特許第6275945号(P6275945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許6275945両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法
<>
  • 特許6275945-両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法 図000004
  • 特許6275945-両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法 図000005
  • 特許6275945-両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法 図000006
  • 特許6275945-両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法 図000007
  • 特許6275945-両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275945
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20180129BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20180129BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180129BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180129BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180129BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180129BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G02B5/30
   H05B33/02
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   G02F1/1335
   C09J7/02 Z
   C09J133/06
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-269433(P2012-269433)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-115468(P2014-115468A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由紀
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】千葉 剛
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−237965(JP,A)
【文献】 特開2011−184582(JP,A)
【文献】 特開2009−258589(JP,A)
【文献】 特開2012−128099(JP,A)
【文献】 特開2010−277039(JP,A)
【文献】 特開2011−138070(JP,A)
【文献】 特開2003−029645(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 4/02
C09J 7/02
C09J 133/06
C09J 201/00
G02F 1/1335
H01L 51/50
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え、
さらに前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されており、
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であ
前記第二粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率G’25℃が1.0×10Pa〜1.0×10Paであり、80℃における貯蔵弾性率G’80℃が1.0×10Pa〜3.0×10Paであり、G’25℃/G’80℃が5以上であり、厚みが30μm以上である、両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項2】
前記第一粘着剤層の厚みが3〜30μmである、請求項1に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項3】
前記第二粘着剤層は、軟化点が50℃〜150℃の粘着付与剤を含有する、請求項1または2に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項4】
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマーが、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項5】
前記第二粘着剤層は、活性光線が照射され硬化された場合に、硬化後の80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項6】
画像表示装置を製造する方法であって、
前記画像表示装置は、画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されており、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一工程;および
前記第二粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程、
を有し、
前記第二貼合工程後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線が照射され、前記第二粘着剤層が硬化される、画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの前面に透明板またはタッチパネルを備える画像表示装置の形成に用いられる粘着剤付き光学フィルムに関する。さらに、本発明は当該粘着剤付き光学フィルムを用いた画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。液晶表示装置は、その表示原理から、画像表示セルの視認側表面に偏光板が配置されている。また、有機EL表示装置では、外光が金属電極(陰極)で反射されて鏡面のように視認されることを抑制するために、画像表示セルの視認側表面に円偏光板(偏光板と1/4波長板の積層体)が配置される場合がある。
【0003】
一般的な画像表示装置では、画像表示パネル(液晶パネルや有機ELパネル)の最表面に偏光板が配置される。一方、外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、画像表示パネルの視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。また、タッチパネルを備える表示装置では、一般に、画像表示パネルの視認側にタッチパネルが配置されている(以下、前面透明板とタッチパネルとを併せて「前面透明部材」と称する場合がある)。
【0004】
このように、画像表示パネルの視認側に前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材が配置される場合、パネル表面を保護するため、これらの層間に0.5〜1.5mm程度の空隙を設けるエアーギャップ構造(中空構造)を構成することが行われている。しかし、エアーギャップ構造部分の空気の屈折率が約1であるのに対して、画像表示パネルの偏光板や前面透明部材等を構成するプラスチック材料やガラス材料の屈折率は1.5程度であるため、界面での反射や屈折が大きくなる。そのため、エアーギャップ構造を有する画像表示装置では、画像表示パネルから発した映像光の拡散・散乱や、太陽光等の外光反射が生じやすく、画像表示装置の視認性を低下させるとの問題がある。
【0005】
上記のような問題を解消するため、近年、上記エアーギャップ構造部分に、ガラスや樹脂等と屈折率が近い透明な光学樹脂を充填する「層間充填構造」が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。層間充填構造では、上記エアーギャップ内に光学樹脂が充填されることにより、界面の屈折率差が減少するため、反射や散乱に起因する視認性の低下が抑制される。また、エアーギャップ内に光学樹脂が充填されることにより、画像表示装置全体の強度が増すため、万が一、前面透明板等が破損した場合であっても、その形成材料であるガラス等が飛散することを防ぐといった効果も得られる。さらに、層間充填剤を構成する光学樹脂として接着剤を用いることで、画像表示パネルと前面透明部材とを接着して固着することができる。
【0006】
層間充填剤構成を採用する画像表示装置は、一般に、画像表示セル(液晶セル、有機ELセル等)の表面に偏光板を貼り合せて画像表示パネルを作製した後、当該画像表示パネルの偏光板と前面透明部材とを、層間充填剤を介して貼り合せる方法により作製される。画像表示セルと偏光板との貼り合せには、一般に粘着剤(感圧接着剤)が用いられ、偏光板の一方の面に予め粘着剤層が設けられた粘着剤付き偏光板を、画像表示セルに貼り合せる方法が広く用いられている。
【0007】
