(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276054
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20180129BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20180129BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20180129BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20180129BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20180129BHJP
B23K 101/14 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
F28F9/02 E
F28F9/18
F28F9/22
F28D7/16 D
B23K1/00 330K
B23K101:14
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-25745(P2014-25745)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-25649(P2015-25649A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-131094(P2013-131094)
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 弘仁
(72)【発明者】
【氏名】所 徹明
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−088010(JP,A)
【文献】
特開平10−325693(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/044947(WO,A1)
【文献】
特開2013−113482(JP,A)
【文献】
特開2009−228930(JP,A)
【文献】
特表2009−513921(JP,A)
【文献】
特開平05−322467(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/037687(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/037688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
B23K 1/00
F28D 7/16
F28F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のプレート(17)が積層され、互いに対向する一対のプレート間に、それぞれ偏平流路を有するコア(2)が形成され、そのコア(2)の一端にヘッダ(4)が設けられ、他端にUターン用タンク(5)が接続された熱交換器において、
前記ヘッダ(4)の内部が、各偏平流路の積層方向の中間部で、仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部が前記偏平流路のプレート(17)の先端部にろう付により接続され、
前記仕切(6)の先端部が、前記プレート(17)の先端縁に線接触して、その線接触部でのみプレート(17)と仕切(6)とがろう付されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
各プレート(17)が溝形に形成され、対向する一対のプレート(17)が互いに嵌着して偏平チューブ(1)を形成し、その偏平チューブ(1)はその両端部に厚み方向へ拡開された拡開部(1a)を有し、
複数の偏平チューブ(1)がその拡開部(1a)で積層されてコア(2)を構成し、そのコア(2)の外周がケーシング(3)で被嵌されると共に、コア(2)の前記流通方向の一端にヘッダ(4)が配置されており、各部品がろう付により固定されてなる熱交換器において、
コア(2)の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク(5)が接続され、
前記ヘッダ(4)の内部が、前記偏平チューブ(1)の積層方向の中間で、仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部が前記偏平チューブ(1)の拡開部(1a)に接続され、
