(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の極低温装置であって、前記コールドヘッド挿入部の筒部が前記コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に伸縮可能であり、その収縮状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素から離間させ、伸長状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素に接触させる、極低温装置。
請求項2記載の極低温装置であって、前記筒部は前記コールドヘッドの挿入方向に弾性的に伸縮可能であるとともに、前記コールドヘッドが挿入されていない状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素から離間させる自然長を有する一方、前記極低温装置は、前記コールドヘッド及び前記コールドヘッド挿入部にそれぞれ設けられて前記コールドヘッドの挿入に伴いその挿入方向と平行な方向に互いに当接する冷凍機側操作力伝達部及び挿入部側操作力伝達部を備え、当該冷凍機側操作力伝達部及び当該挿入部側操作力伝達部は前記コールドヘッドに加えられる挿入方向の操作力を前記コールドヘッド挿入部に伝達して前記コールドヘッド挿入部の筒部を伸長させることにより前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素に接触させる、極低温装置。
請求項3または4記載の極低温装置であって、前記被冷却体側熱スイッチ要素は弾性変形可能な編組体を含む支持体を介して前記被冷却体に支持され、前記編組体はその弾性変形により前記被冷却体側熱スイッチ要素が前記被冷却体側に近づく向きに変位するのを許容する、極低温装置。
請求項1〜5のいずれかに記載の極低温装置であって、前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部は、これらの凹凸部同士の間に前記挿入方向と平行な方向及びこれと直交するコールドヘッド径方向の双方について隙間を形成することが可能な形状を有する、極低温装置。
請求項6記載の極低温装置であって、前記冷凍機側凹凸部は、前記挿入部側凹凸部に対向する冷凍機側基面と、この冷凍機側基面から突出する複数枚の冷凍機側フィンと、を有し、前記挿入部側凹凸部は、前記冷凍機側凹凸部に対向する挿入部側基面と、この挿入部側基面から前記冷凍機側フィン同士の間に突出する複数枚の挿入部側フィンと、を含む、極低温装置。
請求項6または7記載の極低温装置であって、前記コールドヘッド及び前記コールドヘッド挿入部にそれぞれ設けられ、前記コールドヘッドの挿入に伴って互いに当接することにより、前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部との間に前記挿入方向と平行な方向及びこれと直交するコールドヘッド径方向の双方について隙間を確保するように両凹凸部の相対位置を決める位置決め部をさらに備える、極低温装置。
請求項8記載の極低温装置であって、前記位置決め部として、前記冷凍機側フィンとともに前記コールドヘッドの低温端から前記コールドヘッド挿入部の底部に向かって突出する冷凍機側位置決め部と、前記挿入部側フィンとともに前記コールドヘッド挿入部の底部から前記コールドヘッドの低温端に向かって突出する挿入部側位置決め部と、を有し、両位置決め部は互いに当接する当接面を有し、これらの当接面は前記コールドヘッドの径方向の内側に向かうに従って前記コールドヘッド挿入部の底部の側に変位する向きのテーパー面である、極低温装置。
請求項1〜9のいずれかに記載の極低温装置であって、前記コールドヘッドに設けられて当該コールドヘッドの前記コールドヘッド挿入部への挿入時に前記被冷却体容器または前記コールドヘッド挿入部と接触して当該コールドヘッド挿入部内を密閉するシール部をさらに備える、極低温装置。
請求項10記載の極低温装置であって、前記シール部により密閉された前記コールドヘッド挿入部内のガスを前記熱伝導媒体からなるガスに置換するためのガス給排管をさらに備える、極低温装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載される装置では、コールドヘッド104の脱着の際の被冷却体への熱侵入を回避することが困難である。具体的に、前記コールドヘッド104を前記スリーブ108から抜き取るためには当該スリーブ108内を窒素の沸点以上の温度まで加温しなければならず、さらに、その抜取り後はスリーブ108内が大気中に開放されることになる。このとき、前記スリーブ108から前記閉塞板110を通じて液体ヘリウム容器100内に大きな熱が侵入する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、コールドヘッドを有する冷凍機により被冷却体を冷却するための極低温装置であって、前記被冷却体への熱侵入を有効に抑止しながら、前記コールドヘッドを前記被冷却体に対して高効率で熱伝達可能となるように着脱可能に連結することを可能にするもの、及び当該極低温装置
での被冷却体
に対する冷凍機の
