特許第6276044号(P6276044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276044
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ガスタービン吸気用エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20180129BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20180129BHJP
   D21H 13/40 20060101ALI20180129BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20180129BHJP
   F02C 7/052 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B01D39/20 B
   B01D46/52 A
   D21H13/40
   D21H27/00 E
   D21H27/00 F
   F02C7/052
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-13675(P2014-13675)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-139739(P2015-139739A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2014年12月10日
【審判番号】不服2016-17529(P2016-17529/J1)
【審判請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阪野 竜巳
(72)【発明者】
【氏名】庭田 修治
(72)【発明者】
【氏名】新沼 仁
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 瀧口 博史
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−838(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/043717(WO,A1)
【文献】 特開2003−322029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の微粒子を捕集するガスタービン吸気用エアフィルタであって、
ガラス繊維からなり、互いに抄き合わされた第1の層及び第2の層を有し、プリーツ加工され、プリーツの折り目を有し、山折りおよび谷折りが繰り返された波型形状を有する濾材と、
前記第1の層が気流の上流側を向くよう前記濾材を保持する枠体と、を備え、
前記第1の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が40〜70%、目付が60〜80g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.9〜2.0μm、厚みが0.2〜0.5mmであり、
前記第2の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が90〜99.99%、目付が35〜50g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.5〜0.7μm、厚みが0.25〜0.4mmであり、
前記濾材は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が95〜99.999%、厚みが0.45〜0.9mmであることを特徴とするガスタービン吸気用エアフィルタ。
【請求項2】
前記濾材を第1の濾材というとき、前記第1の濾材と、前記第1の濾材以外の1又は複数の第2の濾材と、を含む濾材群を備え、
前記濾材群の濾材は、それぞれが波型形状にプリーツ加工されて平板状に延在し、前記枠体内に一方向に並び、隣接して配置される2つの前記濾材がV字形状をなすよう立設されている、請求項1に記載のガスタービン吸気用エアフィルタ。
【請求項3】
気体中の微粒子を捕集するガスタービン吸気用エアフィルタであって、
ガラス繊維からなり、互いに抄き合わされた第1の層及び第2の層を有し、山部と谷部が連続して形成されるよう交互に折り返された濾材と、
前記第1の層が気流の上流側を向くよう前記濾材を保持する枠体と、
前記枠体に保持された濾材を支持する1又は複数のセパレータと、を備え、
前記第1の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が40〜70%、目付が60〜80g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.9〜2.0μm、厚みが0.2〜0.5mmであり、
