(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判別手段は、前記対象画像または前記変換された画像の中に、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ予め設定された形状または領域を有する画像があるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の異常通知装置。
前記判別手段は、前記対象画像または前記変換された画像と予め設定された画像との類似度を求め、求めた類似度が閾値を超えるか否かに従って、前記判別対象に異常があるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の異常通知装置。
前記画像取得手段は、前記撮影手段によって撮影された前記少なくとも1以上の画像について台形歪み補正を行い、前記台形歪み補正された画像から前記対象画像を取得する、
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の異常通知装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る太陽電池アレイの異常通知装置を説明する。本実施形態では、
図1に示すように太陽電池アレイSAが地上設置型である場合を例に説明する。また、太陽電池アレイSAは、2行4列に配置された計8枚の太陽電池モジュールSMを備える。また、太陽電池アレイSAの前方には、太陽電池アレイSAの長手方向と平行にガイドレール201が敷設されている。
【0012】
太陽電池アレイSAを構成する各太陽電池モジュールSMは全体的に濃い青色等をしている。青色系の色は可視光(約380〜750nmの波長)の中でも短波長域(約420〜460nmの波長)に属し、人間が識別しにくい色とされている。一方、黄色系の色は、中間波長域(約420〜460nmの波長)に属し、人間が識別しやすい色とされている。
【0013】
異常通知装置1Aは、例えば台車から構成される移動体を備え、ガイドレール201の上を移動する。また、異常通知装置1Aは、屋外に設置された状態の太陽電池アレイSA表面をガイドレール201の上から撮影する機能と、撮影された画像から判別対象である太陽電池モジュールSMを表す画像(以下、対象画像という)を取得する機能と、対象画像を基に太陽電池モジュールSMの異常の有無を判別する機能と、対象画像の色を変換して変換画像を生成する機能と、対象画像、変換画像及び異常の有無を表す画像ファイルを出力する機能とを備える。これにより、太陽電池アレイSAを点検する作業者は、太陽電池モジュールSM毎の異常の有無を簡単かつ正確に確認できるようになる。
【0014】
異常通知装置1Aは、
図2に示すように、制御部11と、記憶部12と、撮影部13と、操作部14と、表示部15と、移動体駆動部16と、移動体101とを備える。
【0015】
撮影部13は、デジタルカメラから構成され、撮影レンズが太陽電池アレイSAの表面と対向した状態で撮影を行う。撮影部13は、制御部11の制御のもと、太陽電池アレイSAの一部について可視光の撮影を行い、デジタル化した静止画像を取得する。可視光の撮影とは、人間の眼で見ることができる光の波長領域を撮影することをいい、紫外光撮影や赤外光撮影とは異なる一般的なカラー撮影のことをいう。撮影部13は、デジタル化した静止画像を制御部11に供給する。撮影部13は、1回の撮影で縦方向に2枚分(2行1列分)の太陽電池モジュールSMを含む画像を撮影し、太陽電池アレイSAを構成する全ての太陽電池モジュールSMを4回に分けて撮影する。
【0016】
操作部14は、作業者からの各種操作を受け付ける操作インタフェース装置から構成される。操作部14は、制御部11の制御のもと、作業者から各種操作を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部11に供給する。操作部14は、例えば、後述の処理によって取得される画像ファイル12Dを表示する操作、画像ファイル12Dにより表される対象画像と変換画像とを切り替えて表示する操作、スライドショー表示やサムネイル表示等の表示態様を選択する操作等を受け付け、それぞれの操作に対応する操作信号を制御部11に供給する。
【0017】
表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)等の表示インタフェース装置から構成される。表示部15は、制御部11から各種画像を受け取って表示する。表示部15は、例えば、後述の処理によって取得される画像ファイル12D、画像ファイル12Dにより表される対象画像と変換画像とを切り替えて表示するための画面、スライドショー表示やサムネイル表示等の表示態様を選択するための画面等を表示する。