接続及び切り離し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コールドヘッドを有する冷凍機により被冷却体を冷却するための極低温装置を提供する。この極低温装置は、外壁を有してその内側に前記被冷却体を収容する被冷却体容器と、前記外壁から前記被冷却体に向かって延び、前記コールドヘッドがその低温端側から挿入されるのを許容するように前記外壁の外側に開口する筒状をなす筒部とこの筒部の奥側端部を塞ぐように当該筒部につながる底部とを有し、そのコールドヘッドの挿入によって内部が密閉される形状を有するコールドヘッド挿入部と、前記コールドヘッドの低温端と前記コールドヘッド挿入部の底部との間に熱伝導可能な熱連結部を形成するための熱連結形成部と、前記コールドヘッド挿入部の底部と前記被冷却体との間に設けられる熱スイッチと、備える。前記熱連結形成部は、前記コールドヘッドの低温端に設けられて当該コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に起伏する冷凍機側凹凸部と、前記コールドヘッド挿入部の底部のうち前記コールドヘッドの低温端側を向く
冷凍機側面に設けられて前記冷凍機側凹凸部と隙間をおいて対向可能となるように当該コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に起伏する挿入部側凹凸部と、を有し、両凹凸部は、これら同士の隙間内でガス状の熱伝導媒体が前記コールドヘッドの低温端の運転温度下で凝固することにより前記熱連結部を形成する形状を有する。前記熱スイッチは、前記底部のうち前記被冷却体側を向く面
であって前記冷凍機側面と反対側の面である被冷却体側面に設けられる挿入部側熱スイッチ要素と、この挿入部側熱スイッチ要素に対して前記コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に対向するように前記被冷却体に配置される被冷却体側熱スイッチ要素と、を有し、両スイッチ要素が前記コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に相対変位することにより、互いに接触して
前記熱連結形成部の前記挿入部側凹凸部を含む前記コールドヘッド挿入部の底部と前記被冷却体との間の熱伝導を許容する
ことにより前記コールドヘッドの低温端から前記熱連結部及び前記コールドヘッド挿入部の底部を通じて前記被冷却体に前記冷凍機の生成する冷熱が伝達されることを可能にするオン状態と、互いに離間して
前記熱連結形成部の前記挿入部側凹凸部を含む前記コールドヘッド挿入部の底部と前記被冷却体との間の熱伝導を
遮断することにより前記オン状態に比べて前記コールドヘッド挿入部から前記被冷却体への熱侵入を抑えながら前記熱連結部の昇温による消滅を可能にするオフ状態と、に切換えられる。
【0010】
また、本発明は、コールドヘッドを有する冷凍機
の被冷却体
に対する接続及び切り離しを行うための方法を提供する。この方法は、前記極低温装置を用意することと、前記極低温装置のコールドヘッド挿入部内に冷凍機のコールドヘッドをその低温端側から挿入することにより、当該コールドヘッド挿入部内を密閉するとともに、前記コールドヘッドの低温端に設けられた冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部と隙間をおいて対向させること
、前記冷凍機の運転により前記隙間内でガス状の熱伝導媒体を凝固させて熱連結部を形成すること
、及び前記熱スイッチをオン
状態にすること
、により前記コールドヘッドを前記熱連結部及び前記熱スイッチを介して前記被冷却体に接続することと、
前記熱連結部が形成された状態で前記熱スイッチをオフ状態にしかつ前記冷凍機の運転を停止させることにより前記オン状態に比べて前記コールドヘッド挿入部から前記被冷却体への熱侵入を抑えながら前記熱連結部の昇温により当該熱連結部を消滅させ、これにより前記コールドヘッドを前記被冷却体から切り離すことと、を含む。
【0011】
以上のようにして両凹凸部および凝固した熱伝導媒体により形成された熱連結部は、冷凍機が生成する冷熱がその低温端から当該熱連結部を通じてコールドヘッド挿入部の底部に伝達されることを可能にする。そして、この底部に伝達された冷熱は、オン状態にある熱スイッチ(すなわち互いに接触した状態にある挿入部側熱スイッチ要素及び被冷却体側熱スイッチ要素)を介して被冷却体に伝達されることができる。
【0012】
さらに、このようにしてコールドヘッド挿入部に挿入されたコールドヘッドは、前記被冷却体への熱侵入を抑えながら前記コールドヘッド挿入部から脱着されることが可能である。具体的には、前記熱スイッチをオフ状態(すなわち前記挿入部側熱スイッチ要素と被冷却体側熱スイッチ要素とを互いに離間させた状態)にした上で、冷凍機の運転を停止させればよい。これにより、凝固した熱伝導媒体により形成された熱連結部が昇温して気化し、それまで連結されていたコールドヘッドの冷却端とコールドヘッド挿入部の底部とが切離し可能となる。このとき、前記熱スイッチがオフ状態とされているため、前記の昇温に伴う被冷却体への熱侵入が有効に抑止される。
【0013】
具体的に、前記熱スイッチをオンオフさせるための手段としては、前記コールドヘッド挿入部の筒部が前記コールドヘッドの挿入方向と平行な方向に伸縮可能であり、その収縮状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素から離間させ、伸長状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素に接触させるものが、好適である。この構造によれば、被冷却体側の構造を複雑にすることなく、コールドヘッド挿入部を構成する筒部の伸縮で熱スイッチのオンオフ切換を達成することができる。
【0014】
さらに、前記筒部は前記コールドヘッドの挿入方向に弾性的に伸縮可能であるとともに、前記コールドヘッドが挿入されていない状態で前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素から離間させる自然長を有する一方、前記極低温装置は、前記コールドヘッド及び前記コールドヘッド挿入部にそれぞれ設けられて前記コールドヘッドの挿入に伴いその挿入方向と平行な方向に互いに当接する
