(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【0011】
図1乃至
図3を参照して、洗濯乾燥機の概要を説明する。尚、本明細書では、特に必要がある場合を除いて、洗濯機と洗濯乾燥機とを区別せず、単に洗濯機として説明する。
【0012】
洗濯乾燥機の外郭は、ベース1の上部に、鋼板と樹脂成形品とが組合わされて構成された外枠2が載せられて形成される。この洗濯乾燥機は、洗濯機用防水パン100内に置かれる。外枠2の正面には洗濯物30を出し入れするドア3と前面カバー22とが設けられ、背面には背面カバー23が設けられている。
【0013】
外枠2の内側には外槽20を備える。外槽20は下部に設けられた複数個のサスペンション21により支持されている。外槽20の内側には回転ドラム29が設けられており、回転ドラム29にはドア3を開けて洗濯物30が投入される。回転ドラム29の開口部の外周には脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。
【0014】
また、回転ドラム29の内側には洗濯物30を掻き揚げる複数個のリフター33が設けられている。回転ドラム29は回転ドラム用金属製フランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用モータ36に直結されている。外槽20の開口部には弾性体からなるゴム系のパッキン38が取付けられている。
【0015】
このパッキン38は外槽20内とドア3との水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い,すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。回転ドラム29は、側壁に遠心脱水および通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。外槽20の底壁に開口した排水口37は、排水弁8を介して排水ホース9に接続する。
【0016】
回転ドラム29内の洗濯物30を乾燥させる除湿ダクト5と送風手段たるファン61と加熱手段たるヒータ62を含む乾燥装置6は、外槽20から離して外枠2に固定(図示せず)されている。除湿ダクト5と通風口32は柔軟構造のベローズ4で略水平に接続し、ヒータ62の出口と吹出しノズル11とは、外槽20の最上面から中心までの間の位置で、且つ外槽20の奥行き方向における中心より前面側の位置で、柔軟構造のベローズ7により接続され、外槽20の振動を吸収している。排水口37,ファン61の吸気口及び吐出口には温度センサ(図示せず)が設けてある。
【0017】
このように構成したドラム式の洗濯乾燥機は、洗濯運転工程においては、回転ドラム29内に洗濯物を投入し、排水弁8を閉じた状態で給水して外槽20に洗濯水を溜め、回転ドラム29を回転させて洗濯物30を洗濯する。また、脱水運転工程においては、排水弁8を開いて外槽20内の洗濯水を排水し、回転ドラム29を回転させて遠心脱水する。
【0018】
そして、乾燥運転工程前半から中盤では、排水弁8を開いた状態で回転ドラム29を回転させると共に、
図1に示すように、ファン61を運転して外槽20内の空気を通風口32から吸い出して水冷除湿ダクト5内を通過させて水冷除湿した後にヒータ62で加熱して吹出しノズル11から回転ドラム29内の洗濯物30に向けて吹き込む循環空気12を生成する。
【0019】
回転ドラム29内で洗濯物30から水分を奪って湿潤した循環空気12の除湿は、冷却水弁(図示せず)を開き冷却水供給管51から水冷除湿ダクト5内の壁面に流れ出た冷却水52を流下させ、循環空気12と触れさせることにより実現する。水冷除湿ダクト5内の壁面に流れ出た冷却水52は排水口37を通って排水ホース9により排出される。
【0020】
乾燥運転工程後半では、
図2に示すようにヒータ62をOFFにして冷却水52を止める。そして、吸気弁13を開くことによりベース1下部の隙間から吸込まれた外部空気16は、外槽20の側面を流れながら外槽20,モータ36,ファン61の排熱を受けながら温められ、乾燥中盤までに外槽20の上面と外枠2の空間に溜められた高温の筐体内部空気15とともにファン61へ吸込まれる。
【0021】
吸込まれた筐体内部空気14は洗濯物30に吹付けられ洗濯物30から水分を奪い、湿潤して排水口37より排水ホース9を通り、排水トラップ装置10の水溜トラップに出来る水封じを破って排水口40に排出され、下水流路へと流下する。一般的な排水トラップ装置の場合、水封じ高さは50〜80mm程度あるため、水封じを破るには排水ホース9側の圧力は約1000Pa以上必要となる。
【0022】
