特許第6276102号(P6276102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6276102画像処理装置、放射線断層撮影装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6276102
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】画像処理装置、放射線断層撮影装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   A61B6/03 360B
   A61B6/03 360Q
   A61B6/03 375
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-87212(P2014-87212)
(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公開番号】特開2015-205019(P2015-205019A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】貫井 正健
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−9730(JP,A)
【文献】 特開平4−52872(JP,A)
【文献】 特開2002−24822(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/110232(WO,A1)
【文献】 特開2005−349079(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/128213(WO,A1)
【文献】 特開平11−19082(JP,A)
【文献】 特開2009−226141(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073769(WO,A1)
【文献】 特開2007−37906(JP,A)
【文献】 特開2006−106903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の放射線断層撮影により得られた画像において、画素値の閾値処理により放射線高吸収領域を抽出する抽出手段と、
抽出された前記放射線高吸収領域のうち面方向の広がりが所定レベル以下のものを微小構造物の領域として検出する検出手段と、
前記画像の全領域のうち、前記微小構造物の領域とは異なる非微小構造物の領域に対しては第1のノイズ低減が成され、前記微小構造物の領域に対しては前記第1のノイズ低減よりノイズ低減効果が小さい第2のノイズ低減が成されるか又はノイズ低減が実質的に成されない所定の処理を行う処理手段と、を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記画像上の各位置について所定の大きさの注目領域を設定して、該注目領域内において該注目領域の外側と不連続に存在する前記放射線高吸収領域の画素数を計数し、少なくとも該画素数が所定値以下であるときに該放射線高吸収領域を微小構造物の領域として検出する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像は、3次元画像であり、
前記検出手段は、前記3次元画像に含まれる所定の2次元画像上に設定された前記注目領域内に該注目領域の外側と不連続に存在する前記放射線高吸収領域の画素数が所定値以下であり、かつ、前記注目領域内の前記放射線高吸収領域の少なくとも一部が、前記3次元画像における前記所定の2次元画像を含む連続的な複数の2次元画像すべてを通るように連続して繋がる前記放射線高吸収領域に含まれる場合には、前記所定の2次元画像上の前記注目領域内の前記放射線高吸収領域を前記微小構造物の領域として検出する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記画像の少なくとも一部における画素値のノイズ推定量及び/またはヒストグラムに基づいて前記閾値処理の閾値を設定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記画像のノイズ推定量に基づいて前記閾値を設定する、請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記所定の処理は、前記画像と該画像にノイズ低減処理を施した画像との加重加算処理であって、前記非微小構造物の領域に対して用いられる重み付けと前記微小構造物の領域に対して用いられる重み付けとが互いに異なる加重加算処理である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記所定の処理は、パラメータに応じてノイズ低減効果が変化するノイズ低減処理であって、前記非微小構造物の領域に対して用いられる前記パラメータと前記微小構造物の領域に対して用いられる前記パラメータとが互いに異なるノイズ低減処理である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記微小構造物は、造影剤が注入された血管である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記微小構造物は、骨部である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像処理装置を備えた放射線断層撮影装置。