冷凍機側操作力伝達部及び挿入部側操作力伝達部を備え、
当該冷凍機側操作力伝達部及び当該挿入部側操作力伝達部は前記コールドヘッドに加えられる挿入方向の操作力を前記コールドヘッド挿入部に伝達して前記コールドヘッド挿入部の筒部を伸長させることにより前記挿入部側熱スイッチ要素を前記被冷却体側熱スイッチ要素に接触させるものが、好適である。この構造では、前記コールドヘッド挿入部内への前記コールドヘッドの挿入操作を利用してそのまま熱スイッチをオフからオンに切換えることを可能にする。
【0015】
そして、前記
冷凍機側操作力伝達部及び前記挿入部側操作力伝達部は、
当該冷凍機側操作力伝達部及び当該挿入部側操作力伝達
部が互いに当接することにより前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部との間に前記隙間を確保するように配置されているのが、よい。
【0016】
また、前記被冷却体側熱スイッチ要素は弾性変形可能な編組体を含む支持体を介して前記被冷却体に支持され、前記編組体はその弾性変形により前記被冷却体側熱スイッチ要素が前記被冷却体側に近づく向きに変位するのを許容するのが、好ましい。この場合、前記編組体を弾性変形させるまで前記底部が変位するように前記コールドヘッド挿入部に前記コールドヘッドが挿入されることにより、前記編組体の弾発力を利用して熱スイッチ要素同士の接触圧を高めてこれらの密着性を向上させることが可能である。
【0017】
一方、前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部は、これらの凹凸部同士の間に前記挿入方向と平行な方向及びこれと直交するコールドヘッド径方向の双方について隙間を形成することが可能な形状を有するものが、好ましい。このような形状は、凝固した熱伝導媒体を媒介として前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部との間でコールドヘッドの挿入方向と平行な方向だけでなくコールドヘッド径方向にも冷熱を伝えることを可能にし、熱伝導性能をさらに高めることができる。
【0018】
具体的に、前記冷凍機側凹凸部は、前記挿入部側凹凸部に対向する冷凍機側基面と、この冷凍機側基面から突出する複数枚の冷凍機側フィンと、を有し、前記挿入部側凹凸部は、前記冷凍機側凹凸部に対向する挿入部側基面と、この挿入部側基面から前記冷凍機側フィン同士の間に突出する複数枚の挿入部側フィンと、を含むものが、好適である。
【0019】
そしてこれらの場合、極低温装置は、前記コールドヘッド及び前記コールドヘッド挿入部にそれぞれ設けられ、前記コールドヘッドの挿入に伴って互いに当接することにより、前記冷凍機側凹凸部と前記挿入部側凹凸部との間に前記挿入方向と平行な方向及びこれと直交するコールドヘッド径方向の双方について隙間を確保するように両凹凸部の相対位置を決める位置決め部を有するのが、好ましい。この位置決め部は、コールドヘッド挿入部内にコールドヘッドを挿入する作業のみで、前記両凹凸部同士の間にコールドヘッド挿入方向及び径方向の双方について好適な隙間を確保することを、可能にする。
【0020】
具体的に、前記極低温装置は、前記位置決め部として、前記冷凍機側フィンとともに前記コールドヘッドの低温端から前記コールドヘッド挿入部の底部に向かって突出する冷凍機側位置決め部と、前記挿入部側フィンとともに前記コールドヘッド挿入部の底部から前記コールドヘッドの低温端に向かって突出する挿入部側位置決め部と、を有し、両位置決め部は互いに当接する当接面を有し、これらの当接面は前記コールドヘッドの径方向の内側に向かうに従って前記コールドヘッド挿入部の底部の側に変位する向きのテーパー面であるのが、好ましい。これらの当接面は、前記コールドヘッドの挿入に伴って前記冷凍機側位置決め部を前記挿入部側位置決め部の径方向の内側に誘い込むことにより、コールドヘッドの挿入方向及び径方向の双方について同時に位置決めを行うことができる。
【0021】
本発明に係る極低温装置は、前記コールドヘッドに設けられて当該コールドヘッドの前記コールドヘッド挿入部への挿入時に前記被冷却体容器または前記コールドヘッド挿入部と接触して当該コールドヘッド挿入部内を密閉するシール部をさらに備えることが、好ましい。その場合、さらに、当該極低温装置は、前記シール部により密閉された前記コールドヘッド挿入部内のガスを前記熱伝導媒体からなるガスに置換するためのガス給排管をさらに備えるのが、好ましい。
【0022】
前記極低温装置は、前記コールドヘッド挿入部内に挿入されたコールドヘッドの運転中において前記熱連結形成部の温度を前記熱伝導媒体を液相に保つための温度に制御する温度制御装置をさらに備えることが、好ましい。この温度制御装置を用いた温度制御により、前記コールドヘッド挿入部内に供給した熱伝導媒体を一旦液相にして前記両凹凸部間の隙間に完全に行き渡らせることが可能であり、その後に当該温度制御を停止して前記熱伝導媒体を凝固させることにより、当該熱伝導媒体の凝固物を前記隙間内に確実に介在させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。この実施の形態に係る極低温装置は超電導磁石装置であり、超電導磁石10及びこれを収容する液体ヘリウム容器12を被冷却体として備え、これらが冷凍機20により冷却されるものである。しかし、本発明は被冷却体の種類に限定されず、SQUID磁力計その他の超伝導素子の冷却にも適用されることが可能である。
【0025】
