(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光波長変換部材は、前記発光素子と前記光透過部材との光路の途中において、光が入射する領域が変化するように所定の範囲で移動できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
(照明装置)
はじめに、照明装置の概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る照明装置の概略構成を示す断面図である。
【0020】
本実施の形態に係る照明装置100は、テレビスタジオ等の照明に用いられるスポットライトやフラッドライト、キャスターライト等として用いられる。
図1に示す照明装置100は、少なくとも1個以上の半導体発光素子を有する発光モジュール102と、発光モジュール102が出射した光を前方へ透過させる光透過部材104と、発光モジュール102が発する熱を放熱する放熱機構106と、発光モジュール102および光透過部材104を収容する筐体108と、を備える。照明装置100をテレビスタジオ等でスポットライトとして用いる場合は、出射光束が、5000〜30000ルーメンの発光モジュール102によって3000ルーメン以上の照射光を実現できる。
【0021】
(筐体)
筐体108は、断面が多角形または円形の筒状の部材であり、熱伝導性が良好で軽量な材質、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、銅、ステンレス、銀、ニッケルなどの金属材料や、熱伝導率の良い充填材を混合した高熱伝導性プラスチック材料、例えば、ポリアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリアセタールコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PSU(ポリスルホン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAI(ポリアミドイミド)、PAR(ポリアリレート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEK(ポリエーテルケトン)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ADC樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、などで構成されている。
【0022】
熱伝導率の良い充填材は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、銅、ステンレス、銀、ニッケルなどの金属粉や金属繊維、またはこれら金属をメッキや蒸着などで製膜した粒子、Al
2O
3、MgO、BN、AlN、SiC、TiO
2、YAG、Cなどの粉体や繊維、などである。
【0023】
また、筐体108は、光透過部材104を透過した光が通過する前側開口108aと、放熱機構106からの熱を外部へ放出するための放熱開口108bとが形成されている。なお、放熱機構106からの熱をより効率的に外部に放出するため、放熱機構106が筐体108に収まらない構成、または、通風性の高いメッシュで囲まれた構成をとってもよい。
【0024】
また、前側開口108aの各辺には、バンドア110が設けられている。バンドア110は、開閉角度を調節することにより、照明装置100の照射範囲を設定することができる。バンドア110の内面110aは、光の反射率が高い鏡面や白色面で形成してもよい。これにより、バンドア110の内面110aで反射された光も照射光として利用できるため、より明るい照射光量を実現できる。効率が向上し、照射光として利用できる光を増加させることができる。また、光の照射範囲を制御するためには内面110aを黒色など光の反射率を抑えた面で形成してもよい。あるいは、照明装置100は、バンドア110を設けない構成であってもよい。
【0025】
筐体108は、その内面に反射部(鏡面や白色部)が形成されていてもよい。これにより、発光モジュール102から出射した光のうち、光透過部材104に直接向かわずに筐体108の内面で吸収されていた光が内面で反射されることで照射光として利用できる。そのため、照明装置100における光源の利用効率が向上し、より明るい照明装置を実現する、あるいは同じ明るさの照射光を低消費電力で実現できる。
【0026】
(光透過部材)
図2は、本実施の形態に係る照明装置に用いられる光透過部材の断面図である。
図2に示す光透過部材104は、のこぎり状の断面を有するフレネルレンズである。また、光透過部材104は、発光モジュール102との相対位置が変化するように、筐体108に対してスライドするように設けられている。