【0018】
移動体駆動部16は、移動体101の駆動装置から構成される。移動体駆動部16は、制御部11から制御信号を受け取り、受け取った制御信号に従って移動体101を駆動し、移動体101をガイドレール201の上で移動させる。移動体駆動部16は、例えば、撮影部13が1回の撮影を行った後、太陽電池モジュールSMの短手方向(太陽電池アレイSAの行方向)の長さに相当する距離だけ移動体101を移動させる。
【0019】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置から構成される。記憶部12は、OS(Operating System)や各種アプリケーションプログラム等、制御部11が各種処理を行うために使用する各種プログラムおよびデータ、制御部11が各種処理を行うことにより生成または取得した各種データを記憶する。
【0020】
また、記憶部12は、制御プログラム12A、太陽電池アレイ情報12B、異常判別情報12C、及び画像ファイル12Dを記憶する。
【0021】
制御プログラム12Aは、制御部11に後述の処理を実行させるためのプログラムである。制御プログラム12Aは、制御部11の実行によって、制御部11を画像取得部11A、判別部11B、色変換部11C、通知部11Dとして機能させる。
【0022】
太陽電池アレイ情報12Bは、
図4に示すように、モジュールIDと配置情報とを有する。モジュールIDは太陽電池アレイSAを構成する各太陽電池モジュールSMを一意に識別する情報である。配置情報は太陽電池アレイSAにおける各太陽電池モジュールSMが配置されている位置を識別する情報であり、ここでは行列情報によって太陽電池アレイSAにおける太陽電池モジュールSMの位置が表される。
図3に示すように、各太陽電池モジュールSMにはモジュールコードMCが表示されている。モジュールコードMCは、例えばQR(Quick Response)コード等の二次元コードであり、モジュールIDを表す。太陽電池アレイ情報12Bが有するモジュールIDは、後述の処理で取得される対象画像により表される太陽電池モジュールSMを一意に識別し、対象画像と配置情報とを対応付けるために用いられる。
【0023】
異常判別情報12Cは、太陽電池モジュールSMの物理的な破損であるひび割れ(クラック、亀裂)、太陽電池モジュールSMのセルを固定する封止剤が劣化している可能性が高い変色の有無を判別するための情報を有する。
【0024】
ひび割れ(クラック、亀裂)の有無は、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ予め設定された形状を有する画像があるか否かによって判別される。異常判別情報12Cは、予め設定された色と異なる種類の色とを判別するための色の基準値として、例えば正常な太陽電池モジュールSMを表す3種類の画像(RGB(Red Green Blue)画像)の各色の値(画素値)を有する。なお、色の基準値は、正常な太陽電池モジュールSMを表す3種類の画像(RGB画像)のうち1種類の画像に対応する画素値としてもよい。また、異常判別情報12Cは、予め設定された形状であるか否かを判別するための形状の基準値として、例えば一定以上の長さまたは太さを有する直線が2本以上連続した線を表す特徴量を有する。
【0025】
変色の有無は、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ予め設定された領域を有する画像があるか否かによって判別される。異常判別情報12Cは、予め設定された色と異なる種類の色とを判別するための色の基準値として、ひび割れの場合と同様に、例えば正常な太陽電池モジュールSMを表す3種類の画像(RGB画像)の各色の値(画素値)を有する。また、異常判別情報12Cは、予め設定された領域であるか否か判別するための領域の基準値として、例えば太陽電池セル半分に相当する大きさの領域を表す特徴量を有する。
【0026】
画像ファイル12Dは、
図5(a)に示すように、対象画像、モジュールID、配置情報、異常の有無、変換画像を設定するための複数の項目を有する。後述の処理によって対象画像が取得され、対象画像と配置情報とが対応付けられた場合に、
図5(b)に示す画像ファイル12Dが生成される。また、一連の処理が終了した後は、
図5(c)に示すように、異常の有無、及び変換画像が設定された画像ファイル12Dが生成される。