【請求項11】
コンピュータに、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線断層撮影により得られた画像におけるノイズ低減(noise reduction)の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線断層撮影により得られた画像に対してノイズ低減処理が行われている。ノイズ低減処理としては、特に、平滑化処理を応用した手法が広く用いられている(特許文献1,段落0034等参照)。
【0003】
このような手法によれば、放射線断層撮影により得られた画像において、粒状に現れる放射線の量子ノイズなどを比較的容易に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−070814公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の平滑化処理を応用したノイズ低減処理によれば、画像ノイズだけでなく被写体の微小な構造物、例えば、微小な血管や骨を表す像も抑制されてしまうことが多い。
【0006】
このような事情により、放射線断層撮影により得られた画像において、被写体の微小な構造物を表す像を維持しつつ画像ノイズを抑制することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、
被写体の放射線断層撮影により得られた画像において、画素値の閾値処理により放射線高吸収領域を抽出する抽出手段と、
抽出された前記放射線高吸収領域のうち面方向の広がりが所定レベル(level)以下のものを微小構造物の領域として検出する検出手段と、
前記画像の全領域のうち、前記微小構造物の領域とは異なる非微小構造物の領域に対しては第1のノイズ低減が成され、前記微小構造物の領域に対しては前記第1のノイズ低減よりノイズ低減効果が小さい第2のノイズ低減が成されるか又はノイズ低減が実質的に成されない所定の処理を行う処理手段と、を備えた画像処理装置を提供する。
【0008】
第2の観点の発明は、
前記検出手段が、
前記画像上の各位置について前記面方向に所定の大きさの注目領域を設定して、該注目領域内において該注目領域の外側と不連続に存在する前記放射線高吸収領域の画素数を計数し、少なくとも該画素数が所定値以下であるときに該放射線高吸収領域を微小構造物の領域として検出する、上記第1の観点の画像処理装置を提供する。
【0009】
第3の観点の発明は、
前記画像は、3次元画像であり、
前記検出手段が、前記3次元画像に含まれる所定の2次元画像上に設定された前記注目領域内に該注目領域の外側と不連続に存在する前記放射線高吸収領域の画素数が所定値以下であり、かつ、前記注目領域内の前記放射線高吸収領域の少なくとも一部が、前記3次元画像における前記所定の2次元画像を含む連続的な複数の2次元画像すべてを通るように連続して繋がる前記放射線高吸収領域に含まれる場合には、前記所定の2次元画像上の前記注目領域内の前記放射線高吸収領域を前記微小構造物の領域として検出する、上記第2の観点の画像処理装置を提供する。
【0010】
第4の観点の発明は、
前記抽出手段が、前記画像の少なくとも一部における画素値のノイズ推定量及び/またはヒストグラム(histogram)に基づいて前記閾値処理の閾値を設定する、上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0011】
第5の観点の発明は、
前記抽出手段が、前記画像のノイズ推定量に基づいて前記閾値を設定する、上記第4の観点の画像処理装置を提供する。
【0012】
第6の観点の発明は、
前記所定の処理が、前記画像と該画像にノイズ低減処理を施した画像との加重加算処理であって、前記非微小構造物の領域に対して用いられる重み付けと前記微小構造物の領域に対して用いられる重み付けとが互いに異なる加重加算処理である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0013】
第7の観点の発明は、
