特許第6276028号(P6276028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276028
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】象牙質知覚過敏用口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20180129BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20180129BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20180129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20180129BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/36
   A61Q11/00
   A61K31/19
   A61K31/194
   A61P1/02
   A61P25/02 101
   A61P43/00 121
   A61K33/00
   A61K47/10
   A61K9/08
   A61K9/06
   A61K8/34
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-272163(P2013-272163)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124216(P2015-124216A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典敬
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−506663(JP,A)
【文献】 特開2013−035792(JP,A)
【文献】 特開昭60−112711(JP,A)
【文献】 特開2013−1650(JP,A)
【文献】 特開2013−1649(JP,A)
【文献】 特開2013−1648(JP,A)
【文献】 特開2014−62066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/00−33/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)並びに(C):
(A)炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩 脂肪酸換算量で0.08質量%以上2質量%以下、
(B)硝酸カリウム、クエン酸三カリウム及び酢酸カリウムから選ばれる1種または2種以上の脱感作剤、並びに
(C)水
を含有し、かつ
25℃におけるpHが7以上9.5以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量が、2質量%以上10質量%以下である請求項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【請求項3】
さらに、ソルビトールを5質量%以上45質量%以下含有する請求項1又は2に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【請求項4】
練り歯磨き組成物であって、成分(C)の含有量が10質量%以上55質量%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【請求項5】
液体口腔用組成物であって、成分(C)の含有量が60質量%以上90質量%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【請求項6】
成分(A)、成分(B)、少なくとも一部の成分(C)、及びpH調整剤を含む混合物(1)を加熱する工程(1)を備える請求項1〜のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、象牙質知覚過敏用口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症は、歯面に機械的、温度的或いは化学的刺激が与えられた際に疼痛が誘発される疾患である。歯周炎の進行や加齢、強い歯磨処理等によって、歯肉の退縮や歯牙のエナメル質の損傷が生じ、これらに被覆されていた歯牙の象牙質が露出することが要因となる。従来より、このような象牙質知覚過敏症を予防又は治療するために種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重炭酸カリウム及び塩化カリウムの中から選択されたカリウム塩を有効量で施用する方法が開示されており、カリウムイオンの作用によって知覚神経自体の活動の低下を図り、疼痛を緩和させるものである。
【0004】
一方、象牙質知覚過敏症の発症メカニズムとしては、動水力学説、すなわち、露出した象牙質の表面では象牙細管が開口し、外部からの刺激がこの開口部から象牙細管内の組織液へと伝達され、組織液の流動が細管内の奥端部に位置する歯髄神経に到達して、疼痛が知覚されるという説が支持されている。こうした説に基づき、象牙質知覚過敏症の発症を抑制するため、露出した象牙質の表面における象牙細管の開口部を物理的に封鎖すると共に、脱感作剤を併用することが提案されている。例えば、特許文献2には、アルミニウム化合物を含有する第一液と、リン酸化合物等を含有する助剤とに分離構成した知覚過敏症用塗布剤が開示されており、第一液と助剤との反応によってアルミニウム塩を沈着させることで、象牙細管の開口部を物理的に封鎖する試みがなされている。また、特許文献3に開示されている象牙質知覚過敏予防・治療剤は、乳酸アルミニウム等の金属塩とポリオールリン酸エステル等との反応により形成されるコロイドによって、特許文献2に開示された口腔用組成物と同様に、象牙細管の開口部の封鎖を図っている。
【0005】
さらに、特許文献4には、カリウム塩及びストロンチウム塩から選ばれる神経脱感作剤と、アクリルポリマー、アルキルリン酸エステル及び脂肪酸石鹸から選ばれる細管遮断剤とを含有する歯科用組成物が開示されており、象牙質表面上に細管遮断剤を堆積、膨潤又は沈殿させることによって、象牙質表面及び象牙細管内に神経脱感作剤を維持することを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表昭61−501389号公報