また、排水口40から逆流するように流入して来る臭気を抑えるため、水封じを破った後も高い圧力(所定以上の圧力)を確保する必要があり、排水ホースによる排気式乾燥中は、高い圧力を保つようにファン61を制御する。
【0023】
排水ホース9が接続される排水トラップ装置10は洗濯機用防水パン100に取付けられる。排水トラップ装置10は一般的な排水トラップ装置の構造を備えている。排水トラップ装置には、排水ホース9からの排水が流れ込むとともに洗濯機用防水パン100内をながれる水も流れ込むようになっている。詳しくは後述する。
【0024】
乾燥運転終了後は、
図3に示すように排水口40側の圧力より排水ホース9側の圧力を高く保ちながら水封じを破らない圧力レベルまでファン61の回転数を下げて冷却水52を流し、排水トラップ装置10の水溜トラップに水を溜め水封じを回復させて乾燥運転工程が終了となる。
【0025】
このように、乾燥運転終了後に、排水ホース9側の圧力を所定以上に保ちながら排水ホースを経由して排水トラップ装置10に水を供給することにより、排水口40からの臭気を抑えながら排水トラップ10の水封じを回復させることができる。
【0026】
なお、この排水トラップ装置の水封じ回復は、排水ホース9側の圧力を高く保っていれば、乾燥運転の最後又は乾燥運転の終了後のいずれでも良い。
【0027】
図1に示す除湿乾燥では排水ホース9から排気されないが、
図2に示す排気乾燥運転では排水ホース9から排気される。しかし、外部空気16を吸込ながら運転される排気乾燥運転では洗濯物30の水分を奪取した高温多湿の排気は、排水ホース9、排水トラップ装置10を経て下水流路に流されるので、室内の環境を悪化させずに消費電力を削減することが出来る。さらに、乾燥運転終了時に排水ホース9側の内圧を保ちながら排水トラップ装置10の水封じを回復させるため排水口40からの臭気が室内に漏れて環境を悪化させることはない。
【0028】
乾燥運転工程は、排気乾燥運転は始から終わりまで続けたり、水冷除湿をして途中から排気乾燥運転に移行したり、排気乾燥運転をして途中から水冷除湿に移行する種々の運転がある。
【0029】
次に、
図4乃至
図8Bを参照して、排水トラップ装置について説明する。
【0030】
洗濯機用の排水トラップ装置10は、
図4に示すように、排水トラップ本体80、排水トラップ本体80内に置かれる封水椀81、封水椀81内に置かれる封水筒82、封水筒82内に置かれる流入円筒83を有する。
【0031】
封水が溜まる水溜トラップは、封水椀81、封水筒82、流入円筒83によって構成され、
図1、
図3に示すように封止用の水が溜まる。この水溜トラップに溜まる封水で、下水流路から逆流して来る臭気は遮られる。これにより、室内に臭気が流入するのが抑えられる。
【0032】
排水トラップ本体80は出口側に排水口40を有する。本実施例では、排水口40を排水トラップの底面に開口するように設けている。排水口40は下水流路に連通するようにつながり、洗濯機の排水は排水トラップ装置10に流れ込み、排水口40から下水流路に流下する。
【0033】
封水椀81は有底円筒形状をしており、封水椀81は排水トラップ本体80の底から持ち上がった状態で排水トラップ本体80に支持されている。流入円筒83は下端に支持脚85を有し、この支持脚85で流入円筒83は封水椀81の底から持ち上がった状態で支持され、流入円筒83から封水椀81へ排水が流れるようにしている。
【0034】
上枠リング86は排水トラップ本体80の上部開口に嵌合される。洗濯機用防水パン100の底に取り付けた排水トラップ本体80は上枠リング86により洗濯機用防水パン100に締結される。
【0035】
固定ねじリング87は、上枠リング86の内周に形成したネジにねじ止めされ、封水筒82の固定を行う。流入円筒83の上側には、L型をした接続継手管88が接続され、接続継手管88の上端側(上流端側)に排水ホース9の流出口側である下端(下流端)が着脱自在に接続される。洗濯機の排水は排水ホース9、接続継手管88、流入円筒83内を流れて排水トラップ装置に流れ込むのである。洗濯機用防水パン100の底に流れ出した水は流入円筒83の外周側に設けられ封水筒82内に連通する流入口89から排水トラップ装置に流れ込む。なお、排水ホース9を接続継手管87に接続しない場合には、排水ホース9から排出した水は洗濯機用防水パン100内を流れ、流入円筒83の外周側に設けられ封水筒82内に連通する流入口89に流れる。
【0036】