画像表示パネル表面に設けられた偏光板と前面透明部材とを層間充填剤によって貼り合せ方法としては、液状の接着剤を用いる方法と、粘着剤を用いる方法が挙げられる。液状の接着剤を用いる方法では、画像表示パネル上に適当量の液状接着剤を塗布し、その上に前面透明部材を設置して、液状接着剤を全面に濡れ広げた後、紫外線照射等により重合・固化する方法が採用される。粘着剤を用いる方法では、画像表示パネルの偏光板の表面、または前面透明部材の表面のいずれか一方に粘着シートを貼設した後、適宜の方法により両者を貼り合せる方法が採用される(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−8851号公報
【特許文献2】特開2008−281997号公報
【特許文献3】特開2012−153788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
層間充填剤として、液状の光硬化性樹脂を用いる方法では、液状樹脂のはみ出しに伴う汚染が生じる等の問題がある。一方、粘着シートを用いる方法では、貼り合せの前に粘着シートを画像表示装置のサイズと合致するようにカットする必要があることに加えて、所望位置に精度よく貼り合せることが容易でなく、作業性が良好とはいえない。
【0010】
前面透明板の画像表示パネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。周縁部に印刷が施されると、印刷部分の境界に、10μm〜数十μm程度の段差が生じるが、層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差部に気泡が生じ易いとの問題も生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
層間充填構造を採用する画像表示装置において、画像表示パネルと前面部材との貼り合せに関わる上記の諸問題は、偏光板の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着剤付きの偏光板を用いることによって解決される。
【0012】
すなわち、本発明は、前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる両面粘着剤付き光学フィルムに関する。本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層を備え、当該光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層および第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されている。第一粘着剤層の厚みは3〜30μmであることが好ましく、第二粘着剤層の厚みは30μm以上であることが好ましい。
【0013】
一実施形態において、第二粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paであり、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1×10Paである。貯蔵弾性率に上記温度依存性を持たせる目的で、第二粘着剤層は、軟化点が50℃〜150℃の粘着付与剤を含有していてもよい。また、貯蔵弾性率に上記温度依存性を持たせる目的で、第二粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマーが、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有するものであってもよい。
【0014】
一実施形態において、第二粘着剤層を構成する粘着剤は、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤である。当該実施形態において、第二粘着剤層は、活性光線が照射され硬化された場合に、硬化後の80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、上記両面粘着剤付き光学フィルムを用いた画像表示装置の製造方法に関する。当該実施形態において、画像表示装置は、画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されている。
【0016】
本発明の画像表示装置の製造方法は、下記の工程を有する:
(1)上記両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一貼合工程、および
(2)第二粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程。
なお、上記第一貼合工程と第二貼合工程は、どちらが先に行われてもよく、両者が同時に行われてもよい。
【0017】
第二粘着剤層を構成する粘着剤が、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤である場合、上記の第二貼合工程後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線が照射され、第二粘着剤層が硬化されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、画像表示セルとの貼り合せのための第一粘着剤層に加えて、前面透明板やタッチパネル等の前面透明部材と貼り合せるための第二粘着剤層を備える。このような構成によれば、画像表示パネルと前面透明部材とを貼り合せて層間充填構造とする際に、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、液状樹脂や粘着シートのはみ出しによる汚染が防止されることに加えて、製造プロセスが簡略化される。
【0019】
また、第二粘着剤層の貯蔵弾性率に所定の温度依存性を持たせることで、前面透明部材の貼り合せの際の80℃付近での貯蔵弾性率を小さくして、粘着剤に段差追従性を持たせ、気泡の発生を抑制することができる。また、画像表示装置の使用環境温度における貯蔵弾性率を大きくして、実使用時の部材の位置ズレや粘着剤のはみ出し等の不具合を抑制することができる。
【0020】
さらに、第二粘着剤層として光硬化性粘着剤を用い、前面透明部材との貼り合せ後に光硬化を行うことで貯蔵弾性率を大きくすれば、画像表示装置が高温環境に晒された場合も粘着剤の流動が抑制される。そのため、段差付近での気泡の発生や剥離を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】両面粘着剤付き光学フィルムの一実施形態を模式的に表す断面図である。
図2】両面粘着剤付き光学フィルムの一実施形態を模式的に表す断面図である。
図3】画像表示装置の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図4】両面粘着剤付き光学フィルムの一実施形態を模式的に表す断面図である。
図5】両面粘着剤付き光学フィルムの一実施形態を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、偏光板を含む光学フィルムの一方の面に第一粘着剤層を備え、他方の面に第二粘着剤層を備える。第一粘着剤層は、画像表示セルと光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層であり、第二粘着剤層は、前面透明部材(前面透明板またはタッチパネル)と光学フィルムとの貼り合せに用いられる粘着剤層である。
【0023】
以下では、適宜図面を参照しながら、本発明の詳細を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる両面粘着剤付き光学フィルム50を模式的に表す断面図であり、図3は、本発明の一実施形態にかかる画像表示装置100を模式的に表す断面図である。
【0024】
図1に示す両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10として偏光板11を備える。両面粘着剤付き光学フィルム50は、光学フィルム10の一方の面に第一粘着剤層21を備え、他方の面に第二粘着剤層22を備える。第一粘着剤層21上には、第一保護シート31が剥離可能に貼着されており、第二粘着剤層22上には、第二保護シート32が剥離可能に貼着されている。
【0025】
図3に示す画像表示装置100では、光学フィルム10の一方の面が、第一粘着剤層21を介して画像表示セル60と貼り合せられており、光学フィルム10の他方の面が第二粘着剤層22を介して前面透明部材70と貼り合せられている。
【0026】
[光学フィルム]
光学フィルム10を構成する偏光板11としては、偏光子の片面または両面に、必要に応じて適宜の透明保護フィルムが貼り合せられたものが一般に用いられる。偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0027】
偏光子の保護フィルムとしての透明保護フィルムには、セルロース系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェニルマレイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性および光学等方性に優れるものが好ましく用いられる。なお、偏光子の両面に透明保護フィルムが設けられる場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムが用いられてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムが用いられてもよい。また、液晶セルの光学補償や視野角拡大等を目的として、位相差板(延伸フィルム)等の光学異方性フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることもできる。
【0028】