図1に示す装置は、前記超電導磁石10及び液体ヘリウム容器12に加え、前記液体ヘリウム容器12を収容する熱シールド容器14と、この熱シールド容器14を収容しかつその内部に真空状態が形成される真空容器16と、コールドヘッド挿入部18と、を備える。
【0026】
前記超電導磁石10及び各容器12,14,16は、共通の水平な中心軸を有し、この中心軸に沿って伸びる試料空間22を囲むドーナツ状をなす。前記液体ヘリウム容器12は前記超電導磁石10を冷却するための液体ヘリウム13を収容し、この液体ヘリウム13内に前記超電導磁石10が浸漬される。また、この実施の形態に係る前記熱シールド容器14及び前記真空容器16は、被冷却体である前記超電導磁石10及び前記液体ヘリウム容器12を収容する被冷却体容器を構成する。
【0027】
図2に示すように、この実施の形態に係る前記冷凍機20は、2段式のGM冷凍機により構成される。具体的に、この冷凍機20は、冷凍機本体24と、これに接続されるコールドヘッド26と、を有する。コールドヘッド26は、略円柱状の全体形状をなし、その中段部分が第1冷却ステージ27を構成し、先端部分すなわち低温端が前記第1冷却ステージ27よりも設定温度の低い第2冷却ステージ28を構成している。前記第1冷却ステージ27は、前記熱シールド容器14を所定の第1目標温度(例えば40K)に冷却するように設計され、前記第2冷却ステージ27は、前記液体ヘリウム容器13を前記第1目標温度よりも低い第2目標温度(例えば4K以下)に冷却するように設計されている。
【0028】
この実施形態では、前記冷凍機本体24と前記コールドヘッド26との間にこれらの外径よりも大きな外径を有するフランジ部30が設けられている。各ステージ27,28も他の部分よりも大きな外径を有するが、前記第1冷却ステージ27の外径は前記フランジ部30の外径よりも小さく、前記第2冷却ステージ28の外径は前記第1冷却ステージ27の外径よりもさらに小さい。
【0029】
本発明では、使用される冷凍機の具体的な形状や構造は特に限定されない。例えば、単一段の冷凍機(例えば前記第2冷却ステージ28のみを有するもの)が用いられてもよい。
【0030】
前記コールドヘッド挿入部18は、前記真空容器16の外壁(この実施の形態では天壁)から被冷却体である液体ヘリウム容器12の近傍に至るまでの領域に設けられ、これに前記コールドヘッド26が挿入可能なものであって、
図2及び
図3に示すような筒部32と底部34とを有する。前記筒部32は、前記真空容器16の天壁から前記液体ヘリウム容器12に向かって下向きに延び(この実施の形態では下向きに延び)、前記コールドヘッド18がその低温端である第2冷却ステージ28の側から下向きに挿入されるのを許容するように前記天壁の外側に(この実施の形態では上向きに)開口する筒状をなす。前記底部34は、この実施の形態では円板状をなし、前記筒部32の奥側端部(この実施の形態では下端部)を塞ぐように当該筒部32につながる。
【0031】
前記筒部32は、コールドヘッド挿入方向と平行な方向(この実施の形態では上下方向)に弾性的に伸縮可能な構造を有し、その伸縮によって前記底部34を上下方向に変位させることができる。
【0032】
具体的に、この筒部32は、その上側から順に、直管部36と、熱シールド接続用スリーブ37と、蛇腹部38と、を有する。前記蛇腹部38は上下方向に伸縮可能であり、前記直管部36の上端及び前記蛇腹部38の下端がそれぞれ前記真空容器16の開口17の周縁部と前記底部34の周縁部とに接合されている。前記熱シールド接続用スリーブ37は前記直管部36と前記蛇腹部38との間に介在し、前記熱シールド容器14に熱伝導部材40を介して接続されている。
【0033】
一方、前記コールドヘッド26の第1冷却ステージ27の周縁下端面には、熱伝達スリーブ42が連結されている。この熱伝達スリーブ42は、前記コールドヘッド26を包囲するように配置され、その外周面上には径方向に撓み可能な図略の多数の撓み片が設けられている。そして、前記コールドヘッド挿入部18へのコールドヘッド26の挿入に伴って前記撓み片がその撓みを伴いながら前記熱シールド接続用スリーブ37の内周面に圧接することにより、前記第1冷却ステージ27の冷熱が前記熱伝達スリーブ42、前記熱シールド接続用スリーブ37及び前記熱伝導部材40を介して前記熱シールド容器14に伝えられる。
【0034】
前記冷凍機20のフランジ部30は、前記コールドヘッド挿入部18に前記コールドヘッド26が挿入された状態で高さ調節機構44を介して前記真空容器18の天壁上に支持され、これにより前記コールドヘッド挿入部18内を密閉することが可能である。
【0035】
この高さ調節機構44は、前記真空容器18の天壁上で前記開口17の周囲に立設された複数本のねじ軸45と、前記フランジ部30の周縁部下面に接合され、各ねじ軸45が挿通可能な貫通孔をもつドーナツ板状の高さ調節フランジ46と、前記各ねじ軸45に螺合される上下のナット47,48と、シール部50と、を有し、下側のナット48上に前記高さ調節フランジ46を載せて当該高さ調節フランジ46の上から上側ナット47を締めることにより、当該フランジ部30が真空容器16の天壁上に支持される。
【0036】
前記シール部50は、ドーナツ板状のシール材保持板52と、このシール材保持板52の下面に固定される、例えばOリングからなるシール材54と、前記シール材保持板52と前記高さ調節フランジ46の下面とを接続する筒状の蛇腹部56と、を有し、この蛇腹部56の弾性収縮変形を伴いながら前記シール材54が前記真空容器16の天壁の上面(前記開口17の周縁部の上面)に押付けられることにより、前記冷凍機20が前記コールドヘッド挿入部18内を密閉することを可能にする。
【0037】
