特許第6275959号(P6275959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275959
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】装置冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   F25B1/00 399Y
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-108091(P2013-108091)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228194(P2014-228194A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中田 達也
(72)【発明者】
【氏名】関口 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】吉井 存
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−193244(JP,A)
【文献】 特開2013−008888(JP,A)
【文献】 特開2009−194093(JP,A)
【文献】 特開平01−247966(JP,A)
【文献】 特開2008−121985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
H05K 7/18,7/20
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区画内に配置された演算装置の冷却に用いる液冷冷媒を循環させる循環回路および前記演算装置と前記液冷冷媒とを熱的に接触させる液冷熱交換部を少なくとも有する複数の液冷式冷却装置と、
前記循環回路を循環する前記液冷冷媒の一部を分岐させる分配部と、
複数の前記循環回路から分岐された前記液冷冷媒の冷却に用いる補助冷媒を供給する補助冷却装置と、
複数の前記循環回路から分岐された前記液冷冷媒と前記補助冷媒との間で熱交換を行い、前記液冷冷媒を冷却する中間熱交換部と、
前記補助冷却装置に要求される冷却処理量を算出し、前記分配部により分岐される前記液冷冷媒の流量を算出し、算出された前記液冷媒の流量および前記要求される冷却処理量に基づき前記補助冷媒の流量を制御して前記補助冷却装置の冷却能力の制御を行う制御部と、
が設けられていることを特徴とする装置冷却システム。

【請求項2】
前記制御部は、前記演算装置から発生する熱量である冷却負荷に所定の安全率を掛けた値が、前記液冷式冷却装置の冷却処理量よりも大きくなったと判定された場合には、前記補助冷却装置および前記中間熱交換部による前記液冷冷媒の冷却を開始することを特徴とする請求項1記載の装置冷却システム。
【請求項3】
前記補助冷却装置には、
前記補助冷媒を昇圧する圧縮部と、
前記補助冷媒と室外空気との間で熱交換を行う室外熱交換部と、
前記圧縮部から吐出された前記補助冷媒の流入先を前記室外熱交換部または前記中間熱交換部との間で切り替える切替え部と、
前記室外熱交換または前記中間熱交換部において放熱された前記補助冷媒を減圧させる減圧部と、
前記中間熱交換部および前記減圧部との間に配置されて、室内空気と前記補助冷媒との間で熱交換を行う補助熱交換部と、
が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICT装置(情報通信装置)の冷却に用いて好適な装置冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタ等には、収納されたICT装置を冷却する空調機が設けられている。空調機は、ICT装置が収納されたラックの近傍まで冷気を送風しており、ICT装置はその冷気を内部に取り込むことにより冷却されている。ICT装置内には、CPU(中央演算ユニット)や、電源トランス等の機器が収納されているのが一般的である。これら収納された機器から発生した熱は、直接または放熱フィン等を介して上述の冷気に放熱されている(以下、「空冷方式」と表記する。)。
【0003】