【0027】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、CPUのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)、タイマ等を備える。制御部11は、命令やデータを転送するための伝送経路であるシステムバスを介して異常通知装置1Aの各部と接続され、異常通知装置1A全体を制御する。なお、制御部11は、一部にASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路を備えてもよい。
【0028】
また、制御部11は、異常通知装置1Aに電源が供給されると、記憶部12に記憶された制御プログラム12Aを読み出して実行する。制御部11は、制御プログラム12Aが実行されたときに、画像取得部11A、判別部11B、色変換部11C、通知部11Dとして機能する。
【0029】
以上のように構成された異常通知装置1Aの動作について、以下、
図6を参照して説明する。制御部11は、異常通知装置1Aに電源が供給されると、記憶部12に記憶された制御プログラム12Aを読み出して実行する。これにより、制御部11は、画像取得部11A、判別部11B、色変換部11C、通知部11Dとして機能し、各部11A〜11Dは、ステップS1〜S5から構成される異常通知処理を実行する。
【0030】
異常通知処理は、予め設定された撮影タイミング毎に各太陽電池モジュールSMを表す対象画像を取得する画像取得処理(ステップS2)と、太陽電池モジュールSM毎に異常の有無を判別する判別処理(ステップS3)と、対象画像の色を反対色に変換した変換画像を取得する色変換処理(ステップS3)と、画像ファイルを出力し、作業者に異常の有無を通知する通知処理(ステップS5)とを有する。
【0031】
画像取得部11Aは、予め設定された撮影タイミングが到来したか否かを判別する(ステップS1)。画像取得部11Aは、撮影タイミングが到来するまでは待機状態を維持し(ステップS1;NO)、撮影タイミングが到来した場合に(ステップS1;YES)、画像取得処理(ステップS2)を行う。
【0032】
図6に示した画像取得処理について
図7を参照して説明する。
【0033】
画像取得部11Aは、撮影部13に可視光の撮影を行わせ、縦方向に2枚(2行1列)分の太陽電池モジュールSMが撮影範囲に少なくとも含まれるデジタル化された静止画像を撮影部13から取得する(ステップS201)。具体的には
図8(a)に示すように、撮影部13は、画像取得部11Aの制御のもと、2枚の太陽電池モジュールSMが含まれる画像を撮影する。撮影された画像中の各太陽電池モジュールSMは台形の形状をしており、画像の上方に写った太陽電池モジュールSMは画像の下方に写った太陽電池モジュールSMよりも小さい。これは太陽電池アレイSAが一定の角度によって傾斜しており、撮影位置からみて上方の太陽電池モジュールSMが下方の太陽電池モジュールSMよりも後方に配置されているためである。
【0034】
画像取得部11Aは、撮影部13から取得した台形歪みを有する画像を補正する(ステップS202)。具体的には、画像取得部11Aは撮影部13から取得した画像に、Sobelフィルタ等のエッジ検出フィルタ(微分フィルタ)をかけて画像内の輪郭を抽出する。画像取得部11Aは、抽出した輪郭の中で最も大きい台形の形状を有する輪郭を選択する。例えば
図8(a)に示した画像では2枚分の太陽電池モジュールSMによって表される輪郭(上方及び下方の太陽電池モジュールSMを組み合わせた形状の輪郭)が選択される。画像取得部11Aは、選択した輪郭の中の4つの頂点の座標値を変更することにより、選択した輪郭を長方形の形状を有する輪郭に変更する。この変更によって、画像取得部11Aは、
図8(b)に示すように、台形歪みが補正された画像を取得する。
【0035】
画像取得部11Aは、補正された画像の中から太陽電池モジュールSM全体が写っている対象画像を取得する(ステップS203)。具体的には画像取得部11Aは、記憶部12に記憶された太陽電池モジュールSM全体の形状を表すテンプレートを読み出し、
図8(c)に示すように、補正された画像の中でテンプレートTを上下または左右の方向に走査させる。画像取得部11Aは、テンプレートTと一致する形状を有する画像を対象画像として抽出して取得する。なお、画像取得部11Aは、テンプレートTを必要に応じて拡大または縮小させてもよく、拡大後または縮小後のテンプレートTと一致する形状を有する画像を対象画像として取得してもよい。
【0036】