図2に示すように、光学フィルム10は、偏光板11の一方または両方の面に、必要に応じて適宜の接着剤層や粘着剤層(不図示)を介して、他のフィルム13,14が積層されていてもよい。このようなフィルム13,14としては、位相差板、視野角拡大フィルム、視野角制限(覗き見防止)フィルム、輝度向上フィルム等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。
【0029】
例えば、液晶表示装置では、液晶セルから視認側に射出される光の偏光状態を適宜に変換して、視野角特性を向上させる等の目的で、画像表示セル(液晶セル)60と偏光板11との間のフィルム13として光学補償フィルムが用いられる場合がある。
【0030】
有機EL表示装置では、外光が金属電極層で反射して鏡面のように視認されることを抑制するために、フィルム13として1/4波長板が用いられる場合がある。かかる構成において、偏光板11と1/4波長板13とは、円偏光板を構成するように配置される。典型的には、偏光板11の吸収軸方向と、1/4波長板13の遅相軸方向とが略45°の角度をなすように配置される。
【0031】
偏光板11の視認側に配置されるフィルム14としては、1/4波長板等が挙げられる。例えば、偏光板11の吸収軸方向と、1/4波長板14の遅相軸方向とが略45°の角度をなすように配置されると、偏光板11から射出される直線偏光が、1/4波長板14によって円偏光に変換されるため、偏光サングラスを装着した視認者に対しても、適切な画像表示を視認させることができる。
【0032】
光学フィルム10表面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。また、光学フィルム10の表面には、粘着剤層21,22を付設する前に、接着性等を目的として表面改質処理が行われてもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。また適宜に帯電防止層を形成することもできる。
【0033】
[第一粘着剤層]
光学フィルム10の一方の面には、画像表示セル60との貼り合せに用いるための第一粘着剤層21が設けられる。第一粘着剤層21の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定できるが、本発明においては、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜27μmがより好ましく、10μm〜25μmがさらに好ましい。第一粘着剤層の厚みが前記範囲であれば、耐久性に優れると共に、気泡の混入等の不具合を抑制することができる。
【0034】
第一粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0035】
第一粘着剤層21は、25℃における貯蔵弾性率G’25℃が、1.0×104Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。第一粘着剤層は、G’25℃が、3.0×10Pa〜5.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜1.0×10Paであることがさらに好ましい。また、第一粘着剤層21は、80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、5.0×10Pa〜5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることがより好ましい。第一粘着剤層の貯蔵弾性率が上記範囲であれば、適度の接着性を示すと共に、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せのために加熱が行われた場合でも、粘着剤の流動が抑制されるため、他の部材に粘着剤が付着する糊汚れ等の問題が抑制される。
【0036】
なお、本明細書において、貯蔵弾性率G’は、JIS K7244−1「プラスチック−動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数1Hzの条件で、−50〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、所定温度(25℃または80℃)における値を読み取ることにより求められる。粘着剤のように粘弾性を示す物質の弾性率は、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’で表さる。一般に、損失弾性率G’’は粘性の程度を表す指標であるのに対して、貯蔵弾性率G’は硬さの程度を表す指標として用いられる。
【0037】
第一粘着剤層の貯蔵弾性率が過度に小さいと、粘着剤層が軟らかいために、光学フィルム10と画像表示セル60との貼り合せ時等に、端面から粘着剤層がはみ出す等の不具合を生じる場合がある。一方、貯蔵弾性率が過度に大きいと、接着性が低下する傾向がある。
【0038】
本発明の粘着剤付き光学フィルムを用いて画像表示装置が形成される場合、画像表示セル60への光学フィルムの貼り合せと、タッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70への光学フィルムの貼り合せが行われる。第一粘着剤層21は、画像表示セルと光学フィルム10との貼り合せ時に、ラミネータ等によって加圧されることに加えて、光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せの際にも加圧される。一般に、画像表示パネル表面に配置された光学フィルム10への前面透明部材の貼り合せは、80℃程度の加熱環境で行われることから、本発明においては、第一粘着剤層21が、25℃(室温付近)において、所定範囲の貯蔵弾性率を有することに加えて、80℃(加熱環境)においても、上記所定範囲の貯蔵弾性率を有することが好ましい。
【0039】
[第二粘着剤層]
光学フィルム10の他方の面には、前面透明部材70との貼り合せに用いるための第二粘着剤層22が設けられる。このように、画像表示セルとの貼り合せに用いられる第一粘着剤層21の反対面に、前面透明部材との貼り合せのための第二粘着剤層22が設けられた両面粘着剤付き光学フィルムを用いれば、層間充填構造とする際に、光学フィルム10上に、液状接着剤や別途のシート状粘着剤層を付設する工程を設ける必要がない。そのため、画像表示装置の製造工程を簡略化できると共に、接着剤(粘着剤)のはみ出しによる汚染が防止される。
【0040】
<厚み>
第二粘着剤層22の厚さは、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。第二粘着剤層の厚みが前記範囲より小さいと、光学フィルムと前面透明部材との貼り合せの際に、気泡が混入し易くなる傾向がある。
【0041】
特に、図3に模式的に示すように、前面透明部材70の画像表示パネル60側の面の周縁部に印刷部70aが設けられている場合は、第二粘着剤層の厚みが小さいと、粘着剤層が印刷段差に追従できず、印刷部70a付近に気泡が混入し易くなる傾向がある。そのため、光学フィルム10と貼り合せられる面に印刷部70aのような非平坦部を有する前面透明部材70が用いられる場合、第二粘着剤層の厚みは、非平坦部(印刷部)70aの厚みdの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上がさらに好ましい。
【0042】
第二粘着剤層22の厚さの上限は特に限定されないが、画像表示装置の軽量化・薄型化の観点や、粘着剤層形成の容易性、ハンドリング性等を勘案すると、300μm以下が好ましく、250μm以下がさらに好ましい。
【0043】
<貯蔵弾性率>
第二粘着剤層22は、25℃における貯蔵弾性率G’25℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。第二粘着剤層は、G’25℃が、3.0×10Pa〜7.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
【0044】
25℃における貯蔵弾性率が過度に小さいと、粘着剤付き光学フィルムを所望サイズにカットする際や、貼り合せの際の加圧によって、光学フィルムの端面から粘着剤がはみ出して、光学フィルムのカット面やカット刃等に粘着剤が付着し易くなる傾向がある。一方、25℃における貯蔵弾性率が過度に大きいと、カット時またはカット後に、粘着剤の端面(カット面)において、割れや欠けが発生し易くなる傾向がある。特に、第二粘着剤層22は、第一粘着剤層21よりも厚みが大きく、カット刃への粘着剤の付着や、粘着剤の割れ・欠けが生じ易くなる傾向がある。そのため、本発明においては、特に第二粘着剤層22のG’25℃を前記範囲とすることが好ましい。また、第二粘着剤層のG’25℃が前記範囲であれば、粘着剤層が、加工性やハンドリング性等に必要な凝集力を保持できると共に、第二粘着剤層22を前面透明部材70と貼り合せる際の初期粘着性を確保することができる。
【0045】
第二粘着剤層22は、80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。第二粘着剤層22のG’ 80℃を前記範囲とすることで、貼り合せ時の粘着剤層の端部からのはみ出しが抑制されると共に、気泡の混入が抑制される。
【0046】