前記第2の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が90〜99.99%、目付が35〜50g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.5〜0.7μm、厚みが0.25〜0.4mmであり、
前記濾材は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が95〜99.999%、厚みが0.45〜0.9mmであり、
前記セパレータは、前記濾材の隣接する2つの山部の間隙を保持するよう、前記濾材の谷部に挿入されている、ことを特徴とするガスタービン吸気用エアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の微粒子を捕集するガスタービン吸気用エアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの吸気用フィルタとして用いられるエアフィルタが、従来より知られている。このエアフィルタは、ガスタービンの上流側に設けられたフィルタチャンバに設置され、吸気によって流れる空気中のダスト等の微粒子を捕集する。
【0003】
従来より、捕集性能の異なる数種類のエアフィルタを互いに気流の流れに沿って設置し、吸気を行うことが知られている。例えば、2種類のエアフィルタを備える2段式では、上流側に、粗塵を捕集する粗塵用フィルタが配置され、下流側に、よりサイズの小さいダストを捕集する中性能フィルタが配置される。また、さらに捕集性能を上げるために、上記中性能フィルタの下流側に、さらにサイズの小さいダストを捕集する高性能フィルタが配置された3段式も知られている。3段式によれば、フィルタチャンバの下流側に設置された空気圧縮機翼にダストが付着して汚染されるのを抑えられ、これによる発電出力の低下を防ぐことができる。
しかし、3段式では、エアフィルタの取付箇所が2段式に比べて1段分増えるため、フィルタチャンバが大型化したり、もともと2段式であったものを増設する場合は改造が必要となったり、多大な設備投資が必要になる。
【0004】
一方、捕集性能の異なる2種のエアフィルタを1台のエアフィルタに纏めた複合高性能フィルタが知られている。例えば、中性能フィルタ及び高性能フィルタが1台のエアフィルタとしてまとめられている。このような複合高性能フィルタは、フィルタチャンバを大型化または改造することなく高性能化可能であるため、広く用いられている。
【0005】
しかし、従来の複合高性能フィルタは、中性能および高性能の2種の濾材を重ねて用いることから、2枚の濾材の間に空間が生じて全体として厚みが増し、これに起因する圧力損失の上昇を招くおそれがある。このため、近年、吸気用フィルタに求められている、より低圧力損失で長寿命であることの高いレベルでの達成が難しくなっている。このような状況に鑑み、2種の濾材を抄き合わせて1枚の濾材とした2層抄き濾材を用いることが知られている。
【0006】
この種の2層抄き濾材を備える複合高性能フィルタとして、例えば、特許文献1〜3に記載のエアフィルタが既に提案されている。特許文献1には、ガラス繊維濾材とポリエチレンテレフタレート(PET)濾材とを抄き合わせた2層抄き濾材が開示されている。特許文献2には、ガラス繊維とPET繊維を混合してなる濾材を2種用いた2層抄き濾材が開示されている。特許文献3には、抄き合わせられる2つの濾材がいずれもガラス繊維からなる2層抄き濾材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−838号公報
【特許文献2】国際公開2003/043717号パンフレット
【特許文献3】特開平5−123513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の濾材は、有機繊維を含むため、ガラス繊維のみからなる濾材と比べ、外力を受けたときの反発力が大きいことから、プリーツ加工後の濾材の折り目がシャープにならないおそれがある。このため、プリーツの折り目を挟む濾材の部分が、空気が通るスペースを狭めるように膨み、これによって圧力損失が高くなることがある。ガスタービン吸気用エアフィルタとして圧力損失が高くなると、圧力損失が高くなる前と同量の空気を吸引するために余分に燃料を消費して圧縮機翼を回転させる必要があることから、その分発電効率が低下する。また、濾材の折り目がシャープでないことによって圧力損失が高くなり、圧力損失の所定の上限値(最終圧力損失)に達するまでの時間が短くなり、短寿命となるおそれがある。
【0009】
一方、特許文献3の濾材は、上流側(中性能側)の層に繊維径の太いガラス繊維が用いられるため、上流層の捕集効率が低くなりやすい。このため、下流側(高性能側)の層として、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタや準HEPAフィルタのフィルタグレードに相当する高性能フィルタ用濾材からなる層を用いた場合に、下流層の負担が大きくなり、濾材全体としての寿命が短くなる。濾材の寿命が短いと、通常、略1年以上の間隔で実施されるガスタービンの定期検査を待たずにフィルタ交換をしなければならず、フィルタ交換のためだけにガスタービンの稼働を停止せざるを得なくなってしまい、ロスが大きい。