画像取得部11Aは、ステップS203で取得した対象画像に写ったモジュールコードMCと、太陽電池アレイ情報12Bにより表される各モジュールIDとを基に、対象画像と太陽電池モジュールSMの配置情報とを対応付ける(ステップS204)。例えば、取得した対象画像に「A」が印字されたモジュールコードMCが写っていた場合、画像取得部11Aは、モジュールコードMCにより表されるモジュールIDと一致するモジュールID「A」を太陽電池アレイ情報12Bから選択する。画像取得部11Aは、選択したモジュールIDに対応する配置情報「1行1列」と対象画像とを対応付ける。画像取得部11Aは、対象画像、モジュールID及び配置情報を画像ファイル12Dに含ませる。対象画像と配置情報とが対応付けられることにより、作業者は、対象画像により表される太陽電池モジュールSMが太陽電池アレイSA内のどの位置に配置されているのか識別できる。
【0037】
その後、画像取得部11Aは、さらに上記のテンプレートTを走査させ、ステップS203で取得した対象画像以外の対象画像(モジュール全体が写っている画像)があるか否かを判別する(ステップS205)。画像取得部11Aは、対象画像が他にもあると判別した場合(ステップS205;YES)、ステップS203に戻って上記と同様の処理を行う。
【0038】
ステップS205で対象画像が他にないと判別した場合(ステップS205;NO)、画像取得部11Aは、全ての対象画像が取得されたか否かを判別する(ステップS206)。画像取得部11Aは、太陽電池アレイ情報12Bから選択されていないモジュールIDがある場合、対象画像が全て取得されていないと判別する(ステップS206;NO)。この場合、画像取得部11Aは移動体駆動部16を制御し、撮影位置を移動させる(ステップS207)。移動体駆動部16は、制御部11から受け取った制御信号に従って太陽電池モジュールSMの短手方向の長さに相当する移動量だけ移動する。その後、画像取得部11Aは、ステップS201に戻って上記と同様の処理を行う。
【0039】
一方、画像取得部11Aは、全ての対象画像が取得されたと判別した場合(ステップS206;YES)、
図6に示した判別処理(ステップS3)に進む。このようにして、画像取得部11Aは、太陽電池アレイSAを構成する全ての太陽電池モジュールSMを表す8枚分の対象画像を取得する。
【0040】
つづいて判別処理について
図9を参照して説明する。
【0041】
判別部11Bは、判別処理を行う初期値としてn=0を設定し(ステップS301)、n=n+1を設定する(ステップS302)。「n」は、画像ファイル12Dの画像番号を示す。判別部11Bは、設定した番号に対応する対象画像を画像ファイル12Dから選択し、取得する(ステップS303)。
【0042】
判別部11Bは、記憶部12に記憶された異常判別情報12Cを基に、取得した対象画像の中にひび割れを表す画像があるか否かを判別する(ステップS304)。ひび割れを表す画像があるか否かは、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ予め設定された形状を有する画像があるか否かによって判別される。具体的には、判別部11Bは、異常判別情報12Cにより表される色の基準値を参照し、色の基準値と対象画像(RGB画像)の画素毎に表される色の値(画素値)との差が閾値を超えるか否かによって、予め設定された色と異なる種類の色を有する画像が対象画像の中にあるか否かを判別する。また、判別部11Bは、異なる種類の色を有する画像にSobelフィルタ等のエッジ検出フィルタをかけて当該画像の輪郭(形状)を抽出する。判別部11Bは、異常判別情報12Cにより表される形状の基準値が、抽出した形状に含まれるか(基準値を超える形状を有するか)否かによって、対象画像の中の予め設定された色と異なる種類の色を有する画像がひび割れを表す画像であるか否かを判別する。これにより、例えば、
図10(a)に示すように、対象画像Oiの中の、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ、一定以上の長さまたは太さを有する直線が2本以上連続した線C1〜C3を表す画像が、それぞれひび割れ(クラックまたは亀裂)を表す画像であると判別される。なお、判別部11Bは、対象画像を構成する3種類の画像(RGB画像)のうちの1種類の画像(例えばR画像)に対応する画素値と色の基準値との差が閾値を超えるか否かによって、予め設定された色と異なる種類の色を有する画像が対象画像の中にあるか否かを判別してもよい。また、この場合、判別部11Bは、対象画像の中にあると判別された画像に、異常判別情報12Cにより表される形状の基準値が含まれるか否かによって、当該画像がひび割れを表す画像であるか否かを判別してもよい。
【0043】
