラットホールを解消するようにしたもので、貯留容器1の円筒部11の内面に沿って水平に円管で構成した環状の空気配管2、3を配置し、この環状の空気配管2、3に、貯留容器1の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル21、31を配設するとともに、貯留容器1のコニカル部12の内面に沿って縦方向に円管で構成した直線状の空気配管4を、複数本、等角度間隔に配置し、この直線状の空気配管4に、貯留容器1のコニカル部12の内面の接線方向に対して斜め中心方向
に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル41を配設するようにしている。
【0016】
この場合において、貯留容器1の円筒部11の内面に沿って水平に設置する環状の空気配管2、3は、貯留容器1の円筒部11の内面に、ブラケット23、33を介することによって、若干の隙間をあけて取り付けるようにする。
【0017】
そして、この環状の空気配管2、3には、貯留容器1の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル21、31を、空気配管2、3の管軸に対して直交する方向に、ソケット22、32を介して配設するようにする。
【0018】
ここで、噴射ノズル21、31は、セラミック等の耐摩耗材料製のものを好適に用いることができる。
また、噴射ノズル21、31は、それぞれ複数個(本実施例においては、各24個ずつ。)を、等角度間隔に配設するようにしている。
また、噴射ノズル21、31による空気の噴射方向の鉛直方向に対してなす角度θ1は、30〜60°程度(本実施例においては、約40°。)に設定することが好ましい。
【0019】
これによって、貯留容器1の円筒部11に位置する粉粒体を、貯留容器1のコニカル部12に向けて円滑に移動させることができる。
【0020】
なお、本実施例においては、環状の空気配管2、3を2段に配置するようにしたが、いずれか一方を省略したり、3段以上配置するようにすることもできる。
【0021】
一方、貯留容器1のコニカル部12の内面に沿って縦方向に設置する直線状の空気配管4は、貯留容器1のコニカル部12の内面に、ブラケット43を介することによって、若干の隙間をあけて取り付けるようにする。
【0022】
ここで、空気配管4は、環状の空気配管3に、複数本(本実施例においては、6本。)を、等角度間隔に配設することで、環状の空気配管3から空気が供給されるようにしている。
【0023】
そして、この直線状の空気配管4には、貯留容器1のコニカル部12の内面の接線方向に対して斜め中心方向
に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル41を、空気配管4の管軸に対して直交する方向に、ソケット42を介して配設するようにする。
【0024】
ここで、噴射ノズル41は、セラミック等の耐摩耗材料製のものを好適に用いることができる。
また、噴射ノズル41は、各空気配管4にそれぞれ複数個(本実施例においては、各6個ずつ(このほか、空気配管4の鉛直部分に1個)。)を、等間隔に配設するようにしている。
また、噴射ノズル41による空気の噴射方向の貯留容器1のコニカル部12の内面の接線方向に対してなす角度θ2(平面視の角度)は
、30〜60°(本実施例においては、約45°。)に設定することが好ましい。
【0025】
これによって、噴射ノズル41から噴射する空気によって、貯留容器1のコニカル部12の内面に沿って位置する粉粒体を撹拌、流動化させる、特に、斜め中心方向に向けて空気を噴射することによって
粉粒体に旋回方向の流動成分を持たせることによって貯留容器1の排出口13に向けて円滑に移動させることができる。
【0026】
また、直線状の空気配管4に配設する噴射ノズル41を、空気配管4の管軸に対して直交する方向に配設することにより、噴射ノズル41から噴射する空気に上向き(本実施例において、水平面に対してなす角度θ3は、約30°。)の方向性を持たせることができ、貯留容器1のコニカル部12の内面に沿って位置する粉粒体を持ち上げるようにして撹拌、流動化させることによって貯留容器1のコニカル部に向けて一層円滑に移動させることができる。
【0027】
さらに、直線状の空気配管4の下端に、貯留容器1のコニカル部12の内面と平行となるように斜め下方に向けて空気を噴射する噴射ノズル44を配設することようにしている。
これにより、粉粒体を貯留容器1の排出口13に向けて円滑に移動させることができる。
【0028】
このように、この粉粒体貯留容器1におけるブリッジ及びラットホールの解消装置は、上記の作用によって、貯留容器1内の粉粒体を全体的に撹拌、流動化させ、「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止しながら、粉粒体の排出を円滑に行うようにして、貯留容器1からの粉粒体の排出量を増大させることができる。
【0029】
ここで、この粉粒体貯留容器1におけるブリッジ及びラットホールの解消装置は、コンプレッサからの圧力空気を、バッファタンク、高圧エアを供給/停止するバルブ(いずれも図示省略)等を介して、空気配管2、3、4に配設した噴射ノズル21、31、41、44から粉粒体貯留容器1に吹き込み、貯留容器1内の粉粒体を撹拌、流動化させることで、ブリッジ及びラットホールを解消するようにしたものであるが、この圧力空気は、粉流体を空気輸送するための空気を兼ねている。
【0030】
以上、本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置は、粉粒体貯留容器に空気を吹き込み、貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させることによって「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止しながら、粉粒体の排出を円滑に行うことができるという特性を有していることから、セラ式空気輸送装置等において用いられる粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 貯留容器
11 円筒部
12 コニカル部
13 排出口
2 環状の空気配管
21 噴射ノズル
3 環状の空気配管
31 噴射ノズル
4 直線状の空気配管
41 噴射ノズル
44 噴射ノズル
【要約】
【課題】粉粒体貯留容器に空気を吹き込み、貯留容器内の粉粒体を撹拌、流動化させることによって「ブリッジ」や「ラットホール」が生じることを防止しながら、粉粒体の排出を円滑に行うことができる粉粒体貯留容器におけるブリッジ及びラットホールの解消装置を提供すること。
【解決手段】貯留容器1の円筒部11の内面に沿って水平に円管で構成した環状の空気配管2、3を配置し、この環状の空気配管2、3に、貯留容器1の中心斜め下方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル21、31を配設するとともに、貯留容器1のコニカル部12の内面に沿って縦方向に円管で構成した直線状の空気配管4を、複数本、等角度間隔に配置し、この直線状の空気配管4に、貯留容器1のコニカル部12の内面の接線方向に対して斜め中心方向又は中心方向に向けて空気を噴射する複数個の噴射ノズル41を配設する。
【選択図】
図1