特許第6276003号(P6276003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276003
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】送受信アンテナ、スリットの設計方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20180129BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20180129BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G01S7/02 212
   G01S7/03 246
   G01S13/34
   G01S7/03 230
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-238677(P2013-238677)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-99077(P2015-99077A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012087
【氏名又は名称】株式会社光電製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 臣也
【審査官】 大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−013311(JP,A)
【文献】 特開2002−094326(JP,A)
【文献】 特開2005−249659(JP,A)
【文献】 特開2010−210297(JP,A)
【文献】 特開2002−033592(JP,A)
【文献】 米国特許第04499474(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103392263(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00−19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の板であり、互いに対向して配置された2つのリフレクタと、
導電性の平板であり、前記2つのリフレクタの両方に接触する背面板と、
導電性の平板であり、前記2つのリフレクタの間に、両方のリフレクタと対向するように配置され、前記背面板に直線状に接触するアイソレータと、
前記2つのリフレクタの一方と前記アイソレータとの間に配列された複数の送信素子と、
前記2つのリフレクタの他方と前記アイソレータとの間に配列された複数の受信素子と、
前記2つのリフレクタ、前記背面板、前記アイソレータ、前記複数の送信素子、前記複数の受信素子を覆うレドームと、
を備え、
前記アイソレータは、前記複数の送信素子から前記複数の受信素子側に回り込む電波を、前記レドームでの反射波と同じ強度、かつ、逆位相に近くなるようにするスリットを有する
ことを特徴とする送受信アンテナ。
【請求項2】
x方向、y方向、z方向は、互いに直交する方向とし、
導電性の平板であり、z方向を法線方向とする背面板と、
導電性の板であり、前記背面板と接触する線がy方向の平行な2つの直線となるように、互いに対向して配置された2つのリフレクタと、
導電性の平板であり、前記2つのリフレクタの間にx方向を法線方向とし、前記背面板と直線状に接触するように配置されたアイソレータと、
前記2つのリフレクタの一方と前記アイソレータとの間に、y方向に配列された複数の送信素子と、
前記2つのリフレクタの他方と前記アイソレータとの間に、y方向に配列された複数の受信素子と、
前記2つのリフレクタ、前記背面板、前記アイソレータ、前記複数の送信素子、前記複数の受信素子を覆うレドームと、
を備え、
前記アイソレータは、前記複数の送信素子から前記複数の受信素子側に回り込む電波を、前記レドームでの反射波と同じ強度、かつ、逆位相に近くなるようにするスリットを有する
ことを特徴とする送受信アンテナ。
【請求項3】
請求項2記載の送受信アンテナであって、
前記スリットは複数あり、y方向に配列されている
ことを特徴とする送受信アンテナ。
【請求項4】
請求項3記載の送受信アンテナであって、
複数の前記スリットには、前記背面板からの距離が異なるものがある
ことを特徴とする送受信アンテナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の送受信アンテナが有するスリットの設計方法であって、
前記背面板は、アイソレータを着脱可能な構造であり、
前記レドームがない状態で、前記スリットがないアイソレータを取り付けたときの前記複数の受信素子で受信する電波のデータを取得し、無反射データとする無反射データ取得ステップと、
前記レドームを備えた状態で、前記スリットがないアイソレータを取り付けたときの前記複数の受信素子で受信する電波のデータを取得し、反射データとする反射データ取得ステップと、
前記無反射データと前記反射データから、前記レドームによって生じる反射波と同じ強度で逆位相の電波が前記無反射データに付加されたときの電波のデータを求め、目標データとする目標データ取得ステップと、
前記レドームがない状態で、前記スリットを有するアイソレータを取り付けたときの前記複数の受信素子で受信する電波のデータを取得して回り込みデータとし、当該回り込みデータを前記目標データと比較する比較ステップと
を有し、
少なくともアイソレータのスリットの数と位置と形状の中の1つを変えながら、前記比較ステップを繰り返し、前記回り込みデータが前記目標データに近くなる前記スリットを求める