【0027】
(放熱機構)
放熱機構106は、発光モジュール102が発した熱を吸収し、外部へ効率よく排出できるように構成されている。放熱機構106としては、ヒートシンクや放熱ファン等が挙げられる。また、ヒートシンクや放熱ファンに加えて、あるいは替えて、発光モジュール102が直接搭載される搭載部にペルチェ素子やヒートパイプを設けてもよい。より好ましくは、ペルチェ素子と、少なくとも一部がCuからなる大型ヒートシンクと、大型の放熱ファンとを組み合わせた放熱機構であってもよい。効率の良い放熱機構とすることで、発光モジュールの温度が下がり、発光モジュールの発光効率が高まるので、消費電力を抑えることができる。また、放熱機構の小型化が可能となる。
【0028】
また、放熱機構106として水冷ユニットを取り付けてもよい。これにより、大型のヒートシンクを採用する場合と比較して小型・軽量化が図られる。また、放熱機構106の各部材の放熱部に放熱塗料を塗布してもよい。これにより、単位面積当たりの放熱性が高まり、例えば、ヒートシンクを小型・軽量化できる。
【0029】
(発光モジュール)
次に、発光モジュールについて説明する。例えば、照明装置で採用されているLEDモジュールの白色化方式が青色LEDとYAG黄色蛍光体との組合せの場合、青色LEDから青色光が鉛直方向に出射されるが、それに対し青色光を吸収した蛍光体は、ランバーシアンに発光する。
図3は、青色LEDとYAG黄色蛍光体とで構成された発光モジュールの発光モデルを模式的に示した図である。
図3に示す発光モジュール(以下、比較例に係る発光モジュールと称する場合がある。)のように、ドーム直上は青白い光が、ドームの外周付近は黄色光が出射され、照射方向によって発光色が変動する。
【0030】
図4は、本実施の形態に係る発光モジュールの発光モデルを模式的に示した図である。
図4に示す発光モジュール102は、半導体発光素子112と、複数の半導体発光素子112が搭載される素子搭載用基板114と、光波長変換部材22と、を有する。光波長変換部材22は、配列された複数の半導体発光素子112のそれぞれの発光面から離間した位置に一体的に配置されている。また、光波長変換部材22は、黄色蛍光体116および青色蛍光体118と、黄色蛍光体116および青色蛍光体118が適量分散された封止部材120と、を有する。光波長変換部材22は、板状に形成されている。なお、光波長変換部材22は、
図4に示す板状に限定されず、円柱状、直方体形状、ピラミッド形状、コーン状、レンズ状等の他の形状であってもよい。
図4に示すように、本実施の形態に係る発光モジュールの白色化方式では、半導体発光素子112であるnUV−LEDから出射された紫外線又は短波長可視光は、ほとんど蛍光体に吸収され、第1の蛍光体(黄色蛍光体116)、第2の蛍光体(青色蛍光体118)においてランバーシアンな発光をする。そのため、ドーム直上とドームの外周付近とで青色光と黄色光との比率がほとんど変わらず、照射方向によって発光色が変動しない。
【0031】
図5(a)は、
図3に示す発光モジュールの発光スペクトルの模式図、
図5(b)は、
図4に示す発光モジュールの発光スペクトルの模式図である。
図5(a)に示すように、青色LEDとYAG黄色蛍光体で構成された発光モジュールは、450nm近傍の青色光をLED自体の色で実現しており、その領域の発光スペクトルが非常にシャープとなる。周辺視においては、青色光に対する感受性が高いため、このような発光モジュールをスタジオ照明の光源に用いると、照射された人が不快なまぶしさを感じてしまう。
【0032】
しかしながら、本実施の形態に係る発光モジュールは、
図5(b)に示すように、450nm近傍の青色光を青色蛍光体のランバーシアンな発光で実現しており、その領域の発光スペクトルはブロードになっている。そのため、前述のような不快なまぶしさが低減される。
【0033】
また、黒文字で書かれた原稿などを読む場合、背景が白い(無彩色)ときよりもクリーム色(有彩色)のときの方が読みやすいと言われている。このような観点では、
図5(b)に示す発光モジュールのように、
図5(a)に示す発光モジュールと比較して、ある程度以上の相対強度を有する波長域が広い照射光が好ましい。この場合、演色性も高くなるため、照射光によって照らされた人の肌もきれいに見える。そこで、このような発光モジュールを用いた照明装置を、キャスターやアナウンサーが座る机に設置し、顔を照射するように配置してもよい。
【0034】
以下に、本実施の形態に係る発光モジュールが備える半導体発光素子や蛍光体等の各部材について詳述する。
【0035】
[半導体発光素子]