【特許文献2】特開平6−116153号公報
【特許文献3】特開平5―117157号公報
【特許文献4】特開2004−506663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の知覚神経の活動を低下させる方法は、知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて神経を鈍感にさせるため、充分に疼痛を低減できないおそれがある。また、特許文献2〜3では、いずれも象牙細管の開口部を封鎖して、象牙細管内の組織液の流動を抑制することが提案されているものの、特許文献2において形成させる乳酸アルミニウム塩を象牙細管の開口部に効果的に沈着させることは難しく、特許文献3に記載のコロイドによっても、象牙細管の開口部を充分に封鎖することは難しい。一方、特許文献4に記載の組成物は、細管遮断剤の成分によりpHが高く、またアルカリ剤が多いため、口腔内に為害性をもたらして象牙質知覚過敏症に起因する痛みを反って増強しかねないだけでなく、組成物の外観や風味にも課題がある。
【0008】
したがって、本発明は、露出した象牙質の表面における象牙細管の開口部を、即効的かつ充分に封鎖して、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的に防止するとともに、知覚過敏の使用者に対する刺激も少なく、かつ外観が良好である象牙質知覚過敏用口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、硝酸カリウム等の脱感作剤、及び特定の脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、並びに水を含有し、かつ特定のpH域とすることで、露出した象牙質の表面における象牙細管の開口部を即効的かつ充分に封鎖すると共に、露出した象牙質の表面及び象牙細管内部に脱感作剤を維持し、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的かつ持続的に防止することができ、知覚過敏の使用者に対する刺激も少ない上に、良好な外観を呈する象牙質知覚過敏用口腔用組成物が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)並びに(C):
(A)炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、
(B)硝酸カリウム、クエン酸三カリウム、及び酢酸カリウムから選ばれる1種または2種以上の脱感作剤、並びに
(C)水
を含有し、25℃におけるpHが7以上9.5以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物によれば、露出した象牙質の表面における象牙細管の開口部を即効的かつ充分に封鎖することができる。しかも、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的に防止することが可能である。また、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は耐酸性を有するため、酸性の飲料や食品によっても象牙細管の開口部を封鎖性が失われることを防止し、象牙質知覚過敏症に起因する痛み抑制効果を有効に持続することができる。
さらに、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、脱感作剤を併用しているため、象牙細管の開口部を効果的に被覆すると共に、露出した象牙質の表面及び象牙細管内部に脱感作剤を有効に保持させ、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的かつ持続的に防止することができる。
さらに、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、pHが7.0以上9.5以下であるため、口腔内の粘膜への刺激が防止され、かつ、組成物の外観も良好である。
そのため、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、象牙質知覚過敏症を予防又は改善するための、液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体の象牙質知覚過敏用口腔用組成物、練り歯磨組成物、その他の剤型を有する象牙質知覚過敏用口腔用組成物、象牙質知覚過敏軽減剤又は予防剤として、幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面のマイクロスコープ写真である。
図2図2は、実施例4の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面のマイクロスコープ写真である。
図3図3は、実施例5の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面のマイクロスコープ写真である。
図4図4は、比較例4の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面のマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、象牙細管は象牙質細管ともいう。また、象牙細管を封鎖するとは、象牙細管を物理的に封鎖することであって、象牙質の表面において象牙細管の開口を覆う状態だけでなく、象牙細管の表面近傍の細管内に充填して蓋をする(栓をする)状態であってもよい。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)は、炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩(A)を含有する。かかる成分(A)の脂肪酸のアルカリ金属塩は、脂肪酸カリウム、及び脂肪酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上である。成分(A)は、組成物中の脂肪酸塩の析出を防止して象牙細管を封鎖させる効果を高め、かつpHが必要以上に高くなってしまうことを防止する観点から、少なくとも脂肪酸カリウムを含むことが好ましく、より好ましくはかかる脂肪酸カリウムの含有量が、成分(A)中に、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
