特許第6276064号(P6276064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276064
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   F02M25/08 311K
   F02M25/08 311A
   F02M25/08 311F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-34846(P2014-34846)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-161175(P2015-161175A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】松浦 和也
(72)【発明者】
【氏名】田代 貴洋
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−115952(JP,U)
【文献】 特開平08−114159(JP,A)
【文献】 特開2008−303846(JP,A)
【文献】 実開昭61−167459(JP,U)
【文献】 実開昭56−129561(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料蒸気導入口、パージ口及び大気連通口が形成されたケーシングと、前記ケーシング内に収納される吸着剤とを有するキャニスタにおいて、
前記吸着剤は、有底筒状のケース部材に収納されると共に、前記ケース部材の開口を閉塞するボトムケース部材を備え、
前記吸着剤と前記ボトムケース部材の間にはパッド部材とグリッド部材が積層配置され、
前記グリッド部材は、前記ケーシングの軸方向及び径方向に蛇行する通気通路を備え
前記グリッド部材は、前記パッド部材と当接する底面と、前記底面の周縁から前記ケース部材の内壁に沿って延びる側面とを備え、
前記底面には、周方向に配置された複数の第1の開口部及び第2の開口部が形成されると共に、前記側面と平行に延びる中間壁が形成され、
前記中間壁は、前記側面よりも軸方向に沿った長さが短いことを特徴とするキャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタにおいて、
前記大気連通口は、前記ボトムケース部材に形成され、
前記燃料蒸気導入口及びパージ口は前記ケース部材の底部に形成されることを特徴とするキャニスタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャニスタにおいて、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記中間壁と前記底面の間に形成された導入口を介して連通していることを特徴とするキャニスタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャニスタにおいて、
前記大気連通口は、前記底面の中央部に対向して配置されることを特徴とするキャニスタ。
【請求項5】
請求項に記載のキャニスタにおいて、
前記中央部には、貫通孔が形成されることを特徴とするキャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料供給源から蒸発した燃料を処理するキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のキャニスタとしては、燃料蒸気導入口、パージ口及び大気連通口が形成されたケース部材に吸着剤を封入し、該吸着剤を保持するパッドと、吸着剤及びパッドを軸方向に押圧するグリッド部材とを備えており、グリッド部材の端部にはフェルト等で形成されたシート状のフィルタエレメントが配置されている。
【0003】
このように構成したキャニスタは、燃料蒸気導入口を燃料タンクに、パージ口を内燃機関に接続することで、内燃機関が停止している場合には、燃料タンクから蒸発した燃料蒸気を燃料蒸気導入口からキャニスタ内に導入して吸着剤で燃料蒸気を吸着保持して燃料蒸気が大気へ放出されることを防止し、内燃機関が駆動している場合には、内燃機関側の負圧によって吸着剤に吸着した燃料蒸気を内燃機関側へ送出している。
【0004】
また、内燃機関が駆動している場合には、大気連通口から大気を導入して吸着剤に保持された燃料蒸気を内燃機関側へ送出するが、この大気に含まれる塵埃等を適切に濾過する必要が生じる。このため、大気の濾過のための構成は種々の構成が知られているが、例えば上述した構成では吸着剤の端部にはフェルト等で形成されたフィルタエレメントが配置されている。
【0005】
その他、特許文献1に記載されているように、大気連通口から導入される大気が蛇行するようにケース部材に空気通路を形成することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−3915号公報
【0007】