前記仕切(6)の先端部が、前記プレート(17)の先端縁に線接触して、その線接触部でのみプレート(17)と仕切(6)とがろう付されていることを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項3】
多数のプレート(17)が積層され、互いに対向する一対のプレート間に、それぞれ偏平流路を有するコア(2)が形成され、そのコア(2)の一端にヘッダ(4)が設けられ、他端にUターン用タンク(5)が接続された熱交換器において、
前記ヘッダ(4)の内部が、各偏平流路の積層方向の中間部で、仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部が前記偏平流路のプレート(17)の先端部にろう付により接続され、
前記ヘッダ(4)は、その内周が前記コア(2)の外周に整合する方形筒状部を有し、その入口側の中央位置に架橋部(4a)が設けられ、その架橋部(4a)の中間に横断面コ字状の保持部(4b)を有し、
前記仕切(6)は、基部(6a)と、その基部(6a)から前記コア(2)側に延在する仕切部(6b)とを有し、
その基部(6a)の長手方向の中間部に断面コ字状に曲折された溝状部(6c)を有し、その溝状部(6c)の外周がヘッダ(4)の前記保持部(4b)に被嵌締結されることにより、ろう付けの際に、前記仕切部(6b)と基部(6a)とのL字状の交角を可及的に直角に維持するようにしたことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
各プレート(17)が溝形に形成され、対向する一対のプレート(17)が互いに嵌着して偏平チューブ(1)を形成し、その偏平チューブ(1)はその両端部に厚み方向へ拡開された拡開部(1a)を有し、
複数の偏平チューブ(1)がその拡開部(1a)で積層されてコア(2)を構成し、そのコア(2)の外周がケーシング(3)で被嵌されると共に、コア(2)の前記流通方向の一端にヘッダ(4)が配置され、各部品がろう付により固定されてなる熱交換器において、
コア(2)の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク(5)が接続され、
前記ヘッダ(4)の内部が、前記偏平チューブ(1)の積層方向の中間で、仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部が前記偏平チューブ(1)の拡開部(1a)に接続され、
前記ヘッダ(4)は、その内周が前記コア(2)の外周に整合する方形筒状部を有し、その入口側の中央位置に架橋部(4a)が設けられ、その架橋部(4a)の中間に横断面コ字状の保持部(4b)を有し、
前記仕切(6)は、基部(6a)と、その基部(6a)から前記コア(2)側に延在する仕切部(6b)とを有し、
その基部(6a)の長手方向の中間部に断面コ字状に曲折された溝状部(6c)を有し、その溝状部(6c)の外周がヘッダ(4)の前記保持部(4b)に被嵌締結されることにより、ろう付の際に、前記仕切部(6b)と基部(6a)とのL字状の交角を可及的に直角に維持するようしたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器において、
仕切(6)の溝状部(6c)が偏平チューブ(1)の開口に対向した状態で、その仕切部(6b)が偏平チューブ(1)の拡開部(1a)の内面に当接するように配置され、その当接によりろう付の際に、仕切部(6b)が変形するのを抑制したヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項6】
請求項4に記載の熱交換器において、
前記ヘッダ(4)の板厚を前記仕切(6)の板厚より厚くしたヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項7】
その内部流体の流通方向の両端部に厚み方向へ拡開された拡開部(1a)が形成された複数の偏平チューブ(1)を有し、各偏平チューブ(1)がその拡開部(1a)で積層されてコア(2)を構成し、そのコア(2)の外周がケーシング(3)で被嵌されると共に、コア(2)の前記流通方向の一端にヘッダ(4)が配置され、各部品がろう付けにより固定されてなる熱交換器において、
各偏平チューブ(1)の内部には、波形に曲折されたインナーフィン(12)が挿入され、そのインナーフィン(12)は、各波の側壁が前記流通方向に直線的連続して形成され、
コア(2)の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク(5)の開口が接続され、