判別部11Bは、対象画像の中にひび割れを表す画像がないと判別した場合(ステップS304;NO)、記憶部12に記憶された異常判別情報12Cを基に対象画像の中に変色を表す画像があるか否かを判別する(ステップS305)。変色を表す画像があるか否かは、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ予め設定された領域を有する画像があるか否かによって判別される。ここで、予め設定された色と異なる種類の色を有する画像の有無を判別するための閾値が、ひび割れの場合と同じ値で設定されている場合、判別部11Bは、上記ステップS304で異なる種類の色を有する画像であると判別された画像に、異常判別情報12Cにより表される領域の基準値が含まれるか否かによって、当該画像が変色を表す画像であるか否かを判別すればよい。一方、予め設定された色と異なる種類の色を有する画像の有無を判別するための閾値が、ひび割れの場合とは異なる値で設定されている場合は、判別部11Bは、上記ステップS304で行った処理と同様、異常判別情報12Cにより表される色の基準値と対象画像(RGB画像)の画素毎に表される色の値(画素値)との差が閾値(変色の有無を判別する閾値)を超えるか否かによって、予め設定された色と異なる種類の色を有する画像が対象画像の中にあるか否かを判別する。その後、判別部11Bは、異なる種類の色を有する画像に、異常判別情報12Cにより表される領域の基準値が含まれるか(基準値を超える領域を有するか)否かによって、当該画像が変色を表す画像であるか否かを判別する。これにより、例えば、
図10(a)に示すように、対象画像Oiの中の、予め設定された色と異なる種類の色を有し、かつ、太陽電池セル半分に相当する大きさ以上の領域Arを表す画像が、変色を表す画像であると判別される。
【0044】
判別部11Bは、対象画像の中に変色を表す画像がないと判別した場合(ステップS305;NO)、ステップS302で設定した番号に対応する異常の有無を表す項目に「異常無し」を設定し(ステップS306)、画像ファイル12Dを更新する。つまり、ひび割れを表す画像及び変色を表す画像が何れも対象画像の中になかった場合、異常の有無を表す項目には「異常無し」が設定される。
【0045】
判別部11Bは、対象画像の中にひび割れを表す画像があると判別した場合(ステップS304;YES)、または対象画像の中に変色を表す画像があると判別した場合(ステップS305;YES)、ステップS302で設定した番号に対応する異常の有無を表す項目に「異常有り」を設定し(ステップS307)、画像ファイル12Dを更新する。つまり、ひび割れを表す画像または変色を表す画像が対象画像の中にあった場合、異常の有無を表す項目には「異常有り」が設定される。
【0046】
その後、判別部11Bは、画像ファイル12Dの中の異常の有無を表す項目が全て設定されたか否かを判別する(ステップS308)。
図5(b)に示した画像ファイル12Dの画像番号は「No.8」まである。よって、判別部11Bは、ステップS302で設定したnがn=8以下である場合は異常の有無を表す項目が全て設定されていないと判別し、n=8の場合に全て設定されたと判別する。
【0047】
判別部11Bは、画像ファイル12Dの中の異常の有無を表す項目が全て設定されていないと判別した場合(ステップS308;NO)、ステップS302に戻って画像ファイル12Dの画像番号を1増加し、上記と同様の処理を行う。
【0048】
一方、判別部11Bは、画像ファイル12Dの中の異常の有無を表す項目が全て設定されたと判別した場合(ステップS308;YES)、
図6に示した色変換処理(ステップS4)に進む。このようにして、判別部11Bは、太陽電池モジュールSM毎に異常の有無を判別し、その判別結果を画像ファイル12Dに設定する。
【0049】
つづいて
図11を参照して色変換処理を説明する。
【0050】
色変換部11Cは、色変換処理を行う初期値としてn=0を設定し(ステップS401)、n=n+1を設定する(ステップS402)。「n」は、画像ファイル12Dの画像番号を示す。色変換部11Cは、設定した番号に対応する対象画像を画像ファイル12Dから選択し、取得する(ステップS403)。例えば、最初に処理される画像は
図5(b)に示した画像ファイル12Dの中の「No.1」の画像番号に対応する対象画像である。
【0051】
色変換部11Cは、取得した対象画像の階調を反転し、対象画像の色を反対色に変換する(ステップS404)。これにより、例えば
図10(a)に示した対象画像により表される太陽電池モジュールSMの色は全体的に黄色系に変換され、