前記所定の処理が、パラメータ(parameter)に応じてノイズ低減効果が変化するノイズ低減処理であって、前記非微小構造物の領域に対して用いられる前記パラメータと前記微小構造物の領域に対して用いられる前記パラメータとが互いに異なるノイズ低減処理である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0014】
第8の観点の発明は、
前記微小構造物が、造影剤が注入された血管である、上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0015】
第9の観点の発明は、
前記微小構造物が、骨部である、上記第1の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を提供する。
【0016】
第10の観点の発明は、
上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置を備えた放射線断層撮影装置を提供する。
【0017】
第11の観点の発明は、
コンピュータ(computer)に、上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の画像処理装置として機能させるためのプログラム(program)を提供する。
【発明の効果】
【0018】
上記観点の発明によれば、放射線断層撮影により得られた画像において、微小構造物の画像上の形態に係る特徴を基に微小構造物を検出し、微小構造物の領域の方が非微小構造物の領域よりノイズ低減効果が小さくなるように画像ノイズ低減処理が行われるので、微小構造物を精度よく検出し、その像を維持しつつノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るX線CT装置(X-ray Computed Tomography System)の構成を概略的に示す図である。
図2】X線CT装置における画像ノイズ低減処理に関わる部分の構成を示す機能ブロック(block)図である。
図3】本実施形態によるノイズ低減処理のフロー(flow)図である。
図4】血管に造影剤を注入した生体の医用画像における各画素のCT値のヒストグラムの典型例を示す図である。
図5】注目領域の設定例を示す図である。
図6】注目断層像群の例を示す図である。
図7】ノイズ低減処理部による処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0022】
図1に示すように、X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル(table)10と、走査ガントリ(gantry)20とを備えている。
【0023】
操作コンソール1は、操作者41からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体(被写体)40の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理(data processing)などを行うデータ処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0024】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の空洞部Bに搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz軸方向、鉛直方向をy軸方向、z軸方向およびy軸方向に垂直な水平方向をx軸方向とする。
【0025】
走査ガントリ20は、回転可能に支持された回転部15を備えている。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線81をファンビーム或いはコーンビーム(cone beam)に整形するアパーチャ(aperture)23と、被検体40を透過したX線81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力信号をデータとして収集するDAS25と、X線コントローラ22,アパーチャ23の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。走査ガントリ20の本体は、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と走査ガントリ20の本体とは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0026】
X線管21およびX線検出器24は、被検体40が載置される撮影空間、すなわち走査ガントリ20の空洞部Bを挟んで互いに対向して配置されている。回転部15が回転すると、X線管21およびX線検出器24は、その位置関係を維持したまま、被検体40の周りを回転する。X線管21から放射されアパーチャ23で整形されたファンビーム或いはコーンビームのX線81は、被検体40を透過し、X線検出器24の検出面に照射される。