ことを特徴とするスリットの設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ用の送受信アンテナとその送受信アンテナが有するスリットの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ用の送受信アンテナとしては、特許文献1のアンテナなどが従来技術として知られている。特許文献1では、レドームに仕切壁を設け、送信アンテナ部から受信アンテナ部への回り込みを抑制し、送受信間のアイソレーションを向上させている。また、逆位相の信号を合成することで送受信間のアイソレーションを向上させる技術としては、特許文献2の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−093305号公報
【特許文献2】特開2005−269592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンテナではリフレクタがレドーム内にないため、ビームの形状を制御しにくい。そこで、レドーム内にリフレクタも備える送受信アンテナを考えると、図6〜8に示すような送受信アンテナが考えられる。図6はリフレクタを有する送受信アンテナの平面図、図7はその送受信アンテナの図6のA−A線での断面図、図8はその送受信アンテナの図6のB−B線での断面図である。送受信アンテナ900は、図6〜8に示すように、背面板920、2つのリフレクタ930、2つのリフレクタ兼アイソレータ940、複数の送信素子950、複数の受信素子960、レドーム910で構成される。
【0005】
送受信アンテナ900は、背面板920を共用しているが、送信アンテナ901と受信アンテナ902とを1つのレドーム910内に配置した構成である。送受信アンテナ900では、送信アンテナ901のxz平面のビームの形状は、送信アンテナ901側のリフレクタ930とリフレクタ兼アイソレータ940で決まり、受信アンテナ902のxz平面のビームの形状は、受信アンテナ902側のリフレクタ930とリフレクタ兼アイソレータ940で決まる。また、リフレクタ930とリフレクタ兼アイソレータ940の長さa、および送信アンテナ901と受信アンテナ902との間隔bを調整すれば、送受信間の回り込みを調整できる。そして、レドーム910での反射波と回り込みの電波の強度と位相を、同じ強度の逆位相に調整すれば、アイソレーションの向上を図ることができる。
【0006】
しかしながら、送受信アンテナ900の構成では、レドーム910で生じる反射を打ち消すための回り込みの位相と強度の調整を、ビームの形状を決めるリフレクタ930とリフレクタ兼アイソレータ940の長さaおよび送信アンテナ901と受信アンテナ902との間隔bで行わなければならない。したがって、回り込みの調整とビームの形状の両方を満足させる設計が難しいという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、設計が容易な構造の送受信アンテナと、その送受信アンテナが有するスリットの設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送受信アンテナは、2つのリフレクタ、背面板、アイソレータ、複数の送信素子、複数の受信素子、レドームを備える。2つのリフレクタは、導電性の板であり、互いに対向して配置される。背面板は、導電性の平板であり、2つのリフレクタの両方に接触する。アイソレータは、導電性の平板であり、2つのリフレクタの間に、両方のリフレクタと対向するように配置され、背面板に直線状に接触する。また、アイソレータは、複数の送信素子からの電波を複数の受信素子側に回り込ませるためのスリットを有する。複数の送信素子は、2つのリフレクタの一方とアイソレータとの間に配列される。複数の受信素子は、2つのリフレクタの他方とアイソレータとの間に配列される。レドームは、2つのリフレクタ、背面板、アイソレータ、複数の送信素子、複数の受信素子を覆う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の送受信アンテナによれば、ビームの形状はリフレクタで決め、送信素子側から受信素子側への回り込みはアイソレータに設けたスリットで調整できるので、送受信アンテナ設計が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の送受信アンテナの平面図。
図2】本発明の送受信アンテナの図1のA−A線での断面図。
図3】本発明の送受信アンテナの図1のB−B線での断面図。
図4】本発明の送受信アンテナの図2のC−C線での断面図。
図5】本発明のスリットの設計方法のフローを示す図。
図6】リフレクタを有する送受信アンテナの平面図。
図7】リフレクタを有する送受信アンテナの図6のA−A線での断面図。
図8】リフレクタを有する送受信アンテナの図6のB−B線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0012】
図1に本発明の送受信アンテナの平面図、図2に本発明の送受信アンテナの図1のA−A線での断面図、図3に本発明の送受信アンテナの図1のB−B線での断面図、図4に本発明の送受信アンテナの図2のC−C線での断面図を示す。図中に示したように、x方向、y方向、z方向は、互いに直交する方向とする。本発明の送受信アンテナ100は、2つのリフレクタ130、背面板120、アイソレータ140、複数の送信素子150、複数の受信素子160、レドーム110を備える。
【0013】
2つのリフレクタ130は、導電性の板であり、互いに対向して配置される。背面板120は、導電性の平板であり、2つのリフレクタの両方に接触する。図中では、背面板120は、z方向を法線方向としている。また、2つのリフレクタ130は、背面板120と接触する線がy方向の平行な2つの直線となるように、互いに対向して配置されている。