半導体発光素子112は、例えば、紫外線や短波長可視光を発するLEDチップである。例えば、ピーク波長が380〜480nmのLEDチップ等が挙げられる。好ましくは、ピーク波長が380〜430nmの紫色LEDチップがよい。紫外線や短波長可視光を発する発光素子であれば、LED以外であってもよく、LD素子やEL素子であってもよい。また、発光モジュール102に用いる半導体発光素子112は、光量や照射範囲を考慮して複数であってもよい。
【0036】
[蛍光体の組合せ]
例えば、半導体発光素子112が紫色LEDチップの場合、基本的には、黄色蛍光体と青色蛍光体とを組み合わせるが、照射光に必要な色温度や演色性を考慮して、適宜赤色や緑色の蛍光体を組み合せてもよい。各色の蛍光体は、全て封止部材120に分散させてもよい。あるいは、赤色および緑色の蛍光体を半導体発光素子112の近くに配置し、黄色蛍光体116および青色蛍光体118を封止部材120に分散させてもよい。なお、半導体発光素子112として青色LEDチップを用いる場合、青色蛍光体を用いない、あるいは、青色蛍光体の量を相対的に少なくしてもよい。更に、青色以外の蛍光体をチップから近い位置に配置し、青色蛍光体を最上部に配置すると非点灯時の見栄えが良くなる。
【0037】
[封止部材]
封止部材120は、光を透過させる透明な部材であり、例えば、ジメチルシリコーン系の樹脂が用いられる。これ以外には、フェニルシリコーン・アクリルシリコーン等のシリコーン系、ゾルゲル(シリカ、チタニア等)系、エポキシ系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、PET(ポリエチレンテレフタレート)系、フッ素ポリマー系、メラミン系、PVB(ポリビニルブチラール)系、ガラス系(ホウケイ酸系、アルミノシリケート系、ソーダボロシリケート系等)等を封止部材120として用いてもよい。また、蛍光体を含有する封止部材の厚みは、0.01〜30mm程度が好ましい。また、封止部材120に分散される蛍光体濃度は、0.1〜20vol%程度が好ましい。
【0038】
封止部材120の形成方法として、塗布(ディスペンサ塗布等)、射出成型、注型、トランスファ成型等の型を用いた成型、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、インクジェット法等の印刷法が挙げられる。
【0039】
[素子搭載用基板]
素子搭載用基板114としては、金属基板(アルミ基板、銅基板等)、セラミック基板(アルミナ、窒化アルミ等)、樹脂基板(ガラスエポキシ基板等)、リードフレーム、樹脂枠と一体となったリードフレーム、フレキシブル基板(FPC)等が挙げられる。基板は、熱伝導性、電気絶縁性、価格等を考慮して選定される。
【0040】
[黄色蛍光体]
黄色蛍光体としては、紫外光(紫外線)または短波長可視光で励起され発光する以下の蛍光体が挙げられる。
(1)(Ca
1−x−y−z−w、Sr
x、M
IIy、Eu
z、M
Rw)
7(SiO
3)
6X
2(M
IIは、Mg、BaおよびZnのうち少なくとも一種の元素を含み、M
Rは、希土類元素およびMnのうち少なくとも一種の元素を含み、Xは、ClまたはClを必須とする複数のハロゲン元素を含む。また、x、y、z、wは、0.1<x<0.7、0≦y<0.3、0<z<0.4、0≦w<0.1を満たす。)
(2)CsM
11−aP
2O
7:Eu
2+a(M
1は、CaおよびSrの少なくとも一種の元素を含み、aは0.001≦a≦0.5の範囲である。)
(3)Ba
2−aMgSi
2O
7:Eu
2+a(aは0.001≦a≦0.5の範囲である。)
ここで、(1)の黄色蛍光体は、青色光を余り吸収しない、つまり青色蛍光体が発する光の再吸収が少ないことから、蛍光体を含有する樹脂層の厚さが変動しても発光色は変わりにくい。その結果、発光色の色度分布のばらつきを抑制できる。なお、本願発明の趣旨に添っていれば、上述の黄色蛍光体以外であってもよい。
【0041】
[青色蛍光体]
青色蛍光体としては、紫外光(紫外線)または短波長可視光で励起され発光する以下の蛍光体が挙げられる。
(1)M
1a(M
2O
4)
bX
c:Re
d(M
1は、Ca、Sr、Baのうち一種以上の元素を必須とし、一部をMg、Zn、Cd、K、Ag、Tlからなる群の元素に置き換えることができる。M
2は、Pを必須とし、一部をV、Si、As、Mn、Co、Cr、Mo、W、Bからなる群の元素に置き換えることができる。Xは少なくとも1種のハロゲン元素、Reは、Eu
2+必須とする少なくとも1種の希土類元素又はMnを示す。aは4.2≦a≦5.8、bは2.5≦b≦3.5、cは0.8<c<1.4、dは0.01<d<0.1の範囲である。)
(2)M
11−aMgAl
10O