流入円筒83内の流入口(流路)83aを第1の流入口(第1の流路)とする。流入円筒83の外周側に設けられ封水筒82内に連通する流入口(流路)89を第2の流入口(第2の流路)とする。第1の流路83aは、排水トラップ装置10或いは排水トラップ本体80の中央部に上下方向に設けられ、洗濯機の外槽20内に連通して外槽20内の水を排水する排水経路となる。第2の流路89は第1の流路83aの外周に形成され、防水パン100の水を排水する排水経路となる。第2の流入口89には目皿89aが設けられ、糸くずの流入を阻止している。目皿89aは固定ねじリング87と一体に形成されているが、別体にすることも可能である。
【0037】
第1の流入口83aと第2の流入口89は同心的に配置され、第2の流入口89は第1の流入口83aの周りに円形状(環状)に存在する。第2の流入口89に設けた目皿89aは内外周が円形になっている。第1の流入口83aと第2の流入口89とは同心的な配置にしないで、隣合わせ配置にすることも可能である。
【0038】
第1の流入口83aと第2の流入口89とは水溜トラップの上流側になるので、第1の流入口83aと第2の流入口89とから排水トラップ装置10に流れ込む水は、水溜トラップを経由して排水トラップ装置10の排水口10oから流出する。
【0039】
さて、洗濯乾燥機の排気乾燥運転では、排水ホース9からの排気は第1の流入口83a側から水溜トラップに溜まる水に勢い良く吹き付けられ、前述した水封じが破られる(水封が解かれる)。このとき、大部分の水は排水口10oから排出されるが、一部の水が排気の勢いで第2の流入口89を逆流するように跳ね返って室内側に吹き出す。しかし、
図1乃至
図4に示すように、第2の流入口89を上側から覆うようにトラップカバー200を設けることにより、跳ね返って来る水はトラップカバー200で受け止められ、室内側への吹き出しは抑えられる。
【0040】
また、水封じを破る際に発生する騒音や排水トラップ装置を流れる排気流の騒音もトラップカバー200で抑えられ、静音化が図られる。
【0041】
これに加え、排気乾燥運転時に排気の一部が第2の流入口89を逆流するが、トラップカバー200により室内側への流れ込みを防止或いは抑制することができる。これにより、高湿な空気(排気)が室内に流れ込むのを防止或いは抑制することができる。
【0042】
本実施例では、流入円筒83の下端(下流端)を下端に近づくほど拡径させてベルマウス状に形成している。その最下端の径は、封水筒82の外径とほぼ同じであり、流入円筒83の下端と封水筒82の下端との間に形成される流路の段面積を小さくして、臭気が第2の流入口89側へ逆流し難くしている。
【0043】
しかも、トラップカバー200には周縁部に第2の流入口89への流入口(開口)10i(
図6参照)が設けられ、排水経路が確保されているので、第2の流入口89の排水機能は失われずに維持される。
【0044】
次にトラップカバー200について、
図5乃至
図8Bに沿って更に詳しく説明する。
【0045】
トラップカバー200は合成樹脂で作られる。可撓性の合成樹脂で作るのがトラップカバー200を着脱する際に撓み易く望ましい。
【0046】
トラップカバー200は、第2の流入口89を上側から被う円盤状のカバー部201と、カバー部201を第2の流入口89の上面から上側に離間させて排水の流入を確保する支持脚部202を有する。カバー部201の外径は、円形の目皿89aの外径より大きい。カバー部201の外径は、目皿89aの外径と同じ大きさにしてもよい。
【0047】
トラップカバー200のカバー部201の外周部には、トラップカバー200を排水トラップ装置10に載置するための鍔部209が形成されている。この鍔部209の下面と排水トラップ装置10の上面との間にシール部材(図示せず)を挟み込むようにして設けることにより、水封性能が向上する。或いは、鍔部209に金属製のリング(図示せず)等のおもりをインサートモールドしてトラップカバー200の重量を増すようにして、トラップカバー200が排水トラップ装置10上に載置されたときに、トラップカバー200と排水トラップ装置10との密着性を高めるようにしてもよい。或いは、金属製のリング等を鍔部209にインサートモールドしたトラップカバー200と、鍔部209の下面と排水トラップ装置10の上面との間に挟設するシール部材とを組み合わせてもよい。
【0048】
第2の流入口89の目皿89aがトラップカバー200のカバー部201で上側から被われる。このため、排気乾燥運転に伴い第2の流入口89で生じる(1)跳ね返り水、(2)排気流の騒音、(3)排気の逆流はカバー部201で抑えられる。また、支持脚部202によりカバー部201が目皿89aの上面から離間するように保たれる。このため、カバー部201の周縁部に排水が流入する流入口(開口)10iが確保され、第2の流入口89の機能は失われずに維持される。
【0049】
複数の支持脚部202はカバー部201の裏面側に垂下する円弧形状をしている。この円弧形状をした複数の支持脚部202は、