【0027】
なおここでは、このファンビーム或いはコーンビームのX線81のxy平面における広がり方向をチャネル方向(CH方向)、z軸方向における広がり方向もしくはz軸方向そのものをスライス(slice)方向(SL方向)、xy平面において回転部15の回転中心に向かう方向をアイソセンタ方向(I方向)で表すことにする。
【0028】
X線検出器24は、チャネル方向およびスライス方向に配設された複数の検出素子24iにより構成されている。なお、検出素子24iのチャネル方向の数は、例えば60°の角度範囲において1000個程度、その配列間隔は、例えば1mm程度である。
【0029】
これより、本実施形態による画像ノイズ低減処理について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係るX線CT装置における画像ノイズ低減処理に関わる部分の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、X線CT装置100は、X線高吸収領域抽出部31と、微小構造物検出部32と、ノイズ低減処理部33とを有している。なお、これら各部は、データ処理装置3が記憶装置7に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより機能的に実現される。
【0031】
図3は、本実施形態による画像ノイズ低減処理のフロー図である。
【0032】
なお、記憶装置7には、複数の断層像が既に記憶されているものとする。本例では、これら複数の断層像は、血管に造影剤が注入された被検者をX線CT撮影して得られたものである。各断層像は、xy平面を断面とするスライス画像である。断層像の画像サイズは、512×512画素である。これら複数の断層像は、z方向に連続的に並んでおり、3次元画像を構成する。
【0033】
ステップ(step)S1では、X線高吸収領域抽出部31が、記憶装置7に記憶されている被検者の3次元画像Vを読み出して取得する。
【0034】
ステップS2では、X線高吸収領域抽出部31が、ステップS1で取得された3次元画像Vにおける画像ノイズ量を推定する。本例では、ノイズとして粒子状ノイズを想定し、画像ノイズ量として画像SD値を求める。画像SD値は、例えば、3次元画像Vのうち本来的に均一なCT値が想定される領域でのCT値の標準偏差とする。
【0035】
ステップS3では、X線高吸収領域抽出部31が、推定された画像ノイズ量を考慮しつつ軟部組織と造影血管との境界に相当するCT値を求め、当該CT値を次ステップの閾値処理に用いる閾値として設定する。
【0036】
ここで、閾値の設定方法について説明する。
【0037】
図4に血管に造影剤を注入した生体の医用画像における各画素のCT値のヒストグラムの典型例を示す。このヒストグラムにおいて、横軸はCT値、縦軸は頻度である。生体は、主に、軟部組織、造影血管及び骨部により構成される。一般的に、軟部組織に対応するCT値は正の低値を取り、造影血管及び骨部に対応するCT値は正の高値を取る。よって、図4のヒストグラムでは、CT値が正の低値寄りの山は主に軟部組織に対応し、CT値が正の高値寄りの山は主に造影血管及び骨部に対応する。したがって、軟部組織と造影血管及び骨部との境界に相当するCT値は、これら2つの山の間の谷に相当するCT値とすることができる。ただし、実際の境界は、画像のノイズによる影響を受け、CT値はノイズ量分だけ平均的に正側にシフト(shift)する。そこで本例では、ノイズが無い理想的な画像における軟部組織と造影血管及び骨部との境界に相当する典型的なCT値CBと、軟部組織の典型的なCT値STにノイズ量SDに依存する要素α・SDを加算して成る値ST+α・SDとを比較して、より大きい方を閾値T1に設定する。なお、値STは例えば60〜80、値CBは例えば90〜110、値αは例えば0〜1とすることができる。経験的には、値STは例えば70,値CBは例えば100、値αは例えば0.5程度が適当である。
【0038】
ステップS4では、X線高吸収領域抽出部31が、3次元画像を構成する画素ごとに、その画素のCT値が閾値T1以上であるか否かを判定する。閾値T1以上である場合には、その画素を造影血管や骨部が含まれるX線高吸収領域C0として抽出する。なお、造影血管や骨部以外のノイズ等を誤抽出しないよう、CT値が非常に高い一定値以上の画素はX線高吸収領域C0として抽出しないようにしてもよい。
【0039】
ステップS5では、微小構造物検出部32が、xy平面を断面とする任意の1スライスの断層像を対象断層像Aとして選択する。
【0040】
ステップS6では、微小構造物検出部32が、対象断層像A上の任意の位置に所定サイズの注目領域Fを設定する。注目領域Fは、例えば、5×5画素あるいは7×7画素の矩形領域とすることができる。本例では、注目領域Fを5×5画素の矩形領域とする。
【0041】