近年ではICT装置の高密度化が図られており、各機器から発生する熱量は増加する傾向にある。ICT装置を安定して稼働させるためには、各機器を所定の温度に保つ必要がある。そのため発熱量が増加すると、発生した熱を奪いICT装置の外側に運びだす冷気の風量を増加させる必要がある。しかしながら空気を介した放熱方法では、空気の熱伝達率などの物性により限界があることが知られていた。
【0004】
これに対応する技術として、ICT装置に収納されたCPU等の機器を、循環する水または冷媒で直接冷却する技術(以下、「液冷方式」と表記する。)が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。液冷方式は空気よりも熱伝達率が高いため、空冷方式よりも放熱量を増やしやすい。さらに液冷方式は、空気を介さずに熱をICT装置の外へ直接搬送できる点、冷媒の温度を高く設定できるため外気冷熱の利用が簡易になる点、および、機器から吸収して回収した熱を他の設備や空間で利用できる点といった利点を有しており、空冷方式よりも省エネルギー性が高いという特徴がある。
【0005】
液冷方式は更に、空冷方式と比較して冷媒の運用温度を高めに設定できる特徴がある。そのため液冷方式では、フリークーリングのような外気冷熱を利用するシステムを導入しやすくなり、外気利用運転時間を長く取ることができる。その結果、空冷方式と比較して通年ランニングコストを低減できるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−008888号公報
【特許文献2】特開2013−003636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の液冷方式はCPU等の発熱機器と接触する冷却部を備えるため、当該冷却部を備える冷却系統に不具合が発生した際のバックアップとして用いる予備の冷却部を配置することが難しい。言い換えると、発熱機器と接触できる空間が限られているため、冷却部を配置する他に、予備の冷却部を配置する空間を確保することが難しい。そのため、液冷方式を採用した場合、その冷却方式に不具合が発生した場合に、ICT装置の冷却を継続して高温障害の発生等を防止することが難しいという問題があった。
【0008】
フリークーリングのような外気冷熱を利用する冷却方式は上述のように通年ランニングコストを低減できる点で望ましい。しかしながら、一定の冷却能力を持続して提供することが難しいという問題があった。言い換えると、ICT装置の冷却を継続して高温障害の発生等を防止することが難しいという問題があった。
【0009】
そのため、一定の冷却能力を持続して提供することを可能とし、高温障害の発生等を防止するために、ICT装置を冷却する液媒体の回路の1つ1つに、フリークーリングとは別方式の補助冷却装置を追加することが考えられる。しかしながら、数多くの補助冷却装置を追加して備えることになるため、フリークーリングによる冷却方式のみを行う場合と比較して、設備の設置に費やされる費用であるイニシャルコストが高くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、高温障害等の不具合発生を抑制するとともに、初期投資の増大を抑制することができる装置冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の装置冷却システムは、所定区画内に配置された演算装置の冷却に用いる液冷冷媒を循環させる循環回路および前記演算装置と前記液冷冷媒とを熱的に接触させる液冷熱交換部を少なくとも有する複数の液冷式冷却装置と、前記循環回路を循環する前記液冷冷媒の一部を分岐させる分配部と、複数の前記循環回路から分岐された前記液冷冷媒の冷却に用いる補助冷媒を供給する補助冷却装置と、複数の前記循環回路から分岐された前記液冷冷媒と前記補助冷媒との間で熱交換を行い、前記液冷冷媒を冷却する中間熱交換部と、前記分配部により分岐される前記液冷冷媒の流量および前記補助冷却装置の冷却能力の制御を行う制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の装置冷却システムによれば、演算装置を直接冷却する複数の液冷式冷却装置を備えるとともに、補助冷媒を用いて液冷冷媒を冷却する補助冷却装置および中間熱交換部を備えることにより、液冷式冷却装置に不具合が発生等して演算装置に高温障害等が発生する状況となっても補助冷却装置および中間熱交換部により演算装置の冷却を継続することができる。