したがって、成分(A)は、後述する成分(B)によるカリウムイオンの存在により、脂肪酸カリウム塩を形成することにより、脂肪酸のカリウム塩を本発明の組成物中に溶解したままの状態で口腔内の隅々まで充分に行き渡らせて、所望の象牙質の表面まで容易に到達させることができる。また、脂肪酸のカリウム塩が歯の表面に到達した際には、かかる脂肪酸のカリウム塩又は脂肪酸が析出して歯の表面に堅固に固着するため、象牙細管の開口部を堅固に封鎖して、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的に防止することができる。また、脂肪酸及び脂肪酸のカリウム塩は耐酸性を有するため、酸性の飲料や食品等によって象牙細管の開口部の封鎖性が失われることも有効に防止し、象牙質知覚過敏症に起因する痛み抑制効果を持続することができる。なお、成分(A)のうち、脂肪酸のカリウム塩を形成したもの以外の残余の成分(A)は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、遊離脂肪酸または遊離脂肪酸基として存在することとなる。
【0014】
成分(A)が有する炭化水素基の炭素数は、成分(B)によるカリウムイオンの存在により形成される脂肪酸のカリウム塩が適度な温度域にクラフト点を有して良好な溶解性を保持する観点から、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下であり、本発明の組成物の使用時の口腔内で感じられる風味及び後味の観点から、好ましくは12以上である。また、成分(A)が有する炭化水素基は、好ましくは飽和炭化水素基であり、より好ましくは直鎖飽和炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、成分(A)が有する炭化水素基は、成分(A)の脂肪酸のカリウム塩の水への溶解性の観点から、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、及びパルミチン酸から選ばれる1種又は2種以上である。また、パルミチン酸又はその塩の含有量は、より風味を良好にする観点及びクラフト点とのバランスの観点から、成分(A)中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
なお、成分(A)としては、例えば、炭素数が12以上18以下の炭化水素基を有する脂肪酸又はその塩の混合物を用いることができる。かかる脂肪酸又はその塩の混合物としては、例えば、ルナックL98(ラウリン酸99質量%、花王株式会社)、ルナックM98(ミリスチン酸99質量%、花王株式会社)、ルナックP95(パルミチン酸96質量%、花王株式会社)を用いることができる。
【0015】
成分(A)の含有量は、象牙質細管の封鎖効果の観点から、本発明の組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上である。成分(A)の含有量は、油臭い風味の抑制の観点、及び苦みを抑制する観点から、本発明の組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.8質量%以下である。
【0016】
成分(A)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合、象牙細管の封鎖効果の観点から、本発明の組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上である。成分(A)の含有量は、油臭い風味の抑制の観点、及び苦みを抑制する観点から、本発明の組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.8質量%以下である。
成分(A)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体口腔用組成物である場合、象牙細管の封鎖効果の観点から、本発明の組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、油臭い風味の抑制の観点、苦みを抑制する観点、及び安定性の観点から、好ましくは1.5質量以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.8質量%以下である。
【0017】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、象牙質の細管に存在する知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて神経の過敏性を除去する観点、又は神経を鈍感にさせる作用をもたらす観点から、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、及び酢酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上の脱感作剤(B)を含有する。これらの脱感作剤(B)は、水溶性であり、水(C)を含有する組成物において、カリウムイオンを供給して、知覚神経周辺のイオンバランスを変化させることができる、いわゆる神経鈍感化成分である。また、脱感作剤(B)によるカリウムイオンは、成分(A)と共存することによって、脂肪酸カリウム塩の生成に寄与し、象牙細管の開口封鎖に寄与することもできる。
脱感作剤(B)は、神経を鈍感にさせる作用を向上する観点から、好ましくは硝酸カリウム、クエン酸カリウムから選ばれる1種又は2種である。
【0018】