画像表示セルに偏光板等の光学フィルムを貼り合せる際は、光学フィルムをロール等に沿わせて湾曲させながら貼り合せを行うことによって、気泡の混入を抑制することができる。一方、画像表示パネル上に、粘着剤層を介してタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材を貼り合せる際は、画像表示パネルおよび前面透明部材のいずれも可撓性を有しておらず、湾曲させながら貼り合せを行うことができないため、気泡が混入し易い。また、前面透明部材70に印刷部70a等の非平坦部が存在する場合は、非平坦部、あるいはその境界である段差部分を起点として気泡が混入し易くなる傾向がある。そのため、画像表示パネル上に、粘着剤層を介してタッチパネルや前面透明板等を貼り合せる際は、貼り合せに伴う気泡の除去を目的として、減圧・加熱下で貼り合せが行われることが好ましい。また、貼り合せ後は、気泡(ディレイバブル)の発生を抑制するために、オートクレーブ処理等により、加圧・加熱処理が行われることが好ましい。
【0047】
第二粘着剤層22の80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa以下であれば、上記加熱処理の際の粘着剤の貯蔵弾性率が小さい(換言すると、粘着剤が柔らかい)ため、印刷部70a等の段差や隆起等に粘着剤層の形状が追従し、気泡の混入が抑制される。さらに、常温での貼り合せ時に生じた段差付近の気泡を効果的に除去することができる。加熱時の気泡除去をより効果的に行う観点から、第二粘着剤層22は、G’80℃が、5.0×10Pa以下がより好ましく、3.0×10Pa以下がさらに好ましく、1.0×10Pa以下が特に好ましい。
【0048】
一方、前述のごとく第二粘着剤層22の25℃における貯蔵弾性率G’25℃が小さいと、粘着剤の端面からのはみ出しが問題となりやすい。そのため、第二粘着剤層は、G’25℃が、1.0×10Pa以上、より好ましくは5.0×10Pa以上、さらに好ましくは1.0×10Pa以上であり、かつG’80℃が前記範囲であることが好ましい。すなわち、第二粘着剤層は、貯蔵弾性率G’が所定の温度依存性を有することが好ましい。第二粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’25℃と80℃における貯蔵弾性率G’80℃との比G’25℃/G’80℃は、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上がさらに好ましく、50以上が特に好ましい。G’25℃/G’80℃の上限は特に制限されないが、常温での貼り合せ時の粘着性等を勘案すると、一般には1000以下が好ましく、500以下がさらに好ましい。
【0049】
粘着剤層に上記の温度依存性を持たせる方法としては、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤のベースポリマーに、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有する共重合ポリマーを用いる方法が挙げられる。また、粘着剤層中に、50℃〜150℃程度の軟化点を有する成分を添加する方法等によっても、粘着剤層に所期の温度依存性を持たせることができる。
【0050】
さらに、本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルム10が第二粘着剤層22を介して前面透明部材70と貼り合せられ、画像表示装置が形成された後において、第二粘着剤層22の80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。画像表示装置が形成された後の第二粘着剤層22のG’80℃が前記範囲であれば、画像表示装置の実使用に際して加熱環境に曝された場合でも、粘着剤層の流動が抑制される。そのため、気泡の再発生(ディレイ・バブル)や、粘着剤層の剥がれ等の不具合が抑制され、長期信頼性のある接着性を実現することができる。
【0051】
上記のように、貼り合せ時のG’80℃に比して、画像表示装置形成後のG’80℃を大きくする方法としては、第二粘着剤層22を構成する粘着剤として光硬化性または熱硬化性の粘着剤を用いることが好ましい。この場合、前面透明部材との貼り合せ時には、第二粘着剤層22は適度の接着性および流動性を有する。貼り合せ時やオートクレーブ等での加熱処理を行った後に、活性光線照射や加熱により粘着剤の硬化を行うことで、第二粘着剤層の貯蔵弾性率を大きくして、粘着剤層の剥がれ等の不具合を抑制することができる。
【0052】
特に、貼り合せ時の接着性および流動性と画像表示装置形成後における接着の信頼性とを両立する観点から、第二粘着剤層22は、硬化後の80℃における貯蔵弾性率G’80℃が、1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましく、3.0×10Pa〜7.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10Pa〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。また、貼り合せ時の接着性および流動性と、画像表示装置形成後の接着信頼性とを両立する観点から、第二粘着剤層の硬化後のG’80℃は、硬化前のG’80℃の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。
【0053】
<組成>
第二粘着剤層22を構成する粘着剤の組成は特に限定されず、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性および接着性に優れ、かつ貯蔵弾性率を上記範囲に調整する観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0054】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマー単位を主骨格とするものが好適に用いられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0055】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラキル等が挙げられる。
【0056】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0057】
アクリル系ベースポリマーは、複数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体であってもよい。構成モノマー単位の並びはランダムであっても、ブロックであってもよい。また、第二粘着剤層22の貯蔵弾性率に所望の温度依存性を持たせる等の目的で、アクリル系ベースポリマーが、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、アルキル基が分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。前記例示のモノマーの中でも、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。なお、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を併用することもできる。また、これらの分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルと併用して用いられてもよい。共重合体のモノマー単位として分枝モノマーが用いられることで、粘着剤の平坦領域(高温環境)での弾性率が低下する傾向があり、適宜の貯蔵弾性率温度依存性が付与される。
【0058】
アクリル系ベースポリマーは、共重合成分として、架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマー単位を含有するものであってもよい。架橋可能な官能基を有するアクリル系モノマーとしてはヒドロキシル基含有モノマーや、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。中でも、ベースポリマーの共重合成分として、ヒドロキシル基含有モノマーを含有することが好ましい。
【0059】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0060】
上記以外に、共重合モノマー成分として、酸無水物基含有モノマー、アクリル酸のカプロラクトン付加物、スルホン酸基含有モノマー、燐酸基含有モノマー等を用いることもできる。また、改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー等も使用することができる。
【0061】
アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマー成分の割合は、特に制限されないが、例えば架橋点を導入する目的で共重合モノマー成分としてヒロドキシル基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全構成モノマーの重量比率において、3〜50%程度が好ましく、5〜30%程度がより好ましい。
【0062】
粘着剤の貯蔵弾性率は、ベースポリマーを構成するモノマーの種類、分子量、および配合比(共重合比)、ならびにベースポリマーの分子量(重合度)を適宜変更することによって調整できる。一般に、ベースポリマーの分子量を大きくすると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。また、共重合モノマーとして、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いると貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。一方、アルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの量を多くすると貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。
【0063】
ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することによって得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好適である。溶液重合の溶媒としては一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20〜80重量%程度である。重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系等の各種公知のものを使用できる。分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。反応温度は通常50〜80℃程度、反応時間は通常1〜8時間程度である。
【0064】
ベースポリマーの分子量は、第二粘着剤層22が所期の貯蔵弾性率を有するように適宜に調整されるが、例えば、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5万〜200万程度、好ましくは、7万〜180万程度である。
【0065】
第二粘着剤層22は、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、ベースポリマーの重合後に架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。これらの架橋剤は、ベースポリマー中に導入されたヒドロキシル基等の官能基と反応して架橋構造を形成し得る。
【0066】
架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常、10重量部以下であり、好ましくは重量部以下である。架橋剤の添加量が多すぎると、粘着剤の柔軟性が低下し、被着体への密着性が低下する場合がある。粘着剤組成物として架橋剤が用いられる場合、架橋構造を形成するために加熱工程を経るのが好ましい。加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類によって適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0067】
粘着剤層中には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を、単独であるいはは2種以上を併用して用いることができる。粘着剤にシランカップリング剤が添加される場合、その添加量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対し通常0.01〜5.0重量部程度であり、0.03〜2.0重量部程度であることが好ましい。
【0068】
粘着剤層中には、必要に応じて粘着付与剤を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系粘着付与剤、スチレン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤等を用いることができる。
【0069】
上記粘着付与剤は、粘着剤の貯蔵弾性率に温度依存性を付与することにも寄与し得る。第二粘着剤層22の貯蔵弾性率に所期の温度依存性を付与する観点からは、粘着付与剤の軟化点が50℃〜150℃程度であることが好ましく、70℃〜140℃程度であることがより好ましい。軟化点は、JIS K2207「環球式軟化点試験方法」により測定することができる。
【0070】
前記範囲の軟化点を有し、かつアクリル系ベースポリマーとの相溶性を持たせる観点から、粘着付与剤は、重量平均分子量が200〜5000程度、好ましくは500〜3000程度のものが好適に用いられる。また、粘着付与剤として、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、ジシクロペンタジエン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤等の炭化水素樹脂が用いられる場合、アクリル系粘着剤との相溶性を改善すると共に、透明性を確保する観点から、水素添加(水添)されたものを用いることが好ましい。また、スチレン系の粘着付与剤として、一部または全部が水添されたものを用いることもできる。
【0071】
上記の粘着付与剤の中でも、水添テルペンフェノール樹脂が、アクリル系ベースポリマーとの相溶性および貯蔵弾性率の温度依存性付与の観点から好適に用いられる。水添テルペンフェノール樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターNH」等を用いることができる。
【0072】
第二粘着剤層22が粘着付与剤を含有する場合、その含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、5〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましい。粘着付与剤の含有量が過度に大きいと、粘着剤の割れが発生したり、80℃における貯蔵弾性率が過度に低下する場合がある。
【0073】
前述のごとく、本発明の一実施形態では、第二粘着剤層22を構成する粘着剤は、光硬化性または熱硬化性の粘着剤であることが好ましい。光硬化性または熱硬化性の粘着剤は、前記のベースポリマー、架橋剤、粘着付与剤に加えて、光硬化性または熱硬化性のモノマー、または光硬化性または熱硬化性のオリゴマーを含有する。第二粘着剤層22として、光硬化性または熱硬化性の粘着剤が用いられることで、光学フィルム10と前面透明部材70とを第二粘着剤層22を介して貼り合せた後に、第二粘着剤層22を硬化させて、貯蔵弾性率を大きくすることができる。そのため、画像表示装置が高温環境に晒された場合も、粘着剤の流動が抑制され、気泡の発生や剥離が生じ難い長期信頼性のある接着性を実現することができる。
【0074】
硬化のタイミングの制御や、確実性等の観点からは、光硬化性の粘着剤が特に好適に用いられる。光硬化の方法としては、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーと光ラジカル発生剤を含有する系に紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。特に、光感度の高さや、選択できる材料が豊富であることから、エチレン性不飽和化合物と光ラジカル発生剤を用いたシステムが好ましい。
【0075】
光硬化性のエチレン性不飽和化合物は、単官能化合物であってもよく、多官能化合物であってもよい。単官能のエチレン性不飽和化合物としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレートを例示できる。これらの(メタ)アクリレートフェノキシエチル(メタ)アクリレート(PO)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(CH)、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ-3フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0076】
多官能のエチレン性不飽和化合物としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
上記の光硬化性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤中に含まれることが好ましい。また、光硬化性のモノマーまたはオリゴマーは、2種以上が併用されてもよい。なお、第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、上記光硬化性のモノマー成分として、粘着剤層のベースポリマーを構成するモノマー成分や架橋剤と同様の化合物が用いられてもよい。光硬化性粘着剤を構成するための光硬化性化合物は、粘着剤中にモノマーまたはオリゴマーとして存在させる必要がある。そのため、ベースポリマーを重合後、必要に応じて架橋が行われた後に、系中に光硬化性化合物が添加されることが好ましい。
【0078】
第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、光硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、2〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。光硬化性化合物(モノマーおよび/またはオリゴマー)の含有量を前記範囲とすることで、硬化前、硬化後両方の弾性率を好ましい範囲に調整することができる。光硬化性化合物の含有量が過度に大きいと、硬化前の粘着剤層の貯蔵弾性率が低くなり、光学フィルムのカット時や、貼り合せ時等に不具合を生じる場合がある。
【0079】
第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、粘着剤層中に光ラジカル発生剤を含有することが好ましい。光ラジカル発生剤としては、1個または複数のラジカル発生点を分子中に有する化合物が用いられ、例えば、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、単官能型光ラジカル発生剤と多官能型光ラジカル発生剤とを適宜併用してもよい。
【0080】
第二粘着剤層22が光硬化性粘着剤である場合、光ラジカル発生剤の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜8重量部がより好ましい。
【0081】
上記例示の各成分の他、粘着剤層中には、可塑剤、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0082】
[光学フィルムへの粘着剤層の形成]