図7に示すように、カバー部201の中心と同心的に、かつ間隔を置いて複数個が配置されている。複数の支持脚部202は、外周側部位と、内周側部位と、中間部位の3重配置になっている。
【0050】
複数の支持脚部202が設けられていることにより、カバー部201が上から押されても潰れにくく、第2の流入口89が塞がれにくい構造になっている。
【0051】
トラップカバー200は、カバー部201の中央に流入円筒83の外周が嵌まる挿入開口203と、挿入開口203の開口縁部から挿入開口203内に突き出すように形成され、放射方向の切り込み204で周方向に分割された複数のリップ205とを有する。リップ205は、切り込み204によって周方向に複数に分割されていることにより、流入円筒83が挿入される際に流入円筒83の軸方向に容易に撓むことができる。また、リップ205のところは、他のところよりも肉厚を薄くしている。このため、リップ205は撓み易さを十分備えている。
【0052】
トラップカバー200は接続継手管88の先端側に挿入開口203を嵌め込み、流入円筒83のところまで移動させて取り付けられる。この際にリップ205が撓み、嵌め込み移動が円滑に行われるので、取り付け作業が容易である。
【0053】
更に、トラップカバー200は、リップ205の付け根から挿入開口203に亘って下方に落ち込む窪み207を有する。これに加え、トラップカバー200はカバー部201の外周からリップ205の付け根にかけて下向きの傾斜を有する。このような形状の構成にしたので、カバー部201の上面に流れ落ちた水は中央に向かって流れ、窪み207に集まって切り込み204から目皿89aに流下する。挿入開口203が流入円筒83の外周に嵌ると、リップ205が湾曲するように撓み、切り込み204が拡がるので、窪み207に集った水は流出し易くなり、残水が生じにくくなる。
【0054】
また、カバー部201には、目皿89aに設けられている上向きの回し突起(図示せず)と対向する部位に回し突起が収まる突起収納部208を設けた。この突起収納部208を設けることにより、トラップカバー200が上向きの回し突起(図示せず)に当って浮き上がることがないので、トラップカバー200は安定した状態で取り付けられる。
【0055】
さらに、カバー部201の内外周に亘って延在する着脱用スリットをトラップカバー200に設けてもよい。そして、着脱用スリットのところを流入円筒83の外径が入る程度に開き、この開き口からトラップカバー200を流入円筒83に嵌め込むようにしてもよい。これにより、トラップカバー200の着脱を容易に行うことができる。
【0056】
本実施例では、水封が解かれた際に、水溜トラップ及び第2の流路89を経由して室内に逆流する臭気を防止又は抑制する逆止弁機構300を備えている。この逆流防止機構(逆止弁機構)300について、
図4乃至
図8Bを参照して説明する。
【0057】
逆流防止機構300は排水トラップカバー200に設けられている。具体的には、逆止弁機構300は、第2の流入口89と、カバー部201の周縁部に設けられた流入口(開口)10iとの間に設けられ、水封が解かれた水溜トラップから第2の流路89に逆流する臭気を逆流防止機構300で遮り、室内への流入を効果的に防止又は抑制する。
【0058】
例えば、上述した乾燥運転工程の後半に行う排気乾燥運転では、排気圧力を高くするようにファン61を制御することにより、臭気の逆流を防止又は抑制することができる。そして乾燥運転工程の終了時には水溜トラップに給水して水封を回復するので、臭気の逆流を防ぐことができる。しかし、排気乾燥運転時などの水封を解除した状態で、停電などにより洗濯機が運転を中止すると、水溜トラップの水封が解除されたままの状態となり臭気が逆流する可能性がある。特許文献1の排水トラップカバー200を設けることにより、臭気を抑制することは可能であるが、臭気の逆流の抑制効果を更に高めることが望まれる。
【0059】
以下、逆流防止機構300について、詳細に説明する。
【0060】
逆流防止機構300は、ボール(球体)で構成される弁体(浮上体)302と、弁体302が着座する環状の弁座(仕切部)301と、弁体302が収容された弁体収容室(弁部構成室)303と、カバー部201の周縁部に設けられた流入口(開口)10iと、排水の流れ方向において弁座301の上流側でかつ流入口10iの下流側に形成された弁部前室304とで、構成されている。すなわち、本実施例では、第2の流路89の流入口の上流側に、弁体収容室303と弁部前室304とを経由して排水トラップカバー200の外部に連通する連通経路が構成され、この連通経路の途中に、通常時は閉状態であり、防水パン100から流れてくる水によって開状態となる逆流防止機構300が設けられている。