図10(b)に示す変換画像が取得される。色変換部11Cは、ステップS402で設定した番号に対応する画像ファイル12Dの変換画像を表す項目に変換画像を設定する。なお、対象画像の色を反対色に変換する処理は、対象画像の色を反対色と同一または類似する色に変換されればよい。また、画像ファイル12Dは、変換画像が設定された場合も、対象画像(色変換前の画像)を含んだ状態を維持する。つまり、画像ファイル12Dは、変換画像が追加された場合に対象画像及び変換画像の2種類の画像を有する。
【0052】
その後、色変換部11Cは、全ての対象画像の色が変換されたか否かを判別する(ステップS405)。
図5(b)に示した画像ファイル12Dの画像番号は「No.8」まである。そのため、色変換部11Cは、ステップS402で設定したnがn=8以下である場合は全ての対象画像の色が変換されていないと判別し、n=8の場合に変換されたと判別する。
【0053】
色変換部11Cは、全ての対象画像の色が変換されていないと判別した場合(ステップS405;NO)、ステップS402に戻って画像ファイル12Dの画像番号を1増加し、上記と同様の処理を行う。
【0054】
一方、色変換部11Cは、全ての対象画像の色が変換されたと判別した場合は(ステップS405;YES)、
図6に示した通知処理(ステップS5)に進む。このようにして、色変換部11Cは、画像ファイル12Dが有する各対象画像の色を反対色に変換した変換画像を画像ファイル12Dに設定する。
【0055】
図6に戻り、ステップS5において通知部11Dは、色変換処理後の画像ファイル12Dを表示部15に出力する。表示部15は、通知部11Dの制御のもと、画像ファイル12Dにより表される対象画像、変換画像、異常の有無、配置情報、モジュールIDを表示する。また、表示部15には、対象画像と変換画像とを切り替えて表示する画面が表示される。通知部11Dは、作業者の操作に従って、表示部15に表示された画像を切り替える。これにより作業者は、太陽電池モジュールSMの状態を識別しやすい画像(変換画像)と実際の太陽電池モジュールSMの状態を表した画像(対象画像)との対比を行うことができる。また、表示部15には、スライドショー表示とサムネイル表示とを切り替えて表示する画面が表示される。通知部11Dは、作業者の操作に従って選択された表示態様によって画像ファイル12Dを出力する。これにより作業者は、作業者が作業しやすい表示態様を選択できる。
【0056】
以上により異常通知処理の一連の処理(太陽電池アレイSAの撮影から異常を通知するまでの処理)が完了する。その後、画像取得部11AはステップS1に戻って、上記と同様の処理を行う。また、画像取得部11A、判別部11B、色変換部11C、通知部11Dは、異常通知装置1Aに供給されている電源が遮断またはユーザによって処理を中断する操作が行われるまで、各処理を繰り返し行う。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る異常通知装置1Aによれば、太陽電池アレイSAを構成する各太陽電池モジュールSMについて異常があるか否かについて判別された結果を、人間が識別しやすいとされる黄色系の色に変換された太陽電池モジュールSMの画像(変換画像)ともに通知できるので、作業者は太陽電池アレイSAの異常の有無を簡単かつ正確に確認できる。
【0058】
なお、上記実施形態の異常通知装置1Aは、判別処理を行った後に色変換処理を行ったが、判別処理を行う前に色変換処理を行ってもよい。この場合、判別部11Bは、色変換部11Cによって色変換された変換画像の中に異常を表す画像があるか否かを判別することにより、判別対象である太陽電池モジュールSMに異常があるか否かを判別してもよい。また、判別部11Bは、色変換部11Cによって色変換された後、対象画像の中に異常を表す画像があるか否かを判別することにより、判別対象である太陽電池モジュールSMに異常があるか否かを判別してもよい。
【0059】
また、判別部11Bは、対象画像または変換画像の中の、ひび割れまたは変色であると判別された画像の部分の線の太さや色を変更等して強調する処理を行ってもよい。これにより、作業者は、太陽電池モジュールSM内のひび割れまたは変色の部分をさらに確認しやすくなる。また、判別部11Bは、対象画像または変換画像の中の異常があると判別された画像の部分について、異常の種類(ひび割れや変色)に対応する色や模様を付与してもよく、これにより、作業者が異常の種類を確認しやすくなる。さらに、判別部11Bは、異常の度合に対応する色や模様を付与してもよく、これにより、作業者が異常の度合を確認しやすくなる。
【0060】