【0010】
本発明は、高い捕集効率を維持しつつ、低圧力損失で、長寿命なガスタービン吸気用エアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、気体中の微粒子を捕集するガスタービン吸気用エアフィルタであって、
ガラス繊維からなり、互いに抄き合わされた第1の層及び第2の層を有し、プリーツ加工され、プリーツの折り目を有し、山折りおよび谷折りが繰り返された波型形状を有する濾材と、
前記第1の層が気流の上流側を向くよう前記濾材を保持する枠体と、を備え、
前記第1の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が40〜70%、目付が60〜80g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.9〜2.0μm、厚みが0.2〜0.5mmであり、
前記第2の層は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が90〜99.99%、目付が35〜50g/m、前記ガラス繊維の平均繊維径が0.5〜0.7μm、厚みが0.25〜0.4mmであり、
前記濾材は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が95〜99.999%、厚みが0.45〜0.9mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスタービン吸気用エアフィルタは、高い捕集効率を維持しつつ、低圧力損失で、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のガスタービン吸気用エアフィルタを一部切り欠いて示す外観図である。
図2図1のガスタービン吸気用エアフィルタの濾材の断面を示す図である。
図3図1のガスタービン吸気用エアフィルタの変形例1によるエアフィルタを一部切り欠いて示す外観図である。
図4図1のガスタービン吸気用エアフィルタの変形例2によるエアフィルタを示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガスタービン吸気用エアフィルタについて説明する。
図1に、本発明の一実施形態によるガスタービン吸気用エアフィルタ(以降、エアフィルタまたはフィルタともいう)1を示す。図1は、本発明の一実施形態のエアフィルタ1を示す外観図であり、説明の便宜のため、一部を切り欠いて示す。また、図2に、エアフィルタ1の濾材の厚み方向の断面を示す。
【0015】
エアフィルタ1は、気体中の微粒子を捕集するエアフィルタであって、ガラス繊維からなり、互いに抄き合わされた上流層(第1の層)11及び下流層(第2の層)13を有する濾材3と、上流層11が気流の上流側を向くよう濾材3を保持する枠体5と、を備える。上流層11は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が40〜70%、目付が60〜80g/m、平均繊維径が0.9〜2.0μm、厚みが0.2〜0.5mmである。下流層13は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が90〜99.99%、目付35〜50g/m、平均繊維径が0.3〜0.8μmである。そして、濾材3は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が95〜99.999%、厚みが0.4〜0.9mmである。
【0016】
エアフィルタ1は、図示されないガスタービンの空気圧縮機の上流側に設けられたフィルタチャンバに取り付けられ、圧縮機側に供給される空気が透過する際に、空気中のダスト等の微粒子を捕集する。
【0017】
(濾材)
濾材の上流層11および下流層13は、いずれもガラス繊維からなる。ガラス繊維は、特に制限されないが、例えば、B含有量が0.1質量%以下または5〜15質量%の溶融紡糸ガラス繊維を用いることができる。B含有量が0.1質量%以下の溶融紡糸ガラス繊維は、質量比で、SiO:69.0〜72.0%、NaO:10.5〜12.0%、CaO:5.0〜7.0%、KO:4.5〜6.0%、Al:2.5〜4.0%、MgO:2.0〜4.0%、ZnO:0.0〜2.0%、Fe:0.2%未満、B:0.1%未満の組成のガラスから作成される。また、B含有量が5〜15質量%の溶融紡糸ガラス繊維は、例えば、質量比で、SiO:55.0〜60.0%、NaO:9.5〜13.5%、CaO:1.0〜5.0%、KO:1.0〜4.0%、Al:4.0〜7.0%、MgO:0.0〜2.0%、ZnO:2.0〜5.0%、Fe:0.2%未満、B:8.0〜11.0%未満の組成のガラスから作成される。
【0018】