【0061】
弁体302は中空の樹脂製であり、同体積の水よりも軽く、水に浮くよう構成されている。水に浮くことができ、排水機能と臭気の遮断機能とを実現できれば、中実であってもよいし、材料も樹脂に限るものではない。
【0062】
弁座301は球体である弁体302との間に隙間ができないように、環状(円形)を成している。弁座301の周方向の一部は、薄い板状部301aが円形に湾曲して構成されている(
図7参照)。板状部301aは上下方向(高さ方向)に所定の幅を有し、弁体収容室303と弁部前室304とを水平方向において区画する隔壁を構成する。すなわち、弁部前室304の側壁を構成する。また、弁座301の周方向の他の部分は水平に設けられた平板部の円弧状の切欠き部302bによって構成される(
図7参照)。切欠き部302bが形成された平板部は上下方向(高さ方向)において弁体収容室303と弁部前室304とを区画する隔壁を構成している。換言すれば、板状部301aと切欠き部302bが形成された平板部とは、弁体収容室303と弁部前室304とを仕切る仕切り部を構成しており、この仕切り部に弁座を開口縁とする開口が形成されている。なお、板状部301a及び切欠き部302bは樹脂の型成形によって形成される。
【0063】
弁体収容室303は、弁体302が弁座301に着座した状態で、弁体302の最上部と弁体収容室303の天井部との間に隙間ができる高さに形成されている。この高さは、水に浮いた弁体302の下部が弁座301の高さ位置よりも下側に位置するように、弁体302の浮上高さを制限する高さに設定されている。弁体302の水平方向の移動を制限する機構を設けて、浮上した弁体302が再び弁座301に着座できるようにすれば、弁体収容室303の天井部の高さを制限する必要はなくなる。
【0064】
流入口10iは弁部前室304に連通し、弁部前室304と排水トラップ装置10の外部とを連通させる。これにより、流入口10iは防水パン100内の水を弁部前室304に導入する。
【0065】
板状部301aの外周部には、弁体収容室303と第2の流入口89とを連通させる開口部305が形成されている。
【0066】
本実施例では、弁体収容室303に弁体302と弁座302とで構成される弁機構を2個設けている。この弁機構は2個に限定されるわけではなく、各弁部の排水容量によって、1個でも或いは3個以上であってもよい。
【0067】
逆流防止機構300は、カバー部201の高さよりも高く上方に突出している。逆流防止機構300を排水トラップカバー200の周方向の一部に設け、他の部分は逆流防止機構300の部分の高さよりも低くなるようにしている。この低くなった部分の範囲内で接続継手管88の上流側端部を周方向に回動可能に構成している。これにより、逆流防止機構300を設けても、接続継手管88を含めた装置の高さ寸法を低く抑えることができる。
【0068】
次に、
図8A及び
図8Bを参照して、逆流防止機構300の動作を説明する。
【0069】
防水パン100内に水が溜まっていない状態では、
図8Aに示すように、弁体302は弁座301に着座している。そしてこの状態では、水溜トラップの水封が破られた状態でも、臭気306は弁体収容室303まで到達できても、弁体302及び弁座301とで構成される弁機構により、室内側への流出を遮られる。
【0070】
一方、防水パン100内に水が溜まると、流入口10iから弁部前室304に流入した水307が、
図8Bに示すように、弁体302を押し上げ、弁体302が弁座301から離れて離座する。弁体302が弁座301から離座すると、弁体302と弁座301との間に水が流れる隙間ができ、この隙間を通じて弁体収容室303に水が流入する。弁体収容室303に流入した水308は、開口部305(
図7参照)を通じて第2の流入口89に流れ、水溜トラップを経由して排出口10oから排出される。
【0071】
水溜トラップの水封が破られた状態では、洗濯水に含まれる泡が第2の流入口から弁体収容室303に逆流する場合もあり得るが、弁体302及び弁座301とで構成される弁機構により、室内側への流出を防ぐことができる。
【0072】
本実施例における排水トラップ装置10は、排気乾燥運転を行う乾燥機又は洗濯乾燥機に限らず、洗濯運転及び脱水運転を行い、乾燥運転は行わない洗濯機に用いてもよい。第2の流入口89で生じる跳ね返り水を防ぐことができ、長期にわたって洗濯機を使用しない場合などに、水溜トラップの水封が破られた状態になっても、臭気の室内側への流入を防止或いは抑制することができる。
【0073】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。