(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275992
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】車両のサスペンション構造
(51)【国際特許分類】
B60G 11/10 20060101AFI20180129BHJP
B60G 11/04 20060101ALI20180129BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
B60G11/10
B60G11/04
B62D21/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-218022(P2013-218022)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80949(P2015-80949A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健三
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04125276(US,A)
【文献】
実開昭59−158513(JP,U)
【文献】
特開昭62−203877(JP,A)
【文献】
米国特許第04718693(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0085318(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0170175(US,A1)
【文献】
特開平08−207829(JP,A)
【文献】
特開2003−267017(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0262547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 11/10
B60G 11/04
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向へ所要間隔をあけて対向配置され且つ車両の前後方向へ延びる一対のサイドレールを有したシャシフレームを備え、該シャシフレームの各サイドレール前部に、車両の前後方向へ延びるリーフスプリングの前後端を車両の幅方向へ延びるスプリングピンを介して取り付け、該リーフスプリングの中央部間に掛け渡すようにフロントアクスルを配設した車両のサスペンション構造において、
前記リーフスプリング前端におけるスプリングピンの両端を連結する保持部と、該保持部間をつなぐ連結部とを有する補強材を備え、
前記補強材は、
前記リーフスプリングとの干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピンの両端前面側に当接される前面側二股状板部と、該前面側二股状板部間をつなぐ前面側連結板部とを有した前面側補強プレートと、
前記リーフスプリングとの干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピンの両端後面側に当接される後面側二股状板部と、該後面側二股状板部間をつなぐ後面側連結板部とを有した後面側補強プレートと、
前記前面側補強プレート及び後面側補強プレートを重ね合わせる際に介装されるカラーと、
該カラーを貫通して前記前面側補強プレート及び後面側補強プレートを一体に締め付ける締結部材と、
前記前面側二股状板部及び後面側二股状板部でスプリングピンの両端部を前後から挟み付けた状態で締め付ける締結部材と
を有していることを特徴とする車両のサスペンション構造。
【請求項2】
前記スプリングピンの両端部における締結点を結ぶ直線の中間部から垂下させた垂線上に、前記カラーを介した前面側補強プレート及び後面側補強プレートの締結点を設定した請求項1記載の車両のサスペンション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラック等の車両においては、車両の前後方向へ延びる一対のサイドレールが車両の幅方向へ所要間隔をあけて対向配置されたシャシフレームを備え、該シャシフレームの各サイドレール前部に、車両の前後方向へ延びるリーフスプリングの前後端を車両の幅方向へ延びるスプリングピンを介して取り付け、該リーフスプリングの中央部間に掛け渡すようにフロントアクスルを配設したサスペンション構造が採用されている。
【0003】
尚、前記シャシフレームの各サイドレール後部には、該各サイドレールの前部と同様に、車両の前後方向へ延びるリーフスプリングの前後端を車両の幅方向へ延びるスプリングピンを介して取り付け、該リーフスプリングの中央部間に掛け渡すようにリヤアクスルが配設されている。
【0004】
前記フロントアクスルの両側にはホイール及びタイヤが取り付けられ、該タイヤと路面との接地により直進性が保たれるが、操舵装置を操作して曲線走行を行った場合、車両の積荷の量並びに位置及び曲線走行の度合い等によって、前記フロントアクスルが取り付けられたリーフスプリングの前後端部をスプリングピンを介して支持するスプリングブラケットが路面に対し車幅方向へ大きく傾動することがある。