特許文献1に記載されたキャニスタは、大気に含まれる塵埃を除去するための空気通路を大気連通口の近傍に設けることで、空気通路の内部で塵埃が除去されるので、フィルタエレメントの目詰まりを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたキャニスタによれば、ケース部材の内部に空気通路を設けているので構成が複雑となることに加え、フィルタエレメントやグリッド部材といった従来の部品も含まれることから部品点数が増加し、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、従来の塵埃除去の性能を維持したまま、安価に製造することができるキャニスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るキャニスタは、燃料蒸気導入口、パージ口及び大気連通口が形成されたケーシングと、前記ケーシング内に収納される吸着剤とを有するキャニスタにおいて、前記吸着剤は、有底筒状のケース部材に収納されると共に、前記ケース部材の開口を閉塞するボトムケース部材を備え、前記吸着剤と前記ボトムケース部材の間にはパッド部材とグリッド部材が積層配置され、前記グリッド部材は、前記ケーシングの軸方向及び径方向に蛇行する通気通路を備え、前記グリッド部材は、前記パッド部材と当接する底面と、前記底面の周縁から前記ケース部材の内壁に沿って延びる側面とを備え、前記底面には、周方向に配置された複数の第1の開口部及び第2の開口部が形成されると共に、前記側面と平行に延びる中間壁が形成され、前記中間壁は、前記側面よりも軸方向に沿った長さが短いことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るキャニスタにおいて、前記大気連通口は、前記ボトムケース部材に形成され、前記燃料蒸気導入口及びパージ口は前記ケース部材の底部に形成されると好適である。
【0013】
また、本発明に係るキャニスタにおいて、前記第1の開口部と前記第2の開口部は、前記中間壁と前記底面の間に形成された導入口を介して連通していると好適である。
【0014】
また、本発明に係るキャニスタにおいて、前記大気連通口は、前記底面の中央部に対向して配置されると好適である。
【0015】
また、本発明に係るキャニスタにおいて、前記中央部には、貫通孔が形成されると好適である。
【0016】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るキャニスタは、グリッド部材にケーシングの軸方向及び径方向に蛇行する通気通路を備えているので、該通気通路内で大気に含まれる塵埃を除去することができると共に、従来に比べてフィルタエレメントを削減することによる部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るキャニスタの斜視図。
図2】本実施形態に係るキャニスタの分解図。
図3】本実施形態に係るグリッド部材の一部断面図。
図4】本実施形態に係るキャニスタの通気方向を示す断面図。
図5】本実施形態に係るグリッド部材の変形例。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施形態に係るキャニスタの斜視図であり、図2は、本実施形態に係るキャニスタの分解図であり、図3は、本実施形態に係るグリッド部材の一部断面図であり、図4は、本実施形態に係るキャニスタの通気方向を示す断面図であり。図5は、本実施形態に係るグリッド部材の変形例である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るキャニスタ1は、内燃機関の吸気経路に接続されてキャニスタ1内に捕捉された燃料蒸気を該吸気経路に送出するパージ口12及び燃料タンクに接続されて燃料蒸気をキャニスタ1内に導入する燃料蒸気導入口13が形成されたケース部材10と、空気の導入及び送出を行うための大気連通口14及び大気連通口14から流入した水をキャニスタ1の外部に排出するための水抜き管15が形成されたボトムケース部材11とを備えるケーシング2を備えている。
【0022】
図2に示すように、ケース部材10は、有底筒状に形成され、ボトムケース部材11は、概略円盤状に形成されている。ボトムケース部材11は、ケース部材10の開口を閉塞するように振動溶着によって溶着されることで一体に組み付けられている。また、ケース部材10及びボトムケース部材11は、共に合成樹脂によって形成されており、具体的には、夫々ポリプロピレン系樹脂やポリアミド系樹脂等の熱可塑性の合成樹脂が好適に用いられる。
【0023】
ケース部材10には、吸着剤30が収納されており、該吸着剤30の軸方向の両端には、第1のパッド20及び第2のパッド21が配置されている。吸着剤30は、粒状の活性炭が好適に用いられ、第1のパッド20及び第2のパッド21は、弾力性があると共に通気性のあるシートが用いられる。
【0024】
また、吸着剤30のボトムケース部材11側に配置された第2のパッド21は、グリッド部材40が積層するように配置されており、ボトムケース部材11が溶着されることによってグリッド部材40が加圧され、その反発力で第2のパッド21が吸着剤30を適度に押し固めている。
【0025】
なお、第1のパッド20は、パージ口12及び燃料蒸気導入口13の其々に対応するように分割して構成されている。また、第1のパッド20はパージ口12及び燃料蒸気導入口13に分割せず一枚で構成しても構わない。
【0026】