【0013】
液冷式冷却装置の循環回路に、分配部、補助冷却装置および中間熱交換部を追加して加えることにより演算装置の高温障害等の発生を抑制できるため、システム全体を新設する必要がなく初期投資の増大を抑制できる。さらに、複数の液冷式冷却装置に対して、一対の補助冷却装置および中間熱交換部を備えるため、液冷式冷却装置に対して補助冷却装置および中間熱交換部を一対一に備える場合と比較して、初期投資の増大を抑制できる。
【0014】
上記発明において前記制御部は、演算装置から発生する熱量である冷却負荷に所定の安全率を掛けた値が、液冷式冷却装置の冷却処理量よりも大きくなったと判定された場合には、前記補助冷却装置および前記中間熱交換部による前記液冷冷媒の冷却を開始することが好ましい。
【0015】
このように冷却負荷に安全率を掛けた値が、液冷式冷却装置の冷却処理量よりも大きくなった場合に、補助冷却装置および中間熱交換部による液冷冷媒の冷却を開始することにより、演算装置に高温障害等が発生する可能性が高い状況でのみ補助冷却装置の運転が行われる。そのため、補助冷却装置による補助が不要な場合には液冷式冷却装置のみで冷却が行われ、演算装置の冷却に要する運転コストの増大を抑制できる。
【0016】
上記発明において前記補助冷却装置には、前記補助冷媒を昇圧する圧縮部と、前記補助冷媒と室外空気との間で熱交換を行う室外熱交換部と、前記圧縮部から吐出された前記補助冷媒の流入先を前記室外熱交換部または前記中間熱交換部との間で切り替える切替え部と、前記室外熱交換器または前記中間熱交換部において放熱された前記補助冷媒を減圧させる減圧部と、前記中間熱交換部および前記減圧部との間に配置されて、室内空気と前記補助冷媒との間で熱交換を行う補助熱交換部と、が設けられていることが好ましい。
【0017】
このように補助冷却装置を構成することにより、補助冷却装置で液冷式冷却装置の冷却処理を補助するだけでなく、所定区画とは別の区画(例えば、データセンタの演算装置が配置されていない事務所部分や共用部分)の空調を行うことができる。つまり、減圧部により減圧された補助冷媒を補助熱交換部に導くことにより、別の区画の冷房を行うことができる。その一方で、圧縮部から吐出された冷媒を補助熱交換部に導くことにより、別の区画の暖房を行うことができる。
【0018】
補助熱交換部で熱交換する空気を所定区画の室内空気とする場合には、補助冷却装置は、演算装置を空気方式で冷却することもできる。つまり、補助熱交換部で冷却された室内空気は、演算装置に取り込まれて演算装置の冷却に用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の装置冷却システムによれば、演算装置を直接冷却する複数の液冷式冷却装置を備えるとともに、補助冷媒を用いて液冷冷媒を冷却する補助冷却装置および中間熱交換部を備えるため、高温障害等の不具合発生を抑制することができるという効果を奏する。さらに、液冷式冷却装置の循環回路に、分配部、補助冷却装置および中間熱交換部を追加して加えることにより演算装置の高温障害等の発生を抑制できるため、システム全体を新設する必要がなく初期投資の増大を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る装置冷却システムの概要を説明する模式図である。
図2図1の制御部の構成を説明するブロック図である。
図3図1の装置冷却システムの制御を説明するフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る装置冷却システムの要部を説明する模式図である。
図5図4の補助冷却装置の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る装置冷却システムついて図1から図3を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態では、データセンタの空調に本発明に係る装置冷却システム1を用いた例に適用して説明する。図1に示すように、データセンタにはIT(情報技術)装置やICT(情報通信技術)装置を構成する多数のサーバやコンピュータなどの演算装置70が、フロア(所定区画)F内に配置されたラック71に収納されている。装置冷却システム1は、演算装置70から発生する大量の熱を処理するために用いられる。