上流層11及び下流層13に用いられるガラス繊維は、1種のガラス繊維であってもよく、ガラス組成、平均繊維径、形態等の異なる複数種のガラス繊維を混合した混合繊維であってもよい。例えば、平均繊維径の異なる2種のガラス繊維の混合繊維が用いられてもよい。この場合、平均繊維径の小さい方のガラス繊維によって捕集性能を上げ、平均繊維径の大きい方のガラス繊維によって構造的な強度を上げることができる。また、例えば、形態の異なる溶融紡糸ガラス繊維およびチョップドストランドガラス繊維の混合繊維が用いられてもよい。
【0019】
(a)上流層
上流層11は、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率(以下、特に断りのある場合を除いて、捕集効率という)が40〜70%である。上流層11がこのような捕集効率を有することにより、下流層13の負担を減らし、下流層13を長寿命化できる。捕集効率が40%未満であると、下流層13の負担が大きく、すぐに目詰りしてしまう。また、捕集効率が70%を超えると、上流層11が下流層13よりも著しく早く目詰りを起こし、また、濾材3の圧力損失に悪影響を与える。上流層11の捕集効率は、濾材を長寿命にする観点から、好ましくは40〜65%である。本実施形態の上流層11の捕集効率は、例えば、55%である。40〜70%の捕集効率は、例えば、上流層11の目付を60〜80g/m、平均繊維径を0.9〜2.0μm、厚みを0.2〜0.5mmに調節することにより得られる。
【0020】
上流層11は、目付が60〜80g/mである。目付がこの範囲にあることで、上流層11の捕集効率を上記範囲に調節しやすくなる。目付が60g/m未満であると、捕集効率が低下してしまう。目付が80g/mを超えると、濾材の圧力損失が高くなる。上流層11の目付は、寿命の観点から、好ましくは65〜75g/mである。本実施形態の上流層11の目付は、例えば、75g/mである。目付は、公知の方法で調節できる。例えば、ガラス繊維を水中に分散させたスラリー中から抄紙のために搬送する際の搬送速度や、スラリー中のガラス繊維の濃度を変えることで調節できる。
【0021】
上流層11は、平均繊維径が0.9〜2.0μmである。本明細書でいう平均繊維径は、任意に抽出した例えば500本の繊維の繊維径の平均で表される。各繊維は、走査型電子顕微鏡により得られるSEM画像を用いて求められる。上流層11のガラス繊維は複数種のガラス繊維の混合繊維からなる。ガラス繊維は、例えば、ガラス組成、平均繊維径、形態によって種類が異なる。
上流層11の平均繊維径が上記範囲にあると、上流層11の捕集効率を上記範囲に調節しやすくなる。平均繊維径が0.9μm未満であると、濾材の圧力損失が高くなり、また、寿命が短くなり、平均繊維径が1.2μmを超えると、捕集効率が低くなる。上流層11の平均繊維径は、捕集効率の観点から、好ましくは1.0〜1.5μmである。本実施形態の上流層11の平均繊維径は、例えば、0.9μmである。
【0022】
上流層11は、厚みが0.2〜0.5mmである。厚みは、濾材3を2枚に分離できる場合はダイヤルシックネスゲージを用いて各々測定する。2枚に分離できない場合は、走査型電子顕微鏡を用いて得られるSEM画像を用いて、任意の数箇所(例えば10箇所)で解析することで求められる。このとき、上流層11と下流層13の境界が、上流層11側のガラス繊維と下流層13側のガラス繊維が絡み合っている等して混在している場合は、この混在している領域の厚み方向長さの中間位置を境界とする。この混在している領域は、SEM画像において、上流層11の表面から下流層13側に進んだときに下流層13のガラス繊維が現れる位置と、逆に下流層13の表面から上流層11側に進んだときに上流層11のガラス繊維が現れる位置との厚み方向領域として特定できる。
厚みがこの範囲にあると、上流層11の保塵量が増すことで下流層13の負担が減り、濾材3を長寿命化できる。また、上流層11の寿命を長くすることができる。厚みが0.2mm未満であると、濾材の圧力損失が高くなり、また、下流層13の負担が大きくなり、濾材3の寿命に悪影響を与える。厚みが0.5mmを超えると、濾材全体の厚みが厚くなり、フィルタにしたときの圧力損失が大きくなる。上流層11の厚みは、寿命の観点から、好ましくは0.3〜0.45mmである。本実施形態の上流層11の厚みは、例えば、0.4である。上流層11の厚みは、公知の方法で調節でき、例えば、製造時のプレスロールの圧力により調節できる。
【0023】
(b)下流層
下流層13は、粒径0.3μmの粒子に対して捕集効率が90〜99.99%、すなわち、準HEPAフィルタ(HEPAフィルタに準じる性能のエアフィルタ)の性能を有する。下流層13がこのような捕集効率を有することにより、濾材3全体として高い捕集効率を維持することができる。捕集効率が90%未満であると、濾材3としての捕集効率が低くなるため、下流側に流れるダスト量が多くなり、ガスタービン圧縮機の回転翼に付着し、蓄積することで発電効率が低下する。下流層13の捕集効率は、より高効率であるという点で、好ましくは95〜99.99%であり、濾材の圧力損失が高くなりすぎない点から、好ましくは99.99%以下である。本実施形態の上流層11の捕集効率は、例えば、98%、99.99%である。90〜99.99%の捕集効率は、例えば、下流層13の目付を35〜50g/m、平均繊維径を0.3〜0.8μm、厚みを0.2〜0.4mmに調節することにより得られる。