また、上記実施形態では、判別部11Bは、正常な太陽電池モジュールSMの色を表した値を色の基準値として用いたが、この値の代わりに、対象画像の平均の色を表した値を色の基準値として用い、対象画像の画素毎に表される色の値(画素値)との差が閾値を超えるか否かによって異なる種類の色を有する画像が対象画像(または変換画像)の中にあるか否かを判別してもよい。なお、色の基準値は、対象画像を表す3種類の画像(RGB画像)のうち1種類の画像に対応する画素値の平均でもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、判別部11Bは、異常判別情報12Cを参照して、太陽電池モジュールSMの異常を判別したが、予め設定された正常な太陽電池モジュールSMを表す画像を用いて各太陽電池モジュールSMの異常の有無を判別してもよい。設定される画像は、製造時(初期)から記憶されたものでもよいし、過去に正常であると判別された画像ファイル12Dに含まれた対象画像または変換画像でもよい。判別部11Bは、対象画像または変換画像と、予め設定された画像との類似度を求め、求めた類似度が閾値を超えているか否かに従って、異常を表す画像があるか否かを判別してもよい。なお、類似度の算出については、SAD(Sum of Absolute Difference)、SSD(Sum of Squared Difference)等が用いられる。
【0062】
また、異常通知装置1Aは、記憶部12に記憶された画像ファイル12DをUSBメモリ等の携帯可能な外部記憶装置に記憶しても良い。
【0063】
また、異常通知装置1Aには、複数の太陽光発電システムを一元管理する管理センターに備えられたサーバ装置と通信を行う通信装置を備えても良い。この場合、異常通知装置1Aには、サーバ装置からの指令に従って異常通知処理を行い、異常通知処理を行うことによって得られた画像ファイル12Dをサーバ装置に送信してもよい。
【0064】
また、各太陽電池モジュールSMに表示されたモジュールコードMCが、太陽電池アレイSA全体(例えば2行4列)と自己の位置(例えば1行1列)とを表す配置情報を含む場合、異常通知装置1Aは、取得した対象画像を基に、対象画像と配置情報とを対応付けることができる。この場合、記憶部12に記憶された太陽電池アレイ情報12Bを省略できる。
【0065】
また、太陽電池モジュールSMの表面はガラスで覆われているため、撮影部13によって撮影された画像には太陽や雲等の映り込むことがある。この映り込みによって誤った判別がされるのを防止するため、画像取得部11Aは、判別部11Bによって太陽電池モジュールSMに異常があると判別された場合に対象画像を新たに取得し、判別部11Bは、画像取得部11Aによって、先に取得された対象画像と、後に取得された対象画像とを基に、太陽電池モジュールSMに異常があるか否かを判別してもよい。判別部11Bは、例えば、先に取得された対象画像と、後に取得された対象画像との間で、異常(ひび割れや変色)を表す画像があると判別された部分が移動しているか否かを判別し、移動していると判別された部分を「映り込み」、移動していないと判別された部分が「異常」であると判別する。判別部11Bは、この判別結果に基づいて、異常の有無を画像ファイル12Dに設定し、映り込みであると判別された部分を強調処理の対象から除外してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、色変換部11Cは、対象画像の階調を反転することにより対象画像の色を反対色に変換したが、対象画像の階調を反転する代わりに、対象画像内の青色系の色の値を黄色系の色の値に置き換える処理を行う等して、対象画像の色を反対色と同一または類似する色に変換してもよい。
【0067】
また、上記実施形態で異常通知装置1Aは、移動体101を備える例を説明したが、異常通知装置1Aは、撮影機能を備えた携帯電話機やデジタルカメラ等から構成されても良い。この場合、異常通知装置1Aは、作業者の操作に従って撮影された太陽電池アレイSAの画像を取得し、取得した画像を基に、上記実施形態と同様に異常通知処理を行うことにより、画像ファイル12Dを生成する。なお、この場合、画像取得部11Aは上記実施形態で説明した台形歪みを補正するほか、作業者の撮影操作によって起こるブレを補正するとよい。
【0068】
また、上記実施形態で異常通知装置1Aの移動体101は、ガイドレール201の上を移動する台車を例に説明したが、これに限定されない。例えば