前記ヘッダ(4)の内部が、前記偏平チューブ(1)の積層方向に直交する仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部に、多数の舌片部(8)がスリット(7)を介して互いに離間して並列され、その各舌片部(8)が各偏平チューブ(1)の拡開部(1a)に挿入されたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項8】
請求項7に記載の熱交換器において、
その仕切(6)の先端部平面が、前記偏平チューブ(1)の拡開部(1a)の平面に対して交差して線状に接触し、その接触部およびその近傍が、一体にろう付固定されたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のプレートを積層した熱交換器であって2パス型のものに関する。
【背景技術】
【0002】
多数のプレートを積層した熱交換器として、下記特許文献1その他が各種提案されている。これは、特許文献1の例は、偏平チューブが、その両端に、その厚み方向に拡開された拡開部を有し、その拡開部で多数の偏平チューブを積層してコアを形成するものである。各偏平チューブ間は、その拡開部においてのみ偏平チューブどうしが密着し、コアを形成する。そのため、従来のヘッダプレートを必要としない。また、一対の平行なバー材を交互に井桁状に配置し、バー材間にプレートを積層した積層型の熱交換器も知られている。
【0003】
Uターン型の熱交換器として、下記特許文献2のUターン型EGRクーラが知られている。これは、コアの一端に仕切で二分割されたヘッダと、他端に配置されたUターン用ヘッダとを有する。そして、その一端側のヘッダ仕切は、その四周がヘッダの内壁とヘッダプレートの内壁とに気密に接合されている。そして二分されたヘッダの一方側から排気ガスを導入し、コアの一方側半分の各偏平チューブを流通して他端のヘッダでUターンさせ、他方側半分の各偏平チューブ内を流通して、それを外部に導くものである。そして、コアの外周に設けられたケーシング内に冷却水を流入し、その冷却水と排気ガスとの間に熱交換を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−96932号公報
【特許文献2】特開2010−127171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプレートを積層した熱交換器において、Uターン型の流路(2パス型)をとることができる熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の
発明は、多数のプレート17が積層され、互いに対向する一対のプレート間に、それぞれ偏平流路を有するコア2が形成され、そのコア2の一端にヘッダ4が設けられ、他端にUターン用タンク5が接続された熱交換器において、
前記ヘッダ4の内部が、各偏平流路の積層方向の中間部で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平流路のプレート17の先端部にろう付により接続され
、
前記仕切6の先端部が、前記プレート17の先端縁に線接触して、その線接触部でのみプレート17と仕切6とがろう付されていることを特徴とする熱交換器である。
【0007】
請求項2に記載の
発明は、
各プレート17が溝形に形成され、対向する一対のプレート17が互いに嵌着して偏平チューブ1を形成し、その偏平チューブ1はその両端部に厚み方向へ拡開された拡開部1aを有し、
複数の偏平チューブ1がその拡開部1aで積層されてコア2を構成し、そのコア2の外周がケーシング3で被嵌されると共に、コア2の前記流通方向の一端にヘッダ4が配置されており、各部品がろう付により固定されてなる熱交換器において、
コア2の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク5が接続され、
前記ヘッダ4の内部が、前記偏平チューブ1の積層方向の中間で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平チューブ1の拡開部1aに接続され、
前記仕切6の先端部が、前記プレート17の先端縁に線接触して、その線接触部で
のみプレート17と仕切6とがろう付され
ていることを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0008】
請求項3に記載の
発明は、
多数のプレート17が積層され、互いに対向する一対のプレート間に、それぞれ偏平流路を有するコア2が形成され、そのコア2の一端にヘッダ4が設けられ、他端にUターン用タンク5が接続された熱交換器において、
前記ヘッダ4の内部が、各偏平流路の積層方向の中間部で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平流路のプレート17の先端部にろう付により接続され、