【0005】
これにより、前記シャシフレームが捩れることになり、該シャシフレームの復元力により自励振動が生じる。この自励振動は車体を振動させると共に、操舵装置を構成するステアリングが激しく振動する、いわゆるウォッブル(wobble)現象を生じさせるという不具合がある。特にリーフスプリングの後端はシャックルを介してリヤ側のスプリングブラケットに取り付けられるため、該シャックルを支持するリヤ側のスプリングブラケットとサイドレールを含めたシャシフレームの全体の剛性が不足すると、前記ウォッブル現象を防止できなくなるという問題点があった。
【0006】
こうした問題点を解消するために、従来、シャシフレームを構成するサイドレール及びクロスメンバの板厚を増加させてシャシフレーム自体の剛性を高めることや、左右のリヤブラケットの間にサポートビームを架設することが行われていた。
【0007】
尚、左右のリヤブラケットの間にサポートビームを架設したサスペンションと関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−98772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述のように、シャシフレームを構成するサイドレール及びクロスメンバの板厚を増加させてシャシフレーム自体の剛性を高めるのでは、車両の重量増加やコストアップにつながるという不具合を有していた。又、特許文献1に開示された構造では、左右のリヤブラケット自体にサポートビームを架設しているため、リヤブラケットが大型化し、やはり車両の重量増加やコストアップは避けられなかった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、車両の重量増加やコストアップを最小限に抑えつつ、フロントアクスル用のリーフスプリングの支持剛性を高め、操縦安定性並びに振動特性向上を図り得る車両のサスペンション構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両の幅方向へ所要間隔をあけて対向配置され且つ車両の前後方向へ延びる一対のサイドレールを有したシャシフレームを備え、該シャシフレームの各サイドレール前部に、車両の前後方向へ延びるリーフスプリングの前後端を車両の幅方向へ延びるスプリングピンを介して取り付け、該リーフスプリングの中央部間に掛け渡すようにフロントアクスルを配設した車両のサスペンション構造において、
前記リーフスプリング前端におけるスプリングピンの両端を連結する保持部と、該保持部間をつなぐ連結部とを有する補強材を備え
、
前記補強材は、
前記リーフスプリングとの干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピンの両端前面側に当接される前面側二股状板部と、該前面側二股状板部間をつなぐ前面側連結板部とを有した前面側補強プレートと、
前記リーフスプリングとの干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピンの両端後面側に当接される後面側二股状板部と、該後面側二股状板部間をつなぐ後面側連結板部とを有した後面側補強プレートと、
前記前面側補強プレート及び後面側補強プレートを重ね合わせる際に介装されるカラーと、
該カラーを貫通して前記前面側補強プレート及び後面側補強プレートを一体に締め付ける締結部材と、
前記前面側二股状板部及び後面側二股状板部でスプリングピンの両端部を前後から挟み付けた状態で締め付ける締結部材と
を有していることを特徴とする車両のサスペンション構造にかかるものである。
【0013】
又、前記車両のサスペンション構造においては、前記スプリングピンの両端部における締結点を結ぶ直線の中間部から垂下させた垂線上に、前記カラーを介した前面側補強プレート及び後面側補強プレートの締結点を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のサスペンション構造によれば、車両の重量増加やコストアップを最小限に抑えつつ、フロントアクスル用のリーフスプリングの支持剛性を高め、操縦安定性並びに振動特性向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の車両のサスペンション構造の実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の車両のサスペンション構造の実施例における補強材を示す後面図である。
【
図4】本発明の車両のサスペンション構造の実施例におけるスプリングピンを示す平面図である。
【
図5】本発明の車両のサスペンション構造の実施例におけるスプリングピンを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜
図5は本発明の車両のサスペンション構造の実施例であって、該サスペンション構造は、車両1の前後方向へ延びる一対のサイドレール2が車両1の幅方向へ所要間隔をあけて対向配置されたシャシフレーム3を備え、該シャシフレーム3の各サイドレール2前部に、車両1の前後方向へ延びるリーフスプリング4の前後端を車両1の幅方向へ延びるスプリングピン5,6を介して取り付け、該リーフスプリング4の中央部間に掛け渡すようにフロントアクスル7を配設したものである。