脱感作剤(B)の含有量は、本発明の組成物を口腔内に適用した際に、脱感作剤(B)により、有効に知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて象牙質知覚過敏症に起因する痛みの軽減を図る観点、及び成分(A)との併用による象牙細管の開口封鎖の観点から、本発明の組成物中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上である。脱感作剤(B)の含有量は、成分(A)と塩味を混合した異味を感じさせることを防止する観点から、本発明の組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
また、脱感作剤(B)のモル濃度は、有効に知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて象牙質知覚過敏症に起因する痛みの軽減を図る観点から、本発明の組成物中に、30〜70mmolであることが好ましい。
【0019】
成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))は、象牙細管を封鎖させる効果を確保する観点、必要以上にpHが高まることを防止する観点、油っぽい風味や異味を抑制する観点、及び象牙質知覚過敏症に起因する痛みの軽減を有効に図る観点から、好ましくは1〜60であり、より好ましくは2〜40であり、さらに好ましくは5〜26である。
【0020】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらに水(C)を含有する。これにより、成分(B)のカリウムイオンを組成物中に存在させるとともに、成分(A)の脂肪酸と成分(B)のカリウムイオンにより脂肪酸又はそのカリウム塩を存在させ、成分(A)を組成物中に良好に溶解させながら、口腔内の隅々まで充分に行き渡らせることが可能となる。また、象牙質の表面又は象牙細管の開口を脂肪酸又は脂肪酸のカリウム塩で覆うことも可能となり、象牙細管の開口部封鎖性を高めることができる。
【0021】
成分(C)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合、溶解性の高い脂肪酸のカリウム塩を効率的に形成させる観点、及び象牙細管の開口部封鎖性を向上する観点、適度なpHや良好な風味及び使用感並びに口腔内での組成物の分散性を保持する観点から、本発明の組成物中に、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、練り歯磨組成物の保形性の観点から、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0022】
また、成分(C)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液状歯磨剤、洗口剤などの液体口腔用組成物である場合、本発明の組成物中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
【0023】
本発明の組成物の25℃におけるpHは、成分(A)と成分(B)の水への高い溶解性を保持し、脂肪酸のカリウム塩を形成させる観点、及び成分(B)の異味の発現を防止する観点から、7以上であって、好ましくは7.1以上であり、より好ましくは7.3以上であり、口腔内の粘膜への為害性の低減させる観点、及び組成物の変色や香料の変調を防止する観点から、9.5以下であって、より好ましくは9.2以下であり、さらに好ましくは9以下であり、よりさらに好ましくは8.5以下である。
なお、本発明の組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、組成物を希釈せずに測定した値を意味し、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【0024】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、pH調製剤として、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる1種又は2種のアルカリ剤を含有することができる。なかでも、水酸化カリウムが好ましい。かかるpH調整剤の含有量は、成分(A)、成分(B)の水への高い溶解性を保持する観点、成分(A)と成分(B)とにより脂肪酸のカリウム塩を形成させ、かつ安定させる観点、口腔内の粘膜への為害性を低減させる観点、組成物の変色や香料の変調を防止し良好な風味や外観をもたらす観点から、本発明の組成物中に、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
【0025】
また、pH調整剤として上記アルカリ剤を含有する場合における、pH調整剤中の水酸化カリウムの含有量は、脂肪酸のカリウム塩の形成や良好な外観等の観点から、pH調整剤中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、pH調整剤が水酸化カリウムからなることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨組成物である場合は、研磨剤を含有しないか、或いは研磨剤を10質量%以下含有することができる。かかる研磨剤としては、研磨性シリカ、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト等の研磨剤等が挙げられ、組成物のpHの上昇を抑制する観点から、少なくとも研磨性シリカを含む研磨剤が好ましく、研磨性シリカのみからなる研磨剤がより好ましい。なお、ここで研磨性シリカとは、吸油量が50〜150mL/100gのものをいい、吸油量はシリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。本発明の組成物は、これらから選ばれる1種又は2種以上の研磨剤を用いることができる。
【0027】
本発明の組成物が研磨剤を含有する場合、その含有量は、象牙細管の封鎖効果の観点、知覚過敏の使用者の歯磨剤によるさらなる知覚過敏の進行を抑制する観点から、本発明の組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下であり、知覚過敏の進行の抑制と歯磨剤による歯の汚れ除去性能の両立の観点から、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは2質量%以上である。