前記ヘッダ4は、その内周が前記コア2の外周に整合する方形筒状部を有し、その入口側の中央位置に架橋部4aが設けられ、その架橋部4aの中間に横断面コ字状の保持部4bを有し、
前記仕切6は、基部6aと、その基部6aから前記コア2側に延在する仕切部6bとを有し、
その基部6aの長手方向の中間部に断面コ字状に曲折された溝状部6cを有し、その溝状部6cの外周がヘッダ4の前記保持部4bに被嵌締結されることにより、ろう付けの際に、前記仕切部6bと基部6aとのL字状の交角を可及的に直角に維持するようにしたことを特徴とする熱交換器である。
【0009】
請求項4に記載の
発明は、
各プレート17が溝形に形成され、対向する一対のプレート17が互いに嵌着して偏平チューブ1を形成し、その偏平チューブ1はその両端部に厚み方向へ拡開された拡開部1aを有し、
複数の偏平チューブ1がその拡開部1aで積層されてコア2を構成し、そのコア2の外周がケーシング3で被嵌されると共に、コア2の前記流通方向の一端にヘッダ4が配置され、各部品がろう付により固定されてなる熱交換器において、
コア2の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク5が接続され、
前記ヘッダ4の内部が、前記偏平チューブ1の積層方向の中間で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平チューブ1の拡開部1aに接続され、
前記ヘッダ4は、その内周が前記コア2の外周に整合する方形筒状部を有し、その入口側の中央位置に架橋部4aが設けられ、その架橋部4aの中間に横断面コ字状の保持部4bを有し、
前記仕切6は、基部6aと、その基部6aから前記コア2側に延在する仕切部6bとを有し、
その基部6aの長手方向の中間部に断面コ字状に曲折された溝状部6cを有し、その溝状部6cの外周がヘッダ4の前記保持部4bに被嵌締結されることにより、ろう付の際に、前記仕切部6bと基部6aとのL字状の交角を可及的に直角に維持するようしたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、請求項4の熱交換器において、
仕切(6)の溝状部(6c)が偏平チューブ(1)の開口に対向した状態で、その仕切部(6b)が偏平チューブ(1)の拡開部(1a)の内面に当接するように配置され、その当接によりろう付けの際に、仕切部(6b)が変形するのを抑制したヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0011】
請求項6に記載の
発明は、
請求項4に記載の熱交換器において、
前記ヘッダ4の板厚を前記仕切6の板厚より厚くしたヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0012】
請求項7に記載の本発明は、その内部流体の流通方向の両端部に厚み方向へ拡開された拡開部(1a)が形成された複数の偏平チューブ(1)を有し、各偏平チューブ(1)がその拡開部(1a)で積層されてコア(2)を構成し、そのコア(2)の外周がケーシング(3)で被嵌されると共に、コア(2)の前記流通方向の一端にヘッダ(4)が配置され、各部品がろう付けにより固定されてなる熱交換器において、
各偏平チューブ(1)の内部には、波形に曲折されたインナーフィン(12)が挿入され、そのインナーフィン(12)は、各波の側壁が前記流通方向に直線的連続して形成され、
コア(2)の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク(5)の開口が接続され、
前記ヘッダ(4)の内部が、前記偏平チューブ(1)の積層方向に直交する仕切(6)により二分され、その仕切(6)の先端部に、多数の舌片部(8)がスリット(7)を介して互いに離間して並列され、その各舌片部(8)が各偏平チューブ(1)の拡開部(1a)に挿入されたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0013】
請求項8に記載の熱交換器は、請求項7に記載の熱交換器において、
その仕切(6)の先端部平面が、前記偏平チューブ(1)の拡開部(1a)の平面に対して交差して線状に接触し、その接触部およびその近傍が、一体にろう付固定されたことを特徴とするヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は、多数のプレート17が積層さた熱交換器において、前記ヘッダ4の内部が、各偏平流路の積層方向の中間位置で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平流路のプレート17の先端部にろう付により接続されたものであ
