【実施例】
【0059】
図11は、本発明に係る拡幅・狭幅用足場部材の一例(正面図)である。
【0060】
この拡幅・狭幅用足場部材は、2本の建地部材60と、両建地部材に対して直角に設置され両建地部材間の略中央部を水平に連結する横地部材61と、両建地部材に対して直角に設置され両建地部材間の上部近傍を水平に連結する上部水平部材62と、両建地部材に対して直角に設置され両建地部材間の下部近傍を水平に連結する下部水平部材65と、両建地部材に対して斜角に設置され両建地部材間を略中央部から上部近傍にかけて斜めに連結する上部斜め部材67と、両建地部材に対して斜角に設置され両建地部材間を略中央部から下部近傍にかけて斜めに連結する下部斜め部材68からなる。
【0061】
ここでは、2本の建地部材60と横地部材61とで「H形状」の垂直枠を形成しており、この拡幅・狭幅用足場部材が仮設足場に組み込まれたとき、横地部材には床付き布枠が架け渡される。
【0062】
そして、この「H形状」の垂直枠の剛性を高めるために、上部水平部材62と下部水平部材65と上部斜め部材67と下部斜め部材68が設けられている。なお、この拡幅・狭幅用足場部材を組み込んで仮設足場の枠組を組み立てる際に、上部水平部材62と上部斜め部材67が先行手摺として機能することになる。
【0063】
この建地部材60の下端部は、ホゾ材を介して、つなぎ材と支柱部材からなる「H形状」の垂直枠のうちの支柱部材の上端部に縦方向に継ぎ足すことができるし、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠のうちの建地材の上端部に継ぎ足すこともできる。このため、ここでは、継ぎ足した建地部材60が抜け落ちないように、この建地部材60の下端部には抜け止め機能ピン70が設けられている。
【0064】
そして、この建地部材60の上端部には、つなぎ材と支柱部材からなる「H形状」の垂直枠のうちの支柱部材の下端部を縦方向に継ぎ足すことができるし、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠のうちの建地材の下端部を継ぎ足すこともできる。ここでは、建地部材60の上端部にはホゾ材3aが設けられており、このホゾ材を介して、支柱部材または建地部材の下端部を継ぎ足すことができる。
【0065】
この拡幅・狭幅用足場部材の建地部材の側面にはコマ4が設けられており、ここに方杖付きつなぎ材の方杖の下端部のクサビ金具を取り付け、クサビで緊結することができる。また、この拡幅・狭幅用足場部材の建地部材の側面には、上部に固定型ロック金具71が、そして、下部に可動型ロック金具72がそれぞれ設けられており、ブレース材や手摺の取付孔を嵌め合わせることでブレース材や手摺等を取り付けることができる。
【0066】
図12は、
図11の拡幅・狭幅用足場部材を組み込んでなる仮設足場の一例である。
【0067】
ここでは、
図11に示した拡幅・狭幅用足場部材を枠幅が約900mmの緊結式足場の上に組み込むことによって、第3段の足場の位置から上を枠幅約600mmへと狭幅に変更してなる仮設足場を構築しようとするものである。ここでは、左側の支柱は第1段から第4段まで同じ位置に立設されている。これに対して、右側の支柱は第1段から第3段までは左側支柱から約900mmの幅の位置に立設されるが、第3段以上では左側支柱から約600mmの幅の位置に立設される。また、各段の足場の組立の際には、先行手摺が設置できているから、作業者の安全を図ることもできる。以下に、この仮設足場を組み立てる手順について説明する。
【0068】
まず、短い支柱部材の2本と約900mmの長さのつなぎ材から第1段の垂直枠が形成されており、隣接するつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠(図示せず)を架け渡すことによって、第1段の足場が形成される。それぞれの支柱部材の下端はジャッキベース5によって支持されている。この第1段の垂直枠を構成する短い支柱部材の上に、第2段の支柱部材3が継ぎ足され、第2段の支柱部材3の間を約900mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、方杖付きつなぎ材30と支柱部材3からなる「H形状」の第2段の垂直枠が形成され、その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、隣接する方杖付きつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠を架け渡すことによって、第2段の足場が形成される。
【0069】
次に、この第2段の垂直枠を構成する支柱部材のうち左側の支柱部材3の上に第3段の支柱部材3が継ぎ足され、そして、右側の支柱部材3の上には
図11の拡幅・狭幅用足場部材の建地部材のうち右側の建地部材60が継ぎ足され、第3段の支柱部材3のほぼ中央部とこの拡幅・狭幅用足場部材の左側の建地部材60のほぼ中央部との間を約600mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、方杖付きつなぎ材30と左側支柱部材3と左側建地部材60からなる「H形状」の第3段の垂直枠と、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠が並んで形成される。その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、「H形状」の第3段の垂直枠の方杖付きつなぎ材30と隣接する方杖付きつなぎ材30(図示せず)との間に床付き布枠を架け渡すとともに、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠の横地部材61と隣接する横地部材(図示せず)との間に床付き布枠を架け渡すことによって、第3段の足場が形成される。