従って、この高さ調節機構44によれば、前記ねじ軸45に対する各ナット47,48の相対位置を調節することにより、前記コールドヘッド挿入部18内に前記コールドヘッド26が完全挿入されるときの真空容器16の上面からの前記高さ調節フランジ46の高さHf(
図2)を調節すること、換言すれば、前記コールドヘッド挿入部18に対するコールドヘッド26の挿入深さを調節すること、が可能である。
【0038】
さらに、この極低温装置は、
図2に示すようなガス給排管58、熱連結形成部60、熱スイッチ70、及び温度制御装置80を備える。
【0039】
前記熱連結形成部60は、前記コールドヘッド26の低温端である第2冷却ステージ28と前記コールドヘッド挿入部18の底部34との間に熱伝導可能な熱連結部を形成するためのもので、前記第2冷却ステージ28に設けられる冷凍機側凹凸部と、前記底部34に設けられる挿入部側凹凸部とを有する。これらの凹凸部は、互いに隙間をおいて対向可能となるように前記コールドヘッド26の挿入方向と平行な方向に起伏し、かつ、前記隙間内で後述の熱伝導媒体が凝固することにより、前記熱連結部を形成する形状を有する。
【0040】
図3に示すように、この実施の形態に係る冷凍機側凹凸部は、前記挿入部側凹凸部に対向する冷凍機側基面61と、この冷凍機側基面61から下向きに突出する複数枚の冷凍機側フィン62と、を有する。前記冷凍機側基面61は、この実施の形態では、前記第2冷却ステージ28の下面により構成される。前記各冷凍機側フィン62は、前記第2冷却ステージ28の中心と合致する共通の中心をもつ円弧状をなし、当該第2冷却ステージ28の径方向に互いに間隔をおいて配列されている。さらに、この実施の形態では、各冷凍機側フィン62の内側への後述の熱伝導媒体の浸入を許容するため、
図4に示すように、各冷凍機側フィン62の周方向の一部が途切れている(
図4では便宜上最も外側の冷凍機側フィン62のみが図示されている。)。
【0041】
同様に、この実施の形態に係る挿入部側凹凸部は、前記冷凍機側凹凸部に対向する挿入部側基面63と、この挿入部側基面63から上向きに突出する複数枚の挿入部側フィン64と、を有する。前記挿入部側基面63は、この実施の形態では、前記底部34上に配設されたプレート65の上面により構成されているが、前記底部34の上面そのものにより構成されていてもよい。前記各挿入部側フィン64は、前記各冷凍機側フィン62と同じく前記第2冷却ステージ28の中心と合致する共通の中心をもつ円弧状をなし、当該第2冷却ステージ28の径方向に互いに間隔をおいて配列され、かつ、各挿入部側フィン64の内側への後述の熱伝導媒体の浸入を許容するため、
図4に示すように、各挿入部側フィン64の周方向の一部が途切れている。
【0042】
前記各冷凍機側フィン62と前記各挿入部側フィン64との相対位置関係については、前記コールドヘッド挿入部18内に前記コールドヘッド26が挿入された状態で、
図3及び
図4に示すように、互いに径方向に隣り合う冷凍機側フィン62同士の間に前記各挿入部側フィン64が突出し、当該冷凍機側フィン62と当該挿入部側フィン64との間にコールドヘッド26の挿入方向及び径方向の双方について隙間66が形成されるように、各フィン62,64が配置されている。
【0043】
さらに、この極低温装置は、前記隙間66が確実に形成されるように前記両フィン62,64の相対的な位置決めを行うための位置決め部である冷凍機側位置決め部67及び挿入部側位置決め部68を備えている。
【0044】
前記冷凍機側位置決め部67は、前記各フィン62,64と同じく第2冷却ステージ28の中心と合致する中心をもつ円弧状かつフィン状をなし、その周方向の一部が途切れている。冷凍機側位置決め部67は、最も外側の冷凍機側フィン62のさらに外側の位置で前記冷凍機側基面61から前記冷凍機側フィン62と同様に下向きに突出し、かつ、その下面は、径方向の内側に向かうに従って底部34側(
図3及び
図4では下側)に変位する向きのテーパ面である当接面67aを構成する。
【0045】
一方、前記挿入部側位置決め部68も、前記各フィン62,64と同じく第2冷却ステージ28の中心と合致する中心をもつ円弧状かつフィン状をなし、その周方向の一部が途切れている。挿入部側位置決め部68は、最も外側の挿入部側フィン64のさらに外側の位置で前記底部34の上面から前記挿入部側フィン64と同様に上向きに突出し、かつ、その上面は、径方向の内側に向かうに従って底部34側(
図3及び
図4では下側)に変位する向きのテーパ面である当接面68aを構成する。
【0046】
前記両位置決め部67,68の相対位置及び前記各当接面67a,68aの形状は、前記コールドヘッド挿入部18内に前記コールドヘッド26が挿入されることにより両当接面67a,68aが互いに当接し、かつ、その当接により、前記コールドヘッド26に加えられる挿入操作力がコールドヘッド挿入部18の底部34に伝達されるとともに、前記各冷凍機側フィン62と前記各挿入部側フィン64との間に前記コールドヘッド挿入方向及び径方向の隙間66を確保すべく両フィン62,64同士の相対位置が決められるように、設定されている。すなわち、前記両位置決め部67,68は、操作力伝達部及び位置決め部の双方として機能する。
【0047】
前記ガス給排管58は、前記コールドヘッド挿入部18に前記コールドヘッド26が挿入された状態で、当該コールドヘッド挿入部18内の空気を導出して熱伝導媒体を導入するように配管される。この実施の形態に係るガス給排管58は、前記コールドヘッド挿入部18に対して前記コールドヘッド26と一体に着脱されるように当該コールドヘッド26の周囲に巻き付けられ、その入口端が
図2に示すバルブ59を介して図略のガス供給ポンプと真空ポンプとに切換可能に接続される一方、その出口端が前記熱連結形成部60の近傍領域に配置されている。