り、また、仕切6の先端部を、前記プレート17の先端縁に交差して線接触し、その線接触部でのみプレート17と仕切6とをろう付したものである。そのため、仕切構造を簡単に形成でき
、仕切のろう付部を線状にして、流体のリークを防止しつつ、接続部の温度分布の変化を少なくして、熱歪みによるろう付部の分離を防止できる。
【0015】
請求項2に記載の
発明は、
ヘッダプレートのない、ヘッダプレートレス型の熱交換器において、コア2の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク5の開口が接続され、ヘッダ4の内部が、偏平チューブの積層方向の中間で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平チューブ1の拡開部1aに接続され、仕切6の先端部を、前記プレート17の先端縁に交差して線接触し、その線接触部
でのみプレート17と仕切6とをろう付したものである。
この発明によれば、仕切6の先端部との偏平チューブの拡開部1aとの接続構造により、ヘッダプレートの存在しない熱交換器において、Uターン型の流路を構成することができ、流路の長い熱交換性能のよい熱交換器を提供できる。また、仕切のろう付部を線状にして、流体のリークを防止しつつ、接続部の温度分布の変化を少なくして、熱歪みによるろう付部の分離を防止できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、
多数のプレート17が積層さた熱交換器において、前記ヘッダ4の内部が、各偏平流路の積層方向の中間位置で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平流路のプレート17の先端部にろう付により接続されたものであり、仕切6の溝状部6cの外周がヘッダ4の保持部4bで被嵌締結されることにより、ろう付けの際に、前記仕切部6bと基部6aとのL字状の交角を可及的に直角に維持するようにしたものである。
そのため、仕切構造を簡単に形成でき、また、その仕切6と偏平チューブ1との気密性を保持して、Uターン型の流路を構成することができ、熱交換性能のよい熱交換器を提供できる。
【0017】
請求項4に記載の
発明は、
ヘッダプレートのない、ヘッダプレートレス型の熱交換器において、コア2の前記流通方向の他端に、箱形のUターン用タンク5の開口が接続され、ヘッダ4の内部が、偏平チューブの積層方向の中間で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部が前記偏平チューブ1の拡開部1aに接続され、仕切6の溝状部6cの外周がヘッダ4の保持部4bで被嵌締結されることにより、ろう付けの際に、前記仕切部6bと基部6aとのL字状の交角を可及的に直角に維持するようにした場合には、
仕切6の先端部との偏平チューブの拡開部1aとの接続構造により、ヘッダプレートの存在しない熱交換において、Uターン型の流路を構成することができ、流路の長い熱交換性能のよい熱交換器を提供できる。そして、その仕切6と偏平チューブ1との気密性を保持して、Uターン型の流路を構成することができ、熱交換性能のよい熱交換器を提供できる。
【0018】
上記構成に加えて、請求項5に記載のように、仕切6の溝状部6cが偏平チューブ1の開口に対向した状態で、その仕切部6bが偏平チューブ1の拡開部1aの内面に当接するように配置し、その当接によりろう付けの際に、仕切部6bが変形するのを抑制した場合には、仕切6と偏平チューブ1との気密性をより向上させることができるヘッダプレートレス型の熱交換器となる。
【0019】
上記構成に加えて、請求項6に記載のように、ヘッダ4の板厚を前記仕切6の板厚より厚くした場合には、ろう付けの際に、前記仕切部と基部とのL字状の交角をより直角に維持して、その仕切6と、偏平チューブ1との気密性を確保して、熱交換性能のよいヘッダプレートレス型の熱交換器を提供できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、ヘッダ4の内部が、偏平チューブの積層方向に直交する方向の中間で、仕切6により二分され、その仕切6の先端部に、多数の舌片部8がスリット7を介して互いに離間して並列され、その各舌片部8が各偏平チューブ1の拡開部1a挿入されたことを特徴とする。その各偏平チューブ1の内部には、波形に曲折されたインナーフィン12が挿入され、そのインナーフィン12は、各波の側壁が前記流通方向に直線的連続して形成されたものである。