図5に注目領域の設定例を示す。図5の例では、5×5画素の注目領域F内に4個のX線高吸収領域の画素が存在している。
【0042】
ステップS7では、微小構造物検出部32が、注目領域内に存在するX線高吸収領域の画素の数を計数する。図5の例では、4個が計数される。そして、微小構造物検出部32は、計数した第1次候補画素C1の画素数Nが所定数T2以下であるか否かを判定する。計数した画素数Nが所定数T2以下である場合には、注目領域F内のX線高吸収領域C0は、面方向の広がりが所定レベル以下であり、造影血管や骨部の微小構造物である可能性があると判断し、微小構造物の第1次候補画素C1として抽出する。そして、ステップS9に進む。一方、計数した画素数Nが所定数T2を超える場合には、注目領域F内のX線高吸収領域C0は、面方向の広がりが所定レベル以下でなく、微小構造物である可能性が低いと判断し、ステップS11に進む。なお、所定数T2は、例えば3〜7個程度とすることができる。本例では、所定数T2を4とする。図5の例では、X線高吸収領域の画素数は4であるから、これらの画素は第1次候補画素C1として抽出される。
【0043】
ステップS8では、微小構造物検出部32が、注目領域F内の第1次候補画素C1が注目領域Fの内外で不連続であるか否かを判定する。例えば、注目領域Fが5×5画素の領域である場合には、この領域を囲む7×7画素の大きさの周辺領域において、注目領域F内の第1次候補画素C1と縦・横・斜め方向で連続する候補画素が存在するか否かによって判定する。第1次候補画素C1がすべて注目領域Fの内外で不連続である場合には、注目領域F内の第1次候補画素C2は微小構造物である可能性がより高いと判断し、微小構造物の第2次候補画素C2として抽出する。そして、ステップS9に進む。一方、第1次候補画素の少なくとも一部が注目領域Fの内外で不連続である場合には、注目領域F内の第1次候補画素C1は微小構造物である可能性が低いと判断し、ステップS11に進む。図5の例では、注目領域Fの内外で不連続であるから、これらの画素は第2次候補画素C2として抽出される。
【0044】
ステップS9では、微小構造物検出部32が、注目領域F内の第2次候補画素C2の少なくとも一部が、xy平面に非平行な直線または曲線の方向に沿って連続であるか否かを判定する。例えば、対象断層像Aを含みz方向に連続的に並ぶ複数の断層像を注目断層像群Qとして指定する。この注目断層像群Qは、例えば、対象断層像Aを中心としてz方向に連続した3枚または5枚の断層像とすることができる。本例では、z方向に連続した3枚の断層像とする。次に、微小構造物検出部32が、注目断層像群Qにおいて、z方向に隣接する断層像間ごとに、xy座標が±1以内で繋がる、すなわちxy平面内の3×3の9画素以内で繋がるX線高吸収領域の連続した画素群を特定する。そして、その中に対象断層像Aにおける注目領域F内の第2次候補画素C2のいずれかが含まれているか否かを判定する。含まれている場合には、注目領域F内の第2次候補画素C2の少なくとも一部は、xy平面に非平行な方向に沿って連続であると判定する。この場合には、注目領域F内の第2次候補画素C2は、xy平面と非平行な方向に連続性のないノイズではなく、微小構造物であると判断し、ステップS10に進む。一方、注目領域F内の第2次候補画素C2のすべてが、xy平面に非平行な方向に沿って不連続である場合には、注目領域F内の第2次候補画素C2は、xy平面と非平行な方向に連続性のないノイズであり、微小構造物でないと判断し、ステップS11に進む。なお、注目断層像群Qにおいて、z方向に隣接する断層像間ごとに、xy座標が±1以内で繋がるX線高吸収領域の連続した画素群を特定する際に、注目断層像群Qのうち対象断層像A以外の断層像におけるX線高吸収領域の画素の注目領域F内外での不連続性を特定要件に含めてもよいが、計算量を抑える場合には、含めなくてもよい。
【0045】
ステップS10では、注目領域F内の第2次候補画素C2を微小構造物の領域として抽出する。
【0046】
図6に注目断層像群Qの例を示す。図6の例では、第2次候補画素C2の一部がz方向に連続する画素群を構成しているから、これら第2次候補画素C2はすべて微小構造物の領域として検出する。
【0047】
ステップS11では、微小構造物検出部32が、新たな注目領域を設定すべき位置があるか否かを判定する。ある場合には、ステップS6に戻り、位置を変えて新たな注目領域を設定する。
【0048】
ステップS12では、微小構造物検出部32が、新たな対象断層像として設定すべき断層像があるか否かを判定する。ある場合には、ステップS5に戻り、スライス位置を変えて新たな対象断層像を選択する。
【0049】
ステップS13では、ノイズ低減処理部33が、3次元画像に対してノイズ低減のための所定の処理を施す。具体的には、3次元画像の全領域のうち、微小構造物の領域とは異なる非微小構造物の領域に対しては第1のノイズ低減が成され、微小構造物の領域に対しては上記第1のノイズ低減よりノイズ低減効果が小さい第2のノイズ低減が成されるかノイズ低減が実質的に成されない所定の処理を行う。