【0048】
前記コールドヘッド挿入部18内に導入される熱伝導媒体は、常温では気相を保つ一方、前記コールドヘッド26の低温端である第2冷却ステージ28の運転温度(例えば4K以下)にて凝固して当該第2冷却ステージ28と前記コールドヘッド挿入部18の底部34とを熱伝導可能に連結する熱連結部を形成するためのものである。従って、この熱伝導媒体は、その凝固した低温状態で高い熱伝導率(低い熱抵抗)を有するものが、好ましく、具体的には窒素が好適である。この窒素が凝固したもの(固体窒素)の熱伝導率は、
図5に示すように、前記第2冷却ステージ28の運転温度の近傍領域(3〜4K)においてピークを迎え、例えば3.8Kでは窒素は24.1W/m/Kもの熱伝導率を保有することができる。この熱伝導率は、純度の低い銅、例えばリン脱酸銅の熱伝導率に匹敵し、良好な熱接続を可能にする。窒素以外には、前記熱伝導媒体として例えば、ネオンやパラ水素、ヘリウムが適用されることが、可能である。
【0049】
前記熱スイッチ70は、前記コールドヘッド挿入部18の底部34と被冷却体である液体ヘリウム容器12との間に設けられて両者間で熱伝導を行うオン状態と、当該熱伝導を遮断するオフ状態とに切換えられるものであり、この実施の形態では、挿入部側熱スイッチ要素である挿入部側金属板72と、被冷却体側熱スイッチ要素である被冷却体側金属板74と、を有する。
【0050】
前記挿入部側金属板72は、前記底部34のうち前記被冷却体側を向く下面である被冷却体側面(図では下面)にこれを覆うように設けられ、前記被冷却体側金属板74は、前記挿入部側金属板72に対して前記コールドヘッド26の挿入方向と平行な方向(
図3では上下方向)に対向するように前記被冷却体に配置される。
【0051】
前記被冷却体側金属板74は、例えば前記液体ヘリウム容器12の上面に直接配設されてもよいが、この実施の形態では、前記液体ヘリウム容器12上に支持体76を介して支持されている。支持体76は、支持板77と、この支持板77と前記液体ヘリウム容器12の天壁との間に介在する編組78と、からなる。編組78は、例えば銅からなる編組線で構成され、前記支持板77と液体ヘリウム容器12との間での熱伝導を可能にしながら、前記支持板77を前記液体ヘリウム容器12と平行な姿勢で支持する。さらに、当該編組78は、それ自体の弾性変形によって支持板77の若干の上下方向の変位を可能にし、その弾発力によって後述のような金属板72,74同士の接触圧を上昇させてその密着度を高める機能、及び、冷凍機20の振動が液体ヘリウム容器12に伝わるのを抑止する機能も有する。前記被冷却体側金属板74は、前記コールドヘッド26の挿入方向と平行な方向(上下方向)に前記挿入部側金属板72と対向するように、前記支持板77の上面上に配設される。
【0052】
前記両金属板72,74は、導電性及び相互密着性に優れた材料により形成され、その密着状態で両金属板72,74の間に良好な熱伝導を形成する。具体的には、銅板からなる母材の表面が電界研磨などにより処理されてその上に金または銀のメッキが施されたものが、好適である。ただし、本発明に係る熱スイッチ要素は前記両金属板72,74のように底部34や被冷却体と別の部材により構成されるものに限定されない。例えば、挿入部側熱スイッチ要素は底部34そのものによって構成されることも可能であり、同様に、被冷却体熱スイッチ要素は例えば液体ヘリウム容器12の外壁そのものによって構成されることも可能である。
【0053】
図2に示される前記コールドヘッド挿入部18の筒部32の自然長Ls、すなわち、このコールドヘッド挿入部18に外力(コールドヘッド26の挿入操作力)が加えられないときの筒部32の長さは、この筒部32につながる底部34の下面に設けられた前記挿入部側金属板72が被冷却体側金属板74から上方に距離Dg(
図2)だけ離間するように、設定されている。また、前記高さ調節機構44により調節されるフランジ部30の高さHf及びコールドヘッド26の挿入深さは、(
図2では便宜上両金属板72,74間に前記距離Dgに相当する寸法の隙間が形成されるように描かれているが)実際は、前記コールドヘッド26から両位置決め部67,68を介してコールドヘッド挿入部18の底部34に伝達される下向きの挿入操作力が前記筒部32の蛇腹部38を伸長させて前記底部34及び前記挿入部側金属板72を下向きに変位させて当該挿入部側金属板72を被冷却体側金属板74に密着させるように、設定されている。
【0054】
前記温度制御装置80は、
図2に示すように前記コールドヘッド挿入部26内に挿入されたコールドヘッド26の運転中に前記熱連結形成部60の温度を目標温度に保つ制御を行うものであり、その目標温度は、前記熱伝導媒体を液相に保つための温度に設定される。例えば窒素ガスの場合、好ましくは、その三重点よりも若干高い温度(64Kまたはその近傍温度)に設定される。
【0055】
具体的に、前記温度制御装置80は、ヒータ82と、温度センサ84と、温度調節器86と、を有する。前記ヒータ82は、前記熱連結形成部60の近傍(
図2及び
図3ではコールドヘッド26における第2冷却ステージ28の近傍の部位)に設けられるコイル87と、このコイル87に電流を流して当該コイル87を加熱する本体部88と、を有する。前記温度センサ84は、前記熱連結形成部60の近傍の位置に設けられて当該位置での温度に相当する電気信号を出力する。温度調節器86は、前記温度センサ84が出力する電気信号に対応する温度を予め設定された前記目標温度に近づけるように前記ヒータ82の動作を制御する。前記コイル87や前記温度センサ84は、予めコールドヘッド挿入部18内に組み込まれてもよいが、当該コールドヘッド挿入部18に対してコールドヘッド26と一体に挿脱されるように当該コールドヘッド26に取付けられてもよい。この場合、前記コイル87や前記温度センサ84に接続される配線は前記ガス給排管58と同様にコールドヘッド26に巻き付けられてもよい。