【0028】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、脂肪酸又はその塩の象牙細管への付着性を向上させる、象牙細管の封鎖性をより向上させる観点から、さらにステアリン酸亜鉛を含有することができる。かかるステアリン酸亜鉛の含有量は、本発明の組成物の封鎖効果や使用感の観点から、本発明の組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。
【0029】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらに、湿潤効果及び風味の観点から、ソルビトールを含有することが好ましい。かかるソルビトールの含有量は、良好な風味と湿潤効果を得る観点から、本発明の組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、成分(A)による油っぽい風味を抑制する観点から、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0030】
ソルビトールの含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合、良好な風味と湿潤効果を得る観点から、本発明の組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、成分(A)による油っぽい風味を抑制する観点から、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0031】
また、本発明の組成物におけるソルビトールの含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液状歯磨剤、洗口剤及び口中清涼剤等の液体口腔用組成物である場合、良好な風味と湿潤効果を得る観点から、本発明の組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、成分(A)による油っぽい風味を抑制する観点から、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0032】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらにソルビトール以外の湿潤剤を含有することができる。かかる湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マルチトール、及びラクトール等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。ソルビトールとグリセリンの合計含有量は、本発明の組成物の保存安定性や風味の観点から、本発明の組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。また、ソルビトールとグリセリンの合計含有量は、本発明の組成物が練り歯磨組成物の場合には、成分(A)による油っぽい風味を抑制する観点から、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、本発明の組成物が液体口腔用組成物である場合には、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。なお、グリセリンの含有量は、風味の観点から、本発明の組成物中に、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0033】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらに粘結剤を含有することができる。かかる粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、及びグアーガム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。かかる粘結剤の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液状歯磨組成物又は練り歯磨組成物である場合、本発明の組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下である。
【0034】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液状歯磨組成物又は練り歯磨組成物である場合は、上記粘結剤とともに、さらに増粘性シリカを併用することが好ましい。増粘性シリカとは、吸油量が200〜400mL/100gのシリカである。ここで、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。増粘性シリカの含有量は、本発明の組成物中に、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜8質量%である。
【0035】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;サッカリンナトリウム等の甘味剤;メントール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル等のサリチル酸エステル、リモネン、シトラール、シトロネラール、ペリラアルデヒド、シンナミックアルデヒド、1,8−シネオール等の香料;色素;薬効成分等を適宜含有することができる。
【0036】
またさらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、乳酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、アルギニン−炭酸カルシウム等の象牙質知覚過敏用の他の成分を含有することもできる。
【0037】
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法は、成分(A)、成分(B)、成分(C)の一部(C1)又は全部、及びpH調整剤を含む混合物(1)を、成分(A)の融点以上の温度に加熱する工程(1)を含むことができる。工程(1)における加熱温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは55℃以上であり、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは80℃以下である。