【0024】
下流層13は、目付が35〜50g/mである。目付がこの範囲にあることで、下流層13の捕集効率を上記範囲に調節しやすくなる。目付が35g/m未満であると、捕集効率が低下し、目付が50g/mを超えると、捕集効率が高すぎ、かつ、濾材の圧力損失が高くなる。下流層13の目付は、このような観点から、好ましくは40〜45g/mである。本実施形態の下流層13の目付は、例えば、45g/mである。
【0025】
下流層13は、平均繊維径が0.3〜0.8μmである。平均繊維径がこの範囲にあると、下流層13の捕集効率を上記範囲に調節しやすくなる。平均繊維径が0.3μm未満であると、濾材の圧力損失が高くなりやすく、また、寿命が短くなり、平均繊維径が0.8μmを超えると、上記目付範囲では所定の捕集効率が得られにくくなる。下流層13の平均繊維径は、このような観点から、好ましくは0.5〜0.7μmである。本実施形態の下流層13の平均繊維径は、例えば、0.5μm、0.7μmである。
【0026】
下流層13は、厚みが0.2〜0.4mmであるのが好ましい。厚みがこの範囲にあると、下流層13の捕集効率を上記範囲により調節しやすくなる。厚みが0.4mmを超えると、フィルタにしたときの圧力損失が高くなる。厚みが0.2mm未満であると、濾材自体の圧力損失が高く、寿命も短くなる。厚みは、圧力損失が高くなる点で、より好ましくは0.25〜0.35mmである。本実施形態の下流層13の厚みは、例えば、0.35mmである。
なお、下流層13の目付、平均繊維径、厚みは、上述した、上流層11の目付、平均繊維径、厚みの調節と同様にして方法で調節できる。
【0027】
上流層11及び下流層13は、上述のように、互いに抄き合わされた2層抄き濾材である。2層抄きは、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。例えば、特開2007−7586号公報、特開平5−123513号公報、特許第3014440号公報に記載された方法を用いて行える。
本実施形態では、例えば、上流層11を抄いた後に、上流層11の表面に重ねるようにして下流層13を抄き、バインダとして用いられる樹脂を繊維に付着させて繊維同士を結合させることによって行う。各層11,13は、ガラス繊維を水中に分散したスラリーから、水中のガラス繊維を抄紙機を用いて搬送して抄くことができる。抄紙機としては、一般紙や湿式不織布を製造するためのもの、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機等のうちの同一又は異種の2機を組み合わせたコンビネーションマシンが用いられる。各層11,13の原料となるガラス繊維が複数種の混合繊維である場合は、各ガラス繊維を水中に分散させて混合し、スラリーを得る。バインダによる繊維同士の結合は、バインダを直接上流層11および下流層13に付着させることでなされてもよく、バインダを溶剤に溶かしたバインダ溶液に上流層11および下流層13を含浸させ、乾燥させることでなされてもよい。バインダは、アクリル樹脂、フェノール樹脂等、公知のものが用いられる。
抄き合わされた上流層11および下流層13は、さらに、熱処理、樹脂の含浸、撥水処理等が行われてもよい。含浸させる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂等が用いられる。撥水処理は、例えば、撥水剤を濾材3に含浸させ、乾燥させることで行うことができる。
【0028】
濾材3は、上述のように、粒径0.3μmの粒子に対する捕集効率が95〜99.999%である。濾材3全体としてこのような捕集効率を有することにより、ガスタービンの吸気用フィルタとして高い捕集性能が得られる。捕集効率が95%未満であると、ダストが下流側に透過して、圧縮機翼に汚れが付着しやすくなり、発電効率の低下を招く。本実施形態の濾材3の捕集効率は、例えば、99.1%、99.99%である。濾材3のこの範囲の捕集効率は、上流層11および下流層13の各目付、平均繊維径、厚みを調節することにより得られる。なお、濾材3は、少なくとも準HEPAフィルタとしての捕集性能を有しているが、HEPAフィルタ(粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有し、かつ初期の圧力損失が245Pa以下であるフィルタ)のように、準HEPAフィルタより高性能なものであってもよい。
【0029】
濾材3は、厚みが0.4〜0.9mmである。濾材3の厚みは、JIS P8118に準拠してシックネスゲージで測定した値である。厚みがこの範囲にあると、長寿命な濾材3が得られ、ガスタービンの通常の定期検査の周期より長く用いることができる。このため、ガスタービンの稼働を、フィルタ交換のためだけに停止する必要がない。厚みが0.4mm未満であると、寿命が短すぎ、フィルタ交換の頻度が高くなる。厚みが0.9mmを超えると、フィルタの圧力損失が高くなり、圧縮機側に空気を吸引するために過剰に燃料を消費する。そのため、その分発電効率が低下する。濾材3の厚みは、このような観点から、好ましくは0.5〜0.8mmである。本実施形態の濾材3の厚みは、例えば、0.75mmである。濾材3の厚みは、上流層11および下流層13の厚みを調節することで調節できる。