光学フィルム10に第一粘着剤層21および第二粘着剤層22を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、溶媒等を乾燥除去して、必要に応じて架橋処理を行って粘着剤層を形成した後に、光学フィルム10上に転写する方法;または光学フィルム10に前記粘着剤組成物を塗布し、溶媒等を乾燥除去して、粘着剤層を光学フィルム上に形成する方法、等が挙げられる。
【0083】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。これらの中でも、ダイコーターを使用することが好ましく、特にファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターを使用することがより好ましい。
【0084】
塗布後の粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜180℃、さらに好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、より好ましくは5秒〜15分、さらに好ましくは10秒〜10分である。
【0085】
[保護シート]
第一粘着剤層21および第二粘着剤層22のそれぞれには、保護シート31,32が剥離可能に貼着される。保護シート31,32は、粘着剤付き光学フィルム55が実用に供され、画像表示セル60や前面透明部材70と貼り合せられるまでの間、粘着剤層21,22の露出面を保護する目的で用いられる。
【0086】
保護シート31,32の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等が挙げられるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0087】
プラスチックフィルムとしては、粘着剤層の表面を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0088】
保護シート31,32の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm程度である。保護シートは、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、保護シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、実用に供する際に、粘着剤層21,22からの剥離性をより高めることができる。
【0089】
なお、光学フィルム10上に粘着剤層21,22を転写する際に用いられたセパレータ等を、そのまま粘着剤付き光学フィルムの保護シート31,32として用いることができる。
【0090】
[カッティング]
粘着剤付き光学フィルムは、必要に応じて所望サイズにカットされた後、実用に供される。一般には、長尺状に形成された粘着剤付き光学フィルムが、画像表示装置のサイズ(画面サイズ)と合致する製品サイズにカットされる。カット方法としては、トムソン刃等を用いて打ち抜く方法や、丸刃や皿刃等のカッターを用いる方法や、レーザー光、水圧を利用する方法等が挙げられる。
【0091】
粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤層21,22の表面に保護シート31,32が貼着されているため、粘着剤層の表面は保護されている。一方で、粘着剤層の側面は、一般に外部に露出した状態となっている。そのため、カット時や輸送時およびハンドリング時等に、外部に剥き出しになっている粘着剤層の側面が何らかの物体と触れることによって、端部の粘着剤が欠けたように脱落してしまう現象(糊欠け)や、脱落した粘着剤が光学フィルムの表面等を汚染する(糊汚れ)等の不具合を生じる場合がある。特に、第二粘着剤層22の厚みが大きい場合は、カッティング時に第二粘着剤層22がカット刃に付着したり、糊欠けや糊汚れを生じ易くなる傾向がある。
【0092】
一実施形態において、両面粘着剤付き光学フィルム100は、図4および図5に模式的に示すように、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22の少なくとも一方の側面が光学フィルム10の側面よりも内側に存在する。第一粘着剤層21および/または第二粘着剤層22の側面21e,22eの少なくとも一部は、光学フィルム10よりも内側にあることに加えて、保護シート31,32よりも内側にあることが好ましい。粘着剤層の側面(端部)が、光学フィルムや保護シートの側面よりも内側にあれば、輸送時や、画像表示セルとの貼り合せ等の加工ライン上での糊汚れや糊欠けが抑制される。本発明においては、特に第二粘着剤層22の側面22eが光学フィルム10の内側にあることが好ましく、第一粘着剤層21の側面21eおよび第二粘着剤層22の側面22eの両方が光学フィルム10の内側にあることが好ましい。
【0093】
本発明においては、第二粘着剤層22の厚みが大きく、糊欠けや糊汚れを生じ易いため、第二粘着剤層22の側面22eの少なくとも一部が光学フィルム10の側面内側にあることが好ましく、さらに第二粘着剤層22の側面22eの少なくとも一部が保護シート32の側面内側にあることが好ましい。第二粘着剤層の側面22eのうち、光学フィルム10の側面の内側にある部分は、粘着剤層22の側周長の1/2以上であることが好ましく、側周長の3/4以上であることがより好ましく、側周の全長であることが特に好ましい。また、第二粘着剤層22と同様に、第一粘着剤層21の側面21eも、側周長の1/2以上、より好ましくは3/4以上、特に好ましくは全長にわたって、光学フィルム10および/または保護シート31の内側にあることが好ましい。
【0094】
粘着剤層21,22の側面21e,22eが、光学フィルム10および/または保護シート31,23の側面内側にある場合、粘着剤層の断面形状としては、例えば図4に示す形状が一般的である。その他、図5に示すように、粘着剤層21,22と光学フィルム10および/または保護シート31,32との界面近辺において、粘着剤層の側面が光学フィルムおよび/または保護シートの側面とほぼ一致しており、粘着剤層の厚み方向中心部付近において、光学フィルムおよび/または保護シートの側面よりも内側にある形状とすることもできる。なお、粘着剤層側面における光学フィルムおよび/または保護シートよりも内側にある部分の有無や形状は、上記に限定されず、適宜設定できる。
【0095】
粘着剤層の側面を、光学フィルムの側面や保護シートの側面よりも内側に設ける方法としては、光学フィルム上への粘着剤層の付設面積を制御する方法や、粘着剤層を付設後に粘着剤層部分だけを取り除く方法が挙げられる。
【0096】
特に好ましい方法として、粘着剤層21,22上に保護シート31,32を貼着後、保護シート31,32上から両面粘着剤付き光学フィルムを加圧して、粘着剤層の端部を光学フィルム端部からはみ出させ、粘着剤層がはみ出した状態で、光学フィルム10および保護シート31,32と共に粘着剤層をカットする方法が挙げられる。カット後に、圧力を開放すれば、粘着剤層21,21の側面21e,22eを光学フィルム10および/または保護シート31,32の側面より内側に後退させることができる。この場合、例えば、長尺状に形成された光学フィルムを、トムソン刃等で打ち抜いた後、打ち抜かれた粘着剤付き光学フィルムを複数枚重ねた状態で、その積層方向から加圧し、粘着剤層が側面からはみ出した状態で回転刃等を用いて、打ち抜きによるカット面の内側をカット(切削)して製品サイズに仕上げる方法が好ましく用いられる。
【0097】
粘着剤層21,22の側面において、光学フィルム10の側面よりも内側にある部分の光学フィルム側面からの距離(最長部分)W,Wとしては、糊欠けや糊汚れを抑制しつつ、画像表示や貼り合せの不具合を生じさせないようにする観点から、10μm〜300μm程度が好ましく、20μm〜250μm程度がより好ましく、30μm〜200μm程度がさらに好ましい。加圧下で光学フィルムおよび保護シートと共に粘着剤層をカットした後に圧力を開放する方法では、粘着剤層に付与される圧力や、粘着剤層の弾性率を調整することによって、上記距離Wを所望の範囲とすることができる。距離WとWは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0098】
[画像表示装置]
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、図3に模式的に示すように、偏光板を含む光学フィルム10の一方の面に液晶セルや有機ELセル等の画像表示セル60を備え、他方の面(視認側)にタッチパネルや前面透明板等の前面透明部材70を備える画像表示装置100の形成に好適に用いられる。当該画像表示装置において、画像表示セル60は、第一粘着剤層21を介して光学フィルム10と貼り合せられ、前面透明部材70は、第二粘着剤層22を介して光学フィルム10と貼り合せられる。
【0099】
前面透明部材70としては、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等、任意の方式のタッチパネルが用いられる。
【0100】
画像表示装置の形成において、両面粘着剤付き光学フィルム50は、画像表示のサイズに合わせた製品サイズに事前にカットされたものが好適に用いられる。画像表示セル60と両面粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法、および前面透明部材70と両面粘着剤付き光学フィルム55との貼り合せ方法は特に限定されず、第一粘着剤層21および第二粘着剤層22のそれぞれの表面に貼着された保護シート31,32を剥離した後、各種公知の方法により貼り合せることができる。
【0101】