【0023】
装置冷却システム1には、演算装置70を冷却する複数の液冷式冷却装置10と、液冷冷媒を冷却する補助冷却装置20および中間熱交換部30と、液冷冷媒の少なくとも一部を中間熱交換部30へ導くバイパス流路(分配部)40および三方弁(分配部)41と、演算装置70、液冷式冷却装置10、補助冷却装置20および三方弁41を制御する制御部50と、が主に設けられている。
【0024】
液冷式冷却装置10は、ラック71に収納された演算装置70を液冷方式で冷却するものである。本実施形態では装置冷却システム1に3つの液冷式冷却装置10が配置されている例に適用して説明するが、液冷式冷却装置10の配置数を限定するものではない。
【0025】
液冷式冷却装置10には、液冷冷媒が内部を循環する循環回路11と、液冷冷媒を循環させる液冷ポンプ12と、演算装置70と液冷冷媒との間で熱交換を行う液冷熱交換部13と、液冷冷媒の熱をデータセンタ外に放出するクーリングユニット14と、が主に設けられている。
【0026】
クーリングユニット14は、3つの液冷式冷却装置10により共有されるものであり、データセンタの屋外に設置されるものである。クーリングユニット14には、液冷冷媒の熱を室外空気に放熱させるクーリング熱交換器15と、クーリング熱交換器15に室外空気を導くクーリングファン16と、が主に設けられている。
【0027】
補助冷却装置20および中間熱交換部30は、液冷式冷却装置10による冷却処理量が、演算装置70から発生する熱量である冷却負荷に所定の安全率を掛けた値よりも小さくなった場合に、液冷式冷却装置10による冷却を補助するものである。
【0028】
補助冷却装置20には、相変化することにより熱を吸収または放出する補助冷媒が循環する補助回路21と、補助冷媒を圧縮して昇圧させる圧縮部22と、圧縮された補助冷媒の熱を室外空気に放熱させる室外部23と、放熱された補助冷媒を減圧させる膨張弁(減圧部)24と、が主に設けられている。中間熱交換部30には、減圧された補助冷媒に液冷冷媒の熱を吸収させる中間熱交換器31が主に設けられている。
【0029】
バイパス流路40および三方弁41は、循環回路11を流れる液冷冷媒の少なくとも一部を中間熱交換部30に導くものである。バイパス流路40は、一方の端部および他方の端部が循環回路11と液冷冷媒が流通できるように接続されたものであり、さらに、中間熱交換部30において補助冷媒と熱交換可能とされた流路である。三方弁41は、循環回路11とバイパス流路40との接続部分に配置された弁であり、バイパス流路40に流入する液冷冷媒の流量を調節するものである。
【0030】
制御部50は装置冷却システム1を統合的に制御するものであり、CPU(中央演算ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、図2に示すように、CPUを演算部51として機能させるものであり、ROM等を記憶部52として機能させるものである。なお、制御部50による装置冷却システム1の詳細な制御については後述する。
【0031】
制御部50には、冷媒温度センサ61により測定されたクーリングユニット14に流入する液冷冷媒温度の測定信号、冷媒温度センサ62により測定されたクーリングユニット14から流出した液冷冷媒温度の測定信号、外気温度センサ63および湿度センサ64により測定されたクーリングユニット14の周囲の外気温や湿度などの測定信号が入力されている。また、制御部50には、表面温度センサ65により測定された演算装置70における液冷熱交換部13によって冷却される部分の表面温度の測定信号が入力されている。
【0032】
制御部50からは、液冷ポンプ12の運転状態を制御する制御信号、クーリングユニット14の運転状態を制御する制御信号、三方弁41の弁開度を制御する制御信号、補助冷却装置20の圧縮部22などを制御する制御信号、同一クラスタに属する演算装置70の間でのデータ処理分配を制御する制御信号などが出力されている。
【0033】
次に、上記の構成からなる装置冷却システム1における演算装置70の冷却について図3を参照しながら説明する。