【0014】
アイソレータ140は、導電性の平板であり、2つのリフレクタ130の間に、両方のリフレクタ130と対向するように配置され、背面板120に直線状に接触する。図では、アイソレータ140は、2つのリフレクタ130の間にx方向を法線方向とし、背面板120と直線状に接触するように配置されている。また、アイソレータ140は、複数の送信素子150からの電波を複数の受信素子160側に回り込ませるためのスリット145を有する。スリット145は複数備えてもよく、その場合は、y方向に配列すればよい。ただし、複数のスリット145は、それぞれ背面板120からの距離を変えてもよいし、形状が異なってもよい。なお、スリット145の形状は、細長い穴に限るものではなく、例えば円形や正方形などの穴でもよい。
【0015】
複数の送信素子150は、2つのリフレクタ130の一方とアイソレータ140との間に配列される。複数の受信素子160は、2つのリフレクタ130の他方とアイソレータ140との間に、複数の送信素子150の配列と平行に配列される。図中では、送信素子150も受信素子160も、配列の方向はy方向である。例えば、誘電体基板上の一面に背面板120を形成し、他方の面に送信素子150、受信素子160を、パッチアンテナによって形成すればよい。レドーム110は、2つのリフレクタ130、背面板120、アイソレータ140、複数の送信素子150、複数の受信素子160を覆う。
【0016】
送受信アンテナ100においては、xz平面のビームの形状はリフレクタ130の形状で決めればよい。また、yz平面のビームの形状は、複数の送信素子150と複数の受信素子160のそれぞれに供給する電力によって決めればよい。そして、レドーム110での反射による影響を打ち消すように、送信素子150から受信素子160への回り込みをアイソレータ140とスリット145で調整すればよい。つまり、アイソレータ140とスリット145で、回り込む電波が反射波と同じ強度、かつ、逆位相に近くなるように調整すればよい。したがって、設計が容易である。また、送受信アンテナ100は、送信アンテナと受信アンテナとを一体にした構成にできるので、送受信アンテナ900よりも小型にできる。
【0017】
<スリットの設計方法>
送受信アンテナ100は、例えば、FM−CWレーダに使用されるアンテナであり、周波数を変更しながら一定のパワーを出力し、観測対象からの反射波を受信する。この場合、周波数が変化するので、すべての周波数で完全に逆位相にすることはできない。また、スリット145は電波のニアフィールドパターンの位置にあり、シミュレーションなどの手法を用いても、計算結果と実際の特性とが一致しないことも多い。そこで、次に、実際の送受信アンテナでの観測によって特性を確認しながらスリット145を設計(調整)するための方法を示す。
【0018】
図5にスリットの設計方法のフローを示す。設計用の送受信アンテナ100では、背面板120は、アイソレータ140を着脱可能な構造にしておく。例えば、挿入用の穴を設け、そこにアイソレータ140を挿入して固定すればよい。そして、スリットの設計方法は、無反射データ取得ステップ(S10)、反射データ取得ステップ(S20)、目標データ取得ステップ(S30)、比較ステップ(S40)を有する。無反射データ取得ステップ(S10)では、レドーム110がない状態で、スリット145がないアイソレータ140を取り付けたときの複数の受信素子160で受信する電波のデータを取得し、無反射データとする。無反射データ取得ステップ(S10)では、レドーム110での反射がないときの電波のデータが取得できるので、できるだけ高い性能が得られるようにリフレクタ130やアイソレータ140などを調整すればよい。反射データ取得ステップ(S20)では、レドーム110を備えた状態で、スリット145がないアイソレータを取り付けたときの複数の受信素子160で受信する電波のデータを取得し、反射データとする。無反射データと反射データとの差が、レドーム110によって生じた反射波の影響である。目標データ取得ステップ(S30)では、無反射データと反射データから、レドーム110によって生じる反射波と同じ強度で逆位相の電波が無反射データに付加されたときの電波のデータを求め、目標データとする。
【0019】
比較ステップ(S40)では、レドーム110がない状態で、スリット145を有するアイソレータ140を取り付けたときの複数の受信素子160で受信する電波のデータを取得して回り込みデータとし、当該回り込みデータを目標データと比較する。比較ステップ(S40)は、少なくともアイソレータ140のスリット145の数と位置と形状の中の1つを変えながら繰り返し、回り込みデータが目標データに近くなるスリット145を求めればよい(S50)。例えば、あらかじめいくつかのアイソレータ140を用意しておき、それらでの回り込みデータを取得する。そして、最も目標データに近い回り込みデータが得られたアイソレータ140をさらに調整していけばよい。そして、送受信アンテナ100の要求条件を満たすアイソレータ140が見つかるまで繰り返せばよい。本発明のスリットの設計方法によれば、比較ステップ(S40)は繰り返し処理となるが、レドーム110がない状態でアイソレータ140を背面板120に着脱すればよいだけなので、容易に繰り返し処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
100、900 送受信アンテナ 110、910 レドーム
120、920 背面板 130、930 リフレクタ
140 アイソレータ 145 スリット
150、950 送信素子 160、960 受信素子
901 送信アンテナ 902 受信アンテナ
940 リフレクタ兼アイソレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8