【0056】
さらに、図示はしないが、前記コールドヘッド26または前記コールドヘッド挿入部18には、当該コールドヘッド26が挿入された状態における当該コールドヘッド挿入部18内の圧力を検出する圧力センサが設けられることが、好ましい。この圧力センサは、後述のように、コールドヘッド挿入部18内に封入された前記熱伝導媒体が液化(または凝固)したことを当該コールドヘッド挿入部18の外部で認識することを可能にする。
【0057】
次に、この極低温装置及び冷凍機20を用いた被冷却体(超電導磁石10及び液体ヘリウム容器12)の冷却方法及び当該冷凍機20の脱着方法を説明する。
【0058】
1)初期状態
初期状態、すなわち、コールドヘッド挿入部18内に冷凍機20のコールドヘッド26が挿入されていない状態では、当該コールドヘッド挿入部18の筒部32は自然長Lsを保ち、これにつながる底部34の下面に設けられた挿入部側金属板72は被冷却体側金属板74から上方に離間している。
【0059】
2)コールドヘッド26の挿入(
図2)
前記の初期状態から前記コールドヘッド挿入部18内に前記コールドヘッド26がその第2冷却ステージ28を先頭にして下向きに挿入される。このコールドヘッド26には、上述のように、予めガス給排管58、熱伝達スリーブ42、高さ調節フランジ46、シール部50、熱連結形成部60を形成する複数の冷凍機側フィン62、及び冷凍機側位置決め部67が設けられており、これらが前記コールドヘッド26と一体に前記コールドヘッド挿入部18内に挿入される。
【0060】
このコールドヘッド26の挿入の際、前記熱伝達スリーブ42の外周面上に設けられた多数の撓み片がコールドヘッド挿入部18の筒部32を構成する熱シールド接続用スリーブ37の内周面に圧接する。さらに、
図3に示すように冷凍機側位置決め部67の下面であるテーパー状の当接面67aが挿入部側位置決め部68の上面である同じくテーパー状の当接面68aに当接することにより、コールドヘッド26の第2冷却スリーブ28とコールドヘッド挿入部18の底部34との間での相対的な位置決め、いわゆる芯出し、が行われ、冷凍機側フィン62と挿入部側フィン64との間にコールドヘッド26の挿入方向及び径方向の双方について予め規定された寸法の隙間66が形成される。
【0061】
一方、高さ調節機構44においては、各ねじ軸45に予め下側ナット48のみが装着された状態で当該ねじ軸45を冷凍機20のフランジ部30に固定された高さ調節フランジ46の複数の貫通穴にそれぞれ挿通するようにして前記コールドヘッド26の挿入作業すなわち冷凍機20全体を下降させる作業が行われ、前記下側ナット48上に前記高さ調節フランジ46が載った時点で当該作業が終了する。このとき前記のように両位置決め部67,68の当接面67a,68a同士が当接し、前記高さ調節フランジ46に設けられたシール部50のシール材54が液体ヘリウム容器12の開口17の周縁部に全周にわたって密着することにより、前記コールドヘッド挿入部18内が密閉される。
【0062】
3)コールドヘッド挿入部18内のガスの置換
前記のようにして密閉されたコールドヘッド挿入部18に対し、当該挿入部18内のガスの置換、具体的には、当該挿入部18からの空気の導出及び当該挿入部18内への熱伝導媒体(例えば窒素ガス)の導入が、ガス給排管58及びバルブ59を通じて行われる。このようにしてコールドヘッド挿入部18内に熱伝導媒体からなるガスが充満する状態が形成される。
【0063】
4)冷凍機20及び温度制御装置80の作動
前記ガスの置換後、冷凍機20及び温度制御装置80の始動が行われる。冷凍機20の作動により、その第2冷却ステージ28周辺の温度が低下し始めるが、温度制御装置80の働きによりコイル87の加熱が行われ、最終的に第1目標温度(例えば熱伝導媒体の3重点のわずか上の温度)付近に制御される。これに伴い、前記手順(3)で挿入部18に封入された熱伝導媒体を構成するガスの圧力は低下してゆき、第2冷却ステージ周辺温度が第1目標温度に保持されている間に液化して挿入部18の底に液体状態でたまる。
【0064】
5)温度制御装置80の停止
前記の熱伝導媒体の液化が進むと、前記コールドヘッド挿入部18内の圧力が低下し、当該液化が完了した時点で当該圧力は最低値で安定する(例えば窒素の3重点付近の飽和圧力であって略真空状態)。そこで、前記温度制御装置80の温度調節器86は、図略の圧力センサの出力信号を監視し、当該出力信号が予め設定された値を下回った時点で、液化が完了したとの判断に基づきヒータ82の駆動を停止する。その結果、第1及び第2冷却ステージ27,28の冷却が再び進行して前記両フィン62,64同士の隙間66を満たす液体(熱伝導媒体が液化したもの)の温度が次第に降下し、最終的に凝固する。
【0065】
このようにして熱伝導媒体の凝固により形成された熱連結部は、優れた熱伝導率(例えば窒素の場合、3.8Kで24.2W/m/K)を有する。例えば、前記フィン62,64の間の隙間66の寸法を0.1mm、フィン62,64のうち互いにコールドヘッド挿入方向または径方向に対向する面の総表面積を1.6×10
4mm
2とすると、窒素の場合、形成される熱連結部での熱抵抗は僅か2.6×10
−4mK/Wである。つまり、移動する熱量が1Wであるとすると、界面温度差はわずか0.26mKである。これに対し、熱伝導媒体が液体ヘリウムであるとすると、その3.8Kでの熱伝導率は2.48×10