この工程(1)において、混合物(1)に他の水溶性成分を混合することもできる。かかる他の水溶性成分としては、例えば、フッ素イオン供給化合物、サッカリンナトリウム等の水溶性成分が挙げられる。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法は、この工程(1)を経た後、混合物(1)に粘結剤を添加し、混合して混合物(2)を得る工程(2)を含むことが好ましい。
【0038】
また、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法は、工程(2)を経た後、混合物(2)に界面活性剤及び研磨剤等の粉体を添加して混合物(3)を得る工程(3)を含むことが好ましい。この工程(3)において、ステアリン酸亜鉛を混合することが好ましい。
この工程(2)又は工程(3)において、成分(C)の残部(C2)を添加して混合しても良い。
さらに、工程(3)を経た後、15〜30℃の室温において、混合物(3)に香料を添加し、混合する工程(4)を含んでも良い。
【0039】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の象牙質知覚過敏用口腔用組成物及びその製造方法を開示する。
[1]次の成分(A)、(B)並びに(C):
(A)炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、
(B)硝酸カリウム、クエン酸三カリウム及び酢酸カリウムから選ばれる1種または2種以上の脱感作剤、並びに
(C)水
を含有し、かつ
25℃におけるpHが7以上9.5以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0040】
[2]成分(A)の含有量は、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.8質量%以下である上記[1]に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[3]成分(A)の含有量は、脂肪酸換算量で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1.5質量以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.8質量%以下であり、かつ液体口腔用組成物である上記[1]又は[2]に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[4]成分(B)の含有量は、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である上記[1]〜[3]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[5]成分(C)の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下であり、かつ練り歯磨き組成物である上記[1]〜[2]又は[4]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[6]成分(C)の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、かつ液体口腔用組成物である上記[1]〜[4]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0041】
[7]25℃におけるpHが、好ましくは7.1以上であり、より好ましくは7.3以上であり、好ましくは9.2以下であり、より好ましくは9以下であり、さらに好ましくは8.5以下である上記[1]〜[6]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[8]pH調整剤として、好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種のアルカリ剤を含有し、より好ましくは水酸化カリウムを含有する上記[1]〜[7]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[9]pH調整剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である上記[1]〜[8]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[10]水酸化カリウムの含有量は、pH調整剤中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、pH調整剤が水酸化カリウムからなることがさらに好ましい上記[8]又は[9]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0042】
[11]好ましくは研磨剤を含有しないか、又は10質量%以下含有し、より好ましくは8質量%以下含有し、さらに好ましくは6質量%以下含有し、好ましくは0質量%より多く含有し、より好ましくは2質量%以上含有し、かつ練り歯磨組成物である上記[1]〜[2]、[4]〜[5]、[7]〜[10]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[12]組成物中に研磨剤を含有する場合、好ましくは研磨剤が研磨性シリカを含有する[11]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[13]ステアリン酸亜鉛をさらに含有し、ステアリン酸亜鉛の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である上記[1]〜[12]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0043】