装置冷却システム1の運転が開始されると、制御部は、同一クラスタに属するラック71に収納された演算装置70におけるデータ処理量の総量を所定の上限以下になるように制御する(S11)。ここで同一クラスタとは、同じ制御部50によってデータ処理配分が行われるグループのことであり、本実施形態では3つのラック71が同一クラスタに属している例に適用して説明する。また、所定の上限としては80%を例示することができる。
【0034】
その後、同一クラスタに属する演算装置70単体におけるデータ処理量(負荷量)は、演算装置70側の都合に任せて変動する(S12)。言い換えると、制御部50は、演算装置70に対してデータ処理配分を制御する制御信号を出力しない。
【0035】
制御部50の演算部51は、演算装置70におけるデータ処理量に基づいて、演算装置70における発熱(装置冷却システム1側から見ると冷却負荷)を推定する演算を行う(S13)。推定の演算は、所定の公知の算出式を用いることができ、特にその種類を限定するものではない。
【0036】
以下の実施形態では演算装置70におけるデータ処理量の増減が事前に検知できない例に適用して説明するため、冷却実負荷を求める演算を行っている。その一方で、データ処理量の増減が事前に検知できる場合には、冷却実負荷の代わりに推定した冷却負荷を用いて同様な処理を行ってもよく、特に限定するものではない。
【0037】
発熱量の推定が行われると演算部51は、冷却実負荷を求める演算を行う(S14)。冷却実負荷ΦICTは、表面温度センサ65から入力される表面温度、冷媒温度センサ61および冷媒温度センサ62により測定された液体冷媒の往還温度差、液体冷媒の気液状態、液体冷媒の流量などに基づいて算出される。演算部51は、算出された冷却実負荷と、推定した冷却負荷とを対比し、推定の演算に用いる算出式の補正を行う。
【0038】
また、制御部50は、冷却実負荷ΦICTが推定した冷却負荷を満たすように液冷冷媒の流量を増減させる制御をおこなう。具体的には、液冷ポンプ12の回転周波数を増減させる制御信号を出力し、液冷冷媒の流量を増減させる。
【0039】
冷却実負荷ΦICTが算出されると、演算部51は、外気温度センサ63や湿度センサ64から入力された信号に基づいて、液冷式冷却装置10による最大の冷却処理量ΦFCMAX言い換えるとフリークーリングでの最大の冷却可能な処理量を推定する処理を行う(S15)。
【0040】
その後演算部51は、次の式(1)が成立するか否かを判定する処理を行う(S16)。
ΦFCMAX<ΦICT×k …(1)
ここで、kは所定の安全率であり1以上の値を持つものである。式(1)が成立しないと判定された場合(NOの場合)には、制御部50は液冷式冷却装置10によるフリークーリングを実施する(S17)。その後、S11に戻り上述の処理を繰り返し行う。
【0041】
その一方で、式(1)が成立すると判定された場合(YESの場合)には、特定条件が成立するか否かの判定が行われる(S18)。ここで特定条件とは、演算装置70のデータ処理量を分配することにより、液冷式冷却装置10によるフリークーリングでの冷却が可能となる条件をいう。具体的には、一部の演算装置70でのデータ処理量が突出し、当該演算装置70の発熱量が膨大になる一方、残りの演算装置70のデータ処理量が少なく、この演算装置70の発熱量がほとんどない場合などを例示することができる。
【0042】
特定条件が成立すると判定された場合(YESの場合)には、制御部50は演算装置70に対してデータ処理の分配を制御する制御信号を出力する(S19)。言い換えると、演算装置70に対する成り行き制御を解除する制御が行われる。その後、S13に戻り、上述の処理が繰り返し行われる。
【0043】
特定条件が成立しないと判定された場合(NOの場合)には、制御部50は三方弁41を開く制御信号を出力するとともに、補助冷却装置20の運転を開始する制御信号を出力する(S20)。言い換えると補助サイクルの運転を開始する。
【0044】
補助冷却装置20の運転が開始されると、演算部51は補助冷却装置20に要求される冷却処理量を算出する処理を行う(S21)。算出は下記の式(2)に基づいて行われる。
a×(ΦICT−ΦFCMAX) …(2)
ここで、aは補正係数である。
【0045】