濾材3は、さらに、上流層11および下流層13の表面に積層される通気性支持材を備えてもよいが、濾材3の折り目がシャープでなく、圧力損失が高くなるため、通気性支持材を備えないのが好ましい。通気性支持材は、例えば、上流層11の表面に積層される、プレ捕集層として機能する不織布が挙げられる。
【0030】
(濾材群)
エアフィルタ1は、濾材3を第1の濾材としたとき、第1の濾材と、第1の濾材以外の1又は複数の第2の濾材と、を含む濾材群2を備える。つまり、エアフィルタ1は、複数の濾材3を有する。第2の濾材はいずれも、第1の濾材と同様の上記説明した濾材3である。なお、1又は複数の第2の濾材は、他の実施形態では、第1の濾材と異なる濾材を含んでいてもよい。
濾材群2の濾材3はいずれも、波型形状にプリーツ加工されて平板状に延在している。プリーツ加工は、例えば、ロータリー方式、レシプロ方式等、公知の方法によって行うことができる。隣接する2つのプリーツの間隔(ピッチ)を安定して保つために、濾材3表面には、スペーサとなる樹脂製の突起が形成されてもよい。スペーサとなる樹脂は、ホットメルト系のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル樹脂などを、ホットメルトアプリケータで塗布することにより設けられる。プリーツ間隔は、例えば、2.0〜5.0mmである。濾材3は、波型形状が一方向に連続することによって、縦、横、厚みの各方向に所定の長さを有する直方体形状をなしている。縦方向は、プリーツの折り目と直交する方向である。横方向は、プリーツの折り目が延びる方向である。厚み方向は、縦及び横と直交する方向である。
【0031】
濾材群2の濾材3は、上面視した(図1において紙面上方から見た)場合に、枠体5内に一方向(エアフィルタ1の水平方向)に並ぶよう配され、隣接する2つの濾材3がV字形状をなすよう立設されている。このように配置されることで、複数の濾材3は、エアフィルタ1の水平方向にジグザグ形状をなして並ぶVバンク型の構造が得られる。エアフィルタ1の気体の流入側(上流側。図1において紙面左下方)に現れるV字形状の数(バンク数)は、特に制限されない。各濾材3は、本実施形態では、プリーツの折り目が横方向(エアフィルタ1の縦方向と直交する方向)を向いて枠体5に収納されるが、縦方向を向いて収納されてもよい。
【0032】
(枠体)
枠体5は、上述のように、上流層11が気流の上流側を向くよう濾材3を保持する。枠体5は、上流側からの気体が下流側(図1において紙面右上方向)に流れるよう開口され、濾材群2の濾材3を収納する。枠体5は、金属製の板材又は樹脂製の構造体を組み合わせて作られる。金属製の板材としては、防錆性の観点から、好ましくは亜鉛めっき鋼板、アルミニウム、ステンレス等が用いられる。また樹脂製の構造体としては強度の観点からABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂などが用いられる。各濾材3の上端及び下端は、ポリウレタン樹脂やホットメルト系接着剤などにより枠体5に固定されている。また、枠体5の水平方向の両側部に接する濾材3も枠体5に対し、ポリウレタン樹脂やホットメルト系接着剤などにより固定されている。
【0033】
エアフィルタ1は、さらに、濾材受け7,9を有する。濾材受け7は、枠体5内の上流側に配され、上流側でV字形状をなす2つの濾材3の先端部を支持する。濾材受け9は、枠体5内の下流側に配され、下流側でV字形状をなす2つの濾材3の後端部を支持する。
【0034】
以上のエアフィルタ1では、上流層11と下流層13が2層抄きされた濾材3が用いられているため、2枚の濾材を重ねて作製された2枚重ねの場合と比べて、プリーツ加工による濾材3の折り目がシャープになっている。このため、空気の通るスペースが狭まることがなく、構造に起因する圧力損失の上昇が抑制される。これにより、ガスタービンの吸気用フィルタとして用いられた場合に、吸気のために余分に燃料を消費せずにすみ、燃費の悪化を防止できる。
また、エアフィルタ1は、濾材3の下流層13が準HEPAフィルタ以上の捕集性能を有していることから、濾材3全体として高い捕集性能が得られるとともに、上流層11の捕集効率が40〜70%であることから、下流層13の負担が少なく、濾材3が長寿命化されたものになっている。このような上流層11の機能は、上流層11の捕集効率に加えて、上流層11の厚みが0.2〜0.5mmであることによって、より確実に達成される。上流層11の捕集効率が、下流層13の負担にならない程度に大きいとしても、上流層11の厚みが小さければ、上流層11がすぐに寿命に達して、濾材3としても寿命が短くなってしまうが、上流層11が上記範囲の厚みを有することによって、長寿命化が図られている。
【0035】
エアフィルタ1は、下流層13の厚みが0.2〜0.4mmであることで、濾材3の長寿命化に資するとともに、濾材に起因する圧力損失の上昇を抑制できる。