この発明によれば、ヘッダプレートのない熱交換器において、偏平チューブ1の積層方向に直交する方向に仕切6を配置し、各偏平チューブ1を二分割して、Uターン型の流路を構成することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の熱交換器において、その仕切6の先端部平面を、前記偏平チューブ1の拡開部1aの平面に対して交差して線状に接触し、その接触部およびその近傍を、一体にろう付固定したものである。そのため、ヘッダプレートレス型の熱交換器で、仕切のろう付部を線状にして、流体のリークを防止しつつ、接続部の温度分布の変化を少なくして、熱歪みによるろう付部の分離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のヘッダプレートレス熱交換器の分解斜視図。
【
図2】同熱交換器のヘッダ4と仕切6との組み付け状態を示す説明図。
【
図6】本発明のヘッダプレートレス熱交換器の全体を示す斜視図。
【
図8】同熱交換器の仕切6のろう付け時における変形を示す説明図。
【
図11】本発明の第2実施例のヘッダプレートレス熱交換器の分解斜視図。
【
図14】
図2の熱交換器の変形例であって、ヘッダ4と仕切6との組み付け状態を示す説明図。
【
図18】本発明のさらに他の実施例の要部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1〜
図10は本発明の第1実施例を示し、このヘッダプレートレス熱交換器は
図1に示す如く、多数の偏平チューブ1の積層体からなるコア2と、その両端に配置されるUターン用タンク5と,ヘッダ4と、コア2の外周を被嵌するケーシング3とを有する。
各偏平チューブ1は、上下一対の溝形プレートの嵌着体からなり、その長手方向両端部が厚み方向に拡開されて拡開部1aを形成する。その拡開部1aにおいて、各偏平チューブ1が積層され、互いに一体的にろう付け固定されてコア2を形成する。
【0024】
ケーシング3は、溝形のケーシング本体3aとその下端開口を閉塞する蓋部3bとからなる。ケーシング本体3aの長手方向両端部には、一対の出入口パイプ13の一端が連通する。そして
図4に示す如く、コア2の一端には比較的短い筒状のヘッダ4の開口が嵌着され、コア2の他端にはUターン用タンク5の開口が接続される。
このヘッダ4は、
図2,
図3に示す如く、筒状の部分とその入口側の中央を水平に横断する架橋部4aとが一体に形成され、その架橋部4aの長手方向中間部が溝形に形成されて保持部4bを構成する。そしてこの保持部4bには、仕切6の溝状部6cが嵌着される。なお、好ましくは、ヘッダ4の板厚を仕切6の板厚より厚くする。その理由は、仕切6をヘッダ4の保持部4bで強固に締結するためである。しかしながら、両者同一の厚さとすることもできる。
【0025】
仕切6は、架橋部4aに略整合する基部6aとそれに直交する仕切部6bとを有する。基部6aの長手方向中間には、溝状部6cが曲折されている。そして溝状部6cの位置において、その外周がヘッダ4の保持部4bに被嵌され、その保持部4bが幅方向にカシメられて、基部6aの外周を締結する。そして
図5において、仕切6は、その仕切部6bの上面が偏平チューブ1の拡開部1aの内部の下面に当接する。さらに、この例ではヘッダ4の外側にフランジ9が配置される。そのフランジ9は、その枠状の外周部9aと、その中央に配置された架橋部9bとを有する。そして、その架橋部9bがヘッダ4の架橋部4aに当接する。
【0026】
そして、このヘッダ4と架橋部9bとが一体的にろう付け固定される。
なお、互いに接続される部材の少なくとも一方にはろう材が被覆または塗布されている。そして各部品は、
図4,
図5に示すように組立てられ、その外周を治具により締結した状態で高温の炉内に挿入され、全体が一体的にろう付け固定される。
【0027】
図8は、そのろう付け時の炉内での仕切6の作用を示すものである。
仕切6は、基部6aとそれに直交する仕切部6bとを有し、それらがプレス成形により曲折形成されている。すると、仕切6には、その成形時の残留歪みが存在する。そのため炉内で加熱されると、その残留応力に基づいて、仕切部6bが基部6aに対して、実線の状態から鎖線の状態に変形する。なお、その移動量は僅かである。同図では、説明のためより大きく記載している。すると仕切6を仮に
図9の如く、偏平チューブ1の拡開部1aの下端内面に当接した場合、その仕切6が実線の状態から鎖線の状態に変形し、両者間が分離して、その気密性が損なわれる。
【0028】
そこで、好ましくは
図10の如く、仕切6の変形する方向を抑制する位置に仕切部6bを配置する。
即ち、仕切6の基部6aの溝状部6cが偏平チューブ1に対向するようにして、仕切部6bの外面を拡開部1aの内面に当接させる。すると、仕切部6bが仮に残留歪みにより変形しようとしても、当接する拡開部1aによりその変形が抑制される。
【0029】
次に、
図11〜
図13は本発明の第2実施例であり、この例が前記第1実施例と異なる点は、仕切6の配置方向である。