さらに演算部51は、液冷冷媒の温度、液冷冷媒の気液状態、液冷冷媒の流量を考慮しつつ、三方弁41において液冷冷媒をバイパス流路40に分岐させる量を算出する(S22)。分岐量が本丸と制御部50は、三方弁41の弁開度を制御する制御信号を出力する(S23)。
【0046】
補助冷却装置20は、三方弁41における液冷冷媒の分岐量、要求される冷却処理量に基づいてその運転が制御される(S24)。例えば、圧縮部22の回転周波数を制御することにより循環する補助冷媒の流量の制御などが行われる。
【0047】
上記の構成の装置冷却システム1によれば、演算装置70を直接冷却する複数の液冷式冷却装置10を備えるとともに、補助冷媒を用いて液冷冷媒を冷却する補助冷却装置20および中間熱交換部30を備えることにより、液冷式冷却装置10に不具合が発生等して演算装置70に高温障害等が発生する状況となっても補助冷却装置20および中間熱交換部30により演算装置の冷却を継続することができる。
【0048】
液冷式冷却装置10の循環回路11に、バイパス流路40、三方弁41、補助冷却装置20および中間熱交換部30を追加して加えることにより演算装置70の高温障害等の発生を抑制できるため、システム全体を新設する必要がなく初期投資の増大を抑制できる。さらに、複数の液冷式冷却装置10に対して、一対の補助冷却装置20および中間熱交換部30を備えるため、液冷式冷却装置10に対して補助冷却装置20および中間熱交換部30を一対一に備える場合と比較して、初期投資の増大を抑制できる。
【0049】
冷却負荷ΦICTに安全率kを掛けた値が、液冷式冷却装置10の冷却処理量ΦFCMAXよりも大きくなった場合に、補助冷却装置20および中間熱交換部30による液冷冷媒の冷却を開始することにより、演算装置70に高温障害等が発生する可能性が高い状況でのみ補助冷却装置20の運転が行われる。そのため、補助冷却装置20による補助が不要な場合には液冷式冷却装置10のみで冷却が行われ、演算装置70の冷却に要する運転コストの増大を抑制できる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る装置冷却システムついて図7および図8を参照しながら説明する。本実施形態の装置冷却システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、補助冷却装置の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7および図8を用いて補助冷却装置について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0051】
本実施形態の装置冷却システム101の補助冷却装置120は、第1の実施形態の補助冷却装置120と比較して、冷房および暖房が可能に構成されている点、データセンタの事務室や共用部などの室内空調を行う点が異なっている。
【0052】
補助冷却装置120には、図4(a)および図4(b)に示すように、相変化することにより熱を吸収または放出する補助冷媒が循環する補助回路21と、補助冷媒を圧縮して昇圧させる圧縮部22と、圧縮部22から吐出された冷媒の流出先を制御するとともに、圧縮部22に吸入される冷媒の流入先を制御する四方弁(切替え部)125と、圧縮された補助冷媒の熱を室外空気に放熱させる室外部(室外熱交換部)23と、放熱された補助冷媒を減圧させる膨張弁(減圧部)24と、補助冷媒と事務室等の室内空気との間で熱交換を行う補助熱交換部126と、が主に設けられている。
【0053】
四方弁125は、圧縮部22から吐出された補助冷媒を室外部23に導くとともに、中間熱交換部30から流出した補助冷媒を圧縮部22に導く場合(図4(a)に示す場合)と、圧縮部22から吐出された冷媒を中間熱交換部30に導くとともに、室外部23から流出した補助冷媒を圧縮部22に導く場合(図4(b)に示す場合)とに、切替え可能なものである。
【0054】
制御部50は、図5に示すフローチャートに従い、補助冷却装置120の運転状態の制御を行う。まず制御部50は、補助冷却装置120の運転要求があるか否かを判定する(S31)。この運転要求は、第1の実施形態で説明したように液冷冷却装置10を補助するために運転要求である。
【0055】