【0036】
エアフィルタ1は、Vバンク型のエアフィルタであるため、2層抄き濾材を用いたことによって、同じく2層抄き濾材を用いたセパレータ型のエアフィルタ(後述)と比べ、構造に起因する圧力損失を下げられることで、全体の圧力損失が下がるため、低圧力損失化できる。
【0037】
なお、エアフィルタ1は、フィルタチャンバに、1台のみ設置されてもよい。また、エアフィルタ1は、エアフィルタ1と性能、構造の異なる1又は複数のエアフィルタと併用してもよい。性能の異なるエアフィルタとして、例えば、中性能フィルタ(比色法による捕集効率が50%〜95%であるフィルタ)、粗塵用フィルタ(重量法による捕集効率が30%〜90%であるフィルタ)等、エアフィルタ1より低捕集効率のものが挙げられる。構造の異なるエアフィルタとして、後述するセパレータ型、シングルヘッダー型のもの等が挙げられる。
【0038】
(変形例1)
図3に、本発明の変形例1によるセパレータ型のエアフィルタ21を、一部切り欠いて示す。
エアフィルタ21は、濾材23と、枠体25と、複数のセパレータ27を備える。
濾材23は、上述の濾材3と同様のものが用いられる。ここでは、濾材23は、山部及び谷部が連続して形成されるよう交互に折り返されて、枠体25に保持される。
セパレータ22は、枠体25に保持された濾材23を支持するとともに、濾材23の隣接する山部同士の隙間を保持する。セパレータ27は、薄板をコルゲート加工することによって波形状に形成され、濾材23の谷部に挿入される。
枠体25は、板材を組み合わせて作られ、セパレータ27が挿入された濾材23を、セパレータ22ごと内側に収納する。
【0039】
(変形例2)
図4に、本発明の変形例2によるシングルヘッダー型(片フランジ型ともいう)のエアフィルタ31を示す。
エアフィルタ31は、濾材群として複数の濾材33と、枠体35とを備える。
複数の濾材33のいずれも、上述の濾材3と同様のものであり、波形形状にプリーツ加工されて平板状に延在している。なお、図4において、濾材33は、便宜のため、プリーツの折り目を省略して示す。複数の濾材33は、上述したエアフィルタ1の複数の濾材3と同様に、エアフィルタ31の水平方向に並ぶよう配され、隣接する2つの濾材33がV字形状をなすよう立設されている。
枠体35は、ABS樹脂等の樹脂を成形することにより形成される。シングルヘッダー型のエアフィルタ31において、枠体35は、気流の上流側を向いて配される側の端部が、気流を受け入れる開口部として機能するとともにエアフィルタ31が取付箇所に取り付けられる際のフランジとして機能するよう形成されるとともに、上流側から下流側の端部にかけて、各濾材33の上面、底面、および下流側の端である側面を支持するよう形成されている。
【0040】
また、本発明のエアフィルタは、上述した変形例1,2のほか、濾材3を用いて、例えば、特開2012−020274号公報の図3に示すようなミニプリーツタイプのものであってもよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
濾材の下流層の原料として、質量比で、SiO:69.0〜72.0%、NaO:10.5〜12.0%、CaO:5.0〜7.0%、KO:4.5〜6.0%、Al:2.5〜4.0%、MgO:2.0〜4.0%、ZnO:0.0〜2.0%、Fe:0.2%未満、B:0.1%未満の組成の平均繊維径0.65μmのチョップドストランドガラス繊維を、工業用水中にパルパーで離解し、カチオン性アクリル樹脂を当該ガラス繊維に対し5質量%程度添加して、スラリーAを作成した。一方、上流層の原料として、下流層のガラス繊維と同じガラス組成の平均繊維径1.0μmのチョップドストランドガラス繊維を、工業用水中にパルパーで離解し、カチオン性アクリル樹脂を当該ガラス繊維に対し5質量%程度添加して、スラリーBを作成した。
抄紙機の循環走行するネット(搬送ベルト)上に、スラリーAを目付が45g/mとなるよう供給し、スラリーBを目付が75g/mとなるよう供給し、ネット上のスラリーAのガラス繊維上に、抄紙機のサクションボックスにて脱水し、スラリーAおよびスラリーBの各ガラス繊維が一体になった抄紙を形成した後、ドライヤで乾燥した。乾燥後、抄紙を、常法によって、バインダとしてアクリル樹脂と、撥水剤を混合した樹脂液中に浸漬し、その後脱水、乾燥し、目付120g/mの濾材を得た。得られた濾材の厚みを測定したところ、上流層が0.4mm、下流層が0.35mm、全体が0.75mmであった。
【0042】
次いで、得られた濾材を、レシプロ式織り機でピッチが2.9mmになるようプリーツ加工を行い、縦592mm×横280mm×高さ20mmの外寸の濾材を作製した。このようにして得られた濾材16個を、ジグザグ形状をなすよう並べ、ポリウレタン樹脂を用いて、縦594mm×横594mm×高さ292mmの外寸を有するガルバニウム鋼板製の枠体に固定し、Vバンク型のエアフィルタを製造した。濾材は、濾材受けに対して、ポリウレタン樹脂を用いて接着した。
【0043】
(実施例2)
上流層の平均繊維径を1.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0044】