【0018】
尚、前記リーフスプリング4の前端が枢着されるスプリングピン5は、前記サイドレール2のフロント側に固着されるスプリングブラケット8に取り付けられ、前記リーフスプリング4の後端が枢着されるスプリングピン6は、前記サイドレール2のリヤ側に固着されるスプリングブラケット9にシャックル10を介して取り付けられている。又、前記一対のサイドレール2の前端は、クロスメンバ11によって連結されている。
【0019】
本実施例の場合、前記リーフスプリング4前端におけるスプリングピン5の両端を連結する保持部12Aと、該保持部12A間をつなぐ連結部12Bとを有する補強材12を備えた点が特徴部分となっている。
【0020】
前記補強材12は、
図2及び
図3に示す如く、前面側補強プレート13と後面側補強プレート14とを有しており、該前面側補強プレート13は、前記リーフスプリング4との干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピン5の両端前面側に当接される前面側二股状板部13Aと、該前面側二股状板部13A間をつなぐ前面側連結板部13Bとを有し、前記後面側補強プレート14は、前記リーフスプリング4との干渉を避けるよう二股状に形成され且つ先端部がスプリングピン5の両端後面側に当接される後面側二股状板部14Aと、該後面側二股状板部14A間をつなぐ後面側連結板部14Bとを有している。前記前面側補強プレート13及び後面側補強プレート14は、複数(
図3の例では四個)の円筒状のカラー15を介装することにより、所要間隔sをあけて重ね合わされ、該カラー15に対し締結部材16としてのボルトを貫通させてナットを螺着することにより、前記前面側補強プレート13及び後面側補強プレート14を一体に締め付けるようにしてある。更に、前記前面側二股状板部13A及び後面側二股状板部14Aでスプリングピン5の両端部を前後から挟み付けた状態とし、この状態で、締結部材17としてのボルトを貫通させてナットを螺着することにより、前記前面側補強プレート13及び後面側補強プレート14のスプリングピン5への取り付けを行うようにしてある。
【0021】
前記スプリングピン5は、
図4及び
図5に示す如く、両端部に、前記前面側二股状板部13A及び後面側二股状板部14Aの先端部が当接可能な平坦面18を形成して取付部19を設け、該取付部19に、前記平坦面18と直交する水平方向へ延び且つ前記締結部材17としてのボルトが貫通可能な締結孔20を穿設してある。
【0022】
又、
図2に示す如く、前記スプリングピン5の両端部における締結点P,Pを結ぶ直線HLの中間部から垂下させた垂線VL上に、前記カラー15を介した前面側補強プレート13及び後面側補強プレート14の締結点Qを設定してある。
【0024】
前述の如く、前記リーフスプリング4前端におけるスプリングピン5の両端を連結する保持部12Aと、該保持部12A間をつなぐ連結部12Bとを有する補強材12を備えるようにすると、前記補強材12は、スプリングピン5の両端を保持部12Aで連結しつつ、該保持部12A間を連結部12Bでつないでいるため、フロントアクスル7用のリーフスプリング4の支持剛性がきわめて有効に高められる。
【0025】
しかも、前記補強材12は、前面側二股状板部13A間を前面側連結板部13Bでつないだ前面側補強プレート13と、後面側二股状板部14A間を後面側連結板部14Bでつないだ後面側補強プレート14とをカラー15を介して締結部材16で一体に締め付ける構造としてあるため、前記補強材12自体の重量が増加することを必要最小限に抑えることが可能となる。
【0026】
この結果、従来のように、シャシフレーム3を構成するサイドレール2及びクロスメンバ11の板厚を増加させてシャシフレーム3自体の剛性を高める必要がなくなり、車両1の重量増加を抑えつつ、コストアップを回避することが可能となる。
【0027】
又、
図2に示す如く、前記スプリングピン5の両端部における締結点P,Pを結ぶ直線HLの中間部から垂下させた垂線VL上に、前記カラー15を介した前面側補強プレート13及び後面側補強プレート14の締結点Qを設定してあるため、前記前面側補強プレート13の前面側二股状板部13A及び後面側補強プレート14の後面側二股状板部14Aがそれぞれ捩れたり、広がったり、或いはずれたりしてしまうことがなくなり、剛性を確保する上で非常に有効となる。
【0028】
こうして、車両1の重量増加やコストアップを最小限に抑えつつ、フロントアクスル7用のリーフスプリング4の支持剛性を高め、操縦安定性並びに振動特性向上を図り得る。
【0029】
尚、本発明の車両のサスペンション構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 車両
2 サイドレール
3 シャシフレーム
4 リーフスプリング
5 スプリングピン
6 スプリングピン
7 フロントアクスル
12 補強材
12A 保持部
12B 連結部
13 前面側補強プレート
13A 前面側二股状板部
13B 前面側連結板部
14 後面側補強プレート
14A 後面側二股状板部
14B 後面側連結板部
15 カラー
16 締結部材
17 締結部材
HL 直線
VL 垂線
P 締結点
Q 締結点