本発明の両面粘着剤付き光学フィルムは、第一粘着剤層と第二粘着剤層を備えるため、画像表示装置形成のための貼り合せ工程において、別途の液状接着剤や粘着シートを設ける必要がない。そのため、液状樹脂や粘着シートのはみ出しによる汚染が防止されることに加えて、製造プロセスが簡略化される。
【0102】
貼り合せの順序は特に限定されず、画像表示セル60と両面粘着剤付き光学フィルム55の第一粘着剤層21との貼り合せが先に行われてもよく、前面透明部材70と両面粘着剤付き光学フィルム55の第二粘着剤層22との貼り合せが先に行われてもよい。また、両者の貼り合せを同時に行うこともできる。貼り合せの作業性や、光学フィルムの軸精度を高める観点からは、第一粘着剤層21の表面から保護シート31が剥離された後、光学フィルム10と画像表示セル60とが第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一貼合工程が行われ、その後に、第二粘着剤層22の表面から保護シート32が剥離され、光学フィルム10と前面透明部材70とが第二粘着剤層22を介して貼り合せられる第二貼合工程が行われることが好ましい。
【0103】
光学フィルムと前面透明部材とが貼り合せられた後には、第二粘着剤層22と前面透明部材70との界面や、前面透明部材70に形成された印刷部70a等の非平坦部近辺の気泡を除去するための脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。特に、第二粘着剤層22の80℃における貯蔵弾性率G’80℃が所定範囲内であれば、加熱処理によって第二粘着剤層が段差等の非平坦部の形状に追従するため、前面透明部材が非平坦部を有する場合でも、空隙の発生が抑制される。
【0104】
加熱により脱泡が行われる場合、加熱温度は、一般的に30℃〜150℃程度、好ましくは40°〜130℃、より好ましくは50℃〜120℃、さらに好ましくは60℃〜100℃の範囲である。また、加圧が行われる場合、圧力は一般に0.05MPa〜2MPa程度、好ましくは0.1MPa〜1.5MPa,より好ましくは0.2MPa〜1MPaの範囲内である。
【0105】
第二粘着剤層を構成する粘着剤が、硬化性モノマーまたはオリゴマーを含有する硬化性の粘着剤である場合、光学フィルム10と前面透明部材70との貼り合せが行われた後、第二粘着剤層の硬化が行われることが好ましい。第二粘着剤層が硬化されることによって、画像表示装置における光学フィルム10と前面透明部材70との接着の信頼性を高めることができる。光学フィルムと前面透明部材との貼り合せ後に、気泡除去等の目的で加熱や加圧が行われる場合、第二粘着剤層の硬化は、気泡除去の後に行われることが好ましい。気泡除去後に第二粘着剤層の硬化が行われることによって、ディレイバブルの発生が抑制される。
【0106】
第二粘着剤層の硬化方法は特に限定されない。光硬化が行われる場合は、前面透明部材70を通して紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。前面透明部材70が印刷部70aのように不透明部を有している場合、印刷部の直下には活性光線が照射されないが、光が照射された部分で発生したラジカルの移動等によって、非照射部分においても粘着剤の硬化はある程度進行する。
【0107】
以上説明したように、本発明の両面粘着剤付き光学フィルムを用いることで、層間充填構造を採用する画像表示装置の製造において、貼り合せ工程を簡略化できる。さらに、粘着剤層の厚みや弾性率を調整することによって、糊欠けや糊汚れが抑制されると共に、光学フィルムと前面透明板やタッチパネルとの間の気泡の混入を抑制することができ、高品質の画像表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例および比較例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
[実施例1]
<偏光板>
ヨウ素が含浸された厚み25μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられた偏光板(偏光度99.995%)を用いた。偏光子の一方の面(画像表示セル側)の透明保護フィルムは、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる位相差フィルムであり、他方の面(視認側)の透明保護フィルムは、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムであった。
【0110】
<セル側粘着剤層(第一粘着剤層)の形成>
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート97部、アクリル酸3部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部および酢酸エチル233部投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が110万のアクリル系ポリマーを得た。
【0111】
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液(固形分を100重量部とする)に、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)0.8重量部、シランカップリング剤(信越化学(株)製「KBM−403」)0.1部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。
【0112】
(粘着剤層の形成および架橋)
セパレータ(表面が離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレート系フィルム)上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層A」と称する)
【0113】
<視認側粘着剤層(第二粘着剤層)の形成>
(ベースポリマーの調製)
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート(BA)とメチルメタクリレート(MMA)のブロック共重合体(BA/MMA=2/1、重量平均分子量10万)が用いられた。(以下、このベースポリマーを「ポリマー1」と称する)
【0114】
(粘着剤組成物の調製)
上記のポリマー1を80重量部、および可塑剤を20重量部、120重量部のトルエンに溶解して、粘着剤組成物(溶液)を調製した。可塑剤としては、重量分子量約3000のアクリルオリゴマー(東亜合成(株)製「ARUFON UP−1000」)が用いられた。
【0115】
(粘着剤層の形成)
セパレータ上に、上記の粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが150μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して、粘着剤層を得た。(以下、この粘着剤層を「粘着剤層B1」と称する)
【0116】
<両面粘着剤付き光学フィルムの作製>
上記偏光板の一方の面にセル側粘着剤層として上記の粘着剤層Aを貼り合せた。その後、偏光板の他方の面に視認側粘着剤層として上記の粘着剤層B1を貼り合せた後、セパレータを剥離し、その上に粘着剤層B1を貼り合せて、粘着剤層B1が2層(合計厚み300μm)の粘着剤層とした。
【0117】
このようにして、偏光板(光学フィルム)の一方の面に、厚み20μmの粘着剤層、他方の面に、厚み300μmの粘着剤層が貼り合せられ、各粘着剤層上にセパレータが剥離可能に貼着された両面粘着剤付き光学フィルムを得た。
【0118】
<カッティング>
上記の両面粘着剤付き光学フィルムを、48mm×98mmのサイズにトムソン刃で打ち抜いた。同一サイズに打ち抜かれた両面粘着剤付き光学フィルムを50枚積み重ね、その上下から万力状の治具にてフィルムを保持し、光学フィルムの端面から粘着剤層がはみ出るように加圧した。この状態で、光学フィルムの端面から0.5mm内側を、回転刃を用いて光学フィルムおよびセパレータと共に粘着剤層ごと切削した。その後、上記圧力を解放し、製品サイズにカットされた両面粘着剤付き偏光板を得た。
【0119】
<評価用疑似画像表示装置の作製>
両面粘着剤付き偏光板の一方の面(粘着剤層A側)に平坦なガラス板(0.7mm×50mm×100mm)が貼り合せられ、他方の面(粘着剤層B側)には、黒色インク(厚み10μm)が周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm×50mm×100mm、インク印刷幅:端部から10mm)が貼り合せられ、評価用疑似画像表示装置が作製された。
【0120】
まず、両面粘着剤付き偏光板の粘着剤層A側のセパレータを剥離した後、平坦なガラス板の一面に、粘着剤層がガラス面に接するように載置して貼り合せた。その後、粘着剤層B側の離型フィルムを剥離し、印刷されたガラス板の印刷面と粘着剤層が接するよう載置した後、真空熱圧着装置で熱圧着して貼り合せを行った(温度80℃、圧力0.1MPa、圧力保持時間5秒)。その後、オートクレーブ処理を行った(50℃、0.5MPa、30分)。
【0121】
[実施例2,3]
視認側の粘着剤層Bとして、表1に示す組成の粘着剤組成物(溶液)を調製した。粘着付与剤として、実施例2ではスチレンオリゴマー(ヤスハラケミカル(株)製「YSレジン SX−85」、軟化点85℃)が用いられ、実施例3では核水添テルペンフェノール(ヤスハラケミカル(株)製 「YSポリスターNH」、軟化点130℃)が用いられた。なお、実施例2,3の粘着剤は、光重合性のアクリル系モノマーとしてフェニルグリシジルエーテルアクリレート(第一工業製薬(株)製 「ニューフロンティア PGA」)、光ラジカル発生剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカルズ製 「イルガキュア184」)を含有する光硬化性粘着剤である。