(実施例3)
上流層の平均繊維径を0.9μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0045】
(実施例4)
上流層の平均繊維径を1.5μm、下流層の平均繊維径を0.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0046】
(実施例5)
下流層の平均繊維径を0.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0047】
(実施例6)
上流層の平均繊維径を0.9μm、下流層の平均繊維径を0.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0048】
(比較例1)
上流層の平均繊維径を3.2μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0049】
(比較例2)
上流層の平均繊維径を0.8μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0050】
(比較例3)
上流層の平均繊維径を3.2μm、下流層の平均繊維径を0.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0051】
(比較例4)
上流層の平均繊維径を0.8μm、下流層の平均繊維径を0.5μmとした点を除いて、実施例1と同様にしてエアフィルタを作成した。
【0052】
以上の実施例1〜6、比較例1〜4のそれぞれのエアフィルタの濾材について、後述する方法に従って、上流層、下流層、全体での各捕集効率を求めるとともに、エアフィルタについて、後述する方法に従って、圧力損失、フィルタ寿命を測定し、捕集効率を求め、さらに総合評価をした。結果を、表1および表2に示す。
【0053】
(フィルタ圧力損失)
エアフィルタを試験用矩形ダクトにセットし、風量を56m/分となるように空気の流れを調整し、エアフィルタの上流側および下流側でマノメータを用いて圧力を測定し、上下流間の圧力の差をエアフィルタの構造に起因する圧力損失として得た。準HEPAのフィルタ性能のものに関して、得られた圧力損失が、250Pa未満の場合をB、250〜300Pa未満の場合をC、300Pa以上の場合をD、と評価した。HEPAのフィルタ性能のものに関して、得られた圧力損失が、300Pa未満の場合をB、300〜400Pa未満の場合をC、400Pa以上の場合をD、と評価した。
【0054】
(フィルタ寿命)
エアフィルタを試験用矩形ダクトにセットし、風量を71m/分となるように空気の流れを調整し、初期圧力損失から686Pa上昇するまでに要した時間を計測し、エアフィルタの寿命とした。この結果、寿命が1年以上の場合をB、1年未満の場合をD、と評価した。
【0055】
(濾材捕集効率およびフィルタ捕集効率)
JIS B9928 附属書5(規定)NaClエアロゾルの発生方法(加圧噴霧法)記載の方法に準じて、アトマイザーで発生させたNaCl粒子を、静電分級器(TSI社製)で、0.3μmに分級し、アメリシウム241を用いて粒子帯電を中和した後、透過する流量を5.3cm/秒に調整し、パーティクルカウンター(TSI社製、CNC)を用いて濾材の前後での粒子数を求め、次式により濾材捕集効率を算出した。
捕集効率(%)=(CO/CI)×100
CO=濾材が捕集したNaCl0.3μmの粒子数
CI=濾材に供給されたNaCl0.3μmの粒子数
また、濾材の代わりにエアフィルタを用いて上記と同様に測定を行い、フィルタ捕集効率を算出した。フィルタ捕集効率が97%以上の場合をB、97%未満の場合をD、と評価した。フィルタ捕集効率が高いほど、エアフィルタをガスタービンの吸気用フィルタとして用いたときの圧縮機翼の汚れを抑制する効果が高いと考えられる。
【0056】
(総合評価)
エアフィルタの圧力損失、捕集効率、寿命の3つの評価結果において、Dが1個以上の場合をDと評価し、Cが1個の場合をBと評価し、D,Cがない場合をAと評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1に示されるように、実施例1〜6では、平均繊維径が0.9〜2.0μmであり、上流層の捕集効率が40〜70%であったため、上流層および下流層共にすぐに目詰りを超すことがなく、濾材は長寿命であった。フィルタ圧力損失も特に高すぎることはなかった。
【0060】
一方、比較例1、3では、表2に示されるように、上流層の平均繊維径が2.0μmより大きく、捕集効率が40%未満であったため、下流層がすぐに目詰りを起こし、フィルタ寿命が悪かった。比較例2、4では、上流層の平均繊維径が0.9μm未満であり、捕集効率が70%を超えていたため、上流層がすぐに目詰りを起こし、フィルタ寿命が悪かった。また、フィルタ圧力損失がやや高かった。
【符号の説明】
【0061】
1、21、31 ガスタービン吸気用エアフィルタ
2 濾材群
3,23 濾材
5,25 枠体
27 セパレータ
図1
図2
図3
図4