【0050】
例えば、上記所定の処理は、元の3次元画像とノイズ低減処理を施した処理済み3次元画像との加重加算処理とし、非微小構造物の領域に対しては処理済み3次元画像の重みを大きくし、微小構造物の領域に対しては元の3次元画像の重みを大きくする。
【0051】
図7に、当該処理において、特に、非微小構造物の領域に対する処理済み3次元画像の重みを1(元の3次元画像の重みを0)とし、微小構造物の領域に対する元の3次元画像の重みを1(処理済み3次元画像の重みを0)とした場合の処理を示す。つまり、この例では、元の3次元画像から微小構造物を抽出して減算したものにノイズ低減処理を施す。そして、微小構造物以外の領域についてはノイズ低減処理を施した画像を採用し、微小構造物の領域については元の3次元画像を採用し、互いに合算して合成する。
【0052】
また例えば、上記所定の処理は、パラメータに応じてノイズ低減効果が変化するノイズ低減処理を3次元画像に対して行うこととし、非微小構造物の領域に対してはノイズ低減効果が高くなるようにパラメータを設定し、微小構造物の領域に対してはノイズ低減効果が低くなるようにパラメータを設定する。
【0053】
なお、ノイズ低減処理としては、例えば、3×3画素や5×5画素などのマスクを利用した平滑化画像フィルタ処理を考えることができる。あるいは、画像空間もしくは投影データ空間において、局所領域ごとに、データ値の大きさやばらつき等に基づく「ノイズ量」と、その局所領域と当該局所領域の隣接領域との間におけるデータ値の相関に基づく「ノイズ低減の重み」とを求め、これら「ノイズ量」と「ノイズ低減の重み」とをパラメータとするノイズ抑制処理を施す考えることができる。
【0054】
以上、このような本実施形態によれば、造影血管や骨部などの微小構造物を、CT値が大きく、面方向に広がらず、その面と非平行な方向に連続性を有するという特徴を基に検出し、微小構造物の領域の方が非微小構造物の領域よりノイズ低減効果が小さくなるように画像ノイズ低減処理が行われるので、微小構造物を精度よく検出し、その像を維持しつつノイズを低減することができる。
【0055】
また本実施形態では、抽出したX線高吸収領域の画素が微小構造物であるか否かを判定する際に、xy平面と非平行な直線または曲線の方向に沿った連続性がないものは微小構造物ではないと判定している。これにより、上記連続性のないノイズなどを微小構造物として誤検出する機会を減らすことができ、精度の高い微小構造物の検出が可能になる。
【0056】
なお、発明は、本実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0057】
例えば、本実施形態では、処理対象として、複数の連続的な断層像による3次元画像を想定したが、単一の断層像など2次元画像を想定することもできる。この場合、その画像の画像平面と非平行な方向に沿った連続性による判定処理は適用しない。
【0058】
また例えば、本実施形態では、対象断層像Aの断面方向におけるX線高吸収領域の連続性については判断をしていないが、当該連続性をある程度有するもののみを微小構造物の候補として抽出するようにしてもよい。
【0059】
また例えば、本実施形態では、注目領域Fを矩形領域としているが、円領域等であってもよい。
【0060】
また例えば、本実施形態では、微小構造物として、造影血管及び骨部を想定したが、造影剤を注入しない被検者の場合には、骨部を想定することができる。
【0061】
また例えば、本実施形態は、X線CT装置であるが、上記の画像処理を行う画像処理装置も発明の実施形態の一例である。また、コンピュータを、このような画像処理装置として機能させるためのプログラム、このプログラムが記憶された記憶媒体などもまた、発明の実施形態の一例である。
【0062】
また例えば、本実施形態は、X線CT装置であるが、発明は、X線CT装置とPETまたはSPECTとを組み合わせたPET−CT装置やSPECT−CT装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 操作コンソール
2 入力装置
3 データ処理装置
5 データ収集バッファ
6 モニタ
7 記憶装置
10 撮影テーブル
12 クレードル
15 回転部
20 走査ガントリ
21 X線管
22 X線コントローラ
23 アパーチャ
24 X線検出器
25 検出器コントローラ
26 回転部コントローラ
28 X線検出装置
29 制御コントローラ
30 スリップリング
31 X線高吸収領域抽出部
32 微小構造物検出部
33 ノイズ低減処理部
40 被検体
41 操作者
81 X線
100 X線CT装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7