【0122】
視認側の粘着剤層Bとして、表1に示す組成および厚みを有する光硬化性の粘着剤層が用いられたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板が作製され、実施例1と同様にカッティングおよびガラス板との貼り合せが行われた。
【0123】
[実施例4〜6]
(ベースポリマーの調製)
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)75重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)25重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、70℃にフラスコを加熱し、5時間反応させて重量平均分子量(Mw)70万のアクリル系ポリマーを得た(以下、このベースポリマーを「ポリマー2」と称する)。
【0124】
<両面粘着剤付き光学フィルムの作製および評価用疑似画像表示装置の作製>
上記ポリマー2を用いて、表1に示す組成の粘着剤組成物(溶液)が調製された。粘着剤層Bとして、表1に示す組成および厚みを有する粘着剤層が用いられたこと以外は実施例1と同様にして両面粘着剤付き偏光板が作製された。なお、実施例4においては、粘着剤溶液をセパレータ上に塗布し、乾燥した後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った。
【0125】
その後、実施例1と同様に、両面粘着剤付き光学フィルムのカッティングおよびガラス板との貼り合せが行われた。
【0126】
[実施例2a,3a,5aおよび6a]
それぞれ、上記実施例2,3,5および6と同様の両面粘着剤付き光学フィルムを用いて、カッティングおよびガラス板との貼り合せを行った。オートクレーブ処理後に、視認側のガラス板を介して、高圧水銀ランプ(10mW/cm)で紫外線を照射し、光硬化性粘着剤の硬化を行った(積算光量:3000mJ/cm)。
【0127】
[実施例7〜14]
上記実施例1において、表1に示すように、粘着剤B1に粘着付与剤が添加され、粘着剤層の厚みが変更された。それ以外は実施例1と同様にして、両面粘着剤付き偏光板が作製され、カッティングおよびガラス板との貼り合せが行われた。実施例11では、粘着付与剤として、スチレンオリゴマー(ヤスハラケミカル(株)製「YSレジン SX−100」、軟化点100℃)が用いられ、実施例12では、水素化ロジンエステル(荒川化学工業(株)製 「パインクリスタル KE−311」、軟化点95℃)が用いられた。
【0128】
[比較例1]
上記実施例1において、視認側の粘着剤層B1の厚みが20μm(1層のみ)に変更された。それ以外は実施例1と同様にして、両面粘着剤付きフィルムの作製、および評価用疑似画像表示装置の作製が行われた。
【0129】
[比較例2]
上記比較例1において、カッティングの際に、トムソン刃による打ち抜きのみが行われ、回転刃による切削が行われなかった。それ以外は比較例1と同様にして、両面粘着剤付きフィルムの作製、および評価用疑似画像表示装置の作製が行われた。
【0130】
[比較例3]
偏光板の一方の面に粘着剤層Aが貼り合せられ、他方の面に粘着剤を有していない片面粘着剤付きフィルムを作製した。この片面粘着剤付き光学フィルムをトムソン刃により打ち抜き、粘着剤層上のセパレータを剥離した後、平坦なガラス板の一面に、粘着剤層がガラス面に接するように載置して貼り合せた。
【0131】
実施例1と同様にして、セパレータ上に厚み150μmの粘着剤層B1を形成し、このセパレータ付き粘着剤層2枚を粘着剤層形成面同士で貼り合せて、厚み300μmの粘着剤層の両面にセパレータが仮着された粘着剤層を形成した。
【0132】
この粘着剤層の一方の面のセパレータを剥離し、ガラス板上に貼り合せられた偏光板上に貼り合せ、その後粘着剤層の他方の面のセパレータを剥離した。その後は、実施例1と同様にして、真空熱圧着およびオートクレーブ処理により、印刷されたガラス板の印刷面と粘着剤層との貼り合せを行った。
【0133】
[比較例4]
(液状接着剤の調製)
表1に示すように、粘着付与剤70重量部(核水添テルペンフェノール40重量部、およびアクリルオリゴマー30重量部)とアクリル系モノマー(フェニルグリシジルエーテルアクリレート)30重量部をフラスコ中100℃で2時間加熱撹拌溶解した後、50℃まで冷却した。冷却後の溶液に、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)5重量部を加え、50℃で2時間加熱撹拌溶解した後冷却した。その後、真空(700Pa)で1時間脱気し、ベースポリマーを含まないUV硬化型液状接着剤組成物(溶液)を調整した。
【0134】
<評価用疑似画像表示装置の作製>
上記比較例3と同様に、片面粘着剤付き光学フィルムと平坦なガラス板との貼り合せまでを行った。その後、ガラス板上に貼り合せられた偏光板上に、上記のUV硬化型液状接着剤溶液を適量塗布し、印刷されたガラス板の印刷面と液状接着剤が接するよう載置した。その後、両者を真空貼り合せ装置(温度25℃、圧力0.003MPa、圧力保持時間5秒)で貼り合せた後、視認側のガラス板を介して、高圧水銀ランプ(10mW/cm)で紫外線を照射し、接着剤の硬化を行った(積算光量:6000mJ/cm)。
【0135】
[評価]
<粘着剤付き光学フィルムの端面(側面)の評価>
疑似画像表示装置の側面を観察したところ、比較例3および比較例4では、層間充填のために付設された接着剤(粘着剤)が積層体の端面からはみ出していた。
【0136】
(端面の粘着感)
粘着剤付き光学フィルムの側面を手で触れて、粘着感の有無を確認したところ、各実施例および比較例1では、粘着感が無かったが、比較例2では粘着感があった(比較例3,4は未評価)。
【0137】
各粘着剤付き光学フィルムの端面付近をデジタルマイクロスコープで観察し、偏光板の側面から粘着剤層B(視認側粘着剤)の端部までの距離(最長部分)Wを測定した。表1に示すように、加圧状態で端面が切削された各実施例および比較例1では、粘着剤層が光学フィルムの端面よりも内側にあるため、粘着感がなかったものと考えられる。また、距離Wは、粘着剤層の厚みや、貯蔵弾性率と一定の相関関係を有することがわかる。
【0138】
(端面の糊欠け評価)
粘着剤付き光学フィルム50枚を積み重ねて梱包し、トラックの荷台に保持した状態で約10時間輸送した後開封した。各実施例および比較例1では糊欠けを生じたものはなかったが、比較例2では50枚中8枚の光学フィルムにおい、350μm以上の糊欠けが発生していた。(比較例3,4は未評価)。
【0139】
<粘着剤層の貯蔵弾性率>
各実施例および比較例の粘着剤層(光学フィルムとの貼り合せ前のもの)からセパレータを剥離し、複数の粘着剤層を積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用サンプルとした。Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、サンプルの25℃における貯蔵弾性率G’25℃および80℃における貯蔵弾性率G’80℃を読み取った。同様の測定方法により、実施例2a,3a,5aおよび6aの硬化後の粘着剤層についても貯蔵弾性率を測定した。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:−50〜150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0140】
<気泡>
評価用疑似画像表示装置の黒色インク印刷部の内側近傍を倍率20倍のデジタルマイクロスコープで観察し、粘着剤層中の気泡の有無を確認した。また、85℃のオーブンに48時間投入後、同様の方法で気泡の有無を確認した。
【0141】
[評価結果]
上記各実施例および比較例の視認側の粘着剤層の組成および評価結果の一覧を表1に示す。なお、表1では、各粘着付与剤の軟化点が併せて示されている。
【0142】
【表1-1】
【0143】
【表1-2】
【0144】
比較例1,2では、粘着剤層B(第二粘着剤層)の厚みが小さいため、前面透明板のインク印刷部を起点とする気泡の混入が確認された。また、比較例3,4では、貼り合わせ工程が煩雑となることに加えて、端部からの接着剤のはみ出しが生じていた。
【0145】
これに対して、本発明の両面粘着剤付き光学フィルムを用いた各実施例では、前面透明部材の貼り合せを簡便な工程で行うことができると共に、前面透明部材としてインク印刷部を有するガラス板が用いられた場合でも、気泡の混入がなく、良好な貼り合わせを行うことができた。
【0146】
実施例1,実施例7〜14の対比から、粘着剤中に粘着付与剤が添加されることで、室温での貯蔵弾性率が適宜に調整されると共に、貯蔵弾性率に種々の温度依存性を付与できることがわかる。
【0147】
実施例2と実施例2aとの対比から、貼り合わせの後に硬化性粘着剤の光硬化が行われることにより、表示装置が加熱環境に暴露された場合の気泡(ディレイバブル)の発生が抑制されることがわかる。このように、層間充填材として硬化型の粘着剤を用いることによって、貼り合せ時は貯蔵弾性率が相対的に小さいために接着性や貼り合せ作業性が高められ、その後の硬化によって弾性率が高められるために、接着の長期信頼性を実現できることがわかる。
【符号の説明】
【0148】
10 :光学フィルム
11 :偏光板
13,14:光学フィルム
21,22:粘着剤層
31,32:保護シート
50 :両面粘着剤付き光学フィルム
60 :画像表示セル
70 :前面透明部材(タッチパネルまたは前面透明板)
100 :画像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5