−2W/m/Kであるから、熱抵抗は0.25K/Wと非常に大きなものとなる。
【0066】
この凝固したもの(例えば固体窒素)は、前記両フィン62,64とともに、前記第2冷却ステージ28の冷熱を高い効率でコールドヘッド挿入部18の底部34に伝達することができる。
【0067】
6)コールドヘッド26の更なる挿入
手順(5)により、コールドヘッド挿入部18の底部に熱伝導媒体の固化したものが形成されたのち、コールドヘッド18を更に下方へ挿入する。具体的には高さ調節機構44において、上側ナット47と下側ナット48を一端緩めて、高さ調節フランジ46が上下に自在に動ける状態としたのち、前記コールドヘッド26をさらに下方へ押し込む。
【0068】
前記コールドヘッド26の挿入が進行してその挿入操作力が前記両位置決め部67,68を介してコールドヘッド挿入部18の底部34に伝達されることにより、当該コールドヘッド挿入部18の筒部32における蛇腹部38の伸長方向の弾性変形を伴って当該底部34が下方に変位し、当該底部34の下面に設けられている挿入部側金属板72が被冷却体側金属板74に密着する。すなわち、熱スイッチ70がオフ状態からオン状態に切換えられて、前記コールドヘッド挿入部18の底部34と被冷却体である液体ヘリウム容器12との間での熱伝導が可能になる。
【0069】
こうして、両金属板72,74同士が密着するまで底部34が下降した後、前記上側ナット47および下側ナット48の高さ位置が再び締め付けられることにより、真空容器16への冷凍機20の固定が完了する。
【0070】
7)コールドヘッド26の脱着
次に、冷凍機20のメンテナンスなどを目的に当該冷凍機20のコールドヘッド26をコールドヘッド挿入部18から脱着させるには、前記熱スイッチ70をオフ状態にしかつ熱伝導媒体を気化させればよい。具体的には、高さ調節機構44の上側ナット48を取り外して冷凍機20を若干引き上げることにより、熱スイッチ70を構成する金属板72,74同士を離間させるとともに、前記冷凍機20の運転を停止すればよい。さらに、ヒータ82の駆動や、ガス給排管58を通じてのコールドヘッド挿入部18内への常温ガスの供給により、前記熱伝導媒体の昇温及び気化を促進することができる。
【0071】
このようにして熱伝導媒体が気化すると、熱連結形成部60を構成するフィン62,64同士の連結が解除されるため、前記コールドヘッド挿入部18からコールドヘッド26を難なく抜き取ることが可能である。しかも、熱スイッチ70はオフ状態にあるので、前記コールドヘッド挿入部18の昇温に伴う被冷却体(液体ヘリウム容器12)への熱侵入が有効に抑止される。例えば、熱スイッチ70を構成する各金属板72,74の面積が1.6×10
−2m
2、その表面の輻射率が0.01の場合、前記底部34の温度が仮に室温まで上昇しても金属板72,74間の輻射伝熱量は36mWに抑えられる。よって、冷凍機20の修理や交換中における被冷却体の温度上昇が有効に抑制される。
【0072】
このとき、前記隙間66内で凝固していた状態から気化した熱伝導媒体のガスがほぼ大気圧に近い圧力でコールドヘッド挿入部18内を満たすように、当該コールドヘッド挿入部18の容積が設定されるのが、よい。換言すれば、前記コールドヘッド挿入部18の容積は、熱伝導媒体が液体状態で前記隙間66を満たすための当該熱伝導媒体の必要体積と、下記の表1に示すような当該熱伝導媒体の密度比(1気圧、0°Cでのガス密度に対する液体状態での密度の比)とに基づいて設定されるのが、好ましい。
【0074】
本発明は、以上説明した実施の形態に限られない。例えば、次のような実施の形態を含むことも可能である。
【0075】
前記熱スイッチ70において、前記実施の形態ではコールドヘッド挿入部18の底部34の変位により当該熱スイッチ70がオンオフされるが、被冷却体側スイッチ要素(
図3では被冷却体側金属板74)が変位することにより熱スイッチ70がオンオフされてもよい。ただし、この場合には前記被冷却体側スイッチ要素を操作するための特別な手段を要するのに対し、前記実施の形態のようにコールドヘッド挿入部18の底部34の変位に基づくものでは、コールドヘッド26の挿入操作力を利用して熱スイッチ70をオンオフすることができる利点がある。また、前記のようにコールドヘッド26の挿入操作力を利用して前記底部34を変位させる場合、その挿入操作力を伝達するための操作力伝達部は、前記位置決め部67,68とは別に設けられてもよい。
【0076】
本発明に係る冷凍機側凹凸部及び挿入部側凹凸部は、前記のようなフィン62,64を含むものに限定されない。例えば、冷凍機側凹凸部は、挿入部側凹凸部に向かって棒状あるいは球状に突出する複数の冷凍機側突起を有し、挿入部側凹凸部は前記各冷凍機側突起の間に突出する同じく棒状あるいは球状の突起であってもよい。
【0077】
本発明に係る冷凍機側及び挿入部側位置決め部は、熱連結形成部から離れた位置、例えばコールドヘッドの中段部分やコールドヘッド挿入部の入口側部分に設けられていてもよい。しかし、前記のように冷凍機側凹凸部及び挿入部側凹凸部とそれぞれ並設される位置決め部は、これらの凹凸部同士の隙間の寸法をより高い精度で規定することを可能にする。
【0078】
前記温度制御装置80は、省略が可能である。例えば、熱伝導媒体が液相を保持する温度領域が大きい場合には、この熱伝導媒体を低い速度で冷却するだけでもその冷却中に当該熱伝導媒体を液相にして両凹凸部間の隙間に行き渡らせることが可能である。また、熱伝導媒体の密度が空気の密度よりも十分大きい場合には、コールドヘッド挿入部内にコールドヘッドが挿入される前に当該コールドヘッド挿入部内のガスが熱伝導媒体に置換されてもよい。換言すれば、当該ガスの置換後にコールドヘッド挿入部内にコールドヘッドが挿入されてもよい。