【0070】
その後、第3段の垂直枠を構成する左側の支柱部材3の上に第4段の左側の支柱部材3が継ぎ足され、そして、拡幅・狭幅用足場部材の建地部材のうち左側の建地部材60の上に第4段の右側の支柱部材が継ぎ足され、第4段の支柱部材の間を約600mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、「H形状」の第4段の垂直枠が形成される。その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、隣接する方杖付きつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠を架け渡すことによって、第4段の足場が形成される。
【0071】
この結果、第3段の足場の位置から上を枠幅約600mmへと狭幅に変更されてなる仮設足場が構築される。このとき、各段の足場の垂直枠の縦枠にはジョイント部が1個所存在するだけであるから、足場全体の支持力を大きく低下することなく、足場全体の横揺れも抑制することができる。また、支柱部材や建地部材はその下端を下段の足場を構成する支柱部材や建地部材の上端に差し込むものであるから、上段の足場から下段の足場に荷重を伝達することができる。さらに、拡幅・狭幅用足場部材においては、2本の建地部材を斜めに連結する斜め部材が設けられているので、強固に剛接合されている。
【0072】
図13は、
図11の拡幅・狭幅用足場部材を組み込んでなる仮設足場の他の例である。
【0073】
ここでは、
図11に示した拡幅・狭幅用足場部材を枠幅が約900mmの緊結式足場の上に組み込むことによって、第3段の足場の位置から上を枠幅約1200mmへと広幅に変更してなる仮設足場を構築しようとするものである。ここでは、左側の支柱は第1段から第4段まで同じ位置に立設されている。これに対して、右側の支柱は第1段から第3段までは左側支柱から約900mmの幅の位置に立設されるが、第3段以上では左側支柱から約1200mmの幅の位置に立設される。また、各段の足場の組立の際には、先行手摺が設置できているから、作業者の安全を図ることもできる。以下に、この仮設足場を組み立てる手順について説明する。
【0074】
まず、短い支柱部材の2本と約900mmの長さのつなぎ材から第1段の垂直枠が形成されており、隣接するつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠(図示せず)を架け渡すことによって、第1段の足場が形成される。それぞれの支柱部材の下端はジャッキベース5によって支持されている。この第1段の垂直枠を構成する短い支柱部材の上に、第2段の支柱部材3が継ぎ足され、第2段の支柱部材3の間を約900mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、方杖付きつなぎ材30と支柱部材3からなる「H形状」の第2段の垂直枠が形成され、その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、隣接する方杖付きつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠を架け渡すことによって、第2段の足場が形成される。
【0075】
次に、この第2段の垂直枠を構成する支柱部材のうち左側の支柱部材3の上に第3段の支柱部材3が継ぎ足され、そして、右側の支柱部材3の上には
図11の拡幅・狭幅用足場部材の建地部材のうち左側の建地部材60が継ぎ足され、第3段の支柱部材3のほぼ中央部とこの拡幅・狭幅用足場部材の左側の建地部材60のほぼ中央部との間を約900mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、方杖付きつなぎ材30と左側支柱部材3と左側建地部材60からなる「H形状」の第3段の垂直枠と、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠が並んで形成される。その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、「H形状」の第3段の垂直枠の方杖付きつなぎ材30と隣接する方杖付きつなぎ材30(図示せず)との間に床付き布枠を架け渡すとともに、2本の建地部材60と横地部材61とからなる「H形状」の垂直枠の横地部材61と隣接する横地部材(図示せず)との間に床付き布枠を架け渡すことによって、第3段の足場が形成される。
【0076】
その後、第3段の垂直枠を構成する左側の支柱部材3の上に第4段用の左側の支柱部材3が継ぎ足され、そして、拡幅・狭幅用足場部材の建地部材のうち右側の建地部材60の上に第4段の右側の支柱部材が継ぎ足され、第4段の支柱部材の間を約1200mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、「H形状」の第4段の垂直枠が形成される。その後、隣接する垂直枠(図示せず)との間を先行手摺20aで連結し、隣接する方杖付きつなぎ材(図示せず)の間に床付き布枠を架け渡すことによって、第4段の足場が形成される。