図3に示すように、グリッド部材40は、第2のパッド21と当接する底面41と、底面41の周縁からケース部材10の内壁に沿って延びる円筒状の側面42を備えている。さらに、底面41には、周方向に配置された複数の第1の開口部43及び第2の開口部44を備えており、これらの開口部は、放射状リブ48及び同心状リブ49によって区画されている。なお、底面41の中心部は、平面上の中央部47が形成されており、放射状リブ48は、中央部47から径方向に延設されている。
【0027】
また、底面41の第2のパッド21と当接する面の反対面には、側壁42と概略平行に延びる円筒状の中間壁45が形成されている。中間壁45の軸方向の長さは、側壁42の長さよりも短く形成されており、中央部47から延設する連続部45aと連続して形成されている。また、中間壁45と底面41の交差する位置には、中間壁45の周方向に沿って複数の導入口46が形成されており、該導入口46は、第1の開口部43及び第2の開口部44を互いに連通している。
【0028】
図4に示すように、大気連通口14は、グリッド部材40の中央部47と対向するように配置されており、ボトムケース部材11及びグリッド部材40によってケーシング2の軸方向及び径方向に蛇行する通気通路を構成している。
【0029】
内燃機関の駆動時は、通気経路L1に示すように、内燃機関のインテークマニホールド内の負圧によって大気導入口14からキャニスタ1内に空気が導入される。キャニスタ内に導入された空気は、中央部47に衝突して径方向に拡散する。径方向に拡散した空気は、中間壁45に沿ってボトムケース部材11側に案内され、ボトムケース部材11と衝突した後にさらに拡径方向に案内される。そしてグリッド部材40の側面42に沿って軸方向に案内されて第1の開口部43及び第2の開口部44から吸着剤に吸着保持された燃料蒸気を伴ってパージ口12から内燃機関側へ送出される。
【0030】
このように、内燃機関の駆動時は、ボトムケース部材11とグリッド部材40の間を空気がケーシングの軸方向及び径方向に蛇行する通気通路を通過するため、方向転換をするたびに空気に含まれる塵埃等が振り落とされる。したがって、第2のパッド21が早期に目詰まりすることを防止することができる。なお、第2の開口部44は、第1の開口部43が目詰まりを起こした場合でも空気の導入を図ることができるように導入口46からの迂回路を形成している。
【0031】
次に、内燃機関の停止時は、通気経路L2に示すように、燃料タンクなどで生じた燃料蒸気が、燃料蒸気導入口13からキャニスタ内に導入されて吸着剤30で燃料蒸気を吸着保持して燃料蒸気が大気へ放出されることを防止している。
【0032】
このように構成した本実施形態に係るキャニスタ1は、従来備えていたフィルタエレメントを除去し、グリッド部材40とボトムケース部材11によって通気通路を構成することで空気に含まれる塵埃等の除去を行っているので、部品点数を削減することができると共に、通気通路を構成する際にもグリッド部材40をボトムケース部材11で押圧しながら振動溶着によって溶着する従来の製法で製造することができるので、キャニスタの性能を維持したままより安価にキャニスタを製造することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態に係るグリッド部材は、中央部47を平面に形成した場合について説明を行ったが、図5に示すようにグリッド部材40´は、中央部47に貫通孔47aを形成しても構わない。この場合、内燃機関の駆動時に大気導入口14から導入された空気は、貫通孔47aを介して第2のパッド21に衝突して塵埃を振り落す。その後、第2のパッド21の貫通孔47aと対向する部位に目詰まりが生じた場合には、図4で説明した通気経路L1と同様の経路を通ってキャニスタ内に導入される。
【0034】
このように構成することで、第2のパッド21の中央部47と対向する部位も有効に使用することができるので、キャニスタの耐用年数を延ばすことが可能となる。
【0035】
以上説明したように、上述した本実施形態に係るキャニスタでは、燃料蒸気導入口13及びパージ口12をケース部材10に形成し、大気連通口14をボトムケース部材11に形成して、筒状のケーシング2の一端に燃料蒸気導入口13及びパージ口12,他端に大気連通口14を夫々形成した場合について説明を行ったが、燃料蒸気導入口13,パージ口12及び大気連通口14は、一方端に形成し、吸着剤30を燃料蒸気導入口13及びパージ口12と大気連通口14とに分割する隔壁を設けてケーシング内の吸着剤をU字状に配置しても構わない。
【0036】
さらに、本実施形態に係るキャニスタでは、ケース部材10とボトムケース部材11を振動溶着によって溶着した場合について説明したが、これらの溶着は振動溶着に限られず例えば超音波溶着などを用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 キャニスタ, 2 ケーシング, 10 ケース部材, 11 ボトムケース部材, 12 パージ口, 13 燃料蒸気導入口, 14 大気連通口, 20 第1のパッド, 21 第2のパッド, 30 吸着剤, 40 グリッド部材, 41 底面, 42 側面, 43 第1の開口部, 44 第2の開口部, 45 中間壁, 46 導入口, 47 中央部, L1,L2 通気経路。
図1
図2
図3
図4
図5