17:Eu
2+a(M
1は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、aは0.001≦a≦0.5の範囲である。)
(3)M
11−aMgSi
2O
8:Eu
2+a(M
1は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、aは0.001≦a≦0.8の範囲である。)
(4)M
12−a(B
5O
9)X:Re
a(M
1は、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、Reは、Eu
2+必須とする少なくとも1種の希土類元素又はMnを示す。aは0.001≦a≦0.5の範囲である。)
なお、本願発明の趣旨に添っていれば、上述の青色蛍光体以外であってもよい。
【0042】
[赤色蛍光体]
赤色蛍光体としては、紫外光(紫外線)または短波長可視光で励起され発光する以下の蛍光体が挙げられる。
(1)Y
2O
2S:Eu
(2)La
2O
2S:Eu
(3)(Sr,Ca)S:Eu
(4)CaS:Eu
(5)Ba
2Zn
3:Mn
(6)CaAlSiN
3:Eu
(7)Sr
0.95Ca
0.95Eu
0.1SiO
4
(8)Na
3(Y
1−xEu
x)Si
2O
7
(9)Ca
2SiS
4:Eu
(10)Eu
2SiS
4
(11)3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn
(12)M(Ga
1−xEu
x)
2O
4(MはCa、Sr、Baの少なくとも一種の元素)
なお、本願発明の趣旨に添っていれば、上述の赤色蛍光体以外であってもよい。
【0043】
[緑色蛍光体]
緑蛍光体としては、紫外光(紫外線)または短波長可視光で励起され発光する以下の蛍光体が挙げられる。
(1)(Si,Al)
6(O,N)
8:Eu(βサイアロン)
(2)(Sr
1−x−y,Ca
x)Ga
2(Sz、Se
1−z)4:Eu
2+y(0≦x<1、0<y<0.2、0<x+y≦1、0<z≦1)
(3)(Sr
1−x−y−z,Ca
x,Ba
y,Mg
z)
2SiO
4:Eu
2+w(0<x<1、0.5<y<1、0<z<1、0.03<w<0.2、0<x+y+z+w<1)
(4)Y
3(Al
1−x,Ga
x)
5O
12:Ce(0<x≦1)
(5)CaSc
2Si
3O
12:Ce
(6)CaSc
2O
4:Eu
(7)(Ba,Sr)
3Si
2O
3N:Eu
2+
(8)NaBaScSi
2O
7:Eu
2+
(9)ZnS:Cu,Al
(10)BaMgAl
10O
17:Eu,Mn
なお、本願発明の趣旨に添っていれば、上述の緑色蛍光体以外であってもよい。
【0044】
上述した本実施の形態に係る発光モジュールは、照射方向によって発光色が変動しない。よって、本実施の形態に係る発光モジュールを備えた照明装置は、照射面での色ムラが抑制された高品質な照射光を実現でき、高品質な照射光を必要とする照明器(スタジオ照明器等)には好適である。スタジオ照明等では、使用目的によりいろいろな配光パターンの照明器が必要となる。そこで、発光モジュールが備える半導体発光素子毎にレンズや反射鏡などの光学部材を設けて、使用目的に合った配光パターンを実現してもよい。
【0045】
また、比較例に係る発光モジュールの場合、複数の青色LEDチップを配列すると、色ムラによるLEDチップの粒状感が出ることがある。そのため、粒状感を低減するために、LEDチップの周辺に拡散シートを配置することがあるが、コストの増大や光の損失を招くことになる。一方、本実施の形態に係る発光モジュールは、色ムラや輝度ムラが少ないため、拡散シートを省略できる。
【0046】
次に、本実施の形態に係る照明装置に好適な発光モジュールについて詳述する。
図6は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略構成を示す図である。
【0047】
発光モジュール20は、素子搭載用基板114上に複数の半導体発光素子112が金バンプ128を介してフリップチップ実装されている。また、発光モジュール20は、第1の蛍光体としての黄色蛍光体116および第2の蛍光体としての青色蛍光体118が樹脂に分散された光波長変換部材22を有する。
【0048】
黄色蛍光体116は、半導体発光素子112が発する光で励起され、可視光に含まれる第1の波長域の光を発する。また、青色蛍光体118は、半導体発光素子112が発する光で励起され、第1の波長域と異なる、可視光に含まれる第2の波長域の光を発する。そして、補色の関係にある黄色光と青色光との混色により白色光が実現される。光波長変換部材22は、配列された複数の半導体発光素子112のそれぞれの発光面112aから離間した位置に一体的に配置されている。光波長変換部材22は、各種蛍光体を樹脂やガラスに分散させたものや、単結晶や透光性セラミックが好適である。また、光波長変換部材22は、板状やシート状のものであってもよい。