【0077】
この結果、第3段の足場の位置から上を枠幅約1200mmへと広幅に変更されてなる仮設足場が構築される。このとき、各段の足場の垂直枠の縦枠にはジョイント部が1個所存在するだけであるから、足場全体の支持力を大きく低下することもなく、足場全体の横揺れも抑制することができる。また、支柱部材や建地部材はその下端を下段の足場を構成する支柱部材や建地部材の上端に差し込むものであるから、上段の足場から下段の足場に荷重を伝達することができる。さらに、拡幅・狭幅用足場部材においては、2本の建地部材を斜めに連結する斜め部材が設けられているので、強固に剛接合されている。
【0078】
以上の実施例では、拡幅・狭幅用足場部材を組み込むことによって、立面的に見て仮設足場の枠幅を中途位置から上下方向に異ならせる場合で説明してきたが、階段部材を設置する場合のように、平面的に見ても仮設足場の枠幅を中途位置から水平方向に異ならせるときにも用いることができる。
【0079】
図14は、階段部材と
図11の拡幅・狭幅用足場部材を組み込んでなる仮設足場の一例を示す。(a)が仮設足場の平面図、(b)がA−A矢視図、そして、(c)がB−B矢視図である。
【0080】
この仮設足場は壁つなぎ15によって、建物14の壁面につながれている。この仮設足場は、幅が約660mmの階段部材12が設置された足場とその近傍を除いて、枠幅が約900mmである。そして、階段部材12が設置された足場とその近傍においては、枠幅が約1200mmであるので、階段部材が設置された足場においては作業者が通る通路の幅は約540mmである。したがって、作業者は余裕を持って階段部材12の脇を通ることができる。
【0081】
この例においては、枠幅約900mmの足場の一部に、上下に複数個の階段部材12を組み入れても作業者が余裕を持って階段部材12の脇を通ることができるように、階段部材12が設置された足場とその近傍の枠幅を約1200mmへと拡げてなる仮設足場を構築しようとするものである。枠幅が変更となる連結部13に
図11に示した拡幅・狭幅用足場部材を用いる。
【0082】
枠幅が変更となる連結部13においては、
図14(b)にみるごとく、各段とも、左側の支柱は支柱部材3を縦方向に継ぎ足すことによって立設され、そして、右側は拡幅・狭幅用足場部材の2本の建地部材60を縦方向に継ぎ足すことによって立設されている。言い換えれば、各段とも、左側の支柱部材3と左側建地部材60と方杖付きつなぎ材30からなる「H形状」の左側垂直枠(枠幅約900mm)と、2本の建地部材60と横地部材61からなる「H形状」の右側垂直枠(枠幅約300mm)が並んで形成されている。
【0083】
この連結部13に隣接する垂直枠は、
図14(c)にみるとおりであり、各段とも、2本の支柱部材3とこれらの支柱部材3の間を約1200mmの長さの方杖付きつなぎ材30で連結することによって、方杖付きつなぎ材30と支柱部材3からなる「H形状」の垂直枠(枠幅約1200mm)が形成されている。
【0084】
そして、連結部13の垂直枠とこれに隣接する垂直枠の間に床付き布枠9を複数枚架け渡すことによって、各段の足場が形成されるのである。ただし、連結部には左側垂直枠と右側垂直枠の間に左側建地部材60が存在するから、それを避けて床付き布枠9を架け渡す必要があるため、床付き布枠9は、連結部の右側垂直枠の横地部材61と隣接する垂直枠の方杖付きつなぎ材30の間と、連結部の左側垂直枠の方杖付きつなぎ材30と隣接する垂直枠の方杖付きつなぎ材30の間とに、別々に架け渡される。
【0085】
この結果、枠幅約900mmの足場の一部に、上下に複数個の階段部材12を組み入れて、枠幅を約1200mmへと拡げてなる仮設足場が得られる。このときも、各段の足場の垂直枠の縦枠にはジョイント部が1個所存在するだけであるから、足場全体の支持力を大きく低下することなく、足場全体の横揺れも抑制することができる。また、支柱部材3や建地部材60はその下端を下段の足場を構成する支柱部材3や建地部材60の上端に差し込むものであるから、上段の足場から下段の足場へ荷重を伝達することができる。さらに、拡幅・狭幅用足場部材においては、2本の建地部材60を斜めに連結する斜め部材が設けられているので、強固に剛接合されている。
【0086】
図15は、本発明に係る拡幅・狭幅用足場部材の他の数例(正面図)である。
【0087】
図15(a)〜(c)は、いずれも、2本の建地部材60と、両建地部材に対して直角に設置され両建地部材間の略中央部を水平に連結する横地部材61から構成される「H形状」の垂直枠に加えて、両建地部材間の上部近傍を水平に連結する上部水平部材62と、両建地部材に対して斜角に設置され両建地部材間を略中央部から上部近傍にかけて斜めに連結する上部斜め部材67を有しているので、拡幅・狭幅用足場部材として剛性が確保されている。そして、この斜め部材67は上部水平部材62とともに拡幅・狭幅用足場部材に設置する先行手摺材として機能する。
【0088】
図15(d)〜(e)は、いずれも、2本の建地部材60と、両建地部材に対して直角に設置され両建地部材間の略中央部を水平に連結する横地部材61から構成される「H形状」の垂直枠に加えて、両建地部材に対して斜角に設置され両建地部材間を略中央部から下部近傍にかけて斜めに連結する下部斜め部材68を有しているので、拡幅・狭幅用足場部材として剛性が確保されている。そして、両建地部材の中上部近傍を水平に連結する中上部水平部材63が設けられており、上部水平部材62とともに先行手摺材として機能する。