[14]ソルビトールの含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である上記[1]〜[13]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[15]ソルビトールの含有量が、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、かつ液体口腔用組成物である上記[1]、[3]〜[4]、[6]〜[10]、[14]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[16]グリセリンをさらに含有し、ソルビトールとグリセリンの合計含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、かつ練り歯磨き組成物である上記[14]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[17]グリセリンをさらに含有し、ソルビトールとグリセリンの合計含有量は、5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、かつ液体口腔用組成物である上記[15]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[18]グリセリンの含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下である[16]又は[17]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0044】
[19]成分(A)が有する炭化水素基が直鎖飽和炭化水素基である上記[1]〜[18]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[20]成分(A)が有する炭化水素基の炭素数は、好ましくは18以下であり、より好ましくは16以下であり、好ましくは12以上である上記[1]〜[19]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[21]成分(A)が有する炭化水素基の炭素数は16である上記[20]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[22]成分(A)の脂肪酸のアルカリ金属塩は、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選ばれる上記[1]〜[21]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[23]成分(A)の脂肪酸のアルカリ金属塩は、脂肪酸カリウムである上記[22]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[24]脂肪酸カリウムの含有量は、成分(A)中に、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である上記[22]又は[23]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[25]成分(B)と成分(A)の質量比((B)/(A))は、好ましくは1〜60であり、より好ましくは2〜40であり、さらに好ましくは5〜26である上記[1]〜[24]のいずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
[26]象牙質知覚過敏の予防用又は治療用である上記[1]〜[25]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
【0045】
[27]成分(A)、成分(B)、少なくとも一部の成分(C)、及びpH調整剤を含む混合物(1)を加熱する工程(1)を備える上記[1]〜[25]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[28]工程(1)において、成分(A)の融点以上の温度に加熱する上記[27]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[29]工程(1)における加熱温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは55℃以上であり、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは80℃以下である上記[27]又は[28]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[30]工程(1)において、水溶性成分を添加して混合する上記[27]〜[29]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
【0046】
[31]工程(1)を経た後、粘結剤を添加し、混合して混合物(2)を得る工程(2)を含む上記[27]〜[30]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[32]工程(2)を経た後、界面活性剤及び研磨剤を添加し、混合して混合物(3)を得る工程(3)を含む上記[31]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[33]工程(3)においてステアリン酸亜鉛を混合する上記[32]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[34]工程(2)又は工程(3)において、成分(C)の残部を添加して混合する上記[32]または[33]の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
[35]工程(3)を経た後、15〜30℃の室温において、混合物(3)に香料を添加し、混合する工程(4)を含む上記[32]〜[34]いずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法。
【0047】
[36]上記[1]〜[26]のいずれか1の口腔用組成物の象牙質知覚過敏軽減剤又は予防剤の製造のための使用。