【0049】
このように、発光モジュール20においては、紫外線または短波長可視光を発する半導体発光素子112が発する光の波長域が可視光領域に余り含まれていないため、黄色蛍光体116が発する第1の波長域の光と青色蛍光体118が発する第2の波長域の光との混色により照明光を実現することで、照射方向によって生ずる色ムラを低減できる。
【0050】
また、複数の半導体発光素子112から出射した光は光波長変換部材22に入射するまでにある程度広がることになる。そのため、光波長変換部材22の入射面側において、半導体発光素子112の隙間Gと対向する領域Rにも半導体発光素子112の光が照射される。そのため、光波長変換部材22に入射する励起光のムラが少なくなり、光波長変換部材22における発光が均一化される。また、光波長変換部材22と半導体発光素子112とが離間しているため、半導体発光素子112が発する紫外線や短波長可視光による光波長変換部材22の劣化が抑制される。
【0051】
本実施の形態に係る光波長変換部材22は、光透過部材104の光入射側の面に設けられている。光透過部材104は、前述のフレネルレンズ以外にも、光波長変換部材を支持するためのガラス板やプラスチック板等の透明部材であってもよい。好ましくは、光透過部材104は、光波長変換部材22の熱伝導率よりも高い材料で構成されいるとよい。これにより、光波長変換部材22で生じる熱を外部へ放出しやすくなる。熱伝導率の高い材料としては、例えば、Al
2O
3やYAG、MgO、BN,AlN、SiC、TiO
2等が挙げられる。
【0052】
また、半導体発光素子112が発する励起光は、光波長変換部材22の内部で蛍光体によって拡散光となるため、光透過部材104自体に光を拡散させるための機能を持たせなくてもよい。つまり、光透過部材104表面のシボ加工や、拡散板(拡散フィルム)の追加が必要ない。
【0053】
なお、光波長変換部材22を、光透過部材104の出射面側に設けてもよい。また、光波長変換部材22は、蛍光体を樹脂に分散させたものを光透過部材104の入射面や出射面に塗布して形成してもよい。光波長変換部材22は、第一の波長領域と第二の波長領域の複数の層に形成してもよい。この構成により、変換した光を再吸収することが抑制され、光取り出し効率が向上する。
【0054】
また、
図6で示した半導体発光素子112は、フリップチップ実装されたものであるが、表面実装タイプの発光モジュール(パッケージ)であってもよい。表面実装タイプの発光モジュール(パッケージ)は、例えば、白樹脂の凹部にチップを配置し、凹部の内面を反射部としたものである。これにより、発光素子から出射した光をより前方へ集光できる。
【0055】
図7は、本実施の形態の他の実施例に係る発光モジュールの概略構成を示す図である。
図7に示す発光モジュール30は、素子搭載用基板114上に複数の半導体発光素子112が金バンプ128を介してフリップチップ実装されている。また、発光モジュール30は、第1の蛍光体としての黄色蛍光体116および第2の蛍光体としての青色蛍光体118が樹脂に分散された光波長変換部材22を有する。
【0056】
光波長変換部材22は、配列された複数の半導体発光素子112のそれぞれの発光面112aから離間した位置に一体的に配置されている。また、半導体発光素子112と光波長変換部材22との間には、半導体発光素子112から出射する光を光波長変換部材22に向けて集光する光学部材24としての凸レンズと、光波長変換部材22が設けられる透明部材26と、が配置されている。これにより、光波長変換部材22を小型化できる。
【0057】
透明部材26は、光波長変換部材22の熱伝導率よりも高い材料で構成されている。これにより、光波長変換部材22で生じる熱を外部へ放出しやすくなる。透明部材26は、光波長変換部材22よりも大きな面積にすることにより放熱で有利になる。また、素子搭載用基板114上には、半導体発光素子112を囲むように反射部28が形成されている。これにより、半導体発光素子112から側方に出射した光も前方へ向けて反射できる。
【0058】
図8は、本実施の形態の他の実施例に係る発光モジュールの概略構成を示す図である。
図8に示す発光モジュール40は、鏡面基板32上に配置された光波長変換部材22と、光波長変換部材22と光透過部材104との光路の両側に配置された複数の半導体発光素子112と、半導体発光素子112が出射した光の一部を光波長変換部材22に向けて反射する反射部材34と、を備えている。半導体発光素子112および反射部材34は、素子搭載用基板114に搭載されている。なお、鏡面基板32の代わりに白色基板を用いてもよい。