第1実施例では、仕切6が、コア2を構成する各偏平チューブ1の積層方向に平行に配置されていた。しかし第2実施例では、仕切6が各偏平チューブ1の積層方向に直交する方向に配置されている。
また、この例では、各偏平チューブ1内にインナーフィン12が配置されている。このインナーフィン12は、金属板が波形に曲折されたものであり、そのインナーフィン12は各波の側壁が偏平チューブ1の内部流体の流通方向に直線的に連続して形成されている。
従って、インナーフィン12はその各波が偏平チューブ1内を多数の流路に区分する。
【0030】
仕切6は、基部6aとそれに直交する仕切部6bとを有し、その仕切部6bに多数の舌片部8がスリット7を介して並列されている。舌片部8の形状は、偏平チューブ1の開口の横断面に整合する。スリット7の幅は、各偏平チューブ1の板厚の2倍またはそれよりも僅かに広く形成され、その各スリット7が各偏平チューブ1の拡開部1aに嵌着される。そして、仕切6が、
図12及び
図13に示す如く、各偏平チューブ1の幅方向を二等分する。そして、仕切6の基部6aがヘッダ4の内面に接合される。ヘッダ4には、一対の出入口パイプ14が連通する。なお、好ましくは、各舌片部8の先端がインナーフィン12に接合される。
【0031】
〔作用〕
図1の第1実施例においては、一例としてヘッダ4の架橋部4aの下側から、第1流体15が流入し、コア2の下半分の各偏平チューブ1を流通して、Uターン用タンク5でUターンし、上半分の各偏平チューブ1内をヘッダ4側に移動し、それが外部に導かれる。そして、ケーシング3の一方の出入口パイプ13から第2流体16が流入し、各偏平チューブ1間の隙間を流通して、他方の出入口パイプ13からそれが流出する。そして第1流体15と第2流体16との間に熱交換が行われるものである。
【0032】
次に、
図11の第2実施例においては、一方の出入口パイプ14から第1流体15が流入し、その第1流体15は各偏平チューブ1の右半分を流通し、Uターン用タンク5において左半分側に移動し、他方の出入口パイプ14より流出する。そして、一方の出入口パイプ13から第2流体16が各偏平チューブ1の隙間を流通して、他方の出入口パイプ13よりそれが流出する。
【0033】
次に、
図14,
図15は前記
図2及び
図3の実施例の変形例である。
この例が、
図2,
図3の例と異なる点は、仕切6が全体に平板状に形成され、その後端部両側に凸部6dがヘッダ4の板厚分突出されている点、及びヘッダ4の両側壁に凸部6dに整合するスリット4cが形成された点である。そして仕切6の先端が架橋部4aに当接されると共に、凸部6dがスリット4cに嵌着された状態で両者間が一体にろう付け固定されるものである。
なお、この仕切6の後端は
図4,
図5の例と同様に偏平チューブ1の拡開部1aに接合される。
【0034】
次に、
図16,
図17は、前記
図5の変形例である。この例が
図5の例と異なる点は、その仕切部の先端形状および、そのろう付構造である。その仕切6の先端部平面が、断面への字状に折り曲げられ、その辺平面が記偏平チューブ1の拡開部1aの平面に対して交差して線状に接触し、その接触部およびその近傍が、一体にろう付固定されたものである。これは、ヘッダプレートレス型の熱交換器で、仕切のろう付部を線状にして、流体のリークを防止しつつ、接続部の温度分布の変化を少なくして、熱歪みによるろう付部の分離を防止するものである。
【0035】
次に、
図18,
図19並びに
図20は、前記
図5のさらに変形例である。この例は偏平チューブの代わりに、一対のバー材とを井桁状に積層し、各バー材間に平坦なプレート17介装した積層型熱交換器に適用したものである。その仕切部の先端形状および、そのろう付構造は
図17の例と同じである。即ち、その仕切6の先端部平面が、断面への字状に折り曲げられ、その平面がプレート17の平面に対して交差して線状に接触し、その接触部およびその近傍が、一体にろう付固定されたものである。これも、仕切のろう付部を線状にして、流体のリークを防止しつつ、接続部の温度分布の変化を少なくして、熱歪みによるろう付部の分離を防止するものである。
【符号の説明】
【0036】
1 偏平チューブ
1a 拡開部
2 コア
3 ケーシング
3a ケーシング本体
3b 蓋部
4 ヘッダ
4a 架橋部
4b 保持部
4c スリット
【0037】
5 Uターン用タンク
6 仕切
6a 基部
6b 仕切部
6c 溝状部
6d 凸部
7 スリット
8 舌片部
【0038】
9 フランジ
9a 外周部
9b 架橋部
12 インナーフィン
13 出入口パイプ
14 出入口パイプ
15 第1流体
16 第2流体
17 プレート
18 線接触部
19 ろうフィレット
20 バー材
21 傾斜面