[37]上記[1]〜[26]のいずれか1の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の象牙細管封鎖剤の製造のための使用。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0049】
[実施例1〜11、比較例1〜6]
表1に示す実施例1〜10、表2に示す比較例1〜6の練り歯磨き組成物は、成分(A)、成分(B)、一部又は全部の成分(C)、pH調整剤及び他の水溶性成分を常法にしたがって混合して約60℃に加熱し、得られた混合物に粘結剤を添加して混合し、その後界面活性剤、研磨剤、ステアリン酸亜鉛等を添加して混合し、最後に室温(25℃)で香料を添加して混合することにより製造した。表1に示す実施例11は、ステアリン酸亜鉛を添加しないこと以外は、上記実施例1〜10と同様に練り歯磨き組成物を製造した。
得られた各組成物を用い、下記に示す象牙細管の開口部封鎖状態の評価方法1により、象牙細管の開口部の封鎖状態の評価を行った。評価結果を表1〜2にそれぞれ示す。
[実施例12]
また、表3に示す実施例12の液体知覚過敏用口腔用組成物は、上記と同様に製造し、下記に示す象牙細管の開口部封鎖状態の評価方法2により、象牙細管の開口部の封鎖状態の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0050】
《象牙細管の開口部封鎖状態の評価》
象牙細管の開口部封鎖状態の評価方法1
牛歯の象牙質を試料とし、試料を1モル乳酸水溶液にて室温で30分脱灰し、砥粒サイズ40μmのサンドペーパー、及び砥粒サイズ3μmのサンドペーパーで表面を研磨処理した。この試料の表面を、実施例1〜11及び比較例1〜6の練り歯磨組成物2gと蒸留水6gを混合した溶液8gに30秒間浸漬し、次に試料を蒸留水で10秒間洗浄した。洗浄後の試料の表面に白金蒸着させて、表面における象牙細管の開口部を、電子顕微鏡(SEM:日立S−4800)を用いて倍率2000倍で観察し、目視で象牙細管の開口状態を確認し、下記の基準により評価した。評価の結果を表1〜2に示す。
象牙細管の開口部封鎖状態の評価方法2
一方、実施例12について、牛歯の象牙質を試料とし、試料を1モル乳酸水溶液にて室温で30分脱灰し、砥粒サイズ40μmのサンドペーパー、及び砥粒サイズ3μmのサンドペーパーで表面を研磨処理した。この試料の表面を、実施例12の液体知覚過敏用口腔用組成物10mlに30秒間浸漬し、次に試料を蒸留水で10秒間洗浄した。洗浄後の試料の表面に白金蒸着させて、表面における象牙細管の開口部を、電子顕微鏡(SEM:日立S−4800)を用いて倍率2000倍で観察し、目視で象牙細管の開口状態を確認し、下記の基準により評価した。評価の結果を表3に示す。
AA:象牙細管の開口が充分に覆われている
A :象牙細管の開口がほぼ覆われている
B :象牙細管の開口が覆われている部分と、象牙質が露出している部分とを確認できる
C :象牙質の表面に付着物を確認できるが、象牙質がほぼ露出している
D :象牙細管が露出している(象牙質の表面に付着物を確認できない)
【0051】
図1〜4は、実施例1、4〜5、及び比較例4の知覚過敏用口腔用組成物で処理した後の試料の状態を示す電子顕微鏡(SEM:日立S−4800)の写真である。図1及び図2に示すように、象牙質の表面には光に反射して光沢のある付着物があり、象牙細管の開口部をこれらの付着物が封鎖している状態が認められる。図3では、象牙細管の開口が付着物で覆われている部分と、象牙質が露出している部分とが認められる。図4は、象牙質が露出しており、表面に付着物は確認されず、象牙細管の開口部を確認することができる。
【0052】
《象牙質知覚過敏症に起因する痛みの抑制効果の評価》
表1〜2に示す実施例1〜11、比較例1〜6の口腔用組成物について、使用直後の象牙質知覚過敏症に起因する痛み防止の程度を評価した。評価対象者は最近1ヶ月の間で歯がしみるのが毎日である者、又は週に数回である者をパネラーとした。評価方法は、パネラー3名に各口腔用組成物1gを歯ブラシ(ディープクリーン超コンパクト 普通・花王(株)製)にとりブラッシング1分間行ってから吐き出して口を水で漱ぎ、使用直後に冷水を口に含み、象牙質知覚過敏症に起因する痛みの評価を行った。
評価は、3:しみない、2:ややしみる、1:しみる、の3つの中から回答を得た。パネラーの回答の合計値を象牙質知覚過敏症に起因する痛みの抑制効果の評価として表1〜2に示す。この評価は、数値が大きいほど、象牙質知覚過敏症に起因する痛みが抑制又は低減されたことを意味する。
【0053】
《風味の評価方法》
実施例1〜11及び比較例1〜6について、風味の評価は、練り歯磨き組成物1gを歯ブラシ(ディープクリーン超コンパクト 普通・花王(株)製)を用いてブラッシング2分間行ってから吐き出して口を水で漱ぎ、下記基準にしたがってパネラー3名により行った。
実施例12について、風味の評価は、液体知覚過敏用口腔用組成物を口に含み20秒間含嗽した後に吐き出し、実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に、パネラー3名により行った。なお、風味の評価は、3名のうち2名以上の共通する評価を表1〜3にそれぞれ示す。
A:油臭さや硝酸味がなく、香味の変化もなかった
B:少し油臭さが感じられた(B−1)、或いは少し硝酸味のような異味が感じられ香味の変化が認められた(B−2)
C:油臭さが感じられた(C−1)、或いは硝酸味のような異味が感じられ香味の変化が認められた(C−2)
【0054】
《外観評価》
また、上記実施例1〜12及び比較例1〜6により得られた各組成物について、変色及び結晶析出の観点から、下記基準にしたがって外観評価を行った。評価結果を表1〜3に示す。
A:外観上の変化はなかった
C:変色が認められた(C−1)、或いは成分(A)の脂肪酸の析出が認められた(C−2)
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
表1〜3の結果によれば、実施例1〜12の組成物は、比較例1〜6の組成物に比して、象牙細管の開口が封鎖されており、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的且つ持続的に防止するとともに、口腔内の粘膜への刺激が防止され、かつ、組成物の外観も良好であり、風味や香味においても、比較例に比べて良いことが分かった。
図1
図2
図3
図4