【0059】
半導体発光素子112は、光波長変換部材22に対して光透過部材104と同じ側に配置され、光波長変換部材22の発光面22aに向かって光を照射するように構成されている。これにより、半導体発光素子112から出射した励起光は、光波長変換部材22を通過しながら蛍光体を励起するのではなく、光波長変換部材22の表面近傍の蛍光体を励起することになり、蛍光体が発する光が光波長変換部材22の内部で吸収されたり他の蛍光体で散乱されたりすることが抑制される。その結果、発光効率の高い発光モジュールを実現できる。
【0060】
また、光波長変換部材22が変換したランバーシアンな光のうち鏡面基板32に向かって進む光も反射できるので、光を有効利用できる。さらに、鏡面基板32に熱伝導率の高い材料を用い、その表面に光を反射する面などを形成すると、光波長変換部材22の放熱が効率よく行われる。その結果、光波長変換部材22の温度の上昇が抑えられるので、光の変換効率が向上する。光を反射する面は、例えば表面粗さを1μm以下に平滑にした金属の他、表面にAg、Al、Au等の金属や金属化合物の薄膜をメッキや蒸着などで形成した鏡面や、屈折率の異なる誘電体薄膜を少なくとも一層以上形成した反射面がある。
【0061】
このような誘電体には、SiO
2、CaAl
2O
4、CaCO
3、TiO
2、SrTiO
3、Al
2O
3、LiF、MgF
2、Y
2O
3、MgO、MgF
2、CaF
2、As
2S
3、ZnS、NaF、BaF
2、PbF
2、CdS、ZnSe、NaI、NaCl、KCl、AgCl、TlCl、KBr、AgBr、TlBr、KI、CsBr、CsIなどが挙げられる。
【0062】
これら光を反射する面は、表面粗さを1μmより粗くして光を乱反射させてもよい。光反射面には、SiO
2、CaAl
2O
4、CaCO
3、TiO
2、SrTiO
3、Al
2O
3、LiF、MgF
2、Y
2O
3、MgO、MgF
2、CaF
2、As
2S
3、ZnS、NaF、BaF
2、PbF
2、CdS、ZnSe、NaI、NaCl、KCl、AgCl、TlCl、KBr、AgBr、TlBr、KI、CsBr、CsIなどの粒子や繊維を、熱伝導率の良い充填材を混合した高熱伝導性プラスチック材料、例えば、ポリアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリアセタールコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PSU(ポリスルホン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAI(ポリアミドイミド)、PAR(ポリアリレート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEK(ポリエーテルケトン)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ADC樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、などに分散させたコーティング膜であってもよい。
【0063】
図9は、本実施の形態の他の実施例に係る発光モジュールの概略構成を示す図である。
図9に示す発光モジュール50は、素子搭載用基板114に搭載された半導体発光素子112と、半導体発光素子112から上方に向けて出射した光を前方(
図9では左方)に反射するリフレクタ36と、光透過部材104とリフレクタ36との間に配置されている光波長変換部材22と、を備える。光波長変換部材22は、リフレクタ36で反射した光が一箇所に集中しないように移動(上下動や回転)するように構成されている。
【0064】
つまり、光波長変換部材22は、発光モジュール50と光透過部材104との光路の途中において、光が入射する領域が変化するように所定の範囲で移動できるように構成されている。これにより、光波長変換部材22の局所的な発熱が緩和される。なお、光波長変換部材22の入射面22b側には、波長が440nm以上の光を反射するショートパスフィルタ38が設けられている。
【0065】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0066】
上述の各形態では、青色蛍光体と黄色蛍光体とを組み合わせ発光モジュールについて説明したが、色の組合せはこれらに限られない。また、照明装置は、スポットライト、フラッドライト、キャスターライト等のスタジオ照明器だけでなく、舞台照明器、投光器、街路灯、トンネル照明等に用いてもよい。