運転要求があった場合(YESの場合)には、制御部50は補助冷却装置120による冷房運転を開始する制御を行う(S32)。具体的には、四方弁125を図4(a)に示す状態に制御するとともに、圧縮部22の運転を開始する制御を行う。
【0056】
これにより、圧縮部22から吐出された補助冷媒は、室外部23に流入して熱を室外空気に放出し凝縮する。凝縮した液冷媒は、膨張弁24により減圧され、補助熱交換部126に流入する。補助熱交換部126では事務所等の室内空気の熱を補助冷媒の一部が吸収して気化する。その後、さらに補助冷媒は中間熱交換部30に流入し液冷冷媒の熱を吸収して残りの液冷媒も気化する。気化した冷媒は、圧縮部22に吸入され上述のサイクルを繰り返す。
【0057】
運転要求がなかった場合(NOの場合)には、制御部50は更に暖房運転の要求があるか否かの判定を行う(S33)。暖房運転の要求があった場合(YESの場合)には、制御部50は補助冷却装置120による暖房運転を開始する制御を行う(S32)。具体的には、四方弁125を図4(b)に示す状態に制御するとともに、圧縮部22の運転を開始する制御を行う。
【0058】
これにより、圧縮部22から吐出された補助冷媒は、中間熱交換部30を介して補助熱交換部126に流入する。補助熱交換部126では、補助冷媒は事務所等の室内空気に熱を放出して凝縮する。言い換えると室内空気は暖められる。凝縮した液冷媒は膨張弁24により減圧されて室外部23に流入する。室外部において補助冷媒は室外空気の熱を吸収して気化する。気化した補助冷媒は圧縮部22に吸入され上述のサイクルを繰り返す。
【0059】
暖房運転の要求がなかった場合(NOの場合)には、制御部50は補助冷却装置120の運転を停止する制御信号を出力する(S35)。その後S31に戻り、上述の処理を繰り返し行う。
【0060】
上記の構成の装置冷却システム101によれば、上述のように補助冷却装置120を構成することにより、補助冷却装置120で液冷式冷却装置10の冷却処理を補助するだけでなく、フロアFとは別のデータセンタの演算装置が配置されていない事務所部分や共用部分の空調を行うことができる。つまり、膨張弁24により減圧された補助冷媒を補助熱交換部126に導くことにより、事務所等の冷房を行うことができる。その一方で、圧縮部22から吐出された補助冷媒を補助熱交換部126に導くことにより、事務所等の暖房を行うことができる。
【0061】
補助冷却装置120で液冷式冷却装置10の冷却処理を補助するのは、外気温度が高い夏季が中心となる。それ以外の中間期や冬季は、上述の冷却処理補助の要求は少ない。この時期、補助冷却装置120を遊ばせることなく、事務所等の暖房に活用することにより、データセンタ全体としての空調に関する投資額を抑制することができる。
【0062】
また、上述の実施形態のように補助冷却装置120で事務所等の空調を行うのではなく、フロアFの空調を行ってもよい。この場合、補助冷却装置120は液冷式冷却装置10の冷却処理を補助するだけでなく、フロアFの室内空気を介して演算装置70を冷却する(空冷方式の)空冷空調装置の冷却処理を補助することもできる。
【0063】
具体的には、補助冷却装置120により冷却された室内空気は、演算装置70に設けられたファンにより演算装置70内に導入される。導入された空気は、発熱する電子部品を冷却した後、演算装置70から排出され、再び補助冷却装置120により冷却される。
【0064】
また、フロアFに液冷方式の冷却を行う区画が存在する場合があるが、補助冷却装置120はこの液冷方式の冷却を行う区画の空調を行うこともできる。
なお、上述のように、補助冷却装置120でフロアFの空調を行う場合には、室内空気の冷却を行う運転が中心となる。この場合、補助冷却装置120に四方弁125を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,101…装置冷却システム、10…液冷式冷却装置、11…循環回路、13…液冷熱交換部、20,120…補助冷却装置、22…圧縮部、24…膨張弁(減圧部)、23…室外部(室外熱交換部)、30…中間熱交換部、40…バイパス流路(分配部)、41…三方弁(分配部)、50…制御部、70…演算装置、125…四方弁(切替え部)、126…補助熱交換部、F…フロア(所定区画)
図1
図2
図3
図4
図5