図12に示すように、移動体102は、太陽電池アレイSAの上空を飛行するラジコンヘリコプタ等でもよい。この場合の異常通知装置1Bは、ヘリコプタ機体とコントローラとに分離されて構成されてもよい。例えばヘリコプタ機体には撮影部13を備え、コントローラには、制御部11と、記憶部12と、操作部14と、表示部15とを備える。また、ヘリコプタ機体及びコントローラには、互いに通信を行うための通信部を備える。ヘリコプタ機体に備えられた撮影部13は、コントローラからの指令に従って太陽電池アレイSAの撮影を行う。撮影部13によって撮影された画像は、通信部を介してコントローラに送信される。コントローラは、撮影部13によって撮影された太陽電池アレイSAの画像を基に、上記実施形態と同様に異常通知処理を行うことにより、画像ファイル12Dを生成する。なお、この場合も画像取得部11Aは、台形歪みを補正するほか、ヘリコプタ機体の動きによって起こるブレを補正するとよい。
【0069】
また、
図13に示すように、移動体103は、太陽電池アレイSAの表面上を歩行するものでもよい。この場合の異常通知装置1Cは、画像取得部11Aの制御のもと、移動体103が太陽電池モジュールSM毎に区画された領域内を移動し、撮影部13が太陽電池モジュールSMを構成する各太陽電池セルSCについて可視光の撮影を行う。また、
図14に示すように、移動体103は、太陽電池アレイSAの表面の対向面が凹状に形成された凹状部103Aを備え、凹状部103Aと太陽電池アレイSAの表面とが対向しない位置(太陽電池アレイSAの法線方向からずらした位置)に撮影部13を設けるとよい。この構造によって、撮影部13は太陽や雲等の映り込みを防止するとともに自己の映り込みを防止しながら、太陽電池セルSCの撮影を行うことができる。なお、凹状部103Aには、太陽電池セルSCの画像の品質を確保するために、太陽電池セルSCの方向に間接光が照射される照明部を備えても良い。また、太陽電池モジュールSM内での異常通知装置1Cの移動は、
図15(a)に示すように太陽電池モジュールSM内を行方向または列方向に規則的に移動する場合と、
図15(b)に示すように太陽電池モジュールSM内を不規則的に移動する場合との何れでもよい。また、画像取得部11Aは、撮影部13によって撮影された複数の太陽電池セルSCを表す画像を組み合わせて判別対象である太陽電池モジュールSMを表す対象画像を取得する。その後、画像取得部11Aは、隣の太陽電池モジュールSMに移動体103を移動させ、上記実施形態の画像取得処理と同様に太陽電池モジュールSM毎に対象画像を取得する。
【0070】
また、これまでの説明で異常通知装置は、太陽電池モジュールSMを判別対象とし、太陽電池モジュールSMにより表される画像を対象画像として取得したが、判別対象は太陽電池セルSCまたは太陽電池アレイSAとしてもよい。太陽電池セルSCを判別対象とした場合、画像取得部11Aは太陽電池セルSCを表す画像を対象画像として取得する。また、太陽電池アレイSAを判別対象とした場合、画像取得部11Aは太陽電池アレイSAを表す画像を対象画像として取得する。なお、その後の異常通知処理は上記実施形態と同様に行うことができる。
【0071】
また、異常通知装置は地上設置型の太陽電池アレイSAの異常を通知する例を説明したが、太陽電池アレイは、家屋の屋根やビルの屋上等の高所に設置される高所設置型や、建物の壁面に設置される壁面設置型でもよい。
【0072】
また、本発明に係る異常通知装置は、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)等によって実現できる。この場合、上記実施形態で説明した動作を実行するためのプログラムをPC等にインストールし、このプログラムをPC等が実行することにより本発明に係る異常通知装置として機能させることができる。このようなプログラムは、例えば、持ち運び可能な記憶媒体等に記憶されて配布される。持ち運び可能な記憶媒体には、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、BD−ROM、MO等がある。
【0073】
その他、PC等にプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムを通信回線の掲示板(BBS)にアップロードし、通信回線を介してPC等に配信してもよい。また、プログラムは、プログラムを表す信号により搬送波を変調した変調波により伝送され、この変調波を受信した装置が変調波を復調してプログラムを復元するようにしてもよい。そして、PC等は、このプログラムを起動して、OSの制御のもと、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、PC等は、本発明に係る異常通知装置として機能する。
【0074】
その他、本発明は、上記実施形態の説明および図面によって限定されるものではなく、上記実施形態および図面に適宜変更等を加えることは可能である。